2017年6月19日08:50に日本国際収支「通関ベース貿易収支(季調済)」が発表されます。今回発表は2017年5月分の集計結果です。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
まず、本指標で取引する上での注意点です。
- ほとんど反応しません。最も素直な影響が現れやすい直後1分足跳幅の過去平均値は僅か3pipsで、平均値の2倍を超えて反応したことも11%(5pipsを超えて反応したことが10回に1回)しかありません。
次に指標分析の結果は次の通りです。
- 本指標発表時には、発表結果が市場予想を上回る(下回る)と売られる(買われる)、事実売り(事実買い)の傾向があります。その一方、直前10-1分足が陽線なら発表結果が市場予想を下回り、陰線なら上回るという予兆的な傾向も見受けられます。そのぞれの確率は本文「指標一致性分析」の項をご参照願います。
以上の分析結果に基づき、次のポジションを取ります。
- ポジションは、指標発表直前に直前10-1分足と逆方向に取得します。利確も損切も5pipsとしておきます。ポジション取得後3分で時間切れ解消します。
- もし上記ポジションで利確できたら、東証寄付直前に同方向のポジションを取ります。これも利確も損切も5pipsとします。ポジション取得後3分で時間切れ解消します。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正している、というのが実情です。
【1. 指標概要】
「貿易収支」と「貿易収支(通関ベース)」は、「輸入建値」と「計上範囲・時点」の違いがあり、もともと数字が一致しないものです。この違いをざっくり説明すると、輸送費や保険料といったサービス収支を含む・含まないという違いと、所有権移転時点と通関時点という違いです。
例えば、日本がアメリカ製の人工衛星を購入し、アメリカで打ち上げるケースについては、人工衛星の所有権がアメリカから日本に移転した時点で「貿易収支」に計上されますが、人工衛星は関税境界を越えないため「貿易統計(通関ベース)」には計上されません。
詳しくはこちらの 財務省HPの説明 をご覧ください。
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの28回分のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
下図に過去の市場予想と発表結果の推移を示します。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
全体に波があるように見受けられます。
すなわち、直後11分足は、月足でJPYが売られるトレンドのときには陽線が多く、買われるトレンドのときには陰線が多くなりがちです。だから今は難しいタイミングだと言えます。
直後11分足だけでなく、他のローソク足にもそういう傾向が窺えます。
お手数ながらご自身のチャートツールでUSDJPYの月足をご確認ください。手抜きですが、大して反応しない指標なので、わざわざ定量分析するのが面倒くさいので。
【3. 定型分析】
(3-1. 反応性分析)
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が62%です。方向一致時に直後1分足と直後11分足を比較して、跳値同士で反応が伸びたことは92%、終値同士で反応が伸びたことは77%%となっています。
確率的には、指標発表後の反応方向を確認し、直後11分足の跳幅を狙えば5pips程度が利確できる可能性が高いでしょう。主観的な話をすれば、この5pips分の跳ねは09:00の東証寄付直後に短時間だけ現れることが多いので、ご注意ください。
(3-2. 反応一致性分析)
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
直前1分足は陰線率が75%です。がしかし、過去の平均的な跳幅が僅か1pipsしかありません。だから取引には不向きです。
そして、直前10-1分足は直後1分足との方向一致率が29%(不一致率71%)、直前1分足は直後11分足との方向一致率が25%(不一致率75%)です。これは、次の指標一致性分析でも別の形で同じような傾向を示しているので、そちらの説明をご参照ください。
(3-3. 指標一致性分析)
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
事前差異は、市場予想がどうあれ反応方向を予め示唆している兆候がありません。
事後差異は、直前10-1分足との方向一致率が72%となっており、直後1分足との方向一致率が24%(不一致率76%)となっています。これは、指標発表前にレートへの折込みが終り、発表後にはそのポジションを解消している動きです。
実態差異は、直後1分足との方向一致率が29%(不一致率71%)となっています。がしかし、直前10-1分足との方向一致率には大きな偏りが見出せません。このことは、事後差異と直前10-1分足・直後1分足との関係と対比して考えると、本指標が前回結果に関係なく市場予想とだけ関係しがちなことが裏付けられます。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年6月19日08:50発表
以下は2017年6月20日に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は市場予想を下回り、反応は陰線でした。ただ、直後1分足を過ぎると、東証寄付を睨んで陽線に転じました。
内訳は、輸出額が6か月連続増加しています。一方、輸入額は更に増加して、2015年1月以来の伸び率となりました。輸入増加の原因は、5月分データが例年GWの影響で輸出が伸び悩む傾向があること、前年同月より円安なこと、昨年は熊本地震の月だったこと、が挙げられます。
地域別輸出は、米国が+11.6%、対アジアが+16.8%、対EUが+19.8%と、大きく伸びています。
輸入は、対中貿易赤字が3か月連続となっています。
(5-2. 取引結果)
取引できませんでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前の調査・分析内容について検証しておきます。
- ほとんど反応しない、という点はその通りでした。今回、直後1分足は跳幅・値幅が1pipsしかありません。
- 本指標発表時には、発表結果が市場予想を上回る(下回る)と売られる(買われる)、事実売り(事実買い)の傾向がある、と指摘していました。
結果は、市場予想を下回って陰線(1pips)ですから、過去の傾向とは違う動きです。がしかし、これは確率上の問題です。 - そして、直前10-1分足が陽線なら発表結果が市場予想を下回り、陰線なら上回るという予兆的な傾向も見受けられます。
結果は、直後10-1分足が陽線で指標は市場予想を下回ったので、過去の傾向通りだったと言えます。だからこの傾向には再現性がある、というには少し疑問が残ります。反応が小さすぎます。
(6-2. シナリオ検証)
取引はできなかったものの、シナリオは検証しておきます。
シナリオは、指標発表直前に直前10-1分足と逆方向に取得する、というものでした。強弁すれば、直後1分足の方向は当たっていたものの、この程度の反応では利確できたかどうか疑問です。あまりに反応が小さすぎて、利確が遅れて損切となっていた可能性の方が高い、と思われます。
また追撃シナリオは「上記シナリオが利確できたなら同方向に追撃」ですから、ポジションは取れなかったと思います。
ともあれ、明らかに直後1分足の反応が小さい(反応しない指標)なのですから、本指標での取引シナリオは東証寄付前の方向を当てないと駄目ですね。
次回は7月20日08:50発表予定です。
そして、本データとの相関が見込まれる国際収支の発表は、7月1日08:50の予定です。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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