FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、消費・住宅・生産・貿易関係の指標はあまり反応しません。
【4-2-2.(1).経済成長】
成長率(年率換算確定値)は下表の通りです。
2013年10-12月期 2.6%
2014年10-12月期 2.2%
2015年10-12月期 1.4%
2016年10-12月期 2.1%
2017年01-03月期 1.4%
2017年04-06月期 3.1%
2017年07-09月期 3.0%(速報値)
2017年1-3月期GDP確定値が発表された後に「雇用状況が好調ゆえいずれ盛り返す」旨のFOMC見解は正しかったことになります。
(分析事例) 四半期GDP速報値 (2017年10月26日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値 (2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値 (2017年9月28日発表結果検証済)
さて、GDP発表時の取引を行う上で下表をご覧ください。
Aは過去平均の直後1分足跳幅、Bは直後1分足と直後11分足の方向一致率、Cは直後11分足値幅が直後1分足値幅よりも反応を伸ばしていた確率です。
速報値 改定値 確定値
A 24pips 15pips 11pips
B 79% 88% 65%
C 47% 18% 41%
こうして数字を並べて見ると、同じGDPでも速報値・改定値・確定値で取引のやり方を変えないと勝てないことが良くわかりますね。
次回2017年4-7月分改定値は11月29日に発表されます。
【4-2-2.(2) 実態指標】
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。だから、PCEの重要度・注目度は高い、とされています。
ところが、そのPCEに直結する先行指標は小売売上高です。だから、小売売上高への反応(直後1分足跳幅の過去平均27pips)は、PCEへの反応(同9pips)の3倍にもなります。PCE水準については、小売売上高で折込まれてしまう訳です。
米国経済自体に興味があればPCEを重要視すべきかも知れないものの、FX取引に参加するなら小売売上高の方に注目すべきです。
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その小売売上高の直近推移は下表の通りです。
前月比 コア前月比
04月分 +0.4% +0.3%
05月分 △0.3% △0.3%
06月分 △0.2% △0.2%
07月分 +0.6% +0.5%
08月分 △0.2% +0.2%
09月分 +1.6% +1.0%
10月分 +0.2% +0.1%
明らかに4-6月期より7-9月期の小売売上高は増えています。
次回11月分は、赤穂浪士討ち入りの12月14日に発表されます。討ち取られないようにしましょう。
(分析事例) 小売売上高 (2017年10月13日発表結果検証済)
小売売上高発表結果の特徴は、実態差異が同月集計分のCPIと方向一致率が高いという点です。そして、本指標で取引する上で知っておくべきことは、直後1分足と直後11分足の方向一致率が85%で、その85%の方向一致時には、2013年以降、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を100%超えている点です。
指標発表直前に一か八かでポジションを取らなくても、発表後に追撃を早期開始して欲張りさえしなければ、発表から1分経過後に利確の機会があった訳です。
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次に、個人消費(PCE)です。PCE発表時には同時に、個人所得・コアデフレータ前月比・同前年比が発表されます。
細かなデータを見るより先に、本指標の特徴を挙げておきます。コアデフレータと書くの面倒なので、以下、CDと略記します。
まず事前差異を発表項目毎に、市場予想ー前回結果、で求めます。そして、1?CD前年比事前差異ー1?CD事前差異前月比+1?PCE事前差異ー1?個人所得事前差異、という判別式の解を求めます。この解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直前10-1分足の方向一致率は78%となっています。
次に、事後差異は、発表項目毎に、発表結果ー市場予想、で求めます。そして、3?CD前年比事後差異+2?CD事後差異前月比+1?PCE事後差異+1?個人所得事後差異、という判別式の解を求めます。この解の符号と直後1分足の方向一致率は71%となっています。
現実的には、発表直後にこんな面倒な式をぱっぱと解けません。だから、CD発表結果の市場予想と差だけを見て対応すれば良い訳です。
(分析事例) 個人消費(PCE)・個人所得 (2017年10月30日発表結果検証済)
その消費と収入の直近推移は下表の通りです。
個人消費 個人所得
04月分 +0.4% +0.4%
05月分 +0.4% +0.1%
06月分 0.0% +0.1%
07月分 +0.4% +0.3%
08月分 +0.2% +0.1%
09月分 +0.4% +1.0%
所得は6月分を除いて増え続けており、消費も毎月増えています。ただ、所得の伸びに対して消費の伸びが小さかったものの、9月分では一気に消費が大きく伸びました。その結果、GDPと繋がりのある消費が、4-6月期よりも7-9月期の方が増えています。
次回10月分の発表は、11月30日に予定されています。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
(分析事例) 中古住宅販売件数 (2017年9月20日発表結果検証済)
(分析事例) 新築住宅販売件数 (2017年9月26日発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
特に鉱工業生産指数・製造業生産指数・設備稼働率は、反応が小さく
11月16日に発表された10月分鉱工業生産指数前月比は+0.9%、設備稼働率は77.0%でした。設備稼働率は、2017年4月分の直近ピーク76.7%を上回っており、2016年1月分以来の稼働率でした。
次回11月分は12月15日に予定されています。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率 (2017年8月17日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
本指標の直後1分足跳幅は、過去平均で6pipsしかありません。そして、発表結果の市場予想に対する良し悪しに対し、直後1分足との方向一致率も62%しかありません。つまり、取引きには向かない指標です。
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耐久財受注の結果は同月分の鉱工業生産指数が先行示唆しています。間違い易いのですが、鉱工業生産指数の結果を耐久財受注が先行しているのではなく、発表日の関係で鉱工業生産指数の結果が耐久財受注を先行示唆しています。
両指標の同月集計分の実態差異は、方向一致率が92%にも達しています。ですが、そうそううまい話はありません。耐久財受注の実態差異と直後1分足の方向一致率は52%しかありません。よって、鉱工業生産実態差異がプラスで、本指標結果実態差異もプラスだったとしても、直後1分足が陽線となるか陰線となるの確率は半々です。先行指標との実態差異一致率が高い指標は、容易に反応方向を予想できないのです。
だから、先行指標なんて考えずに、本指標の事後差異(発表結果ー市場予想)の正負だけを予想した方が良いでしょう。
事後差異判別式は、2?耐久財受注前月比の事後差異+1?コア耐久財受注前月比の事後差異、です。この判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、直後1分足との方向一致率は82%です。コアの方が反応に寄与しないことにご注意ください。
(分析事例) 耐久財受注 (2017年11月22日発表結果検証済)
11月22日に発表された10月分結果は、総合指数が△1.2%で、3か月ぶりにマイナス転換しました。コア指数は2017年5月分以降6カ月連続でプラス継続です。ともに過去の水準に対し、極端な値にはなっていません(総合指数がプラスであれマイナスであれ3%以上になると、翌月発表は反動が起きがちです)。
次回11月分は12月22日に発表されます。
以上
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