4-5-1.豪州・NZ政策決定指標(2017年10月版)

NZ指標は、ここに挙げるRBNZ(NZ中銀)金融政策発表時のみを扱っています。

そのRBNZとRBA(豪中銀)は、ともに「当面の利上げなし」と説明しています。そのため、以前に比べて反応が小さくなっています。両指標は大きく反応する上、一方向に反応が伸びがちで追撃が容易だっただけに残念です。
そんな訳で、直近はAUDJPYとNZDJPYの指標分析と取引をあまり行っていません。先述の通り、利上げ期待に乏しく北朝鮮リスクが続く状況では、もしものときに大きく下げるリスクの方が心配です。

【4-5-1.(1) 金融政策】

2017年10月3日に発表されたRBA金融政策は「市場予想通り現状維持」でした。

RBA声明とRBA総裁会見の内容を踏まえると、賃金の伸び悩みと家計債務増大に懸念を示し、AUD高が景気回復の障害となる旨、述べています。
ここで、債務増大を挙げたことは利下げがもうないことを確認でき(利上げをすると債務は増える傾向にある)、12月に予定される7-9月期GDPの改善を確認してから、来年半場までの利上げ実施が市場への折込みが始まる、と読めば良いのでしょう。

 (分析事例) RBA金融政策 (2017年8月1日発表結果検証済)
 (分析事例) RBA金融政策理事会議事録 (2017年6月20日公表結果検証済)

最近は、発表内容のマンネリ化と当面の利上げなしと北朝鮮リスク継続、で反応が小さくなっています。そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率も64%となり、追撃の旨味がなくなってきました。この状況は、12月の7-9月期GDPの発表が迫るに連れて、変化する可能性があります。それまでは当面、発表前後の反応が不安定な状況が続きそうなので、取引を控えています。

過去の傾向から言えば、RBA金融政策発表時の直後11分足は陽線率が73%です。がしかし、直後1分足の陽線率は61%とそれより小さくなっています。陽線率・陰線率の偏りが、直後11分足の方が大きいというのは珍しい特徴です。
追撃は早期参加した方が良いでしょう。直後1分足方向に対し、発表から1分を経過してから直後11分足が反転するリスクは17%しかありません。反転リスクが高いのは、むしろ発表から10数秒間です。高値(安値)掴みに気を付けて、短期利確を繰り返しながら複数回の順張り追撃しても、一方向に反応が伸びがちなので、損益期待値は年間を通してプラスできるでしょう。

これらAUDらしい動きも、前述の通り、当面はあまり期待できません。

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RBNZの政策は、9月総選挙の結果、政権交代が起きて間もないため、人事も含めてまだ予想ができません。

 (分析事例) RBNZ政策金利 (2017年9月28日発表結果検証済)

RBNZ政策金利の発表では「市場予想通り現状維持」のときにも反応が大きく、一方向への反応が続きがちです。無理をしなくても、反応方向を確認してから追いかけてポジションが取っても、pipsが稼ぎやすいのです。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は90%に達し、そのうち直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばしたことも90%に達しています。発表から1分を過ぎたら利確の機会を狙い、直後1分足値幅を下回ったら、順張り再追撃を行えば良いのです。直後1分足と直後11分足が反転したことなど、過去10%も起きていません。
現地夏時間は5時発表(日本では冬)なので、起きられないというのが最大の問題です。

【4-5-1.(2) 財政政策】

以下は、豪州についてのみ取り上げます。NZは金融政策発表時しか取引しないため、個別指標は注目していません。そもそもNZDJPYはスプレッドが大きいので、短期取引するには大きく反応することがわかっている指標でないと取引が難しいのです。

豪政府は今後10年でインフラ整備に750億AUDを投じることを発表しています。主な投資先は鉄道・滑走路・道路となっており、政府説明は以前の鉱山ブーム時代の経済構造からの産業構造転換を目指すため、ということのようです。
2016年の豪GDPは1.7兆AUDなので、対GDP比0.44%/年と捉えた方がわかりやすいでしょう。インパクトを日本のGDP規模に置き換えれば、単年度2兆円程度ということになります。いわば、日本が東京五輪を毎年やるぐらい、インフラ整備に力を入れるのです。

財政政策ではありませんが、米国抜きTPPの推進では、日・豪・NZが旗振り役でした。NZが政権交代したので、今後は日豪主導の推進となります。
また、最近のニュースでは、トヨタとGMが豪工場を閉鎖し、豪州での自動車生産が0になったことが目を引きました。豪州は工員の賃金も高すぎるため、輸入した方が合理的です。TPPが米国抜きで発効すれば、故障の少ない日本の自動車メーカーにとっては、良い市場になるでしょう。

【4-5-1.(3) 景気指標】

景気指標では取引を行っていません。両国の代表的な経済誌もわからないし、内政・外交の主要議題も掴めません。むしろ、景気指標を取引対象としてでなく、総合的な雰囲気を掴む手段として利用する方が有用です。

9月12日に発表された8月分NAB企業景況感指数は+15でした。貿易収支が黒字転換した2016年11月から1か月遅れで、景況感がほぼ+10以上で高位安定しつつあります。+15はこれで3か月連続で、直近ピークは2017年1月分の+16です。
10月10日に発表された9月分指数は+14と、1ポイント少し低下しました。前月まで3か月連続で+15が続いていたものの、結局、直近ピークの+16を超えることができませんでした。
次回10月分は11月14日に発表されます。

【(4) 物価指標】

四半期毎に発表される豪州物価指標はCPIに注目しておけば十分です。輸入物価指数やPPI(生産者物価指数)はほぼ反応せず、取引には不向きです。

RBA見解(3月)では、インフレ率(CPI前年比)が2017年に2%を上回る、と予想していました。8月1日のRBA声明でもこの予想は踏襲されています。ただ、賃金の伸び悩みが物価上昇を抑えているとの見解も、ずいぶん前から踏襲されています。

7月26日に発表された4-6月期CPI前年比は+1.9%でした。1-3月期の+2.1%を下回ったものの、まだ2016年1-3月期を起点とする上昇基調は維持されています。
次回7-9月期CPI発表は10月25日に発表予定です。再び+2%台に乗せることが期待されており、直近ピークの
2.1%を上回れば大きく反応することが期待されます。

 (分析事例) 四半期消費者物価指数 (2017年7月26日発表結果検証済)
 (分析事例) 四半期生産者物価指数 (2017年1月27日発表結果検証済)

四半期CPIはかなり大きく反応します。何より、直後1分足終値より直後11分足終値が同方向に伸びていた確率が高いのです。こうした指標では、無理して発表時刻を跨いでポジションを持たずに、追撃で安全にpipsを稼ぐ方針に徹する方が良いでしょう。

【4-5-1.(5) 雇用指標】

8月1日のRBA金融政策発表時の声明では、(a) 様々な先行指標が今後雇用が継続的に伸びることを示している、(b) 失業率は今後多少低下する、(c) 賃金の伸びは依然として低迷しており今後も暫く続く、との見解を示していました。

8月17日に発表された7月分雇用統計では、新規雇用者数が+2.79万人(前回+1.4万人)と増えたものの、常勤雇用者数が△2.03万人(前回+6.2万人)と減少しました。この結果を受けた反応は、発表と同時にどーんと陰線側に跳ね、すぐに陽線側へと転じました。がしかし、陽線側への反応は伸び悩み、発表から1分を過ぎる頃には陰線側に転じました。

9月14日に発表され8月分雇用統計では、新規雇用者数が+5.42万人、常勤雇用者数が+4.01万人と増えました。この結果を受けた反応は、発表と同時にどーんと陽線側に跳ね、直後11分足は跳幅・値幅とも直後1分足を超えて反応を伸ばしました。

10月19日に発表された9月分雇用統計では、新規雇用者数が+1.98万人、常勤雇用者数が+0.61万人でした。失業率は直近ボトムの5.5%に戻しています。
次回発表は11月16日に予定されています。

 (分析事例) 豪州雇用統計 (2017年8月17日発表結果検証済)

本指標での取引には注意が必要です。
かなり大きく反応する指標で、直後1分足値幅方向は指標結果に素直な傾向があります。がしかし、直後1分足の逆跳幅が順跳幅より大きくなることが多々あります(無作為サンプル5回で頻度40%)。指標発表時刻を跨いだポジションを持っているときに、こうした動きをされると、例え分析が当たっていても逆方向に大きく動いたときに損切せざるを得ません。だから、通常のやり方では年間を通して思ったほどに稼げません。

これほど騙しが多い指標では、発表直後でなく、10秒待ってじっくりと追撃ポジションを取らないといけません。10秒待ってポジションが取れるような機会を待つしかないので、10秒経つともうポジションが取れないほど跳ねていることもあります。発表直後の跳ねで追撃することは諦め、その後の戻りを狙って追撃ポジションを取るべきでしょう。よって、反応が大きい指標の割に稼ぎにくいのです。
でも間違えないように。稼ぎにくくても損するよりマシです。
以上

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1. FXは上達するのか

小さなコツをいくつか覚えたって駄目です。勝てない原因をきちんと突き止めてからやり直しましょう。FXを楽しむためには「投資期間」が必要です。すぐに始めたって勝てないことは、FXに限らず、何事であれ同じなのです。だからこそ、その期間を短縮するための「方法論」が大切なのです。

1-1. FXを楽しむために
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1-2. いつか負けないはずがない!
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1-3. 難しさの正体って何だ
利確と損切の理解は大切です
1-4. FXは上達するのか
取引機会を絞り込むべきです
1-5. 数字で掴もう
その機会にどう臨むかです
2. 経済指標の楽しみ方

このブログで扱う取引の理想は、経済指標発表前後の反応を着実に刈り取り、ポジション保有時間を最短化してリスクを避けることです。でも、効率良く取引するにはそれなりに予備知識が必要です。大した話は紹介できませんが、基本だけは押さえておきましょう。

2-1. 大きなゾウの隠れ方
指標取引のための予備知識です
2-2. ウソは嫌いだ!
短期取引をやるときの指針です
2-3. イグアナを見分ける前に
このブログの指標取引での成績です
 2-4. 小ズルくいきましょう
いわばジンクスで勝つ方法です

3. 指標取引分析手法

このブログでは経済指標への調査・分析を定型書式で行っています。定型書式を用いることで、反省を踏まえてやり方を進歩させたり、相場環境が変わったことを見つけやすくするため、です。

3-1. 指標取引の予備知識
指標発表前後の他の時間と違い
3-2. ローソク足各部の名称
全幅・値幅・跳幅とは?
3-3. 4本足チャート
このブログで使うチャート表記
3-4. 反応方向の予備知識
指標分類と反応方向の基本
3-5. 取引通貨ペアの選択
通貨ペアによる有利不利
3-6. 指標分析の方法
定量指標分析とは?
3-7. 反応分析の方法
定量反応分析とは?
3-8. 分析の成績
事前分析的中率
3-9. ブレイク対応準備
ついでに…
4. 経済指標DB

経済指標発表前後の短時間に分析期間を絞ることによって、指標への反応に一定の再現性(傾向)があることはわかりました。各国「政策決定指標」・「経済実態指標」の項に、主要な指標についての分析結果と分析事例を纏めてあります。

4-0. 各国経済・通貨の特徴
4-1. 日本経済
4-1-1. 政策決定指標
(a) 日銀短観
(b1) 東京都区部CPI
(b2) 全国CPI
4-1-2. 経済実態指標
(c) GDP一次速報
(d) 機械受注
(e1) 通関貿易統計
(e2) 国際収支
4-2. 米国経済
4-2-1. 政策決定指標
(a) FOMC
(b1) UM消信指数速報
(b2) CB消信指数
(b3) ISM非製景指数
(c1) NY連銀製景指数
(c2) Phil連銀製景指数
(c3) ISM製景指数
(d1) 輸出・入物価指数
(d2) 生産者物価指数
(d3) 消費者物価指数
(d4) PCEコアデフレータ
(e1) ADP雇用統計
(e2) 雇用統計
4-2-2. 経済実態指標
(a1) GDP速報値
(a2) GDP改定値
(a3) GDP確定値
(b1) 小売売上高
(b2) 個人消費・所得
(c1) 鉱工業生産
(c2) 耐久財受注
(d1) 中古住宅販売件数
(d2) 新築住宅販売件数
4-2-3. 収支関連指標
(a) 貿易収支
4-3. 欧州経済
4-3-1. 政策決定指標
(a) ECB金融政策
(c1) ZEW企業景況感調査
(c2) 独国Ifo企業景況指数
(c3) 独国PMI速報値
(c4) 欧州PMI速報値
(d) 欧州HICP速報値
4-3-2. 経済実態指標
(a1) 独国GDP速報値
(b) 独国貿易統計
(c1) 独国製造業新規受注
(c2) 独国鉱工業生産
4-4. 英国経済
4-4-0. 英国経済指標反応要点
4-4-1. 政策決定指標
(a) BOE金融政策
(c1) PMI速報値
(c2) 製造業PMI改定値
(c3) サービス業PMI改定値
(d) 物価統計
(e) 雇用統計
4-4-2. 経済実態指標
(a1) 月次GDP
(a2) 四半期GDP速報値
(b) 小売売上高指数
(c) 鉱工業生産指数
(d) 貿易収支
4-5. 豪州・NZ経済
4-5-1. 政策決定指標
(a) RBA金融政策
(b) RBNZ金融政策
(c1) NAB企業景況感指数
(c2) WP消費者信頼感指数
(d1) 四半期住宅価格指数
(d2) 四半期生産者物価指数
(d3) 四半期消費者物価指数
(e1) 賃金指数
(e2) ANZ求人広告件数
(e3) 雇用統計
4-5-2. 経済実態指標
(a) 四半期GDP
(b) 貿易収支
(c) 小売売上高
(d1) 住宅ローン件数
(d2) 建設許可件数

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2017年12月04日

豪州(RBA)金融政策発表前後のAUDJPY反応分析(2017年12月5日12:30発表結果検証済)

以下、「?T.反応要点」「?U.指標要点」を事前投稿し、「?V.結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「?V.結果検証」のタイトル行付近に記載しています。


?T.反応要点

2017年12月5日12:30にRBA金融政策が発表されます。

豪州に限らず、中銀の金融政策発表時の反応は、「市場予想通り現状維持」の場合と「その他」の場合とで、全く様子が異なります。今回の市場予想は現状維持であり、以下、特に断らない限り「市場予想通り現状維持」になると見込んでの分析を行います。

前回結果・市場予想と、以下の分析対象期間と、反応分布は次の通りです。

1712豪州RBA110.png

1712豪州RBA250.png

最も指標結果に素直に反応しがちな直後1分足跳幅は21pipsと、大きく反応しています。但し、最近の3回の反応は10pipsしかなく、これはRBAが「当面の政策変更なし」を明言しているため、と考えられます。

直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1を下回っており、平均的には反応が伸びない、と言えます。


?T.指標要点

公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。

【1. 指標概要】

RBAとはオーストラリア準備銀行(Reserve Bank Of Australia)のことで、日本の日銀に相当します。RBAの金融政策は、金融政策決定理事会で決定されます。金融政策決定理事会は近年1月を除き毎月第1火曜日に実施されます。

金融政策は、物価を適正水準に保つため中央銀行が行う経済政策です。政策には金融緩和か金融引締という施策があって、政策金利もそのひとつと言えます。
現在、主要先進国で為替レートを適正水準に保とうとする行為は、それがその国の通貨を安くする場合に表向き否定されがちです。がしかし、現実問題として金利が動けば、長期的な投資資金が金利の高い側に移動しがちです。

前回11月7日の会合後声明文の要点は、次の通りでした。
成長率は、今後数年間でおよそ平均3%増になると予想しています。但し、その障害として、家計収入の伸びが鈍化し、家計債務も高水準となっており、消費の先行きを不透明にしている点を挙げています。
雇用は労働参加率の改善で、各種先行指標が拡大継続との認識を示しました。但し、賃金の伸びは弱いままで、こうした状況は続くことに懸念を示しています。
物価は、まだCPI・コアCPIがともに+2%をやや下回った状態で推移する可能性が高いとの見通しを示しました。上昇ペースはゆっくりで、豪州経済の回復について徐々に加速していくという見通しのままです。
よって、金融政策を現状のまま維持することが経済成長を持続的に安定させ、やがてインフレ目標(2-3%)を達成することに役立つと判断した、というのが結論でした。

内容的には、前月までとあまり違いがありません。発表直後の速報で「今後数年で3%の見通し」と流した通信社もあったらしく、それで前月は陽線での反応に結び付いたようです。


【2. 既出情報
(2-1. 過去情報)

過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。このグラフは「市場予想通り現状維持」ではなかったときもプロットしています。

1712豪州RBA210.png

分析対象期間において「市場予想通り現状維持」ではなかったことが5回あります。すなわち、

  • 2015年2月は市場予想に反して現状維持
  • 2015年3月は市場予想に及ばない利下げ
  • 2015年5月は市場予想通り利下げ
  • 2016年5月は市場予想に反して利下げ
  • 2016年8月は市場予想通り利下げ

の5回です。


(2-2. 過去反応)

過去の「市場予想通り現状維持」だったときの直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。

まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去2回(頻度7%)しかありません。
この2回の直後1分足跳幅は23pipsで、これは直後1分足の過去全平均21pipsとほぼ同じです。そして、この2回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回の一致です。
つまり、直前10-1分足の反応が大きくても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。

1712豪州RBA310.png

次に、直前1分足の過去平均跳幅は13pipsです。この跳幅が20pips以上だったことは過去2回(頻度7%)です。
この2回の直前1分足跳幅平均は85pipsにも達しており、何か異常です。こんな予想もつかない動きをし得るタイミングでは、取引しないに越したことがありません。

1712豪州RBA320.png

そして、直後1分足の過去平均跳幅は21pipsです。この跳幅が30pips以上だったことは7回(頻度25%)です。とは言え、この7回は全て昨年以前に起きており、2017年に入ってからは一度もこれほど大きく跳ねたことがありません。

1712豪州RBA330.png

直後11分足は、過去平均跳幅が31pips、過去平均値幅が20pipsです。平均的なヒゲの長さは11pipsにもなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。

1712豪州RBA340.png



【3. 定型分析】

反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
金融政策発表時の分析では、指標一致性分析を行いません。

まず、反応一致性分析の結果を下図に示します。

1712豪州RBA420.png

直後1分足と直後11分足の方向一致率は81%です。他には、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆しているような偏りはありません。ただ、どちらかと言えば、直前10-1分足や直前1分足は、直後1分足と逆方向に動くことが多かったようです。

次に、反応性分析の結果を下図に示します。

1712豪州RBA411.png

直後1分足と直後11分足との方向一致率は81%です。そしてその81%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各77%・73%です。
指標発表直後は反応が伸びると信じるしかなく、方向一致率が高くて反応を伸ばしているのだから、初期反応方向に早期追撃開始です。

発表から1分経過してからの10分間は、直後1分足の値幅を伸ばしたこと(59%)が、直後1分足の値幅を削ったり(22%)、直後1分足と反転したこと(19%)よりも多くなっています。
追撃は徹底すべきでしょう。但し、59%という数字はそれほど安心できる数字でもないので、短期取引の繰り返しで追撃する方が良さそうです。

この結果は、巻頭に挙げた相関分布の結論と、一見、矛盾しています。
がしかし、巻頭に挙げた回帰式の係数が1を下回っていることは、平均的に反応を伸ばしていないことを示しています。本反応性分析で、直後1分足終値よりも直後11分足終値が伸びたいたのは回数です。
矛盾はありません。
では、直後1分足終値よりも直後11分足終値が伸びたいたのは回数が多いのに、平均pipsが伸びていないとはどういうことでしょう。反応を伸ばすときは小さく、伸ばさないときは逆向きに大きく動くということです。


【4. シナリオ作成】

RBA金融政策発表の特徴は以下の通りです。

  • RBAは最近の声明や幹部発言で「当面の政策変更なし」を繰り返し説明しています。
    その結果、直近12回の反応は直後1分足跳幅が13pips、直近3回では10pipsと、かなり反応が小さくなっています。

  • 指標発表前は注意が必要です。
    直前10-1分足はあまり動かず、直前1分足はたまに桁外れに大きく動いた実績があります。これら期間に取引を行うことは余計なリスクを負うことに他なりません。

  • 指標発表直後は、幸いというか意外なことに、「市場予想通り現状維持」だった場合、逆ヒゲを形成することが少ないようです。10pips以上の逆ヒゲは過去1回(頻度4%)しかありません。

以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 発表後の反応方向への追撃を短期取引で複数回行います。
    回数的には、直後1分足よりも直後11分足が伸びていたことが多いものの、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり反転するときは大きめになるので、ポジションも反転に備えて取得することが良いようです。

以上


2017年12月5日12:30発表

以下は2017年12月9日に追記しています。
?V.結果検証

【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)

本指標発表結果及び反応は次の通りでした。

1712豪州RBA510.png

RBA声明の結論は「現在の金融政策スタンスを維持することが持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成に繋がると判断」です。「市場予想通り現状維持」です。
反応は陽線でした。

本結論に至るRBAの認識を以下に要約します。

  • まず、豪州に取り巻く経済環境です。
    多くの先進国・地域で成長が加速すると見込まれるものの、不安な点を指摘しています。指摘している点は次の2点です。
    ひとつは、中国が融資をやや絞る政策を採っているため、直近の輸出規模がやや小さくなる可能性がある点です。もうひとつは、多くの先進国・地域で金融政策の緩和水準が縮小しつつあるものの、賃金が伸び悩んでインフレ率が上昇しないため、成長が加速する兆しがない、という点です。

  • 豪州経済については、7-9月期GDP前年比が伸びたことを示唆しています。
    中銀予想の中心は、今後数年に亘って成長率が平均で3%前後になるというものです。景況感は強く、設備稼働率は上昇し、鉱業以外の事業投資見通しは一段と改善し、先行きを示す経済指標はこれまでよりもさらに良好となっています。そして、公共投資増加も経済を下支えしています。不安要素は家計消費の見通しで、所得の伸びが緩やかにも関わらず債務の水準が高いため、僅かにそれらの関係が改善しても急成長には繋がりそうもありません。

  • そのことを示している個別事象として、以下の状況を挙げています。
    豪ドルは、過去2年間のレンジ内に留まっています。がしかし、通貨が上昇すれば、景気とインフレ率が現在想定されているペースより鈍くなることが予想されます。
    現在、インフレ率は低水準に留まり、CPIと基調的インフレ率がいずれも2%を下回る水準で推移しています。インフレ率は、経済の加速に伴って徐々に上昇すると、引き続き予想しています。雇用関係を見ると、賃金の伸びが依然弱く、この傾向が暫く続く可能性が高いから、です。但し、いずれ賃金はいずれ幾分押し上げられると見込んでいます。 論拠は、労働参加率の上昇を伴いつつ失業率が低下し、全ての州で改善している点です。そのことは今後も雇用の堅調な伸びを示しているためです。
    問題は、住宅債務が以前から家計所得の伸びを上回るペースで拡大していることです。家計債務の拡大が続く中期的リスクに対応するため、APRA(豪健全性規制庁)は、住宅購入時の信用審査を厳格化する規制を設けました。その結果、家計債務の所得比が改善しつつあり、住宅価格はここ半年ほぼ変化していません。シドニーではむしろ低下しました。東部主要都市では、今後数年で集合住宅の追加供給が計画されており、家賃の伸びは大半の都市で引き続き低水準となっています。


(5-2. 取引結果)

取引結果は次の通りでした。

1712豪州RBA520.png

やはり、最近は反応が伸び悩みます。


【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)

事前調査分析内容を以下に検証しておきます。

  • RBAは最近の声明や幹部発言で「当面の政策変更なし」を繰り返し説明していました。その結果、直近12回の反応は直後1分足跳幅が13pips、直近3回では10pipsと、かなり反応が小さくなっていました。
    今回の反応も直後1分足跳幅が12pipsであり、直近は取引にあまり魅力的な発表ではなくなりました。

  • 指標発表前は注意が必要です。
    直前10-1分足はあまり動かず、直前1分足はたまに桁外れに大きく動いた実績があります。これら期間に取引を行うことは余計なリスクを負うことに他なりません。
    今回はそういう動きはありませんでした。

  • 指標発表直後は、幸いというか意外なことに、「市場予想通り現状維持」だった場合、逆ヒゲを形成することが少ないようです。10pips以上の逆ヒゲは過去1回(頻度4%)しかありません。
    今回も逆ヒゲは1pipsしかなく、従来通りでした。

(6-2. シナリオ検証)

事前準備していたシナリオは次の通りでした。

  • 発表後の反応方向への追撃を短期取引で複数回行うつもりでした。反転を警戒して短期取引を行うことにしていました。
    結果は、直後11分足が大きなヒゲを残しており、利確は難しかったと思われます。

下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。

1712豪州RBA530.png

2017年は5回の取引を行い、指標単位で5勝(勝率100%)、シナリオ単位で6勝2敗(勝率75%)でした。1回の取引時間は6分41秒で、合計38pipsの利確(1回当たり8pips)に繋がっています。
これは、最近でこそ反応が小さい発表になったものの、過去平均の直後1分足跳幅が29pipsもあるため、発表時刻を跨いだポジションが取れないためです。それでも以前は追撃だけで稼げたものの、最近は反応が小さい上に反転率が高いため、単純な追撃戦で稼ぐことが難しくなりました。この傾向は2018年も暫く続くと予想されます。
以上


ーーー注記ーーー

本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。

ーーー注記ーーー

本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上

2017年12月03日

豪州実態指標「小売売上高」発表前後のAUDJPY反応分析(2017年12月5日09:30発表結果検証済)

以下、「?T.反応要点」「?U.指標要点」を事前投稿し、「?V.結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「?V.結果検証」のタイトル行付近に記載しています。



?T.反応要点

2017年12月5日09:30に豪州実態指標「小売売上高」が発表されます。今回発表は2017年10月分の集計結果です。

今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。

1710豪州小売売上高110.png

過去の反応推移と相関分布も下図に示しておきます。

1710豪州小売売上高250.png

最も指標結果に素直に反応しがちな直後1分足跳幅は18pipsと、平均的な反応程度しかありません。

但し、ここ3回は大きく反応しています。その原因は、直近の指標発表結果が市場予想を大きく下回っていたため、と思われます。直近の発表結果が市場予想を大きく下回ったことも、納得しやすい理由があるように思われます。それは後記詳述します。

直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1を超えており、平均的には反応が伸びやすい指標だと言えます。
第一象限と第三象限を結ぶ傾き1の対角線(青線)を見る限りでは、直後1分足が陽線のときより陰線のときの方が反応を伸ばしているように見受けられます。


?U.指標要点

公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。

【1. 指標概要】

豪州小売売上高は、小売・サービス業の月間売上高をサンプル調査に基づき算出しています。発表は豪連邦統計局(ABS:Australian Bureau of Statistics)が行い、翌々月上旬に月次発表されています。

豪州と言えば資源関連企業に注目が集まります。ところが、資源関連企業の収益は、資源価格が頭打ちとなるにつれて伸び悩んでいます。もともと豪州GDPに占める鉱工業生産高は1割程度しかないのです。その一方、非資源関連企業の収益は、小売を中心に長期的に拡大傾向と見なされています。

その背景として、豪州は毎年約20万人の移民を受け入れており、2050年までに自然増も含めて約40%の人口増加が見込まれています。豪州は先進国で人口増加率の最も高い国のひとつです。最近の小売売上高は、この人口増加と低金利と豪ドル安が個人消費を押し上げており、今後も堅調に拡大していくと見込まれています。


【2. 既出情報
(2-1. 過去情報)

過去の本指標の推移は下図の通りです。下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。

1710豪州小売売上高210.png

上図期間において、前月比がプラスだったことは22回、マイナスだったことは5回、同値(0%)が6回です(プラス率が81%、本ブログでは同値を計算に入れていない)。マイナスとなったときもマイナス幅は小さいので、この間の小売売上高(消費)は好調だったと言えるでしょう。
ところが、2017年4月分(+1.0%)と前々回発表の2017年8月分(△0.6%)は、突出して大きなブレとなっています。今年2017年のグラフ推移は、過去と比較して少し様子が異なります。これは重大な兆候かも知れません。

4月分が突出したピークとなったことには納得しやすい理由があります。
3月末にクィーンズランド州のサイクロンによる浸水被害の影響と解釈されています。2月分・3月分が珍しく2か月連続で前月比マイナスだったことも、4月分のピークを突出させた原因と考えられます。
納得しやすい理由があることは良いことです。サイクロン被害は、一時的に買い替え需要を喚起しても、家計にとってダメージが大きいので、その後の消費が減少していったことにも納得がいきます。

その一方、突出したボトムとなった8月分は、原因がはっきりしません。
最近のRBA金融政策発表時の声明通りならば、家計債務が増大している一方で賃金が伸びていないため、ということになります。がしかし、気になる点として、あまり報道されていないものの、豪統計局は試験的にネット販売額の公開を始めており、これが8月分は前月比で+6.3%と、大きく伸びています。何と、このネット販売額は小売売上高に含まれていないそうです(出典は、確かロイターの同月小売売上高結果の報道記事です)。

ということは、2017年の豪経済は小売(消費)の推移とその理由を踏まえると、見かけほど店舗小売が好調ではないのかも知れません。そして、豪政府が5月頃に発表した交通インフラを中心とした投資計画は、天災復興と次の時代の通販拡大を睨んでのことと捉えれば辻褄が合います。
店舗小売売上高が減少しても、通販で売上がカバーできれば、実質的な消費量は変わりません。利便性が高まれば(生産性向上)、それは一時的に失業率悪化に繋がっても、いずれ成長率を押し上げがることに繋がるはずです。だからRBAは、当面、緩和政策維持を続ける必要があるのでしょう。


(2-2. 過去反応)

過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。

直前10-1分足は過去平均跳幅が7pipsです。この跳幅が10pips以上となったことは過去5回あります(頻度15%)。
この5回の直後1分足跳幅の平均は22pipsで、これは直後1分足跳幅の全平均18pipsよりもやや大きい程度です。また、この5回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは2回です。
よって、直前10-1分足が大きく跳ねても、発表直後の反応程度が大きいとも、同じ方向に反応するとも言えません。直前10-1分足の動きは、指標発表後の反応の予兆とは見なせません。

1710豪州小売売上高310.png

直前1分足は過去平均跳幅が5pipsです。この跳幅が10pips以上となったことは過去3回あります(頻度9%)。
この3回の直後1分足跳幅の平均は13pipsで、これは直後1分足跳幅の全平均18pipsよりも小さくなっています。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは1回です。
よって、直前1分足が大きく跳ねても、発表直後の反応程度が大きいとも、同じ方向に反応するとも言えません。直前1分足の動きは、指標発表後の反応の予兆とは見なせません。

1710豪州小売売上高320.png

直後1分足の過去平均跳幅・値幅は各18pips・12pipsです。ヒゲの長さは平均して33%です。
直後1分足跳幅が30pipsを超えたことは過去5回あります(頻度15%)。このときの指標発表から1分を過ぎてから10分間に直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばしたことは2回しかありません。

1710豪州小売売上高330.png

直後11分足の過去平均跳幅・値幅は各22pips・15pipsです。ヒゲの長さは平均して32%です。
直後11分足跳幅が30pipsを超えたことは過去8回あります(頻度24%)。このときの直後11分足のヒゲの長さは平均して7pipsです。

1710豪州小売売上高340.png


【3. 定型分析】

以下、本指標への反応の特徴を定型分析で調べておきます。
定型分析は、指標一致性分析・反応一致性分析・反応性分析を行います。

指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。

1710豪州小売売上高430.png

本指標の市場予想は「やる気あるのか」というぐらい+0.4%付近を保っています。
その結果、2015年1月分以降、前回2017年9月分までの33回の発表で、発表結果が市場予想を上回ったことは9回、下回ったことは19回、同値が5回です。事前差異のプラス率が63%、事後差異のマイナス率が68%、実態差異のマイナス率が60%と、少し偏りがあります。
市場予想は高めで、発表結果は低めで、発表結果が良いときはぐぃと上がり悪いときはゆっくり下がっていく傾向があるようです。

事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は各86%・82%となっており、市場予想に対する発表結果の良し悪しにはかなり素直に反応しています。

次に、反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。

1710豪州小売売上高420.png

直前1分足は陰線率が87%と、異常な偏りがあります。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が84%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆候はありません。

そして、反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析では、指標発表後の追撃の容易さを判断します。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。

1710豪州小売売上高410.png

直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。指標発表直後は、そのまま反応を伸ばすと反射的に取引するしかありません。だから、その84%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅よりも直後11分足跳幅が伸びた確率を調べてみると、それは67%でした。

初期反応の方向を確認次第追撃を開始しても、直後1分足と直後11分足が方向一致さえすれば、3回に2回は反応を伸ばしています。全ての場合においても、0.84?0.67=56%と、2回に1回以上は反応を伸ばしています。
初期反応を確認したら、早期追撃開始です。

次に指標発表から1分経過時点では、直後11分足終値が直後1分足終値よりも反応を伸ばしていたことが50%です。
50%では、安心して追撃を行えません。先に早期追撃開始で得たポジションは、利確の機会があればさっさと利確すべきだと言えます。もしその後も反応を伸ばす勢いがあれば、再追撃は短期取引の繰り返しで行った方が良いでしょう。


【4. シナリオ作成】

以上の調査・分析結果に基づく本指標の特徴は以下の通りです。

  • 反応程度は平均的(直後1分足跳幅の平均18pips)で、反応方向は指標結果の良し悪しに素直(事後差異と直後1分足の方向一致率は86%)です。
    但し、直近3回は大きく反応しています。もともと2017年に入ってからは、4月分以降のサイクロン被害の復興需要と見られる動きを除けば、小売売上高が減少していると見なせます。

  • 本指標の市場予想は「やる気あるのか」というぐらい+0.4%付近を保っています。
    その結果、2015年1月分以降、前回2017年9月分までの33回の発表で、発表結果が市場予想を上回ったことは9回、下回ったことは19回、同値が5回です。事前差異のプラス率が63%、事後差異のマイナス率が68%、実態差異のマイナス率が60%と、少し偏りがあります。
    市場予想は高めで、発表結果は低めで、発表結果が良いときはぐぃと上がり悪いときはゆっくり下がっていく傾向があるようです。

  • 直前10-1分足や直前1分足が大きく跳ねることがあります。けれども、こうした動きは、指標発表後の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目に遭わないように気を付けましょう。
    あと、直後1分足と直後11分足は平均的に30%強のヒゲを形成することを目安として覚えておきましょう。

こうした特徴も踏まえた上で、本指標取引のシナリオは以下の通りです。

  • 直前1分足は陰線と見込みます。
    論拠は、過去の陰線率の高さです。但し、たまに陽線側に振れると大きな陽線となりがちです。過去の上ヒゲの長さも参考にして、2-3pipsも陽線側に振れたら安全のため損切します。

  • 指標発表直前に売ポジションを取り、発表直後の跳ねで利確・損切です。
    過去の事後差異のマイナス率が68%となっており、事後差異と直後1分足の方向一致率が86%です。但し、外したときのダメージが大きいため、あまりお勧めしません。

  • 追撃は、初期反応方向を確認次第行い、短期利確を狙います。複数回の追撃を行う場合も、短期取引の繰り返しで行います。
    論拠は、直後1分足と直後11分足の方向一致率が84%と高いものの、直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が反応を伸ばしていたことが50%だからです。また、直後1分足と直後11分足は平均的に30%強のヒゲを形成することを目安として覚えておきましょう。高値(安値)掴みをするぐらいなら、取引せずに見ていた方がマシです。

以上


2017年12月5日09:30発表

以下は2017年12月8日に追記しています。
?V.結果検証

【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)

本指標発表結果及び反応は次の通りでした。

1710豪州小売売上高510.png

結果は前回・予想を上回り、陽線で反応しました。

予想を上回ったのは、2017年6月分以来です。
分析記事に記したように、店舗売上が前月比+0.5%に対し、これには含まれていないネット通販は10月分が前月比+11.3%だったそうです。

(5-2. 取引結果)

取引できませんでした。
この発表時刻では、やっぱり難しいですね。


【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)

事前調査分析内容を、以下に検証します

  • 直後1分足跳幅は18pipsで、この値は過去平均と同じです。指標結果が市場予想よりも良かったため、直後1分足は陽線でした。

  • 本指標の市場予想は「やる気あるのか」というぐらい+0.4%付近を保っています。今回は+0.3%の予想でした。

  • 今回は、直前10-1分足も直前1分足も大きく動きませんでした。
    直後1分足と直後11分足は、過去には平均的に30%強のヒゲを形成しています。今回はあまりヒゲを形成しませんでした。

(6-2. シナリオ検証)

取引はできなかったものの、事前準備していたシナリオを検証しておきます。

  • 直前1分足は陰線と見込んでいました。結果は陰線でした。

  • 指標発表直前に売ポジションを取り、発表直後の跳ねで利確・損切を行うつもりでした。
    結果は陽線で、もし取引していたら15〜18pipsの損切となっていたでしょう。

  • 追撃は、初期反応方向を確認次第行い、短期利確を狙うつもりでした。複数回の追撃を行う場合も、短期取引の繰り返しで行うつもりでした。
    結果は、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が1pips上回りました。終値同士では2pips下回りました。これでは、追撃によって利確するのは難しかったと思われます。

本ブログを始めてからの成績を下表に纏めておきます。

1706豪州小売売上高530.png

2017年は本指標で6回の取引を行いました。
結果は、指標単位で5勝1敗(勝率83%)、シナリオ単位で14勝3敗(勝率82%)です。1回当たりの平均取引時間は3分39秒で、年間収益が66.6pipsで踏まえると、ほぼ理想的取引が行えました。1回当たりの平均利確pipsは11.1pipsで、これは本指標の平均的な反応程度(直後1分足値幅が12pips、直後11分足値幅が15pips)を考慮すると、妥当な数字です。
ただ、発表時刻の関係で、他の豪州指標と同様になかなか取引できない点が残念です。
以上


ーーー注記ーーー

本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。

ーーー注記ーーー

本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上

2017年11月07日

豪州金融政策発表前後のAUDJPY反応分析(2017年11月7日12:30発表結果検証済)

以下、「?T.調査・分析」を事前投稿し、「?U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「?U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。


2017年11月7日12:30に豪州金融政策が発表されます。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。

1707豪州RBA110.png

金融政策発表時は、「市場予想通り現状維持」だった場合と、「市場予想通り政策変更」したときと、「市場予想に反した」ときで、反応が全く異なります。今回の市場予想は現状維持です。

本指標の特徴は以下の通りです。

  • RBAは最近の声明や幹部発言で「当面の政策変更なし」を繰り返し説明しています。
    その結果、直近12回の反応は直後1分足跳幅が12pipsとかなり小さくなっています。前回は僅か5pipsでした。今ではあまり取引に向かない指標となってしまいました。
    今回も「市場予想通り現状維持」だった場合、直後1分足値幅は10pips程度、直後11分足も20pips程度しか動かない、と予想されます。

  • 指標発表前は注意が必要です。
    直前10-1分足はあまり動かず、直前1分足の方が大きく動きがちです。特に、直前1分足は、以前に数10pips動いたことがあり、他の指標のように特に陰線率が高い訳でもないので、この期間に取引を行うことは余計なリスクを負うことに他なりません。

  • 指標発表直後は、幸いというか意外なことに、「市場予想通り現状維持」だった場合、逆ヒゲを形成することが少ないので、あまり心配いりません。10pips以上の逆ヒゲは過去1回(頻度4%)しかありません。
    むしろ注意すべき点は、あまり追撃に向いていない点です。直後1分足と直後11分足は方向一致率こそ80%もあるものの、跳幅同士・値幅同士を比較して反応を伸ばしたことが各39%しかありません。
    但し、直近の4回は続けて直後1分足・直後11分足ともに陰線で、4回とも跳幅同士・値幅同士で陰線側に反応を伸ばしています。

以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 「市場予想通り現状維持」だった場合、直後1分足終値がつく頃に、順張り追撃を開始します。そして、5〜10pipsも取れたら利確です。

以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。


?T.調査・分析

公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。

【1. 指標概要】

RBAとはオーストラリア準備銀行(Reserve Bank Of Australia)のことで、日本の日銀に相当します。RBAの金融政策は、金融政策決定理事会で決定されます。金融政策決定理事会は近年1月を除き毎月第1火曜日に実施されます。

金融政策は、物価を適正水準に保つため中央銀行が行う経済政策です。政策には金融緩和か金融引締という施策があって、政策金利もそのひとつと言えます。
現在、主要先進国で為替レートを適正水準に保とうとする行為は、それがその国の通貨を安くする場合に表向き否定されがちです。がしかし、現実問題として金利が動けば、金利差が広がったときに資金は金利の高い方へと移動します。そして、政策金利を動かした国の通貨の為替レートが動きます。


【2. 既出情報
(2-1. 過去情報)

過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。

1707豪州RBA210.png


(2-2. 過去反応)

過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
添付図は、2014年12月以降全ての始値基準ローソク足ですが、コメントは特に断らない限り、そのうち「市場予想通り現状維持」だったときのものです。

まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去2回(頻度8%)あります。
この2回の直後1分足跳幅は23pipsで、これは直後1分足の過去全平均20pipsとほぼ同じです。そして、この2回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回の一致です。
つまり、直前10-1分足の反応が大きくても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。

1707豪州RBA310.png

次に、直前1分足の過去平均跳幅は13pipsです。この跳幅が20pips以上だったことは過去2回(頻度8%)です。
この2回の直前1分足跳幅平均は85pipsにも達しており、何か異常です。こんな予想もつかない動きをし得るときには、取引しないに越したことがありません。

1707豪州RBA310.png

そして、直後1分足の過去平均跳幅は20pipsです。この跳幅が30pips以上だったことは7回(頻度27%)です。とは言え、この7回は全て昨年以前に起きており、2017年に入ってからは一度もこれほど大きく跳ねたことがありません。

1707豪州RBA330.png

直後11分足は、過去平均跳幅が31pips、過去平均値幅が19pipsです。平均的なヒゲの長さは12pipsにもなるので、高値(安値)掴みに気を付けましょう。

1707豪州RBA340.png


【3. 定型分析】

反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。

金融政策発表時の分析では、指標一致性分析を行いません。
また、以下の分析は「市場予想通り現状維持」だった場合だけを取り上げて行っています。

まず、反応一致性分析の結果を下図に示します。

1707豪州RBA420.png

直後1分足は陽線率が62%と、目立つ偏りではありません。けれども、直後11分足は陽線率が72%です。
ほとんどの指標では、直後1分足の方が直後11分足よりも偏りが大きくなっているのに、これは珍しい特徴です。

そして、発表前のローソク足方向が、発表後のローソク足方向を示唆している兆しはありません。どちらかと言えば、指標発表前の動きに対し、指標発表後は逆方向に振れることが多いようですが、極端な確率でそれが起きているとは言えません。

直後1分足と直後11分足の方向一致率は80%です。

次に、反応性分析の結果を下図に示します。

1707豪州RBA410.png

まず、以前に比べて反応が小さくなっていることがわかります。過去12回の発表で、直後1分足跳幅は12pipsしかありません。金融政策発表なのに、これでは他の指標と比べて、むしろ反応が小さい指標になってしまっています。

直後1分足と直後11分足との方向一致率は64%と低く、そしてその64%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各61%しかありません。全ての場合で、直後1分足を超えて直後11分足が伸びたことは、跳幅にせよ値幅にせよ39%しかありません。
逆に、直後11分足終値が直後1分足値幅を削ったり、直後1分足とは反転したことは61%なので、これなら直後1分足跳値を狙って逆張りした方が勝率が稼げるぐらいです。


【4. シナリオ作成】

以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 「市場予想通り現状維持」だった場合、直後1分足終値がつく頃に、順張り追撃を開始します。そして、5〜10pipsも取れたら利確です。

以上



2017年11月7日12:30発表

以下は2017年11月12日に追記しています。
?V.発表結果検証

【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)

本指標発表結果及び反応は次の通りでした。

1707豪州RBA510.png

結果は「市場予想通り現状維持」で、反応は陽線でした。

会合後の声明文の要点は、次の通りでした。
成長率は、今後数年間でおよそ平均3%増になると予想しています。但し、その障害として、家計収入の伸びが鈍化し、家計債務も高水準となっており、消費の先行きを不透明にしている点を挙げています。
雇用は労働参加率の改善で、各種先行指標が拡大継続との認識を示しました。但し、賃金の伸びは弱いままで、こうした状況は続くことに懸念を示しています。
物価は、まだCPI・コアCPIがともに+2%をやや下回った状態で推移する可能性が高いとの見通しを示しました。上昇ペースはゆっくりで、豪州経済の回復について徐々に加速していくという見通しのままです。
よって、金融政策を現状のまま維持することが経済成長を持続的に安定させ、やがてインフレ目標(2-3%)を達成することに役立つと判断した、というのが結論でした。

内容的には、前月までとそれほど変化していません。発表直後の速報で「今後数年で3%の見通し」と流した通信社もあったらしく、それが陽線での反応に結び付いたのかも知れません。

(5-2. 取引結果)

取引結果は次の通りでした。

1707豪州RBA520.png

5-10pipsで利確のつもりでしたが、手こずりました。


【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)

事前調査分析内容を以下に検証しておきます。

  • 今回も「市場予想通り現状維持」でした。RBAは2016年9月以降、政策金利を1.5%据え置きを継続しています。
    その結果、直近12回の反応は直後1分足跳幅が12pipsとかなり小さくなっていました。今回も直後1分足値幅は7pips(跳幅は16pips)、直後11分足も15pipsと、以前とは比べようもない小さな反応でした。

  • 指標発表前の動きに注意を喚起しておきましたが、今回は
    直前10-1分足も直前1分足も2pipsしか動きませんでした。

  • 指標発表直後の逆ヒゲは小さく、今回は反転せずに反応を伸ばしていきました。直近の4回は続けて直後1分足・直後11分足ともに陰線で、4回とも跳幅同士・値幅同士で陰線側に反応を伸ばしていたものの、今回は陽線側に反応を伸ばしました。


(6-2. シナリオ検証)

事前準備していたシナリオは次の通りです。

  • 「市場予想通り現状維持」だった場合、直後1分足終値がつく頃に、順張り追撃を開始します。そして、5〜10pipsも取れたら利確です。

問題ありません。

下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
1707豪州RBA530.png

以上



ーーー注記ーーー

本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。

ーーー注記ーーー

本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上

2017年10月23日

嫌な指標

世の中、嫌なヤツというのがいるように、嫌な指標というのがあります。
2017年10月25日09:30に、豪州7-9月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。こいつです。

というのも、下図の指標発表時点基準四本足チャートをご覧ください。

1709豪州QCPI312.png

これら5つの四本足チャートは、本指標発表前後のAUDJPYの反応です。共通項は、直前1分足が10pips以上跳ねた事例です。そうしたことは、2013年1-3月期以降前回発表まで5回(頻度28%)ありました。

この5回のうち、上図左の3回は直前1分足と直後1分足との方向が一致した事例です。一方、上図右の2回は一致しなかった事例です。
もし左の3回で取引していたなら、おかしいんじゃないか、と思わせる内容です。だって、事前に指標発表後の反応方向がわかっているかのように、指標発表前から同じ方向に大きく動いているからです。でもそれは冤罪です。右の2回で取引していたなら、別の意味でおかしいんじゃないか、と思ったハズです。
ただ、どっちで負けても、どうも気分が悪そうです。

ちなみに、これら5回の市場予想と発表結果を参考までに下図に示しておきます。緑の四角で囲まれたときが左の3回、赤の四角で囲まれたときが右の2回です。

1709豪州QCPI212.png

別に、予想と結果が大きく乖離したとき、大きく反応している訳ではないようです。予想と結果が大きく乖離しそうなとき、とは違いますが、直前1分足が大きく動く理由がわかりません。それなのに、前述のように、直前1分足と直後1分足の方向が一致しても一致しなくても嫌な感じが残るのです。

そんなことが過去18回のうち5回も起きる指標は嫌な指標です。この指標はもっと勉強してから取引することにします。
以上


2017年10月22日

4-5-2. 豪州経済実態指標(2017年10月版)

豪州4-6月期GDP前年比は+1.8%でした。2016年4-6月に+3.3%に達して以降、やや低調です。
当初、この原因は中国経済の失速が挙げられていました。がしかし、2016年11月分貿易収支が2年8か月ぶりに黒字転換し、2017年年初からの貿易黒字は100億AUDを超えました。それにも関わらず、GDP前年比が伸び悩んでいる原因のひとつは、2015年7-9月期〜2016年4-6月期までが高すぎた、と解釈すべきです。
今回2017年4-6月期分の発表までは、2016年4-6月期前期比の△0.5%が含まれていたものの、次回7-9月期分の発表からは通年プラスデータのみの集計となります。単なる集計期間の問題だけでも、次回からは数値改善となるでしょう。

RBA見込みでは、2019年〜2020年の成長率を3%と見込んでいます。一方、IMFは2017年の成長率を3.1%、2018年を3.0%と見込んでいます(2017年4月時点の見通し) 。2016年10月時点では、各0.4%・0.1%と見込んでいたのだから、かなり大幅な上方修正です。
ともあれ、RBA見通しに比べて、IMFは豪州経済の回復を早く見込んでいることになります。

【4-5-2.(1) 経済成長】

9月6日に発表された豪州4-6月期GDP前年比は+1.8%でした(前回1-3月期は+1.7%)。直近ボトムは2017年1-3月期の+1.7%、直近ピークは2015年4-6月期の+3.3%です。まだまだボトム付近に停滞しています。
次回発表は12月上旬です。

 (分析事例) 豪州四半期GDP (2017年6月7日発表結果検証済)

反応は比較的安定してかなり大きく、発表後に初期反応の値幅を削ることはあっても、反転する確率は低いため、小さな負けを覚悟して順張り追撃を繰り返していれば、年間を通して4回の取引でプラスにできるでしょう。
こういうやり方に徹して収益を上げるためには、同じやり方を繰り返す・高値(安値)掴みをするぐらいなら取引しない、という鉄壁の意思が必要です。

【4-5-2.(2) 実態指標】

豪州は先進国で最も今後の人口増が期待される国です。人口増は消費指標や小売指標に対し長期的改善をもたらします。

また、以前は鉱山投資が盛んでした(鉱山ブーム)。がしかし、豪政府・RBAは鉱山ブームに依存した経済体質からの脱却を目指しています。現在、投資資金は住宅購入に向かっており、出資元は中国が最大となっています(2016年)。RBA指導により豪主要銀行は、投資目的の住宅ローンの金利を引き上げました(2017年5月)。

鉄鉱石を中心とする鉱工業は、中国の高炉整理の話からわかるように、かつての盛況を取り戻すことは当面ないでしょう。製造業は、内需規模が小さく、輸出基地としての地理的不利を抱え、人件費も周辺諸国に比べて高い、という不利を抱えています。大手自動車メーカーが製造拠点を次々と撤収したのは、記憶に新しいところです(2016〜17年)。

(2-1)小売

あまり大きく反応せず、しかも最初に跳ねてもその後の反応が伸び悩む傾向があります。こういう指標は追撃が難しいので、あまり大きな利確が期待できません。取引が難しい指標と言っても良いでしょう。

 (分析事例) 小売売上高 (2017年8月4日発表結果検証済)
 (分析事例) 四半期小売売上高 (2017年5月9日発表結果検証済)

10月5日に発表された8月分小売売上高前月比は△0.6%で、直近ピークの2017年4月の+1.0%から4か月連続減少し、マイナス転換してしまいました。△0.6%という数字は、2015年以降で最も低い数字です。

(2-2)住宅

主要指標として、住宅建設許可件数、住宅ローン件数、四半期住宅価格指数、が挙げられます。取引は、四半期住宅価格指数でのみで行っています。

四半期住宅価格指数は、前期比・前年比(同期比)が発表され、反応方向への影響は(前年比>前期比)です。その前年比は、市場予想後追い型(前回と今回の市場予想と発表結果の大小関係が約70%以上同じままになる)という特徴があります。
よって、反応こそ小さい(直後1分足跳幅の過去平均が10pips未満)ものの、指標発表前から一方向に伸びがちで、取引しやすい指標だと言えるでしょう。

(分析事例) 四半期住宅価格指数 (2017年6月20日発表結果検証済)

豪州には投資資金が流入しており、ここ最近のRBA金融政策決定理事会は住宅価格高騰への懸念を継続的に示しています。最近、その対策として投資目的住宅のローン金利を引き上げたものの、2017年9月19日に発表された4-6月期住宅価格指数ではまだその効果が見受けられません。4-6月期は前年比10.1%超の価格指数上昇となっていました。

次回、7-9月期分は12月に発表されます。
下表、Aは住宅ローン件数前月比、Bは住宅建設許可件数前月比、Cが四半期住宅価格指数前期比、です。

     A    B    C 
4月分 △1.9% +4.4%  ー
5月分 +1.0% △5.6%  ー 
6月分 +0.5% +10.9% +1.9% 
7月分 +2.9% △1.7%  −
8月分 +1.0% +0.4%  −
9月分   未    未    未

(2-3)生産

あまり反応しないので注目していません。
【4-5-2.(3) 貿易指標】

2016年11月分で2年8か月ぶりに黒字転換しています。2017年年初からの貿易黒字は100億AUDを超えました。
8月8日に豪貿易相は「TPPを(離脱した米国を除く)残る11か国で合意を確保したい」と述べ、その時期は「11月APEC(アジア太平洋経済協力会議)での大筋合意を期待している」と述べていました。

9月7日に7月分貿易収支が発表されました。結果は+4.60億AUDでした。2016年末から2017年年初にかけてのピークからどちらかと言えば下降中です。
10月5日に8月分貿易収支が発表されました。結果は+9.89億AUDでした。前月発表された7月分も+4.6億AUDから+8.09億AUDに修正されました。
次回、9月分貿易収支は11月2日に発表予定です。
以上

2017年09月26日

NZ金融政策発表時のNZDJPY反応分析(2017年9月28日05:00発表結果検証済)

以下、「?T.指標予想要点」「?U.過去調査詳細」を事前投稿し、「?V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「?V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。

?T.指標予想要点

2017年9月28日05:00にRBNZ(NZ中銀)金融政策が発表されます。

今回の市場予想と前回結果は次の通りです。

1709NZ政策金利110.png

そして、これまでの政策金利の市場予想と発表結果を下図に一覧します。

1709NZ政策金利210.png



今回の市場予想は現状維持です。以下、特に断らない限り、過去の「市場予想通り現状維持」だったときだけを集計・取り上げて記します。
2013年1月以降36回の発表のうち、そうした事例は25回あります。

本指標の特徴は以下の通りです。

  • 反応程度がかなり大きいものの、反応方向は事前予想できません。
  • 過去の傾向では、発表後の追撃を早期参加・短期利確で開始します。発表から1分を過ぎたら上下動の波にうまく乗って順張り短期追撃の繰り返しが良いでしょう。
  • •今回の市場予想は、直近のRBNZ声明・幹部発言に沿った予想です。前回声明では「当面の利上げなし」、その後も同様の発言がRBNZ総裁からありました。

以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 指標発表後の追撃を早期開始し、短期利確を繰り返します。

以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。


?U.過去調査詳細

ここ最近の流れを記しておきます。

NZ1-3月期GDP前年比は+2.5%で、10-12月期の+2.7%から僅かに低下しました。でも+2.5%です。地震復興需要が一段落ついたら、人口増とそれに伴う住宅投資拡大が経済成長を支えています。直近の好材料は、主要産品の乳製品国際価格が5月後半から持ち直していることです。そして、1-3月期CPI前年比は+2.2%で、RBNZ目標中心値の2%を上回りました。

それにも関わらず、RBNZは6月22日に「2019年の遅い時期まで利上げを開始しない見込み」と発言しています。インフレが加速する懸念よりも、目標以下のインフレ状態が続くことを懸念しています。ただ、同総裁は9月退任予定(2017年2月7日発表)で、その後は2018年3月まで副総裁が代行を務めると発表されています。

8月10日、RBNZ金融政策発表後の会見で、RBNZ総裁は「(現在の)政策を相当期間に亘って続ける」という方針を示しました。これは既に表明されていたことなので、新鮮さはありません。
緩和継続の理由について、1-3月期成長率が前期比+0.5%だったことを挙げて「低金利で景気を下支えする」と述べました。インフレ率も低下したものの「そのうち目標範囲に戻る」との見方も示しました。
前述の通り、成長率前年比は+2.5%、インフレ率(CPI)前年比は+2.2%ですから、わざわざ前期比を持ちだしたことになります。

そして「NZDの下落を望む」と発言したようです。これもいつも通りの発言です。
ただ、ロイターの解説に依れば「RBNZはは歴史的に外為市場への介入には極めて消極的な姿勢」にも関わらず、「介入能力がある」ことを強調したそうです。そのためか、RBNZ総裁会見が行われた10:00頃から、NZDJPYは大きく下げました。

9月21日に発表された4-6月期GDPは、前期比+0.8%(前期は+0.6%)、前年比+2.5%(前期と同値)、でした。4-6月期は今年度最大になると見込まれていたため、成長率+2.5%は「不十分」との見方もあるようです。

9月23日には、議会選挙が行われ、与党が第1党を維持しました。がしかし、単独では過半数に届かず、政権を維持できるかどうかは、これから少数政党との連立交渉次第という情勢になりました。与党第1党と野党第2党の議席数は58:45です(議席数は120)。

これまでのRBNZの声明、成長率不十分、議会多数派工作、という状況では、金融政策も現状維持しかありません。

ーーー$€¥ーーー

本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。

1709NZ政策金利120.png

最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で43pipsです。分布は23-65pipsの範囲に64%が収まります。


反応性分析の結果を下図に示します。

1709NZ政策金利410.png

直後1分足と直後11分足との方向一致率は92%です。そして、その92%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。

そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは52%です。52%という数字は、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。伸びるか伸びないかが半々ですから、無理する必要なんてありません。

【シナリオ作成】

以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 指標発表後の追撃を早期開始し、短期利確を繰り返します。

以上



2017年9月28日05:00発表

以下は2017年10月5日に追記しています。
?V.発表結果検証

【5. 発表結果】
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。

1709NZ政策金利510.png

取引できませんでした。
以上



ーーー注記ーーー

本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。

ーーー注記ーーー

本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上

2017年09月17日

4-5-1. 豪州・NZ政策決定指標(2017年9月最終版)

NZ指標は、ここに挙げるRBNZ(NZ中銀)金融政策発表時のみを扱っています。

そのRBNZ・RBA(豪中銀)は、ともに「当面の利上げなし」と説明しています。そのため、以前に比べて反応が小さくなっています。両指標は大きく反応する上、一方向に反応が伸びがちで追撃が容易だっただけに残念です。

本項9月は一度も取引しないまま終わりました。


【4-5-1.(1) 金融政策】

2017年9月5日に発表されたRBA金融政策は「市場予想通り現状維持」でした。

RBA総裁は、声明で「RBAは豪経済が来年にかけて徐々に上向くと予想しており、最近のデータはこれを裏付けつつある」と発言しました。 一方、同日に「完全雇用が実現してコアインフレ率が目標レンジ2-3%の中央に達するには、まだ暫く時間がかかる」ため「景気刺激策は当面の間適切だということだ」と発言しています。 ここでいう「景気刺激策」は「政策現状維持」のことを指しています。

この発言の背景として、以前にRBA総裁は「利下げが家計債務の伸びを加速させ、国内経済の中期的なリスクが増したかもしれない」との懸念を示したことを思い出す必要があります。RBA総裁は「既に高水準の家計債務を更に増加させるような政策金利は、公共の利益にならない」と発言しました。

つまり、「家計債務を増大させるから利下げはできない。まだ暫く時間がかかるものの、完全雇用に近づいてコアインフレ率が2.5%付近に達するまでは利上げも考えない」が一連の発言要旨となります。だったらそう言え、です。

同時発表された声明における経済見通しも、ほぼマンネリ化してきました。結果、発表直後1分足跳幅が過去全平均では30pipsもあるのに、直近3回平均では20pips、今回は8pipsまで小さくなってしまいました。もう市場は以前ほどRBA金融政策発表に注目していないのです。
次回発表は10月3日です。

 (分析事例) RBA金融政策 (2017年8月1日発表結果検証済)
 (分析事例) RBA金融政策理事会議事録 (2017年6月20日公表結果検証済)

RBA金融政策発表時の直後11分足は陽線率が73%です。がしかし、直後1分足の陽線率は61%とそれより小さくなっています。陽線率・陰線率の偏りが、直後11分足の方が大きいというのは珍しい特徴です。
最近は発表内容のマンネリ化で反応が小さくなっています。そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率も64%となり、追撃の旨味がなくなってきました。

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NZ1-3月期GDP前年比は+2.5%で、10-12月期の+2.7%から僅かに低下しました。でも+2.5%です。地震復興需要が一段落ついたら、人口増とそれに伴う住宅投資拡大が経済成長を支えています。直近の好材料は、主要産品の乳製品国際価格が5月後半から持ち直していることです。そして、1-3月期CPI前年比は+2.2%で、RBNZ目標中心値の2%を上回りました。

それにも関わらず、RBNZは6月22日に「2019年の遅い時期まで利上げを開始しない見込み」と発言しています。インフレが加速する懸念よりも、目標以下のインフレ状態が続くことを懸念しています。ただ、同総裁は9月退任予定(2017年2月7日発表)で、その後は2018年3月まで副総裁が代行を務めると発表されています。

8月10日、RBNZ金融政策発表後の会見で、RBNZ総裁は「(現在の)政策を相当期間に亘って続ける」という方針を示しました。これは既に表明されていたことなので、新鮮さはありません。

緩和継続の理由について、1-3月期成長率が前期比+0.5%だったことを挙げて「低金利で景気を下支えする」と述べました。インフレ率も低下したものの「そのうち目標範囲に戻る」との見方も示しました。
前述の通り、成長率前年比は+2.5%、インフレ率(CPI)前年比は+2.2%ですから、わざわざ前期比を持ちだしたことになります。

そして「NZDの下落を望む」と発言したようです。これもいつも通りの発言です。
ただ、ロイターの解説に依れば「RBNZはは歴史的に外為市場への介入には極めて消極的な姿勢」にも関わらず、「介入能力がある」ことを強調したそうです。そのためか、RBNZ総裁会見が行われた10:00頃から、NZDJPYは大きく下げました。

ところが、です。
8月23日にNZ財務省は「2019-21年は財政黒字が縮小し成長が鈍化すると予想し、RBNZは2018年半ばから利上げを行うと予想」との見解を示しました。

 (分析事例) RBNZ政策金利 (2017年8月10日発表結果検証済)

RBNZ政策金利の発表では「市場予想通り現状維持」のときにも反応が大きく、一方向への反応が続きがちです。無理をしなくても、反応方向を確認してから追いかけてポジションが取っても、pipsが稼ぎやすいのです。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は90%に達し、そのうち直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばしたことも90%に達しています。発表から1分を過ぎたら利確の機会を狙い、直後1分足値幅を下回ったら、順張り再追撃を行えば良いのです。直後1分足と直後11分足が反転したことなど、過去10%も起きていません。
現地夏時間は5時発表(日本では冬)なので、起きられないというのが最大の問題です。


【4-5-1.(2) 財政政策】

豪政府は今後10年でインフラ整備に750億AUDを投じることを発表しています。主な投資先は鉄道・滑走路・道路となっており、政府説明は以前の鉱山ブーム時代の経済構造からの産業構造転換を目指すため、ということのようです。
2016年の豪GDPは1.7兆AUDなので、対GDP比0.44%/年と捉えた方がわかりやすいでしょう。インパクトを日本のGDP規模に置き換えれば、単年度2兆円程度ということになります。いわば、日本が東京五輪を毎年やるぐらい、インフラ整備に力を入れるのです。

【4-5-1.(3) 景気指標】

豪州・NZの景気指標では取引を行っていません。両国の代表的な経済誌もわからないし、内政・外交の主要議題も掴めません。むしろ、景気指標を取引対象としてでなく、総合的な雰囲気を掴む手段として利用する方が有用です。

9月12日に発表された8月分NAB企業景況感指数は+15でした。貿易収支が黒字転換した2016年11月から1か月遅れで、景況感がほぼ+10以上で高位安定しつつあります。+15はこれで3か月連続で、直近ピークは2017年1月分の+16です。
次回発表は10月10日です。



【(4) 物価指標】

四半期毎に発表される豪州物価指標はCPIに注目しておけば十分です。輸入物価指数やPPI(生産者物価指数)はほぼ反応せず、取引には不向きです。

RBA見解(3月)では、インフレ率(CPI前年比)が2017年に2%を上回る、と予想していました。8月1日のRBA声明でもこの予想は踏襲されています。ただ、賃金の伸び悩みが物価上昇を抑えているとの見解も、ずいぶん前から踏襲されています。

7月26日に発表された4-6月期CPI前年比は+1.9%でした。1-3月期2.1%を下回ったものの、まだ2016年1-3月期を起点とする上昇基調は維持されています。
次回四半期CPI発表は10月25日です。

 (分析事例) 四半期消費者物価指数 (2017年7月26日発表結果検証済)
 (分析事例) 四半期生産者物価指数 (2017年1月27日発表結果検証済)

四半期CPIはかなり大きく反応します。何より、直後1分足終値より直後11分足終値が同方向に伸びていた確率が高いのです。こうした指標では、無理して発表時刻を跨いでポジションを持たずに、追撃で安全にpipsを稼ぐ方針に徹する方が良いでしょう。


【4-5-1.(5) 雇用指標】

8月1日のRBA金融政策発表時の声明では、(a) 様々な先行指標が今後雇用が継続的に伸びることを示している、(b) 失業率は今後多少低下する、(c) 賃金の伸びは依然として低迷しており今後も暫く続く、との見解を示していました。

8月17日に発表された7月分雇用統計では、新規雇用者数が+2.79万人(前回+1.4万人)と増えたものの、常勤雇用者数が△2.03万人(前回+6.2万人)と減少しました。この結果を受けた反応は、発表と同時にどーんと陰線側に跳ね、すぐに陽線側へと転じました。がしかし、陽線側への反応は伸び悩み、発表から1分を過ぎる頃には陰線側に転じました。

9月14日に発表され8月分雇用統計では、新規雇用者数が+5.42万人、常勤雇用者数が+4.01万人と増えました。この結果を受けた反応は、発表と同時にどーんと陽線側に跳ね、直後11分足は跳幅・値幅とも直後1分足を超えて反応を伸ばしました。

次回発表は10月19日です。

 (分析事例) 豪州雇用統計 (2017年8月17日発表結果検証済)

本指標での取引には注意が必要です。
かなり大きく反応する指標で、直後1分足値幅方向は指標結果に素直な傾向があります。がしかし、直後1分足の逆跳幅が順跳幅より大きくなることが多々あります(無作為サンプル5回で頻度40%)。指標発表時刻を跨いだポジションを持っているときに、こうした動きをされると、例え分析が当たっていても逆方向に大きく動いたときに損切せざるを得ません。だから、通常のやり方では年間を通して思ったほどに稼げません。

これほど騙しが多い指標では、発表直後でなく、10秒待ってじっくりと追撃ポジションを取らないといけません。10秒待ってポジションが取れるような機会を待つしかありません。発表直後の跳ねで追撃することは諦め、その後の戻りを狙って追撃ポジションを取るべきでしょう。よって、反応が大きい指標の割に稼ぎにくいのです。
でも間違えないように。稼ぎにくくても損するよりマシです。
以上


2017年09月13日

豪州雇用統計発表前後のAUDJPY反応分析(2017年9月14日10:30発表結果検証済)

残念ながら、本指標取引はできそうもありません。それは良いのですが、検証記事もおそらくすぐに出せないでしょう。予めお断りしていおきます。

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以下、「?T.指標予想要点」「?U.過去調査詳細」を事前投稿し、「?V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「?V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。

?T.指標予想要点

2017年9月14日10:30に豪州雇用統計発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。

本指標発表後30分後の11:00には、中国指標「固定資産投資」「鉱工業生産指数」「小売売上高指数」が発表されます。本指標発表後しばらくすると、これら中国指標を睨んだ動きに移行する可能性があります。ご注意ください。

今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。

1708豪州雇用110.png

※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。

本指標の特徴は以下の通りです。

  • 反応程度はかなり大きく(直後1分足跳幅の過去平均36pips)、指標結果の良し悪しに「素直に反応」します。但し、直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応を伸ばしていたことは53%ですから、追撃ポジションの長持ちは避けた方が良いでしょう。

  • 上記「素直に反応」とは、直後1分足の反応方向が、ー5?失業率の差異[%]+2?新規雇用者数の差異[万人]+1?労働参加率の差異[%]、という判別式符号と80%一致していること(プラスならば陽線、マイナスならば陰線)を指しています。
    式の係数の大きさから言えば、失業率0.1%のズレは、新規雇用者数0.4万人に相当します。

  • 直前1分足は過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去7回(23%)あります。この6回の直後1分足は全て、直前1分足と逆方向に反応しています。
    釣られて直前1分足が伸びた方向に追撃すべきでありません。

以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 直前1分足は陰線と見込みます。
  • 直後1分足は、直前1分足が10pips以上跳ねたときに、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。利確/損切は発表直後の跳ねで行います。
  • 追撃は早期開始し、発表から1分程度で早めに行います。
    更に追撃する場合は短期利確の繰り返しで行います。

以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。


?U.過去調査詳細

公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。

【1. 指標概要】

新規雇用者数の調査は、事業者の給与支払い帳簿を基に集計したものです。
指標の良し悪しを見る上で、豪州人口が自然増であることや毎月の離職者も存在することを踏まえると、+1万人ぐらいが中立的な数字ではないでしょうか。

失業率については、リーマンショック前の2008年頃には4.1%まで低下したことがあります。直近では2017年5月分の5.1%が最も低い数字です。

2015年末を境に、それ以前に比べて反応が小さくなっています。それ以前からRBAは利下げを行っていたので、その時期に大きく情勢が変わったことは、FRBの利上げ開始です。米豪金利差が小さくなるスピードが速まると、豪雇用統計への反応が小さくなる理由はわかりません。

とは言え、それでも本指標が大きく反応する経済指標のひとつであることには変わりありません。
大きく反応する指標なので、指標発表時刻を跨いでポジションを取ることは薦められません。大きく動く指標の分析で最も大切なことは、どうすれば発表後の追撃が容易になるか(アテを作っておくか)、です。

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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。

1708豪州雇用120.png

最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で36pipsです。分布は、19-36pips跳ねたことが48%と半分近くあります。それ未満の18pips以下だったことは13%しかありません。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。



【2. 既出情報
(2-1. 過去情報)

過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。

1708豪州雇用210.png

1708豪州雇用220.png

1708豪州雇用230.png

項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。

1708豪州雇用250.png

上表の上3行は、失業率と新規雇用者数と労働参加率の各項目について、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
そして、上から4行目・5行目・6行目は、それぞれ事前差異と直前10-1分足・事後差異と直後1分足・実態差異と直後11分足の方向一致率が高くなるように、係数を求めています。

結果、本指標ではそれらを細かく使い分けるよりも、同じ係数の判別式として使っても、方向一致率があまり変わらないことがわかりました。
判別式は、ー5?失業率の差異[%]+2?新規雇用者数の差異[万人]+1?労働参加率の差異[%]、です。
過去発表時の直後1分足は、この判別式の符号がプラスのとき陽線でマイナスのとき陰線となる正解率が80%となります。

式が表す内容を掴みます。
失業率は、過去のグラフ推移を見ると、市場予想と発表結果のズレが0.1〜0.2%程度です。仮に0.1%上振れした場合を想定すると、この上振れをキャンセルし得る新規雇用者数は、判別式の係数から0.4万人の増加ということになります。

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失業率の市場予想とのズレは0.1〜0.2%程度しか起きない、とします。このとき、新規雇用者数0.8万人以上のズレが起きれば、先の判別式係数の関係で、直後1分足の反応方向は新規雇用者数のズレに依存します。そして、新規雇用者数の0.8万人というズレなんて、しょっちゅう起きていると見立てます。

2015年2月以降前回発表までの30回で、新規雇用者数の前月結果と発表結果が入れ替わったことは17回あります(頻度57%)。そして、前回7月分発表では、発表結果が市場予想を上回りました。よって、今回は発表結果が市場予想を下回る期待的中率は57%ということになります。
たいしてアテになりませんね。



(2-2. 過去反応)

過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。

まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が9pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去11回(頻度35%)あります。この11回の直後1分足跳幅は35pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均37pipsとほぼ同じです。そして、この11回の直前10-1分足と直後1分足の方向は5回(45%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。

1708豪州雇用310.png

次に、直前1分足は過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去7回(23%)あります。この6回の直後1分足跳幅の平均は38pipsで、これは過去全平均37pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません(0%)。
つまり、直前1分足跳幅が平均より少し大きく10pips動いたときは注意が必要です。過去事例では、こうした場合には全て、直前1分足と同じ方向に直後1分足が反応していません(逆か始値終値同値)。釣られて直前1分足が伸びた方向に追撃すべきでありません。

1708豪州雇用320.png

そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は9pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率25%)です。直後11分足のそれは13pips(戻り比率31%)です。かなり大きく反応する指標としては、戻り比率が小さくなっています。

1708豪州雇用330.png

1708豪州雇用340.png



【3. 定型分析】

指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。

まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。

1708豪州雇用430.png

事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ81%・80%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
実態差異と直後1分足の方向一致率が71%となっています。前回結果に対する発表結果の良し悪しの影響も受けています。

次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。

1708豪州雇用420.png

直前1分足は陰線率が86%、直後1分足は陽線率が74%と、偏りが目立ちます。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が24%(不一致率76%)となっており、矛盾はありません。

その他、直後1分足と直後11分足の方向一致率が80%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。

最後に、反応性分析の結果を下表に示します。

1708豪州雇用410.png

直後1分足と直後11分足との方向一致率は80%です。そして、その80%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅を、直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが63%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。

そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは53%となっています。それほど安心してポジションを持ち続けられる数字ではないので、発表から1分を過ぎたら早期利確した方がよいと思われます。その後の追撃は、短期利確の繰り返して行った方が良いでしょう。

【4. シナリオ作成】

以下のシナリオで取引に臨みます。

  • 直前1分足は陰線と見込みます。
  • 直後1分足は、直前1分足が10pips以上跳ねたときに、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。利確/損切は発表直後の跳ねで行います。
  • 追撃は早期開始し、発表から1分程度で早めに行います。
    更に追撃する場合は短期利確の繰り返しで行います。

以上



2017年9月14日10:30発表

以下は2017年9月16日に追記しています。
?V.発表結果検証

【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)

本指標発表結果及び反応は次の通りでした。

1708豪州雇用510.png

結果は、新規雇用者数・常勤雇用者数・労働参加率のいずれも前回を上回り、反応は陽線となりました。

(5-2. 取引結果)

今回は事前記載のように取引ができませんでした。ちょっと用事が。

【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)

事前調査・分析内容を以下に検証します

  • 直後1分足跳幅の過去平均は36pipsで、今回は40pipsでした。指標結果は良い結果で、これに「素直に反応」しました。
    直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応を伸ばしていたことは過去53%ですが、今回はそのまま反応を伸ばしました。

  • 上記「素直に反応」とは、直後1分足の反応方向が、ー5?失業率の差異[%]+2?新規雇用者数の差異[万人]+1?労働参加率の差異[%]、という判別式符号と80%一致していること(プラスならば陽線、マイナスならば陰線)を指しています。
    上式に今回の結果を代入すると解の符号はプラスです。よって、判別式は有効でした。

(6-2. シナリオ検証)

事前準備していたシナリオは次の通りです。

  • 直前1分足は陰線と見込み、結果は陰線でした。
  • 直後1分足は、直前1分足が10pips以上跳ねたときに、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取るつもりでした。今回の直前1分足跳幅は7pipsなので、ポジションは取らなかったはずです。
  • 追撃は早期開始し、発表から1分程度で早めに行うつもりでした。更に追撃する場合は短期利確の繰り返しで行うつもりでした。
    直後1分足はほとんど上ヒゲを残していません。直後11分足は直後1分足よりも反応を伸ばしています。負けにくい取引となっていた、と推察されます。

以上



ーーー注記ーーー

本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。

ーーー注記ーーー

本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上

2017年08月27日

4-5. 豪州・NZ経済指標DB(2017年8月最終版)

豪州の経済指標発表前後の取引はAUDJPYで、NZの経済指標発表前後の取引はNZDJPYで行っています。
いずれも、以前ほどではないにせよ、先進国では高金利通貨であり、被投資国のためリスクにはからっきし弱いという特徴があります。


【4-5-1. 8月概観】

オセアニア通貨は、中国経済指標によって大きく動く傾向があります。

先月7月13日に発表された中国4-6月期GDPは、前年比+6.9%で1-3月期と同値でした。
中国政府の2017年通年成長率の目標は6.5%前後です。上半期は目標を上回り続けたことになります。直近の推移を見ると、2016年7-9月期を境に、それまでの下降基調が上昇基調に転じたようにも見えます。

8月8日に発表された中国7月分貿易収支は+3212億元の黒字でした。前年比は、輸出が+11.2%、輸入が+14.7%、と好調継続です。
対米黒字は6月・7月と続けて+250億ドル台で、2017年1-7月の累計は+1428億ドルに達しています。

8月9日に発表された中国7月分物価指数は、PPI前年比が+5.5%、CPI前年比が+1.5%でした。PPIは直近ピークだった2月の+7.8%から徐々に低下していたものの、5・6・7月は+5.5%で横這いとなっています。一方、CPIは2・3月に1%割れまで落ち込んだものの、その後は1%第で推移しています。PPIとCPIの数字の差が大きい理由は、今度、調べておきます。

8月14日に発表された中国7月分小売売上高・鉱工業生産は、それぞれ前年比で+10.4%・+6.4%でした。

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豪州経済現状認識は次の通りです。

  • 金融政策に関して、2017年は現状維持、2018年は利上げに政策転換、という市場認識があります。
  • 経済全般に関して、成長率3%超への到達時期が2019-2020年頃、という中銀認識があります。
  • 9月の米国FOMCでFRBのBS縮小に動き始めると、AUDUSDの動きが変わる可能性があります。

8月の主要TOPICSは、

  • 与党議員の二重国籍問題で政権支持率が低下し始めたこと
  • 組織的マネーロンダリング防止法違反が見つかったコモンウェルス銀が提訴されたこと
  • 11月APCEで米国抜きTPPの大筋合意を期待していることが表明されたこと

です。
なお、TPPに関してはNZ貿易相も8月18日に同様発言をしました。そこでは「日本とともに」とも添えられており、日豪NZは米国抜きTPP推進に向けて一致しています。

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NZ経済に関しては、前月認知と変更なしです。

NZ経済指標は、豪中米との二国間関係を始め、国内での報道が皆無と言ってもいいぐらいで、よくわかりません。よって、市場予想がほぼ的中し、且つ、それにも関わらず反応が大きいRBNZ(NZ中銀)政策金利にだけ注目しておけば十分です。そもそもNZについては、昨年就任したイングリッシュ首相という名前からして、どこの国の誰なんだかよくわからないぐらいです。


【4-5-2. 政策決定指標】

(1) 金融政策

RBAは「当面の利上げなし」と説明しています。

8月1日に発表されたRBA金融政策は「市場予想通り現状維持」でした。同時発表された声明における経済見通しは次の通りです。曰く、
「世界経済への認識は引き続き上向きで、多くの先進国でトレンドを上回るペースでの成長が見込まれる。中国経済がやや上向いているものの、それはインフラや不動産建設への支出拡大が成長を下支えしているためで、高水準の債務という中期的リスクがある。とは言え、最近のコモディティー価格は、全体的に上昇している。(それなのに)今後の豪州貿易収支は減少していくと見込まれる。」
「国内経済への認識は同じままで、今後数年間の成長率は年率3%前後と見込んでいる。資源開発はほぼ終了しており、鉱業以外への投資の増加が見込まれる。住宅建設は当面高水準に継続した後、徐々に減少していくだろう。小売売上高は最近回復したものの、実質賃金が伸び悩んでおり、高水準の家計債務が消費を抑え込む可能性がある。」
その他、米金利上昇の見通し、豪ドル高への懸念、当面のインフレ率2%の見通し、といった点に触れており、ほぼ前回内容と同じです。

8月11日、RBA総裁は「豪ドル下落は完全雇用やインフレの加速を支援するが、一段の豪ドル高はインフレ上昇や雇用を鈍化させるだろう」と発言しました。そして「極端な状況になった場合には為替介入を行う用意がある」旨、発言しました。
この発言が行われた8月11日のAUDUSDは0.7872で、直近のAUD高値は7月27日の0.8です。極端な状況とはAUDUSDが0.8より高い位置にあるということです。

8月15日に公表された上記議事要旨では、特に新たな情報が補足されていません。
当面、議事録公表ではあまり動かないと予想されます。金融政策変更があまり予想されていない時期の議事録は、あまり反応しません。

 (分析事例) RBA金融政策 (2017年8月1日発表結果検証済)
 (分析事例) RBA金融政策理事会議事録 (2017年6月20日10:30公表結果検証済)

「市場予想通り現状維持」だったときの金融政策発表直後は、2015年以降の陽線率が70%を超えています。とは言え、反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでなかなかポジションが持てません。反応を伸ばし続けることと、初期反応からやや値幅を削ることと、発表後数分で反転してしまうこととは、ざっくり5:3:2となっています。初期跳ねでの高値(安値)掴みに最も気を付け、追撃で稼ぐ指標です。

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NZ1-3月期GDP前年比は+2.5%で、10-12月期の+2.7%から僅かに低下しました。でも+2.5%です。地震復興需要が一段落ついたら、人口増とそれに伴う住宅投資拡大が経済成長を支えています。直近の好材料は、主要産品の乳製品国際価格が5月後半から持ち直していることです。そして、1-3月期CPI前年比は+2.2%で、RBNZ目標中心値の2%を上回りました。

それにも関わらず、RBNZは6月22日に「2019年の遅い時期まで利上げを開始しない見込み」と発言しています。インフレが加速する懸念よりも、目標以下のインフレ状態が続くことを懸念しています。ただ、同総裁は9月退任予定(2017年2月7日発表)で、その後は2018年3月まで副総裁が代行を務めると発表されています。

8月10日、RBNZ金融政策発表後の会見で、RBNZ総裁は「(現在の)政策を相当期間に亘って続ける」という方針を示しました。これは既に表明されていたことなので、新鮮さはありません。

緩和継続の理由について、1-3月期成長率が前期比+0.5%だったことを挙げて「低金利で景気を下支えする」と述べました。インフレ率も低下したものの「そのうち目標範囲に戻る」との見方も示しました。
前述の通り、成長率前年比は+2.5%、インフレ率(CPI)前年比は+2.2%ですから、わざわざ前期比を持ちだしたことになります。

そして「NZDの下落を望む」と発言したようです。これもいつも通りの発言です。
ただ、ロイターの解説に依れば「RBNZはは歴史的に外為市場への介入には極めて消極的な姿勢」にも関わらず、「介入能力がある」ことを強調したそうです。そのためか、RBNZ総裁会見が行われた10:00頃から、NZDJPYは大きく下げました。

ところが、です。
8月23日にNZ財務省は「2019-21年は財政黒字が縮小し成長が鈍化すると予想し、RBNZは2018年半ばから利上げを行うと予想」との見解を示しました。

 (分析事例) RBNZ政策金利 (2017年8月10日発表結果検証済)

RBNZ政策金利の発表では「市場予想通り現状維持」のときにも反応が大きく、一方向への反応が続きがちです。反応方向を確認してから追いかけてポジションが取っても、pipsが稼ぎやすいのです。現地夏時間は5時発表なので、起きられないというのが最大の問題です。

(2) 財政政策

豪政府は今後10年でインフラ整備に750億AUDを投じることを発表しています。主な投資先は鉄道・滑走路・道路となっており、政府説明は以前の鉱山ブーム時代の経済構造からの産業構造転換を目指すため、ということのようです。
2016年の豪GDPは1.7兆AUDなので、対GDP比0.44%/年と捉えた方がわかりやすいでしょう。インパクトを日本のGDP規模に置き換えれば、単年度2兆円程度ということになります。いわば、日本が東京五輪を毎年やるぐらい、インフラ整備に力を入れるのです。

(3) 景気指標

豪州・NZの景気指標では取引を行っていません。両国の代表的な経済誌もわからないし、内政・外交の主要議題も掴めません。むしろ、景気指標を取引対象としてでなく、総合的な雰囲気を掴む手段として利用する方が有用です。

8月8日に発表されたNAB企業景況感指数は+15でした。貿易収支が黒字転換した2016年11月から1か月遅れで、景況感がほぼ+10以上の高位安定しつつあります。

(4) 物価指標

四半期毎に発表される豪州物価指標はCPIに注目しておけば十分です。輸入物価指数や生産者物価指数はほぼ反応せず、取引には不向きです。

RBA見解(3月)では、インフレ率(CPI前年比)が2017年に2%を上回る、と予想していました。8月1日のRBA声明でもこの予想は踏襲されています。ただ、賃金の伸び悩みが物価上昇を抑えているとの見解も、ずいぶん前から踏襲されています。

7月26日に発表された4-6月期CPI前年比は+1.9%でした。1-3月期2.1%を下回ったものの、まだ2016年1-3月期を起点とする上昇基調は維持されている水準です。

 (分析事例) 四半期消費者物価指数 (2017年7月26日発表結果検証済)
 (分析事例) 四半期生産者物価指数 (2017年1月27日発表結果検証済)

四半期CPIは非常に大きく反応します。何より、直後1分足終値より直後11分足終値が同方向に伸びていた確率が高いのです。こうした指標では、無理して発表時刻を跨いでポジションを持たずに、追撃で十分です。

(5) 雇用指標

8月1日のRBA金融政策発表時の声明では、(a) 様々な先行指標が今後雇用が継続的に伸びることを示している、(b) 失業率は今後多少低下する、(c) 賃金の伸びは依然として低迷しており今後も暫く続く、との見解を示していました。

8月17日に発表された7月分雇用統計では、新規雇用者数が+2.79万人(前回+1.4万人)と増えたものの、常勤雇用者数が△2.03万人(前回+6.2万人)と減少しました。この結果を受けた反応は、発表と同時にどーんと陰線側に跳ね、すぐに陽線側へと転じました。がしかし、陽線側への反応は伸び悩み、発表から1分を過ぎる頃には陰線側に転じました。

 (分析事例) 豪州雇用統計 (2017年8月17日発表結果検証済)

本指標での取引には注意が必要です。
かなり大きく反応する指標で、直後1分足値幅方向は指標結果に素直な傾向があります。がしかし、直後1分足の逆跳幅が順跳幅より大きくなることがあります(無作為サンプル5回で頻度40%)。指標発表時刻を跨いだポジションを持っているときに、こうした動きをされると、例え分析が当たっていても逆方向に大きく動いたときに損切せざるを得ません。

こうした「騙し」が多いことが初めからわかっているなら、対処法はあります。
指標発表直前に、予想する反応方向と逆側に、過去の直後1分足跳幅の半分ぐらいのpips分だけ下がって指値しておけば良いのです。もし、予想が外れても下がって指値した分だけ損切が減らせます。もし予想が当たり、且つ、騙しが生じた場合には、本来より利幅が増やせます。指値に引っかからなければ、諦めたらいいのです。

分析の期待的中率が70%強しかない指標で、指標発表直後に50%近く騙しが起きるなら、指標発表時刻を跨いで取引するには、こうしないと期待値がプラスにはならないのです。


【4-5-3. 経済実態指標】

RBA見込みでは、2019年〜2020年の成長率を3%と見込んでいます。
がしかし、IMFでは2017年の成長率を3.1%、2018年を3.0%と見込んでいます(2017年4月時点の見通し) 。2016年10月時点では、各0.4%・0.1%と見込んでいたのだから、かなり大幅な上方修正です。ともあれ、RBA見通しに比べて、IMFは相当に豪州経済の成長を早く大きく見込んでいることになります。
中銀が「まだ早い」というのに、市場が「利上げはまだか」という一因は、こうしたギャップにもあった訳です。

(1) 経済成長

6月7日に発表された豪州1-3月期GDP前年比は+1.7%でした。その後、小売売上高は前月比が4月分でプラス転換し、消費増を推定させています。貿易収支は、2016年11月分が2年8か月ぶりに黒字転換して以来、好調です。2017年年初からの貿易黒字は100億AUDを超えました。次回、9月のGDP発表が待たれます。

 (分析事例) 豪州四半期GDP (2017年6月7日発表結果検証済)

反応は比較的安定して大きいものの、極端に大きくはありません。発表後に初期反応の値幅を削ることはあっても、反転する確率は低いため、小さな負けを覚悟して順張り追撃を繰り返していれば、期待値がプラスになります。こういうやり方に徹して収益を上げるためには、同じやり方を繰り返す・高値(安値)掴みをするぐらいなら取引しない、という鉄壁の意思が絶対に必要です。

(2) 実態指標

(2-1)小売
豪州は先進国で最も今後の人口増が期待される国です。人口増は消費指標や小売指標に対し長期的改善をもたらします。

8月4日に発表された6月分小売売上高前月比は+0.3%でした。5月分が+0.6%、4月分が+1.0%なので、1-3月期よりも4-6月期は消費も大幅に伸びつつあるのではないでしょうか。

 (分析事例) 小売売上高 (2017年8月4日発表結果検証済)
 (分析事例) 四半期小売売上高 (2017年5月9日発表結果検証済)

これら指標はあまり大きく反応せず、しかも最初に跳ねてもその後の反応が伸び悩む傾向があります。こういう指標は追撃が難しいので、あまり大きな利確が期待できません。取引が難しい指標と言っても良いでしょう。

(2-2)住宅
豪州には投資資金が流入しており、ここ最近のRBA金融政策決定理事会は住宅価格高騰への懸念を継続的に示しています。最近、その対策として投資目的住宅のローン金利を引き上げたものの、2017年6月20日に発表された1-3月期住宅価格指数ではまだその効果が見受けられません。1-3月期は前年比10%超の価格指数上昇となっていました。

8月9日に発表された豪州6月分住宅ローン件数前月比は+0.5%でした。6月分住宅許可件数前月比は+10.9%だったので、それに対応した増加となっていました。
8月31日に発表された豪州7月分住宅許可件数前月比は△1.7%でした。前月比ですから、マイナス化自体はだいたい隔月で起きています。ただ、2017年に入ってからはマイナス時の値を切り上げています。

(分析事例) 四半期住宅価格指数 (2017年6月20日発表結果検証済)

本指標は反応こそ小さいものの、「市場予想後追い型」で70%程度の期待的中率が確認できています。そして、最近の住宅価格高騰の影響で、発表後の陽線率が70%を超えています。そういう意味で取引しやすい指標です。


【4-5-4. 収支関係指標】

5月9日に2016年度の豪州への海外投資が発表されました。結果は前年比+29%で、中国からの投資が3年連続で最大となり、対象は不動産セクター(住宅)が多いとのことです。

8月3日に発表された豪州6月分貿易収支は+8.56億AUD(前月は+24.7億AUD)でした。2016年11月分で2年8か月ぶりに黒字転換し、8か月連続の黒字でした。年初からの貿易黒字は100億AUDを超えました。

8月8日に豪貿易相は「TPPを(離脱した米国を除く)残る11か国で合意を確保したい」と述べ、その時期は「11月APEC(アジア太平洋経済協力会議)での大筋合意を期待している」と述べてました。
以上


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