全4件 (4件中 1-4件目)
1
パソコンの調子が悪い。動作が不安定になったので、OSを再インストールした後、バックアップしていたファイルからのメールのインポートがうまくいかない。ひとつの電化製品が故障すると、伝染するように、他のものも壊れていく。テレビの調子が悪いし、電気ポットも買い換えたばかりだ。前もそうだった。前に使っていたノートパソコンの調子が悪くなった、その同じ頃、電子ジャーが壊れ、ビデオデッキも故障した。テレビも違法電波の関係か、突然、ついたり消えたりした。呪われているのかと気味悪くなったほどだ。買い換え時期がいっせいに来た。というか、それぞれの製品の寿命が同じ頃に来たのだろう。今度は違っていて欲しい。全部を買い換えるとなると費用がかかりすぎる。もしかして、物に憑くという妖怪の付喪神の類のいたずらか、困ったものだ。パソコンのデジタル画面に憑く神を動作不良として壊しゆく
2007/08/25
コメント(5)
学生の頃、ひと夏だけ、古墳を発掘するアルバイトをしたことがある。暑い夏だった。小さな丘の頂近くを、指示されるままに掘っていった。いくら掘っても、出土品は出なかった。夏休みが終わる頃、穴の隅の方から、ようやく現れたのは、赤く錆び朽ちた短い剣だった。嬉しいというより、ほっとした気分だった。僕らは気楽なアルバイトで、暑かったけれど、仲間たちと笑いあいながら作業をしていただけだったが、綿密な調査をして、それなりの金をかけていた上の人達は、結果を求められていたようだった。その必死さが段々と伝わってきて、僕らも真剣になっていった。だから、剣が出てきたときは皆で喜んだ。暑い夏だったが、思い出深い夏だった。赤錆びた剣をつくりし人遥か古代を見ていた夏の日のこと
2007/08/18
コメント(2)
子供の頃は、夏休みになると近所に住む従兄弟達とよく近くの海に行った。今はすでに廃止されてしまったローカル線に乗って、海に行くときには、いつも祖母が付き添ってくれていた。浜辺で祖母が見守ってくれているなか、僕らは魚や蟹を獲ったりしていた。蟹はガザミという種類だった。海の中の岩場の穴に隠れているのを捕まえるのだが、従兄弟の一人はその穴に手を突っ込んで、大きなハサミで指を挟まれながらもどんどん大きなガザミを獲っていく。臆病な僕は怖くて岩場の穴に手を入れることが出来ない。痛い、痛いと言いながらも、平気な顔で蟹を獲っていくその従兄弟をほんとうに凄いと思った。どうして平気なのか、何度も聞いてみようと思ったが、自分が臆病なのを知られるのが嫌で、どうしても聞けなかった。廃線のローカル鉄道遠くする枕木朽ちて夏は花咲く
2007/08/11
コメント(2)
子供の頃、夏になると庭の木にたくさんの蝉の抜け殻をみつけた。最近では、クマゼミが都会でもみられるらしいが、記憶にあるのは、翅に色のついた蝉ばかりだった。夏の終わりに鳴く、ツクツクボウシさえも、捕るのが難しかった。透明の翅をもつ蝉は、僕らの憧れだった。油蝉の脱皮は大抵、夜から明け方にかけておこなわれる。それを、夜遅くや明け方早くに起きて、何度か見た。あまりにも動作がのろいので、薄く緑がかった乳白色の蝉が、次第に色を濃くしていくのを、最初から最後まで見たことはなかった。大抵は、母親に見ていてもらって、いい頃合になると知らせてもらっていた。おそらく、母は一度目の手術の後で、穏やかな暮らしを確かめるように過ごしていた頃だった。そんなことには気づかずに、久しぶりに家に帰ってきた母に僕は甘えてばかりいた。蝉の様子をみていてもらうのも、甘えのひとつだったのかも知れない。しばらくして、母の病気は再発して、離れた町の病院に入院し、まもなく亡くなった。蝉の抜け殻をみつけると、そのときの母を思い出す。棕櫚の木の根方にころがる空蝉を拾いし人の影をかなしむ
2007/08/04
コメント(6)
全4件 (4件中 1-4件目)
1

