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ドンバスのエレノフカにある兵舎が7月29日にミサイルで攻撃され、50名以上が死亡したと伝えられている。その兵舎はキエフ政府軍が送り込んだ親衛隊「アゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊)」の戦争捕虜をドネツク共和国軍が収容していた。ミサイルの残骸からHIMARS(高機動ロケット砲システム)による攻撃だと判明。つまりキエフ政府軍が撃ち込んだわけだ。その目的は口封じ以外には考えられない。 親衛隊は住宅地に攻撃拠点を築き、住民を人質にとって抵抗したので時間はかかったが、3月には結果が見えていた。親衛隊に拘束されていた住民が解放されると、人びとは異口同音に親衛隊が脱出を試みた住民を虐殺したなど残虐行為を告発、救出したロシア軍に感謝している。そうした証言をする住民の映像がツイッターなどに載せられた。そのアカウントをツイッターは削除してしまうが、一部はインターネット上に残っている。 その後、住民は次々に解放されるが、そうした人びとも親衛隊の残虐行為を告発する。ネオ・ナチによって建物は破壊され、人びとは拷問され、殺された人も少なくないようだ。若い女性はレイプされているとも告発されている。 そうした証言が都合の悪い西側の有力メディアは伝えたがらないが、それでもドイツの有力な雑誌「シュピーゲル」はひとりの証言を伝えた。マリウポリのアゾフスタル製鉄所から脱出した住民のひとり、ナタリア・ウスマノバの証言を3分間の映像付きで5月2日に伝えたのだが、すぐに削除する。ショルツ内閣や米英の政権にとって都合の悪い事実が語られていたからだ。(インタビューのロイター版と削除部分の映像:ココ) その後も脱出した市民の声が伝えられている。現地で取材している記者がいるからで、ドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットが有名だが、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者もいたというが、西側のメディアはそうした情報を伝えたがらない。 しかし、こうした人びとによって事実は少しずつでも知られるようになり、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領や西側の政府や有力メディアにとって都合の悪い情報を発信するジャーナリストがブラックリストに載せられるようになったという。リストに載せることでジャーナリストを恫喝しているつもりのようだ。 ウクライナ軍の戦闘員は戦況の悪化で戦線から離脱し始めた。親衛隊の実態を知ったこともあるだろうが、ゼレンスキー政権から「玉砕」を命令されていた親衛隊の隊員も降伏、それに伴って住民のキエフ軍を批判する証言が増えてきた。 戦争犯罪を問われ始めた親衛隊の隊員は残虐行為を司令部やゼレンスキー政権からの命令で行ったと主張、その映像も伝えられている。隊員の証言を放置しておくと、親衛隊の幹部やゼレンスキー大統領だけでなく、アメリカやイギリスの情報機関、あるいは政府の責任が問題になりかねない。そうした状況になりつつある段階で捕虜になっていたアゾフの隊員がミサイルで攻撃され、殺されたのだ。 ところで、西側の少なからぬ権威に従順な人びとは今年2月24日より前の出来事に気づかない風を装っている。ロシアを悪魔化させられなくなるからだろう。 アゾフを含む親衛隊は内務省に所属、その中核メンバーはネオ・ナチの「右派セクター」だった。ネオ・ナチは2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターでも中心的な役割を果たしている。 右派セクターは2013年11月、「三叉戟」と呼ばれていた団体を元にして、ドミトロ・ヤロシュとアンドリー・ビレツキーらによって組織されている。 ヤロシュは1971年に生まれ、89年にネオ・ナチと見られるグループで活動を開始。ドロボビチ教育大学で彼が学んだワシル・イワニシン教授はKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに属していた。ナチス、イギリスのMI6(正式名称はSIS)、第2次世界大戦後はアメリカのCIAと結びついていたOUN-B(ステパン・バンデラ派)の人脈によってKUNは組織されている。1994年にヤロシュは三叉戟を創設して指導者になった。 そして昨年11月2日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はヤロシュをバレリー・ザルジニー軍最高司令官の顧問に据えた。ウクライナ軍をネオ・ナチの管理下に入れたと言えるだろう。 アゾフが拠点にしたマリウポリはドネツクの重要都市。ウクライナの東部や南部がヤヌコビッチの地盤だが、マリウポリも例外ではない。ロシア革命後にロシアからウクライナへされたこともあり、ロシア語を話す住民が多く、文化的にはロシアに近い。当然のことながらロシアに親近感を持つ住民が多い。その地区をネオ・ナチの親衛隊が占領したのである。 占領は2014年5月9日にクーデター軍の戦車部隊がマリウポリへ突入したところから始まった。侵攻してきた部隊は住民を殺しはじめるが、同時に抵抗も始まる。5月11日にはドンバスで自治(ドネツク)や独立(ルガンスク)の是非を問う住民投票が実施され、ドネツクでは89%が賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が賛成(投票率75%)している。 この結果を受け、ドンバスの住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は助けない。6月2日にクーデター政権はルガンスクの住宅街を空爆。その日、デレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りしていた。OSCE(欧州安保協力機構)も空爆があったことを認めている。 クーデターに続く軍事侵攻に恐怖したドンバスの少なからぬ住民がロシアへ避難、そこへ西側から入り込んだ人もいたが、ロシア軍が入って来るまでマリウポリなど親衛隊に支配されていた地域は占領地だ。占領を免れた地域も親衛隊などキエフ政権が送り込んだ戦闘集団による攻撃にさらされてきた。 そうした状況を気にもしていなかった西側の少なからぬ人びとは今年2月に突然、戦争の惨状に目覚めて平和を訴え始めた。キエフ軍が大規模な攻撃を始める直前にロシア軍が介入、自分たちが浸っていたイメージの世界に亀裂が入ったからだろう。 短期的に見てもウクライナの戦争はNATOの訓練を受けたネオ・ナチのメンバーがチェーン、ナイフ、棍棒を手にしながら石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出した2014年2月の中旬から始まる。ネオ・ナチの一部はピストルやライフルを持ち出し、ベルクト(警官隊)の隊員を拉致、拷問、殺害している。目を潰された状態で発見された隊員の死体も見つかった。 これはキエフの状態。ヤヌコビッチの支持基盤である東部や南部の住民はクーデターを拒否、防衛策を講じようとしたが、成功したのはクリミアだけで、ドンバスの住民はネオ・ナチに虐殺されている。こうした殺戮を西側の政府も有力メディアも一般の人びとも気にしなかった。 クーデター後、ネオ・ナチは国会にナチスのシンボルを掲げて街を練り歩き、検察事務所へ押しかけてスタッフを脅している。ベルクトの隊員は命を狙われた。ネオ・ナチによる支配に反発した将兵やベルクトの隊員らがドンバス軍へ合流したと言われているが、当然だろう。 その結果、ドンバス軍は新兵主体のキエフ軍より強くなった。そこでネオ・ナチをメンバーとする親衛隊を編成、バラク・オバマ政権はキエフへCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦へ参加させた。2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。
2022.07.31
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は7月22日現在、前の週より155名増えて2万9790名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近い。 死に至らずとも、帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害、あるいは心臓発作も早い段階から報告されていた。ウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させる「ADE(抗体依存性感染増強)」が引き起こされると懸念する専門家も少なくなかったが、実際、そうしたことが引き起こされているようだ。「mRNAワクチン」で使われているLNP(脂質ナノ粒子)は人体に有害で、投与されたLNPは肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布する、また「ワクチン」にグラフェンの誘導体が混入しているとも報告されている。 ここにきて、ファイザー製「ワクチン」を接種した女性の中にANCA(抗好中球細胞質抗体)関係した深刻な腎臓病などを引き起こす人がいるという報告も出てきた。
2022.07.30
石破茂と浜田靖一、防衛大臣を経験したふたりが率いる国会議員団が7月27日に台湾を訪問、翌日には蔡英文総統と会談した。東アジアの軍事問題が議題になったようだが、このテーマはロシアと中国を屈服させて世界の覇者となるというアメリカの戦略に深く関連している。「アメリカへの屈服」をある種の人びとは「平和と安定」と表現する。 アメリカ政府内で大きな影響力を持っていたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、自国が「唯一の超大国」になったと思い込み、アメリカ主導の新秩序を築き上げるための計画を国防総省の「DPG(国防計画指針)草案」として作成した。 その時の国防長官はリチャード・チェイニーだが、作成の直接的な責任者は国防次官のポール・ウォルフォウィッツ。そのため計画は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。チェイニーもウォルフォウィッツもネオコンの大物だ。 唯一の超大国という立場を維持するため、ソ連のようなライバルが西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアなどで出現することを阻止するだけでなく、エネルギー資源を支配しようとネオコンは決意したのだが、日本も潜在的ライバルとみなされている。彼らが最初に手をつけたのがユーゴスラビアだった。 しかし、この計画は21世紀に入ってウラジミル・プーチンを中心とするグループがロシアを曲がりなりにも再独立させたことで揺らぎ始めるのだが、ネオコンたちはその深刻さに気づかない。例えば、フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキアー・リーバーとダリル・プレスの論文では、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てると主張している。 その分析が間違っていることは2008年8月7日に判明する。イスラエルやアメリカの支援を受けたジョージアが北京の夏季オリンピック開催にタイミングを合わせて南オセチアを奇襲攻撃したのだが、ロシア軍の反撃で惨敗したのだ。 この奇襲攻撃の7年前からイスラエルの会社(いわばイスラエル軍の企業舎弟)はジョージアへ兵器を提供すると同時に軍事訓練を実施していた。ジョージアのエリート部隊を訓練していた会社とはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアへ入っていた。イスラエル軍の機密文書が使われていたとする証言もある。(Ynet, August 16, 2008) イスラエルがジョージアを軍事面から支えてきたことはジョージア政府も認めている事実であり、アメリカのタイム誌によると、訓練だけでなくイスラエルから無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008) ロシア軍の副参謀長を務めていたアナトリー・ノゴビチン将軍もイスラエルがグルジアを武装させていると非難している。2007年からイスラエルの専門家がグルジアの特殊部隊を訓練し、重火器、電子兵器、戦車などを供給する計画を立てていたというのだ。(Jerusalem Post, August 19, 2008)またロシア軍の情報機関GRUのアレキサンダー・シュリャクトゥロフ長官は2009年11月、NATO、ウクライナ、そしてイスラエルがジョージアへ兵器を提供していると主張している。(Ynet, November 5, 2009) アメリカの場合、傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月あら4月にかけてジョージアへ派遣し、「アフガニスタンに派遣される部隊」を訓練。アメリカの国務長官だったコンドリーサ・ライスは奇襲攻撃の前の月、そして攻撃後の8月15日にもライスはジョージアを訪問している。 この当時、すでにアメリカはイラクでの軍事作戦に行き詰まっていたこともあり、戦略を変える。2009年1月からアメリカ大統領を務めたバラク・オバマは10年8月に「PSD-11」を承認、ムスリム同胞団を中心とする勢力を使い、中東から北アフリカにかけての地域で政権を転覆させるプロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。 ムスリム同胞団やサラフィ主義者を傭兵として使うという戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代にアフガニスタンで始めたものである。 オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行する。なお、オバマ政権の副大統領がジョー・バイデンだ。 そのバイデンは2021年1月にアメリカ大統領へ就任。それから間もない段階で「ルビコン」を渡った。1991年12月にソ連が消滅した直後から始めた世界制覇プロジェクトを継続、ロシア、中国、イランといった国々を屈服させるため、回帰不能点を超えたということだ。バイデンの背後にいる勢力にとって、この戦いは「勝つか、破滅するか」しかない。 ロシアにとって安全保障の上で重要な意味を持つウクライナにバイデン政権は兵器を供給、兵士を訓練、そして軍事的な挑発を繰り返した。その手先はクーデターの時と同じネオ・ナチだ。今年3月には東部地域で大規模な軍事作戦を予定していたと見られている。その予定はロシア軍の介入で狂った。ウクライナの戦況は8月に大きな節目を迎えると見られている。アメリカ/NATOはウクライナへ高性能兵器を供給し始めたが、敗北は避けられそうにない。 その8月、ウクライナでの戦争でも煽っていたナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問する可能性があるのだが、批判の声は小さくない。そうした中、石破と浜田が台湾を訪問した。バイデンのメッセージを伝えた可能性もある。
2022.07.30
リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問、国交を回復させて以来、アメリカ政府は中国を承認、台湾は中国の一部だと認めてきた。中国は「一国両制」を表明している。中国はひとつだが、その中に違うシステムを存在させるということだ。それによって東アジアの均衡を作り出すことにしたと言えるだろう。その均衡をナンシー・ペロシ米下院議長が壊そうとしている。 ウクライナの場合、2013年11月から14年2月にかけてアメリカ政府が仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチ大統領は間一髪のところで脱出したようだが、拘束された場合、殺された可能性もある。その際、クーデターの中心になったのはNATOの訓練を受けていたネオ・ナチで、ベルクト(警官隊)に所属していた隊員の命を狙い、検察官事務所へ押し入り、銃を振りかざしながら検察官を恫喝していた。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部ではクーデター政権を拒否し、ドンバス(ドネツクやルガンスク)ではその時から戦争が続いている。大統領に就任した直後に「ルビコンを渡った」ジョー・バイデン大統領は今年3月からドンバスで大攻勢をかけようとしていたと見られている。その直前にロシアが動き、計画は狂った。 それに対し、台湾の場合はコソボと同じように、いきなり中国から分離させようというわけだ。蔡英文総督の心情はともかく、中国はペロシの行動を座視することはできない。必然的に軍事的な緊張が高まり、アメリカ海軍は空母「ロナルド・レーガン」と艦隊を7月25日にシンガポールから出港させ、台湾へ向かわせた。そのアメリカ軍もペロシの台湾訪問を「良い考えではない」としている。中国が台湾周辺に飛行禁止空域を設定する可能性もある。 ペロシの台湾訪問には批判的な意見も少なくないが、積極的に支持している人物もいる。その代表格が1995年1月から99年1月まで下院議長を務めたニュート・ギングリッチだ。この人物はカジノ経営者のシェルドン・アデルソンやシカゴの富豪ピーター・スミスをスポンサーとするネオコン。彼自身、1997年に台湾を訪問しているが、当時と今では米中関係が根本的に違っている。 ペロシは自分の台湾訪問がどのような事態を招くかを承知しているはずである。彼女は4月30日に下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。戦争を続けろということだ。 親衛隊などゼレンスキー政権の戦闘部隊は住民を人質にとってロシア軍に抵抗していたが、3月の段階で敗北は決定的だった。4月21日にミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語り、住民を脅していたが、これは人心が離反していたことを示している。ゼレンスキー政権の内部も動揺していたはずで、それを抑える意味がペロシのウクライナ訪問にはあったのだろう。 東アジアの場合、5月10日から大統領は文在寅から尹錫悦へ交代、アメリカへ従属する政策へ切り替わり、朝鮮を刺激している。8月には大規模な米韓合同軍事演習が予定されている。日本では2016年に与那国島、19年に奄美大島と宮古島に自衛隊が施設を建設、23年には石垣島にも建設する予定だ。 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は今年、アメリカのGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する戦略について分析、インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないと考えているが、日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。 そこで、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力することになると見ている。そうしたミサイルによって台湾海峡、東シナ海、中国沿岸の一部をカバーできるという。つまり射程距離500キロメートル程度のミサイルを考えているが、当然、反撃も想定しなければならない。 本ブログでは繰り返し指摘していることだが、イギリスの長期戦略の中で明治維新は引き起こされ、その流れは現在まで続いている。アングロ・サクソンは中国支配を諦めていない。 明治体制は廃藩置県を実施した翌年の1872年に琉球国王を琉球藩王として琉球国を潰し、イギリスとアメリカの「アドバイス」で74年に台湾へ派兵、ここから日本のアジア侵略が始まる。 1875年には李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦を派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功、94年に朝鮮半島で甲午農民戦争が起こって閔氏の体制が揺らぐと「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣、朝鮮の要請で派兵した清(中国)と戦争、1904年2月8日には仁川沖と旅順港を奇襲攻撃して日露戦争を始めた。 日露戦争ではセオドア・ルーズベルト米大統領と金子堅太郎が重要な役割を果たしている。ふたりはハーバード大学の出身で、1890年にルーズベルトの自宅で知り合い、親しくなった。 ルーズベルトは1898年のアメリカ・スペイン戦争を主導した人物で、スラブ系のロシアを敵視、日露戦争の勝者が東アジアで大きな影響力を持つと見ていた。そこで日本に肩入れしたわけだ。日露戦争の後、セオドアは日本が自分たちのために戦ったと書いている。 その一方、金子は日露戦争の最中に日本政府の使節としてアメリカへ渡り、1904年にハーバード大学でアンゴロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説。同じことを金子はシカゴやニューヨークでも語っていた。日露戦争後に日本は韓国を併合しているが、これはルーズベルト、金子、そして桂太郎らによって話がついていたことで、反対意見が聞き入れられる余地はなかったという。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) この構図は今も生きていて、アメリカが東アジアで戦争を始めれば日本も巻き込まれる。既にアメリカは1995年までに日本を自分たちの戦争マシーンに組み込んでいるので、そのマシーンを始動させるだけだ。安倍晋三殺害のタイミングは興味深い。
2022.07.29
アメリカ政府を後ろ盾として登場したウクライナのネオ・ナチ政権がドンバス(ドネツクとルガンスク)へ軍事侵攻、その一部を占領したのは2014年、クーデターを成功させてまもない頃のことだった。その時からドンバスでは戦争が続いている。2019年の大統領選挙で当選したウォロディミル・ゼレンスキーも戦争を継続、「戦う大統領」を演出している。 そのゼレンスキーが「愛する妻」とアメリカのファッション誌「VOGUE」に登場、話題だ。戦場風の背景をバックに撮影された夫妻の写真が掲載されているが、和平への道を探る人びとを処刑すると恫喝、摘発、拉致、殺害してきた政権のトップというイメージはない。 ドンバスを始め、各地で住民を殺害してきたアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)を資金面から支えていたイゴール・コロモイスキーはウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍を持つシオニストの富豪で、ネオ・ナチの黒幕的な存在だが、ゼレンスキーを操ってきた人物でもある。そうした人びとの演出でゼレンスキーは活動してきた。 コロモイスキーによってゼレンスキーは「コメディアン」として売り出され、人びとに良いイメージが植え付けられた。その売り出しには西側の支配層も関与していたはずだ。 選挙期間中、ゼレンスキーは腐敗の根絶、進歩、文明化、そしてドンバスとの和平実現といった公約を掲げている。クーデター直後から新体制の支配者たちは国民の資産を略奪し、社会を破壊。ネオ・ナチの恐怖も消えず、ロシアを敵視する政策を続けた。そうした状態を変えることを有権者は期待したのだが、当選後のゼレンスキーは期待に応えなかった。 しかし、有力メディアを通してウクライナを見ている西側の少なからぬ人びとはゼレンスキーを英雄視している。ロシア軍が2月24日にウクライナで軍事作戦を始めて以降、彼は軍人が着るようなTシャツを身につけ、よく手入れされた髭を蓄えて映像の中に登場してくるが、これも西側で「受ける」ように考えられた演出なのだろう。 戦争自体についても西側の有力メディアが流すストーリーはハリウッド映画的で、「勇敢な市民が邪悪な侵略軍に立ち向かい、勝利する」という「ダビデとゴリアテ」的なものだが、こうしたシナリオは事実によって壊されつつある。戦場を舞台としたラブ・ロマンス的な演出に効果があるかどうかはわからない。
2022.07.28
アメリカのナンシー・ペロシ下院議長は8月に台湾を訪問する意向だと伝えられている。4月にも訪問を計画していたのだが、その時は自身がCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)に感染、つまりPCR検査で陽性になったことから中止になった。 その月の末にペロシが率いる下院議員団がウクライナを訪問、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの支援継続を誓っている。アメリカがウクライナ側に立っているというメッセージを全世界に示すことが議員団訪問の目的だという。3月の段階でゼレンスキー政権の戦闘部隊はドンバスで人質をとって戦っていたが、敗北は決定的だった。そうした中、戦争を継続させるためにウクライナを訪問したと見られている。 下院議長は要職と言える。その要職についている人物が台湾を訪問するということは「ひとつの中国」政策を否定することになり、1972年2月に実現したアメリカと中国の国交正常化を否定することにつながる。国交を正常化する際、リチャード・ニクソン大統領は中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明したのだ。 ニクソン訪中を実現するために裏で中国側と交渉していた人物は国家安全保障補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャー。中国と友好的な関係を結び、中国とソ連の対立を彼は煽りたかったのだろう。 交渉の過程でキッシンジャーは周恩来に対し、日本の核武装について話したという。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、アメリカと中国が友好関係を結ぶことに同意しないならば、アメリカは日本に核武装を許すと脅したという(Seymour M. Hersh, “The Price of Power”, Summit Books, 1983)が、中国を懐柔するため、アメリカは日本軍が中国で略奪し、アメリカの支配層が押収した財宝を使ったという噂もある。 アメリカと手を組んだ中国は金融など重要な部門を私的権力へ引き渡さなかったものの、新自由主義を受け入れる。そのイデオロギーの教祖的な存在だったミルトン・フリードマンが1980に中国を訪問したのは象徴的な出来事だった。 しかし、1980年代の後半になると新自由主義による社会の歪みが深刻化、国民の不満が高まる。1988年に実施した「経済改革」は深刻なインフレを招き、社会は不安定化した。 そこで中国政府は軌道修正を図るが、胡耀邦や趙紫陽を後ろだととするエリート学生、つまり自分たちは優遇されるべきだと考えている人びとは「改革」の継続を求めた。学生の活動を指揮していたと見られているのはジーン・シャープだが、投機家のジョージ・ソロスとも学生はつながっていた。 そうした学生の要求を政府は認めない。胡耀邦は1987年1月に総書記を辞任、89年4月に死亡、その死を切っ掛けに天安門広場で大規模な抗議活動が始まり、5月に戒厳令が敷かれることになった。いわゆる「天安門事件」だ。 胡耀邦が死亡する3カ月前の1989年1月からアメリカ大統領はCIA出身(エール大学でリクルートされた可能性が高い)のジョージ・H・W・ブッシュになっていた。そのブッシュが大使として中国へ送り込んだ人物はブッシュと昵懇の間柄にあるCIA高官のジェームズ・リリーだ。 リリーの前任大使であるウィンストン・ロードは大使を辞めた後、CIAの資金を流すNEDの会長に就任。ブッシュ、リリー、ロードの3名はエール大学の出身で、いずれも学生の秘密結社「スカル・アンド・ボーンズ」のメンバーだった。 西側では天安門事件で学生が殺されたと信じられている。6月4日に軍隊が学生らに発砲して数百名が殺されたというのだが、これを裏付ける証拠はなく、逆に広場での虐殺を否定する証言がある。 例えば、当日に天安門広場での抗議活動を取材していたワシントン・ポスト紙のジェイ・マシューズは問題になった日に広場で誰も死んでいないとしている。広場に派遣された治安部隊は学生が平和的に引き上げることを許していたという。学生の指導グループに属していた吾爾開希は学生200名が殺されたと主張しているが、マシューズによると、虐殺があったとされる数時間前に吾爾開希らは広場を離れていたことが確認されている。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) 北京ホテルから広場の真ん中で兵士が学生を撃つのを見たと主張するBBCの記者もいたが、記者がいた場所から広場の中心部は見えないことも判明している。(前掲書) 西側の有力メディアは2017年12月、天安門広場で装甲兵員輸送車の銃撃によって1万人以上の市民が殺されたという話を伝えた。北京駐在のイギリス大使だったアラン・ドナルドが1989年6月5日にロンドンへ送った電信を見たというAFPの話を流したのだ。 しかし、ドナルド大使自身が目撃したわけではなく、「信頼できる情報源」の話の引用。その情報源が誰かは明らかにされていないが、そのほかの虐殺話は学生のリーダーから出ていた。当時、イギリスやアメリカは学生指導者と緊密な関係にあった。ドナルド大使の話も学生指導者から出たことが推測できる。 吾爾開希のケースでも明らかなように、学生指導者の信頼度は低い。大使の話が正確だったとすると、これだけの数の人間を天安門広場で殺害、その痕跡を消したということになり、これはかなり困難だ。 また、内部告発を支援しているウィキリークスが公表した北京のアメリカ大使館が出した1989年7月12日付けの通信文によると、チリの2等書記官カルロス・ギャロとその妻は広場へ入った兵士が手にしていたのは棍棒だけで、群集への一斉射撃はなかったと話している。銃撃があったのは広場から少し離れた場所だったという。(WikiLeaks, “LATIN AMERICAN DIPLOMAT EYEWITNESS ACCOUNT O JUNE 3-4 EVENTS ON TIANANMEN SQUARE”) イギリスのデイリー・テレグラム紙が2011年6月4日に伝えた記事によると、BBCの北京特派員だったジェームズ・マイルズは2009年に天安門広場で虐殺はなかったと認めている。軍隊が広場へ入ったときに抗議活動の参加者はまだいたが、治安部隊と学生側が話し合った後、広場から立ち去ることが許されたという。マイルズも天安門広場で虐殺はなかったと話している。 ちなみに、戦車の前に何者かが立っている写真があるが、この写真は6月5日に撮影されたもの。その様子を「引き」で撮影したものもあるのだが、その戦車の後ろには戦車が広場まで連なり、広場にも多くの戦車が並んでいる。つまり、広場から出ようとしている戦車の走行をその人物は妨害していたわけだ。 天安門で緊張が高まっていた頃、アメリカ政府はソ連で体制を転覆させる工作を進めていたことは本ブログで繰り返し書いてきた。ソロスは中国以上にソ連/ロシアの破壊に熱心である。 結局、中国政府は経済政策を軌道修正したが、新自由主義を放棄したわけではなく、アメリカとの友好的な関係は2015年頃まで続く。アメリカとの関係が壊れるのは2014年。ウクライナでクーデターが実行されたほか、香港で「佔領行動(雨傘運動)」と呼ばれる反中国政府の運動が実行され、アメリカやイギリスの戦略を理解したのだ。 キッシンジャーの戦略はバラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてウクライナで行ったクーデタの後、崩壊した。オバマ政権のネオコンはクーデターによってロシアとEUを分断、双方を弱体化させようとしたのだが、ロシアは中国へ向かう。その時、アメリカに対する不信感を強めていた中国もロシアと同盟を望んだ。 アメリカとイギリスは2019年にも香港で反中国運動を仕掛けている。抗議活動の参加者はアメリカの国旗やイギリスの植民地であることを示す旗を掲げ、中には拡声器を使ってアメリカ国歌を歌う人もいた。8月12日には香港国際空港が数千人のグループに占拠され、旅客機の発着ができなくなった。 その前、8月8日にはアメリカのジュリー・イーディー領事が黄之鋒(ジョシュア・ウォン)や羅冠聰(ネイサン・ロー)を含む反中国運動の指導者たちとJWマリオット・ホテルで会っているところを撮影した写真がツイッター上にアップロードされる。イーディーはCIAのエージェンとではないかと疑われている人物だ。 黄之鋒や羅冠聰を動かしていたのは元王室顧問弁護士の李柱銘(マーチン・リー)、香港大学の戴耀廷(ベニー・タイ)副教授、陳日君(ジョセフ・ゼン)、黎智英(ジミー・ライ)だとされている。そのほか余若薇(オードリー・ユー)や陳方安生(アンソン・チャン)も深く関与していたという。 李柱銘は佔領行動の際、ワシントンDCを訪問、CIAの資金を動かしているNEDで物資の提供や政治的な支援を要請、ペロシ下院議長にも会っている。ペロシは香港の反中国運動を支援していた。 ロシアや中国との軍事的な緊張を高めるために動いてきたペロシ議長だが、その家族はさまざまな問題を抱えている。夫のポールは酒気帯び運転で逮捕され、インサイダー取引の疑惑が持たれている。息子のポール・ジュニアは捜査対象になっている5社と関係していると伝えられている。
2022.07.28
ロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた2月24日以降、ウクライナの中央銀行は124億ドル相当の金を売却したという。アメリカ/NATOは教官や戦闘員を送り込むほか兵器を供給、ここにきてアメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)、イギリスはM270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)は引き渡しているのだが、この代償として金を渡しているわけだ。西側にとってこれは支援でなくビジネスというべきかもしれない。 ウクライナにおける戦争は短期的にみても2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領がネオ・ナチを主体とする暴力集団によるクーデターで排除されてから始まっている。そのクーデターの背後にはアメリカのバラク・オバマ政権が存在、現場では国務次官補だったビクトリア・ヌランドが指揮していた。 このクーデターから間もない3月7日、ウクライナの中央銀行に保管されていた金塊が持ち去られたと言われている。ナンバープレートのない4台のトラックと2台のミニバスがボリスピル空港へ到着、15名の武装兵が40箱以上の荷物を輸送機へ運び込んだのだが、その飛行機は登録されていなかった。作業が終わると荷物を運んできた自動車は走り去り、午前2時に輸送機は離陸した。荷物は金塊で、飛行機はアメリカへ向かったとされている。 2014年2月にクーデター派が制圧したのはキエフ周辺で、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部を抑えにかかったのはそれから。そうした状況を知った東部や南部の住民はクーデターに対抗するために動き始める。 最も早かったのはクリミアで、3月16日にはロシアと統合を問う住民投票を実施、80%を超える住民が投票に参加して95%以上が加盟に賛成した。ヤヌコビッチを支持するためにキエフへ向かった住民も途中で首都の惨状を知り、それも迅速な動きにつながった。 アメリカがウクライナでクーデターを実行した目的のひとつはロシアの隣国を支配、そこへNATO軍を入れてロシアを威嚇、チャンスがあれば軍事侵攻すること。これは19世紀から続くアングロ・サクソンの戦略だ。 ウクライナを制圧することでロシアとEUを結びつけているパイプラインを支配、ロシアからマーケットを、またEUからエネルギー資源の供給源を奪うことのほか、クリミアにあるロシア黒海艦隊の重要な基地があるセバストポリを制圧することも重要な目的だったが、クリミアの制圧に失敗してしまう。 それから間もない4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問、22日には副大統領を務めていたジョー・バイデンもキエフを訪れた。バイデンの訪問に会わせるようにしてクーデター政権はオデッサでの工作を話し合ったと伝えられている。ウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍を持つシオニストの富豪、イゴール・コロモイスキーもこの工作に加わったと伝えられている。 オデッサは南部にある重要な港湾都市だが、そこで5月2日に反クーデター派の住民がネオ・ナチの「右派セクター」を中心とするグループによって虐殺された。 そうしたネオ・ナチ団体のメンバーが中心になって設立されたのがアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)。コロモイスキーはその組織を資金面から支えていた。ウォロディミル・ゼレンスキーがコロモイスキーの操り人形だということはCIA系のメディアさえ伝えていた。 当日、オデッサではサッカーの試合が予定されていて、フーリガンが集まっていた。そのフーリガンを挑発し、反クーデター派が集まっていた広場へ誘導、それを口実にして女性や子どもを含む住民が労働組合会館へと「避難」させ、そこで殺されたのだ。人びとに見られないようにすることが目的だった。 このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎず、地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。撲殺された人が多かったようだが、射殺された人も確認されている。 会館の周辺で撮影された映像がインターネット上に流れたが、それを見るとネオ・ナチだけでなく警察の幹部が虐殺に参加しているように見える。広場から建物に向かって火炎瓶が投げ込まれているだけでなく、銃撃する様子も撮影されていた。 屋上へ出るドアはロックされ、逃げ出すことはできなかった。屋上には右派セクターであることを示す腕章をした集団がいたので、この集団が反クーデター派の住民を殺すためにロックしたとみられている。殺害した住民は建物の内部で焼かれたが、住民の中には焼き殺された人もいた。火炎瓶の投げ合いという状況は見られない。 右派セクターの中心的な存在だったドミトロ・ヤロシュはクーデター直後の2014年3月、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)などイスラム系の武装集団への支援を表明している。その右派セクターが中心になって5月5日、内務省の親衛隊で中核的な存在になる「アゾフ大隊」が組織された。 キエフのクーデター派は戦勝記念日で住民が外に出ることが予想された5月9日に戦車部隊をドネツクのマリウポリへ突入させ、住民を殺傷したが、それでも5月11日にドンバスで自治(ドネツク)や独立(ルガンスク)の是非を問う住民投票が実施される。 ドネツクでは89%が賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が賛成(投票率75%)している。この結果を受け、ドンバスの住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は動かない。そしてキエフのクーデター政権と反クーデター派住民との間で戦争が始まった。 クーデター当時に副大統領だったバイデンが大統領に就任するとロシアや中国に対する経済戦争や軍事的な挑発が始まる。今年に入るとキエフ体制がドンバスでロシア語系住民を「浄化」する軍事作戦が実行されるという話が流れ、実際、ウクライナ側からドンバスに対する攻撃が増えた。そうした中、ロシア軍が動いたのだ。 そして現在、住民を人質にして戦っていたゼレンスキー政権の親衛隊が敗北、住民は解放されている。その住民から事実が語られているが、それはアメリカをはじめとする西側の支配層にとって都合が悪い。有力メディアは沈黙するだけでなく、住民の証言を自分たちに都合よく「編集」していることも発覚。ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」が分析したように、ロシア軍は8月までにドンバス全域を制圧できそうだ。
2022.07.27
冷戦は独ソ戦の延長 日本が降伏してからもチャーチルのソ連を敵視する姿勢は変化せず、彼は1946年3月にアメリカのフルトンで「鉄のカーテン演説」を行う。「冷戦」の幕開けだ。東側と西側の間に鉄のカーテンが降りているという表現はドイツが降伏して間もない段階ですでに使われていた。 それだけでなく、FBIの文書によると、チャーチルは1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対し、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得してほしいと求めている。(Daniel Bates, “Winston Churchill’s ‘bid to nuke Russia’ to win Cold War - uncovered in secret FBI files,” Daily Mail, 8 November 2014) ウィンストン・チャーチル自身はイギリスの貴族を父に、またアメリカの富豪を母に持つ人物。父親のランドルフはジョン・スペンサー-チャーチル公爵の三男で、素行の評判は良くない。カネ使いが荒く、親しくしていたネイサン・ロスチャイルド男爵から多額のカネを借りていたという。ランドルフは1895年に死亡しているが、死因は梅毒。ネイサンは19世紀のイギリスを支配していたグループの中心的な存在で、セシル・ローズのスポンサーだ。 第2次世界大戦後、ウィンストン・チャーチルは「冷戦」の開幕を宣言した。チャーチルの背後には巨大金融資本がいるのだが、その金融資本はナチスを資金面から支えていた。情報分野でイギリスとアメリカが連携しているのは必然だ。 アメリカの金融街からも多額の資金がナチスへ流れている。そうした役割を果たしていた金融機関のひとつがブラウン・ブラザーズ・ハリマン。その幹部だったジョージ・ハーバート・ウォーカーはユニオン・バンキング(UBC)なる会社を設立、プレスコット・ブッシュやW・アベレル・ハリマンに経営を任せた。UBCの実権はハインリッヒ・ティッセンが持っているとも言われているが、この人物の兄、フリッツ・ティッセンはドイツの鉄鋼産業に君臨、ナチスの後ろ盾になっていた実業家である。 プレスコット・ブッシュはウォーカーの娘と結婚、アレン・ダレスとはウォール街仲間だった。プレスコットの息子、ジョージ・H・W・ブッシュをアレン・ダレスは幼い頃から知っていた可能性が高い。 冷戦は米英支配層の対ソ連戦争の延長線上にあり、イギリス支配層の対ソ戦は19世紀に始まる。その後、さまざまな謀略が展開されたが、その謀略にまんまと引っかかったひとりがミハイル・ゴルバチョフである。 1985年にソ連の最高指導者になったゴルバチョフはスターリンと対立していたニコライ・ブハーリンを「別の選択肢」として研究していたグループに属し、西側の「民主主義」を信じていた。1990年から91年にかけてゴルバチョフは冷戦の終結というアイデアに魅了され、米英金融資本の罠にかかってしまう。彼は冷戦の本質を理解していなかったとも言えるだろう。その時、ゴルバチョフの周辺にはジョージ・H・W・ブッシュを含むCIA人脈に買収されたKGBの中枢グループに取り囲まれていた。(了)
2022.07.27
東京琉球館で8月19日午後6時から「求心力を失ったアメリカ」というテーマで話します。予約制とのことですので興味のある方は8月1日午前9時以降、下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333https://dotouch.cocolog-nifty.com/ アメリカやイギリスの命令でウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア軍との戦いを続けています。ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」は8月にロシア軍はドンバス全域を制圧できると分析していました。アメリカ/NATOは高性能兵器を供給、ロシアやドンバス側の損害を少しでも大きくしようとしていますが、難しいでしょう。状況を見ながら、そうしたことについて考えてみたいと思います。 明治維新以降、日本はイギリスとアメリカを拠点とする巨大金融資本の強い影響下にあります。その金融資本が日本を支配する仕組みが天皇制官僚体制で、この構造は第2次世界大戦の前も後も基本的に変化していません。加藤周一の表現を借りるならば、「政策の民主化、または自由主義的な妥協」にすぎませんでしたが、そうした時代は過ぎ去り、最近の政策は民主的でも自由主義的でもありません。 第2次世界大戦後、世界で支配的な立場にあった国は戦争による痛手をほとんど受けず、略奪した財宝を手にしたアメリカに他なりません。ソ連がライバルとして存在していましたが、ドイツとの戦争で大きな痛手を負ったソ連にはアメリカほどの力はありませんでした。 そのアメリカですが、1960年代までに製造業は衰退し、70年代からは金融マジックで生きながらえることになります。その金融マジックを可能にしたのはアメリカが発行するドルを世界が基軸通貨として認めていたからですが、発行したドルを回収させる仕組みが機能しなくなり、その仕組みが揺らいでいます。 ドルを回収させる仕組みのひとつは石油取引の決済をドルに限定することにありました。その仕組みの中心がサウジアラビアだったのですが、そのサウジアラビアがアメリカ離れをしはじめ、ロシアやイランへ接近しています。もうひとつの回収の仕組みは投機市場ですが、この仕組みは2008年までに不安定化しはじめました。基軸通貨ドルを中心とする支配システムが限界に達したのです。 2013年7月から20年3月までイングランド銀行の総裁を務めたマーク・カーニーもドル体制は終わると考え、各中央銀行が管理するデジタル通貨のネットワークを作ろうというプランを持っています。 すでにアメリカでは1991年12月にソ連が消滅してから世界制覇プロジェクトを始動させました。アメリカへの従属度が不十分な国々、潜在的ライバル、資源国などを制圧しようというわけです。中東ではイラク、シリア、イランがまずターゲットになり、旧ソ連圏ではユーゴスラビアが最初に狙われます。そして2001年9月11日の出来事。 この世界制覇プロジェクトはソ連が消滅し、中国がアメリカに従属していることが前提になっているのですが、21世紀になってからロシアが曲がりなりにも再独立します。その中心にはウラジミル・プーチンがいましたが、それでも2008年8月のジョージア軍による南オセチア奇襲攻撃がロシア軍の反撃で失敗するまでアメリカの支配層は楽観していたようです。 その後、アメリカは正規軍による軍事侵攻ではなく、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団、あるいはネオ・ナチを手先として利用した侵略戦争に切り替えます。地中海沿岸のリビアやシリア、ロシアの隣国であるウクライナでは激しい戦闘が繰り広げられています。 ところが、この過程でアメリカが「張子の虎」にすぎず、ロシアが軍事的にも経済的にも強いということが明らかにされました。しかもロシアと中国が接近、今では戦略的な同盟関係を結んでいます。その結果、アメリカの軍事力や経済力を恐れていた国々がアメリカ離れを起こし始めました。その中にはサウジアラビアも含まれています。 アメリカはターゲット国を制圧するため、その国のエリートを買収、それがダメなら恫喝、さらに何らかの手段による排除といったことを行なってきました。1980年代から「民主」や「人権」をキャッチコピーに使い、侵略するようになります。いわば「イメージ戦争」です。そのために教育システムやマスメディアを支配、1990年代から広告会社が重要な役割を演じるようになり、監視システムの強化も進められてきました。 イメージ戦争では人びとを恐怖させることもあります。2020年から使われている恐怖はパンデミックであり、そのためにCOVID-19という悪霊を作り出しました。その先には社会の収容所化や人間の端末化があります。 例えば、WEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブは2020年6月、COVID-19の騒動を利用して「資本主義の大々的なリセット」を実行すると宣言しました。そのシュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組に出演した際、マイクロチップ化されたデジタル・パスポートの話をしています。最初は服に取り付け、さらに皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合するというプランです。行動を監視するだけでなく、感情、記憶、思考などを管理しようとしているのでしょう。こうした西側のプロジェクトはウクライナで葬り去られるかもしれません。
2022.07.26
米英金融資本とナチス ドイツの敗北が決定的になっていた1943年1月、ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ど・ゴールらとカサブランカで会談、米英両政府の高官たちは同年5月にワシントンDCでも会談する。「無条件降伏」という話が出てきたのはカサブランカにおける会議においてだが、これはドイツの降伏を遅らせることが目的だったとする見方もある。 そして7月に実行されたのがシチリア島上陸作戦。その際、レジスタンスの主力だったコミュニストを抑え込むため、アメリカ軍はマフィアの協力を得ている。ノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は1944年6月だ。その間、アレン・ダレスたちはナチスの高官と接触して善後策を協議しはじめている。いわゆる「サンライズ作戦」だ。 その後、アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させたり、保護したり、雇用する。ラットライン、ブラッドストーン作戦、ペーパークリップ作戦などという暗号名が付けられている。戦時情報機関のOSSやその後継機関であるCIAはルーズベルト政権をクーデターで倒そうとした巨大金融資本と関係が深い。その象徴的な存在がウォール街の大物弁護士だったウィリアム・ドノバンやアレン・ダレスである。 アメリカとイギリスの特殊部隊、つまりイギリスのSOEとアメリカのSO(OSSの一部門)はレジスタンス対策として「ジェドバラ」を1944年に組織、この組織が大戦後、アメリカの特殊部隊やCIAにつながった。 つまり、1943年以降、アメリカとイギリスはソ連を仮想敵国として動き始めている。特にチャーチルの反ソ連感情が強く、1945年4月にルーズベルト大統領が急死、5月にドイツが降伏すると、ソ連への奇襲攻撃を目論んでいる。JPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、攻撃を始めるのは1945年7月1日。アメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。この作戦は発動しなかった理由は。参謀本部が5月31日に計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) 日本では8月15日に国民へ敗北を伝える天皇の声明が放送された。「玉音放送」とか「終戦勅語」と呼ばれているものだが、その半月後の1945年8月30日、グルーブス中将に対してローリス・ノースタッド少将はソ連の中枢15都市と主要25都市への核攻撃に関する文書を提出した。9月15日付けの文書ではソ連の主要66地域を核攻撃で消滅させるには204発の原爆が必要だと推計している。そのうえで、ソ連を破壊するためにアメリカが保有すべき原爆数は446発、最低でも123発だという数字を出した。(Lauris Norstad, “Memorandum For Major General L. R. Groves,” 15 September 1945) 1949年に出されたJCS(統合参謀本部)の研究報告にはソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという記載がある。1952年11月にアメリカは初の水爆実験を成功させ、1954年にSAC(戦略空軍総司令部)は600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約60000万人を殺すという計画を立てる。 1957年に作成された「ドロップショット作戦」は実戦を想定していたようだが、それでは300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊することになっていた。沖縄の軍事基地化はこの作戦と無縁でないだろう。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) アメリカが必要なICBMを準備でき、しかもソ連が準備できていないタイミングで先制核攻撃をすると考えた好戦派の中には統合参謀本部議長だったライマン・レムニッツァーや空軍参謀長だったカーティス・ルメイが含まれる。彼らは1963年後半に先制攻撃する計画を立てたが、邪魔者がいた。大統領だったジョン・F・ケネディだ。ケネディは1963年11月22日に暗殺された。(続く)
2022.07.26
ソ連を攻撃するための原爆 ヤルタ会談の後、連合国側の状況は大きく変化していた。フランクリン・ルーズベルト米大統領が4月12日に急死、副大統領でシオニストを後ろ盾とするハリー・トルーマンが昇格したのだ。ルーズベルトの急死でニューディール派の影響力は急速に低下、ウォール街の巨大資本がホワイトハウスを奪還することになる。 ソ連軍による中国東北部の占領はトルーマン政権にとって容認できないことだった。彼は国民党に中国を占領させようとしていたからだ。ソ連と東ヨーロッパ情勢に関する交渉と絡め、中国からの撤兵をアメリカはソ連に認めさせたという見方がある。そうした交渉で原爆投下は影響を及ぼしただろう。 大戦中、ドイツや日本も核兵器の研究開発を進めていたが、連合国側で最も積極的だったのはイギリス。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてプロジェクトが始まり、MAUD委員会なるものが設立された。 この委員会のマーク・オリファントがアメリカへ派遣されてアーネスト・ローレンスと会ったのは1941年8月。そしてアメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになったと言われている。この年の10月にルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃する2カ月前のことだ。 1943年には核兵器用のウランとプルトニウムを製造するため、テネシー州オーク・リッジに4施設が建設され、そのひとつはオーク・リッジ国立研究所へと発展した。ワシントン州に建設されたハンフォード・サイトではプルトニウムを製造するため、1944年9月にB原子炉が作られている。 こうして「マンハッタン計画」が始まったが、その計画を統括していた陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) マンハッタン計画が本格化した頃、すでにドイツ軍の主力がスターリングラードでソ連軍に降伏、独ソ戦の勝敗は決していた。ソ連への軍事侵攻はアドルフ・ヒトラーの命令で全戦力の4分の3を投入、その部隊が敗北したのだ。残りの4分の1が西ヨーロッパで戦っていた相手はコミュニストを主体とするレジスタンスだけだ。(続く)
2022.07.25
ロシア軍が23日にオデッサをミサイル2機で攻撃したとウクライナ政府は主張、アメリカのアンソニー・ブリンケン国務長官はロシアの攻撃を非難した。それに対し、ロシアは黒海への出入りを管理しているトルコ政府に対し、オデッサへの攻撃に自分たちは関与していないと報告しているという。ただ、ロシア海軍はオデッサに停泊しているウクライナの軍艦や兵器庫をミサイル攻撃したとしている。穀物倉庫に被害はなかったことが上空から撮影された写真で確認されている。 オデッサへの攻撃はウクライナの経済活力を弱め、穀物の搬出妨害によって世界への食糧供給を減らすことが目的だとウォロディミル・ゼレンスキー政権は主張しているが、2月24日にロシア軍がウクライナで軍事作戦を始めてからウクライナの親衛隊(ネオ・ナチ)は焦土作戦で穀物を焼却しているとロシア国防省は主張している。ゼレンスキー政権は港に機雷を設置して輸送を妨害してきた。 ゼレンスキー政権は天然ガスをはじめとするエネルギー資源や食糧の供給を止めることでEUを脅し、ウクライナへカネや兵器を提供させようとしている。そうして得たカネの相当部分はゼレンスキーの一派やネオ・ナチの懐へ入り、兵器はブラックマーケットで売り捌かれていると言われている。 2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したネオ・ナチはベルクト(警官隊)に所属していた隊員の命を狙い、検察官事務所へ押し入り、銃を振りかざしながら検察官を恫喝していた。ネオ・ナチはCIAがしばしば手先として使う犯罪組織と言えるような集団だ。 そうした犯罪組織のような団体のメンバーが中心になって設立されたのがアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)。その組織を資金面から支えていたイゴール・コロモイスキーはウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍を持つシオニストの富豪で、ネオ・ナチの黒幕的な存在。ゼレンスキーがコロモイスキーの操り人形だということはCIA系のメディアさえ伝えていた。
2022.07.25
WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長は7月23日、サル痘について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に相当すると宣言した。21日に開かれた専門家による緊急委員会では9人が反対、6人が支持したという。事務局長が強引に緊急事態を宣言したと言えるだろう。 サル痘の場合、5月7日にイギリス健康安全保障庁(UKHSA)が感染者を発見したと発表したところから始まるが、昨年3月にNTI(核脅威イニシアティブ)とミュンヘン安全保障会議はサル痘のパンデミックが起こるというシミュレーションを実施、11月に報告書が発表されている。その頃、ビル・ゲーツは将来のパンデミックや天然痘を使った攻撃について語っていた。 その報告書によると、「ブリニア」なる国で2022年5月15日に感染が始まり、23年12月1日には2億7100万人が死亡することになっている。ちなみに、NTIはCNNを創設したテッド・ターナーらによって創設された団体。ターナーはビル・ゲイツと同じように人口削減を主張している。実際にイギリスでサル痘の患者が発見されたと発表されたのは2022年5月7日のことだ。 善意に解釈すれば「奇跡的な偶然」だが、「やりすぎ」と考える人もいる。ポルトガルの研究者が5月23日にNIH(国立衛生研究所)で発表した報告によると、サル痘の病原体は研究者の手が加えられているだけでなく、意図的に撒かれた可能性があるという。 似たようなことがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動でもあった。2019年12月に中国の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状の肺炎患者が見つかる2カ月前、ニューヨークでコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション「イベント201」がジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)の主催で行われている。 それだけでなく、CIAは2005年9月に中国や東南アジアのような地域でパンデミックが起こるという想定に基づく報告書を作成、10年5月にはロックフェラー財団とGBN(グローバル・ビジネス・ネットワーク)が「技術の未来と国際的発展のためのシナリオ」を発表した。 この報告書では、2012年に新型インフルエンザのパンデミックが起こり、マスクの着用、公共施設やマーケットの入り口における体温の測定が強制され、そうした管理、監視体制はパンデミックが去った後も続くとしている。支配者だけでなく被支配者である市民も安全と安定を得るために自らの主権やプライバシーを放棄するというのだ。 病気の爆発的な感染拡大を「予見」しているというより、そうした場合にどのような政策がとられ、人びとをどのように誘導するかを知らせているように見える。予行演習とも言えそうだ。 アメリカの経済学者で、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られたと指摘している。アメリカにおいて独立した透明性のある調査を行う必要性を訴え、6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターでアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘した。 サックスは新自由主義を世界へ広げる伝道者的な人物で、支配層に近い存在だ。そうした人物までもがCOVID-19騒動のいかがわしさを指摘するようになったのだ。COVID-19に替わる新たな「悪霊」が必要になっている。そうした時に出現したのが「サル痘」だが、人びとの反応は悪い。そこで名称を変更しようという意見も出ていた。イメージ戦争ではタグに書き込む言葉は重要だ。それで人びとは操られる。
2022.07.24
トリニティでの核爆発実験 今から77年前の7月24日、ハリー・トルーマンはアメリカ大統領として原子爆弾の投下を許可した。その8日前、つまり7月16日にニューメキシコ州のトリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験が行われ、成功したことを受けてのことだ。その翌日からポツダム会談が始まる。 当初の実験予定日は7月18日と21日の間だったのだが、トルーマンの意向で会談の前日に行ったという。核兵器の開発を目的とする「マンハッタン計画」はアメリカとイギリスが共同で行っていたもので、トルーマンが意識した相手はソ連ということになる。 アメリカ、イギリス、中国は7月26日に「ポツダム宣言」を発表、ウラン型原爆「リトル・ボーイ」が8月6日に広島へ投下され、その3日後に長崎へプルトニウム型「ファット・マン」が落とされた。この投下日はソ連の参戦を意識してのものだったのだろう。 ソ連の参戦は1945年2月、クリミアのヤルタ近くで開かれたアメリカ、イギリス、ソ連の首脳による話し合いで決まっていた。ドイツが降伏し、ヨーロッパでの戦争が終結してから2カ月から3カ月後にソ連が日本に宣戦布告する条件を取り決めている。 では、ドイツはいつ降伏したのか? ドイツ軍最高司令部の作戦部長だったアルフレート・ヨードルは連合軍のドワイト・D・アイゼンハワー司令官と交渉、5月7日にフランス北東部にあるランスで無条件降伏および停戦文書に署名。その文書は中央ヨーロッパ時間の5月8日午後11時01分に発効することになったのだが、ドイツ軍を敗北させたソ連軍の影は薄く、スターリンは怒る。 この文書へイワン・ススロパロフが署名しているが、署名について赤軍総司令部が承認していない上、この将校には降伏文書に署名する権限が与えられてなかった。つまりススロパロフをソ連の代表とは見なせない。そこでスターリンはベルリンでソ連軍の最高司令官が立ち会って行われるべきだと主張、5月8日の深夜(モスクワ時間では5月9日)に署名されている。 ソ連は日本に対して8月8日に宣戦、日本が占領していた中国東北部や千島列島などへ攻め込んだ。ギリギリのところで約束を守ったということになるだろう。ソ連が参戦することを知っていたアメリカはその前に広島へ原爆を日本へ投下したわけだ。 なお、ヤルタで結ばれた協定の中には、現在のサハリン南部や近くにある全ての島々はソ連へ返還し、千島列島はソ連へ引き渡すことも含まれてる。(続く)
2022.07.24
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は7月15日現在、前の週より175名増えて2万9635名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近い。 死に至らずとも、帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害、あるいは心臓発作も早い段階から報告されていた。ウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させる「ADE(抗体依存性感染増強)」が引き起こされると懸念する専門家も少なくなかったが、実際、そうしたことが引き起こされているようだ。 コロナウイルスの表面にはスパイク・タンパク質と呼ばれる突起物がある。「ワクチン」は体内でスパイク・タンパク質に抗体を作らせることになっているのだが、抗体には感染を防ぐ「中和抗体」と感染を防がない「結合(非中和)抗体」があり、結合抗体はウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させることがあるのだ。その結果、人間の免疫システムに任せておけば問題のない微生物で深刻な病気になる可能性がある。スパイク・タンパク質が血液循環システムの中へ入り、傷つけると説明する研究者もいた。 また、「mRNAワクチン」で使われているLNP(脂質ナノ粒子)は人体に有害で、投与されたLNPは肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布すると報告されている。LNPが卵巣に分布する量は微量なので心配しなくて大丈夫だとする議論もあるが、ごく微量であろうと、存在してはいけない物質が存在する。LNPが卵子に影響、不妊につながることは否定できない。 スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「mRNAワクチン」の中に「酸化グラフェン」が存在していると発表したが、カンプラ教授が発表した論文で示されていた周波数の分析を見たドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく「水酸化グラフェン」だろうとしている。いずれにしろこの物質は一種の半導体だが、ノアックは微小なカミソリの刃だとも表現している。臓器を傷つけるということだ。そもそも、なぜこの物質が入っているのか不明だ。 他に類を見ない危険な「ワクチン」だということになるが、実はワクチンでなく遺伝子操作だと指摘する専門家がいる。そうした説明は「ワクチン」を推進する側からも聞こえてくる。例えばメーカーのひとつ、モデルナの説明を読むと彼らはコンピュータのOS(オペレーティング・システム)と同じようなmRNA技術プラットフォームを作るつもりだ。 同社の最高医療責任者のタル・ザクスは2017年12月にTEDで行った講演の中で、この技術を使い「生命のソフトウェアをハッキングする」と発言した。mRNA技術プラットフォームがOSならそれによって動かされるプログラムが想定されているのだろう。 また、2021年10月にはドイツの世界的な化学会社であるバイエルの重役、ステファン・ウールレヒが「WHS(世界健康サミット)」でこの「ワクチン」について、「遺伝子治療」だと説明している。 世界規模で遺伝子操作が行われていると言えるが、それを推進するために「パンデミック」なる呪文が唱えられてきた。2019年12月に中国の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状の肺炎患者が見つかり、国際ウイルス分類委員会が20年2月11日に病原体を「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」と命名、WHO(世界保健機関)は「パンデミック」を宣言した。 パンデミックという用語は人びとに恐怖を与える。多くの人はバタバタと人が死んでいくイメージを抱いているだろうが、現在の定義ではそうしたことを想定していない。定義が変更されているのだ。 2009年1月から10年8月にかけて「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行する直前、WHOはパンデミックの定義を変更、多くの死亡者が存在しなくても宣言できるようになったのだ。この時のパンデミック宣言は正しくなかったと考えられている。その新定義に基づいてCOVID-19でもパンデミックが宣言された。 2019年12月に武漢で見つかった肺炎患者の症状がSARSに似ていたということは、深刻な病気だったと推測できるのだが、そうした症状の人が世界に広がったとは言えない。局地的に報告されているだけだ。 その武漢で2020年2月から感染対策を指揮した中国軍の陳薇は02年から中国で広まったSARSを押さえ込んだことで知られている。その病原体は現在SARS-CoV-1と呼ばれているようだが、その時の感染者数は8096名、死亡者数は774名。そのうち中国本土における感染者数は5327名、死亡者数は349名だったとされている。 この伝染病を押さえ込むため、陳薇たちは医薬品を手当たり次第に試し、最も有効だったものがインターフェロン・アルファ2b。キューバで研究が進められている医薬品で、これをSARS-CoV-2に対して使ったところやはり効果があった。そこで、早い段階で沈静化させることに成功したのだ。この事実だけで「mRNAワクチン」の緊急使用を認める理由はなくなる。 この薬はリンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされ、吉林省長春にも製造工場がある。中国の国内で供給できたことも幸いしたのだろう。今回の件で中国の習近平国家主席はキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたと伝えられている。 現在の定義では多くの人がバタバタと死ぬ必要がないとはいえ、怪しげな「ワクチン」を接種させるには、それなりの恐怖を与える必要がある。そした時、好都合なことに有名人が死んだりしたが、死亡者数が水増し、あるいは捏造されていた。 COVID-19騒動が始まった当初、死亡した陽性者の平均はどの国でも80歳に近く、しかも大半の人は心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていた。何が死因なのかわからないのだ。アメリカのCDCは2020年8月の段階で、COVID-19だけが死因だと言える人は全体の6%にすぎないと認めているが、これも多すぎると考える人がいる。 マスコミが「確認された感染者」としている人の約9割は無症状だとされている。無症状で「感染者」だと判定された人はPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で陽性になった人だが、これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術であり、診断に使うことは想定されていない。 PCRを病気の診断に使うべきでないと語っていた専門家の中には、この技術を開発して1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスも含まれている。マリスは騒動が始まる前、2019年8月7日に肺炎で死亡した。 増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、しかも偽陽性の確立が増えていくことも知られている。一体何を調べているのか明確でない。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているのだが、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だった。医学的に無意味なことをしているわけであり、「確認感染者」の感染が確認されているとは言えない。 CDCはSARS-CoV-2への感染を確認するためだとして「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を利用していたが、2021年7月21日、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)を2021年12月31日に取り下げると発表した。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないと認めている。 ニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCRのような高感度の簡易検査は「偽パンデミック」の原因になる可能性があると警鐘を鳴らした。その例として、ニューハンプシャー州にあるダートマース・ヒッチコック医療センターでの出来事を紹介している。PCRの問題を有力メディアは知っていたのだ。 アメリカではPCRすら使わない水増しがあった。スコット・ジャンセン上院議員が2020年4月8日にFoxニュースの番組の中で語ったところによると、病院では死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいると話している。COVID-19に感染していたことにすると、病院が受け取れる金額が多くなるからだという。 実際、そうした指示は出ていた。CDC(疾病予防管理センター)は昨年4月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら、死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。 WHOを含む医療利権は「COVID-19」なる悪霊を生み出し、危険な「ワクチン」の接種を推進、社会を収容所化し、人間を巨大コンピュータの端末にしようとしている。 ロシアでは感染対策として国境での規制が導入されたが、今年7月15日からその規制が解除されると7月4日に発表された。その直前、ウラジミル・プーチン露大統領はユーリ・チカンチン連邦財務監視庁長官と会談、外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へ多額の資金が渡っていることを問題にしている。 こうした金銭の授受は合法だというが、こうした慣習が医療システムを損なうことは間違いない。医薬品メーカーをスポンサーとする有力メディアにも似たような問題がある。
2022.07.23
ウォロディミル・ゼレンスキーを装い、映画の原作にもなった小説を書いているスティーブン・キングへ電話し、15分ほど会話した人物がいる。その人物をゼレンスキーだと信じたキングは会話の中でネオ・ナチが信奉するステパン・バンデラを賞賛、話題になった。 ウクライナに限らないが、アメリカ支配層が流す偽情報はハリウッド映画色が濃い。「勇敢な市民が邪悪な侵略軍に立ち向かい、勝利する」という「ダビデとゴリアテ」的なストーリーなのだが、ハリウッド映画好きの人には受けるようだ。 西側で流されてきたウクライナにおける戦闘のストーリーではロシア軍がネオ・ナチを主体とする親衛隊に負けるということになっていた。実際は違った。ドンバス(ドネツクとルガンスク)を2014年から占領していた親衛隊の中核部隊であるアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)は住民を人質にしていたことからロシア軍が時間をかけていただけ。解放された住民は異口同音に親衛隊の残虐さを告発している。 ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」は、ゼレンスキー政権が送り込んだ戦闘部隊は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえず、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると分析していたが、そうした流れになっている。 ドンバスでウクライナ軍が組織的に戦うことができなくなると、一気にドニエプル川までロシア軍は制圧する可能性があるが、そうしたことにならないように西側諸国は兵器を供給している。例えばフランスのカエサル155mm自走榴弾砲、アメリカのHIMARS(高機動ロケット砲システム)やイギリスのM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)などだ。 特にHIMARSやM270 MLRSは高性能で、それぞれの射程距離を約80キロメートルだとされているが、最大射程距離は約300キロメートルに達するという。ここにきてアメリカは射程距離300キロメートルのミサイルを提供するという話が流れているが、ロシア国防省によると、7月5日から20日にかけての期間に4台のHIMARSをロシア軍は破壊したという。アメリカがウクライナへすでに渡したHIMARSは12台で、さらに8台を供給すると言われている。もし射程距離300キロメートルのミサイルでクリミアを攻撃した場合、ロシア軍はそれだけ広い地域に対する攻撃を行うことになる。
2022.07.23
ネオコンの宣伝機関的な色彩の濃いCNNの依頼で6月13日から7月13日にかけて実施された世論調査によると、バイデン政権の仕事ぶりを認める人は全体の38%にすぎず、認めない人は62%に達する。大統領に就任して間もない2021年4月に認める人が53%いたことを考えると、大幅な落ち込みだ。バイデン政権からアメリカの有権者は離れた。 分野別に見ると、認める人が最も少ないのは「インフレーション」の25%で、「経済」も30%。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)対策」として打ち出した政策によって人の動きが厳しく制限され、社会は収容所のようになった。そのひとつの結果として経済活動は麻痺して企業は倒産、人びとは失業、ホームレスや自殺者が増加している。 アメリカの従属している国々でも似たように、政府への支持低下が起こっている。例えば、イギリスではボリス・ジョンソン首相が辞任、フランスでは6月の議会選挙でエマニュエル・マクロン大統領の与党「LREM」が大幅に議席を減らしているが、いずれの理由もおそらくアメリカと同じだ。 アメリカをはじめとする国々て行われている政策は資本主義を「大々的なリセット」することが目的なのだろうが、リセットする前に迷走し始めている。このリセットを宣言したWEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組でマイクロチップを脳へ埋め込むことで外部の巨大コンピュータと人間をつなげるという構想も明らかにした。いわば人間の端末化だ。 こうした発想の背景には優生学がある。イギリス人のフランシス・ゴルトンから始まるとされているが、個人というより、そうした考え方のグループが存在していたというべきだろう。ゴルトンのいとこにあたるチャールズ・ダーウィンもその中に含まれている。 言うまでもなく、ダーウィンは『種の起源』を書いたことで知られている人物。最近の研究報告を読むと、生存競争において有利な種が「自然選択」によって残り、繁栄するというほど自然界は単純でないようだ。 そうしたことが自然科学の世界では明らかになってきたが、社会科学の世界では様子が違う。イギリスではハーバート・スペンサーが適者生存を主張、それがアメリカの支配層に受け入れられた。ビル・ゲーツやテッド・ターナーを含むエリートは「人口論」を信仰しているが、これは「劣等な人間を駆逐する」という発想からきているようにも思える。 富豪や権力者は選ばれた人間だということ。「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)というわけだ。 経済社会は競争の場であり、勝利者が生き残り、さらに富という報酬が与えられ、敗北者は獅子の餌食になるというのだ。スペンサーたちによると、競争で強者が生き残ってその才能が開発され、その一方で弱者は駆逐される。弱者に無慈悲であればあるほど社会にとっては「優しい」のだという。(J. K. ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳『ゆたかな社会』岩波書店、2006年) キリスト教の聖典である新約聖書のマタイによる福音書やマルコによる福音書では「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と書かれていて、富を蓄積すること自体が良くないとされているのだが、それを否定している。 優生学は19世紀のイギリス支配層に蔓延していたが、信徒のひとりがセシル・ローズ。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に『信仰告白』を書いた。その中で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張、領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。 当時、イギリスを動かしていたのはローズのほか、彼のスポンサーでもあったネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)。その後、アルフレッド・ミルナー(ミルナー卿)が中心的な存在になった。 この優生学がアメリカへ波及するのだが、その信奉者を「白人至上主義者」と言うことはできない。彼らが優れた種だと考えているのはゲルマン/北欧系で、その中にアングロ・サクソンも含まれている。日本人が「白人」だと考えている集団の中にも差別の対象になっている人が少なくない。ナチスもそうした優秀な種を想定、「アーリア人」というタグをつけた。彼らが信奉した優生学の発祥地はイギリスだ。 こうした思想に基づいて侵略戦争が展開され、破壊、殺戮、略奪が繰り広げられた。人種差別はそうした歴史と密接に関係している。こうしたアングロ・サクソンにアジアを侵略する拠点を提供し、戦闘員を供給したのが日本に他ならない。
2022.07.22
アメリカのジョー・バイデン大統領とロシアのウラジミル・プーチン大統領が今月、中東を訪れた。バイデンは7月13日から4日間にわたってイスラエルとサウジアラビアを訪問、またプーチンは19日にテヘランでイランとトルコの首脳と会談している。 イスラエルとサウジアラビアはイギリスが長期戦略に基づいて作り上げた国であり、イギリスの戦略を引き継いだアメリカにとっても重要な位置を占めている。 アメリカはイスラエルへ多額の資金や兵器を供給、その資金はロビー活動という形でアメリカの政界へ還流している。サウジアラビアは石油取引の決済をドルに限定、貯まったドルを兵器の購入や預金、投資などの形でアメリカへ還流させてきた。アメリカの支配システムの柱であるドル体制を支えてきたのだ。 そのイスラエルとサウジアラビアがウクライナの問題でアメリカと一線を画し、アメリカの支配層を慌てさせている。イスラエルは何とか引き戻したようだが、サウジアラビアのアメリカ離れは止まらない。 今回、バイデンはサウジアラビアで石油相場の高騰について議論したと見られているが、アメリカの思惑通りにはいかなかったようだ。それ以上にアメリカを焦らせているのはサウジアラビアがBRICSへ接近していることだろう。 言うまでもなく、BRICSの中心はロシアと中国。サウジアラビア国王のサルマン・ビン・アブドラジズ・アル・サウドは2017年10月にロシアを訪問、防空システム「S-400」を含む兵器の取り引きについて話し合うなどアメリカから離れ始めている。 その年の4月、ドナルド・トランプがフロリダ州で習近平と会食している最中、地中海に配備されていたアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル「トマホーク」59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射させた。中国に対する恫喝のつもりだったのかもしれないが、発射したミサイルの6割がロシアの防空システムによって無力化されてしまった。 この攻撃に合わせ、アメリカの傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)がシリアで一斉に攻勢をかける手筈になっていたとも言われているが、そうした展開にはならなかった。 ドナルド・トランプ政権は2018年4月にもシリアをミサイル攻撃している。この時はアメリカ軍だけでなくイギリス軍やフランス軍も参加して100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したのだが、この時には7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムの「パーンツィリ-S1」が効果的だったと言われている。 その後、サウジアラビアはイランとの関係も修復する動きを見せ、秘密裏に話し合いを進める。その交渉でイラン側のメッセンジャーを務めていたのがイランのイスラム革命防衛隊の特殊部隊「コッズ軍」を指揮していたガーセム・ソレイマーニー。2020年1月3日、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えてバグダッド国際空港へ到着した彼をアメリカは暗殺したのだ。 関係国を脅し、関係修復の動きを潰すつもりだったのだろうが、これは失敗に終わる。今回、バイデンがサウジアラビアを訪問した目的のひとつはサウジアラビアを引き戻すことにあったのだろうが、成功したようには見えない。 一方、ロシアはテヘランでイランのイブラヒム・ライシ大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談、シリア情勢について話し合ったという。ロシアはアメリカによる不法占領、破壊、略奪などを非難している。 中国の「一帯一路」に連結する形でインド、パキスタン、イラン、アゼルバイジャン、トルコ、ロシアなどを連結する交易ルートができつつあり、アメリカの経済戦争に対抗できる態勢が整いつつある。このネットワークにサウジアラビアも興味を示しているわけで、日本人が服従しているアメリカは孤立しつつある。その事実をバイデンとプーチンの中東訪問は示した。
2022.07.21
アメリカのジョー・バイデン政権はロシアや中国を制圧し、従属国にしようとしてきた。大統領に就任早々、「ルビコンを渡った」とはそれを意味している。バイデンを担いでいる勢力にとってロシアとの和平はありえないだろう。 ここにきてヘンリー・キッシンジャーなどがドンバスやクリミアの割譲を主張、バイデンの対ロシア戦争が発展途上国だけでなくヨーロッパや日本にダメージを与えていることからアメリカへの反発だ強まっている。バイデン政権に焦りの色が見える。 そうした制圧プランは19世紀のイギリス支配層から始まる。そのプランをまとめたのが「地政学の父」と呼ばれるハルフォード・マッキンダー。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを占領して世界の覇者になるというプランだ。 これをアメリカは引き継義、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」もマッキンダーのプランに基づいているが、彼が考えたのはあくまでも封じ込めで、全面戦争は想定していなかったようだ。 ズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーのプランに基づいているのだが、これは軍事的な色彩が濃いと言えるだろう。ムスリム同胞団やワッハーブ派を戦闘員として使ってアフガニスタンを不安定化させてソ連軍を引きずり混むというプロジェクトを国家安全保障大統領補佐官として実行したのはブレジンスキーだ。 ポーランド貴族の家に生まれたズビグネフ・ブレジンスキーは反ロシア感情が強い。やはり反ロシア感情が強く好戦的なチェコスロバキア出身のマデリーン・オルブライトはコロンビア大学でズビグネフ・ブレジンスキーから学んでいる。バラク・オバマもブレジンスキーの教え子だという。ズビグネフの戦略を引き継いだ息子のマーク・ブレジンスキーは2022年2月22日からポーランド駐在米大使を務めているが、その前日、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はドンバス(ドネツクとルガンスク)の独立を承認した。 ウクライナの東部に位置するドンバスで戦争が始まったのは短期的に見ても2014年2月22日にバラク・オバマ政権を後ろ盾とするネオ・ナチによってビクトル・ヤヌコビッチ大統領が暴力的に排除された時に始まる。 クーデターは首都のキエフで行われたが、ヤヌコビッチの支持基盤は東部と南部。その地域に住む人びとはロシア語を話し、ロシア正教の信徒が多い。ウクライナ語を話し、カトリックの信徒が多い西部とは別の文化圏にあると言える。 宗教や民族の違いを利用して対立を作り出して侵略するのはアメリカやイギリスの支配層が得意とするところだが、ウクライナの西部地区に住む人びともロシアと友好的な関係を望んでいたはずだ。 2019年の大統領選挙で当選したボロディミル・ゼレンスキーには強力な後ろ盾が存在していたと言える。ウクライナに限らず、「スター」はシステム的に作り出される。ハリウッドは典型例だが、そこには犯罪組織だけでなく情報機関が深く関与している。そうしたシステムによってゼレンスキーは「コメディアン」として売り出され、良いイメージが人びとに植え付けられた。 イメージ戦略のひとつとして、選挙期間中にゼレンスキーは腐敗の根絶、進歩、文明化、そしてドンバスとの和平実現といった公約を掲げている。それを信じた国民はゼレンスキーを選んだわけで、それは国民がロシアとの友好的な関係を望んでいたことを示している。 しかし、2021年にアメリカ大統領に就任したジョー・バイデンは自らが副大統領を務めたオバマ政権の反ロシア政策を踏襲、ゼレンスキー政権もアメリカに従う。バイデン政権がロシアに対して経済戦争を仕掛け、軍事的な挑発を繰り返したことは本ブログでも書いてきた。 ロシアを敵視するウクライナの一般国民は多くなかったが、エリート層やナショナリストの中には反ロシア感情の強い勢力が存在、同じように反ロシア感情が強いポーランドのエリートやナショナリストと手を組んだ歴史もある。 ポーランドにおける反ロシア運動の指導者として歴史的に有名な人物はユゼフ・ピウスツキだ。ピウスツキは日露戦争が勃発した1904年に来日、彼の運動に協力するよう、日本側を説得している。つまり日本とも関係がある。 ポーランドの反ロシア勢力は1925年に「プロメテウス同盟」という地下組織を編成、ウクライナの反ロシア派も加わるが、ポーランド主導の運動だったことから離反するウクライナの若者が増え、OUN(ウクライナ民族主義者機構)が組織されることになった。 16世紀から18世紀にかけて「ポーランド・リトアニア連邦」なる国が存在、1600年頃に領土は最も広くなった。その当時のポーランド・リトアニア連邦を復活させようとピウスツキたちは妄想する。カトリック教徒の中にはバルト海と黒海に挟まれた中央ヨーロッパにカトリックの帝国を作ろうと考える勢力も存在した。神聖ローマ帝国の復活だ。そこから「インテルマリウム」が構想され、「三海洋イニシアチブ」につながる。 この構想は単なる妄想ではなく、1922年には中央ヨーロッパを統一するために「PEU(汎ヨーロッパ連合)」が組織されている。その中心にはオットー・フォン・ハプスブルク、リヒャルト・フォン・クーデンホーフ-カレルギー、そしてウィンストン・チャーチルが含まれていた。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) リヒャルト・フォン・クーデンホーフ-カレルギーの父親はオーストリア・ハンガリー帝国の外交官として1892年に来日、青山みつと結婚している。このリヒャルトと親しくしていたイタリアの有力貴族、バレリオ・ボルゲーゼもヨーロッパの統合を目指して活動している。 ボルゲーゼはシエナ出身の貴族で、ローマ教皇パウロ5世もこの家系の人間。ベニオ・ムッソリーニ時代のイタリアでファシストの中心メンバーだったことでも知られている。第2次世界大戦後にはアメリカの情報機関と連携し、さまざまな秘密工作にも参加した。 大戦後、アレン・ダレスをはじめとするアメリカのエリートはイギリスのウィンストン・チャーチルからの協力を受け、ヨーロッパの統合を目指すACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)を設立した。1948年のことだ。ACUEで委員長を務めたのはアメリカの戦時情報機関OSSの長官を務めたウィリアム・ドノバンだ。(Richard J. Aldrich, “OSS, CIA and European Unity,” Diplomacy & Statecraft, 1 March 1997) その当時、ヨーロッパ統一運動を指導していたグループにはポーランド生まれの「元ファシスト」で、イギリスの情報機関MI6のエージェントになったユセフ・レッティンゲルが含まれていた。レッティンゲルはオランダ女王の夫、ベルンハルト殿下を巻き込み、かの有名な「ビルダーバーグ・グループ」を組織する。 このグループの第1回目の会議がオランダのアルンヘム近くにあるビルダーバーグ・ホテルで開かれたのは1954年5月。コミュニズムやソ連に関する問題などが討議された。グループの名称は会議が開催されたこのホテルの名前からきている。
2022.07.20
ウォロディミル・ゼレンスキー政権は西側から高性能兵器を供給されている。フランスから供給されたカエサル155mm自走榴弾砲、アメリカから供給されたHIMARS(高機動ロケット砲システム)、またイギリスから供給されたM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)などだが、そうした兵器を使い、ウクライナ軍はドンバス(ドネツクやルガンスク)の住民を狙い、殺傷している。 ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」が分析したように、ゼレンスキー政権が送り込んだ戦闘部隊は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえず、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できるという状態だった。そのため、アメリカ/NATOは高性能兵器を急ピッチで投入、操作技術を訓練してきた。HIMARSやM270 MLRSの射程距離は約80キロメートルだとされている。ロシア軍の攻勢を抑えられないゼレンスキー政権はクリミアをHIMARSで攻撃すると言い始めた。 クリミアは2014年3月16日に実施されたロシアと統合を問う住民投票で圧倒的な賛成でロシアと統合されている。キエフでネオ・ナチが行っている残虐行為を知ったクリミアの住民は住民投票を実施、80%を超える住民が投票に参加して95%以上が加盟に賛成したのだ。そこで、ロシア政府はクリミアをロシア領と考えている。クリミアが攻撃された場合、これまでとは次元の違う攻撃をロシア軍は始めるだろう。 バラク・オバマ政権がウクライナでクーデターを実行したのは2013年11月から14年2月にかけての時期。2010年の大統領選挙で勝利したビクトル・ヤヌコビッチは暴力的に排除された。 ヤヌコビッチの支持基盤、つまりウクライナの頭部や南部の住民はキエフで誕生したクーデター体制を拒否、クリミアはロシアとの統合を選んだ。他の地域でもクーデター体制を拒否する動きが広がり、それを鎮圧するためにネオ・ナチが動いた。オデッサでは住民が虐殺され、5月9日にはドネツクのマリウポリへクーデター政権は戦車部隊を突入させて住民を虐殺している。 それでも住民はクーデターを拒否、5月11日にドンバスで自治(ドネツク)や独立(ルガンスク)の是非を問う住民投票が実施された。ドネツクでは89%が賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が賛成(投票率75%)している。この結果を受け、ドンバスの住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は助けず、キエフ政権と反クーデター派の住民との間で戦争が始まった。 ウクライナのクーデターは長い準備期間を経て実施されたのだが、同国の政治家、オレグ・ツァロフは2013年11月20日にクーデター計画の存在を議会で指摘していた。そのツァロフは今年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出している。 ツァロフはアピールの中でウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らしたのだ。その作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしていると主張、SBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。 ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地を破壊されたと言われている。同時にウクライナの生物兵器研究開発施設も狙われた。 ロシア軍はターゲットを破壊しただけでなく、部隊を派遣して重要文書を回収している。そうした文書の中には、ゼレンスキーが1月18日に出した指示に基づいて親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まっていたことを示すものが含まれていた。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。 その計画が始動する直前にロシア軍が動いた。住民をウクライナの親衛隊は人質のとり、脱出を図った人などを殺傷しているが、少なからぬ住民がロシア軍の救出され、アゾフ大隊などクーデター体制側の残虐行為を証言している。 現地には西側のジャーナリストも入っている。ロイターのように住民の証言を切り刻み、西側の好戦派が描くシナリオに沿った話に仕立て直すケースもあるが、独立系のジャーナリストは事実を発信している。 ドイツのシュピーゲル誌の場合、ロイターの記者によるインタビューのオリジナルを流して話題になった。マリウポリのアゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバの証言を3分間の映像付きで5月2日に伝えたのだが、ロイターが流したのは1分程度だった。ロイターが切り捨てた約2分間も含まれていたのだ。そこには残虐な親衛隊からロシア軍が救ってくれたという証言が含まれていた。シュピーゲル誌は慌てて掲載した映像を削除している。(インタビューのロイター版と削除部分の映像:ココ) 独立系ジャーナリストの情報を西側の有力メディアは無視するが、それだけでなく、ウクライナ軍による住民への攻撃を伝えていたドイツのジャーナリスト、アリナ・リップは言論規則に違反しているとして起訴され、懲役3年を言い渡される可能性がある。 ゼレンスキーが行っている言論統制は苛烈だ。今年2月24日にロシア軍がウクライナを攻撃した当初から、キエフ政権の治安機関であるSBU(ウクライナ保安庁)はロシアと話し合いで問題を解決しようと考える市長を処分、ルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡している。 3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われている。元SBU将校のバシリー・プロゾロフによると、SBUには「死の部隊」がある。 SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝されていたが、これはウクライナ国民を恐怖させ、命令に従わせることが目的だろう。4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。 キムにとって「裏切り者」とはゼレンスキーの政策に同意しない人びとだ。そのゼレンスキー政権は2022年3月19日に11の野党を禁止、政府の政策を支持する放送局以外のメディアは消えたと言われている。
2022.07.19
7月8日に安倍晋三が殺害された。奈良市内で演説中、元海上自衛隊員の山上徹也に銃撃されたとされているが、その直後から違和感を感じる人は少なくなかったようだ。 違和感のひとつは警護の警察官が安倍の周囲に少ないこと。安倍は総理大臣の経験者であり、しかも評判が悪い。通常より警備は厳しくて当然であり、山上が車道へ入った時点で通常は警備の人間が動く。 そのほかに警護の担当者がいるはずだが、この人たちは「盾」である。近くにいなければならない。警護に慣れているはずの警視庁警備部警護課のSPもいたという。 山上が使ったのは手製の銃だというが、撃たれた時の様子も不自然。銃弾による傷が背中になく、前方の高い位置から撃たれたように見えると指摘する人もいる。(例えばココ) 7月7日にイギリスのボリス・ジョンソン首相が辞任を表明、それから間もなくフランスのエマニュエル・マクロン大統領がUberとの取り引きに疑惑があると攻撃され始めた。ふたりとも問題の多い人物だが、安倍殺害と近いタイミングでこうしたことが起こったことに興味を持つ人もいる。ここにきて世界の流れが変化しているのだが、その変化を止めようとしている人がいると推測する人もいる。 WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長が7月12日にマスクの着用を訴えたことに注目する人もいる。マスクは屈服の象徴として使われているように思えるが、ここにきて世界的にマスク着用のルールが弱くなっている。日本でもその流れに乗っていた。その流れを止めようとしている。 2020年3月11日にWHOは「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)」が世界的に感染爆発していると宣言、それを口実としてWHOや各国政府が打ち出した政策によって人びとの行動は制限され、監視システムが強化され、デジタル・パスポートの導入も図られている。社会の収容所化だ。 このWHOという「国際機関」へ多額の資金を提供しているのはアメリカ、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、イギリス、そしてGaviだ。このGaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された団体である。 COVID-19対策として打ち出された政策によって経済活動は麻痺して企業は倒産、人びとは失業し、ホームレスや自殺者も増加した。航空機での移動は特に制限されることになり、人びとの交流は減っている。現在の経済システムが崩壊しているのだが、その先に資本主義の「大々的なリセット」を計画している。 この計画を宣言したWEFのクラウス・シュワブは人類の改造も目論んでいる。マイクロチップ化されたデジタル・パスポートを皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合するという計画をシュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組で語っているのだ。 日本の経済を活性化させる最善の方策はロシアや中国との関係を友好的にすること。それを理解していた田中角栄は尖閣諸島の領土問題を棚上げし、1972年9月の日中共同声明調印を実現した。棚上げの合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めたのだ。 その棚上げを壊し、中国との関係を悪化させ、日本経済にダメージを与えたのが2010年6月8日に発足した菅直人内閣である。菅内閣が閣議決定した尖閣諸島に関する質問主意書の中で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張、その年の9月に海上保安庁は棚上げ合意を無視して尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕している。こうした出来事はアメリカの支配層にとって好ましいことだった。 菅政権に続く野田佳彦政権も「自爆政策」を遂行、2012年に安倍晋三が総理大臣に返り咲いた。その安倍はネオコンなどアメリカの支配グループに従属、2015年6月には赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。 中国との戦争を想定しているわけだが、中国やロシアとのビジネスなしに日本経済が維持できないことも事実。日本の財界から安倍へ何らかの働きかけがあっても不思議ではない。安倍の動きを見ていると、そうしたことが推測できるが、これはアメリカの支配層を怒らせることになるだろう。 ここで昔話。 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカが「唯一の超大国」になったと認識、他国に気兼ねすることなく行動するようになる。そうした時、国連中心主義を維持した細川護煕政権は1994年4月に倒された。 アメリカの支配層は日本を自分たちの戦争マシーンに組み込もうとしたのだが、それに日本側は抵抗する。そうした中、マイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベルを説得して国防次官補のジョセイフ・ナイに接触、そのナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」発表した。 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)た。その10日後に警察庁の國松孝次長官は狙撃され、一時、かなり危険な状態に陥ったと言われている。
2022.07.18
安倍晋三が7月8日に奈良市の近鉄大和西大寺駅前で射殺されて以来、「統一教会(現在の名称は世界平和統一家庭連合)」が話題になっている。銃撃した山上徹也が海上自衛隊の元隊員だということは早い時点で伝えられていたが、その後、統一教会の名前が浮上したのだ。山上の母親が統一教会に多額の寄付をし破産したという。 山上家の状態はデイリー新潮などが伝えているが、それによると、母親は統一教会の前に「朝起会」なる団体へのめり込み、それが原因で夫は精神を病んで自殺している。 ところで、統一教会は、1954年に韓国で文鮮明により創設され、日本では1959年から伝道が開始された。日本では1964年に久保木修己を初代会長として宗教法人の認可を獲得、68年には「国際勝共連合」を設立している。 統一教会が創設される際、韓国軍の将校4名が教団の幹部として参加して重要な役割を果たしたという。そのひとりである朴普煕は1950年に士官学校へ入り、朝鮮戦争を経験してからアメリカのフォート・デニングにある陸軍歩兵学校で訓練を受けている。 その一方、1954年に「APACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)」が韓国で創設される。その際に中心的な役割を果たしたのは台湾の蒋介石や韓国の李承晩、日本からは児玉誉士夫や笹川良一が参加、日本支部を設置する際には岸信介が推進役になったとされている。言うまでもなく、岸の孫が安倍晋三だ。 この団体は1966年、アメリカの情報機関を後ろ盾とする東ヨーロッパ出身の親ファシスト派組織、「ABN(反ボルシェビキ国家連合)」と合体し、WACL(世界反共連盟。1991年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)になる。(Scott Anderson & Jon Lee Anderson, “Inside the League”, Dodd, Mead & Company, 1986) ところで、統一教会の創設に関わった朴普煕を含む4将校は陸軍情報局に所属していた金鐘泌と緊密な関係にあり、1961年5月に朴正煕が実行したクーデターに参加した。1962年10月にはサンフランシスコで統一教会の幹部と秘密裏に会談、韓国における政治的な支援を教団側に約束したという。(Jeffrey M. Bale, “The Darkest Sides Of Politics, II,” Routledge, 2018) 当初、WACLの主導権はAPACL系の人脈が握っていたが、1970年代になるとCAL(ラテン・アメリカ反共同盟)が実権を握る。ラテン・アメリカは第2次世界大戦後にアメリカやローマ教皇庁の支援でナチスの幹部や協力者が逃げ込んだ場所だということもあり、ヨーロッパのナチス人脈との結びつきが強く、中でもイタリアの反コミュニスト人脈との関係は深い。必然的に、そうした人脈を利用してアメリカやイギリスの情報機関が編成した「NATOの秘密部隊」ともつながる。 ナチスとの関係が深いUPA(ウクライナ反乱軍)は1947年3月にポーランドの副大臣を暗殺するが、これに対してソ連、チェコスロバキア、ポーランドは共同してゲリラ掃討作戦を実施、ドイツが占領していた地域からステパン・バンデラ派を一掃してしまう。 同じ頃にイギリスの情報機関SIS(MI6)は反ソ連組織の勢力拡大を図り、1947年7月にインテルマリウムとABNを連合させ、9月にはプロメテウス同盟も合流させた。翌年の後半、新装ABNはウクライナ人の団体OUN・Bの幹部だったヤロスラフ・ステツコを中心として活動を開始する。つまり、この頃の動きは現在のウクライナ情勢につながる。
2022.07.17
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は7月8日現在、前の週より187名増えて2万9460名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近いということになる。 重症肺炎を引き起こすとして伝染病が中国の湖北省武漢で見つかったとWHO(世界保健機関)へ報告されたのは2019年12月31日。その病原体が単離されていないにもかかわらず、国際ウイルス分類委員会は20年2月11日、未知の病原体に「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」という名前をつけ、3月11日にWHOはパンデミックを宣言した。 武漢で重症の肺炎患者が見つかったことは事実だろうが、その後、そうした症状の患者が世界規模で見つかっているとは聞いていない。「無症状感染者」が約9割で、その無症状感染者を「発見」することになったのはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査。ところがPCRで病気の診断はできない。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析用の技術で、増幅サイクル(Ct)を増やせば、医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性の比率が高まる。偽陽性を排除しようとするとCt値は17に留めなければならず、35を超すと偽陽性率は97%になるとも報告されている。ところが2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40。 無症状感染者を生み出したPCR検査は医学的に無意味だったわけで、2021年1月20日にはWHOでさえPCRは診断の補助手段にすぎないと表明している。 アメリカの場合、SARS-CoV-2への感染を確認するため、「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を利用していた。それを定めたCDCは2021年7月21日、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)を2021年12月31日に取り下げると発表した。SARS-CoV-2だけでなくインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないことを認めざるをえなくなったようだ。 COVID-19で死亡したとされる人の平均はどの国でも80歳に近く、しかも大半の人は心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていた。CDCでさえ昨年8月、COVID-19だけが死因だと言える人は全体の6%にすぎないと認めている。 こうした事態は当初から想定されていたはず。CDCは2020年4月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。死亡者数を水増ししようとしていたと言われても仕方がない。 こうまでしてCOVID-19のパンデミックを演出、世界規模で接種が強行された「COVID-19ワクチン」は帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病、体の麻痺、脳梗塞、心筋梗塞、心筋炎、心膜炎、ADE(抗体依存性感染増強)などを引き起こし、微小血栓によって脳、脊髄、心臓、肺などがダメージを受けているとも言われている。今後、中長期的にどのような副作用が現れるかは不明だ。 詐欺的な手法でパンデミックを演出、それを口実にしてリスクの高い「ワクチン」が接種されてきた。その理由は何なのかと疑問を抱く人が少なくないのは当然だろう。 「COVID-19ワクチン」メーカーのひとつ、モデルナの説明を読むと彼らはコンピュータのOS(オペレーティング・システム)と同じようなmRNA技術プラットフォームを作るつもりだ。 同社の最高医療責任者のタル・ザクスは2017年12月にTEDで行った講演の中で、この技術を使い「生命のソフトウェアをハッキングする」と言っている。mRNA技術プラットフォームがOSならそれによって動かされるプログラムが想定されているのだろう。 バイエルの重役であるステファン・ウールレヒは2021年10月、WHS(世界健康サミット)で「mRNAワクチン」は遺伝子治療だと認めている。遺伝子操作というべきかもしれない。 今年2月に発表されたファイザーの「COVID-19ワクチン」に関する論文によると、体外で行った実験で、肝細胞の中に「ワクチン」のDNAが取り込まれることを発見したという。
2022.07.16
ジョン・ボルトンは7月12日、CNNの番組でアメリカが外国でクーデターを実行してきたことを認めた。ホスト役のジェイク・タッパーから2021年1月のホワイトハウスでの抗議活動について質問され、それに対する答えの中でのことだ。 ボルトンはロナルド・レーガン大統領から共和党政権でホワイトハウスの中枢で活動、ドナルド・トランプの下では国家安全保障補佐官を務めた人物。つまり当事者としての発言だけに、注目されている。 クーデター計画の例としてボルトンはベネズエラのケースを挙げている。彼が国家安全保障補佐官を務めていた2019年4月、ベネズエラではクーデターが試みられている。クーデター政権の大統領としてアメリカ政府が用意したのはフアン・グアイド。カラカスの大学を卒業した2007年にアメリカのジョージ・ワシントン大学へ留学、14年の反政府行動では指導者のひとりとして参加している。 アメリカ政府が目論んだクーデターは定番の「カラー革命」方式。その中心グループは2003年にセルビアで設立されたCANVAS、その組織を設立した「オトポール(抵抗)!」から手ほどきを受けていた。訓練のため、アメリカの支配層は2005年に配下のベネズエラ人学生5名をセルビアへ送り込んでいる。 オトポール!は1998年、スロボダン・ミロシェビッチの体制を倒す目的で作られた。これらにはアメリカのNED(ナショナル民主主義基金)、IRI(国際共和研究所)、USAID(米国国際開発局)などから、つまりCIAから資金が提供されている。 ベネズエラでカラー革命が失敗した後に一部の部隊が軍事蜂起、ラ・カルロタ空軍基地の外で銃撃戦があったのだが、これも失敗に終わった。事前にクーデターを持ちかけられた軍人や政府高官の相当数が提案に同意、成功すると見通したようだが、そうした軍人や政府高官の多くの同意は嘘で、アメリカ側をトラップにかけたという話も流れていた。アメリカ側でこのクーデター計画を指揮していたのはエリオット・エイブラムズだとされている。 アメリカがベネズエラの体制転覆工作を始めたのはウゴ・チャベスが大統領に就任して間もないころで、2002年にはクーデターを試みた。そのクーデターを背後で指揮していたのは1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、1981年から85年までのホンジュラス駐在大使、2001年から04年までは国連大使、04年から05年にかけてはイラク大使を務めたジョン・ネグロポンテ、そしてイラン・コントラ事件に登場したエイブラムズだ。ウィキリークスが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもベネズエラではクーデターが計画された。 エイブラムズが中米でCIAの秘密工作に参加した1980年代、ニカラグアではCIAが操っていた反革命ゲリラ「コントラ」が活動、エル・サルバドルでは「汚い戦争」が展開されていた。いずれも少なからぬ市民が殺されている。 2002年と06年のクーデターに失敗した後、07年にアメリカは「2007年世代」を創設、09年には挑発的な反政府運動を行った。こうしたベネズエラの反政府組織に対し、NEDやUSAIDは毎年4000万ドルから5000万ドルを提供する。ベネズエラでのクーデター工作をアメリカの支配層は継続中だ。 第2次世界大戦後、アメリカの支配層は目障りな体制を転覆させてきたが、最初のターゲットはイタリアだ。本ブログでは繰り返し書いてきたように、西ヨーロッパでドイツ軍と戦ったのは事実上、レジスタンスだけ。その中心がコミュニストだったことからフランスやイタリアではコミュニストが強く、1948年の総選挙でコミュニストが勝利することをアメリカは懸念した。 そこでジョージ・ケナンはコミュニストを非合法化するべきだと主張し(Michael Holzman, “James Jesus Angleton,” University of Massachusetts Press, 2008)、イタリアの選挙結果がアメリカ側の思惑どおりにいかなければフォッジア油田をアメリカ軍が直接占領するとも言っていた。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌之訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年) この選挙工作を指揮していたのはCIAのジェームズ・アングルトンだが、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)のジェイ・ラブストーンとアービング・ブラウンも協力している。労働組合とはこのようなものだ。どこかの国だけの問題ではない。 ラブストーンはアメリカ共産党の元幹部で、ブラウンは戦時情報機関OSS出身。工作資金は労働組合ルートからイタリアの社会党へ流れ込んでいく。そしてコミュニスト排除の動きが始まった。(Michael Holzman, “James Jesus Angleton,” University of Massachusetts Press, 2008) その後、イタリアではNATOの秘密部隊が配下のファシストを利用、1960年代から80年代にかけ、極左を装った爆弾テロを繰り返して治安システムの強化を国民に受け入れさせ、左翼を弱体化させている。 一方、CIAは1953年にイランでムハマド・モサデク政権を、54年にはグアテマラのヤコボ・アルベンス・グスマン政権を、73年にはチリのサルバドール・アジェンデ政権をそれぞれクーデターで倒している。勿論、アメリカの体制転覆工作は枚挙にいとまがなく、これらは氷山の一角に過ぎない。2014年にはウクライナでもクーデターを成功させた。
2022.07.16
COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)なる悪霊を作り出し、恐怖によって人びとを操ってきたグループが存在する。そのプロットは本ブログでも繰り返し書いてきた通りだが、少なからぬ人がフィクションだということに気づき、経済の破綻を懸念する政府は規制を緩和している。 ロシアでは感染対策として国境で実施されていた感染対策を7月15日から解除、その一方で外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へカネが渡っている実態を連邦財務監視庁とFSB(連邦安全保障局)が共同で調査するという。 恐怖劇の幕を上げたWHO(世界保健機関)。そのテドロス・アダノム事務局長は7月12日にマスクの着用を訴えた。日本では風邪や花粉症の季節には着用する人が少なくないが、世界的に見ると、そうした習慣のない人が多い。効果に疑問があるからだ。ちなみに、WHOへ多額の資金を提供しているのはアメリカ、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、イギリス、そしてGaviだ。このGaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された団体である。 欧米では馴染みのないマスクだが、ロックフェラー財団とGBN(グローバル・ビジネス・ネットワーク)が2010年5月に発表した「技術の未来と国際的発展のためのシナリオ」に書かれたパンデミックのシナリオにはマスクの着用が記載されている。 その報告書に書かれた筋書きによると、2012年に「新型インフルエンザ」のパンデミックが起こって人や物資の国際的な移動が停止、その対策としてマスクの着用、公共施設やマーケットの入り口における体温の測定が強制されるとし、さらに全ての人の強制的な隔離が推奨されている。 また、パンデミックに対する恐怖は人びとに基本的な人権を放棄させることになり、対策として打ち出される管理、監視体制はパンデミックが去った後も続くと報告書は見通す。そうした社会体制は支配者が望んできたこと。パンデミックはそうした政策を促進するだけでなく、被支配者である大多数の人びとに主権やプライバシーを自発的に放棄させることになるとしている。「古いノーマル」には戻らない、あるいは戻さないということだろう。 アメリカ政府は世界貿易センターや国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃される3カ月前、つまり2001年6月、天然痘を生物兵器とする攻撃をアメリカが受けたという想定の軍事訓練を実施している。「ダーク・ウィンター」だ。昨年、パンデミック騒動に関連し、「ダーク・ウィンター」という用語が使われていた。 アメリカのアンドリュース空軍基地で実施されたその訓練ではジョンズ・ホプキンズ健康安全保障センター、CSIS(戦略国際問題研究所)、国土安全保障ANSER研究所、MIPT(国立テロリズム防止オクラホマシティ記念研究所)が参加している。 COVID-19のパンデミック騒動で人びとの行動は制限され、監視システムが強化され、デジタル・パスポートの導入も図られている。マイクロチップ化されたデジタル・パスポートを皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合するという計画をWEFのクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組で語っているが、これは彼だけの考えではない。 mRNA(メッセンジャーRNA)を利用した「COVID-19ワクチン」について、スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「酸化グラフェン」が存在していると発表したが、カンプラ教授が発表した論文で示されていた周波数の分析を見たドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく「水酸化グラフェン」だろうとしている。いずれにしろこの物質は一種の半導体だが、ノアックは微小なカミソリの刃だとも表現している。臓器や神経を傷つけるということだ。 この「ワクチン」について、早い段階から「遺伝子操作」だと指摘する専門家がいたが、ドイツの世界的な化学会社であるバイエルの重役、ステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」で「COVID-19ワクチン」が「遺伝子治療」だと語っている。 こうした事実が明らかになるにつれ、WHOや一部の政府、あるいは私的権力が推進している「COVID-19ワクチン」を拒否する人が増えているようだ。それを抑え込むために言論統制を強化している。マスクは屈服の象徴であり、それを着用させることで人びとを管理しようとしているのではないかと考える人もいる。そして「サル痘」だ。
2022.07.15
WHO(世界保健機関)は2020年3月11日にCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)の感染が世界的に拡大していると宣言してからパンデミック騒動は始まった。ロシアでも感染対策として国境での規制が導入されたのだが、今年7月15日からその規制が解除されると7月4日に発表された。 その直前、ウラジミル・プーチン露大統領はユーリ・チカンチン連邦財務監視庁長官と会談、外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へ多額の資金が渡っていることを問題にしている。よく聞く話で、ロシアでも法律に違反していないという。 しかし、こうした慣習が医療システムを損なうことは間違いない。医薬品メーカーの利益を優先することは医療機関の利益につながり、適切な治療が行われないこのになる可能性がある。医師を含む医療関係者が聖人君子だということはない。 COVID-19騒動が始まった当初、死亡した陽性者の平均はどの国でも80歳に近く、しかも大半の人は心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていた。アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は2020年8月の段階で、COVID-19だけが死因だと言える人は全体の6%にすぎないと認めている。 イタリアでは健康省の科学顧問を務めるウォルター・リッチアルディはSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)が直接的な原因で死亡した人数を全体の12%だとしていたほか、ビットリオ・スガルビ議員はこのウイルスが原因で死亡したとされる患者のうち96.3%の死因は別に死因があると主張していた。リスボンの裁判所が公表したデータによると、2020年1月から21年4月までにCOVID-19で死亡した人の数は政府が主張する1万7000名ではなく152名だという。 ドイツの場合、SARS-CoV-2の危険性は通常のレベルを超えていないとし、戒厳令的な政策を推進したことは間違いだとする内務省の報告書がリークされた。シュピーゲル誌によると、内務省はこの文書についてステファン・コーンという内務省の官僚が個人的に書いたものにすぎないと弁明しているが、実際は同省のKM4というチームが作成したとものだという。 中国湖北省の武漢でSARSと似た症状の肺炎患者が見つかったと報告されたのは2019年12月31日。この患者は重症の肺炎に罹っていたのだろうが、翌年の3月11日にWHOがパンデミックを宣言するまでに同じような患者が世界へ広がったという話は寡聞にして知らない。 そうした中、パンデミックを正当化するためにアメリカのCDCは動いていた。2020年4月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら、死因をCOVID-19として良いとする通達を出したのだ。同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。 この通達は早い段階で知られた。アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は2020年4月8日にFoxニュースの番組で、病院は死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいると話していたのだ。COVID-19に感染している患者を治療すると病院が受け取れる金額が多くなり、人工呼吸器をつけるとその額は3倍になったという。カネの力で病院が患者数を増やすように誘導されているというのだ。 感染拡大を演出するため、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が使われたが、これは本来、特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術であり、病気の診断に使うべきでないとPCRを開発してノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスも語っていた。なお、マリスは2019年8月7日に肺炎で死亡している。 PCRで増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になる。 それだけでなく、偽陽性の確率が増えていくことも知られている。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。 ところが、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だった。医学的に無意味なことをしているわけである。 パンデミックが宣言されてから人びとの行動は厳しく制限され、社会は収容所のようになった。経済活動は麻痺して企業は倒産、人びとは失業し、ホームレスや自殺者も増加した。航空機での移動は特に制限されることになり、人びとの交流は減っている。 そうした中、監視システムが強化され、デジタル・パスポートの導入が図られ、資本主義の「大々的なリセット」が目論まれている。接種が推進されている「COVID-19ワクチン」はすでに深刻な副作用をもたらしているが、今後、どのような事態が生じるかは不明だ。 武漢でSARSに似た重症肺炎に罹った複数の人が見つかったことは確かだろうが、その病気が世界に蔓延したとは考えにくい。感染者数も死亡者数も大幅に水増しされている。 COVID-19騒動を世界へ広めたのは医療世界で常態化されているカネのやりとりだろうが、その背後では巨大な私的権力の計画が存在している可能性が高い。 そうした計画を止める必要がある。チカンチンによると、ロシアでは連邦財務監視庁がFSB(連邦安全保障局)と共同で医療世界におけるカネのやりとりを止めさせるため、調査するという。 ウクライナでアメリカの国防総省が行ってきた生物兵器の研究開発に関する資料をロシア軍は回収、イゴール・キリロフ中将を中心とするグループが分析しつつある。 キリロフによると、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。 ロシア国防省が発表したスライドによると、アメリカの民主党を病原体研究の「思想的な支柱」で、その思想を実体化させる役割を負っているのが国防総省やCDCを含む政府機関。資金はアメリカの予算からも出ているが、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団、クリントン財団、ハンター・バイデンのロズモント・セネカ・パートナーズ、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、ロックフェラー財団、エコヘルス同盟などもスポンサーだ。 そのほか、生物兵器の研究開発システムにはアメリカ大使館、国防総省の契約企業であるメタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、スカイマウント・メディカル、そしてCH2Mヒルなど、またファイザー、モデルナ、メルク、ギリアドを含む医薬品会社が組み込まれ、ドイツやポーランドも関係している。このシステムは生物兵器の研究開発だけでなく、医薬品メーカーは安全基準を回避して利益率を上げるためにウクライナの研究施設を理療しているともいう。 ロシア政府がどこまで明らかにするか不明だが、これまでにない大きなスキャンダルに発展しても不思議ではない。
2022.07.14
アメリカ政府の命令に従ってEUはロシアに対する経済戦争を仕掛けたが、こうした事態を想定して準備してきたロシアは大きなダメージを受けず、EUが厳しい状況に陥っている。特にエネルギーと食糧の問題が深刻なようだ。 ロシアのエネルギー資源が供給されなければ、EUは産業だけでなく社会の機能が麻痺、冬になれば多くの人が凍えることになる。こうした事態を「逆噴射」と表現する人もいるが、アメリカはロシアだけでなくEUも弱体化させようとしている可能性があるだろう。 EUを支配しているエリートの主体は「貴族」で、イギリスの貴族と血縁関係にある人が少なくない。政略結婚の結果だが、そうしたことはアメリカの支配層にも当てはまる。こうした人びとにとって国境は邪魔な存在だろう。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除した。そのクーデターでアメリカ政府が手先として使ったのはネオ・ナチである。 政権を取る前からナチスをウォール街の住人たちは資金面から支援、ドイツ軍がスターリングラードでソ連軍に降伏すると、ウォール街の代理人だったアレン・ダレスを中心とするグループはフランクリン・ルーズベルト大統領には無断でナチスの幹部と善後策を協議した。このことは本ブログで繰り返し書いてきたことだ。 その後、大戦の最終盤からナチスの幹部た協力者の逃亡を助け、保護して雇用、後継者の育成も行った。育った後継者は1991年12月にソ連が消滅すると、出身国へ戻り、アメリカ支配層の手先として活動し始めた。そうした中でウクライナのネオ・ナチも登場してきたのだ。 ロシアからEUへ天然ガスを運ぶバイプラインの多くはウクライナを通っている。ウクライナをアメリカが制圧することに成功すれば、天然ガスの輸送をコントロールすることが可能になる。EUからエネルギー資源の供給源を断ち、ロシアからエネルギー資源のマーケットを奪うことができると計算したわけだ。 しかし、ロシアはクーデター直後から中国との関係を強化、パイプラインだけでなく鉄道や道路の建設を進め、今では「戦略的同盟関係」にある。アメリカはロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除したが、すでにロシアはSWIFTに替わるSPFSを稼働させて、ロシアや中国を中心とするBRICSは自分たちの決済用通貨を作る動きがある。 EUとロシアはウクライナを迂回するパイプラインを建設した。そのひとつがバルト海を通る「ノードストリーム1」で、これは2011年11月に開通している。 それと同時に「ノードストリーム2」の建設が始まり、2021年9月には完成したのだが、アメリアの妨害で始動させられなかった。そうした中、ロシア軍のウクライナ攻撃が始まり、EUは始動を断念した。 それでも「ノードストリーム1」は稼働してい他のだが、メンテナンスのために輸送量が大幅に減少。7月11日から輸送は停止した。コンプレッサーの装置をシーメンスが修理のために取り外し、カナダで修理して戻そうとしたところ、アメリカ政府の「制裁」で戻せなくなったことが原因だ。 この状態が続くとEUは破綻、次の冬を越すことも困難だと見られていた。ウクライナ政府は装置を戻さないように求めていたが、自分たち存続が危うくなったEUがアメリカの命令に従い続けるとは限らない。すでにEUの庶民の間で反乱の兆しが見える。ここにきて修理した装置の返還が認められたようだが、その理由はその辺にあるだろう。 この決定をウクライナの支配層は怒っている。ズビグネフ・ブレジンスキーが生まれたポーランドもロシア嫌いのエリートが多い。その一例がレフ・ワレサ。1980年8月にワレサたちはストライキを実施、その翌月に「連帯」を結成した。現在、ワレサはロシアの政治システムを変えるか、カラー革命で体制を転覆させるべきだと主張している。 1982年6月にはロナルド・レーガン米大統領がローマ教皇庁の図書館で教皇ヨハネ・パウロ2世とふたりきりで会談、ジャーナリストのカール・バーンスタインによると、その大半はソ連の東ヨーロッパ支配の問題に費やされ、ソ連を早急に解体するための秘密工作を実行することで合意したというが、CIAとローマ教皇庁がポーランドなどソ連圏の国々に対する工作を本格化させたのは1970年代のこと。そうした工作でバチカン銀行(IOR/宗教活動協会)は工作の手先へ資金を秘密裏に供給していた。 ところが、こうした不正送金が発覚してしまう。後にアンブロシアーノ銀行が約12億ドルの焦げ付きを抱えている事実が明るみに出るが、銀行からポーランドの反体制労組「連帯」へ不正な形で流れたと言われている。(David A. Yallop, “In God`s Name”, Poetic Products, 1984(デイビッド・ヤロップ著、徳岡孝夫訳、文藝春秋、一九八五年。ただし、翻訳では送金が違法だったとする部分は削除されている) ローマ教皇庁を含むイタリアにおけるCIAの工作で中心的な役割を果たしていたのは防諜部門を統括していたジェームズ・アングルトン。イスラエルとの関係も深かった。 彼の人脈にはジョバンニ・バティスタ・モンティニなる人物も含まれていた。後のローマ教皇パウロ6世だ。つまりパウロ6世はCIAの協力者だった。モンティニの右腕と呼ばれていた人物がシカゴ出身のポール・マルチンクス。後にIORの頭取に就任する。 1978年8月にパウロ6世は死亡、アルビーノ・ルチャーニが後継者に選ばれ、ヨハネ・パウロ1世と呼ばれるようになる。この人物は若い頃から社会的な弱者に目を向けるタイプで、マルチンクスとは対立していた。CIAとしても好ましくない人物だったはずだ。そのヨハネ・パウロ1世は1978年9月に急死してしまう。在位1カ月。その当時から他殺を疑う人は少なくない。その次に選ばれたのがポーランド出身のヨハネ・パウロ2世だ。 カール・バーンスタインによると、連帯へ送られたのは資金だけでなく、当時のポーランドでは入手が困難だったファクシミリのほか、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドへアメリカ側から密輸されたという。(Carl Bernstein, "The Holy Alliance", TIME, February 24 1992) この連帯やチェコスロバキアの反体制運動に資金を提供していたひとりが投機家のジョージ・ソロスだ。「開かれた社会」を築くと主張しているが、それは侵略に対する防衛システムを破壊するということを意味している。ソロスは1930年にハンガリーで生まれ、47年にイギリスへ移住、54年から金融の世界へ入っている。体制転覆活動を本格化させるのは1984年。その年にハンガリーで「オープン・ソサエティ協会」を設立してからだ。ソ連が消滅すると旧ソ連圏での活動を活発化させ、体制の転覆と新自由主義化を推進、ウクライナではロシア軍と戦い続けろと主張している。
2022.07.13
自民党は現行憲法を変えようとしている。日本はアメリカの巨大金融資本を動かしている勢力に従属している以上、その改憲はアメリカ支配層の意向に沿うものだ。 かつて自民党が発表した改憲試案を読むと、特に重要な変更は第98条にある。「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」というのだ。 こうした状況はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で生み出された。2020年1月30日にWHO(世界保健機関)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと表明、3月11日にパンデミックを宣言した。そこから世界規模の騒動が始まる。 その対策は社会を混乱させ、経済活動を麻痺させた。物流を停滞させて少なからぬ企業の経営を悪化させ、倒産に追い込んでいる。失業者、ホームレス、そして自殺者を増加させてきた。 そして現在、欧米の私的権力は「パンデミック」を口実として、WHOが全ての加盟国にロックダウンや「ワクチン」の強制接種などを命令できる「パンデミック条約」を締結しようとしている。各国政府を凌駕する権力をWHOに与えようというわけだ。 そのWHOの事務局長を務めているエチオピア人のテドロス・アダノムを調査すべきだとICC(国際刑事裁判所)に訴えた活動家がいる。デイビッド・スタインマンだ。アダノムはTPLF(ティグレ人民解放戦線)の幹部だった2013年から15年にかけて治安機関に所属、殺人や拷問に関係していたとスタインマンは主張している。 誰がWHOを支配しているかは資金源を見ると推測できる。WHOに対する2018年から19年にかけての上位寄付者を見ると、第1位はアメリカ、第2位はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、第3位はイギリス、そして第4位はGaviだ。 Gaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された団体。活動資金はWHO、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などから得ている。WHOという国際機関は欧米の私的権力に支配されていると言える。その私的権力に支配された組織に各国政府を凌駕する権力を与えようというのだ。 欧米の支配層はISDS(投資家対国家紛争解決)条項を含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)を成立させようとしたが、その目的も同じ。WEFのクラウス・シュワブが打ち出した「資本主義の大々的なリセット」も目的は同じだ。 アメリカでは1958年に緊急事態を想定した仕組みが作られた。核戦争で正規の政府が機能しなくなった場合を想定し、憲法に定められた手続きを経ずに秘密政府を設置しようというのだ。その秘密政府には9つの部署があり、その責任者が決められた。 この仕組みが作られる前年、アメリカの好戦派はソ連に対する先制核攻撃を目的とする「ドロップショット作戦」を作成、1959年にはウエストバージニア州のグリーンブライア・ホテルの地下に「地下司令部」を建設し始めている。いわゆるグリーンブライア・バンカーだ。1962年に完成している。 この秘密施設の存在は秘密にされていたが、1992年にワシントン・ポスト紙のテッド・ガップ記者が明るみに出す。同記者によると、施設の壁は60センチメートル以上あり、鋼鉄で補強されている。施設の上にはコンクリートの屋根が作られ、そのうえには6メートル以上の土がかぶせられたという。 この記事が出た直後にバンカーは放棄され、ペンシルベニア州にあるレイブン・ロック山コンプレックス、通称サイトRが「地下ペンタゴン」として機能するようになる。 秘密政府の仕組みがジョン・F・ケネディ政権からジェラルド・フォード政権までどのようになっていたか不明だが、ジミー・カーターが大統領を務めていた1979年にFEMAという形で浮上、ロナルド・レーガン政権ではCOGというプロジェクトが始まる。FEMAは2003年から国土安全保障省の下部機関になった。 レーガンは大統領に就任した翌年の1982年にNSDD55を出してCOGプロジェクトを承認、NPOを創設。(Andrew Cockburn, “Rumsfeld”, Scribner, 2007)この組織はワシントンDCに独自のビルを持ち、責任者として少将が配属された。年間予算は数億ドル、レーガン政権の終わりには10億ドルに達している。(James Mann, “Rise Of The Vulcans”, Viking Penguin, 2004) COGは上部組織と下部組織に分かれ、上部組織は「プロジェクト908」と呼ばれる。そこにはジョージ・H・W・ブッシュ、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジーたちが含まれていた。下部組織は「フラッシュボード」と呼ばれ、ホワイトハウスの役人、将軍たち、CIAの幹部、引退した軍人や情報機関員など数百人で編成された。(New York Times, April 18, 1994) 当初、秘密政府を始動させる条件として核戦争が想定されていたが、1988年に出された大統領令12656によって、その対象は「国家安全保障上の緊急事態」に変更される。核戦争が勃発しなくても、支配階級が国家安全保障上の緊急事態だと判断すれば憲法の機能を停止できるようになったわけだ。 1991年12月にソ連が消滅、92年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランを作成。アメリカの国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 このドクトリンの前提はアメリカが「唯一の超大国」になったということであり、他国に気兼ねすることなく単独で行動できるようになったとアメリカの好戦派は考えた。 ところが、日本の細川護煕政権は国連中心主義を捨てない。そこでマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、友人で国防次官補だったカート・キャンベルを説得してジョセイフ・ナイ国防次官補に自分たちの考えを売り込んでいる。 そして細川政権は1994年4月に倒れ、その翌年の2月にナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。10万人規模の駐留アメリカ軍を維持するだけでなく在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。 そうした主張に日本側は抵抗したようだが、そうした中、ショッキングな出来事が相次ぐ。例えば1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でもサリンが散布されている。そうした事件を取り締まる最高幹部、警察庁長官は1994年7月に城内康光から國松孝次へ交代、その國松が95年3月に狙撃された。 そして1995年8月にアメリカ軍の準機関紙であるスターズ・アンド・ストライプ紙は、85年8月に墜落した日本航空123便に関する記事を掲載する。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。日本政府はショックを受けただろう。 そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、アメリカでは憲法の規定を否定する法律が制定され、侵略戦争を本格化させていく。 当初は正規軍を投入したが、失敗。そこで2010年からムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として投入し、リビアやシリアを含む北アフリカや中東を戦乱で破壊していく。2013年にはウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを開始、同時に中国でも「カラー革命」を仕掛けている。 日本企業にとって中国は重要なビジネス相手であり、日中両国の良好な関係は維持したかったはずだが、それを破壊する出来事が引き起こされた。 2010年6月8日に発足した菅直人内閣はその直後、尖閣諸島に関する質問主意書に対する答弁書を閣議決定したが、その中で「解決すべき領有権の問題は存在しない」としている。1972年9月につまり田中角栄首相が北京で日中共同声明に調印する際、「棚上げ」にした尖閣諸島の領土問題を復活させたのだ。棚上げの合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めている。そして1978年8月に日中平和友好条約が結ばれ、漁業協定につながった。菅政権は日中平和友好条約の基盤を破壊し、漁業協定も否定したことになる。 そして2010年9月、海上保安庁は日中の棚上げ合意を無視して尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕しているが、これは「日中漁業協定」を無視する行為だった。この時に国土交通大臣だった前原誠司の意思がなければ不可能な行為だ。 その前原はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えている。この答弁は事実によって否定されている。 ナイ・レポート以降、日本はアメリカの戦争マシーンに取り込まれていき、安保法制も制定される。その法律に関し、安倍晋三首相は2015年6月1日、赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道された。 そして自衛隊は2016年に与那国島、19年に奄美大島と宮古島に施設を建設した。その時の総理大臣は安倍晋三。2023年には石垣島にも建設する予定だ。この基地建設の目的をアメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。この基地建設の目的をアメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。 アメリカ政府はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を立てているが、インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとRANDコーポレーションは判断している。 しかし、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという形にするしかないとRANDは考えているが、与那国島、奄美大島、宮古島、そして石垣島に中国を狙ったミサイルが配備されることは間違いないだろう。
2022.07.12
7月10日は参議院議員選挙の投票日だったが、日本にはアメリカの支配層が警戒するような政党は存在しない。筋金入りのネオコンで「ランボー」と呼ばれるラーム・エマニュエル駐日米国大使から「民主主義の模範を示した」と言われるほど情けない国だということだ。 しかし、世界ではアメリカの独裁体制に対する反乱が始まっている。ラテン・アメリカではアメリカの傀儡体制が倒れて民主主義体制が復活しているほか、ヨーロッパで権力バランスが変化していると言えるだろう。 イギリスではジョー・バイデン米大統領と連携してロシアや中国との戦争を推し進めてきたボリス・ジョンソン首相が辞任、フランスでは6月の議会選挙でエマニュエル・マクロン大統領の与党「LREM」は345議席から245議席へ減らす大敗を喫し、左翼が集結した「不服従のフランス」は67議席増やして131議席へ、マリーヌ・ル・ペンが率いる「国民連合」は7議席から89議席へ増やしている。 バイデンは大統領に就任して早々、ルビコンを渡った。1992年2月に打ち出した世界制覇プランを実現するため、ロシアや中国に対して「超限戦」を始めたのである。反ロシア感情が強い東ヨーロッパ系の勢力はロシアやソ連の打倒を重視している一方、経済が急成長している中国を重視する勢力もいるが、これは順番の問題にすぎない。いずれも最終的にはロシアと中国を潰そうとしている。 ユーラシア大陸の沿岸部を支配し、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するという世界制覇プランをイギリスが立てたのは19世紀のことである。それをまとめ、1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表したのがイギリスの地理学者で地政学の父とも言われるハルフォード・マッキンダーである。 そうした戦略を実際に始めたイギリスの支配グループは優生学を信奉していた。そうしたグループのひとりがセシル・ローズ。彼は1877年にフリーメーソンへ入会、その直後に『信仰告白』を書いた。アングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと彼はその中で主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) ローズの仲間にはナサニエル・ド・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、アルフレッド・ミルナー、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)がいる。 ミルナーは1854年にドイツで生まれ、オックスフォードで学んでいる。大学時代の友人に経済学者のアーノルド・トインビーがいた。歴史学者として有名なアーノルド・J・トインビーは彼の甥だ。 ローズたちの戦略はアメリカに引き継がれ、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。 1991年12月にソ連が消滅、アングロ・サクソンの長期戦略はほぼ達成されたと少なからぬ人は考えたようだ。そして1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランを作成した。アメリカの国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 アメリカの世界支配を確たるものにするため、潜在的なライバルを潰すともしている。西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアがライバルに成長しないように全力を挙げ、力の源泉であるエネルギー資源を支配、アメリカ主導の新秩序を築き上げるというビジョンだ。その潜在的ライバルには日本も含まれていることを日本人は理解しているのだろうか? しかし、このプランを危険だと考える人は支配層の内部にもいた。例えばジョージ・H・W・ブッシュ大統領、ブレント・スコウクロフト国家安全保障補佐官、ジェームズ・ベーカー国務長官など。ドクトリンが有力メディアにプランの内容がリークされたのも、そうした背景があるのだろう。ブッシュ大統領は再選されなかった。 その後、ビル・クリントンが大統領になるが、この人物も当初はウォルフォゥイッツ・ドクトリンを実行しようとしなかった。有力メディアがユーゴスラビアへの軍事侵攻を煽っていたが、動こうとしなかったのだ。 ネオコンからスキャンダル攻撃を受けていたクリントンが方針を変えるのは第2期目に入り、国務長官がクリストファー・ウォーレンからマデリーン・オルブライトへ交代してから。オルブライトはコロンビア大学でズビグネフ・ブレジンスキーから学んだ人物で、ヒラリー・クリントンと親しいという。ブレジンスキーはポーランド出身、オルブライトはチェコスロバキア出身で、いずれも反ロシア感情が強い。 ジョージ・ケナンは1998年5月、NATOの拡大がロシアを新たな冷戦に向かわせると警告したが、アメリカ/NATOは1999年3月にユーゴスラビアを先制攻撃、5月には中国大使館を爆撃した。空爆したのはB2爆撃機で、目標を設定したのはCIA。アメリカ政府は「誤爆」だと弁明しているが、3機のミサイルが別々の方向から大使館の主要部分に直撃していることもあり、中国側は「計画的な爆撃」だと主張している。 その翌年のアメリカ大統領選挙でネオコンに担がれたジョージ・W・ブッシュが選ばれ、2001年1月に大統領となってからウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づく政策を推進していく。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、ネオコンがホワイトハウスで主導権を握る。そしてブッシュ・ジュニア政権はアフガニスタン、そしてイラクで戦争を始めた。 ところが、ネオコンが想定していなかったことがロシアで起こる。ウラジミル・プーチンを中心とするグループが曲がりなりにも再独立させてしまったのだ。ネオコンは軌道修正せず、ロシアを再び従属国にしようとする。 そして登場してくるのがバラク・オバマ。ムスリム同胞団を中心とする武装勢力を使ってリビアやシリアの体制を転覆させようとする。リビアでは成功したが、シリアでは失敗した。続いてウクライナではネオ・ナチを使ってクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除した。そしてドンバスの戦争が始まる。2014年のことだ。 その後、アメリカやその従属国はウクライナのクーデター体制へ兵器を供給、兵士を訓練して戦力の増強を図ってきた。そして今年3月にドンバスを攻撃、ロシア語系住民を「浄化」する計画だったことを示す文書や情報があるが、その前にロシア軍が介入してきた。 そして現在、ウクライナのクーデター体制は苦境に陥り、アメリカに従属してきたEUは崩壊しそうな雲行きだ。そうした中、イギリスで政権が交代、フランスでは与党が選挙で惨敗した。アメリカのプランに従って中国と戦争する準備を進めている日本では変化が見られない。
2022.07.11
アメリカの経済学者で、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られたと指摘、アメリカにおいて独立した透明性のある調査を行う必要性を訴え、6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターでアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘した。 SARS-CoV-2が原因になってCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)が引き起こされるとされている。その伝染病の患者が初めて発見されたとされているのは2019年12月。その年の夏から秋にかけて数カ月にわたり、メリーランド州にあるフォート・デトリック細菌戦に関する研究施設が閉鎖されたと伝えられている。廃液に絡む安全上の問題が発覚したことが原因のようだが、詳細は軍事機密だとして明らかにされていない。 アメリカでは2019年1月から8月にかけての時期、中国でインフルエンザのパンデミックが始まるという想定の演習を実施。その年の10月18日から27日にかけて武漢では各国の軍人による競技会が開かれ、アメリカ軍からは172名が競技者として参加、代表団の総勢は369名だったという。 競技団の一部は中国を訪れる直前、アメリカのメリーランド州にあるフォート・ビーバーで訓練している。この基地はアメリカ軍が生物化学兵器の研究開発拠点にしているフォート・デトリックから約80キロメートル、原因不明の呼吸器系の病気が流行したスプリングフィールドから10キロメートル弱の地点にあった。武漢で選手団が泊まった武漢オリエンタル・ホテルは問題の海鮮市場から300メートルしか離れていない。 ウクライナでは2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領が暴力的に排除された。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は怒り、住民投票を経て南部のクリミアではロシアとの統合を選び、東部のドネツクでは自治を、ルガンスクは独立をそれぞれ決めた。 動きの早かったクリミアでは住民の意思が実現したが、ドンバスではクーデター政権が送り込んだ軍隊と現地の義勇軍が衝突、それが現在まで続いている。 アメリカ/NATOを後ろ盾とするクーデター体制のウォロディミル・ゼレンスキークーデター政権は今年3月からドンバスへの大規模な攻撃を計画、同時にロシア語系住民の粛清を実行する予定だったとされている。その直前、2月24日にロシア軍が動いた。 ロシア軍が最初に攻撃したのは軍事基地と兵器級の危険な病原体を研究している施設だと言われている。攻撃が一段落した後、ロシア軍は文書を回収した。 ロシア軍の核生物化学防護部隊を率いているイゴール・キリロフ中将は3月7日、ウクライナの研究施設で回収した文書から同国にはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あるとしている。 ロシア国防省によると、ウクライナの研究施設で鳥、コウモリ、爬虫類の病原体を扱う予定があり、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。またロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ウクライナの研究施設に保管されていたサンプルが証拠隠滅のために破壊されていると繰り返している。ビクトリア・ヌランド国務次官は3月8日、上院外交委員会でそうした研究施設が存在することを否定しなかった。 研究のプランを立てているグループにはジョー・バイデンのほか、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョージ・ソロス、ハンター・バイデンなどが含まれ、国防総省やCDCなど国家機関が運営、巨大資本は資金を出し、医薬品メーカーも加わっている。生物兵器の開発だけでなく、自国では規制の対象になっている研究を行なってきたとも報告されている。 COVID-19騒動の如何わしさは以前から指摘されていたが、それを支配層に属すジェフリー・サックスが口にしたのは興味深い。この人物はラリー・サマーズと同様、新自由主義の「伝道師」的な存在のひとり。1991年12月にソ連が消滅した後、西側の支配層にコントロールされていたボリス・エイツィンにアドバイスし、そのアドバイスによってロシアでは社会保障や医療システムは崩壊、人びとは職を奪われ、街には犯罪者と売春婦があふれた。 そのサックスがバイデンやオバマの新自由主義的な政策に批判的な発言をしている。サックスと親しいジョージ・ソロスはウクライナに対してロシア軍と戦い続けろと言ってきたが、ヘンリー・キッシンジャーはスイスのダボスで開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で、平和を実現するためにドンバスやクリミアを割譲するべきだと語っている。「封じ込め政策」で有名なジョージ・ケナンは1998年5月、NATOの拡大がロシアを新たな冷戦に向かわせると警告していた。
2022.07.10
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は7月1日現在、前の週より111名増えて2万9273名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近いということになる。 この「COVID-19ワクチン」は正規の手順を踏んで承認されたものでない。深刻な急性肺炎を引き起こすSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)が世界に蔓延、治療薬が存在していないという理由で緊急使用が許可されたのである。 しかし、治療薬はある。たとえば中国ではインターフェロン・アルファ2bの効果が確認され、メキシコの保健省と社会保険庁はイベルメクチンで入院患者を大幅に減らすことに成功したと発表している。 また、抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載され、ヒドロキシクロロキンはクロロキン以上に安全で効果が期待できると言われている。 SARS-CoV-2が世界に蔓延している根拠とされたのは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査の結果。PCR技術を利用した診断手順はドイツのウイルス学者、クリスチャン・ドロステンらが昨年1月に発表したもので、WHOはすぐにその手順の採用を決めて広まったのだが、間もなく問題があることが指摘された。 アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を診断に利用していたが、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)を2021年12月31日に取り下げるとCDCは同年7月21日に発表、使われなくなった。 この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないことを認めざるをえなくなったようである。 この発表が出る前、2021年5月1日にカリフォルニア大学、コーネル大学、スタンフォード大学を含む7大学の研究者は、PCR検査で陽性になった1500サンプルを詳しく調べたところ、実際はインフルエンザウイルスだったと発表している。この結論をカリフォルニア大学は間違いだと主張したが、その根拠は示されていない。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術で、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度。増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になるだけでなく、偽陽性の確立が増えていくことも知られている。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているのだが、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だった。医学的には無意味ということである。その無意味な検査を日本では今も続けているようだ。 中国湖北省武漢でSARSに似た症状の肺炎患者が見つかったとWHO(世界保健機関)へ報告されたのは2019年12月31日。患者の症状は重篤だったようで、何らかの病原体が存在していたことは確かだろうが、そうした患者が世界各地で見つかっているという話は寡聞にして知らない。そこでPCRが利用されているのだ。 COVID-19は死亡者を含む感染者数の大幅な水増しで世界に恐怖を撒き散らしてきたが、少なからぬ人がイカサマに気づいてきた。国単位でもパンデミック話から離出す動きもある。たとえば、ロシアでは7月15日から国境での規制を解除、ウルグアイでは13歳以下の子どもに対するワクチン接種を中止するように裁判所が命じた。
2022.07.09
岸田文雄政権はロシアや中国との関係を悪化させ、軍事的な緊張を高める政策を進めている。その背景にはアメリカのジョー・バイデン政権の意向、あるいは命令があるはずだ。 バイデンに限らず、アメリカ政府はロシアや中国を屈服させなければならない状況にある。ドルを基軸通貨とする世界のシステムが揺らぎ、世界をコントロールすることが困難になってきているからだ。 アメリカは1970年代に生産活動を柱とする経済を放棄、金融操作を新たな柱にした。その象徴的な出来事がリチャード・ニクソン大統領によるドルと金との交換停止発表。1971年8月のことだ。1973年から世界の主要国は変動相場制へ移行した。 この体制でドルを基軸通貨の地位に維持するため、実世界からドルを回収する仕組みが作られる。そうした仕組みの中心として機能することになったのがペトロダラーと投機市場だ。 ペトロダラーとは石油取引を利用したドルの循環システムで、そのためにアメリカの支配層はサウジアラビアなど産油国に対して石油取引の決済をドルに限定させた。その結果、エネルギー資源を必要とする国がかき集めたドルは産油国に集まり、それがアメリカへ還流する。 投機市場も資金の吸収システムとして機能する。ドルが実世界に滞留すればインフレになるが、投機市場へ吸い上げればバブルになり、バブルは帳簿上の資産を増やす。 世界の富豪たちは値上がり益を狙うだけでなく、資産を隠し、課税を逃れるためにオフショア市場のネットワークを使っているが、富豪や巨大企業が課税逃れのために沈めている資金の総額は20兆ドルから30兆ドルと言われている。 しかし、その仕組みが揺らぎ始めた。その象徴的な出来事が2008年に引き起こされている。この年の9月、アメリカの大手投資会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングズが連邦倒産法の適用を申請したのだ。当時、この投資会社だけではなく、金融界全体が危機的な状況に陥っていて、金融界を救うために「リーマン・ブラザーズ倒産」を演出したとも言われている。 その際に金融機関の不正行為が発覚したが、アメリカ政府は「大きすぎた潰せない」ということで金融機関を救済、「大きすぎて罪に問えない」ということでその責任者を不問に付してしまう。それ以降、巨大金融資本や背後の富豪たちへ富がそれまで以上の速さで集中していく。そうした政策をとったのはバラク・オバマ政権だ。 オバマ政権はアル・カイダ系武装集団やネオ・ナチを利用して目障りな体制を暴力的に破壊しているが、その間、2016年に自衛隊は与那国島、奄美大島、宮古島に施設を建設した。その時の総理大臣は安倍晋三である。2023年には石垣島にも建設する予定だ。 この基地建設の目的をアメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。アメリカはロシアや中国の周辺にミサイルを配備しているが、これと関連しているのだ。 アメリカ政府はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を立てているが、インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとRANDコーポレーションは考えている。 しかし、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという形にするしかないとRANDは考えている。 ユーラシア大陸の東側でアメリカの手先になる国が日本以外に見当たらないため、アメリカ、イギリス、オーストラリのアングロ・サクソン系3カ国は2021年9月に「AUKUS」という軍事同盟を結んだのだろうが、GBIRMの配備はオーストラリアも嫌がっているようだ。 オーストラリアもアングロ・サクソン系の国であり、アメリカやイギリスの属国だが、それでも中国に対してそこまで踏み込むと経済関係が決定的に悪くなると懸念していると言われている。ロシアと中国を抜きに日本経済は維持できそうにないが、岸田政権は気にしていないように見える。 岸田首相は6月29日から30日にかけてスペインで開かれたNATO(北大西洋条約機構)の会議に出席したが、その背景にはアメリカの軍事戦略があるだろう。イギリスの支配者は19世紀からユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸国を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するという計画を立てたが、同じアングロ・サクソン国であるアメリカもその戦略を継承している。その長期戦略が表面に出てきたということだろう。 日本の支配層が従属するアメリカの支配層はウクライナでロシアを疲弊させ、現在の体制を倒そうとしている。ロシアが疲弊すれば日本がロシアや中国へ攻め込めると考える人がいるかもしれない。南西諸島における自衛隊の軍事施設建設もそうした意思の表れだと見られても仕方がない。 日本はアメリカ政府の意向に沿う形でロシアに対する経済戦争を仕掛け、ロシアから「非友好国」と位置付けられている。一線を超えたとみなされたわけだ。 ウラジミル・プーチン露大統領が6月30日に署名した大統領令によって、ロシアのサハリンで石油や天然ガスを開発するプロジェクト「サハリン2」の事業主体をロシア政府が新たに設立する企業に変更、その資産を新会社に無償で譲渡することにしたというが、これは序章に過ぎないだろう。 現在、ロシアと中国は北極航路を開発中で、アメリカは対抗するために北極海での活動を活発化させているが、千島列島も重要な意味を持つことになる。 このままアメリカに引っ張られていくと、日本の経済は成り立たなくなる。日本企業の経営者はそうした事態を懸念、その不安は政治家にも波及しているはず。アメリカはそうした日本の不安を押さえつけようとするだろう。
2022.07.09
イギリスのボリス・ジョンソン首相は7月7日、辞任に同意した。5日にリシ・スナク財務相とサジド・ジャビド保健社会福祉相が辞任を表明してから内閣は雪崩を打って崩れ、抵抗できなくなったようだ。リズ・トラス外相はG20に出席せず、帰国するという。もっとも、政権が替わっても支配者は同じなわけだが、その支配者の内部に亀裂が入っているようなので、変化はあるだろう。 ウォロディミル・ゼレンスキーはウクライナの大統領を演じているコメディアンだが、ジョンソンはコメディアンを演じている政治家だと言う人もいる。いずれにしろ、フィクションを演じて人びとを操ってきたのだが、限界に達したようだ。 ジョンソンはアメリカとイギリスの同盟を重要視する勢力に属す。このグループはブリグジット(欧州連合離脱)を実現させるためにテリーザ・メイを首相の座から引き摺り下ろし、後任としてジョンソンを据えたのだ。 この工作で中心的な役割を果たしたと言われているのは、1999年から2004年までイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)の長官を務めたリチャード・ディアラブとイギリス参謀長の戦略諮問会議のメンバーであるグワイシアン・プリンス。MI6は歴史的にシティ(イギリスの金融資本)と関係が深い。 ジョンソンを担いでいる勢力はアメリカのジョー・バイデンを担いでいる勢力とつながり、ウクライナでの工作でも連携していた。リズ・トラス外相も仲間のようで、ロシアの主権を否定する発言を繰り返し、挑発して軍事的な緊張を高めてきた。 ウクライナでの戦争は短期的に見ても2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターから始まる。東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領をネオ・ナチの暴力を使って排除した。それに反発する人びとは住民投票を経てロシアとの統合(クリミア)、自治(ドネツク)、独立(ルガンスク)を選んだのだが、ロシア政府が表立って支援しなかったドネツクとルガンスク、つまりドンバスでは戦闘が始まったわけである。そのロシアが今年2月24日に動いた。 早い段階からウクライナ側には話し合いで早期解決しようとする動きがあったが、米英支配層を後ろ盾とし、ネオ・ナチを中心に編成されている親衛隊が許さない。それでもゼレンスキー政権とウラジミル・プーチン政権の停戦交渉が行われるが、4月9日にジョンソン英首相がキエフを訪問した後、停戦交渉は止まったとウクライナでは伝えらえた。 アングロ・サクソンはこれまで大陸で大きな戦争を引き起こし、内陸国を疲弊させ、支配してきた。NATOがヨーロッパ支配の仕掛けだということは本ブログで繰り返し書いてきた。 こうして支配システムが築かれたが、第2次世界大戦が終わって間もない時期にはアメリカやイギリスの支配層が警戒する人物がフランスにいた。大戦中、レジスタンスに加わっていたシャルル・ド・ゴールだ。 西ヨーロッパでドイツ軍と戦っていたのは事実上レジスタンスで、その中心はコミュニストだった。そこでフランスやイタリアでは大戦後、コミュニストは人気があった。 イギリスやアメリカの支配層は秘密部隊を編成、フランスの左翼を潰すためにクーデターを計画する。1947年の7月末か8月上旬に計画を実行に移す予定で、ド・ゴールの暗殺も目論んでいたとされている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) しかし、このクーデター計画は露見、首謀者としてアール・エドム・ド・ブルパンが逮捕された。フランス北部に彼の城では重火器、戦闘指令書、作戦計画書などが発見されたが、そのシナリオによると、まず政治的な緊張を高めるために左翼を装って「テロ」を実行し、クーデターを実行しやすい環境を作り出すことになっていた。イタリアの「緊張戦略」と基本的に同じである。 1961年にはフランスではOAS(秘密軍事機構)が組織された。その背後にはフランスの情報機関SDECE(防諜外国資料局)や第11ショック・パラシュート大隊がいて、その後ろにはイギリスやアメリカの情報機関が存在していた。 OASはその年の4月12日にスペインのマドリッドで秘密会議を開き、アルジェリアでのクーデター計画について討議している。会議にはCIAの人間も参加していた。 その計画では、アルジェリアの主要都市の支配を宣言した後でパリを制圧するというもので、計画の中心には直前まで中央欧州連合軍司令官(CINCENT)を務めていたモーリス・シャレをはじめとする4名の将軍がいて、1961年4月22日にクーデターは実行に移される。 それに対し、アメリカ大統領だったジョン・F・ケネディはジェームズ・ガビン駐仏大使に対し、必要なあらゆる支援をする用意があるとド・ゴールへ伝えるように命じている。CIAやアメリカ軍の好戦派は驚愕したはずで、結局、クーデターは4日間で崩壊してしまう。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) フランスのクーデターを失敗させたとも言えるケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺された。その葬儀にド・ゴール自身も出席している。帰国したフランス大統領は情報大臣だったアラン・ペールフィットに対し、ケネディに起こったことは自分に起こりかけたことだと語ったという。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) ケネディ大統領が暗殺されてから3年後にフランス軍はNATOの軍事機構から離脱、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出し、SHAPEはベルギーのモンス近郊へ移動する。 フランスでは6月に議会選挙が実施され、エマニュエル・マクロン大統領の与党「LREM」は345議席から245議席へ減らす大敗を喫した。それに対し、左翼が集結した「不服従のフランス」は67議席増やして131議席に増加、マリーヌ・ル・ペンが率いる「国民連合」は7議席から89議席へ増やした。いずれの政党とも、ネオ・ナチを手先として使っているアメリカ支配層から嫌われている。
2022.07.08
アメリカのジョージア州に花崗岩で作られたモニュメントが建てられたのは1980年3月のことだった。高さ5.87メートルの巨大な石碑で、そこにはメッセージが英語、スペイン語、スワヒリ語、ヒンズー語、ヘブライ語、アラビア語、中国語、そしてロシア語で彫られている。そのモニュメントが今年7月6日に爆破された。 彫られた文面を読むと、建造した何者かは自分たちを賢明で沈着な理性を持つ公正な判断ができる存在だと信じているようだ。その自分たちが世界を管理するため、各国の法律や行政機関を廃し、自分たち以外の人間の権利を制限するべきだと主張しているように解釈できる。人類が「地球の癌にならない」ようにするため、総人口は5億人以下に減らすべきだとも主張している。 このモニュメントを誰が建造させたのかは不明だが、CNNを創設、人口削減を主張しているテッド・ターナーが関係していると推測する人は少なくない。 ターナーによると、地球の環境問題を引き起こしている主な原因は多すぎる人口にあり、環境問題を解決するには人口を減らさなければならない。彼は1996年、「理想的」な人口は今より95%削減した2億2500万人から3億人だと語っている。2008年にはテンプル大学で、世界の人口を20億人、現在の約3割まで減らすとしていた。 ターナーと同じように人口を削減するべきだと主張しているひとりがマイクロソフトの創設者でパンデミック騒動で前面に出ているひとりのビル・ゲーツ。彼は2010年2月、TEDでの講演で、ワクチンの開発、健康管理、医療サービスで人口を10~15%減らせると語っている。彼にとって「ワクチン」は人口を減らす道具のようだ。 そうした考え方の根底にはトーマス・マルサスの人口論がある。人口の増加は等比級数的であり、食糧の増加は等差級数的なため、その不均衡が飢饉、貧困、悪徳の原因になるという主張だ。強者が弱者を虐殺して富を独占、飢饉、貧困、悪徳が広がっていることを気にしていない。しかも、すでに人口は減少する方向へ向かい始めている。 アメリカのNSC(国家安全保障会議)は1974年、ヘンリー・キッシンジャーの下で「NSSM(国家安全保障研究覚書)200」という報告書を作成、人口増加の地政学的な意味が指摘されている。発展途上国の人口増加はアメリカの利益、つまりアメリカを支配する私的権力の利益にとって良くないと分析。同じことをイギリスの王立人口委員会も1944年に指摘している。 それまでアメリカを含む欧米諸国は発展途上国が自立し、経済を発展させることができないように努力してきた。欧米に依存せざるをえない経済構造を押し付けてきたのだが、人口の増加がそうした枷を壊してしまう可能性がある。欧米支配層が懸念しているのは、自分たちが寄生している国での人口増加だろう。
2022.07.08
ドンバス軍とロシア軍はリシチャンシクを攻略、ルガンスク全域を制圧したとロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は発表した。ウクライナ国防省の広報官はBBCに対し、ロシア軍はリシチャンシクを完全にはコントロールできていないとした上で、「我々は勝っている」と主張していたが、現地から伝えられている映像を見ると、ロシア側の発表が正しいようだ。 ドンバスでは西側の記者も取材している。ドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットが有名だが、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者も現地で取材しているようだ。 ドイツのシュピーゲル誌が伝えたBND(連邦情報局)の分析通り、ウォロディミル・ゼレンスキー政権が送り込んだ部隊は7月で抵抗を終えざるをえなくなり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧するかもしれない。 リシチャンシクでも解放された人びとはクーデター体制が送り込んだ軍や親衛隊を批判している。住民にとってこうした戦闘集団は占領軍。2014年から8年にわたり、彼らは死と隣り合わせの生活を強いられてきた。その緊張から解放された様子が映像に収められている。ドンバスで解放された人びとは異口同音にウクライナの軍や親衛隊、特に親衛隊の残虐行為について語っているが、リシチャンシクでも同じだ。 ゼレンスキー政権は3月からドンバス制圧戦を始める計画だったことを示す文書がロシア軍によって回収されているが、その直前にロシア軍が動いた。西側諸国は配下の有力メディアを使って大々的な宣伝戦を展開しているが、戦況自体に影響を及ぼすことはできなかったようだ。 アメリカ/NATOは宣伝だけでなく、ゼレンスキー政権へ携帯式対戦車ミサイル「ジャベリン」など大量の兵器を供給してきた。当初、アメリカ/NATOはウクライナへ持ち込む兵器をウクライナの西端、ポーランドとの国境近くにあるヤボリウ基地へ集積、そこで軍事訓練も行われているとロイターは2月4日に伝えていた。 ヤボリウ基地をロシア軍は3月13日に巡航ミサイルで攻撃。ニューヨーク・タイムズ紙はその基地がウクライナ軍と西側の軍隊とを結びつける場所で、重要な兵站基地であると同時に外国から来た戦闘員を訓練するセンターでもあるとしている。 その後、ロシア軍に歯が立たないウクライナ軍は西側に高性能兵器の供給を求め、フランスからカエサル155mm自走榴弾砲、アメリカからHIMARS(高機動ロケット砲システム)、またイギリスからはM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)も供給された。こうした兵器でドンバス(ドネツクとルガンスク)の住民を攻撃しているようだ。 しかし、兵器を扱える兵士が足りているとは思えない。だぶついた兵器は中東やブラックマーケットへ横流しされているという情報もある。最終的にはアメリカが戦乱を引き起こそうとしている場所へ流れていくのだろうが、それらがEUやアメリカへ流れ込まないとは言えない。
2022.07.07
アメリカのジョー・バイデン大統領は今月、サウジアラビアを訪問すると伝えられている。アメリカ政府の政策で石油価格が暴騰していることから、この問題が議題になるという見方もあるが、ここにきて注目されているのはサウジアラビアの動向。BRICSへの参加に前向きの姿勢を見せているのだ。 BRICSの現加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカだが、ここにきてイランとアルゼンチンが加盟の意思を示していた。そしてサウジアラビアだ。 言うまでもなくサウジアラビアは世界有数の産油国であり、OPECのリーダーとして石油取引の決済をドルに限定するように誘導、ドル体制を支えてきた。いわゆる「ペトロダラー」の仕組みだ。この仕組みと投機市場の大幅な規制緩和によって実世界からドルを吸い上げ、新たにドルを発行する余地を作っている。新たにドルを発行できなければアメリカの支配システムは崩壊する。 ドルを実世界から回収する作業に協力する代償として、体制を守り、支配者の地位と富を維持することになっているようだが、イラクのサダム・フセインやリビアのムアンマル・アル・カダフィのようなアメリカの協力者をアメリカは自分たちの都合で暴力的に排除し、国自体を破壊してきた。やり口は犯罪組織に似ている。アメリカの支配者に対する信頼が大きく低下したことは間違いないだろう。 サウジアラビア国王のサルマン・ビン・アブドラジズ・アル・サウドは2017年10月にロシアを訪問、防空システム「S-400」を含む兵器の取り引きについて話し合ったという。この頃からサウジアラビアとアメリカとの間に隙間風が吹き始めている。 その翌月、モハメド・ビン・サルマン皇太子はライバルを粛清する。48時間の間に約1300名を逮捕させたのだが、その中には富豪や少なからぬ王子や閣僚が含まれていたとされている。その際、イスラエル軍は皇太子を守るため、F-15やF-16を含む軍用機をサウジアラビアへ派遣したとも報道された。 その前、2017年4月にアメリカ軍は地中海に配備されていたアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル「トマホーク」59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したのだが、その6割が無力化されている。ロシア製の防空システムが有効だということが証明されたわけだ。 この攻撃に合わせ、アメリカの傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)がシリアで一斉に攻勢をかける手筈になっていたとも言われているが、そうした展開にはならなかった。 2017年4月のミサイル攻撃失敗のリベンジのつもりだったのか、ドナルド・トランプ政権は2018年4月、アメリカ軍だけでなくイギリス軍やフランス軍も使って100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射。ところがこの時には7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムの「パーンツィリ-S1」が効果的だったと言われている。 バラク・オバマ政権が軍事攻撃の準備を進めていた2015年9月、ウラジミル・プーチン政権はシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを敗走させてしまった。単に軍事力の強さを示しただけでなく、兵器の性能が高いことも世界に知らせた。 2015年10月にはカスピ海のコルベット艦から発射された26機の巡航ミサイル「カリブル」は約1500キロメートルを飛行し、シリアのターゲット11カ所を正確に攻撃、破壊している。この性能にアメリカ側はショックを受けたと言われている。 1991年12月にソ連が消滅して以降、世界の少なからぬ人々はアメリカは唯一の超大国になり、その軍事力は圧倒的だと信じていた。その信仰がシリアでの戦争で崩壊したとも言える。西側の有力メディアがウクライナで「ロシア軍が負けている」と事実を無視して必死に宣伝、「ロシア軍は弱い」というイメージを広げようとしている理由のひとつもそこにあるのだろうが、世界的に見た場合、その宣伝を真に受ける人が多いとは思えない。 2019年9月にもサウジアラビアで大きな事件が引き起こされた。サルマン国王が最も信頼していた警護責任者、アブドル・アジズ・アル・ファガム少将が射殺されたのだ。ジェッダにある友人の家で個人的な諍いから殺されたとされているのだが、宮殿で殺されたとする情報がある。サウジアラビアを苦境に陥らせる原因を作り出した皇太子に関する情報を国王へ伝えていたのはアル・ファガムだけだったと言われている。 アル・ファガム殺害の翌月頃からサウジアラビアはイランに接近している。イラン側のメッセンジャーを務めていたガーセム・ソレイマーニーはイスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われているコッズ軍の指揮官だったが、2020年1月3日、PMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官と共にアメリカ軍の攻撃で暗殺された。 この攻撃はイスラエルも協力していたというが、イラクのアディル・アブドゥル-マフディ首相によると、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書をソレイマーニーはその時、携えていた。 ソレイマーニーの喪が明けた直後の1月8日、イラン軍はアメリカ軍が駐留しているイラク西部のアイン・アル・アサド空軍基地やエル・ビルを含も2基地に対して約35機のミサイルで攻撃、犠牲者が出ているとも伝えられている。50分後にエルビル空港近くの米軍基地などに対して第2波の攻撃があったという。 その月の下旬、アフガニスタンではCIAのイラン工作を指揮していたと言われているマイケル・ダンドリアが乗ったE11Aが墜落、ダンドリアは死亡した。 サウジアラビアのBRICS接近は唐突に起こったわけではない。アメリカの妨害にもかかわらず、サウジアラビアは確実にロシアやイランへ接近してきた。BRICSに興味を示すのは必然だが、これはアメリカにとって大きな打撃になる。
2022.07.06
フィンランドとスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟が決まったようだ。DHKP/C(革命的人民解放戦線)とPKK(クルディスタン労働者党)を受け入れている両国を加盟させることにトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は反対していたが、ここにきて態度を変えていた。 NATOは1949年4月、ソ連軍の侵攻に備えるという名目で創設された軍事同盟。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国だ。 しかし、この理由には現実味がない。ソ連はドイツとの戦争で2000万人とも3000万人とも言われる国民が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態で、西ヨーロッパに攻め込む余力があったとは思えない。ヨーロッパ支配が主な目的だという見方もある。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、第2次世界大戦のヨーロッパ戦線は1942年8月から43年2月にかけて行われたスターリングラードの戦いで事実上、勝敗は決していた。アドルフ・ヒトラーの命令でドイツ軍は戦力の4分の3をソ連との戦いに投入、その部隊が降伏したのだ。 それを見て慌てたイギリスとアメリカの支配層は1943年5月にワシントンDCで会談、7月にシチリア島上陸作戦を敢行した。その際、レジスタンスの主力だったコミュニストを抑え込むため、アメリカ軍はマフィアの協力を得ている。ノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は1944年6月だ。 その頃になるとアメリカの戦時情報機関OSSのフランク・ウィズナーを介してアレン・ダレスのグループがドイツ軍の情報将校、ラインハルト・ゲーレン准将(ドイツ陸軍参謀本部第12課の課長)らと接触している。ソ連に関する情報を持っていたゲーレンをダレスたちは同志と見なすようになり、大戦後には彼を中心に情報機関が編成された。BND(連邦情報局)だ。 スターリングラードでドイツ軍が降伏した後、アメリカやイギリスはナチスと接触して善後策を協議。サンライズ作戦である。 その後、アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させたり、保護したり、雇用する。ラットライン、ブラッドストーン作戦、ペーパークリップ作戦などという暗号名が付けられている。 その一方、ソ連やレジスタンスに対抗するための手を打っている。そのひとつがシチリア島上陸作戦だが、もうひとつはゲリラ戦部隊ジェドバラの創設。1944年のことである。この部隊を組織したのはイギリスとアメリカの特殊部隊。つまりイギリスのSOEとアメリカのSO(OSSの一部門)だ。アメリカやイギリス、より正確に言うならば、米英の金融資本はナチスと手を組み、ソ連やコミュニストを敵視していた。 1945年4月に反ファシストの姿勢を鮮明にしていたニューディール派のフランクリン・ルーズベルトが急死、その翌月にドイツが降伏した。その直後にイギリスの首相だったウィンストン・チャーチルはソ連を奇襲攻撃するための軍事作戦を作成させた。そしてできたのが「アンシンカブル作戦」である。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000など) その作戦では、1945年7月1日にアメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始めることになっていたが、イギリスの参謀本部は拒否し、実行されなかったという。 この作戦が葬り去られる別の理由もあった。1945年7月16日、アメリカのニューメキシコ州にあったトリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験が行われ、成功したのだ。ハリー・トルーマン大統領の意向でポツダム会談が始まる前日に実行されたという。 その実験成功を受けてトルーマン大統領は原子爆弾の投下を7月24日に許可。26日にアメリカ、イギリス、中国はポツダム宣言を発表、8月6日に広島へウラン型爆弾を投下、その3日後には長崎へプルトニウム型爆弾が落とされている。これ以降、チャーチルやアメリカの好戦派はソ連や中国への核攻撃計画を作成する。 大戦が終わるとジェドバラはOSSと同じように廃止されるが、その人脈は残る。当初、CIAは情報の収集と分析に限るという条件が付けられたことからOSS人脈の好戦的なグループは秘密裏に破壊工作機関のOPCを創設した。OPCの初代局長に選ばれたフランク・ウィズナーはアレン・ダレスの部下で、ふたりともウォール街の弁護士だ。 OPCは1950年10月にCIAへ吸収され、51年1月にはダレスがCIA副長官としてCIAへ乗り込み、52年8月にはOPCが中心になって計画局が作られた。それ以降、ここが秘密工作を担当するようになる。 ヨーロッパでもジェドバラの人脈は秘密部隊を組織、NATOが創設されるとその中へ潜り込んだ。その秘密部隊は全てのNATO加盟国に設置され、1951年からCPC(秘密計画委員会)が指揮するようになる。その下部機関として1957年に創設されたのがACC(連合軍秘密委員会)だ。この仕組みは今も生きていると言われ、スウェーデンやフィンランドでも作られ、各国政府を監視、米英支配層にとって不都合な事態が生じた場合、何らかの秘密工作を実行するはずだ。 こうした秘密部隊は国によって別の名称で呼ばれているが、アメリカやイギリスの情報機関の指揮下、作戦は連携して行われる。中でも有名な部隊はイタリアのグラディオで、1960年代から80年代にかけて極左を装って爆弾テロを繰り返し、治安体制の強化を国民に受け入れさせ、左翼にダメージを与えた。 この問題を研究しているダニエレ・ガンサーによると、NATOへ加盟するためには秘密の反共議定書にも署名する必要があり、「右翼過激派を守る」ことが義務付けられている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) ところで、今回、新たにNATOへ加盟するスウェーデンはかつて自立の道を歩いていた。その象徴的な存在がオロフ・パルメ首相だ。アメリカの支配層にとって目障りな存在だったとも言える。 そのパルメが首相に返り咲いたのは1982年10月8日だが、その直前、10月1日からスウェーデンでは国籍不明の潜水艦が侵入したとして大騒動になっている。この騒動はスウェーデン人のソ連感に影響を与えたが、ソ連の潜水艦だったことを示す証拠はない。圧倒的な宣伝で多くの人はソ連に対する悪いイメージが植え付けられただけである。 1980年までソ連を脅威と考える人はスウェーデン国民の5~10%に過ぎなかったが、事件後の83年には40%へ跳ね上がり、軍事予算の増額に賛成する国民も増える。1970年代には15~20%が増額に賛成していただけだったが、事件後には約50%へ上昇しているのだ。そして1986年2月28日、パルメ首相は妻と映画を見終わって家に向かう途中に銃撃され、死亡した。(Ola Tunander, “The Secret War Against Sweden”, 2004)
2022.07.05
ラトビアのリガで6月20から「三海洋イニシアチブ」の首脳会議が開かれ、ウクライナの加盟が事実上決まったようだ。名称に含まれる「三海洋」とはバルト海、アドリア海、黒海を指す。 この集まりは2015年にポーランドとクロアチアが主導して組織され、現在加盟している国はオーストリア、ブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア。そこにウクライナが加わるわけだが、その上にはアメリカとイギリスが存在している。 ウォロディミル・ゼレンスキーが大統領を務めているウクライナの現体制は2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権が仕掛けてクーデターによって作り出された。ウクライナの東部や南部、つまりロシア語を話し、ロシア正教の影響下にある地域を支持基盤にしていたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したのだ。 東部や南部の人びとはクーデター政権を拒否、南部のクリミアでは住民投票を経て人びとはロシアとの統合を選んだ。東部のドネツクでは自治を、ルガンスクは独立をそれぞれ住民投票で決めたが、クーデター政権が送り込んだ部隊と戦闘になり、戦争が続いている。オデッサではネオ・ナチの集団が反クーデター派の住民を虐殺、制圧してしまった。 ゼレンスキー政権はドネツクとルガンスク、つまりドンバスを制圧してロシア語系住民を「浄化」する作戦を3月から開始する予定だったことを示す文書がロシア軍によって回収されているが、このプランは成功しそうにない。 ある時期までドンバスを占領してきたウクライナ内務省の親衛隊は住宅地域に攻撃拠点を築き、住民を人質にしてロシア軍に対抗していたものの、戦況は圧倒的に不利だった。ここにきてウクライナ兵の離脱が目立っている。 ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」が分析しているように、このまま進むと、ゼレンスキー政権が送り込んだ部隊は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえなくなり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると見られている。 ジョージ・ソロスやネオコンはウクライナに対し、ロシア軍と戦い続けろと言っているが、ヘンリー・キッシンジャーはスイスのダボスで開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で、平和を実現するためにドンバスやクリミアを割譲するべきだと語っている。 そうした状況の中、ゼレンスキー大統領は「三海洋イニシアチブ」へ参加する意思を示し、事実上認められたわけだ。軍事的な抵抗をやめざるをえなくなることを見通しての布石だろう。 このイニシアティブは第1次世界大戦の後に始まった運動「インテルマリウム」の焼き直しである。バルト海と黒海にはさまれた地域ということでこのように名づけられたようだ。 これはポーランドで反ロシア運動を指揮していたユゼフ・ピウスツキが中心になって始められ、そのピウスツキは日露戦争が勃発した1904年に来日し、彼の運動に協力するよう、日本側を説得している。 ポーランドでは1925年に「プロメテウス同盟」という地下組織が編成され、ウクライナのナショナリストも参加したのだが、ポーランド主導の運動だったことから離反するウクライナの若者が増え、OUN(ウクライナ民族主義者機構)が組織された。 中央ヨーロッパには16世紀から18世紀にかけて「ポーランド・リトアニア連邦」が存在していたが、その領土が最大だった1600年当時の連邦をピウスツキは復活させようとしていたようだ。それがインテルマリウム。この地域はカトリックの信徒が多く、ローマ教皇庁の内部には中央ヨーロッパをカトリックで統一しようという動きがあり、インテルマリウムと一体化していく。 中央ヨーロッパを統一しようという動きでは、ブリュッセルを拠点としたPEU(汎ヨーロッパ連合)も関係してくる。この組織はオットー・フォン・ハプスブルクやリヒャルト・フォン・クーデンホーフ-カレルギーらによって1922年に創設され、メンバーにはウィンストン・チャーチルも含まれていた。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) チャーチルはイギリスの貴族を父に、アメリカの富豪を母に持つ人物で、ロスチャイルド家の強い影響下にあった。そのイギリスは19世紀にロシアを制圧するプロジェクトを始めている。いわゆる「グレート・ゲーム」だ。 そうした戦略をまとめ、1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表したハルフォード・マッキンダーは地政学の父と呼ばれている。その後、アメリカやイギリスの戦略家はマッキンダーの戦略を踏襲してきた。その中にはジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。インテルマリウムはマッキンダーの戦略に合致し、ロシアを制圧する上で重要な意味を持つ。 マッキンダーの理論はユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するというもの。この戦略を成立するためにスエズ運河が大きな意味を持つことは言うまでもない。 この運河は1869年に完成、75年からイギリス系の会社が所有している。そのスエズ運河会社の支援を受け、1928年に創設されたのがムスリム同胞団だ。後にイギリスはイスラエルとサウジアラビアを建国、日本で薩摩や長州を支援して「明治維新」を成功させているが、これもイギリスの戦略に合致している。 インテルマリウムはポーランド人ナショナリストの妄想から始まったが、カトリック教会の思惑やイギリスやアメリカの戦略にも合う。米英にとって西ヨーロッパ、特にドイツ、フランス、イタリアは潜在的なライバル。20世紀にあったふたつの世界大戦はこの3カ国をライバルから潜在的ライバルへ引き摺り下ろすことになったが、復活する可能性はある。 第1次世界大戦が始まる直前、帝政ロシアでは支配層の内部が割れていた。帝国は大地主と産業資本家に支えられていたが、対立が生じていた。大地主がドイツとの戦争に反対していたのに対し、産業資本家は賛成していたのだ。 大地主側の象徴がグリゴリー・ラスプーチンであり、産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフがいた。ユスポフ家はロマノフ家を上回る財力があるとも言われる貴族で、イギリス人を家庭教師として雇っていた。 その家庭教師の息子で、ユスポフ家の邸宅で生まれたステファン・アリーは成人してからイギリスの情報機関MI6のオフィサーになった。またフェリックスは後にイギリスのオックスフォード大学へ留学、そこで親友になったオズワルド・レイナーもMI6のオフィサーになる。 ラスプーチンが暗殺未遂事件で入院したこともあり、ロシアは参戦するが、ラスプーチンは戦争反対の意見を変えない。そうした中、イギリスはMI6のチームをロシアへ送り込んだが、その中心メンバーはアリーとレイナーだった。ラスプーチンを射殺したのはユスポフだと一般的には言われているが、殺害に使われた銃の口径などからレイナーが真犯人だとする説もある。 1917年3月の「二月革命」でロマノフ朝は崩壊、産業資本家を中心とする体制ができあがり、戦争は継続されることになった。それを嫌ったドイツは即時停戦を主張していた亡命中のウラジミル・レーニンに注目し、ボルシェビキの指導者を列車でモスクワへ運び、同年11月の「十月革命」につながる。こうした経緯があるため、ナチスが実権を握るまでソ連とドイツの関係は良好だった。米英の巨大金融資本がナチスのスポンサーだったということは本ブログで指摘してきた通りだ。 ソ連/ロシアとドイツが手を組むことを米英の支配層は嫌う。アメリカのジョー・バイデン政権が行っているロシアに対する「制裁」で最も大きなダメージを受けるのは西ヨーロッパだ。 ソ連/ロシアと西ヨーロッパを分断するインテルマリウムは米英の戦略に合致すると言える。インテルマリムに「三海洋イニシアチブ」という新しいタグをつけて復活させた意味は言うまでもないだろう。
2022.07.04
ウラジミル・プーチン露大統領が6月30日に署名した大統領令によって、ロシアのサハリンで石油や天然ガスを開発するプロジェクト「サハリン2」の事業主体をロシア政府が新たに設立する企業に変更、その資産を新会社に無償で譲渡することになったようだ。アメリカのジョー・バイデン政権が始めたロシアに対する経済戦争に対する反撃のひとつだと言えるだろう。 アメリカ政府は影響下にあるロシアの金や外貨を凍結、エネルギー資源をはじめとする貿易を制限し、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシア排除も決めた。この経済戦争で日本やEUはアメリカに加担、ロシア政府から「非友好国」と見做されるようになった。 この経済戦争は短期的に見ると、2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して行ったクーデターから始まっている。このクーデターでウクライナの東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除、ヤヌコビッチを支持していた国民はクーデター政権を拒否した。 クーデターの背後にアメリカが存在していることからクリミアの住民は住民投票を経てロシアとの統合を選んだ。ドネツクは自治を、ルガンスクは独立をそれぞれ住民投票で決めたのだが、クーデター政権が送り込んだ部隊と戦闘になる。この時にロシアは目立った動きをせず、ドンバス(ドネツクとルガンスク)で戦争が続くことになった。 その後、アメリカ/NATOはクーデター体制に兵器を供給、兵士に対する軍事訓練を続けてきた。特殊部隊が実際の戦闘にも参加しているとみられている。 そして今年2月19日、ウクライナの政治家であるオレグ・ツァロフは緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らした。 そのアピールによると、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧しようとしているとされていた。ドンバスを制圧し、キエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を「浄化」、SBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。 後にロシア軍が回収した文書によると、ゼレンスキーが1月18日に出した指示に基づいて親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。この情報が正しいなら、その直前にロシア軍がウクライナを攻撃し始めたことになる。その反撃を口実にして、バイデン政権はロシアに対する「制裁」を始めたわけだ。 日本はアメリカの経済戦争に参加しているが、それだけでなく軍事的な同盟関係を強化している。アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとしたものの、インドとインドネシアはアメリカと一線を画している。明確に従属しているのは日本だけ。 日本はアメリカ、オーストラリア、そしてインドと「クアッド」と呼ばれる軍事同盟を結んだが、インドは腰が引けているので、アメリカとしては信頼できないだろう。そこでアメリカ、イギリス、オーストラリのアングロ・サクソン系3カ国は2021年9月に「AUKUS」という軍事同盟を結んだ。この同盟に日本は接近、その日本の総理大臣である岸田文雄は6月29日から30日にかけてスペインで開かれる予定のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席した。 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は今年、アメリカのGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する戦略について分析している。 インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備はオーストラリアも嫌がっているようで、結局、ミサイル配備を容認する国は日本しかないという結論に達したようだ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという案をRANDは提示している。 その提案を先取りする形で日本の自衛隊は南西諸島に基地を建設してきた。2016年に与那国島、奄美大島、宮古島に施設を建設、23年には石垣島にも建設する予定だ。 こうした日米の軍事的な連携は1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表されてから強化されている。この報告の基盤になったのが1992年2月に国防総省で「DPG草案」という形で作成された世界制覇プランだ。このプランがポール・ウォフロウィッツ国防次官を中心に書き上げられたことから「ウォフロウィッツ・ドクトン」とも呼ばれている。国連中心主義を掲げていた細川護熙政権にナイ・レポートは突きつけられた。アメリカに従えば良いという通告でもある。 この時、最初に動いたのはマイケル・グリーンとパトリック・クローニンのふたり。カート・キャンベルを説得して国防次官補だったジョセイフ・ナイに接触し、ナイは1995年2月に報告を発表したのだ。現在、キャンベルはアメリカの東アジア政策を指揮している。 ウクライナだけでなく、東アジアもネオコンに支配されていると言えるだろうが、駐日アメリカ大使を見てもそれは推測できる。昨年12月に就任、3月に着任したラーム・エマニュエルは筋金入りのネオコン/シオニストで、「ランボー」と呼ばれるほどの人物だ。イスラエル軍の軍人だったことがあるともいう。日本は中国やロシアに対して敵対的な姿勢を維持するよう、アメリカに強いられているはずだ。日本の政治家や官僚もエマニュエルに脅されている可能性がある。 すでにアングロ・サクソンは中露と戦争状態にある。プーチンは穏やかに収束させようとしていたが、米英を増長させただけだった。こうした状態の中、アメリカへの従属を隠していない日本はロシアから「非友好国」だと見做されている。サハリン2の問題は序の口だろう。
2022.07.03
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は6月24日現在、前の週より131名増えて2万9162名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近いということになる。 このところ、人びとの関心はCOVID-19からウクライナへ移ったようだ。西側の有力メディアがそのように誘導しているとも言えるが、ふたつの「報道」には共通している点がある。偽情報だということだ。 COVID-19をめぐる騒動は中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状の肺炎患者が見つかったところから始まる。その事実を中国は2019年12月31日にWHO(世界保健機関)へ報告、国際ウイルス分類委員会は20年2月11日に病原体を「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」と命名、3月11日にWHOはパンデミックを宣言した。 武漢に重症の肺炎患者が出たのは事実だろうが、その病気が世界へ広がったとは言えない。局所的に似た病気が現れるだけだ。病気が広がっているという宣伝の根拠に使われたのはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査だが、これは本来、特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術である。 増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、しかも偽陽性の確立が増えていくことも知られている。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているのだが、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だった。医学的に無意味なことをしているわけだ。 PCRを病気の診断に使うべきでないと語っていた専門家の中には、この技術を開発して1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスも含まれている。マリスは騒動が始まる前、2019年8月7日に肺炎で死亡した。 2020年2月から中国で感染対策を指揮したのは中国軍の陳薇だった。陳は生物化学兵器の専門家で、2002年から中国で広まったSARSを押さえ込んだことで知られている。 その時の経験から彼女はインターフェロン・アルファ2bを使用したところSARS-CoV-2でも効果があり、早い段階で沈静化させることに成功した。 インターフェロン・アルファ2bはキューバで研究が進んでいる医薬品で、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できたことも幸いした。今回の件で中国の習近平国家主席はキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたと伝えられている。 SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)への感染を確認するため、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を利用してきたが、2021年1月20日にはWHOでさえPCRは診断の補助手段にすぎないと表明した。 そして2021年7月21日、CDCはこの診断パネルのEUA(緊急使用許可)を2021年12月31日に取り下げると発表している。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないことを認めざるをえなくなったようだ。今でもPCR検査は行われているようだが、これは旅行や試験の際にどこかの神社で売っている「御守り」を身につけるようなものである。 その一方、「COVID-19ワクチン」が有害だということが明確になってきたが、それを、FDAは6月17日、モデルナの「ワクチン」を生後6か月から17歳の子供に、またファイザーの製品を生後6か月から4歳の子供に使用することを承認した。 この「ワクチン」はmRNA技術が使われている。「mRNAワクチン」についてバイエルの重役であるステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」で「COVID-19ワクチン」が遺伝子治療だと認めている。遺伝子操作というべきかもしれないが、それを乳児にも注射しようというのだ。 スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「mRNAワクチン」の中に「酸化グラフェン」が存在していると発表したが、カンプラ教授が発表した論文で示されていた周波数の分析を見たドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく「水酸化グラフェン」だろうとしている。いずれにしろこの物質は一種の半導体だが、ノアックは微小なカミソリの刃だとも表現している。臓器を傷つけるということだ。
2022.07.02
シリアではクルドがアメリカの手先として戦闘を続けているが、そのクルドに拘束されているDAESH(IS、ISIS、ISILなどとも表記)の戦闘員をCIAは雇い、ウクライナでロシア軍と戦わせようとしているとロシアのメディアが伝えている。 DAESHはアル・カイダと同じように、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中核メンバーとする傭兵集団。イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックが2005年7月にガーディアン紙で説明したように、「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン(イスラム戦士)」の登録リストだ。アラビア語でアル・カイダはベースを意味、データベースの訳語としても使われる。 ウクライナではキエフ政権軍の犠牲者が多く、投降する兵士も少なくないという。ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」が分析しているように、このまま進むと、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえなくなり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると見られている。 ドンバスでウクライナ軍が組織的に戦うことができなくなると、一気にドニエプル川までロシア軍は制圧する可能性があるが、そうしたことにならないよう、ジョー・バイデン米政権やボリス・ジョンソン英政権はキエフ軍がロシア軍と戦い続けることを強要している。 ネオ・ナチは米英に同調しているが、戦力の大幅な低下は否定できない。そこでアメリカ/NATOは高性能兵器を供給、戦闘員の補充を図っている。 フランスから供与されたカエサル155mm自走榴弾砲でドンバス(ドネツクとルガンスク)の住民は6月6日から攻撃されているが、アメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)を、またイギリスはM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)を引き渡しつつあるが、操作方法がわからなければ仕方がない。そこでジョンソン政権はイギリスでウクライナ兵に操作方法を訓練していると伝えられている。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したが、ウクライナ全域を制圧するには戦力が足りない。その一方、ネオ・ナチから命を狙われていたベルクト(警官隊)の隊員やクーデター体制を受け入れられないウクライナ軍の兵士やSBU(ウクライナ保安庁)の隊員がドンバス(ドネツクとルガンスク)軍に合流している。 そこでアメリカ政府はCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んで兵士を訓練するだけでなく、傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名をウクライナ東部の作戦に参加させたと伝えられている。2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。 訓練だけでなく実戦に参加しているとする情報もある。ニューヨーク・タイムズ紙によると、CIAだけでなくイギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊員がウクライナ国内で活動。主に首都のキエフで活動しているとされているが、ドンバスにもいるようだ。 また、ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナで取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加していると伝えていたが、こうしたことも続いているだろう。アメリカ陸軍の第10特殊部隊グループはドイツで訓練の準備を秘密裏に進めているともいう。 CIAと軍の特殊部隊が連携して作戦を遂行することは珍しくない。その源流が同じだということは本ブログで説明した通りだ。 ウクライナでも好戦的な姿勢を見せているNATOはソ連軍の侵攻に備えるために組織されたとされているが、これは表向き。実際はヨーロッパ支配の仕組みであり、左翼勢力を潰すために秘密部隊のネットワークも存在する。おそらく、その中で最も有名な部隊はイタリアのグラディオだ。 グラディオは極左を装って爆弾テロを1960年代から80年代にかけて繰り返す。人びとは治安体制の強化を容認し、左翼を拒絶するようになる。支配層の作戦は成功した。この作戦でもナチスを含むファシストのネットワークが協力している。 NATOの秘密部隊ネットワークはNATO加盟国全てに張り巡らされているが、未加盟のウクライナにも侵入している。ウクライナのネオ・ナチで最も強い影響力を持っていると思われるドミトロ・ヤロシュは同国軍参謀長の顧問を務めているが、NATOの秘密部隊に参加していると言われているのだ。 ヤロシュはドロボビチ教育大学でワシル・イワニシン教授に学んでいるが、この人物はステパン・バンデラ派のOUN-B人脈が組織したKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに属していた。この教授が死亡した2007年にヤロシュは後継者に選ばれ、NATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われているのだ。 その年の5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めている。ヤロシュたちは世界ネオ・ナチとネットワークを構築する一方、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団と連携していたと言える。 クーデター直後の2014年3月、ヤロシュは声明を発表し、その中でチェチェンやシリアでロシアと戦ったサラフィ主義者などイスラム系の武装集団への支援を表明している。クーデターの際、チェチェンでロシア軍と戦っていた人物が参加していたこともわかっている。ウクライナでロシア軍と戦わせるためにジハード傭兵を使っても不思議ではない。
2022.07.02
このところ「食糧不足」や「食糧危機」が喧伝されている。WHO(世界保健機関)が2020年3月11日にパンデミックを宣言して以来、世界の物流が滞っていたが、今年2月24日にロシア軍がウクライナを攻撃し始めるとアメリカ政府はロシアに対する「制裁」と称して経済戦争を強化させた。アメリカは通貨、エネルギー資源、そして食糧の分野で経済戦争を仕掛けてくる。 基軸通貨であるドルを発行する特権を彼らは利用して各国を脅し、操ってきた。そのドル体制から離脱しようとしたイラク、アフリカ全体を離脱させようとしたリビアは軍事的に破壊されているが、今、ロシアや中国はアメリカに対向できる軍事力と経済力を保有している。 ネオコンは2014年、ロシアと中国を屈服させるために動いた。ウクライナでクーデターを実行、香港で反中国運動を仕掛けたのだが、これは裏目に出てロシアと中国を接近させてしまう。この両国は現在、戦略的同盟関係にある。 1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと思い込み、他国に配慮することなく好き勝手に行動できると考えたようだ。そして1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランが作成された。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。 唯一の超大国という立場を維持するため、新たなライバルが出現しないように手を打とうとする。そのターゲットは旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアなども含まれる。また権力の源泉であるエネルギー資源の支配も打ち出した。つまり中東をはじめとする産油国支配だ。勿論、アメリカは日本も潜在的ライバルと考えた。 ソ連が消滅する前から中国を属国にしたとネオコンは信じていた。彼らが信奉する新自由主義経済、つまりレッセフェール流資本主義の教祖的な存在だったシカゴ大学のミルトン・フリードマンが1980年に中国を訪問、それ以降、その教義を中国全域へ拡げることに成功していたからだろう。中国の代表的な信徒は趙紫陽や江沢民だった。 フリードマンは会社経営者に対し、社会的責務を無視して株主の利益だけを追い求めるように要求(Milton Friedman, “A Friedman Doctrine,” The New York Times Magazine, September 13, 1970)、彼の代表的な著作『資本主義と自由』の中で企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」に通じているとされている。(Milton Friedman, “Capitalism and Freedom,” University of Chicago Press, 1962) この教義を世界のルールにするため、新自由主義の信奉者はISDS(投資家対国家紛争解決)条項を含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)を成立させようとした。これらが成立すれば、巨大企業のカネ儲けを阻むような法律や規制は賠償の対象になり、国は健康、労働、環境など人びとの健康や生活を守ることができなくなるはずだった。 これは実現できなかったものの、形を変えて彼らは持ち出してきた。「パンデミック条約」だ。これが締結されれば、WHOが全ての加盟国にロックダウンなどの政策を強制できるようになる。WHOを私的権力が動かしていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。 中国はアメリカと国交を回復させてから新自由主義を導入したが、金融、通貨発行権、教育、健康など社会基盤を構成する分野を私的権力へ渡さなかった。中国が急速に経済発展できた理由はここにあると言われている。逆のことをした日本は衰退した。アメリカが中国とロシアを屈服させようと必死な理由のひとつは両国がドル体制、あるいは新ドル体制の脅威になるからだ。 ロシアは石油や天然ガスといったエネルギー資源を算出、そのほかの資源や食糧の重要な供給源であり、中国は経済活動が発展しただけでなく重要な資源の産出国でもある。アメリカにとっては嫌な相手だ。 アメリカにとって食糧がエネルギーと並ぶ戦略的に重要な商品だということは広く知られている。人間は生物である以上、食糧や飲料水は絶対に必要である。食糧生産を蔑ろにし、水脈を断ち切るような政策を進める政府は愚かなのか、国や国民を何者かに売り飛ばそうとしているのだと言わざるをえない。食糧が足りなくなれば飢餓になる。食糧が足りれば人口が増える。この問題でもロシアは欧米にとって目障りな存在だろう。 アメリカのNSC(国家安全保障会議)は1974年、ヘンリー・キッシンジャーの下で「NSSM(国家安全保障研究覚書)200」という報告書を作成、人口増加の地政学的な意味が指摘されている。発展途上国の人口増加がアメリカの利益、つまりアメリカを支配する私的権力の利益にとって良くないという分析だ。同じことをイギリスの王立人口委員会も1944年に指摘している。 それまでアメリカを含む欧米諸国は発展途上国が自立し、経済を発展させることができないように努力してきた。欧米に依存せざるをえない経済構造を押し付けてきたのだが、人口の増加や中露との連携がそうした枷を壊してしまう可能性がある。日米欧にとって飢餓は戦乱と並ぶ重要な戦術のひとつだ。
2022.07.01
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