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ウクライナでは配電施設がロシア軍のミサイル攻撃で破壊され、エネルギーの供給能力が半分に低下、暖房だけでなく上下水道も機能しなくなり、キエフでは水道の80%が止まっていると言われているが、これは新たな軍事作戦を始める前の序章にすぎない。 ウクライナの東部から南部にかけて広がるステップ(大草原)が凍結して戦闘車両の走行が容易になり、木々の葉が落ちて隠れられなくなるとロシア軍は新たな軍事作戦を始めると見られている。そのためにT-90M戦車や防空システムS-400といった新しい兵器をドンバス周辺へ輸送、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバスへ入った。そのうち5万人は戦闘に参加しているという。地面が凍結することには訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。 ロシア軍の西部軍管区司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ交代、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統括指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将が任命され、チェチェン軍を率いているラムザン・カディロフへ上級大将の称号を与えられてから戦術が明らかに変化した。それまでの中途半端な攻撃ではなくなったのである。 ロシアからドイツへ天然ガスを運ぶために建設されたパイプライン、ノード・ストリームとノード・ストリーム2が破壊され、クリミア橋(ケルチ橋)が爆破され、ロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしているセバストポリが攻撃されたが、いずれもイギリスが関与しているとロシア政府は具体的に指摘している。兵器や軍事情報の提供や兵士の訓練は作戦の指揮だけではなくなっている。 ウォロディミル・ゼレンスキー政権は2月の段階から兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁じ、動員の対象にしていたが、ドンバスへ送り込んでいた軍や親衛隊は4月から5月の段階で壊滅した。 そこでゼレンスキー政権の内部にロシア政府と話し合おうとする動きか出てきたようで、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めさせた。 そして4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問してゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪れてゼレンスキー大統領と会い、ウクライナへの「支援継続」を誓いっている。ジョンソンは8月24日にもキエフを訪問した。 それに対し、ゼレンスキー政権は4月5日、「われわれは大きなイスラエルになる」と記者に語っている。イスラエルはアメリカと最も関係が深い「同盟国」だと見られているが、2月24日にロシア軍が軍事作戦を始めてからアメリカと一線を画していた。そのイスラエルへのリップサービスと見ることもできるが、それ以上の意味を感じる人も少なくなかった。 バラク・オバマ政権がウクライナでクーデターを成功させ、東部や南部を支持基盤にするビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除して間もない2014年6月、イスラエルの有力紙に興味深い記事が載った。著名な学者チームがイスラエル政府に提出した秘密報告の中でヨーロッパのユダヤ人は事実上ハザール人だと認めているというのだ。 ハザールは5世紀から10世紀にかけて黒海やカスピ海の北側にあった好戦的な国。クリミアも含まれていた。それを理由にして、ロシア人をクリミアから追い出した後、ユダヤ人を移住させるという話が書かれている。パレスチナでイスラエルを作る際、先住のアラブ系住民を虐殺し、脅して追い出した。同じことを行おうとしたようにも見える。 2014年9月にはアシュケナージ(ヨーロッパ系ユダヤ人)と一般のヨーロッパ人のDNAを比較した研究結果が発表され、アシュケナージはヨーロッパ系と中東系が民族的に混じり合っているとされている。アシュケナージは比較的小さな集団の中で婚姻が繰り返されていたようで、600から800年前、ヨーロッパに住んでいた350名程度の人びとから別れたという。 アシュケナージがパレスチナにイスラエルを建国させたのは間違いだということになりそうだが、そもそも歴史や考古学の研究によると、パレスチナはキリスト教の旧約聖書に描かれた場所ではないと考えられている。有力な仮説はイエメンの周辺だ。勿論、パレスチナにイスラエルを作った理由は宗教的なものではない。しかもヘブライ語の原典からギリシャ語への翻訳に疑惑がある。 ハザールがあった西側の地域、ウクライナやポーランドの周辺ではカバラ(ユダヤ神秘主義の教理)が盛んになり、シャブタイ派、フランク主義、ハシディズムなどが出現した。シャブタイ派の中心だったシャブタイ・ツヴィはイスラムへ「改宗」してドンメ派を産んだ。ハリウッドにはユダヤ系の人が多いと言われているが、その中心はカバラを信仰しているともいう。 ちなみに、ズビグネフ・ブレジンスキーがポーランド出身だということは有名だが、ビクトリア・ヌランド国務次官は父方の祖父母がウクライナからの移民、アントニー・ブリンケン国務長官の父方の祖父もウクライナ出身だ。ビル・クリントン政権を国務長官としてユーゴスラビア攻撃へと導いたマデリン・オルブライトはチェコスロバキア出身でブレジンスキーの弟子だ。
2022.11.30
台湾で地方選挙が11月26日に実施され、蔡英文総督の率いる民主進歩党が大敗、蔡は当主席を辞任した。民主進歩党は「ひとつの中国」を否定、独立を主張している。中国と友好関係を維持し、経済活動を活発にしようとしている国民党とは対立関係にあるが、その国民党に負けたわけだ。 民主進歩党が自力で独立を実現することは難しく、アメリカの支配層へ接近したのだが、それは台湾をアメリカの侵略拠点にすることを意味し、中国政府はそれを容認しない。 蔡総督が行動に出なけらば中国政府も行動に出なかっただろうが、このバランスを壊すためにナンシー・ペロシ米下院議長が8月2日に台湾を訪問。そして安定を失った。 アメリカの場合、大統領が何らかの理由で職務を執行できなくなった場合の継承順位が決められている。第1位は副大統領(上院議長)、第2位は下院議長だ。それだけの要職についているペロシが「ひとつの中国」を否定した意味は重い。それを意識しての挑発だったと言えるだろう。 アメリカと中国との国交が正常化したのは1972年2月。その際、当時のアメリカ大統領、リチャード・ニクソンが北京を訪問して中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明している。つまりペロシの行動はアメリカと中国との友好関係を終わらせるという意思表示だと理解されても仕方がない。 ニクソン政権が中国との国交を正常化させた目的のひとつは中国をアメリカ側へ引き寄せ、ソ連と分断することにあったと見られている。中国と日本が接近することもアメリカの支配層は嫌っていた。 ところが1972年9月に田中角栄が中国を訪問、日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来は尖閣諸島の問題を「棚上げ」にすることで合意している。この合意を壊したのが菅直人政権にほかならない。2010年6月に発足した菅内閣は尖閣諸島に関する質問主意書への答弁で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張したのだ。 そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。これ以降、東アジアの軍事的な緊張は急速に高まっていく。 「ひとつの中国」を壊す試みは1995年6月にもあった。李登輝総督がコーネル大学の招待を受け、講演のためにアメリカを訪問、中国政府は反発して台湾海峡の軍事的な緊張が高まり、中国軍がミサイルを発射、アメリカ軍が空母を台湾周辺へ派遣するという事態になった。そして1997年、下院議長だったニュート・ギングリッチが台湾を訪問して軍事的な緊張が高まった。 こうした好戦的な政策をアメリカで推進していたのはネオコン。彼らは1991年12月にソ連が消滅した直後、自国が「唯一の超大国」になったと認識、他国に気兼ねすることなく行動できるようになったと考える。国連中心主義を維持した細川護煕政権は彼らにとって好ましくない存在で、同政権は1994年4月に倒された。 そして日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうとするのだが、日本人は抵抗する。それに怒ったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベルを説得して国防次官補のジョセイフ・ナイに接触、そのナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表したわけだ。 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後に警察庁の國松孝次長官は狙撃されている。 すでに日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれ、アメリカ側の戦略に基づき、中国だけでなくロシアを攻撃するための中長距離ミサイルの配備を進めようとしている。これは「防衛」のためでも「反撃」のためでもなく、先制攻撃が目的だろう。 その流れに乗ることを台湾の人びとは拒否した。
2022.11.29
厚生労働省が発表している「人口動態統計速報」とデジタル庁が発表している「新型コロナワクチンの接種状況」をまとめてみると、「COVID-19ワクチン」の接種と「超過死亡者数」の増加に相関関係があることは否定できない。この「ワクチン」を摂取すると免疫力が低下するとも言われているが、データをみると3回以上の接種が始まってから死亡者数が増えている。 すでに5回目の接種が始まったようだが、東京理科大学名誉教授の村上康文が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅したとしている。「人間は特別」ということはないだろう。 本ブログでも指摘してきたように、「COVID-19ワクチン」による深刻な副作用は深刻だとする少なからぬ報告が出ていて、人類の存続に関わる結果をもたらす可能性もある。 そうした非常にリスクの高い代物なのだが、ファイザーにおける国際先進国市場部門を統括しているジャニーヌ・スモールは10月10日、欧州議会で同社の「ワクチン」がウイルスの伝播を止められるかどうかを市場へ出す前にテストしていないことを明らかにしている。
2022.11.28
12月16日午後7時から東京琉球館で「覇権に執着するアメリカの下で人類は存続できるか」というテーマで話します。予約受付は12月1日午前9時からとのことですので、興味のある方は下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333https://dotouch.cocolog-nifty.com/ 本ブログでは繰り返し書いてきましたが、アメリカを中心とする支配システムが揺らいでいます。それにもかかわらずアメリカの支配層は世界制覇計画に執着、障害になっているロシアや中国を倒そうとしているのですが、その足掻きによって人類は存続の危機に瀕しています。その状態が今後どうなるかを考えてみたいと思います。 1991年12月にソ連が消滅した時点で旧ソ連圏はアメリカに征服され、中国はすでにエリート層がアメリカの支配層に取り込まれていました。そうした状況を一変させたのウラジミル・プーチンを中心とするロシアのグループです。 1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて世界制覇プロジェクトをスタートさせましたが、それに合わせてWEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブは「明日のグローバル・リーダー」プログラムを開始、1993年から若手指導者を選び始めます。 最初の年に選ばれた指導者候補にはイギリスのトニー・ブレア、ドイツのアンゲラ・メルケル、フランスのニコラ・サルコジ、ポルトガルのジョゼ・マヌエル・バローゾ、そしてロシアのプーチンが含まれていました。プーチンがロシアの大統領になれたのはそのためですが、実権を握ったプーチンはロシアを曲がりなりにも独立させます。 プーチンがロシアの大統領になった頃からイスラエルやアメリカはロシアの隣国であるジョージアへの工作を始めます。イスラエルの軍事会社がジョージアへ無人機(ドローン)、暗視装置、防空システム、ミサイル、砲弾などを提供すると同時に軍事訓練を実施、アメリカの軍事会社も訓練に参加しています。 そして2008年8月7日、北京の夏季オリンピック開催に合わせてジョージアは南オセチアを奇襲攻撃しますが、ロシア軍の反撃で惨敗しました。アメリカ/NATOはロシア軍を弱体化させたと信じていたようですが、その時点で立て直されていました。 その間、2004年から05年にかけてジョージ・W・ブッシュ政権はウクライナで東部や南部を支持基盤にするビクトル・ヤヌコビッチを「オレンジ革命」で排除しますが、アメリカが樹立させた政権の新自由主義的な政策で貧困化した国民は2010年の1月から2月にかけて行われた大統領選挙で再びヤヌコビッチを当選させます。 ウクライナの東部や南部は歴史的にロシアとの関係が深く、住民の多くはロシア語を話します。ヤヌコビッチの支持基盤に含まれるクリミアでは住民の75%、ドンバスでは住民の90%がヤヌコビッチに投票しました。 2010年7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)がキエフへ乗り込み、ヤヌコビッチに対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めますが、拒否されます。そこでオバマ政権はクーデターを計画、2013年11月に始動させ、14年2月にヤヌコビッチの排除に成功しました。その時、クーデターの実行部隊として使ったのがネオ・ナチです。 しかし、東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クリミアはロシアと一体化することに成功、ドンバスでは住民が武装蜂起しました。そこへはネオ・ナチ体制に従属することを拒否した軍人や治安機関のメンバーなどが合流したと言われています。 当初、ロシア政府は話し合いでの解決を目指し、ドンバスを保護することをロシアを受け入れていません。そうした姿勢は事態を悪化させるだけだと批判したアメリカ政府の元高官もいました。今年11月25日にはウラジミル・プーチン露大統領も兵士の母親との会合で、早くドンバスを併合していれば市民の犠牲者は少なくて済んだと後悔していると語っています。アメリカ/NATOと話し合いで物事を解決することは不可能だと悟ったのでしょう。 ウクライナに対する軍事作戦をロシアは今年2月24日に始めたのですが、これはアメリカ/NATOがウォロディミル・ゼレンスキーを利用して東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)を攻撃する直前のことだったと見られています。 4月から5月にかけての時期にウクライナの軍や親衛隊は壊滅しましたが、イギリス政府やアメリカ政府は戦闘を継続させるために兵器を大量に供給、ウクライナ兵を訓練して最新兵器をあつかえるようにし、軍事情報を提供、さらに自国の情報機関や特殊部隊のメンバーをウクライナで活動させています。 戦闘にNATO軍の部隊が出てきているわけではありませんが、作戦の指揮をNATOが行うなど関わりを強めていきました。そうしなければ戦闘を維持できないからです。 ロシアがウクライナに対する軍事作戦を始めた2月24日以降も地上部隊の主体はドンバス軍、チェチェン軍、ワーグナー・グループで、ロシア軍はミサイルや航空兵力による攻撃が中心だったようで、そのミサイル攻撃も徹底したものではありませんでした。生産能力の問題ではありません。 9月21日、ウラジミル・プーチン大統領は部分的な動員を実施すると発表、ドンバス、ザポリージャ、ヘルソンでは9月23日から27日にかけてロシアと一体になることの是非を問う住民投票が実施されました。賛成に投票した人は投票総数のうちドネツクで99%、ルガンスクで98%、ザポリージャで93%、ヘルソンで87%に達しています。 そして今年10月8日、ロシア国防省はドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンでの軍事作戦をロシア軍の中でエース的な存在だと言われるセルゲイ・スロビキン大将が統括指揮者に据え、また西部軍管区司令官をロマン・ビアルニコフ中将へ交代、チェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えました。ロシア軍は軍事的に何もしていないとプーチン大統領はそれまで語っていましたが、動き始めたようです。 現在、ロシア軍はウクライナで冬が本格化するのを待っています。ステップと呼ばれる大草原が凍結して戦闘車両の走行が容易になり、木々の葉が落ちてウクライナ軍が隠れにくくなるからです。 それに合わせてロシア政府は部分的動員を実施、すでに約8万人はドンバス(ドネツクやルガンスク)入りし、そのうち5万人は戦闘に参加しているとされています。訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずで、大量の兵器がドンバス周辺へ運ばれる様子がインターネットにアップされていますが、それを見るとT-90M戦車や防空システムS-400が含まれています。 一方、アメリカ統合参謀本部のマーク・ミリー議長は冬季に予想されるロシア軍の攻勢を懸念しているようで、ウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないと9日にニューヨークの経済クラブで発言、冬が本格化する前にロシアとの交渉を始めるべきだと語りました。ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官などオフィスで戦争ごっこをしている感覚の好戦派はミリー議長の意見に反対しているようですが、結局、時間稼ぎのために話し合いを始めるかもしれません。 西側から兵器と資金が送られてくるシステムが一種の利権になっているウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシアとの戦闘を継続させたい。本腰を入れ始めたロシアに太刀打ちできないことを認識し始めたらしいゼレンスキー大統領としては、NATO軍かアメリカ軍を戦場へ引き摺り出したいでしょう。 そうした中、11月15日にウクライナからS-300防空システム用の5V55Kミサイル2機がポーランドのプシェボドフへ飛来、2名が死亡したとされています。このミサイルの射程距離は75キロメートルにすぎず、ロシア軍が発射した可能性はゼロに近いのですが、APはロシア軍が発射したと伝えました。ロシアがNATO加盟国のポーランドをミサイル攻撃したとなるとNATO軍はロシア軍と戦う義務が生じ、核戦争になる可能性が出てきます。 この話を伝えたのはAPのジェームズ・ラポータ記者ですが、ことの重大さから編集会議で討議されました。別の情報源に確認する必要はないかという意見を述べた編集者もいましたが、その必要はないということになり、「報道」したわけです。 その討議の中でバネッサ・ゲーラ編集者はロシアのミサイルが国境を超えてNATO加盟国に着弾してふたりが死んだのだとポーランドやアメリカ情報機関の高官が話していると強調、アメリカの情報機関幹部が間違うとは思えないと語っています。 すぐにミサイルの話は間違いだと判明してラポータは解雇されましたが、ゲーラを含む編集者は問題にされず、嘘をついた情報機関の高官も責任を問われていないようです。事実を明らかにして逮捕され、アメリカで懲役124年が言い渡される可能性があるウィキリークスのジュリアン・アッサンジとは全く違った扱いをされています。 ミサイルがどこから発射されたかを熟知しているはずのミリー統合参謀本部議長は11月16日、ペンタゴンで開かれた記者会見で冬が来る前にロシアとの交渉を始めるべきだと再び発言しました。ウクライナでの戦乱を仕掛けたホワイトハウスの好戦派はロシアを壊滅させたがっていますが、統合参謀本部には相手にされなかったようです。 アメリカやイギリスは19世紀からロシアを敵視、領土を征服しようと目論んできました。その長期戦略にEUやNATOは従っているのですが、ヨーロッパ諸国に住む人びとはそうした米英支配層の戦略に反対し始めました。イギリス支配層は戦略の一環として明治維新を仕掛け、その流れから日本は逃れられず、中国やロシアと戦争する準備を進めています。櫻井春彦
2022.11.28
厚生労働省は11月25日に今年9月分の「人口動態統計速報」を発表した。いわゆる「超過死亡者数」は8月に比べて減少しているが、これを「良い情報」と考えてはならない。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種件数の減少に合わせるかのように減っているからだ。つまり超過死亡者数と「ワクチン」接種件数に相関関係があることを示しているからだ。この問題を指摘する人は少なくない。(例えばココ) 2019年12月31日に中国の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状の肺炎患者が見つかったことは事実の可能性が高く、何らかの病原体が存在したのだろうが、「パンデミック」を宣言する状態だったとは思えない。SARSに似た症状の肺炎が流行して多くの人が死んだということはないからだ。 武漢の場合、2020年2月から感染対策を指揮した中国軍の陳薇は2002年から中国で広まったSARSの経験に基づいてインターフェロン・アルファ2bを試したところ有効で、早期に沈静化させることに成功した。要するに安全性を確かめていない「ワクチン」を使う必要などはなからなかったのだ。 この医薬品はリンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できた。今回の件で中国の習近平国家主席はキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたと伝えられている。 ところがWHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言することで人びとに恐怖を植え付け、「ワクチン」を接種させる下地を作り、死亡者数を水増しするためにルールを変更している。アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はパンデミック宣言から間もない2020年3月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。 COVID-19への感染で死亡したとされた人の大半は高齢者で、心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍(癌)、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていたと報告されている。 CDCはFDAに「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を発行させたが、このパネルが作成された当時、「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」は単離されていない。 そのCDCは昨年7月、このパネルを同年12月31日に取り下げると発表した。コロナウイルスとインフルエンザウイルスを区別できないからだという。実際、COVID-19騒動が始まってからインフルエンザの感染者はほぼゼロになっていた。 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術で、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎない。つまりウイルスそのものを見つけ出すことはできない。増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になるだけでなく、偽陽性の確立が増えていくことも知られ、偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならない。35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。2020年3月に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。「確認された感染者数」はインチキだということだろう。 専門家の間では「COVID-19ワクチン」の接種が始まる前から「ADE(抗体依存性感染増強)」が懸念されていたが、接種が始まると帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)が現れたり体が麻痺する人が出始める。 2021年4月頃からイスラエルでは年少者に心筋炎や心膜炎を引き起こすと言われるようになり、CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)も「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなった。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスも執筆者に名を連ねる報告が2021年9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中でmRNAを利用した製品は「心筋炎」を、またアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカの製品はギラン・バレー症候群(根神経炎の一種)を引き起こす恐れがあるとしている。 卵子や精子にダメージを与えるとする報告が発表されているが、ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」を接種すると6週間で脳炎や脳髄膜炎になる確率が40から70%高くなるとする報告も出た。 「COVID-19ワクチン」を推進していた国でも深刻な副作用に危機感を覚えたのか、接種件数は大きく減少している。例外的な存在が日本だ。日本の「専門家」、政治家、官僚がこうした事実を知らないとは考えられない。彼らは確信犯だと言えるだろう。
2022.11.27
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は11月18日現在、前の週より140名増えて3万2295名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている アメリカやロシアでは医療関係者の不適切な行為が捜査や法的手続きの対象になっている。COVID-19騒動で中心的な役割を果たしてきたアンソニー・ファウチNIAID(国立アレルギー感染症研究所)所長は12月に辞任するというが、批判から逃げ切ることは難しいだろう。 ファウチは11月22日の記者会見でCOVID-19の起源について質問されたが、ホワイトハウス報道官のカリーヌ・ジャン-ピエールは質問を妨害、彼を助けた。ファウチの問題はジョー・バイデン政権だけでなくアメリカ支配層の問題でもある。 ロシアでは外国の巨大医薬品メーカーから医療関連機関の幹部へカネが渡っている実態を連邦財務監視庁とFSB(連邦安全保障局)が共同で調査しているようだが、これはロシアだけの問題ではないだろう。 COVID-19の恐怖を煽って社会システムを破壊、「COVID-19ワクチン」の接種で少なからぬ人に深刻な副作用をもたらした勢力は国防総省がウクライナに建設した施設で生物兵器の研究開発を行なっていた。その研究内容の一部がロシア軍に回収された文書から判明している。 サム・バンクマン-フリードが創設した暗号資産売買取引所のFTXが11月11日に破綻したが、その後、FTXがウクライナでマネーロンダリングしていたことが明らかになった。ウクライナを支援するという口実で提供された資金がどこへ流れていったのか不明だが、ロンダリングされて一部はアメリカの政界へ戻っていると言われている。生物兵器の研究開発だけでなく、ウクライナはこうした金融的な不正の舞台、犯罪者の楽園になっていたようだ。
2022.11.26
日本は射程3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だと伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、南西諸島へミサイルを配備する準備を進めている。これは「島嶼防衛」が目的ではなく、ロシアや中国との戦争を想定したアメリカの戦略に基づくものだ。「防衛」や「反撃」が目的ではない。先制攻撃を想定している。 その計画を先取りする形で自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作った。2023年には石垣島でも完成させる予定だという。 アメリカ国防総省系シンクタンクの「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画したのだが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外になかった。日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。 そこで、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになり、そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたわけだ。 日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにし、地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だとされていたが、アメリカの想定通りに事態が進んでいないためなのか、日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だという。 トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。記事では「反撃能力」が強調されているが、このミサイルには言うまでもなく先制攻撃能力がある。RANDのレポートが作成された時点より事態が切迫しているのかもしれない。 しかし、トマホークには問題がある。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍に所属する2隻の駆逐艦、ポーターとロスからトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、約6割が無力化されているのだ。ロシアの防空システムS-300やS-400だけでなく、ECM(電子対抗手段)で落とされたとも言われている。 翌年の4月にもトランプ政権は巡航ミサイルでシリアを攻撃する。この時はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のミサイルを発射したが、今度は7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったようである。 今年11月14日に山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明したが、これもミサイルの配備と無関係ではないだろう。 アメリカやイギリスと同じアングロ・サクソン系の国であるオーストラリアは昨年9月、イギリスやアメリカと軍事同盟「AUKUS」を創設したと発表。それと同時にアメリカとイギリスはオーストラリアに原潜の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。 オーストラリアの潜水艦を受け入れるだけでなく、軍事的な連携を強めるとも山上大使は語っている。日本はアメリカや韓国と軍事的につながっているわけで、太平洋ではアメリカとイギリスを中心にオーストラリアや韓国が軍事的な同盟を結んだということになる。ここに台湾が入るかもしれない。 オーストラリアをアメリカは対中国戦争の拠点にするようだ。日本列島は先制攻撃の拠点としては意味があるものの、報復攻撃で破壊されてしまうだろう。そこでアメリカはグアムの基地より遠いマリアナ諸島のテニアン島にアメリカは新しい空港を建設しているが、規模は限定される。そこでオーストラリアが対中国戦争の拠点になるはずだ。そこへアメリカ軍はB-52爆撃機を配備する。 イギリスは19世紀に世界制覇戦略を作成した。ユーラシア大陸の周辺を海軍力で制圧、内陸部を締め上げていくというものだ。1869年に完成し、75年にイギリスが支配するようになったスエズ運河はこの戦略にとって重要。その後、中東で石油が発見され、この地域はさらに重要な意味を持つようになった。 1916年にイギリスはフランスと「サイクス・ピコ協定」を結ぶ。トルコ東南部、イラク北部、シリア、レバノンをフランスが、ヨルダン、イラク南部、クウェートなどペルシャ湾西岸の石油地帯をイギリスがそれぞれ支配するというものだ。 協定が結ばれた翌月からイギリスはオスマン帝国を分解するためにアラブ人の反乱を画策する。工作の中心的な役割を果たしたのはイギリス外務省のアラブ局で、そこにサイクスやトーマス・ローレンスもいた。「アラビアのロレンス」とも呼ばれている、あのローレンスだ。 ローレンスが接触していたフセイン・イブン・アリにイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンは書簡を出し、その中でイギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束している。フセイン・マクマホン協定だ。このイブン・アリを追い出したイブン・サウドを中心として1932年に作られた国がサウジアラビアだ。 その一方、イギリスのアーサー・バルフォア外相はロスチャイルド卿に宛てに出した書簡の中で、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。1917年11月のことだ。なお、この書簡を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーだと言われている。 イギリスは1919年、石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にし、その2年後に陸軍の将校だったレザー・ハーンがテヘランを占領。そして1925年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになった。 イギリスの戦略には中国の略奪も含まれている。製造業で中国(清)に勝てないイギリスはアヘンを売りつけるために戦争を仕掛ける。1840年から42年にかけての「アヘン戦争」、そして56年から60年にかけての「第2次アヘン戦争(アロー戦争)」だ。この戦争でイギリスが手に入れた香港は侵略と犯罪の拠点になる。 イギリスやアメリカは中国へアヘンを売ることで大儲けしたが、儲けたカネを扱うため、1865年に創設されたのが香港上海銀行。この銀行は1866年に横浜へ進出し、大阪、神戸、長崎にも支店を開設。明治政府とも深く結びついた。 アヘン戦争で大儲けした会社のひとつ、ジャーディン・マセソンは18599年にふたりのエージェントを日本へ送り込む。ひとりは長崎へ渡ったトーマス・グラバーであり、もうひとりは横浜のウィリアム・ケズウィック。ケズウィックの母方の祖母はジャーディン・マセソンを創設したひとり、ウィリアム・ジャーディンの姉だ。 グラバーとケズウィックが来日した1859年にイギリスの駐日総領事だったラザフォード・オールコックは長州から5名の若者をイギリスへ留学させることを決める。選ばれたのは井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)。1863年にロンドンへ向かった。この時に船の手配をしたのがジャーディン・マセソンで、すでに独立していたグラバーも渡航の手助けをしている。 イギリスの支援を受けた長州と薩摩は徳川体制の打倒に動き、徳川慶喜は1867年に「大政奉還」を申し出、69年に函館の五稜郭で榎本武揚の指揮していた徳川軍が降伏して「王政復古」が各国の公使に通告された。 こうして誕生した明治体制はアメリカやイギリスの影響を強く受け、大陸への軍事侵略を始める。イギリスの外交官として日本にいたアーネスト・サトウやアメリカの駐日公使だったチャールズ・デロングや厦門の領事だったチャールズ・ルジャンドルたちはいずれも日本に大陸を攻撃させたがっていた。 ルジャンドルはアメリカへ戻る途中に日本へ立ち寄り、デロングと大陸侵略について話し合い、デロングは日本の外務省に対してルジャンドルを顧問として雇うように推薦した。ルジャンドルは1872年12月にアメリカ領事を辞任して外務卿だった副島種臣の顧問になり、台湾への派兵を勧めた。その直前、1872年9月に明治政府は「琉球藩」をでっちあげて琉球を併合、74年5月に台湾へ軍事侵攻している。 1875年9月に明治政府は李氏朝鮮の首都を守る要衝の江華島へ軍艦を派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功、さらに無関税特権を認めさせ、釜山、仁川、元山を開港させている。 朝鮮では1894年に甲午農民戦争(東学党の乱)が起こり、体制が揺らぐ。それを見た日本政府は「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣、その一方で朝鮮政府の依頼で清も軍隊を出して日清戦争につながる。 当時、朝鮮では高宗の父にあたる興宣大院君と高宗の妻だった閔妃と対立、主導権は閔妃の一族が握っていた。閔妃がロシアとつながることを恐れた日本政府は1895年に日本の官憲と「大陸浪人」を使って宮廷を襲撃して閔妃を含む女性3名を殺害、その際に性的な陵辱を加えたとされている。その中心にいた三浦梧楼公使はその後、枢密院顧問や宮中顧問官という要職についた。 閔妃惨殺の4年後、中国では義和団を中心とする反帝国主義運動が広がり、この運動を口実にして帝政ロシアは1900年に中国東北部へ15万人の兵を派遣する。その翌年には事件を処理するために北京議定書が結ばれ、列強は北京郊外に軍隊を駐留させることができるようになった。 イギリスはロシアに対抗するため、1902年に日本と同盟協約を締結し、その日本は04年2月に仁川沖と旅順港を奇襲攻撃、日露戦争が始まる。日本に戦費を用立てたのはロスチャイルド系のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフだ。 1905年5月にロシアのバルチック艦隊は「日本海海戦」で日本海軍に敗北するが、そこで登場してくるのが「棍棒外交」のテディ・ルーズベルト米大統領。講和勧告を出したのだ。9月に講和条約が調印されて日本の大陸における基盤ができた。 講和条約が結ばれた2カ月後、桂太郎首相はアメリカで「鉄道王」と呼ばれていたエドワード・ハリマンと満鉄の共同経営に合意したが、ポーツマス会議で日本全権を務めた小村寿太郎はこの合意に反対、覚書は破棄されている。中国への侵略を本格化させるつもりだったアメリカの私的権力はつまずいた。 それに対し、アメリカ側の意向に従って動いていたのが金子堅太郎。金子は小村と同じようにハーバード大学で法律を学んでいるが、1890年に金子とルーズベルトは親しくなる。何者かの紹介でふたりはルーズベルトの自宅で会ったのだ。 日本政府の使節としてアメリカにいた金子は1904年にハーバード大学でアングロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説し、同じことをシカゴやニューヨークでも語っていた。日露戦争の後、ルーズベルトは日本が自分たちのために戦ったと書いている。こうした関係が韓国併合に結びつく。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) 日本のアジア侵略をイギリスやアメリカ、より正確に言うならば、巨大金融資本は支援したのだが、彼らの長期戦略は今も生きている。それが大きく動き始めたのが1991年12月。ソ連が消滅し、アメリカの支配層は自国が「唯一の超大国」なったと考え、世界制覇プランを作成したのだ。それが「ウォルフォウィッツ・ドクトン」だ。 ソ連消滅後、アメリカにとってヨーロッパや日本は侵略の手先であると同時に潜在的なライバルにもなった。アメリカの手先であると同時に従属する仕組みを築き始める。 しかし、日本の細川護熙は国連中心主義を捨てない。そこで1994年4月に潰される。日本をアメリカの侵略プランに従わせるため、ネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベルを説得して国防次官補だったジョセイフ・ナイに接触した。ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告」を発表。日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む道筋を示した報告書だが、日本側の動きが鈍い。 そうした中、日本では衝撃的な出来事が引き起こされた。1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ、ナイ・レポートが発表された翌月の95年の3月には地下鉄サリン事件、その直後に警察庁長官だった國松孝次が狙撃されている。8月にはアメリカ軍の準機関紙であるスターズ・アンド・ストライプ紙に日本航空123便に関する記事が掲載され、その中で自衛隊の責任が示唆されている。 1995年11月にSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置することが決められ、96年4月に橋本龍太郎首相とウォルター・モンデール駐日米大使が普天間基地の返還合意を発表。辺野古に基地を作る計画は1960年代からあり、それがSACOの合意という形で浮上したのだ。 1997年11月に日本政府は名護市(キャンプ・シュワブ)沖へ海上へリポートを建設する計画の基本案を地元に提示、2006年5月に日米両政府は「再編実施のための日米のロードマップ」を発表、辺野古岬、大浦湾、辺野古湾を結ぶ形で1800メートルの滑走路を設置すると発表している。2009年9月に成立した鳩山由紀夫内閣は「最低でも県外」を宣言するが、10年になると前言を翻し、再び辺野古へ移設するとされた。 しかし、その後、状況は大きく変化。自衛隊は中距離ミサイルや長距離ミサイルで中国やロシアを攻撃する準備を進めている。昔から知られている統一教会と政界とのつながりで騒いでいる間に事態は急速に悪化している。言うまでもなく、その背後にはアメリカが存在しているはずだ。
2022.11.26
タイで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の会合に出席した後、アメリカのカマラ・ハリス副大統領は11月20日にフィリピンのマニラへ入り、21日にはフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領と会談した。アメリカ離れして久しいフィリピンを引き寄せ、中国との戦いに加えようとしているのだろう。 フィリピンは16世紀後半にスペインの植民地になった。この時期、日本は戦国時代で、少なからぬ人が奴隷として東南アジアへも売られていたが、その一部である「戦闘奴隷」をスペインなどヨーロッパの軍隊は侵略や支配のために利用していた。日本で奴隷売買が禁止されるのは徳川体制になってからである。 ヨーロッパは11世紀から15世紀にかけて中東を軍事侵略、財宝を盗み、知識を手にした。いわゆる十字軍だ。そして14世紀から16世紀にかけてルネサンスが起こる。 スペインやポルトガルは15世紀になると世界各地で略奪を開始、1521年にはエルナン・コルテスが武力でアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を滅ぼして莫大な金銀を奪っている。インカ帝国(現在のペルー周辺)ではフランシスコ・ピサロが金、銀、エメラルドなどを略奪しながら侵略を続けて1533年には帝国を滅ぼした。ラテン・アメリカにおける略奪が現在の「ヨーロッパ文明」の基盤だ。 莫大な量の貴金属を盗んだだけでなく、ヨーロッパの侵略者は先住民を酷使して鉱山を開発した。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山である。1545年に発見されたこの銀山だけで18世紀までに15万トンが運び出されたとされ、スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。ただ、この数字は「少なくとも」にすぎず、実態は不明である。全採掘量の約3分の1は「私的」にラプラタ川を経由してブエノスアイレスへ運ばれ、そこからポルトガルへ向かう船へ積み込まれていた。 スペインやポルトガルが盗み出した財宝を海賊に奪わせていたのがイギリスだ。エリザベス1世の時代、イギリス王室に雇われた海賊は財宝を略奪していただけでなく、人もさらっていた。中でも有名な海賊はジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、そしてウォルター・ローリーだ。 西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売り、金、真珠、エメラルドなどを手に入れていたホーキンスの海賊行為をエリザベス1世は評価、ナイトの爵位を与えている。 ドレイクは中央アメリカからスペインへ向かう交易船を襲撃して財宝を奪い、イギリスへ戻るが、ホーキンスと同じように英雄として扱われた。ドレイクもナイトになっている。デスモンドの反乱を鎮圧するためにアイルランドへ派遣されたローリーもナイトの爵位が与えられた。(Nu’man Abo Al-Wahid, “Debunking the Myth of America’s Poodle,” Zero Books, 2020) 1620年に北アメリカへピューリタン(ピルグリム・ファザーズ)が移住するが、それを可能にしたのは先住の「アメリカ・インディアン」がペストで「掃除」されていたからにほかならない。アメリカでは11月の第4木曜日(今年は24日)を「感謝祭」として祝うが、これはピルグリム・ファザーズたちが最初の収穫を神に感謝したことから始まった。つまり侵略開始の記念日だ。 この当時、アメリカ大陸で「失われた十支族」を特定したという話が流れ、それに基づいて1650年にオランダのラビ、メナセ・ベン・イスラエルは『イスラエルの希望』という本を出版している。イスラエルはイギリスのオリバー・クロムウェルに対し、アメリカ先住民のスー族とコマンチ族を「再ユダヤ化」するためにユダヤ人を派遣するように求めている。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) 「失われた十支族」という話は旧約聖書の民族伝説からきている。イスラエル民族の始まりはアブラハムの孫ヤコブで、その12人の息子の子孫がそれぞれ支族を形成したとされ、「イスラエル12支族」と呼ばれている。このうちイスラエル南王国にいたユダ族とベニヤミン族がユダヤ人と呼ばれるようになったという。勿論、これは伝説にすぎない。「十部族」は「失われた」のでなく「存在しない」可能性も小さくない。その怪しげな伝説に従っても、ユダヤ人はユダ族とベニヤミン族だけである。 植民地を建設したイギリス系の人びとはイギリス軍と連合し、アメリカ・インディアンと手を組んだフランス軍と戦うが、その後、植民地とイギリスが対立、1773年にはボストン港に停泊していた東インド会社の船に積まれていた茶箱を投棄している。いわゆる「ボストン茶会事件」だ。 植民地側は1776年に独立を宣言し、1783年のパリで調印された和平条約で独立は確定した。ジョージ・ワシントンが初代大統領に選ばれたのは1789年のことだ。この戦いは「独立戦争」、あるいは「独立革命」と呼ばれている。 今でもアメリカにはイギリスの「帝国主義者」とアメリカの「民主主義者」との戦いという構図を描き、この「独立革命」を絶対視する人が少なくないが、その構図の中にアメリカ・インディアンや奴隷は描かれていない。 独立宣言には「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と謳われているが、その宣言は実現されていない。アメリカ・インディアンをヨーロッパからの移民たちは虐殺し、それと同時に奴隷制を導入して支配地域を東から西へ拡大させていった。 奴隷はアフリカ系だという印象を持つ人は少なくないだろうが、実際は違い、ヨーロッパ系やアジア系もいる。過酷な南部の綿花栽培で使われた奴隷がアフリカ系だったので目立つというだけのことだ。奴隷にはアフリカ系だけでなく、「年期奉公」や「召使い」として西インド諸島や北アメリカへ連れてこられた人も含まれていた。「白人年期奴隷」という表現もある。 また、イギリスではオリバー・クロムウェルが率いる軍隊の侵略で多くのアイルランド人が虐殺され、相当数の人がアメリカへ連れて行かれた。ピューリタン革命を成功させたクロムウェルは革命の仲間だった水平派を弾圧、それと並行してアイルランドやスコットランドを侵略、住民を虐殺したのだ。クロムウェルの軍隊によってアイルランドでは50万人以上が殺され、一部は「年季奉公」や「召使い」として売られたと言われている。事実上の奴隷だ。この当時、イギリスでは人身売買が行われ、「誘拐屋」も存在、1740年の飢饉では多くの人が売られ、誘拐されたとも言われている。(川北稔著『民衆の大英帝国』岩波書店、1990年) アヘン戦争の後、中国からイギリスの植民地などへ運ばれた「苦力」も一種の奴隷だと言えるだろう。運ばれた先にはアメリカも含まれ、大陸横断鉄道の建設にも従事させられた。そうした中国人の多くは騙されたり誘拐されて苦力になったと言われている。 侵略者は1845年に太平洋側へ到着、46年にはメキシコと戦争をはじめ、テキサス、ニュー・メキシコ、カリフォルニアを獲得した。その間、アメリカ・インディアンの虐殺が続き、1864年には講和を結ぶためにコロラドのフォート・リオンへ向かった約700名のシャイエン族の集団が虐殺された。白人側に従ってサンド・クリークでキャンプしたのだが、そこを約750名のアメリカ兵に襲撃されたのだ。(藤永茂著『アメリカ・インディアン悲史』朝日新聞、1974年) フロンティアの消滅が宣言された1890年12月にはサウスダコタのウンデッド・ニー・クリークにいたスー族を騎兵隊が襲撃し、150名から300名を虐殺した。勝海舟を艦長とする咸臨丸が太平洋を横断、サンフランシスコを訪れたのはその年の2月だ。 そして1898年にキューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦メインが爆沈。艦長は石炭庫で火災が発生し、それが原因で爆発したと推測していたのだが、アメリカのメディアはスペインが爆破したと宣伝し、政府による調査が行われる前に議会は戦争へと向かう。そこで戦争に消極的だったウイリアム・マッキンリー大統領も宣戦布告せざるをえなくなった。その背後では海軍次官補のテディ・ルーズベルトが戦争熱を高めていた。(James Bradley, “The Imperial Cruise,” Little, Brown and Company, 2009) スペインとの戦争に勝利したアメリカはプエルトリコ、グアム、そしてフィリピンへ矛先を向ける。フィリピンは中国市場へ乗り込む橋頭堡としての役割を果たすことになるが、フィリピン侵略の際にアメリカ軍は住民を虐殺している。そのフィリピンをアメリカは中国を攻撃する拠点として復活させようとしている。 棍棒外交のテディ・ルーズベルトと親しかったことで知られている日本人が金子堅太郎。日露戦争の最中、金子は政府の使節としてアメリカへ渡り、ハーバード大学でアングロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説、同じことをシカゴやニューヨークでも語っている。戦争後、テディは日本が自分たちのために戦ったと書いた。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) アメリカやイギリスの支配層はアジア侵略の拠点として日本列島に目をつけ、戦闘員として日本人を考えていたのだろう。日本人が傭兵として使えることをヨーロッパ人は16世紀から知っていた。
2022.11.25
59年前の11月22日、アメリカ大統領だったジョン・F・ケネディはテキサス州ダラスで暗殺された。 大統領一行がフォート・ワースに到着した11月21日夜、警護を担当するシークレット・サービスのエージェントの多くは「セラー(穴蔵)」というナイトクラブへ繰り出して翌日の未明まで騒いでいた。そのナイトクラブを経営していたパット・カークウッドはジャック・ルビーの友人。言うまでもなく、ルビーはJFK暗殺の犯人とされているリー・ハーベイ・オズワルドを警察署で射殺したとされている人物だ。(Robert J. Groden, “The Killing Of A President”, Bloomsbury, 1993) 22日の朝に大統領はフォート・ワースの空軍基地からダラスへ移動し、そこでパレード用のリムジン(1961年型のリンカーン・コンバーティブル)に乗り込んだ。当時のダラス市長アール・キャベルはケネディ大統領に解任されたチャールズ・キャベルCIA副長官の弟だ。同じように解任されたCIA長官がアレン・ダレスである。 リムジンより約400メートル前方を走るパイロット・カーを運転していたジョージ・ランプキンはダラス警察副本部長で、予備役の第488情報分遣隊で副隊長を務めていた。隊長のジャック・クライトンはダラスの石油業者で、同業者のジョージ・H・W・ブッシュと親しい。そのクライトンは第2次世界大戦中、CIAの前身であるOSSに所属、ヨーロッパで活動していた。 パレードで使われたリムジンは防弾仕様でなく、屋根はシークレット・サービスのウィンストン・ローソンの指示で取り外されていた。またリムジンのリア・バンパーの左右には人の立てるステップがあり、手摺りもついているのだが、パレードのときには誰も乗っていない。 大統領の指示だったという話もあるが、エージェントだったジェラルド・ベーンは大統領がそうした発言をするのを聞いていないと証言、元エージェントのロバート・リリーによると、大統領はシークレット・サービスに協力的で警備の方法に口出しすることはなかった。 そして12時30分頃、ケネディ大統領は暗殺された。パレードの後方にある教科書ビルから撃たれたことになっているが、映像を見ても証言を調べても、致命傷になったであろう銃撃は前方からのものだった可能性がきわめて高い。 銃撃が始まると、大統領を乗せたリムジンの後ろを走る自動車にいた特別エージェントのエモリー・ロバーツは部下のエージェントに対し、銃撃だと確認されるまで動くなと命令しているが、これ無視してクリント・ヒルは前のリムジンに飛び乗った。 ヒルによると、銃撃の後に喉を押さえるケネディ大統領を見てのことで、まだステップに足がかかる前、血、脳の一部、頭骨の破片が自分に向かって飛んできて、顔、衣類、髪の毛についたとしている。ステップにヒルの足がかかった時、大統領夫人のジャクリーンもボンネットの上に乗り、大統領の頭部の一部を手に触れようとしていた。その時、大統領の頭部の中が見えたという。また銃撃の際、リムジンはほとんど停車していたと50名以上の人が証言している。勿論、パレードの前方にオズワルドはいない。(Clint Hill with Lisa McCubin, “Mrs. Kennedy and Me”, Gallery Books, 2012) ケネディ大統領の死亡が確認されたのはダラスのパークランド記念病院。死体を見た同病院のスタッフ21名は前から撃たれていたと証言、確認に立ち会ったふたりの医師、マルコム・ペリーとケンプ・クラークは大統領の喉仏直下に入射口があると記者会見で語っている。前から撃たれたということだ。 ところがベセズダ海軍病院からペリーに電話が執拗にかかり、記者会見での発言を撤回するように求めてきたという。これは同病院で手術や回復のための病室を統括していた看護師、オードリー・ベルの証言だ。ペリー本人から23日に聞いたという。数カ月後にそのペリーは記者会見での発言を取り消し、喉の傷は出射口だと訂正する。ウォーレン委員会でもそのように証言した。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyborse, 2013) 大統領の死体は法律を無視してパークランド記念病院から強引に運び出され、検死解剖はワシントンDCのベセズダ海軍病院で行われた。担当した軍医のジェームズ・ヒュームスは検死に不慣れだったとも言われている。 パレードの前方には「グラッシー・ノール(草で覆われた丘)」があるが、銃撃の直後にそこへ駆けつけたダラス警察のジョー・マーシャル・スミスは硝煙の臭いを嗅いでいる。そこで近くの駐車場にいた自動車修理工のように見えた男を職務質問したところ、シークレット・サービスのエージェントだということを示されたのだが、そこにシークレット・サービスの人間は配置されていなかったことが後に判明している。 同じ場所で銃撃の直前、兵士のゴードン・アーノルドは「シークレット・サービスのエージェント」を見たと語っている。パレードを見やすい場所を探してグラッシー・ノールに近づいたところ、私服の男に遮られ、近づかないようにと言われ、アーノルドが抗議したところバッジを見せながらシークレット・サービスだと名乗ったという。 アーノルドはパレードを撮影したが、銃撃が収まってからふたりの制服を着た「警察官」がアーノルドに近づき、フィルムを渡すように命じた。アーノルドは素直に渡している。そのフィルムがどうなったかは不明だ。銃撃後にグラッシー・ノールのフェンス近くを走っていたジーン・ヒルもシークレット・サービスを名乗る人物からフィルムを全て取り上げられている。 大統領を銃撃する様子をエイブラハム・ザプルーダーが撮影した8ミリフィルムが存在することが知られている。事件直後、そのフィルムに関する全ての権利を写真雑誌LIFEの編集者リチャード・ストーリーが5万ドルでザプルーダーから買い取ってシカゴの現像所へ運び、オリジナルはシカゴに保管、コピーをニューヨークへ送ったとされていた。 LIFEの発行人だったC・D・ジャクソンはアイゼンハワー大統領のスピーチライターを務めた人物で、アレン・ダレスらを中心にして行われたメディア支配プロジェクト「モッキンバード」の協力者でもあった。ストーリーはこのジャクソンの命令に従って動いていた。 後にオリジナルのほか3本のコピーが作られ、オリジナルはCIAと国防総省の共同プロジェクトとして設立されたNPIC(国家写真解析センター)へ送られた。この機関は1996年にNIMA(国家画像地図局)の組み込まれ、現在のNGA(国家地理空間情報局)になっている。いずれのフィルムも長い間一般に公表されなかった。 こうした話はJFK暗殺にまつわる疑惑の一部、氷山の一角にすぎない。政府機関は今でも資料の全面公開を拒んでいる。暗殺を目撃した少なからぬ人物が変死していることは有名な話で、暗殺事件を調査するとして設置されたアール・ウォーレン最高裁長官を委員長とする「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」(通称ウォーレン委員会)は証拠や証言の隠蔽を図っている。またザプルーダーのフィルムは調べられなかったという。このフィルムを公開させたのはルイジアナ州ニュー・オーリンズの地方検事だったジム・ギャリソンだ。1969年2月に法廷でフィルムは映写されたが、そのフィルムには大きな傷があった。 ウォーレン委員会が報告書を発表した3週間後の1964年10月12日、ケネディ大統領と親密な関係にあったマリー・ピンチョット・メイヤーが散歩中に射殺された。銃弾の1発目は後頭部、2発目は心臓へ至近距離から撃ち込まれ、プロの仕業だと見られている。 マリーが結婚したコード・メイヤーはその後、CIAで秘密工作部門の幹部を務めることになる。コードがCIA入りしてからふたりの関係は悪化したようで、1958年に離婚。1961年にマリーはジョン・F・ケネディ大統領と個人的に親密な関係になった。 大統領が暗殺された直後にマリーはハーバード大学で心理学の講師をしていた友人のティモシー・リアリーに電話し、泣きじゃくりながら「彼らは彼をもはやコントロールできなくなっていた。彼はあまりにも早く変貌を遂げていた。・・・彼らは全てを隠してしまった。」と語ったという。犯人は特定されていない。(Timothy F. Leary, “Flashbacks, Tarcher,” 1983) ケネディ大統領には敵が多かった。ソ連との「平和共存」を訴えていたことからソ連への先制核攻撃を目論んでいたアメリカの軍や情報機関の好戦派に憎悪され、イスラエルの核兵器開発を問題にしていたことから親イスラエルの富豪からも嫌われ、通貨発行権を政府が取り戻そうとしたことから金融界に危険視され、CIAの解体計画はCIAを怒らせている。CIAの背後は金融界だ。ケネディはCIAの受け皿としてDIAを創設したと言われている。 軍や情報機関の好戦派から憎悪されたひとつの事件がキューバ危機だろう。このグループはイギリスの首相だったウィンストン・チャーチルと同じようにソ連を敵視、ソ連に対する先制核攻撃を計画していた。そうした中、ソ連はキューバへミサイルを持ち込む。キューバで8カ所の対空ミサイルSA2の発射施設をアメリカの偵察機U2が1962年9月に3カ所の地対空ミサイル発射装置を確認している。(Jeffrey T. Richelson, "The Wizards of Langley," Westview Press, 2001) ソ連は中距離ミサイルのサイトを6カ所、長距離ミサイルSS5のサイトを3カ所建設する予定で(Martin Walker, "The Cold War," Fourth Estate, 1993)、102発の核弾頭をキューバに持ち込もうとしていたとも言われている。(Richard J. Aldrich, "The Hidden Hand," John Murray, 2001) また1961年から68年にかけて国防長官を務めていたロバート・マクナマラは1998年のインタビューで、その当時、約162発の核弾頭がキューバへすでに持ち込まれていて、そのうち約90発は軍事侵略してくるアメリカ軍に対して使われる戦術核だったと語っている。 好戦派はソ連軍の力を過小評価、キューバを空爆で破壊すべきだと主張していた。空爆してもソ連は手も足も出せないはずだというのだが、ケネディは強硬派の作戦に同意しなかった。そして大統領は10月22日、キューバにミサイルが存在する事実をテレビで公表、海上封鎖を宣言した。ちなみに、キューバとアメリカとの間にはカリブ海が広がっているが、ウクライナはロシアと接している。 キューバ危機による軍事的な緊張の高まりを受け、アメリカ政府とソ連政府は話し合いを進めていたが、そうした中、10月27日にルドルフ・アンダーソンが乗ったU2がキューバ上空で撃墜された。同じ27日、シベリア上空ではU2をソ連のミグ戦闘機が迎撃するという事態になっている。核戦争の危機が迫っている最中、アメリカの戦略空軍はU2をソ連周辺に飛ばしていたのだ。 U2のパイロット、チャールズ・モールツビー少佐は司令部に連絡、引き返すように命じられてアラスカへ向かい、この偵察機を護衛するためにアメリカ側はF102Aを離陸させた。ベーリング海峡の上空を核武装した軍用機が飛び交うという緊迫した状況が生まれたのだ。幸いなことにミグよりもアメリカ軍機が早くU2を発見、無事帰還できた。 この事態を受け、マクナマラ国防長官はU2の飛行停止を命令したのだが、その後も別のU2がモールツビー少佐と同じコースを飛行している。軍やCIAの好戦派はコントロール不能になっていた。(Richard J. Aldrich, "The Hidden Hand," John Murray, 2001) 10月27日にはアメリカ海軍の空母ランドルフを中心とする艦隊の駆逐艦ビールがソ連の潜水艦をカリブ海で発見、対潜爆雷を投下。攻撃を受けて潜水艦の副長は参謀へ連絡しようとするが失敗、アメリカとソ連の戦争が始まったと判断した艦長は核魚雷の発射準備に同意するようにふたりの将校に求めた。 たまたま乗り合わせていた旅団参謀が発射の同意を拒否したことから核魚雷は発射されなかったが、もし発射されていたなら現場にいたアメリカの艦隊は全滅、核戦争に突入したと見られている。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012 / Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury USA, 2017) ライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長やカーティス・ルメイ空軍参謀長などJCSの強硬派は大統領に対し、即日ソ連を攻撃するべきだと詰め寄ったというが、アメリカ側はキューバのソ連軍を実際の6分の1程度に過小評価していたことが後に判明している。(Martin Walker, "The Cold War," Fourth Estate, 1993 / Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury USA, 2017) 10月28日にソ連のニキータ・フルシチョフ首相はミサイルの撤去を約束、海上封鎖は解除されて核戦争は避けられたが、それを好戦派は察知し、27日に挑発的な行動へ出たと見られている。その延長線上にダラスにおける暗殺があると言えるだろう。好戦派はケネディ大統領を排除し、ソ連に核戦争を仕掛けるつもりだったとも言われている。 ケネディ大統領の親友で最も信頼されていた側近だったケネス・P・オドンネルによると、マリー・ピンチョット・メイヤーはキューバ危機の最中、ソ連と罵り合いに陥ってはならないと強く大統領に主張していたという。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyhorse, 2013)
2022.11.24
バラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行したひとつの理由はロシアとEUを分断することにあった。ロシアとEUを結んでいた天然ガスのパイプラインがウクライナを通過していたので、ネオ・ナチを利用してウクライナをアメリカを支配、天然ガスの輸送を止めてしまおうとしたのだ。 ウクライナを迂回する目的で建設された「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」は9月26日に爆破された。ガスの圧力低下をガスプロムが異常アラームで知った1分後、イギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。この通信をロシア側は傍受していたと見られているが、そのトラスは10月25日に辞任、10月29日にロシア国防省はノード・ストリームを破壊したのはイギリス海軍だと発表した。 第2次世界大戦後にヘゲモニーを握ったアメリカの支配層はイギリスが19世紀に作成した長期戦略を受け継いだ。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配して内陸部を締め上げ、ロシアを制圧して世界の覇者になるというわけだ。この戦略を成立させる上でスエズ運河は重要な意味を持っている。 そのスエズ運河を回避するため、インドのムンバイからイラン、アゼルバイジャンを経由し、ロシアのサンクトペテルブルグを鉄道、道路、船でつなぐ「南北輸送回廊」が作られている。 この回廊はアメリカやイギリスの世界制覇戦略にとって大きな障害になる。そうしたこともあり、アメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2019年に出したレポートの中で、アゼルバイジャンとアルメニアの緊張を煽ると書いたのだろう。 ロシアと中国は北極海をロシアの岸に沿って進む航路を開発中。この航路を使うと南のルートより安全に、しかもはやく物資を運ぶことができ、すでにロシアから中国へ石油を運んでいる。ロシアにとって、この航路が横断する千島列島の重要性は以前より増している。 アメリカはロシアや中国に対して経済戦争を仕掛けているが、その結果、ヨーロッパの経済は破綻、社会は崩壊している。アメリカの支配層はヨーロッパの主要企業にアメリカへ移転するように呼びかけているようだが、アメリカも苦境に陥りつつある。日本も厳しい状況だ。それに対してロシア経済は順調で、社会は安定している。 アメリカがロシアや中国を潰そうとしている理由は、アメリカを中心とする支配システムを揺るがす存在になっているからだ。アメリカの支配層は第2次世界大戦後にヘゲモニーを握ったが、その仕組みを支えてきたのはドル体制。基軸通貨と認められたドルを発行する特権をアメリカの私的権力が持ち、圧倒的に優位な地位を築いたわけで、このシステムがなければ軍事力を維持することも不可能だ。 ドルを発行する特権を最大限活用するため、発行済みのドルを実社会から支配層の手元へ還流させ、新たにドルを発行する余地を作る仕組みが作られた。例えば石油取引のドル決済や金融規制の大々的な緩和だ。ところがこの仕組みをロシアと中国が壊しつつある。 しかも、経済だけでなく軍事の面でもアメリカはウクライナで厳しい状況にある。ロシアや中国を軍事的な恫喝で屈服させようとしてきたネオコンの戦術が裏目に出ているのだ。 ウクライナで冬が本格化するとステップの地面が凍結、戦闘車両の走行が容易になる。ロシア軍は新たな軍事作戦を始めるため、それを待っていると見られている。 すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運ばれ、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加しているという。訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。冬が本格化する前に手を打たないとロシア軍が動き、NATO軍かアメリカ軍が前面に出てこないかぎり、ウクライナの敗北は明確になってしまう。
2022.11.23
アメリカ統合参謀本部(JCS)のマーク・ミリー議長はウクライナ軍がロシア軍に勝利できないかもしれないとした上で、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシアとの交渉を始めるべきだと発言している。4月の段階でロシア政府との交渉を始めようとしたキエフ政権に戦闘の継続を命じたのはイギリスのボリス・ジョンソン首相だった。現在、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官など対ロシア戦争を推進してきたグループはミリー議長の意見に反対していると伝えられている。 過去を振り返ると、勿論、軍にも好戦的な勢力が存在していた。JCSが1949年に作成した研究報告にはソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという記載があり、水爆実験を成功させた後、1954年に戦略空軍総司令部(SAC)は600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約60000万人を殺すという計画を立てる。 1957年に作成された「ドロップショット作戦」は実戦を想定していたようだが、それでは300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊することになっていた。沖縄の軍事基地化はこの作戦と無縁でないはずだ。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) アメリカが必要なICBMを準備でき、しかもソ連が準備できていないタイミングで先制核攻撃をすると考えた好戦派の中には統合参謀本部議長だったライマン・レムニッツァーや空軍参謀長だったカーティス・ルメイが含まれる。レムニッツァーはイギリスの貴族を信奉している人物で、ルメイは第2次世界大戦の終盤、日本に対する空爆を指揮していた。この好戦派は1963年後半に先制攻撃する計画を立てたが、邪魔者がいた。大統領だったジョン・F・ケネディだ。ケネディは1963年11月22日に暗殺された。 しかし、反ロシア/ソ連感情が強く、ファシストを支援してきた勢力は外交を司る国務省を巣窟としてきた。そこで反ファシストで反帝国主義のフランクリン・ルーズベルトは大統領として国際会議に出席する場合、同行させたのは基本的に軍人で、文民は個人的にルーズベルトが信頼していたハリー・ホプキンスだけだったという。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) アメリカの国務省には「リガ・グループ」とも呼ばれる反コミュニスト、反ソ連の一派がロシア革命の直後から存在していた。ラトビアのリガ、ドイツのベルリン、そしてポーランドのワルシャワの領事館へ赴任していた外交官たちがその中心で、メンバーの中には「封じ込め政策」で有名なジョージ・ケナンや駐日大使を務めたJPモルガン人脈のジョセフ・グルーも含まれていた。そのケナンより反ロシア感情が強く、好戦的なグループがネオコンにほかならない。 この一派もケナンやズビグネフ・ブレジンスキーと同じように、イギリスで19世紀に作られた長期戦略に従って動いている。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げていくというもので、最終的にはロシアを制圧し、世界の覇者になろうとしている。その根源にはアングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考える優生学思想がある。 優生学の創始者とされているフランシス・ゴールトンは『種の起源』で知られているチャールズ・ダーウィンの従兄弟にあたる。ダーウィンはトーマス・マルサスの『人口論』から影響を受け、「自然淘汰」を主張していた。ダーウィンの仮説とアングロ・サクソン信仰が結びつくと侵略、殺戮、略奪、支配を正当化する「理屈」になる。この「理屈」を信奉していたひとりがセシル・ローズであり、日本はこの「理屈」を実現するために有用な手先だ。 ローズは南部アフリカの侵略で重要な役割を果たし、そこで産出される金やダイヤモンドなどの資源を略奪して巨万の富を築いた。1877年6月にフリーメーソンへ入会した彼はその直後、『信仰告白』を書いている。 その中で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張した。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するというのだ。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) このローズを中心に支配グループが形成されるが、その中にはナサニエル・ド・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、アルフレッド・ミルナー、ロバート・ガスコン-セシル、アーチボルド・プリムローズらが含まれる。その後、プリムローズの甥にあたるアーサー・バルフォアもローズのグループへ入ったという。このグループから始まる「ローズ人脈」は現在も機能している。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) ローズ以降この人脈はアルフレッド・ミルナーを中心に活動し、ミルナーはシンクタンクのRIIA(王立国際問題研究所)を創設した。タイムズ紙も1912年ころからミルナーが管理するようになり、22年にはオーナーになった。(Carroll Quigley, “The Anglo-American Establishment”, Books in Focus, 1981) RIIAは形式上、1919年5月にパリのホテルで開かれたイギリスとアメリカの専門家が集まった会議で組織されている。イギリスからの出席者はミルナー・グループが大半で、アメリカ側はJPモルガン系の人たち。カーネギー財団もミルナー・グループと関係は緊密だ。 ところで優生学はアメリカの支配層に広まり、イギリス以上に社会へ大きな影響を与えることになる。支援者の中心はカーネギー財団、ロックフェラー財団、そしてマリー・ハリマンで、優生学に基づく法律も作られた。 優生学の信奉者はアングロ・サクソンだけでなく、ドイツ系や北方系の人種が優秀だと主張、劣等な種を「淘汰」するべきだと考える。そうした考えに引き寄せられたひとりがアドルフ・ヒトラーであり、ウクライナのネオ・ナチもその神話を信奉している。アメリカやイギリスの支配層とネオ・ナチが結びつくのは必然だと言えるだろう。現在、こうしたイギリスの長期戦略を推進している中心にはネオコンが存在する。 このネオコンはシオニズムとも関係が深いが、シオニズムはキリスト教の宗教改革の中から現れたと言われている。「ユダヤ」に目を奪われていると重要な事実が見えなくなる。
2022.11.22
ロシア軍はウクライナにおける新たな軍事作戦の準備を整え、ステップ(大草原)の地面が凍結して木々の葉が落ちるのを待っている。すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運ばれ、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加、訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。 すでに45歳以上の男性を戦場に投入しているウォロディミル・ゼレンスキー政権は追い詰められているが、それだけでなく、ロシア軍が新たな軍事作戦を始めるとウクライナ軍の敗北を隠しようがなくなり、これまで戦争拡大を目論んできたネオコンなどアメリカ/NATOの好戦派は厳しい状況に陥る可能性が高い。 こうした戦況を理解しているアメリカ統合参謀本部のマーク・ミリー議長はウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないと9日にニューヨークの経済クラブで発言、冬が本格化する前にロシアとの交渉を始めるべきだと主張。ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官など対ロシア戦争を推進してきたグループはミリー議長の意見に反対していると伝えられている。 9日にはこれまでロシアとの戦争を煽っていたNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長がスカイ・ニュースのインタビューの中で「ロシアを過小評価するべきでない」と口にしている。恫喝すればロシアは屈するといういう姿勢を貫いていた人物にしては慎重な発言だ。 15日にはウクライナからS-300防空システム用の5V55Kミサイル2機がポーランドのプシェボドフへ飛来、2名が死亡したとされている。このミサイルの射程距離は75キロメートルで、ロシア軍が発射した可能性はゼロに近い。ウクライナ政府以外はその事実を認めた。 ミリー議長は11月16日にもペンタゴンで開かれた記者会見でロシアとの交渉を始めるべきだと発言している。外交的な解決を主張する軍人と核戦争を恐れるなと主張する「文民」がホワイトハウスで対立しているわけだ。 ロシア軍は連日ウクライナの電力供給施設などをミサイルで破壊、ウクライナのエネルギー供給力は約半分に落ちているという。それだけのミサイル攻撃は彼らの用意したシナリオには書かれていないようで、アメリカのISW(戦争研究所)はロシア軍のミサイルが尽きると宣伝していた。 この間違った「予測」を主張したISWは2007年、キンバリー・ケイガンによって創設されたネオコン系の組織。アメリカ中央軍、ISAF(国際治安支援部隊)司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスとキンバリーは親しい。 ペトレイアスはオバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントンと親しく、ウクライナでの戦争継続を有力メディアで主張してきた人物で、ウクライナでの戦乱を煽っている。キンバリーの夫はフレデリック・ケイガン、その兄はロバート・ケイガン、ロバートの妻はビクトリア・ヌランドで、いずれもネオコンの中枢グループに属している。 そして今年11月19日、キエフをイギリスのリシ・スナク首相が訪問、ゼレンスキー大統領に対し、防空システムを供与すると伝えた。これまでもイギリスの首相はウクライナ政権がロシア政府との話し合いへ傾くとキエフに乗り込み、戦闘を続けさせてきた。 例えば、ウクライナの軍と親衛隊の壊滅が不可避の状態になった4月には9日にボリス・ジョンソン首相がキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めさせた。 そして4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問してゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪れてゼレンスキー大統領と会い、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。ジョンソンは8月24日にもキエフを訪問した。 サリバンなどジョー・バイデン政権の好戦派やウクライナ、ポーランド、バルト諸国などはロシアとの戦争へ向かおうとしているが、アメリカ軍や一部のNATO加盟国はそうした無謀なことをするべきでないと考えている。冬が到来してロシア軍が動き、NATO軍やアメリカ軍が動かなければウクライナの敗北は決定的になる可能性が高い。
2022.11.21
暗号資産売買の大半はふたつの取引所、中国生まれのカナダ人であるチャンポン・ザオのバイナンスとバハマに本社を置くサム・バンクマン-フリードのFTXで行われてきた。そのFTXが11月11日に破綻し、ウクライナを舞台とした資金の流れに疑惑の目が注がれている。 ロシアと戦うための戦費としてウクライナへ提供された資金は戦闘に使われず、FTXの闇に消えているのだが、その一部はアメリカの民主党へ流れ込んでいると言われている。兵器も闇市場へ吸い込まれ、一部ばイラクのクルドを経由してイランのクルドへ渡っていると言われている。 バンクマン-フリードはジョージ・ソロスに次ぐ民主党候補への寄付者だ。バンクマン-フリードは2019年4月にFTXを創設したが、その年にジョー・バイデンは20年の大統領選挙に出馬すると表明した。フランクリン・ルーズベルトによると、政治の世界に偶然はない。 ところで、バンクマン-フリードの元恋人でビジネスの上でも緊密な関係にあったキャロライン・エリソンは昨年4月、アンフェタミン(覚醒剤の一種)を賛美する文をツイッターに書き込んでいるが、バンクマン-フリードは2020年にアンフェタミン塩を含むアデラルという名称のADHD薬を服用していると語っていた。 ソロスの表の顔は投機家だが、裏ではソ連/ロシアの破壊を破壊する工作を推進してきた。1999年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃、その際にスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊、中国大使館をB2ステルス爆撃機で攻撃、3機のミサイルが別々の方向から大使館の主要部分を直撃している。目標を設定したのはCIAだった。 この先制攻撃は旧ソ連圏を解体し、食い物にするため欧米の巨大資本が重要な役割を果たしているが、ソロスは資金面から支援していたと言われている。 1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識、他国に気兼ねすることなく単独で行動できると考えた。そして1992年2月、アメリカの国防総省の「DPG草案」として世界制覇プランを作成した。その時の国防長官はディック・チェイニー、作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだ。そこで「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 このドクトリンをビル・クリントン大統領は無視、有力メディアから攻撃されることになった。この流れが変わるのは1997年1月に国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代してからだ。1998年4月にアメリカ上院はソ連との約束を無視してNATOの拡大を承認、その年の秋にオルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明した。この東方へのNATO拡大、つまり緩慢な「バルバロッサ作戦」の背後でソロスも暗躍していたのだ。そしてロシアの隣国、ウクライナをNATOは制圧にかかる。 19世紀に登場したアングロ・サクソンの支配層、いわゆるセシル・ローズ人脈はその当時から一貫してロシア制圧を目論んでいるが、短期的に見ると米英のウクライナ制圧プロジェクトは2010年から始まった。 この年の1月から2月にかけて行われた大統領選挙で東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利、7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)はキエフへ乗り込み、ヤヌコビッチに対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、拒否された。そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。 オバマ政権は2013年11月にクーデターを始動させ、14年2月にヤヌコビッチの排除に成功した。その時、クーデターの実行部隊として使ったのがネオ・ナチだ。 このクーデターを現場で指揮していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)。2014年2月上旬、クーデターが山場を迎える直前に彼女は電話でジェオフリー・パイアット米国大使に対し、「次期政権」の閣僚人事について話している。その中でヌランドは混乱を話し合いで解決しようとしていた「EUなんか、クソくらえ」と口にしたのだ。 ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民だが、現国務長官のアントニー・ブリンケンの父方の祖父もウクライナ出身。ヌランドもブリンケンもユダヤ系だ。ちなみに、アメリカの反ロシア戦略で重要な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキーはポーランドの生まれだが、一族の出身地ブゼザニは現在、ウクライナに含まれている。オルブライトはチェコスロバキアの出身で、ブレジンスキーの教え子だ。
2022.11.20
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は11月11日現在、前の週より252名増えて3万2155名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている 世界的に増えている超過死亡者数が「COVID-19ワクチン」接種のタイミングと相関関係があるが、この「ワクチン」を世界規模で使わせる切っ掛けを作ったのはWHO(世界保健機関)にほかならない。 2019年12月31日に中国の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状の肺炎患者が見つかったところからCOVID-19騒動は始まる。その肺炎を引き起こす病原体を「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」と国際ウイルス分類委員会が命名したのは2020年2月11日。そして3月11日にWHOは「パンデミック」を宣言する。 この「パンデミック」というタグに少なからぬ人は恐怖を感じたようだが、その意味は変化している。2009年から10年にかけての時期に「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が注目される直前、その定義は変更されたのだ。「病気の重大さ」、つまり死者数がという条件が削られている。 この「新型インフルエンザ」の死亡者は少なく、後に「偽パンデミック」だと批判されることになる。定義変更がなければ「パンデミック」を宣言できなかったのだ。COVID-19でも同じことが言える。 COVID-19のケースでは死亡者数も水増しするためのルール変更もあった。CDCはパンデミック宣言から間もない2020年3月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。 パンデミックが宣言された直後からCOVID-19への恐怖が煽られていたが、感染して死亡したとされた人の大半は高齢者で、心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍(癌)、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていたと報告されている。 CDCはFDAに「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を発行させたが、このパネルが作成された当時、「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」は単離されていない。 このパネルによって「確認感染者数」に「科学的」、あるいは「医学的」なイメージがついたのだが、CDCは昨年7月、このパネルを同年12月31日に取り下げると発表した。コロナウイルスとインフルエンザウイルスを区別できないからだという。実際、COVID-19騒動が始まってからインフルエンザの感染者はほぼゼロになっていた。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術で、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎない。つまりウイルスそのものを見つけ出すことはできない。増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になるだけでなく、偽陽性の確立が増えていくことも知られている。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。つまり無意味なのだが、2020年3月に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 要するにPCR陽性者の大半は偽陽性。健康体でも陽性の判定が出てしまうのだが、感染者数を増やしたい当局は「無症状感染者」なるタグを作り出した。 PCRを診断に使う危険性をアメリカの有力メディアは熟知していたはずである。例えば2007年1月、ニューヨーク・タイムズ紙はこの問題が取り上げている。 アメリカのニューハンプシャー州にあるダートマース・ヒッチコック医療センターで2006年4月、ひとりの医師が2週間ほど咳き込み、ほかの医療関係者も咳をするようになり、百日咳が疑わた。そこで医療センターで働く1000名近くが簡易検査を受け、勤務から外される。 そのうち142名が感染しているとされ、数千名がワクチンを接種する事態になったのだが、何人かは本格的な検査を受け、その結果、百日咳菌に感染していた人は確認されなかった。通常の風邪だった可能性が高いことがわかったのだ。 騒動が始まってから8カ月後、関係者は伝染病が発生したとする警報はまちがいだったことを知らされた。こうした間違いを引き起こした原因のひとつがPCRのような高感度の簡易検査だと指摘されている。 こうしたことをWHOやCDCを含む医療機関が知らないとは思えないが、COVID-19騒動では素早く使用が決定された。パンデミックを演出することが目的だったと言われても仕方がないだろう。この演出でCOVID-19は悪霊化され、「黒死病」が広がり始めたかのように語る人も出てくる。 専門家の間では「COVID-19ワクチン」の接種が始まる前から「ADE(抗体依存性感染増強)」が懸念されていたが、接種が始まると帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)が現れたり体が麻痺する人が出始める。 2021年4月頃からイスラエルでは年少者に心筋炎や心膜炎を引き起こすと言われるようになり、CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)も「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなった。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスも執筆者に名を連ねる報告が2021年9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中でmRNAを利用した製品は「心筋炎」を、またアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカの製品はギラン・バレー症候群(根神経炎の一種)を引き起こす恐れがあるとしている。 卵子や精子にダメージを与えるとする報告が発表されているが、ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」を接種すると6週間で脳炎や脳髄膜炎になる確率が40から70%高くなるとする報告も出た。 深刻な副作用を予期していたのか、国際機関も各国の関連機関も追跡調査していないようだ。ファイザーのアレルギー・呼吸器研究担当の副社長だったマイケル・イードンによると、副作用の90%を引き起こしたロットは全体の10%以下だとも指摘していた。壮大な実験、あるいはプロジェクトが行われている可能性がある。
2022.11.19
ポーランドのプシェボドフに着弾した2機のミサイルがS-300防空システム用で、射程距離が75キロメートルの5V55Kだということは確定的だ。ポーランド政府やアメリカ政府など反ロシア勢力もそれを認めている。そのミサイルを発射したのはロシア軍だとウクライナ政府は言い張り、それにしがみついている「戦時プロパガンダ機関」もあるようだが、その可能性はゼロに近い。 ポーランド政府などはロシア軍のミサイルを撃墜しようとして失敗したことによるアクシデントだと主張しているが、ロシアのミサイルは東から西へ向かってくる。それを撃墜するために発射したミサイルは西から東へ飛ぶ。ポーランド領に落ちそうには思えない。ウクライナ軍はミサイルをポーランドに向けて発射した可能性が高いのだ。ポーランドは1999年3月からNATOに加盟している。そこで、NATO加盟国を攻撃したロシアをNATOは攻撃しろという主張が叫ばれた。そこがポイントだろう。 アメリカのマーク・ミリー統合参謀本部議長はウクライナ軍がロシア軍に勝利する可能性は小さいと述べている。すでにウクライナの軍や親衛隊は壊滅状態で、ウクライナの男性はすでに45歳以上が戦場へ送り込まれている。アメリカ軍かNATO軍をロシア軍との戦いへ引きずり込まなければならない状態だ。 4月上旬にウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア政府と話し合いを始めていたようだが、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めさせている。4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問してゼレンスキー大統領と3時間ほど会談した。そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求める。 戦場で戦う戦闘員はウクライナ人が中心だとしても、4月以降、ロシアと戦っている本体はアメリカ/NATOになったと言えるだろう。実際、NATOが指揮しているという。そして8月24日にはジョンソン英首相(当時)がキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺した。ゼレンスキー政権は戦争を継続、兵器と資金が大量に流れ込む状況を好ましく感じるようになったのか、兵器や資金をもっとよこせと言っているようだ。そうした中、ウクライナ軍がロシア軍に勝利する可能性は小さいと言われても困るとゼレンスキー政権は思うだろう。 ポーランドやバルト諸国からはNATO軍が前面に出てロシア軍と戦えという声が聞こえてくる。ウクライナでの戦闘はロシアを破壊する好機だと反ロシア勢力は考えているのだ。そうした勢力はホワイトハウスで主導権を握っている。
2022.11.19
自衛隊は11月10日から19日にかけ、アメリカ軍と大規模な合同軍事演習「キーン・ソード2023」を行なっている。日本から2万6000名、アメリカから1万名が参加し、派遣されている両国の艦船はそれぞれ約20隻、約10隻、航空機はそれぞれ250機と120機だという。 アメリカ軍は陸上自衛隊の与那国駐屯地を使用している模様だが、この駐屯地は2016年に建設されている。自衛隊は2019年には奄美大島と宮古島にも駐屯地を建設、23年には石垣島でも完成させる予定だ。 アメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画しているのだが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとされている。済州島や台湾にも配備される可能性はあるが、日本ほど確実ではないのだろう。 その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになり、そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成された。 日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにし、地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だというが、アメリカの想定通りに事態が進んでいないためなのか、日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だという。 キーン・ソード2023の直前、10月31日からから11月4日の予定でアメリカ軍は韓国軍と合同軍事演習「ビジラント・ストーム」を始めたが、途中で延長を決め、5日にアメリカ軍は2機の戦略爆撃機B1Bに韓国上空を飛行させた。朝鮮は17日に短距離弾道ミサイルを発射、18日には順安付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。日米韓はICBM(大陸間弾道ミサイル)と見ているようだ。
2022.11.18
2020年以来、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を口実とした社会の収容所化や欧米諸国によるロシアへの経済戦争などで世界の経済活動は麻痺、企業の経営が厳しくなり、失業者が増えました。学費の支払いに苦しむ学生も世界的に増えているようです。アメリカ政府の命令に従ってきたEUではエネルギーが枯渇、社会生活の維持も難しくなり、企業をアメリカへ移転させる動きもあると伝えられています。 こうした状態は政策によってもたらされたのであり、社会の収容所化や経済の麻痺は何者かが意図した結果だと言えるでしょう。そうした意図を見抜き、対抗することもできたはずです。そのためにはまず事実を知る必要があります。事実を知るために新聞、雑誌、本、テレビ、ラジオ、最近ではインターネットが利用されますが、そこには情報機関の手がのびています。本ブログでもCIAと有力メディアの緊密な関係について書いてきました。 ジャーナリストのむのたけじが「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会で「ジャーナリズムはとうにくたばった」と語ったのは1991年のことです(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)が、アメリカでは第2次世界大戦が終わった直後から情報操作プロジェクトがスタート、1970年代の後半からメディア支配を強めてきました。 真実へ近づくためにはさまざまな報道や報告を調べるだけでなく、できるだけ生に近い事実にあたり、歴史を学び、それらを突き合わせて分析する必要があります。政府、大企業、権威といった支配体制を構成している組織や個人のレクチャーを聞くだけでは単なるプロパガンダ機関になってしまいます。 そうした分析を続け、その結果を「櫻井ジャーナル」で書こうと考えていますが、このブログは読者の方々に支えられています。このブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2022.11.18
マーク・ミリー統合参謀本部議長が述べたように、ウクライナ軍がロシア軍に勝利する可能性は小さい。ウォロディミル・ゼレンスキー政権がドンバスへ送り込んでいた軍や親衛隊は4月から5月の段階で壊滅、兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁じて動員の対象にしていたが、すでに45歳以上の男子も戦場へ駆り出されている。 アメリカ/NATOは兵器だけでなく軍事衛星からのデータを含む機密情報を提供、通信システムも供給し、今では指揮もNATOが行なっていると言われているが、それでもウクライナ軍にはロシア軍と戦う能力はない。NATO軍かアメリカ軍をロシア軍と直接戦わせなければならない状態なのだが、それは世界大戦、つまり核戦争を意味する。 そうした中、ポーランドのプシェボドフが2機のミサイルで攻撃されて2名が死亡したと同国政府は発表、ウクライナ政府ともどもロシア政府を批判している。このミサイルはS-300防空システム用の5V55K。射程距離は75キロメートルしかない。ちなみにウクライナ西部の都市リビウからミサイルの到達地点までが約70キロメートル。つまりロシア軍が撃った可能性はゼロに等しい。 問題の時、NATOはAWACS(早期警戒管制機)のE-3Aを飛行させていたので、ミサイルがどこから発射されたかを知っている。アメリカの大統領も軍もロシアが発射したとする話に否定的な理由はそこにあるだろうが、イギリスのメディアは「ロシアがやった」と宣伝している。 9月26日にノード・ストリームとノード・ストリーム2が爆破されたが、ロシア国防省はイギリス海軍が実行したと10月29日に発表した。その日にクリミアのセバストポリをキエフ政権が9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦で攻撃したとされているが、ロシア政府によると攻撃したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センターの隊員で、その隊員を訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。 10月8日にクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)を爆破したのはウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとロシア政府は主張しているが、計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報も流れていた。イギリスは破壊活動や情報活動でアメリカの師匠的な存在だが、その背後には巨大金融資本がいる。 MI6やその弟子であるCIAは情報操作を利用したイメージ戦争も得意だ。アメリカは東南アジアやラテン・アメリカにおける戦争で殺戮と破壊のイメージがついた。そうしたイメージを変えるためにメディア支配を強化、ロナルド・レーガン政権は「プロジェクト・デモクラシー」なるタグを使い始める。アメリカに「デモクラシー」や「人権」というイメージを結びつけようというわけだ。この工作はアメリカとイギリスが連携している。 このプロジェクトを始めるためにレーガン大統領は1983年1月にNSDD(国家安全保障決定指示)77に署名、プロジェクトの中枢機関としてSPG(特別計画グループ)をNSCに設置した。ここが心理戦の中心になる。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004) すでに有力メディアをCIAは影響下に置いていたが、さらにNGOを設立、あるいは乗っ取り、国際機関の支配も進めた。最近、米英支配層の手先として「活躍」しているのは「紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表」のプラミラ・パッテン。今でもドネツク州のマリウポリでロシア兵が女性に対して性的な犯罪行為を「軍事戦略」として行なっていたと発言していた。これはゼレンスキー政権の主張をそのまま口にしただけのことだ。 彼女はリビアを侵略するときに使われたバイアグラに関する作り話を使い回していたが、4月中旬にロシア軍が制圧した際、解放された住民は異口同音に逆のことを証言していた。親衛隊の主力でネオ・ナチを中心に編成されているアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)による残虐行為を批判していた。パッテンは自身の発言についてAFPの記者に証拠が示されていないと指摘され、自分はニューヨークのオフィスにいて調査はしていないと開き直っている。この女性、モーリシャス国籍だが、イギリスで教育を受けた法律家だ。
2022.11.17
ポーランド領内に撃ち込まれた「ロシア製ミサイル」がロシアから発射された可能性は低いとジョー・バイデン米大統領も発言せざるを得なかったようだ。ミサイルの残骸からウクライナ軍が使っているものである可能性が高く、ポーランドやウクライナへ安易に同調することは得策でないと考えたのだろう。統合参謀本部は当初から否定的だった。
2022.11.16
ポーランド領内に「ロシア製ミサイル」が打ち込まれて2名が死亡したと同国政府が主張、ウクライナ政府がロシアを非難、それに対してロシア政府はその攻撃を否定している。ミサイルの残骸からウクライナ軍が使っているものだと指摘されているが、状況から考えてもウクライナ軍が打ち込んだ可能性が高い。 この話を聞き、「やはりやったか」と思った人は少なくないだろう。本ブログでも繰り返し書いてきたが、冬が本格化してウクライナの東部や南部に広がるステップ(大草原)が凍結するのを待ち、ロシア軍は新たな軍事作戦を始めると見られている。 すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運ばれ、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバスへ入った。そのうち5万人は戦闘に参加しているというが、訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。 それに対し、ウォロディミル・ゼレンスキー政権がドンバスへ送り込んでいた軍や親衛隊は4月から5月の段階で壊滅している。そこでゼレンスキー政権はロシア政府と停戦に向けて話し合いを始めようとするのだが、それを止めるためにイギリスのボリス・ジョンソン首相が4月9日にキエフへ乗り込み、実際、停戦交渉を止めた。 そして4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問してゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、さらなる軍事面や外交面の支援を約束。そして4月30日にナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。 キエフ政権は兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁じ、動員の対象にしていた。NATO加盟国で相当数の戦闘員を軍事訓練、ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたというが、足りていないようで、45歳以上の男子も戦場へ駆り出されているようだ。しかも訓練が不十分な段階で戦場へ送り込まれているという。 アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)のほか、ポーランドの正規軍やシリアのアル・タンフにあるアメリカ軍の基地で訓練を受けたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)の戦闘員がウクライナへ送り込まれているようだが、それでも戦力は足りない。 指揮や機密情報の提供、兵器の供与だけでなく、NATO軍かアメリカ軍の部隊をロシア軍と直接戦わせなければ、ロシア軍の新たな作戦に対応できそうにないが、アメリカ軍は統合参謀本部は慎重な姿勢を崩していない。マーク・ミリー統合参謀本部議長は先週、ウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないとした上で、この冬はロシアと交渉を始める機会だと語った。ポーランドやウクライナなどロシアの壊滅を目指している勢力は怒っているようだ。 アメリカの議員は民主党も共和党もウクライナへの軍事支援に積極的だが、その裏が暗号通貨取引所FTXの破綻で浮かび上がっている。創業者のサム・バンクマン-フリードはジョージ・ソロスに次ぐ民主党候補への寄付者で、またFTXはウクライナへの資金援助を扱っていた。その仕組みはマネーロンダリング。ウクライナへ流れた資金の一部がキックバックでアメリカへ戻っているのだが、今回の倒産劇で記録が消えたという。ウクライナへ渡ったはずの資金がどうなったか明らかでない。
2022.11.16
マーク・ミリー統合参謀本部議長は先週、ウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないとした上で、この冬はロシアと交渉を始める機会だと語ったという。これはジョー・バイデン政権の好戦的な政策とは違うものだが、アンカラでCIAのウィリアム・バーンズ長官がロシアのセルゲイ・ナリシュキンSVR(対外情報庁)長官が会談、あるいはビクトリア・ヌランド国務次官が11月末までにモスクワを訪問するという話と相まってウクライナのクーデター体制を動揺させたようで、バイデン政権は事態の沈静化に狂奔してるようだ。 本ブログでは繰り返し書いているように、冬が本格化してステップの地面が凍結して戦闘車両の走行が容易になり、木々の葉が落ちるこの季節にロシア軍は新たな軍事作戦を予定している。すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運ばれ、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバスへ入り、そのうち5万人は戦闘に参加しているというが、訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。 ロシア軍は11月11日、ヘルソン地域の西岸(右岸)から約3万人と言われる部隊を東岸へ撤退させたと発表した。これを敗走と主張する人もいるようだが、実際は戦術的な撤退にすぎない。「ウクライナ軍」はカホフカ・ダムや橋に対するHIMARS(高機動ロケット砲システム)などによる砲撃を続け、破壊される危険性が高まっていた。ダムが爆破されて洪水になると大きな被害を受けるが、それだけでなく西岸の部隊が孤立する恐れがある。「背水の陣」を避けたということだ。 この撤退命令に対してアメリカ/NATO/キエフ側は慎重な見方をしていたが、これは過去の経験から安易に部隊を入れるとミサイルや航空兵力で攻撃され、多くの戦死者が出るからだろう。ロシア軍を包囲する前に撤退され、目論見が崩れたのかもしれない。 キエフ政権がドンバスへ送り込んでいた軍や親衛隊は4月から5月の段階で壊滅。兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁じ、動員の対象にしていたが、すでに45歳以上の男子も戦場へ駆り出されているという。しかもロシア軍とは違い、訓練が不十分な段階で突撃させられているとする情報もある。 すでにウクライナ軍には単独でロシア軍と戦う能力はなく、各国から集めた傭兵でも対応できない。NATOは加盟国の間で意見の対立があるようで、アメリカ軍やイギリス軍を使うしかない。イギリス軍はすでに破壊活動を繰り返しているようだが、アメリカ軍は統合参謀本部が慎重な姿勢を崩していない。 ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃を決めた2002年以来、統合参謀本部は戦争に慎重な姿勢を維持している。大義がなく、作戦が無謀だという理由からだ。 2011年春にオバマ政権は中東から北アフリカにかけての地域で「アラブの春」と名づけられた体制転覆作戦を始め、12年になるとバラク・オバマ政権は「穏健派を支援する」と称し、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団への軍事支援を強化する。 そうした支援を危険だと考えたアメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月、報告書をホワイトハウスへ提出している。オバマ政権が支援している武装勢力の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団で、アル・ヌスラ(AQI/イラクのアル・カイダ)の実態は同じだと指摘、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告は2014年、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になる。 2011年10月1日から統合参謀本部議長を務めていたマーティン・デンプシー大将もバシャール・アル・アサド政権の崩壊は混乱を招き、ジハード過激派(アル・カイダ系武装集団)がシリアを乗っ取ると懸念していた。そこで議長はアサド政権と連絡を取り合っていたとも言われている。そのデンプシーは2015年9月25日に退任、その5日後にロシア軍はシリア政府の要請で軍事介入、オバマ政権が使っていたジハード傭兵を敗走させた。 アメリカで軍事侵略を推進している勢力にはマデリーン・オルブライト、ヒラリー・クリントン、アントニー・ブリンケン、ビクトリア・ヌランドが含まれている。前の3人は国務長官、最後のひとりは国務次官補や国務次官を経験している。 国務省は外交を担当する省だが、ロシア革命の直後からファシストの巣窟だったとも言われていた。そこで反ファシスト、反帝国主義だったフランクリン・ルーズベルトは国際会議に出席する際、同行させたのは基本的に軍人で、文民は個人的にルーズベルトが信頼していたハリー・ホプキンスだけだった。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015)
2022.11.16
ウクライナでも冬が本格化しようとしている。ステップ(大草原)の地面が凍結して戦闘車両の走行が容易になり、木々の葉が落ちるこの季節にロシア軍は新たな軍事作戦を予定している。すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運ばれ、部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバスへ入り、そのうち5万人は戦闘に参加しているというが、訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずだ。 そうした中、アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官が11月末までにモスクワを訪問する方向で調整しているロシアのメディアが伝えている。アンカラでアメリカの要請により、米露が秘密会議を開いたともいう。状況が悪いと考え、例によって時間稼ぎを目論んでいるのかもしれないが、バイデン政権の思惑通りになるとは言えない。 ヌランドはネオコンの中核グループに属し、2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がキエフで実行したクーデターを現場で指揮していたことで有名。当時は国務次官補だった。そのクーデターの手先がネオ・ナチだ。彼女の夫はロバート・ケイガン。ロバートの弟はフレデリック・ケイガン、その妻はISW(戦争研究所)を創設したキンバリー・ケイガン。いずれもネオコンの主要メンバーだ。 キンバリーはアメリカ中央軍やISAF(国際治安支援部隊)の司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスと親しい。ペトレイアスはオバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントンと親しく、ウクライナでの戦争継続を有力メディアで主張してきた人物だ。 オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデンは大統領に就任した直後からロシアのウラジミル・プーチン大統領を愚弄、挑発、経済戦争を仕掛けてきた。昨年12月7日にバイデンはプーチンとオンライン会談を実施、その際にロシア大統領はNATOの東への拡大は止めるように求めたが、米大統領はウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示した。 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長もロシア政府の要求を拒否していたが、そのストルテンベルグが11月9日、スカイ・ニュースのインタビューの中で「ロシアを過小評価するべきでない」と口にした。恫喝すればロシアは屈するといういう姿勢を貫いていた人物にしては慎重な発言だ。西側の力関係に変化があったのかもしれない。 アメリカが何をしでかすかわからない「狂人」のような国だと相手に思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと同国のモシェ・ダヤン将軍は語った。ネオコンも同じように考えてきた。 NATOの東方拡大はロシアに対する軍事的な恫喝であり、ウクライナの制圧は「緩慢なオデッサ作戦」の始まりを意味する。それでもロシアは戦争を恐れて出てこないとネオコンは信じていた。以前からそうした「信仰」を持っていたのだが、1990年の湾岸戦争でその信仰は確信になっている。 1991年12月にソ連が消滅するとネオコンは世界制覇プランを作成し、ビル・クリントン政権は第2期目に旧ソ連圏の制圧に乗り出す。1997年1月に国務長官を戦争に慎重なクリストファー・ウォーレンから好戦的なマデリーン・オルブライトへ交代してからだ。1998年4月にアメリカ上院はNATOの拡大を承認しする。 しかし、「封じ込め政策」で有名なジョージ・ケナンはそうした政策はロシアを新たな冷戦に向かわせると警告している。ケナンは反コミュニストの外交官として有名だが、その彼でも危険だと感じたのだ。 またヘンリー・キッシンジャーは今年5月にスイスのダボスで開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で、ロシアとウクライナとの特別な関係を指摘、平和を実現するためにドンバスやクリミアを割譲して戦争を終結させるべきだと語り、ジョージ・ソロスと対立した。 2001年9月11日以降、ホワイトハウスはネオコンに掌握されてきたが、支配層の内部にも非ネオコン派は存在しているようで、ここにきてそうしたグループの発言が聞かれるようになっていた。 また、アメリカの統合参謀本部はジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃を決めた2002年以来、戦争に慎重な姿勢を維持している。大義がなく、作戦が無謀だという理由からだ。2011年春にオバマ政権は中東から北アフリカにかけての地域で「アラブの春」と名づけられた体制転覆作戦を展開した。 その際、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長をはじめとする軍の幹部もオバマ政権が進めていたバシャール・アル・アサド政権の崩壊は混乱を招き、ジハード過激派(アル・カイダ系武装集団)がシリアを乗っ取ると懸念していたが、アサド政権は倒れない。そこでオバマ政権は「穏健派」を支援するとしてアル・カイダ系武装集団を支援した。 そうした支援を危険だとする報告書をアメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月、ホワイトハウスへ提出している。オバマ政権が支援している武装勢力の主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、アル・ヌスラ(AQI/イラクのアル・カイダ)と実態は同じだと指摘されていた。その中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告は2014年、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になった。 ウクライナの構図もシリアと同じ。中東や北アフリカではサラフィ主義者やムスリム同胞団が傭兵の中心的な存在だったが、ウクライナではネオ・ナチということにすぎない。 2007年からNATOの秘密部隊ネットワークに参加、21年11月からウクライナ軍参謀長の顧問を務めているドミトロ・ヤロシュはウクライナにおけるネオ・ナチの幹部だが、07年5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めている。 そして2014年3月に彼が発表した声明の中で、チェチェンやシリアでロシアと戦ったサラフィ主義者などイスラム系武装集団への支援を表明した。 ちなみに、ウクライナへ欧米から流れ込んだ兵器の相当部分は闇市場へ流れたと言われているが、その行き先はイラクにあるPKK(クルディスタン労働者党)の基地で、イランのクルドへ供給されると言われている。
2022.11.15
韓国の大統領が尹錫悦へ交代して以来、アメリカ、日本、韓国の軍事的なつながりが強まり、軍事演習を繰り返している。朝鮮を念頭に置いたような演出がなされているが、実際の仮想敵は中国であり、必然的にロシアとの戦争も想定されることになる。 そうした中、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで11月14日に日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。オーストラリアは昨年9月、イギリスやアメリカと軍事同盟「AUKUS」を創設したと発表したが、それと同時にアメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。 オーストラリアの潜水艦を受け入れるだけでなく、軍事的な連携を強めるとも山上大使は語っている。日本はアメリカや韓国と軍事的につながっているわけで、太平洋ではアメリカとイギリスを中心にオーストラリアや韓国が軍事的な同盟を結んだということになる。ここに台湾が入るかもしれない。 ロシア国家安全保障会議のニコライ・パトロシェフ議長に言われるまでもなく、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」である。創設当時のNATOはヨーロッパ支配の仕組みという色彩が濃かったが、現在はロシアを征服するための軍事組織として機能している。 日本とアメリカは1951年9月8日にサンフランシスコのオペラハウスで「対日平和条約」に、そして同じ日の午後にプレシディオで「安保条約」に調印。この時から日本とアメリカは軍事同盟国になったわけだが、その1週間前に同じプレシディオでアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国はANZUS条約を結んでいる。いずれもアメリカの指揮下にある軍事同盟であり、ひとつのものと理解することもできる。 しかし、この当時のアメリカはまだ日本への警戒が消えていない。憲法第9条はそうした警戒心の現れとも言えるだろう。アメリカが第9条を問題にしはじめるのは、その警戒心がなくなってからだ。 アメリカが日本を軍事力として使う方針を決めたと思われるのはソ連が消滅した直後の1992年2月。アメリカ支配層は自国が「唯一の超大国」になったと考え、その中の好戦派は国防総省の「DPG(国防計画指針)草案」という形で世界制覇プランを作成した。ディック・チェイニー国防長官の下、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官を中心に書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 ソ連が消滅したことでアメリカは他国に配慮することなく単独で行動できるようになったと考えたのだが、細川護煕政権は国連中心主義を放棄しなかった。そこでこの政権は潰されたわけだ。 アメリカに逆らう国は許されない。逆らう可能性のある国は「潜在的ライバル」とみなされ、叩かれることになる。その潜在的ライバルには旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジアが含まれる。エネルギー資源を抱える西アジアも攻撃の対象になった。1990年代に日本がスキャンダルで揺れたが、偶然と考えるべきではない。 アメリカの政策に抵抗する日本を危険だとマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは考え、カート・キャンベルを介して国防次官補のジョセイフ・ナイに接触した。そのナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」発表、日本の進むべき道を示した。 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後に警察庁の國松孝次長官は狙撃された。警察庁長官を殺すことができるのだと示したのだろう。 山上大使が駐在しているオーストラリアはアメリカの影響下にあるイギリスの国である。そうしたことを示す出来事が1975年11月に引き起こされた。ゴフ・ホイットラム首相が解任されたのだ。 ホイットラムは労働党の政治家で、1972年12月の総選挙で勝利して首相に就任している。新首相は自国の対外情報機関ASISに対してCIAとの協力関係を断つように命令、アメリカの情報機関は危機感を募らせた。 イギリスのジャーナリスト、デイビッド・レイによると、ホイットラムはチリのクーデターに関する情報を入手、チリでASISがCIAと共同でサルバドール・アジェンデ政権を崩壊させる工作を展開していたことを知っていたという。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988) オーストラリアのパイン・ギャップにはCIAの通信傍受施設があるのだが、その使用期限が迫っていたこともCIAの懸念材料だった。この施設は1966年12月に結ばれた秘密協定に基づいて建設されたもので、協定の有効期限は10年。1976年までに更新しないと基地を閉鎖しなければならない。ホイットラムが更新を拒否することをアメリカ側は懸念していたのだ。 そこでCIAは1975年11月、イギリス女王エリザベス2世の総督であるジョン・カー卿を動かしてホイットラム首相を解任した。実際に動いたのはアメリカのCIAやイギリスのMI6だが、総督がいなければ解任できなかった。総督は名誉職だと考えられていたが、そうではなかったのである。 アメリカのジャーナリスト、ジョナサン・ウイットニーによるとカーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣されてCIAの前身であるOSS(戦略事務局)と一緒に仕事をしている。大戦後もCIAと深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987) 日本のエリートはアメリカやイギリスの支配グループにすりよっている。明治維新を仕掛けたのがそうしたグループであり、そのグループに従うことが自分の地位と富を確保する方法だと考えているのだろう。明治維新はアジア侵略の拠点として日本列島を使い、手先の戦闘員として日本人を使うことが目的だった。
2022.11.15
11月8日にアメリカで実施された中間選挙の結果、民主党と共和党が獲得した議席数は上院でも下院でも接近したものになった。事前の世論調査によると民主党に対する評価は低く、大敗する可能性が高いと見られていたのだが、そうしたことにはなっていない。CNNが行った出口調査でも民主党への投票数は減っているので、意外に感じる人は少なくない。2000年の選挙以来、毎回不正が噂される。 もっとも、アメリカの民主党と共和党には大きな差がなく、いずれもスポンサーは巨大資本や富豪であり、アメリカからイスラエルへ流れ込む多額の資金の一部がキックバックの形で議員の懐へ戻っている。この仕組みに縛られているアメリカの政界が打ち出す政策、特に国際分野は民主党も共和党も違いがない。 巨大資本の中核に存在しているのは金融資本だが、その中で近年、存在感を強めているのはブラックロック、バンガード、ステート・ストリートなど銀行のような規制を受けない新しいタイプの金融機関、いわゆる「闇の銀行」だ。これらは1970年代から始まった金融規制の大幅な緩和によって誕生、この3社が大株主になっている会社はアメリカの主要500社の9割に近いという。 こうした「闇の銀行」のアメリカにおける拠点はデラウェア州だが、ジョー・バイデンは同州選出の上院議員を1973年1月から2009年1月まで務めている。 上院議員になった当時のバイデンに助言していたW・アベレル・ハリマンはエール大学でスカル・アンド・ボーンズという学生の秘密結社に入っていた。この結社へ入った学生は金融機関や情報機関へ入るケースが少なくない。ジョージ・W・ブッシュ、父のジョージ・H・W・ブッシュ、祖父のプレスコット・ブッシュも同じ結社のメンバーだった。 プレスコット・ブッシュも上院議員だったが、元々はウォール街の人間。ジョージ・ハーバート・ウォーカーという金融界の大物の娘と結婚している。プレスコットはウォーカーの下でブラウン・ブラザーズ・ハリマンやユニオン・バンキング・コーポレーションの重役を務めていたが、いずれもウォール街からナチスへ資金を供給する重要なルートだった。同僚のひとりがW・アベレル・ハリマンだ。 プレスコットが金融界で働き始めた頃、アレン・ダレスもウォール街の弁護士として働き始めている。両者はウォール街の仲間であり、友人だったともいう。後にジョージ・H・W・ブッシュはCIA長官になるが、エール大学時代に彼はCIAからリクルートされたと信じられている。子ども時代のジョージをアレン・ダレスは知っていたはずだ。 ジョージがCIA長官に就任したのはジェラルド・フォード政権。デタントを主張していたリチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚したことを受け、フォードは副大統領から昇格したのだが、この政権でドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パールなど後に「ネオコン」と呼ばれる人びとが台頭している。 イギリスと同じようにアメリカでも情報機関は金融機関によって生み出されているので、ジョージ・H・W・ブッシュがCIAに雇われたり長官に就任するのは必然だ。ポール・ウォルフォウィッツはCIAの内部に作られた「チームB(あるいはBチーム)」と呼ばれるソ連に関する偽情報を発信するメンバーだったことがある。 ジョージ・W・ブッシュはネオコンに担がれていたが、そのブッシュが大統領に就任した2001年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、それを切っ掛けとしてネオコンはホワイトハウスを掌握、侵略戦争を本格化させた。ブッシュ政権の政策はブッシュ・シニア政権時代の1992年2月に作成された「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれる世界制覇プランが基盤になっている。日本がこのドクトリンに組み込まれたのは1995年である。
2022.11.14
ロシア軍は11月11日、ウクライナの南部にあるヘルソン地域の西岸(右岸)から約3万人と言われる部隊を東岸へ撤退させたと発表した。アメリカの統合参謀本部は撤退を完了させるまで数週間を要すると見ていたが、2日で終わらせたことになる。撤退した部隊の一部はウグレダルなど他の重要な戦闘地域へ回されているようだ 西側の有力メディアは「ヘルソン奪還」と宣伝しても良さそうだが、それほど騒いでいないようだ。事前に聞いていた「ロシア軍敗北」のシナリオが崩れたのかもしれない。撤退の速さに対応できなかったのかもしれない。 NATOが指揮している「ウクライナ軍」はヘルソンよりドニエプル川の上流にあるカホフカ・ダムや橋に対するHIMARS(高機動ロケット砲システム)などによる砲撃を続け、破壊を目論んでいるとも言われていた。ダムが爆破されて洪水になると大きな被害を受ける。そうした事態を避けるための撤退だとも言われていた。 また、西岸の部隊へ物資を供給するためには川を渡る必要があり、橋が破壊されると補給が難しくなり、西岸のロシア軍と住民は孤立する。川を背負うということは「背水の陣」であり、リスクが高い。「ウクライナ軍」はヘルソン周辺へ兵力を集中させていたようなので、ドニエプル川西岸のロシア軍を包囲し、殲滅するつもりだった可能性が高い。その作戦は始動する前に潰れてしまった。撤退後に橋を破壊するとドニエプル川が「堀」のように機能し、東岸の安全が高まる。 勿論、ドニエプル川西岸を「死守」するという選択肢もあったが、ロシア側にも少なからぬ犠牲者が出ることは避けられない。そうした事態になった場合、動員に応じた若者の親はクレムリンに対する非難を強めることが予想され、戦争継続は難しくなる。アメリカやイギリスの政府はそれを狙った可能性があると分析する人もいる。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、ウクライナの東部から南部にかけての地域はステップ(大草原)が広がり、隠れる場所はわずかに存在する木々の間。しかも地面はぬかるんでいる。ロシア軍は地面が凍結して木々の葉が落ちる冬にならないと戦車を投入できない。 部分的動員で集めた兵士のうち約8万人はすでにドンバスへ入り、そのうち5万人は戦闘に参加しているというが、約32万人は訓練中。冬が到来する頃には、その32万人も投入されるはずだ。 それに対し、ロシアとの戦争を指揮しているジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官はロシア軍との戦闘をちらつかせている。ルーマニアに派遣されている第101空挺師団に所属する4700名を含むアメリカ軍4万人、ポーランド軍3万人、ルーマニア軍2万人がウクライナへ入って戦闘に参加するというのだが、それでロシア軍が怖気付くことはない。ロシアにとってウクライナでの戦争は国の存亡がかかっているのだ。 アメリカの統合参謀本部はジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃を決めた2002年以来、戦争に慎重な姿勢を維持している。大義がなく、作戦が無謀だというのだが、これはウクライナでも同じ。政府はメンバーを自分たちに従う軍人へ交代させてきたが、それでも組織としては慎重だ。 サリバン大統領補佐官のほかジョー・バイデン大統領自身もロシアとの戦争に積極的だが、それ以外にビクトリア・ヌランド国務次官やアントニー・ブリンケン国務長官も仲間だ。 いずれもネオコンだが、ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民、ブリンケンの父方の祖父もウクライナ出身で、いずれもユダヤ系だ。サリバンはエール大学時代、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。セシル・ローズの系譜、つまり帝国主義人脈に属していると言える。ちなみに、この人脈が中国を侵略するために明治維新を仕組んだ。
2022.11.13
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は11月4日現在、前の週より132名増えて3万1903名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている
2022.11.12
ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」を接種すると、6週間で脳炎や脳髄膜炎になる確率が40から70%高くなるとする報告が出た。「COVID-19ワクチン」の接種が始まった直後から帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)が現れると報告されるようになるが、接種後に体が麻痺する人も出てくる。 例えば、2021年2月にギタリストのエリック・クラプトンはアストロゼネカの「ワクチン」を接種、その直後から深刻な副作用に襲われたという。手足が冷たくなったり、痺れたり、熱くなったりする状態が2週間続き、2度とギターを弾けなくなるのではないかという恐怖を感じたという。脳の神経がダメージを受けた可能性があり、脳炎と関係があるかもしれない。 イスラエルでは2021年4月頃から年少者に心筋炎や心膜炎を引き起こすと言われるようになり、同年6月にはアメリカCDC(疾病予防管理センター)のACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)も「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなった。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスも執筆者に名を連ねる報告が2021年9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中でmRNAを利用した製品は「心筋炎」を、またアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカの製品はギラン・バレー症候群(根神経炎の一種)を引き起こす恐れがあるとしている。 「mRNAワクチン」は一種の遺伝子治療薬であり、未知の薬。つまりどのような副作用が生じるかは不明だった。それを世界規模で実験しているのが実態だ。コロナウイルスの表面にはスパイク・タンパク質という突起物があるが、「COVID-19ワクチン」はそれを体内で製造させ、抗体を作らせて免疫を高めるとされてきた。そのスパイク・タンパク質が病気を引き起こしているという指摘がある。 スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「mRNAワクチン」の中に「酸化グラフェン」があることを電子顕微鏡などで発見したと発表、8月に日本政府は「モデルナ製ワクチン」の中に磁石へ反応する物質が見つかったと発表、160万本が回収されたと伝えられた。 パンプラは11月、周波数の分析で酸化グラフェンが「ワクチン」に含まれていることを確認したと発表したが、その論文を読んだドイツの化学者アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく水酸化グラフェンだろうと解説している。ノアックによると、この物質は厚さが0・1ナノメートルの小さな板のようなもので、彼はカミソリの刃になぞらえていた。「mRNAワクチン」を接種すると、血管の中を小さな「カミソリの刃」が動き回ることになり、臓器や神経などを傷つけるというわけだ。 不安定なmRNAを輸送するためにLNP(脂質ナノ粒子)が使われているが、そのLNPは人体に有害な物質。投与されたLNPは肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布すると報告されている。そこでLNPが卵子に悪い影響を及ぼすのではないかた言われたが、ここにきて精子にもダメージを与えると言われるようになった。しかも遺伝する恐れがあるという。死産が増えているという情報もある。人類の存続に関わる問題を「COVID-19ワクチン」は抱えていると言えるだろう。 その危険な「ワクチン」を日本政府はさらに接種させようと宣伝している。いわゆる「ブースター」の推進だが、この「ワクチン」は接種回数が増えるほど免疫力を低下させていく。免疫力が低下すれば癌も増えるだろう。「ワクチン」を接種すればするほど病気になりやすくなり、命に関わってくる。東京理科大学の村上康文名誉教授が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅したという。 すでに日本では超過死亡者数が異常に増加、しかも「ワクチン」接種のタイミングと相関関係がある。「因果関係は科学的に証明されていない」と主張する人もいるが、同じことを水俣病やイタイイタイ病などでも「専門家」は言っていた。証明されたときには手遅れだ。 中には「コロナ死」を主張する人もいるが、COVID-19の原因だとされるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)に感染していることを迅速に確認する方法がない。広く使われていたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が診断に適していないことは、この技術を開発してノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスも強調していた。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術であり、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎない。増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、しかも偽陽性の確率が増えていく。 偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているが、2020年3月に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だった。医学的に無意味なことをしていたわけであり、発表された「感染者数」も意味がない。 カリフォルニア大学、コーネル大学、スタンフォード大学を含む7大学の研究者は2021年5月1日、PCR検査で陽性になった1500サンプルを詳しく調べたところ、実際はインフルエンザウイルスだったと発表している。 CDCは感染の診断に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を使っていたが、2021年7月21日、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)をその年の12月31日に取り下げると発表、すでに取り下げられた。SARS-CoV-2とインフルエンザ・ウイルスを区別できないからだとされている。
2022.11.12
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣はヘルソンからの撤退を部隊に命じた。この決定はドンバス、ヘルソン、ザポリージャにおける作戦を指揮しているセルゲイ・スロビキン司令官からの報告に基づくという。政治的な立場から見る人は否定的だが、軍事的な視点から見る人は肯定的に評価している。 NATOが指揮している「ウクライナ軍」はヘルソンよりドニエプル川の上流にあるカホフカ・ダムに対する砲撃を続け、破壊を目論んでいるとも言われている。爆破に「汚い爆弾(放射性物質爆弾)」を使うという情報もあった。ダムが破壊されると下流のヘルソンも洪水に襲われて少なからぬ犠牲者が出ることが予想される。ドニエプル川西岸にいたロシア軍への補給が厳しくなっていた。そこで11万5000人以上の住民を避難させた上で部隊も撤退させたわけだ。住民が残っているとキエフ政権側のネオ・ナチに虐殺される可能性がある。 この撤退命令に対し、アメリカ/NATO/キエフ側は慎重な見方をしているようだ。これまでもロシア軍が撤退することはあったが、そこへ部隊を入れるとミサイルや航空兵力で攻撃され、多くの戦死者が出ている。ヘルソンからクリミアを砲撃できるともされているが、HIMARS(高機動ロケット砲システム)などを持ち込めば破壊される可能性が高い。兵士や住民のいないヘルソンへキエフ側の部隊が入れば激しい攻撃を受けることは間違いない。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、ウクライナの東部から南部にかけての地域はステップ(大草原)が広がり、隠れる場所はわずかに存在する木々の間。しかも地面はぬかるんでいた。ロシア軍は地面が凍結して木々の葉が落ちる冬を待っている。地面が凍結すれば戦車を投入することもできる。 冬に新たな軍事作戦を始める際、ロシア軍は部分的動員で集めた兵士を投入してくるだろう。動員された兵士の中で訓練をすでに受けていた約8万人は戦闘地域へ入り、そのうち5万人は戦闘に参加しているというが、訓練中の約32万人が新たに戦闘へ参加することになる。 ロシア軍に対抗してアメリカ/NATOを後ろ盾とする「ウクライナ軍」も戦車部隊を投入、大規模な戦闘が展開される可能性があるが、伝えられている情報からすると、アメリカ/NATO側が不利だ。「真珠湾攻撃」的な何かを仕掛ける必要があるだろう。アメリカ政府が時間稼ぎのために「話し合い」を演出することも考えられる。
2022.11.11
アメリカでは中間選挙の投票が終わり、集計が進んでいる。下院では共和党議員が多数を占める可能性が高いが、上院は改選議席数が少ないこともあり、全体ではどちらが多数を占めるかは微妙だ。 ジョー・バイデン政権に対する有権者の不満は大きいが、共和党は受け皿になれていない。民主党も共和党もスポンサーは同じであり、国際問題に関する政策を決めている勢力は同じ。アメリカは事実上の「一党独裁体制」の国であり、「選挙」は「民主主義」を装う儀式にすぎない。 支配階級に支配されているわけだが、2014年以降、支配階級の内部で対立が生じているようだ。この年の2月にバラク・オバマ政権はウクライナでクーデターを実行、東部と南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除した。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ウクライナの東部と南部はソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された地域で、住民の多くはロシア語を話し、東方正教会の影響を受けている。ウクライナ語を話し、カトリックの影響を受けている西部とは根本的に違うのだ。 西部に住むヨーロッパ嗜好が強い人びとは2014年2月のネオ・ナチによるクーデターを肯定的に受け止めたかもしれないが、東部や南部に住み、ロシアに親近感を抱く人びとは拒否した。西側の有力メディアは東部や南部のロシア語を話す人びとを「浄化」しようとしてきた。 ロシアとEUの間に位置するウクライナを支配することで両地域を分断してEUを植民地化、同時にロシアからマーケットを奪って弱体化させることがネオコンの目論見だったようだが、裏目に出る。EUの弱体化は進んだが、ロシアは中国に接近、両国は戦略的な同盟関係を結んでしまった。 クーデターを計画した勢力はオバマの次の大統領としてヒラリー・クリントンを考えていたと言われているが、その流れを変える出来事が2016年2月10日にあった。ヘンリー・キッシンジャーがモスクワを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談したのだ。これで流れは変わり、ドナルド・トランプが台頭してくる。 2016年11月の大統領選挙ではトランプが勝利するが、オバマ大統領はトランプが大統領に就任する直前の2016年12月、ロシアとの関係を悪化させるため、外交官35名を含むロシア人96名を追放して軍事的な緊張を高めようとしていた。その一方、「ロシアゲート」なるスキャンダルをCIAやFBIを使い、でっちあげる。 その後、オバマやクリントンを担いだネオコンは巻き返し、2020年の大統領選挙でトランプを落とし、バイデンを大統領に据えた。バイデン政権は経済戦争を仕掛け、軍事的な挑発をくり返いしたが、それだけでなくロシアと戦争する準備を進めた。これについては本ブログでも指摘した。そして今年2月のロシア軍による軍事作戦開始につながる。 この作戦はロシア軍の内部でも不満が出るほど小規模な部隊によるものだったが、4月に入るとウクライナの軍や親衛隊が敗北することは明らかになった。そこでボリス・ジョンソン英首相がキエフを秘密裏に訪問して停戦交渉を止めさせ、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官やロイド・オースチン国防長官がキエフを極秘訪問してウォロディミル・ゼレンスキ大統領と3時間ほど会談、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めるといったことを行なっている。それ以降、NATOがロシア軍との戦闘で前に出てきた。 現在、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は部分的な動員を実施すると9月21日に発表、約40万人を集めたという。すでに8万人が戦闘地域へ入り、そのうち5万人は戦闘に参加、残りの約32万人は軍事訓練を受けているという。 冬になって地面が凍結して戦闘車両の走行が容易になるのをロシア軍は待ち、そうした部隊を投入してくると見られている。当然、そうなるとNATO軍は厳しい状況に置かれてしまうので、その前に何とかしたいだろう。 中間選挙後に西側の経済状況は悪化することが予想されるが、それを誤魔化すためにもネオコンは「第3次世界大戦」へ突き進む可能性があるが、そうした動きにブレーキをかける勢力もアメリカの支配層内部に存在している。そのブレーキを外すために「汚い爆弾」を使う、あるいはダムを破壊するのではないかと懸念する人もいる。ロシア軍はそうした事態を想定して動いているようだ。
2022.11.10
11月8日はアメリカ中間選挙の投票日である。下院議員435名全員、上院議員100名のうち35名が決まるのだが、事前の世論調査によると、民主党は大敗する可能性が高かった。経済問題、外交問題、軍事問題は相互に深く関係しているが、人びとの批判が強い分野は経済だと言えるだろう。支配層は統計を利用して誤魔化してきたが、富が一部の人びとに集中して社会は崩壊しつつある。その流れに拍車をかけたのが「COVID-19対策」、そしてロシアに対する経済戦争だ。 投票が始まると、予想されていたことではあるが、機械の故障が報告されている。(例えばココやココやココやココ)そうした報告をまとめている記事もある。アメリカ支配層にとって都合の悪い結果をもたらす他国の公正な選挙をインチキだと西側の有力メディアは罵るが、アメリカの選挙がインチキだと考える人は少なくない。 現在、アメリカではネオコンが外交や軍事に関する政策を決定している。そうした形が明確になったのは1991年12月にソ連が消滅した後。1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で作成された世界制覇プランに基づいて政策は決められていく。 ソ連が消滅、ボリス・エリツィンの下でロシアは米英支配層の属国になり、ネオコンたちはアメリカが「唯一の超大国」になったと認識、世界制覇に向かって動き始めたのだ。冷戦の終結で世界は平和になると考えていた人びとは冷戦の本質を見誤っていた。 その当時のアメリカ大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー。ポール・ウォルフォウィッツ国防次官が中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。ライバルだったソ連が消滅したことからヨーロッパや東アジアは叩くべき潜在的なライバルとなり、エネルギー資源のある中東で従属度の足りない体制は破壊の対象になった。 潜在的なライバルの中でも特にアメリカが危険視していた相手は中国で、その中国を倒す手先として日本は位置付けられる。そもそも日本の「近代化」は中国を侵略するために米英が進めたことだ。 そこでアメリカの戦争マシーンに取り込もうとするのだが、細川護煕政権は国連中心主義を捨てず、1994年4月に倒される。1995年2月には国防次官補だったジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表。そこには10万人規模の駐留アメリカ軍を維持するだけでなく、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。 その年の3月には「地下鉄サリン事件」が引き起こされ、その直後に警察庁長官だった國松孝次が狙撃されている。8月にはアメリカ軍の準機関紙であるスターズ・アンド・ストライプ紙に日本航空123便に関する記事が掲載されたた。その記事の中で自衛隊の責任が示唆されている。日本政府は脅されたように見える。その20年後、2015年6月に安倍晋三首相は赤坂にある赤坂飯店で開かれた懇親会で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと伝えられている。 そして2001年9月11日にアメリカの支配システムを大きく変化させる出来事が引き起こされた。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのだ。その攻撃を利用してアメリカは収容所化、あるいはファシズム化が一気に進む。 そうした政策を進めたジョージ・W・ブッシュ大統領は2000年の選挙で選ばれたが、この選挙では正体不明の「選挙監視員」による投票妨害が報告されているほか、旧式の機械やバタフライ型投票用紙で投票が正確にカウントされていない可能性が指摘されていた。実際の投票数と出口調査の結果が違うとも指摘された。 2000年の選挙は事実上、共和党のブッシュと民主党のアル・ゴアが争ったのだが、有権者に最も支持されていた人物は別にいた。ジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまりJFKの息子だ。当人は出馬を否定していたが、もしケネディ・ジュニアが立候補した場合、民主党と共和党以外の候補者が大統領になる可能性もあった。そのケネディ・ジュニアは1999年7月16日に不可解な飛行機事故で死亡している。 2016年の大統領選挙でも事前に投票マシーンへの信頼度が揺らいでいた。2000年の選挙でブッシュ・ジュニアを担いでいたネオコンはヒラリー・クリントンの周辺に集まり、ヒラリーを勝たせるために不正を働くと噂されたのだ。 実は、2015年6月の段階でクリントンを勝たせることが内定したとする噂が流れたが、その理由は同月の11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。流れが変わったのは2016年2月にヘンリー・キッシンジャーがモスクワを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談してからだ。 ブッシュ・ジュニアを当選させた投票では機械的なシステムが使われていたため、さまざまな痕跡が残りやすかった。電子化が進められたのは不正を容易にするためだと噂され、実際、そうしたシステムで実際の投票数と違う数字を集計結果として表示することを大学などの研究者が指摘していた。 2016年の大統領選挙から6年。技術は進歩しているだろう。
2022.11.09
アメリカをはじめとする西側諸国は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功したが、その際、クリミアとドンバス(ドネツクやルガンスク)の制圧には失敗した。両地域を欧米はクーデター体制を利用して奪おうとしている。 ノード・ストリームとノード・ストリーム2の破壊、クリミア橋(ケルチ橋)の爆破、セバストポリへの攻撃はイギリスの軍や情報機関が関与していると言われているが、それだけでなく、イギリスはウクライナ人の破壊工作部隊を組織、訓練することでウクライナの情報機関と合意していると伝えられている。 アメリカとイギリスはヨーロッパ支配の仕組みとしてNATOを組織したが、その内部に破壊工作を目的とする秘密部隊のネットワークが存在する。全ての加盟国に部隊はあるのだが、中でも有名なのは1960年代から80年代にかけて極左を装い、爆弾テロを繰り返したイタリアのグラディオだ。 そうした秘密部隊は第2次世界大戦の終盤にアメリカのOSS(戦略事務局)やイギリスのSOE(特殊作戦執行部)は「ジェドバラ」というゲリラ戦部隊を編成している。ヨーロッパでの戦争はスターリングラードでの戦いでソ連軍に敗れたドイツ軍が1943年1月に降伏した時点で事実上、終わっていた。イギリスとアメリカが動き始めるのはそれから。西部戦線でドイツと戦っていたレジスタンスはコミュニストが主体で、そのレジスタンス対策でジェドバラは組織された。 大戦後にOSSは廃止され、分析担当者は国務省へ、諜報/防諜担当者は陸軍省へ所属することになる。ゲリラ戦部隊のジェドバラの一部メンバーは軍へ移動、グリーン・ベレーをはじめとする特殊部隊の創設に関わった。(William Colby, “Honorable Men”, Simon and Schuster, 1978) しかし、ウォール街は戦争が終わっても情報機関を存続させようと画策、1946年1月にCIG(中央情報グループ)が組織された。1947年7月にはポール・ニッツェが執筆した国家安全保障法が発効、CIGの後継機関として情報の収集と分析を行うCIA(中央情報局)が設置された。 ヨーロッパでは1949年4月にNATO(北大西洋条約機構)が創設された。この軍事同盟を組織した目的はソ連に対抗することだとされているが、当時のソ連には西ヨーロッパへ攻め込む能力はなかった。その内部へジェドバラ人脈によって作られた秘密部隊が入り込んだのである。その部隊は1951年からCPC(秘密計画委員会)に指揮されるようになり、57年にはその下にACC(連合軍秘密委員会)が創設された。 昨年11月、ウクライナ軍参謀長の顧問に就任したネオ・ナチのドミトロ・ヤロシュは2007年頃からNATOの秘密部隊ネットワークに参加していると言われ、イギリスの情報機関がこうした種類の秘密部隊をウクライナで編成しても不思議ではない。アメリカの統合参謀本部は今年2月当時から冷静で、バイデン政権の好戦的な政策に反対しているようだ。これは2003年にブッシュ・ジュニア政権がイラクを先制攻撃した時と同じである。
2022.11.09
アメリカで中間選挙の投票日が近づく中、ジョー・バイデン政権がウクライナでの和平交渉を裏で画策しているという話をワシントン・ポスト紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙のような支配層の広報的な役割を果たしているメディアが伝えている。 11月4日にキエフを突如訪問、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談し、4億ドルの新たな軍事援助を申し出たジェイク・サリバン国家安全保障補佐官。その人物が数カ月のわたってロシア政府と秘密交渉を続けてきたとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。CIAのサリバンはネオコンとしても知られ、バラク・オバマ、ジョー・バイデン、ヒラリー・クリントンと近い好戦派だ。 秘密交渉を行ってきたとする情報が事実かどうかは不明だが、もし事実だとするならば、状況がアメリカにとって不利になったので時間稼ぎをしたいのだろう。これはアメリカの常套手段。2014年にウクライナの東部でキエフのクーデター体制とドンバスの反クーデター派が軍事衝突した際も西側は戦況が悪いと判断、ロシアを話し合いへ持ち込み、その間に戦闘の準備を進めた。そうした手口をウラジミル・プーチン政権は学び、話し合いの申し入れがあっても信用はしないはずだ。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、2月24日にロシア軍が軍事作戦を始めて以来、ゼレンスキー政権の内部には話し合いで解決しようという動きがあり、そもそもウクライナ国民の多くはロシアとの関係修復を望んでいた。だからこそ、関係修復を訴えていたゼレンスキーが大統領選挙で当選したのだ。 ドンバスでの戦闘でウクライナの軍や親衛隊は4月に入ると壊滅必至の状態になり、ゼレンスキー政権はロシア政府と話し合う姿勢を見せている。それに対し、NATOの欧州連合軍最高司令官(SACEUR)を2013年5月から16年5月にかけて務めたフィリップ・ブリードラブは核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと4月7日に批判、その2日後にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めさせている。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺した。 4月24日にアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問、ゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、さらなる軍事面や外交面の支援を約束したと伝えられている。そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求める。 アメリカのロイド・オースチン国防長官は5月13日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣に電話し、ウクライナの即時停戦を求めたと伝えられているが、その背景にはマリウポリにあるアゾフスタル製鉄所の問題があった。 ここには内務省の親衛隊が住民を人質にして立てこもっていたが、それが限界に達していたのだ。親衛隊は5月16日に降伏、ゼレンスキー大統領は「撤退」と強弁していた。戦闘員が降伏すると知ったジョー・バイデン政権がオースチン長官に電話させ、「停戦交渉」を演出して敗北のイメージを弱めたかったのだろう。 その後、NATO軍がロシア軍との戦闘で前に出てくる。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターが指摘しているように、ウクライナ軍として戦わせるために相当数の兵士がNATO加盟国で軍事訓練を受け、最新兵器を扱えるように訓練されていた。ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたと言われている。 本当にバイデン政権がロシア政府と和平交渉を進める気があるなら、そう行動すればいい。ゼレンスキー大統領を説得する必要などない。命令すればいいだけのことである。ワシントン・ポスト紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙の「報道」は選挙を意識したプロパガンダだろう。
2022.11.08
アメリカでは11月8日に中間選挙の投票があり、その結果で内政だけでなく、外交や軍事に関する政策に大きな変化があるかもしれない。冬の到来はアメリカに従属する政策を進めてきたEU諸国の社会生活に深刻な影響を及ぼすことは不可避だ。 冬になるとウクライナ東部のステップ(大草原)では地面が凍結、木々の葉が落ちるわけだが、ロシア軍はそれを待っていた。そのタイミングに合わせて兵器をドンバス(ドネツクやルガンスク)の周辺へ兵器を移動させ、動員した兵士を訓練してきた。さまざまなことが動き出す可能性が高いのだが、いずれもジョー・バイデン政権にとって都合は良くない。そうした中、アメリカ軍の原子力潜水艦「ロード・アイランド」がスペインのジブラルタル港から離れて地中海へ入り、黒海へ向かっているという。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターも指摘していたが、すでにウクライナでドンバス/ロシア軍と戦っているのは事実上、NATO軍である。 ウォロディミル・ゼレンスキー政権は18歳から60歳の男子が出国することを禁じ、動員の対象にしているが、兵器はアメリカ/NATOが投入しているが、訓練が不十分なまま最前線へ出されているため、ロシア軍のミサイルや航空兵力による攻撃で多くの戦死者が出ている。アメリカ政府はウクライナの外で「アル・カイダ方式」を使って傭兵を集めるしかないだろう。 早い段階からアメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加していると伝えられているほか、ポーランドの正規軍やシリアのアル・タンフにあるアメリカ軍の基地で訓練を受けたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)の戦闘員がウクライナへ送り込まれているともいう。アメリカ陸軍第10特殊部隊グループはドイツで訓練の準備を秘密裏に進めているとも言われていた。アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしているが、すでに戦闘の指揮はNATOが行うようになったとも言われている。 短期的に見ると、ウクライナでの戦闘は2010年から始まる。この年の1月から2月にかけて行われた大統領選挙で東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利、7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)はキエフへ乗り込み、ヤヌコビッチに対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、拒否。そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。オバマ政権は2013年11月にクーデターを始動させ、14年2月にヤヌコビッチの排除に成功した。その時、クーデターの実行部隊として使ったのがネオ・ナチだ。 このクーデターを現場で指揮していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)。2014年2月上旬、クーデターが山場を迎える直前に彼女は電話でジェオフリー・パイアット米国大使に対し、「次期政権」の閣僚人事について話している。その中でヌランドは混乱を話し合いで解決しようとしていた「EUなんか、クソくらえ」と口にしたのだ。 ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民だが、現国務長官のアントニー・ブリンケンの父方の祖父もウクライナ出身。ヌランドもブリンケンもユダヤ系だ。ちなみに、アメリカの反ロシア戦略で重要な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキーはポーランドの生まれだが、一族の出身地ブゼザニは現在、ウクライナに含まれている。オバマはブレジンスキーの教え子だ。 オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデンもクーデターに関与していたが、その副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていた人物がジェイク・サリバン。現在、国家安全保障担当大統領補佐官として好戦的な政策を推進している。エール大学出身なので、おそらく在学中にCIAからリクルートされたのだろう。大学時代、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。 2009年にオバマ政権へ上級顧問として参加、中東から北アフリカにかけての地域で実行された体制転覆工作にも加わったマイケル・マクフォールもローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学している。2012年1月にロシア駐在大使として赴任したが、この年の3月にはロシアで大統領選挙が行われ、ウラジミル・プーチンが当選している。この選挙で反プーチンの工作をマクフォールは指揮、「ロシアのリセット」を目論んだ。ちなみに、ヒラリー・クリントンの夫、ビル・クリントンもローズ奨学生としてオックスフォード大学へ留学している。 このオックスフォード大学にある学生結社「ブリングドン・クラブ」が現在の好戦的な政策に関係していることは本ブログでも書いた。例えばボリス・ジョンソン、デイビッド・キャメロン、ジョージ・オズボーン、トニー・ブレアといった後の政治家、そして金融界に君臨しているナット・ロスチャイルド、あるいはポーランドのラデク・シコルスキー元外務大臣、ロシアを第1次世界戦争へ引き込む上で重要な役割を果たしたフェリックス・ユスポフもメンバーだった。 ローズ奨学生はオックスフォード大学の大学院生に与えられ、学費を支払うローズ・トラストは1902年にセシル・ローズの意志で創設された。ローズ奨学制度の人脈がセシル・ローズの戦略と無関係だとは考えられない。 ローズが優生学を信奉、アングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考えていたことは本ブログでも何度か触れた。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』を書いが、その中で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) こうした考えをローズは彼のスポンサーだったナサニエル・ド・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、アルフレッド・ミルナー、ロバート・ガスコン-セシル、アーチボルド・プリムローズたちへ説明したとされている。その後、プリムローズの甥にあたるアーサー・バルフォアもローズのグループへ入った。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) ここからローズ人脈が始まり、現在も世界に小さからぬ影響を及ぼしていると考える人もいる。ハルフォード・マッキンダーという地理学者が1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表したユーラシア大陸の海岸線を支配して内陸部を締め上げ、ロシアを征服するという長期戦略はローズたちの戦略でもある。 その影響を受けていた「封じ込め政策」のジョージ・ケナン、あるいは軍事クーデターや空爆を指揮してきたヘンリー・キッシンジャーでさえ反対する好戦的な軍事作戦をローズ人脈は推進してきたが、「汚い爆弾(放射能爆弾)」を爆発させ、その責任をロシアになすりつけ、ロシア征服に結びつけようという作戦はロシア側に漏れ、公表された。ローズ人脈は追い詰められているだろう。
2022.11.08
アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障補佐官が11月4日にキエフでウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談、揺るぎない支援を約束し、4億ドルの新たな軍事援助を申し出た。サリバンはジョー・バイデン政権におけるネオコンの中心的な存在だと言われている。 そのサリバンのほかロイド・オースチン国防長官やマーク・ミリー統合参謀本部議長、そして国務省や情報機関の高官と会うためにイギリスのベン・ウォレス国防相は10月18日、アメリカを秘密裏に訪問している。通信のセキュリティーに不安があったと考える人もいたが、その直後にその推測を補強する情報が出てきた。「ジョーカーDPR」と名乗るハッカー・チームがウクライナ軍の指揮統制プログラムにハッキングしたと主張したのだ。 10月23日、ロシアのスプートニクは「複数の国の信頼できる匿名の情報源」から得た情報として、キエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権がロシアを装い、「汚い爆弾(放射能爆弾)」を爆発させようとしていると報じている。西側の有力メディアを使ってロシアに責任をなすりつけ、反ロシア宣伝を世界規模で展開しようとしているとしているというのだ。その「汚い爆弾」は西側の管理下、ドニプロペトロフシクにある東部採掘加工プラントやキエフ核研究所で製造されるとする情報も伝えた。ウォレス国防相はアメリカ側と核戦争について話し合ったと推測する人もいる。 また、9月26日に「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」が爆破された際、ロシアのガスプロムはガスの流出で圧力が低下している事実を異常アラームで知った1分後、イギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったことが判明。この通信をロシア側は傍受していたと見られている。そのトラスは10月25日に突如辞任、10月29日にロシア国防省はノード・ストリームを破壊したのはイギリス海軍だと発表した アメリカのジョー・バイデン大統領は大統領に就任してから間もない昨年3月16日、ABCニュースの司会者からウラジミル・「プーチンは人殺しだと思うか?」と問われ、「その通り」と答えている。それ以降、バイデン政権はロシアや中国に対する経済戦争を開始、軍事的な挑発を強めていった。 アメリカ/NATO軍は昨年の3月から6月にかけて「デフェンダー-ヨーロッパ21」、5月から6月にかけて「ステッドファスト・でフェンダー2021」、そして11月から12月にかけて「ポラリス21」と名付けられた軍事演習を実施。ポラリスでは23隻の艦船、潜水艦1隻、65機の航空機、NATOに加盟する6カ国から約6000名が参加して地中海を制圧することを目的にしていた。アメリカ/NATOの挑発でロシア軍がウクライナへ軍事侵攻した場合、フランスの空母艦隊がロシアを攻撃、イギリス軍はウクライナの海軍基地へ入港でき、そこをロシア攻撃の拠点として使えることになっていたと報道されている。 こうした対ロシア戦争の準備を指揮していたのはサリバン保障補佐官のはず。そのサリバンがキエフへ乗り込み、ゼレンスキーに「揺るぎない支援」を約束したのは、当初の計画が崩れたからかもしれない。
2022.11.07
アメリカ軍と韓国軍は10月31日から11月4日の予定で約240機の航空機が酸化する合同軍事演習「ビジラント・ストーム」を始めたが、途中で延長を決め、5日にアメリカ軍は2機の戦略爆撃機B1Bを韓国上空を飛行させた。米韓は10日まで演習を続けるようだ。勿論、アメリカにとって朝鮮は大きな脅威ではなく、東アジアでの軍事的な緊張を高め、中国を威嚇することが真の目的だろう。 この軍事演習を挑発、あるいは恫喝と捉えた朝鮮は11月2日に短距離弾道ミサイル約17機以上を日本海や黄海へ向けて発射、米韓と朝鮮の威嚇合戦が始まった。4日には朝鮮領内で約180機の航空機が飛行し、韓国が80機を緊急発進させたという。そしてB1B爆撃機の飛行が決まった。 アメリカ軍が東アジアにおいてどのような戦略に基づいてい動いているかはアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が今年出したレポートにその一端が示されている。 それによると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画しているのだが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にない。現在、アメリカと合同軍事演習を実施している韓国も日本ほどには従順でないようだ。 しかし、日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そのため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになり、そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成された。 日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにすると読売新聞は伝えている。地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だという。 その計画を先取りするような形で自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。 ところが、アメリカが想定していたより世界の軍事的な緊張が高まった、あるいはアメリカの戦略通りに物事が進んでいないためなのか、日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だという。 東アジアの軍事的な緊張を高める切っ掛けを作ったのは日本政府だ。日本と中国が友好的な関係を築くため、田中角栄と周恩来は尖閣諸島の領有権問題を棚上げにすることで合意、2000年6月には日中漁業協定を発効させた。尖閣諸島が含まれる海域における漁船の取り締まりは漁船が属す国の当局が取り締まり、相手国の漁船の問題は外交ルートを通じて注意喚起するとされたのだ。 ところが、2010年6月に菅直人政権はこの合意を潰す。「解決すべき領有権の問題は存在しない」とする答弁書を閣議決定したのだ。この決定に基づいて海上保安庁は尖閣諸島周辺の海域における警備基準を日中漁業協定基準から国内法基準に変更。海上保安庁の巡視艦が中国漁船を取り締まり、衝突事件に発展したのである。海上保安庁は国土交通省の外局だが、その当時の国土交通大臣は前原誠司だ。 閣議決定の4カ月前、アメリカの国務次官補だったカート・キャンベルが来日、前原と会談したと言われている。ジョー・バイデン政権における「対アジア政策」、事実上の対中国政策の責任者はキャンベルだ。 菅直人政権が東アジアに火をつけた2010年の11月22日、韓国軍は30日までの予定で軍事演習「ホグク(護国)」を始めた。約7万人の韓国兵が動員され、ヘリコプター90機、軍艦50隻、航空機500機などが参加するという大規模なものだったが、アメリカの海兵隊や海軍は「スケジュールの都合」で参加しないと事前に発表されていた。ところがハンギョレ新聞によると、沖縄を拠点とする第31MEU(海兵隊遠征隊)や韓国駐留の第7空軍が参加している。(ハンギョレ新聞、2010年11月24日) それに対し、朝鮮軍は11月23日に大延坪島を砲撃して家屋が破壊される。その際、2名の韓国兵と民間人2名が死亡した。これを受け、アメリカ軍は横須賀から空母ジョージ・ワシントンを黄海へ派遣。同空母のほか7300名と約10隻の艦船による米韓合同の軍事演習が11月28日から12月1日にかけて展開された。演習には日本からオブザーバーが派遣されている。 12月3日から10日にかけては、日米合同の軍事演習が韓国の近くで実施された。過去最大の演習で、日本からは約3万4000名の自衛官、40隻の軍艦、250機の航空機が、またアメリカからは1万名以上の兵士と軍艦20隻、航空機150機が参加、韓国からはオブザーバーが来ていたという。 これに対し、朝鮮側が軍事的な緊張を望んでいないことを示す情報が内部告発支援サイトのウィキリークスを通じてもたらされた。2010年に同サイトが公表したアメリカの外交文書(A/S CAMPBELL’S MEETING WITH ROK UNIFICATION MINISTER HYUN IN-TAEK, 24 July 2009)によると、韓国の玄仁沢統一相は2009年7月20日にカート・キャンベル米国務次官と会談、朝鮮の金正日総書記の健康状態や後継者問題などについて説明している。 それによると、膵臓癌の噂は根拠がないとしたものの、金総書記の健康は徐々に悪化しているため、余命はあと3年から5年、つまり2015年以後も生きている可能性は低いと語り、そこで息子の金正恩への継承が急ピッチで進んでいると分析している。 また、朝鮮の国内情勢については安定しているとしたが、食糧不足が深刻で経済は混乱し、1996年から97年にかけての危機よりも悪い状態だと説明、現金を得るために朝鮮は核技術を売るのではないかと玄統一相は推測している。 この会談で玄統一相は10月に朝鮮は話し合いに復帰すると見通していたのだが、朝鮮側の主張では、その10月に韓国の艦艇が1日に10回も領海を侵犯、そして11月の交戦につながる。玄統一相の説明に基づけば、この段階で朝鮮が各国との関係を悪化させる理由は希薄。朝鮮を利用して東アジアを不安定化させようとする勢力がいるということだろう。 玄統一相も金正日の死後、朝鮮国内が混乱すると見ているが、その混乱に乗じて朝鮮を軍事的に制圧するという作戦がOPLAN5027やCONPLAN5029。アメリカ軍は朝鮮の崩壊を前提とした軍事侵攻を想定した作戦を立てていた。そのために日米韓の軍事的な連携を強めようとしていたが、その先には中国制圧計画があるはずだ。この計画が消えたとは思えない。
2022.11.06
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は10月28日現在、前の週より118名増えて3万1771名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている COVID-19騒動は「パンデミック」の定義を変更するところから始まった。2009年1月から10年8月にかけて「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行した際にもWHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言したが、それは通常のインフルエンザより穏やかだった。それにもかかわらずパンデミックを宣言できたのはパンデミックの定義が変更され、多くの死亡者が存在する必要がなくなったからにほかならない。COVID-19で死亡した人の数や患者数も定義などによって大幅に水増しされた。 それに対し、「COVID-19ワクチン」の副作用によって死亡したり障害が生じたりするケースは隠されている。「ワクチン」の接種が本格化した直後から帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告されるようになり、2021年4月から心筋に炎症を引き起こす事例が見つかり始めた。 また、この病気で死亡されたとされる人の大半は高齢者で、心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍(癌)、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていることが早い段階から指摘されていた。何が本当の死因かわからないにもかかわらず、COVID-19が死因とされたのだ。そうしたことが広がった原因は2020年4月にWHOやCDCが出した通達にある。死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として良いとしたのだ。本来ならさまざまな病名が付けられたであろう人をCOVID-19の患者に仕立て上げるために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査も利用され、「無症状感染者」なる概念も導入された。 早い段階からLNP(脂質ナノ粒子)によって卵子に悪影響が及ぶと懸念されていたが、ここにきて精子にもダメージを与えると言われるようになった。しかも遺伝する恐れがある。一時的に精子の濃度や運動性が低下するという研究報告があるのだ。 時間が経過するにつれて「ワクチン」の危険性が明確になってきたのだが、それにもかかわらず接種を強要する動きがある。例えばアメリカのハーバード大学では2023年1月から学生に「ブースター接種」を強制すると伝えられている。 また、LNP自体が人間の免疫システムに重大な変化を及ぼし、免疫力を低下させ、しかもその影響が遺伝する可能性があるとする報告もある。「COVID-19ワクチン」は接種回数が増えるほど免疫力を低下させていくとも言われてきた。東京理科大学の村上康文名誉教授が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅したという。 「COVID-19ワクチン」の中で最も広く使われているmRNAを使ったタイプの場合、接種後に癌が多発していると言う人もいる。免疫が低下すれは必然的に癌が増えるわけで、当然のことだろう。
2022.11.05
ウクライナの東南部にはステップ(大草原)が広がっている。そこは現在ぬかるみ状態だが、冬になると凍結して戦闘車両が移動しやすくなるほか、木々の葉が落ち、ステップへ入り込んだ部隊は隠れられなくなる。ぬかるみの中へ入ってしまったウクライナ兵はロシア軍のミサイルや航空兵力による攻撃で多くの戦死者が出ているようだ。今後、アメリカやイギリスの情報機関はアル・カイダ方式で傭兵を集めることになるのだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、ドンバスで戦っていたウクライナの軍や親衛隊は4月から5月にかけての時期に壊滅状態の状態になり、アゾフスタル製鉄所の解放でゼレンスキー政権による対ロシア戦争の第1幕は終わったのだ。 そうした流れの中、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア政府と話し合う姿勢を見せるが、それを止めるため、ボリス・ジョンソン英首相は4月9日にキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めるように命じた。その2日前にはフィリップ・ブリードラブ元欧州連合軍最高司令官(SACEUR)が核戦争を恐怖するなと主張している。 4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と脅し、4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問してゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、さらなる軍事面や外交面の支援を約束したと伝えられている。そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求める。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターが指摘しているように、ロシア軍と戦わせる相当数の兵士がNATO加盟国で軍事訓練を受け、ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたと言われている。またアメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしているが、すでに戦闘の指揮はNATOが行うようになったとも言われている。 すでにウクライナにおける戦闘はロシア軍とNATO軍によって行われ始めている。「ウクライナ軍が勝っている」という御伽話を信じている人にはピンとこないかもしれないが、核兵器が使われても不思議ではない状況になりつつある。 冬の攻勢を前にロシア軍はウクライナの通信やエネルギーに関する施設を空や海からの長距離精密ミサイルで攻撃、既にエネルギーの供給能力を50%低下させたという。その目標は変電所や送電システム。再建の手間を考え、発電所は破壊されていないようだ。電力の供給力が低下したことで上下水道も機能しなくなり、キエフの80%で水道が止まっていると言われている。アメリカ/NATOが提供した防空システムが機能していない。 この後、ロシア軍が新たな軍事作戦をスタートさせた場合、支配地を拡大させることが予想され、オデッサを含む南部を制圧される可能性がある。そうなるとウクライナは海へ出られなくなってしまう。 昨年6月21日にウクライナとイギリスは2隻の掃海艇や8隻の小型ミサイル艇をイギリスがウクライナへ売ることで合意、国会とアゾフ海に面した場所に軍事基地を作ることが要請された。ふたつの基地はNATOの艦船がウクライナの地上軍が集結していたオデッサやマリウポリを守るために使うつもりだったと推測されている。すでにマリウポリはロシア軍が解放したので、オデッサしか残っていない。 合意の2日後、つまり23日にオデッサを出港したイギリス海軍の駆逐艦「ディフェンダー」がクリミアへ接近、ロシアが定めた領海を侵犯して境界線から3キロメートル内側を20分にわたって航行した。ロシア国防省によると、ロシアの警備艇は2度警告の銃撃を行ったが、それでも進路を変更しない。そこでSu-24戦術爆撃機が飛来して艦船の前方へ4発のOFAB-250爆弾を投下、ディフェンダーはすぐ領海外へ出たという。これは模擬弾でなく実戦用だった。 そして昨年11月18日から12月3日、フランス海軍を中心とするNATOの軍事演習「ポラリス21」が地中海で実施された。フランスのほかアメリカ、スペイン、ギリシャ、イタリア、そしてイギリスが参加している。敵の「メルキュール」がロシアを意味していることは明らかで、ロシアとの戦争を想定している。 そして今年2月19日、ウクライナの政治家オレグ・ツァロフは緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を「浄化」しようとしていると警鐘を鳴らしていた。 そのころにウクライナ軍によるドンバスへの攻撃が激しくなり、2月24日にロシア軍は軍事作戦を開始、ウクライナ側の機密文書を回収している。それによると、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日にドンバスへの攻撃を命令する文書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。その作戦にNATOも参加する予定だった可能性がある。 ロシア軍とNATO軍の戦いという様相が強まる中、9月26日から27日にノード・ストリームとノード・ストリーム2から天然ガスの流出が発見された。ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だ10月29日に発表している。 ロシアのガスプロムはガスの流出で圧力が低下している事実を異常アラームで知ったが、その1分後、イギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったことが判明している。 10月8日にはクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)で爆破事件があり、自動車用道路の桁ふたつが落下、ディーゼル燃料を運んでいた列車7両に引火した。当初、トラックに積まれていた爆発物による自爆テロだと見られていたが、トラックはダミーで、橋に爆弾が仕掛けられていたという情報もある。 爆弾テロを実行したのはウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとロシア政府は主張しているが、計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報も流れている。また爆弾の運搬に穀物の輸送船が使われたとも言われている。 そして10月29日の早朝、そのセバストポリをキエフ政権が9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦による攻撃を受けた。ロシア政府はUAVも無人艦も全て破壊したと発表した。 ロシア政府によると、攻撃を実行したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センター隊員だが、その隊員を訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。駐英ロシア大使も黒海艦隊への攻撃にイギリスが関与していると批判している。イギリスはウクライナでの戦争に深く関与しすぎたとロシア政府は考えているようだ。
2022.11.05
アメリカ軍と韓国軍が10月31日から11月4日にかけて実施している合同軍事演習「ビジラント・ストーム」にはアメリカから約100機、韓国から約140機の航空機が参加、そこには岩国基地からアメリカ海兵隊のF-35B戦闘機も含まれていると伝えられている。この軍事演習を挑発、あるいは恫喝と捉えた朝鮮は11月2日に短距離弾道ミサイル約17機以上を日本海や黄海へ向けて発射したほか、ICBMも1機発射したようだ。 東アジアはすでに台湾で軍事的な緊張が高まっている。アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が8月2日に台湾を強硬訪問、蔡英文総督と会談して「ひとつの中国」政策を否定したところから状況は急速に悪化している。この政策はリチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問した時に合意したルールで、その後の米中関係を支えてきた。そのルールを破った以上、米中関係は悪化せざるをえない。 ニクソンは1953年、40歳の若さでドワイト・アイゼンハワー政権の副大統領に就任している。大抜擢だったのだが、その理由は闇資金の調達にあったと信じられている。月刊誌「真相」の1954年4月号によると、その原資は闇ドルの取り引きで蓄積された儲けだった。 アイゼンハワーは第2次世界大戦の終盤、ヨーロッパ戦線におけるアメリカ軍の司令官を務め、ノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)を指揮したが、すでに戦争の帰趨は決していた。1942年11月にドイツ軍25万人がスターリングラードで完全包囲され、1943年1月に生き残ったドイツ軍将兵9万1000名が降伏した時点でドイツの敗北は決定的だった。 それまで傍観していたイギリスやアメリカは慌てて動き始め、1943年1月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談、「無条件降伏」という話が出てきた。この条件はドイツの降伏を遅らせる一因になり、米英にはソ連対策を講じるための時間的な余裕ができたわけだ。 米英両軍は1943年7月にシチリア島上陸作戦を敢行、ハリウッド映画で有名なノルマンディー上陸作戦は1944年6月だ。つまりアイゼンハワーはドイツ軍との戦いで大したことをしていない。 1944年はアメリカで大統領選挙があり、ルーズベルトが勝ったのだが、副大統領選びで揉めた。ルーズベルトは同志的な存在で反帝国主義者のヘンリー・ウォーレスを望んだのだが、民主党幹部の意向で反ソ連のハリー・トルーマンに決まった。 選挙で勝利したルーズベルトは1945年4月12日に急死、トルーマン副大統領が昇格。その翌月にドイツは降伏、その直後に帝国主義者のチャーチルはソ連への奇襲攻撃を目論み、JPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、攻撃を始めるのは1945年7月1日。アメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。この作戦が発動しなかったのは、参謀本部が5月31日に計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) この作戦を無用にした別の理由が7月16日にニューメキシコ州のトリニティ実験場で実施されたプルトニウム原爆の爆発実験。この実験の成功で原爆製造への道が開け、正規軍による奇襲攻撃の必要がなくなったのである。広島や長崎の民間人に対して原爆を使う許可を出したトルーマンは反ソ連のチャーチルやアイゼンハワーに支えられていた。 大戦後もチャーチルはアメリカにソ連を核攻撃するように何度か求め、アメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃計画を立てた。たとえばアメリカのSAC(戦略空軍総司令部)は1954年、600発から700発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという作戦を作成。300発の核爆弾をソ連の100都市に落とすという「ドロップショット作戦」も計画されている。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、統合参謀本部のライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったカーティス・ルメイなどは1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。この攻撃を成功させるためにもアメリカ軍はキューバを制圧する必要があったのだ。キューバからなら中距離ミサイルでアメリカに反撃できる。これが「キューバ危機」の背景だ。 この先制核攻撃計画を阻止したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日に暗殺されたが、彼の死を利用して戦争を始める目論見は失敗している。 アイゼンハワーはチャーチルと同じように反ソ連の帝国主義者。その副大統領だったニクソンも考え方は同じだ。そのニクソンが中国との関係修復に動いた背景にはベトナム戦争の泥沼化があっただろうが、ソ連と中国を分断してソ連に攻撃を集中させたかったと考えるべきだ。 ちなみに、アメリカは中国と日本が手を組むことを当時も今も恐れている。ドイツとソ連/ロシアの接近を嫌うのと同じだ。日本と中国との友好関係を築いた田中角栄が危険視されたのは必然だと言える。 それはともかく、ニクソンは中国と友好的な関係を結んだ。それをアメリカの好戦派は壊してしまったが、その前段階にロシアと中国との接近がある。 ロシア憎しが先行して2014年2月にネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを成功させたが、それが原因でロシアは中国へ向かい、アメリカのやり口を見た中国もロシアと手を組んだ。アメリカは中国とロシア、両方と戦わざるをえない状況に陥ってしまった。 ここにきてアメリカ支配層の内部対立が顕在化している理由はそこにあるだろうが、ネオコンやその背後にいる勢力はロシアと中国に勝たなければならない。勝てなければ破滅が待つ。どのようなことをしても負けるわけにはいかないと彼らは考えているだろう。
2022.11.04
アメリカは日本や韓国と合同軍事演習を実施する一方、オーストラリアにある軍事基地へ6機のB-52爆撃機を配備しようとしていると伝えられている。中国に対する核攻撃を想定しているとしか考えられない。実際、アメリカは原子爆弾が完成した直後からソ連/ロシアや中国への先制核攻撃を計画してきた。そもそも沖縄が軍事基地化されたのは、そのためだ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、アメリカはGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画している。ところがインド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないという。 アメリカは2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ変更した。日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを領海域をつなぐ場所にするとしたが、インドはアメリカとの距離を置く一方、ロシアへ接近、中国との関係も改善されつつある。インドネシアもアメリカの思惑通りには動いていない。 しかし、日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになった。そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画のようだ。 日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにすると読売新聞は伝えている。地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だという。 その計画を先取りするような形で自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。 ところが、ここにきて日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だと伝えられた。アメリカ政府も応じる姿勢を示していると読売新聞は伝えている。実際のところ、アメリカに命令されたということだろう。 トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。記事では「反撃能力」が強調されているが、このミサイルには言うまでもなく先制攻撃能力がある。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。こうした話が出てきたと言うことは、今年初頭より事態が切迫しているのかもしれない。 しかし、ロシアとの関係を強めている中国にトマホークが通用するかどうかは不明だ。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍に所属する2隻の駆逐艦、ポーターとロスからトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したが、その際、約6割が無力化されているのだ。ロシアの防空システムS-300やS-400だけでなく、ECM(電子対抗手段)で落とされたとも言われている。 翌年の4月にもトランプ政権は巡航ミサイルでシリアを攻撃する。この時はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のミサイルを発射したが、今度は7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったようである。 中国が先制攻撃するという想定なら、沖縄に建設されつつある自衛隊の基地はミサイルを発射する前に破壊される。そうした場所へ射程距離が1000キロメートルを越す攻撃的なミサイルを配備するということは、中国に対する先制攻撃を考えているとしか思えない。先制攻撃すれば、その直後に報復攻撃で沖縄の基地は破壊されるだろう。 中国との戦争を想定、グアムの基地より遠いマリアナ諸島のテニアン島にアメリカは新しい空港を建設しているが、規模は限定される。そこでオーストラリアが対中国戦争の拠点になるはずだ。そこへアメリカ軍はB-52爆撃機を配備する。
2022.11.03
ロシア軍は地面が凍結し、木々の葉が落ちる冬に新たな軍事作戦を始めると見られているが、その前にウクライナの通信やエネルギーに関する施設を空や海からの長距離精密ミサイルで攻撃している。 すでにエネルギーの供給能力を50%に低下させたというが、その目標は変電所や送電システム。再建の手間を考え、発電所は破壊されていないようだ。電力の供給力が低下したことで上下水道のシステムも機能しなくなり、キエフの80%で水道が止まっていると言われている。アメリカ/NATOが提供した防空システムが機能していないわけで、「カタログ性能」は良くても実戦では使えないとも言えるだろう。 ウラジミル・プーチン露大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表、義勇軍と動員で約30万人が新たに投入されると言われているが、新たに動員された兵士は訓練中で、大半は前線に出てきていないようだ。冬の到来に合わせているのだろう。 しかし、ウクライナとの国境周辺への兵器輸送をロシア軍は開始。その様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上にアップロードされているが、その中にはT-90M戦車や防空システムのS-400が含まれていた。 現在、行われているミサイル攻撃は指揮体制の変更が影響している可能性がある。ロシア軍の西部軍管区司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統括指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将が任命され、またチェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えられた。 いずれも実戦経験が豊富で、プーチンから信頼されていると言われている軍人だが、さらに「ワグナー・グループ」も注目されている。傭兵会社だが、戦闘員の多くはロシア軍の特殊部隊出身のようで、事実上、プーチン大統領の直属部隊だとも言われている。 ロシア軍は2月24日にウクライナで軍事作戦を始めたが、投入された戦力は大きくなかった。十数万人から多くても30万人程度だと推測され、キエフ政権側の半分から数分の1だと見られている。それでもウクライナの軍や親衛隊は4月に入ると壊滅必至の状態になり、ゼレンスキー政権はロシア政府と話し合う姿勢を見せる。 それに対し、NATOの欧州連合軍最高司令官(SACEUR)を2013年5月から16年5月にかけて務めたフィリップ・ブリードラブは核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと4月7日に批判、その2日後にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフを秘密裏に訪問、停戦交渉を止めさせている。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺した。 ウクライナ国内における和平を求める声を封じ込めるため、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と脅し、4月24日にはアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官がウクライナのキエフを極秘訪問、ゼレンスキー大統領と3時間ほど会談、さらなる軍事面や外交面の支援を約束したと伝えられている。そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求める。 アメリカのロイド・オースチン国防長官は5月13日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣に電話し、ウクライナの即時停戦を求めたと伝えられている。住民を人質にしてマリウポリのアゾフスタル製鉄所に立てこもっていたウクライナ内務省の親衛隊などの兵士が5月16日に降伏、ゼレンスキー大統領は「撤退」と強弁していた。戦闘員が降伏すると知ったジョー・バイデン政権がオースチン長官に電話させ、「停戦交渉」を演出して敗北のイメージを弱めたかったのだろう。 その前から人質になっていた住民がアゾフスタル製鉄所から脱出。そのひとりであるナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまった。彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。 シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、ロイターが流した映像は編集で1分間に短縮され、アメリカのジョー・バイデン政権やウクライナのゼレンスキー政権にとって都合の悪い部分が削除されていた。有力メディアやインターネットを支配するハイテク企業による検閲だけでは住民の証言を封印しきれなくなったのだろう。 アゾフスタル製鉄所の解放でゼレンスキー政権による対ロシア戦争の第1幕は終わったが、戦争は終わらない。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターが指摘しているように、ウクライナ軍として戦わせるために相当数の兵士がNATO加盟国で軍事訓練を受け、最新兵器を扱えるように訓練されていた。ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたと言われている。ウクライナ軍とロシア軍との戦いからNATO軍とロシア軍との戦いへ変化したということだ。 8月31日から9月2日にかけてプラハで開かれた「フォーラム2000」ではアナレーナ・ベアボック独外相は「ドイツの有権者がどのように考えようとも、私はウクライナの人びとを支援する」と発言している。実際のところ、人びとを支援するのではなく、ロシアとの戦争を継続するということだ。 アンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長は9月13日、「キエフ安全保障協定」の草案を発表した。軍需産業への投資、兵器輸送、同盟国からの情報活動の支援、徹底した軍事訓練、EUやNATOの一員として合同軍事演習に参加するといったことを勧告、ウクライナを事実上、NATOの戦争マシーンに組み込むという。 プーチン大統領は10月19日、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャに戒厳令を布くと発表した。この地域に対する攻撃をゼレンスキー政権が強めているためだが、新たなステージでウクライナの男性は「突撃要員」として扱われている。 ロシア軍がウクライナで軍事作戦を始めた直後、ゼレンスキー政権は18歳から60歳の男子が出国することを禁じ、動員の対象にした。夏以降、NATOの指揮下、動員されたウクライナの兵士は訓練が不十分な段階で突撃させられ、ロシア軍のミサイルや航空兵力による攻撃で多くの戦死者が出ている。その際、兵士の数で劣るロシア/ドンバス軍は包囲される事態を避けるために撤退していた。 アメリカ/NATO軍はウクライナ人の死を気にしていない。4月5日にゼレンスキー大統領は自分たちが「大きなイスラエル」になると宣言したが、イスラエルは先住のアラブ系住民を虐殺、追放して作り上げた国。ゼレンスキーを含むウクライナのクーデター体制の人びとは東部や南部に住むロシア語系の人びとを皆殺しにしようとしてきたが、それ以上の殺戮を考えていたのかもしれない。 ここにきてアメリカやイギリスの支配層を震撼させる新たな事実が発覚した。両国の機密情報がロシア側へ漏れている可能性が出てきたのである。たとえば9月26日に「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」が爆破された際、ロシアのガスプロムはガスの流出で圧力が低下している事実を異常アラームで知ったが、詳しい状況を理解できていなかった。ところがアラームが鳴った1分後、イギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったことが判明している。 イギリスのベン・ウォレス国防相は10月18日にアメリカを秘密裏に訪問、国務省や情報機関の高官のほかロイド・オースチン国防長官やマーク・ミリー統合参謀本部議長と会談、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官と会ったというが、その際、なぜ電話でなく直接会いに行ったのかが話題になった。通信のセキュリティーに不安があったので直接会いに行ったと解説する人もいたが、それが事実だった可能性が強まっている。 ロシアのメディア、スプートニクが10月23日、「複数の国の信頼できる匿名の情報源」から得た情報として、ゼレンスキー政権が「汚い爆弾(放射能爆弾)」を爆発させ、欧米が支配している有力メディアを使ってロシアに責任をなすりつけ、反ロシア宣伝を世界規模で展開しようとしていると報じた。その「汚い爆弾」は西側の管理下、ドニプロペトロフシクにある東部採掘加工プラントやキエフ核研究所で製造されるともしていた。 10月25日にトラスは首相を辞任、10月29日、ロシア国防省はノード・ストリームを破壊したのはイギリス海軍だと発表。ここにきて「ジョーカーDPR」と名乗るハッカー・チームがウクライナ軍の指揮統制プログラムにハッキングしたと主張している。
2022.11.03
ロシアからドイツへバルト海経由で天然ガスを運んでいた天然ガスのパイプライン、「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」が9月26日に爆破された。ガスが流出して圧力が低下、その事実をロシアのガスプロムは異常アラームで知るのだが、詳しい状況は理解できなかった。ところがアラームが鳴った1分後にイギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。そしてポーランドのラデク・シコルスキー元外務大臣は「ありがとう、アメリカ」とツイッターに書き込んだ。今では削除されているようだが、その事実は消せない。 このシコルスキーは1980年代の前半にオックスフォード大学へ留学し、その際に学生の結社「ブリングドン・クラブ」へ入ったことは本ブログでも書いた通り。メンバーの多くはイートン校の出身だが、大酒を飲み、素行の悪いことで知られている。 大金持ちの家に生まれた不良が集まっているように見えるが、その歴史は古く、創設されたのは1780年。シコルスキーと同じ1980年代のメンバーにはボリス・ジョンソン、デイビッド・キャメロン、ジョージ・オズボーン、トニー・ブレアといった後の政治家、そして金融界に君臨しているナット・ロスチャイルドも含まれている。 シコルスキーは反ロシアで有名な人物だが、そのロシアからもオックスフォード大学へ留学してくる若者はいる。そうしたひとりが帝政ロシアで有力な貴族ユスポフ家のフェリックス。この人物は1909年から13年にかけてオックスフォード大学で学んだが、その時にブリングドン・クラブに入っている。留学時代、フェリックスはクラスメートのオズワルド・レイナーと親しくなるが、この人物は後にイギリスの情報機関SIS(秘密情報局、通称MI6)のオフィサーになった。 ユスポフ家が雇っていた家庭教師の中にはイギリス人もいた。その宮殿で教師の子どもとして1876年2月に生まれたスティーブン・アリーも後のMI6のオフィサーだ。ちなみにフェリックスが生まれたのは1887年3月である。 フェリックスがオックスフォードでの留学を終えた翌年の1914年には第1次世界大戦が勃発するが、ロシアの支配層は戦争に反対する大地主と参戦を主張する資本家が対立した。地主の主張を代弁していたのがグレゴリー・ラスプーチンで、そのバックにはアレクサンドラ皇后がいた。 ロシアを参戦させたいイギリス政府はロシアの資本家と手を組んでいたが、社会主義革命の前に資本主義革命を行わなければならないと信じる勢力もつながっていた。この「革命勢力」にボルシェビキは含まれていない。ウラジミル・レーニンなどボルシェビキの幹部は刑務所に入れられているか亡命していた。 そうした中、ラスプーチンは腹を刺されて入院、その間にロシアは参戦を決めたが、退院後もラスプーチンは戦争に反対する。1916年の後半に入るとフランス軍やイギリス軍は疲弊、ロシア軍を離脱させるわけにはいかない。 その年にイギリス外務省はサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣、そのチームにはステファン・アリーとオズワルド・レイナーも含まれていた。ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月の終わりから11月半ばにかけて6回にわたり運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 1916年12月にラスプーチンは暗殺されたが、殺害に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。 そして1917年3月の「二月革命」でロマノフ朝は倒され、成立したのが臨時革命政府。この政府は戦争を継続、ドイツは両面作戦を続けなければならない。そこで目をつけたのが即時停戦を主張していたレーニンのボルシェビキ。ドイツ外務省はボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運んでいる。レーニンが帰国したのは1917年4月だ。ボルシェビキが実権を握ったのは11月の「十月革命」であり、1917年にあったふたつの革命を一緒くたにし、単純に「ボルシェビキ革命」と表現することは正しくない。何者かがミスリードしようとしているのかもしれない。 ボルシェビキ政権はドイツの思惑通りに即時停戦を宣言、その後、ドイツで米英金融資本から資金的な支援を受けていたナチスが台頭するまでドイツとソ連の関係は良かった。 ボルシェビキ政権が停戦を決めたことでドイツは西へ集中できるようになったのだが、1917年4月から参戦したアメリカが兵員を送り込み、イギリスやフランスに物資を供給して支援したことでドイツは劣勢になって敗北した。そして1918年8月にイギリス、フランス、アメリカ、そして日本などはボルシェビキ体制を倒すために軍隊を派遣して干渉戦争を始めている。
2022.11.02
アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月、ネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチはウクライナの東部と南部を支持基盤とする政治家で、アメリカは2004年から05年にかけての反ヤヌコビッチ工作、いわゆる「オレンジ革命」でこの政治家を排除している。 ヤヌコビッチがアメリカの支配層から嫌われていた理由のひとつは彼が欧米巨大資本の利権にとって目障りな存在だったからだ。ウクライナから利益を吸い上げることは勿論だが、それだけでなくEUとロシアの関係を断ち切ることも目的だった。 EUとロシアを結びつける最大の要因は天然ガスにほかならない。それを輸送するパイプラインの多くがウクライナを通過しているので、そのウクライナを支配することで天然ガスの輸送を止めてしまおうとしたわけだ。そこでドイツとロシアはウクライナを迂回するためにノード・ストリーム(NS1)とノード・ストリーム2(NS2)を建設したのだが、その2本のパイプラインが9月26日に破壊された。これはドイツへの攻撃だと言える。 パイプラインを管理しているロシアのガスプロムは異常をアラームで知るのだが、詳しい状況は理解できなかった。そのアラームが鳴った1分後、イギリスの首相だったリズ・トラスはiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。この情報は10月30日に報じられたが、その前日、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表、トラスはその4日前に辞任している。 流出(爆破)箇所はボーンホルム島の近くだが、その近く(NS1から約30キロメートル、NS2から約50キロメートル)にアメリカ海軍の強襲揚陸艦「キアサージ」を中心とする船団がいて、キアサージから飛び立ったと思われるアメリカ軍のヘリコプターが9月上旬にパイプラインの上空を飛行していたことからアメリカ軍に疑惑の目が向けられた。 6月にはNATOがバルト海で軍事演習BALTOPS22を実行、その際にボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練が行われていた。武装した無人の機雷処理用潜航艇は同じ場所で2015年11月にも発見されている。 そしてNS1/2が爆破された直後、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーは「ありがとう、アメリカ」と書き込んでいる。シコルスキーはその後、ノード・ストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書き込んだ。ロシアは再稼働できることがEUへのプレッシャーになることをシコルスキーは理解していると言えるだろう。 トラスのブリンケン宛てメッセージが報道される前日、クリミアのセバストポリにあるロシア海軍の黒海艦隊をキエフ政権は9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦で攻撃した。UAVは全て撃墜、無人艦も破壊したとロシア政府は発表している。ロシア側によると攻撃を実行したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センターの隊員で、そのメンバーを訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。この攻撃も人びとの関心をトラスのメッセージから逸らすことが目的だったのかもしれない。パイプラインの爆破はドイツに対する攻撃にほかならないからだ。 ジョー・バイデン政権がNS1とNS2を止めたがっていたことは事実。今年1月にはビクトリア・ヌランド国務次官が、2月にはジョー・バイデン大統領がパイプラインを止める意思を示しているものの、実際はアメリカ政府を後ろ盾としてイギリス政府が実行した可能性が高い。 シコルスキーはイギリスを援護しようとしたとも理解できるが、その経歴を見ると理由が浮かび上がってくる。この人物は1980年代の前半にオックスフォード大学で学んでいるが、その際、学生の結社「ブリングドン・クラブ」のメンバーに選ばれている。ボリス・ジョンソンやデイビッド・キャメロンも1980年代にこの結社のメンバーだ。このクラブの人脈は今も生きているはずだ。
2022.11.01
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