椿荘日記

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けむり男と落ちてきたお月様~4


その6


November 21, 2004
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カテゴリ: 生活
椿荘に一番の季節が訪れようとしております。

「椿荘」とは、椿好きのマリが、このHPの為に考えたサイト名であると共に、自宅に名付けた、言わば愛称で、実際に庭には数十種類の椿が植えられております。
そう広い敷地ではないのですけれど、大小取り混ぜて所狭しと植えられた椿の、早いものは既に満開で、マリがその中で最も愛して止まない二本の白玉椿は、和種が先にその美しい顔を綻ばせ、一時は枯れてしまうのではないかと心を痛める程弱ってしまっていた西洋種は、懸命の手当てで命を蘇らせ、今年は沢山の蕾を付けて、マリの期待に応えようと、蕾を膨らませて時を待っています。

大概のお花のお庭は、きっと春夏が主なのでしょうけれど、マリの椿好きゆえ、椿荘のお庭は秋から冬に掛けてが見頃のお花が多く、勿論ライラックや小手毬、紫陽花、白藤、ガーデニア、ミモザ、合歓、金木犀、銀木犀など、春から夏に掛けてのものもありますけれど、他に柳やオリーブ、月桂樹、チャボヒバなど、花の咲かない樹木も多くありますので、真夏はほぼ深緑の庭と化して、それはそれで爽やかで良いのですが、山茶花や椿の花が綻びるこの季節がやはり一番でしょうね。

マリは匂いの良いものや、白い花が好きですので、自然とそのようなお花が集まり、実は以前大きな泰山木もあったのですけれど、婚家の庭先であるこの敷地に自宅を建てる際、どうしても動かすことが出来ず、泣く泣く切ってしまったことがあり、何れは再びと考えておりますが、既にお庭は一杯で、大きくなる泰山木を受け入れることの出来る余地は残念ながら少なそうです。

そう、お庭でのんびり過ごすには気持ちの良い季節ですし、お出掛けするよりはお家に居たいので、近所のお散歩以外の外出は極力避けたく、夫なども以前はお休みになりますと、仕切りにマリと息子を遠出に誘うのですけれど、マリ達の住むこの湘南地域自体が一種の観光地で、その気になれば歩いて海にも山にも行けますので(海へは歩いて二十分程ですし、山は町営の公園として目の前にあります)、わざわざ混雑を縫って出掛けることも無く、夫もそのことに漸く気がついたようで、最近はお弁当を持って徒歩で海に行くことが気に入って、しばしば二人で出掛けます。
先達ても、小春日和の陽気に誘われ、お弁当と麦酒を持参で海に遊びに参りましたけれど、そこで思い掛けない海からの素敵な贈り物を頂いたり(「ひこいわし」が、大きなお魚に追われたらしく沢山浜に上がり、周辺の釣り人と共に大騒ぎで拾いまして、その日の美味しい夕食のおかずとなりました)、海を眺めながら夫と将来の話などしたりして、この地で暮らす幸せを満喫しております。

今日も夫の誘いで、麦酒を用意し、コンビニエンスストアでお弁当を買って、浜辺に突進です。
お天気は上々で、温かいと言うよりは寧ろ暑い位の気候に、なるべく薄着で出掛けたのですけれど、薄っすらと汗ばみ、それでも歩みを進める足取りは楽しく、夫と楽しく笑いさざめきながら目的地に向かいますと、少しして坂の向こうに青い海が見え始めました。

釣り人達を見遣りながら、適当な場所に荷物を置き、靴と靴下を脱いで裸足になりました。
日差しで暖められた海岸の石は少しも冷たくなかったのですが、打ち寄せる泡立つ波に足を付けますと思わず軽い悲鳴が漏れるほど冷たく、暖かいとは言えこの後に控える冬を思わずにはいられません。遠く水平線には幾艘もの釣り船が浮かび、右には真鶴半島、左には三浦半島が輪郭を大気に滲ませて、青空に浮かび上がります。
波間につい、この間の様な思いも寄らない海の賜物を期待し、目を凝らしたのですが、さすがにその様な幸運は今日は無く(一年を通しても、二、三回位だそうです)、時折透明な水の中で光る貝殻や、磨耗したガラス片を拾い上げては、ささやかな贈り物に微笑んでおりました。

暫し波との戯れを楽しんだ後、お弁当を広げ、麦酒で乾杯致します。
夫は来年早々、彼の今迄の仕事上に措いて、重大な決断を控え、今日に至るこの二ヶ月間というもの沈思熟慮を続け、得た結論をマリに繰り返し語ります。妻たるマリは最初から異論を唱えることは無く、長きに渡る夫への信頼を繰り返し答えるばかりです。
息子は来年早々に知らされる高校受験の結果を受け止め、今までは遠い空想だった現実の自分の将来を、彼なりに真摯に思うことでしょう。

マリは大切な家族をこれからも懸命に支え、またそれを励みに暮らせることを心から嬉しく思いつつ、古い土地柄を示す、古風な家々が立ち並ぶ路地を身近に眺め、この地に暮らせることを感謝しつつ楽しく家路を辿るのでした。






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Last updated  November 22, 2004 10:34:08 AM
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