全28件 (28件中 1-28件目)
1
家族にがん患者を抱えると、家族の感情は患者に影響されることが多い。 このためがんの治療では、痛みを取り除けるかどうかが、患者はもちろん家族の生活の質も向上させる鍵になる。 ところが慶応大などが昨年夏に実施したがん患者1634人に対するアンケートでは、痛みを感じたのは1026人(62・8%)。 痛みの治療を受けた669人のうち、「完全にとれた」のは111人(16・6%)にすぎなかった。 「痛みが我慢できる」「訴えても痛みはとれないとあきらめている」など、強い痛みにもかかわらず医療関係者に伝えない患者や、訴えてもなかなか対応してもらえなかったり、いまだに対応してもらえない患者も少数だがいた。 2007年に施行された「がん対策基本法」では、重点課題の一つとして「治療の初期段階からの緩和ケア」の推進がうたわれた。 欧米諸国に比べると医療用麻薬の使用が極端に少ないなど、緩和ケアの重要性に対する医師の認識が不十分であるという現状からだ。 このアンケートはそれを裏付ける結果になった。 がんの痛みの除去では、03~04年に全国180病院の看護師を対象にした調査がある。 看護師はがん入院患者のうち5、6割について「十分に効果あり」としている。 単純には比較できないが、患者の感じ方と医療関係者の見方には大きな隔たりがあるようだ。 がんは日本人の死亡原因のトップで、3人に1人はがんで亡くなる。 患者の視点に立った緩和ケアの充実が大切ではないだろうか。
Nov 30, 2009
今も残る風習なのかどうか。 実がもがれて寒々とした柿の木に、ぽつんと1つ実が残っているとする。 手が届かずたまたま残る場合もあるが、あえて残しておく場合、それは「木守り」という風習である。 来年もたくさん実がなるようにとのまじないだが、鳥へのおすそわけとの意味もある。 砂糖の入手が難しく柿が貴重な甘いものであった時代、自分も満たされていなかっただろうに、日本人はそんな温かい風習を生み出していた。 実が枝から姿を消し、葉も枯れて落ち始めたような寒々しいデータが相次いで発表されている。 来春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日現在)は62・5%。 昨秋までの状況から一転し、就職氷河期並みとなっている。 生活に苦しむ人の割合を示す「相対的貧困率」も15・7%。 先進国では米国に次いで経済格差があると分かった。 もちろん途上国に比べると貧困の質は異なるが、それでも心温まる話では決してない。 木守りを生み出した人々なら、これらの解決は何でもないことかもしれない。 最も利益を得ている世代がほんの少しそれを手放すと、就職口は増える。 お金持ちがさらなるお金持ちを目指さず、分配あるいは消費すると、貧困層に回る。 ただ、そんな人がどのくらい残っているか。 若者や貧しい人々に同情はするが、果実は1つ残さず自分で食べてしまう、そんな人ばかりの世の中では、あまりに寒々しい。 まちで柿の木を見掛けるたび、どうか実が残っていてと願っている。
Nov 28, 2009
師走が近い。 歳末商戦の飾り付けに忙しい街なかではそろそろクリスマスにちなむ音楽が流れ始めるころだ。 年の瀬の音楽といえばベートーベンの「第9」も浮かぶ。 クラシック音楽ならヘンデルのオラトリオ(聖譚(せいたん)曲)「メサイア」を挙げる人もいるかもしれない。 そのなかの「ハレルヤコーラス」が有名。 聴けば「ああコレか」となる。 聴衆や観衆が一斉に立ち上がって拍手することをスタンディングオベーションと言う。 「メサイア」がロンドンで初演されたとき、ハレルヤコーラスで英国王が立ち上がって拍手し、周りも倣ったのが最初、とも聞く。 ヘンデルは17世紀後半にドイツで生まれた。 同じ年に同じ国で生まれた人にバッハがいる。 バッハは終生をドイツで過ごし、ヘンデルはイタリアで修業して英国で成功した。 ともに晩年に白内障を患って同じ医者にかかったが、生涯を通じて一度も出会うことはなかったと聞く。 「音楽の父」バッハと「音楽の母」ヘンデル。 聴く機会はバッハのほうが多い。 ヘンデルと知らずに耳になじんだ曲もある。 例えばオラトリオ「マカベウスのユダ」のなかの「見よ、勇者は帰る」(勝利をたたえる歌)。 運動会の表彰式を思い出す。 聴けば誰もが「ああコレね」となる。 今でもスポーツ大会の表彰式の定番曲といっていい。 「大相撲千秋楽の表彰式でもおなじみ」と記事で読んだ(日曜日に確かめてみよう)。 今年はヘンデル没後250年。
Nov 27, 2009
身体障害者補助犬法が施行されて7年になる。 補助犬には3種ある。 視覚障害者の「目」の代わりになって助けてくれる盲導犬はよく知られている。 聴覚障害者の「耳」となって手助けする聴導犬もいる。 体が不自由で車いすを利用している人の暮らしをサポートする介助犬もいる。 盲導犬ほどには知られていない。 全国でも数は少ない。 電話やインターホンなどの音を聞き分けて知らせる。 人の「手足」の代わりにもなる補助犬は厳しい特別な訓練を受けている。 公共施設や公共交通機関などは補助犬の同伴を拒んではならない。 身障者補助犬法はそう定めている。 先週は首都圏の駅で介助犬の同伴が一時拒否された。 そんな話は早くなくさないといけない。 犬は大昔から人間にとって重要な友だちだった。 ヒトと犬の関係をもっと強く深いものにするために身障者補助犬法はできた。 漢字の不思議さを思う。 「人」という字に寄り添うように「犬」はいる。
Nov 26, 2009
ある旦那(だんな)がフグをもらったが、毒が心配で食べられない。 捨てるのも惜しいので出入りの男に毒味をさせようと、フグであることを隠し少し持たせてやった。 しばらく様子をみたが問題はないようで、これなら安心とフグを料理して食べた。 その後出入りの男が来たときに「実はあれはフグだった」と明かすと「旦那は食べましたか」と聞く。 「ああ食べたよ。うまかった」と旦那が言ったところ、男は「それなら私も帰って食べましょう」。 落語の「河豚汁」である。 フグに毒があることは、古くから知られていた。 フグの刺し身を「てっさ」、ちり鍋を「てっちり」というが、「てっ」は「鉄砲」から来ている。 フグが別名で鉄砲と呼ばれるためで、なぜかといえば「当たれば命にかかわる」とか。 それでもフグ料理を食べたくなるのは、そのおいしさゆえにだ。 ぷりぷりとした食感に、ほんのり感じられる独特のうまみはフグならでは。 ことわざにも「フグ食う無分別フグ食わぬ無分別」「フグは食いたし命は惜しし」とある。 5年ぶりにフグ中毒が発生した。 フグを扱う資格を持ったすし店で出した料理が、原因だったというから驚かされる。 料理に毒が残っていた理由は今後の調査を待つよりないが、フグ毒の恐ろしさをあらためて認識させられた。 2人が重体になっている。 早い回復を祈るばかりだ。
Nov 25, 2009
「子どもに関係のあることを行うときには、子どもにもっともよいことは何かを第一に考えなければなりません」 子どもの権利条約の第3条「子どもの最善の利益」の条文だ。 虐待や搾取を禁じ、生きる権利などを定めたこの条約は、ちょうど20年前の国連総会で採択された。 193の国と地域が締結し、日本は1994年に批准した。 子どもの保護を強める法改正を世界の国々に促し、国際機関や非政府組織(NGO)の取り組みを推進する大きな力になってきたのが、この条約である。 例えば、フィンランドでは条約に基づいて幼児教育を計画し、小、中学校のカリキュラムをつくるようになった。 バングラデシュやアフリカのブルキナファソなどでは、子ども議会を開き、虐待や搾取などを防ぐ法整備や計画づくりに生かしている。 国連児童基金(ユニセフ)は、権利条約の採択によって生まれた成果や課題を「世界子供白書 特別版」にまとめている。 それによると、5歳に満たない幼児の年間死亡者数は1250万人から900万人に減った。 初等教育を受けられない子どもは5年間で1400万人も少なくなった。 一方で、なかなか改善されない問題も残る。 生まれて1カ月のうちに死に瀕(ひん)する赤ちゃんが400万人もいる。 5億~15億人もの子どもが虐待を受け、5~14歳の1億5千万人が労働に就いている。 さらに白書は、経済危機と食料高騰が貧困や栄養不足を拡大し、気候変動や人口増が子どもの権利を脅かしていると警告する。 各国の努力と途上国への支援で、そうした事態を防ぐ必要がある。 日本では川西市が98年に子どもの人権オンブズパーソン条例を初めて制定し、子ども条例が全国の自治体で制定された。 児童虐待防止法や児童ポルノ禁止法もできた。 しかし、権利条約の理念は日本で十分に根づいているだろうか。 締約国を審査する国連子どもの権利委員会は、日本政府に子どもの一時保護をしたり、相談に応じたりする児童相談所職員の増員や、いじめへの対応、無国籍児や婚外子差別をなくすための法改正など多くの改善を勧告してきた。 子どもを「権利の主体」と認め、成長をしっかり支え、見守る仕組みを整えて欲しい。 子どもが置かれている状態は、社会のありようを映す「鏡」ともいえる。 権利条約の理念をあらためて見直し、子どもが生きやすい社会を築いていかなければならないと思う。
Nov 25, 2009
ほらな、男にはな、女房には言えないつきあいってのがあるんだよ、と世間の夫たちが妻に言ったかどうかは知らない。 平野博文官房長官が内閣官房報償費(機密費)の月別支出額を公表したが、使途については明らかにしなかった。 国と夫婦を直ちに同列には扱えないが、少なくとも夫婦には隠し事の一つや二つはあるものだ。 それはへそくり、内緒のプレゼント、高額の買い物、あるいは浮気や借金などもっと重大な秘密であったりする。 gooリサーチなどが登録モニターを対象に隠し事について調査したところ、夫、妻ともに4割強がへそくりをしていた。 そして「夫婦円満のためにうそは必要か」との問いに、夫も妻も7割強が必要と回答していた。 実際、互いのすべてを知ることが必ずしも夫婦円満に結びつくわけではないだろう。 例えば夫が妻の知らない女性とメールをしていたとする。 ただの友人なのに妻は頭から浮気と信じ込み、夫婦仲が気まずくなる可能性もないではない。 もっとも、これが本当に浮気だったなら困りものだ。 うそをついて表面的には夫婦円満であったとしても、妻への背信行為にほかならない。 たとえ表面的でも円満ならいいのかどうか。 夫が必死で隠していても、ふとしたきっかけで勘の鋭い妻にばれてしまった、なんてことはよくある話だ。 そんな時のためにも隠し事は、ばれても何とか説明できる中身にとどめておきたい。 その点は国も夫婦も同じだろう。 今日はいい夫婦(1122)の日。
Nov 22, 2009
自殺者が年間3万人を超える状況が続いている。 先進国で突出して高い自殺死亡率を引き下げることは急務ではないだろうか。 今年の「自殺対策白書」は、こうした現状を踏まえ、過去最多となった学生・生徒の自殺、中高年男性のアルコール問題への対応などが必要と提言した。 防止への取り組みをさらに強めなければならない。 昨年の自殺者は3万2249人。 11年連続で3万人を超えた。 気がかりなのは小学生を含む学生・生徒の自殺が増加傾向にあることだ。 昨年は過去最多の972人になった。 原因は学校、健康、家族問題など。 学校問題では、いじめのほか、進路の悩み、学業不振、人間関係などが理由になっている。 文部科学省も自殺の調査を進めているが、背景などをきちんと把握する努力が必要だと思う。 命の大切さを実感できる教育、子どもたちが悩みを打ち明けることができる相談体制の整備などをさらに強化すべきではないだろうか。 また、白書は、ブログへの書き込みや携帯電話のメールによるいじめが自殺を引き起こす恐れがあるとして、学校や家庭、地域での情報モラル教育の推進を求めた。 いじめ問題は多様で複雑だが、子どもたちのサインを見逃さないようにして欲しい。 自殺者が最も多い中高年への対策もより強化しなければならない。 白書では、予防に向けた基礎調査の結果を基に「働き盛りの中高年男性の自殺予防にはうつ病対策だけでは不十分で、大量飲酒などアルコール問題への対応が必要」と提言した。 調査結果によると、アルコール問題を抱えた自殺既遂者の特徴は、仕事を持つ40~50代の男性が多いという。 「最後の行動」に及ぶ際に飲酒している者が少なくなく、酩(めい)酊(てい)によって判断力の低下や衝動性が強まった可能性があるのだという。 アルコールと自殺との関係について啓発を進め、対策を充実させる必要がある。 3年前の自殺対策基本法の施行以来、防止の取り組みは確かに進んできた。 自殺は「追い込まれた末の死」であり、防ぐことができる。 そうした認識から自殺の社会的要因となる失業や倒産、多重債務などに対応した相談や支援体制の整備、心の健康対策も展開されてきた。 この流れを大きくし、国を挙げて防ぐ意識を高めたい。 今、経済情勢が悪いだけに、現状に即応した手厚い支援が必要だと思う。 民間を含む関係機関が連携して対策を着実に進め、「生きやすい社会」を実現しなければならない。
Nov 22, 2009
もしその時「制服」を着ていたなら、事件は起きなかったのではないだろうか。 ひき逃げ容疑で逮捕された県警の巡査部長がまさにそうだった。 事件を起こしたとされる時、彼は勤務中だったが私服だった。 駐在所にいる彼が、私服で勤務することは普段はない。 ただその日はほぼ勤務を終え、私服に着替えて給油に行ったのだという。 彼はけがをした女性に「大したけがではない」と言って去ったというが、いくら処分を恐れたとしても、制服ならさすがにそうはしなかっただろう。 特別背任容疑で逮捕された百十四銀行の元支店長だって、元暴力団組員から接待を受けたとされる時、銀行のバッジは外していたことだろう。 「人はその制服通りの人間になる」(ナポレオン)。 そこまで制服が威力を発揮するのは、先人が長年かけて築いたイメージのおかげにほかならない。 制服は人に先入観を持たせ、着る側もそれを守ろうと努力する。 どんな人も勤務を終えれば私服になる。 ただそれでも心の中で制服を着続けることはできる。 特にその制服が与える社会的影響力が大きい職業の人は、大変な作業ではあるが、より長く心の制服を着続けるのが社会的責任というものだ。 県警はこのところ毎年のように、職員が不祥事を起こしている。 その数が多いかどうかはともかく、もし本気でなくしたいなら、いっそ24時間制服を着させるか。 もっとも世の中には、その「制服」を悪事に利用する人もいる。 これにはつける薬はない。
Nov 19, 2009
オホーツク海の流氷を目指して飛ぶカモメのように、はるか北の地に思いをはせる人は少なくない。 先日亡くなった俳優の森繁久弥さんも、そんな一人だった。 森繁さんが作詞・作曲した歌に「知床旅情」がある。 北海道の自然といとしい人への思いを込めたこの歌を「北方憧憬(しょうけい)」の結実、とする記事が載っていた。 冬が厳しいからこそ、北へのあこがれが増すといえるだろう。 その北の自然が近年、変わりつつある。 地表や海を覆う氷が姿を消しているのだ。 北極海でも、海面がぽっかり顔を出す領域が広がりつつある。 このままではあと30年ほどで海氷が完全になくなると、国連環境計画の報告書は警鐘を鳴らす。 地球温暖化は予想を超えるペースで進んでいるようだ。 その一方で、氷が減った北極海をアジアと欧州の最短航路として活用する計画もある。 さらに、石油や天然ガスが眠る資源の宝庫として、北極が脚光を浴び始めた。 深刻な環境変動の下でも人間の経済活動はとどまることを知らない。 冬の間、北極は太陽のない季節を迎える。 いずれオーロラがたなびく夜空の下を船が自由に行き交う時代が来るのか。 それはそれでロマンチックな光景だが、そのころ地球全体がどんな姿になっているかを考えると不安が募る。 北の地から白い世界が失われたら、人々はどんな思いを抱くのだろう。 少なくとも、気楽に歌を口ずさむ心境にはなれないはずだ。
Nov 19, 2009
「就活」「婚活」はよく耳にするが、「休活」と言われても多くの人はピンとこないだろう。 有給休暇の活用のことだ。 もっと言うなら、有給休暇を活用することによって、内需拡大と雇用創出を実現しようという考え方。 企業や自治体が参加する「観光地域経営フォーラム」の提言の中に出てくる。 この団体によると、日本が抱える巨額の財政赤字を考えれば、なるべく財政出動を伴わない内需拡大が必要。 国民一人一人の活発な活動と消費が期待され、そのためライフスタイルを大きく変える試みが求められる。 雇用者30人以上の企業で有給休暇取得率は46・7%、30人未満の企業でも同じ数字が出た(2007年)。 企業規模にかかわらず半分以上の有休が未消化で、その日数の総計は4億3千万日。 その完全取得が実現すれば―と試算が行われた。 余暇消費支出が増え、それに伴う雇用増による消費支出も増える。 これらに投資効果を合算すると15兆6300億円の経済波及効果が得られる。 また経済活動活性化がもたらす新規雇用と休暇増による代替雇用の創出を合わせると、187・5万人の雇用が生まれるという。 それなら明日から、ともいかない。 労働基準法が有給休暇に定めているが、国際水準といわれる2労働週の連続休暇には言及しておらず、細切れの休暇しかとれないとフォーラムは指摘。 労使間の協力はもちろん、公立病院など公共サービス機関の年中無休化も必要としている。 何とも休活への道は遠い。
Nov 18, 2009
見てくれの悪い魚はおいしいと言われるが、その魚は見た目通りらしい。 アフリカのコモロ諸島の人々はそれを「ゴンベッサ」(役立たず)と呼んでいた。 シーラカンスのことだ。 生息地によって色は異なるが、暗色のゴツゴツと硬そうな外見で、悠然と泳ぐ。 「生きた化石」らしく若々しさの対極にあり、子ども時代が想像しにくい魚だ。 事実、腹の中で卵をかえすという生態のため、生きた稚魚を目にするのは至難のわざだった。 しかしその稚魚をついに目にすることができた。 福島県の水族館の調査隊が、世界で初めて撮影に成功した。 体長30センチ以上だが、恐らく生後間もない稚魚とみられている。 写真によると、色は成魚のようだが、体に比して大きなひれをピンと伸ばし、心なしか若々しい。 普段は老人のような魚にもこんな時期があるとあらためて知ると、何だか幸せな気分になれる。 ましてじかに見れば感動はひとしおだろう。 たぶんそうした幸福感や新鮮な感動は、身の回りのシーラカンスからも味わえる。 古くさい、融通が利かない、そうした印象の人たちをただ疎んじるのでなく、若々しさや意外な面を探してみる。 見つけた時、ちょっと得した気分になれるはずだ。 稚魚探しと同じくらい難しいと言うかもしれない。 だけどそうした作業の繰り返しが、日々を幸せに過ごすコツではないだろうか。 ゴンベッサは今、高値で売れてコモロ諸島の人々に幸福をもたらす。 あなたの周りのシーラカンスも幸福を呼びますように。
Nov 17, 2009
街中でクリスマスの色鮮やかなイルミネーションを見掛けるようになった。 それもそのはず、あと半月もすれば師走である。 関係者が待ち望んでいた生活保護の母子加算が、ようやく復活する。 厚生労働省が先ごろ明らかにした2006年時点のひとり親家庭の「相対的貧困率」は衝撃的だった。 54・3%。半数以上の家庭の子どもが、厳しい経済状態の中で生きている実情が浮き彫りになった。 経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進30カ国で最悪の水準だという。 「貧困状態」の解消に向け、母子加算の復活が一筋の光明となることを願わずにはいられない。 政府はマニフェストに掲げた労働者派遣法の改正や子育て支援策の強化で貧困の改善を図ると意気込んでいる。 ただ、目玉政策の「子ども手当」の使い道で、気になる調査結果もある。 20~79歳の男女1126人から得た回答をまとめた民間調査会社によると、低所得層は「貯蓄や生活費」、高所得層は「塾や習い事などの教育費」に充てるとした。 これでは格差解消のために巨額の税金を使う政策が、子どもの教育格差を助長し、固定化させるものになりかねない。 景気低迷が続く中、スイーツの売り上げが伸びているという。 どんな家庭に生まれても気兼ねなくクリスマスケーキを食べられる社会を築いていく。 それが大人の責任ではないだろうか。
Nov 16, 2009
温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収するのは、山の森林だけではない。 藻場やマングローブ林など、沿岸の生態系も吸収して、温暖化防止に大きな役割を果たしている。 国連環境計画などの調査で実態が分かってきた。 アマモなどが茂る藻場や、熱帯、亜熱帯のマングローブ林は、光合成によりCO2を蓄積する能力が高い。 これら沿岸の植物が生息するのは海の面積の1%に満たないが、毎年世界全体のCO2排出量の6%を吸収している。 生物の多様性に富むのも特色だ。 藻場は「海中林」と呼ばれ、稚魚の成長の場として漁業資源の保全に欠かせない。 開発による破壊が深刻だ。 20年後には沿岸生態系の大部分が消滅の恐れさえある、と調査報告書は指摘する。 1940年からこれまでに、世界のマングローブ林と藻場の30%超、干潟の植物の25%弱が破壊された。 沿岸開発やエビの養殖施設建設などのためだ。 海の環境異変の報告は、このほかに最近幾つも出ている。 温暖化のためサンゴ礁の喪失が加速している。 海岸の浸食を防ぎ、観光や漁業を支えるサンゴ礁の被害拡大が人類に与える影響は、計り知れない。 北極域の海氷が温暖化で夏に完全になくなるのは今世紀末とされたが、最近の予測では2030年ごろまで早まる可能性がある。 大気から海水中に溶け込むCO2が増えることによる海水の酸性化現象が、既に米・カリフォルニア沖で大規模に観測された。 酸性化するとサンゴの骨格や貝の殻が形成されにくくなる。 異変に対し、取るべき対策ははっきりしている。 一つはCO2排出量の削減だ。 国際的な取り決めである「京都議定書」後の新たな枠組づくりを進めたい。 もう一つは、沿岸のマングローブ林や藻場を守ることだ。 国連環境計画の調査報告書では、藻場などが吸収したCO2を「排出枠」として国際的な排出量取引市場で売ることができる仕組みをつくるよう提案している。 これなら、発展途上国は沿岸の生態系を破壊しなくても収入の道が開ける。 検討すべき課題だ。 沿岸ばかりでなく、世界各地の高山、森林、湖、湿地、草原などで生物の多様性が急速に失われている。 生物多様性条約の締約国会議が来年、名古屋市で開かれる。 保全のための新たな目標を話し合う。 有効な方策を打ち出して欲しい。 日本の主導性が問われる。
Nov 16, 2009
こんなこともあるのか。 三重県沖を航行中のフェリーが急激に傾き座礁した。 総トン数7910トンは、神戸行きジャンボフェリーの2倍以上。 そんな大型船が横倒しになっていた。 近海でこんな事故が起きることなど、まずない。 しかもこのフェリー会社はほんの3日前、整形手術を受けて逃亡中の容疑者逮捕に協力し、注目を浴びたばかり。 懸賞金も得られると喜んでいただろうに、本当に先のことは分からないものだ。 複数方向からぶつかってできた三角波が船を傾かせ、荷崩れを起こし、そのまま立て直せなくなったと船長は説明する。 一方で荷物の積載法に問題があったとの見方もある。 人命を最優先させた判断は賢明だったが、乗客は生きた心地がしなかっただろう。 どんなに慣れた海でも、どんな大船に乗っていても、何が起きるか分からない。 こちらの船は大丈夫だろうか。 鳩山由紀夫船長の日本丸と、オバマ船長の米国丸である。 どちらの船にも、荷物はあふれるほど積まれている。 2人とも新米船長で、慣れない海をおっかなびっくり操船している。 海も決して穏やかではなく、いつ三角波に襲われても不思議ではない状況が続く。 昨日の日米首脳会談で、2人の似たもの船長は、1年間は操船技術を磨くことに専念すると決めた。 まだ並んで航行できるほどの腕前はないということだろう。 それでもやがてはランデブーしなければならない。 荒波をどう乗り切るか、乗客たちはハラハラしながら見守っている。
Nov 14, 2009
日本の子どもの体力が最近まで20年間にわたって下がり続けた理由は何だろう。 外で遊ぶ時間が少なくなったのが大きいという。 ではなぜ外で遊ばなくなったのか。 原っぱがなくなり、遊び場が消えた。 学校から帰るとすぐに塾に行くようになった。 事故や犯罪に巻き込まれることを親が心配して、子どもを外に出さなくなった。 ここ数年はパソコンや携帯電話に夢中になる子どもが増え、これも理由に加わった。 こうした現象は日本以外にもみられる。 国際オリンピック委員会(IOC)のコペンハーゲン全体総会では、室内で遊ぶ子どもの増加、学校での体育の時間減少、子どもの肥満は多くの国で共通するとの指摘が出た。 IOCはスポーツの土壌が危ういと心配する。 彼らは一つの方向転換に出た。 パソコンなどが子どもの屋外での遊びを妨げる、好ましくない道具と見なしてきた姿勢を打ち捨てるという。 彼らが注目し始めたのは、画面の中での競技の進行に合わせ、競技者のように体を動かして遊ぶ家庭用ゲームだ。 これは子どもや若者だけを対象にしたゲームではないが、これに夢中になる若者は確実に増えているという。 IOCは、このゲームがお気に入りの若者は潜在的なスポーツ選手として歓迎する姿勢だ。 ゲームの人気が広がることは、スポーツの拡大に通じると期待する。 ゲームを通じて面白さを知り、外に飛び出し、真剣に競技に取り組み、そして五輪選手になる。 そんな時代が訪れるのだろうか。
Nov 13, 2009
取りあえず取りやすいところから手を付けよう。 政府内で浮上しているたばこ増税論には、そんな感じがしてならない。 国債や借入金など国の債務残高(借金)は864兆円にも上る。 国民1人当たり678万円のローンを抱えていることになる。 2009年度の税収は40兆円を切りそうだ。 それなのに10年度一般会計の概算要求は95兆円である。 たばこ税収は年間約2兆円だ。 愛煙家は煙たがられている。 増税のターゲットとして、これほど狙いやすいものもないだろう。 「取りあえず」という気持ちになるのも分からないではない。 しかし、危機的状況にある国家財政を前に、あまりにも短絡的な思考といえないだろうか。 今本当に必要なのは、抜本的な税制の改革のはずである。 政府税制調査会にたばこ税の見直しを指示した鳩山由紀夫首相は、10日の参院予算委員会で「一気に税収を上げるという発想ではなく、健康のためにいかにあるべきかという判断をすべきだ」と語った。 しかし、「(1本)1円上げれば2500億円程度(税収が増える)との試算もある」と言う。 見直しとは増額のことではないだろうか。 これでは「健康」は単なる口実としか映らない。 閣僚からは「日本のたばこ税率は低過ぎる。欧米並みにすべきだ」との声が上がっている。 財源難を少しでも解消しようと、たばこ増税に期待を掛けけるという図だ。 急先鋒(せんぽう)の長妻昭厚生労働相の案は、まず1箱当たりの価格を600円にして、段階的に引き上げていくというものだ。 将来的には800円とする。 確かに1箱(20本)当たりの税額は米国や英国などの500円台に対し、日本は174円と低い。 それならば「健康」などを持ち出さなくても、堂々と国際基準の税額を打ち出せばいいのではないだろうか。 愛煙家も納得すると思う。 増税によりたばこの価格が上がれば未成年者の喫煙率が下がるという論もある。 現実的な発想かもしれないが、本末転倒というべきだろう。 まず行うべきは徹底した嫌煙教育だ。 厚労省の調査によると、この5年間で10ポイント下がったとはいえ、成人男性の喫煙率は36・8%に上る。 女性の愛煙家も1割弱いる。 たばこがいまだ嗜好(しこう)品として大きな位置を占めているということである。 そもそも健康は個々人の問題だと思う。 それを増税に絡めて語ることに違和感がある。 安直な増税は国民の楽しみを奪うことにもつながる。 たばこが人体に与える影響は明らかになっている。 国民の健康を守るというのなら、喫煙そのものに対する論議をもっと深めるべきではないだろうか。
Nov 12, 2009
どうも女性は現実的、男性は夢見がちな傾向があるらしい。 老人ホームなどを運営するオリックス・リビングが「介護の日」(11月11日)にあわせて、40代以上の男女1238人を対象に実施したアンケートで浮かび上がった。 例えばどんな介護を受けたいか。 男性は自宅で配偶者の介護を受けたい人が最も多く、3割近くに上ったが、女性で同じように思うのはその半分以下。 有料の福祉施設に入るか、自宅で外部の介護サービスを受けたいと考えていた。 家族を介護する時の不安も9割以上の人が抱えているが、中身が違った。 男女とも精神面の不安が最も大きいのは同じだが、それに続くのが男性は費用面、女性は体力面での不安だった。 この違いの背景には、介護経験の有無があるという。 増えてきたとはいえ男性の介護経験はまだ2割しかなく、女性の半分にも満たない。 いきおい女性は、抱える不安も、自分の老後の選択も現実的になる。 女性だって本音では、男性が夢見るように、自宅で家族に見守られて最期を迎えたいのかもしれない。 しかし家族にかけるであろう負担を肌身で知っている。 あるいは仕事ばかりで家事はさっぱりの普段の夫を見ていると、とても頼りにできないと感じてしまう。 老いる前から夢見る気分になれない女性と、夢見て老後に現実を突きつけられるであろう男性。 どちらも切ないものがある。 介護の日には「いい日、いい日」との国の願いが込められているが、なすべきことは山ほどある。
Nov 11, 2009
椎名誠さんの小説『モヤシ』は、モヤシ料理を追求する物語である。 沖縄でマーミナーチャンプルー(沖縄風モヤシいため)を味わい、自宅ではモヤシ入り生春巻きを考案。 ついにはモヤシの栽培キットを携え旅に出る、といった愉快な展開となる。 椎名さんがモヤシにこだわるようになったのには、わけがある。 健康診断で尿酸値が高いことが分かり、医師から痛風の危険性を指摘されたのだという。 友人には「夜も寝られない痛さ」と教えられ、食生活の改善に取り組むうちたどり着いた食材がモヤシだった。 おいしいものばかり食べていると発病するとされ、ぜいたく病ともいわれる痛風は詳しい原因が分かっていなかったが、どうやら遺伝子がかかわっていたようだ。 防衛医科大や東京大などの研究者が痛風のリスクを高める遺伝子を発見したと、先日の米科学誌電子版に発表した。 尿酸を体外に排出する「ポンプ」の役割を果たすタンパク質の遺伝子といい、痛風の患者の多くで、その遺伝子に変異が起きているそうだ。 変異がある人はない人に比べ、痛風になるリスクが最大で26倍に高まる計算結果も出ているから驚かされる。 もっとも、遺伝子に変異が起きてなくても痛風を発症している人はいる。 尿酸値が高くなったら、椎名さんのように食生活に注意することが大切なのは変わらないようだ。
Nov 10, 2009
春には赤みの濃いオオヤマザクラが、夏には淡いピンクのササユリが咲く。 秋にはブナの原生林が、それは見事に紅葉するそうだ。 「中国山地でも指折りの自然の豊かなところです」。 地元の自然に詳しい「高原の自然館」の職員がそう話していた。 既に紅葉を終え冬の気配が漂う広島県の臥竜山で、坂出出身の女子大学生の遺体が発見された。 先月下旬から連絡が取れなくなり、その行方が心配されていたが、最悪の形で見つかった。 標高でいうなら讃岐山脈で最も高い竜王山と200メートルほどしか違わないが、冬の臥竜山は多いところで2~3メートルも雪が積もるという。 そうなった時を見越して犯人が遺体を分散させたのかどうかは分からないが、あまりにむごい仕打ちである。 高校時代から英語を懸命に学び、やがては海外へと夢見ていた彼女の無念さはいかばかりだろうか。 夢を語り合った友を失い、将来を期待していた教え子を奪われた人々の嘆きはどれほど大きいか。 特にこんな形でわが子に先立たれた両親の心中を思うと、胸がふさがれる。 降り積もった臥竜山の雪が溶けるころには、常緑樹のエゾユズリハが顔を出す。 雪の重みや冷たい風に耐え、春先に新しい葉が育ったのを見届けてから、古い葉は散っていく。 きっと両親は、そんなエゾユズリハのような人生でありたいと願っていただろうに。 犯人は芽吹いていた若葉を理不尽にむしり取って、永遠に溶けることのない悲しみの雪の中に放り込んだ。 ただただ犯人を憎む。
Nov 10, 2009
花が少なくなるこの時期、生け垣などに植えられたサザンカの紅色の花を見かけると、ほっと心が和むような気がする。 「サザンカ、サザンカ咲いた道-」と、童謡の「たき火」を思い起こす人もいるだろう。 サザンカは日本原産のツバキの仲間。 学名は「カメリア・サザンカ」で英名も「サザンカ」と、和名がそのままついている。 野生のものは白の一重咲きで、山林などにひっそりと咲いているそうだ。 たまに見かける園芸種の白花も、それを受け継いでか清そな趣がある。 サザンカでよく話題になるのがツバキとの違い。 サザンカは秋から咲き花が一枚ずつはらはら散る、ツバキは春咲きで花ごとぽとりと落ちるというが、サザンカにも春咲き種があり散りツバキもあるという。 完ぺきな区別の仕方はないらしい。 サザンカは「山茶花」の漢字を当てているが、これもツバキとの混同から来ているそうだ。 漢名では、山茶はツバキを指しサザンカは「茶梅」になる。 山茶花と書いてサザンカと読むのも不思議な気がしていたが、これは「サンサカ」がいつの間にかなまったのだという。 昨日は二十四節気の「立冬」。 七十二候では「山茶始開」となり、山茶が開き始めるころとされる。 さて、この山茶はツバキかサザンカか。 暦の事典によれば、ツバキと読んでサザンカを指すそう。 本当にややこしい。
Nov 9, 2009
世の中には、注意されながら改善されないことが多々ある。 兵庫にも通じる自転車のマナーもその一つ。 特に若い人たち。 ヒヤッとした経験を持つ人は結構いるはずだが、ともかく速く、道幅が狭い所でも、道が交差する所でも飛び出す。 自転車が関連する交通事故は、全事故件数の約2割というから無視できない水準だ。 自転車が歩行者とぶつかる事故も多く、昨年度は全国で2942件(警察庁統計)発生している。 信号無視や一時不停止、安全不確認など、自転車側に違反や過失があって起きた事故も少なくない。 それらに起因する事故は、死者が出たうちの39%、負傷者が出たうちの29%を占めるという。 改めて自転車が被害者にも加害者にもなっている現実を教えられるが、問われる留意点は昔も今も同じだ。 車道は左側を、交差点での安全確認を、歩道は歩行者優先で車道寄りを、飲酒・二人乗り・併進はしない、夜間はライトを、などだが、なにより守るべきは、危険を察した時に対処できるよう、速度を抑えて乗ることではないだろうか。 とりわけ兵庫の市街地では。道路や歩道の幅が狭い、交差点が多い…。 一部路線を除いては道路事情が自転車向きになっていないし、この季節は夕暮れも早い。 雪こそ積もっていないとはいえ、朝夕の気温はめっきり下がり、先を急ぎたいという心理が働く。 「気持ちは急(せ)いても速度は落として」。 もう一つ、自分は大丈夫、はない。
Nov 8, 2009
子どもに暴行を加える。 ひどい言葉を浴びせたり、食事を与えなかったりする。 こうした児童虐待が後を絶たない。 11月は「児童虐待防止推進月間」だ。 虐待について正しく理解し、社会の力で未然に防ぐことができるようになって欲しい。 期間中、虐待防止の「オレンジリボン・キャンペーン」が全国各地で繰り広げられる。 2004年に栃木県で幼い兄弟が虐待死した事件をきっかけに、地元の市民グループが始めた。 オレンジ色には子どもたちに太陽のように明るい未来を、の願いを込める。 06年からは民間団体と国、各自治体が一体となって啓発に取り組んできた。 兵庫県内でも明石市立天文科学館などがライトアップで啓発しているほか、オレンジ色のメッセージ入りたすきをつないでいくリレーイベントが県内6会場で行われている。 こうした運動を通して、児童虐待への関心を高めていって欲しい。 全国の児童相談所(児相)が受け付ける虐待相談は年々増えるばかりだ。 08年度は4万2600件を超え、児童虐待防止法が施行された00年度の2・4倍。 県内では約1560件あった。 その一方、虐待の多くは家庭で起きるため外部からは気づかれず、4月に小野市で発覚した男児の冷蔵庫遺棄事件も2年近くたってからだった。 気づきの遅れなどで子どもの命が奪われることのないよう、「子どもを虐待から守るための5か条」がある。 「おかしい」と感じたら迷わず連絡。 「しつけのつもり…」は言い訳。 ひとりで抱え込まない。 親の立場より子どもの立場。 虐待はあなたの周りでも起こりうる。 大切なのは、この五つの約束を一人一人が認識し、輪を広げていくことだ。 子どもは自分で訴えることができない。 孤立しがちな親子には、日ごろから隣近所の人たちや学校園などが目を配り、わずかでも兆候を感じたら、児相などの専門機関に連絡することが必要だ。 10月には、全国共通の番号にかければ近くの児相につながるシステムも整備された。 しかし、せっかくの情報も、素早く適切に対応しなければ虐待は防げない。 昨年4月の防止法改正で、児相の権限は大幅に強化されたものの、児童福祉司の数はまだまだ不十分という状況だ。 専門職の増員や子どもを守る体制整備を急ぐ必要がある。 地域と関係機関が連携し、子どもを温かく見守っていく。 月間を機に、そんな社会を築く責任を再確認して欲しい。
Nov 8, 2009
どんなに疲れていても、マスコミの取材を拒否することはまずしない。 ファンにサインをせがまれたなら、よほどのことがない限りは断らない。 それが当然だと考える。 米大リーグ・ヤンキースの松井秀喜選手とはそういう人だ。 5打席連続で敬遠された高校時代、勝負してもらえなかったことよりもチームが優勝できなかったことを悔しがる。 プロ入りしてからも自分のヒットよりもチームの勝利を喜ぶ。 それも当たり前だと考える。 人生は常に修行―そんな空海の姿勢に共感する(「告白」PHP研究所)。 「ゴロ王」と米紙に酷評されても、真っ正面から向き合う。 大けがをしても弱音を吐かず、前よりもうまくなろうとする。 そういう人だ。 しかし、いくら彼が口に出さなくとも、ファンは胸の内を想像せずにはいられなかった。 特にけがを繰り返し、守備の機会も失ったこの数年間、どんなに苦しかっただろう。 どれだけ悔しい思いを封じ込めたのだろうと。 それだけにファンはことさらうれしくなったのではないだろうか。 松井選手の大活躍でヤンキースが世界一になった。 日本人で初めてワールドシリーズMVPを獲得した。 今までの苦労がすべて報われたかのようで、WBCの優勝とはまた違う喜びをもたらした。 野球の本場で成し遂げた「日本人初」の大偉業。 だけど彼はそんな個人的栄光より、チームが世界一になったことを喜んでいるに違いない。 そういう人だ。 だから彼は愛されてきた。 きっとこれからも愛されるだろう。
Nov 6, 2009
緑内障は眼圧が上昇することで視神経が損傷を受け、見える範囲が徐々に欠けていく病気だ。 放置すると失明の危険性があり、中途失明の原因のトップである。 この病気の厄介なところは自覚症状が乏しいことだ。 患者でつくる緑内障フレンド・ネットワーク(東京)が会員約800人にアンケートしたところ、診断された時点で「視野が狭く感じていた」人はわずか11%だった。 ところが実際は、その時点で既に視野が欠けていた人は66%もいた。 少し欠けていた程度の人が半数近かったが、20%の人は半分以上も欠けていた。 診断時の平均年齢は51・6歳。 40代後半から50代というと、多くの人は老眼などで目の不調を感じる年代と重なる。 自覚症状を感じさせないのは、こうした要因も影響しているようだ。 例えば視野が欠けた見え方などを感じても、80%の人は加齢による老眼や視力の低下、目の疲れを疑っていた。 緑内障を疑ったのはたったの6%。 何も疑わなかった人も9%いた。 いったん欠けてしまった視野は元には戻らないが、点眼薬などで進行を抑えることはできるという。 それだけにできるだけ早い段階で発見し、治療を始めることが大切だ。 しかし、対象者の80~90%が未受診といわれる。 緑内障と診断された人が、そういえばこんなことがあったと答えている。 「光が非常にまぶしく感じた」 「ものがかすんだり、ぼやけて見えた」 「文章を読む時、文字がちらついて読みづらかった」 あなたもチェックをしてみては。
Nov 5, 2009
たばこに対する風当たりが強い。 長妻昭厚生労働大臣はおととい民放のテレビ番組でたばこ税の引き上げについて2010年度税制改正での実現に意欲を示した。 現在の2倍のヨーロッパ並みの価格を想定しているとみられる。 たばこの値段は06年7月に1本1円アップ。 例えばマイルドセブンライトは1箱280円から300円になった。 08年にはタスポというカードが導入されて、カードなしに自動販売機でたばこを買えなくなった。 現在の2倍というと、300円のものが600円程度になる。 愛煙家や関係業界にとっては痛い事態だろう。 一方で禁煙を呼びかける人たちの中には1000円以上に値上げするよう求める声もある。 思えばたばこを吸い始めた約30年前は、ハイライトが80円の時代だった。 学生時代、一人でいた時にふとたばこが吸いたくなり、ハイライトを買った。 以来、いつもどこでもたばことともにあった、という腐れ縁でもあったが今ではきっぱりと禁煙している。 たばこが好きな彼女のことを歌ったディランIIの「プカプカ」、あなたの好きなたばこの香りと、いしだあゆみが歌う「ブルーライト・ヨコハマ」、沢たまきの「ベッドで煙草を吸わないで」など、歌も時代にマッチしていた。 歌は世につれと考えれば、たばこが登場する歌はもうそんなに作られないかもしれない。 文化の日に、かつてのたばこ文化をあれこれ考えてしまう。
Nov 3, 2009
人の生と死を分け隔てるものは何なのだろうか。 もしその線引きに見えざるものの意思が働いているのであれば、その決定はあまりにも残酷で不条理だ。 宮崎と鹿児島県境の霧島連峰・韓国岳(からくにだけ)への登山中に行方不明となっていた、小学5年男児の死亡が確認された。 両親と祖父、妹の5人でえびの高原から山頂をめざした。 楽しい思い出になるはずの登山だった。 両親らの無念を思うとやりきれない。 高校の修学旅行の時に、えびの高原に登ったことがある。 独特の硫黄のにおいと、眼下の火口湖の青さが鮮明な記憶として残っている。 5人が入山した10月31日は快晴。 登山口の石段を、跳びはねるように上っただろうに。 小学生も遠足などで利用する登山道だそうだ。 男児1人が、元気よく先行したのは容易に想像できる。 出発は午前11時20分ごろだったそうだ。 楽しみにしていたであろう、家族いっしょの弁当も実現しなかった。 だれもが登山を手軽に楽しめる時代になってきた。 しかし、そこに危険が潜んでいることは、7月の北海道大雪山系での遭難事故が如実に物語っている。 言い古されてきたことだが、山をあなどってはいけない。 身近な山であってもだ。 奇跡的に3人が助かった漁船転覆事故で関係者が、「助かるんやったらこの命をあげるんやけどなあ」と語っていた。 男児の両親らも同じ思いだったに違いない。
Nov 3, 2009
生活に苦しむ人が国民の中にどれぐらいいるのだろうか。 その割合を示す「相対的貧困率」を厚生労働省が初めて公表した。 2007年時点で15・7%。 7人に1人以上が貧困状態ということになる計算だ。 格差問題が深刻になっている実情を裏付ける数字である。 政府はこれまで、貧困率を出していなかった。 しかし、低所得者層の生活実態が把握できていなければ、対策を講じても効果を客観的に検証できない。 そこで長妻昭厚労相が、経済協力開発機構(OECD)が貧困調査などに採用している方式での算出を指示した。 相対的貧困率は、全人口の可処分所得の中央値を基準に、その半分未満しか所得がない人の割合を示す。 国民生活基礎調査を基に1998年以降3年ごとに算出したところ、14~15%台で推移していた。 OECDの08年報告では、加盟30カ国の平均値は10・6%。 日本はそれを大きく上回り、メキシコ、トルコ、米国に次いで4番目に高い。 福祉国家といわれるデンマークやスウェーデンは5%台だ。 日本の07年の所得中央値は年228万円だった。 つまり15・7%の人が年114万円未満の所得しかなく、しかもその割合は調査した98年以降で最悪だ。 非正規労働の広がりなどが背景にあるとみられるが、昨年来の不況を考えると、さらに状況は悪化しているだろう。 この実態を見据えた上で、対策を急がなければならない。 政府は先日、10万人の雇用創出などを盛り込んだ「緊急雇用対策」をまとめた。 職探しや生活支援の窓口一本化、介護や情報処理などの職業訓練の拡充などを柱に、5%を超えた失業率を改善するという。 加えて、貧困率の目標も設定し、不安定雇用や賃金格差の解消に努めてほしい。 厚労省は同時に、17歳以下を対象にした「子どもの貧困率」も算出している。 07年は14・2%で、親の所得の低さや乏しい公的支援などが積み重なった結果とみていいだろう。 鳩山政権が事態の改善に取り組もうとしているが、確かに放置できない課題だ。 生活保護の母子加算は12月からの復活が決まった。 長妻厚労相は「子ども手当などの政策を実行し、数値を改善していきたい」と述べ、手当が導入された場合、貧困率の推移も公表していくという。 貧困の解消には、手当だけでなく、雇用や福祉など総合的な対策も必要だ。 貧困率の公表を機に、日本社会の現状にしっかり向き合わなければならない。
Nov 2, 2009
全28件 (28件中 1-28件目)
1