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「見返り美人」と聞いて切手を連想するのは中高年の証しかもしれない。 切手趣味週間にちなむ一九四八年発行の切手は額面五円なのに、以前なら一万円以上の値が付き、切手ブームの象徴だった。 デパートの切手売り場でショーケースに顔をへばりつける子どもがいたのは七〇年代までだろうか。 投資を目的に記念切手を買う大人もいた。 確実に値が上がると皆が信じていた。 しかし今、金券ショップでは額面十円の記念切手を八円で売っている。 買い入れ値は六円。 記念切手の方が普通切手よりも安い。 「請求書など送るには記念切手が嫌われる。 何枚も張るのが面倒な低額切手は人気がない」との説明だ。 かつての投資家が二束三文で売り、市場はだぶついているという。 数千円で取引される「見返り美人」は例外で、戦後の切手の大半が額面割れとなった。 数少なくなった切手店に尋ねると、こう助言された。 「純粋に趣味で集めるならいい。もうけ目当てなら、やめた方がいい」と。 変わったといえば、このところ郵便事業会社は人気アニメや漫画の切手を次々発行している。 郵政省時代は切手の乱発が国会でも問題になったが、今や利潤の追求は至上命令だ。 おそ松くんや名探偵コナンの切手シートを買う人は、資産というより、手紙に張ったり記念に残したりするのだろう。 切手になることの敷居が随分低くなった気がするが、それも時代の流れだろうか。
Apr 30, 2009
結婚はしたいし、子どもも二人以上ほしい。 しかし、現実はなかなか思い通りにはいかない。 その結果、日本は世界で最も少子高齢化が進行する国になっている。 あらためて、こんな現状認識を示す「少子化社会白書」がまとまった。 二〇〇七年の合計特殊出生率は一・三四と二年連続で微増した。 しかし、決して楽観できる状況にはない。 五五年には人口は九千万人を下回り、その四割が六十五歳以上になるという推定もある。 このままでは経済や社会保障などへの深刻な影響が避けられない。 まさに待ったなし、放ってはおけない状況だ。 少子化の要因の一つとして、白書は晩婚化と晩産化を挙げる。 三十-三十四歳の男性の半数近く、女性は三人に一人が未婚。 一方で、未婚者の九割は「結婚したい」と考え、子どもも二人以上を望んでいる。 また、働く女性の七割は出産を機に一度退職している。 「就業」か「結婚・出産・子育て」の二者択一を迫られる状況は、変わっていない。 育児休業を取りたいと希望する男性は三割を超えているにもかかわらず、〇七年の取得率は1・56%にとどまっている。 こうした希望と実態の乖離(かいり)の解消こそが、少子化に歯止めをかける有効な手だてとなる。 白書は、その鍵として「仕事と生活の調和」の推進をうたった。 そのために必要なことは、まず職場の意識を変えることだ。 同時に、短時間勤務や在宅勤務など多様な働き方が認められる雇用環境と、保育所待機児童の解消など子育て環境の整備も欠かせない。 長引く不況で不安定雇用を強いられている若者も多い。 生活の安定を図り、将来の見通しが立つような就業支援も必要だと思う。 日本が子育てやその環境整備に支出する割合は、国内総生産(GDP)比で欧州諸国より低い。 支出の中味も、フランスやスウェーデンは育児と仕事が両立しやすい環境整備に重点を移した。 その結果、出生率が一・六台から、それぞれ二・〇二と一・九一に回復した。 ぜひ参考にして欲しい。 白書は、日本でも希望がすべて実現すれば四〇年に出生率は一・七五に上昇し、五五年に総人口は一億人を超えるとする。 結婚・出産は個人の生き方の問題で、押しつけるものではない。 ただ、希望すれば安心して産み、育てられる社会の仕組みはつくらなければならない。 そのための投資は惜しまず、大胆に実行していって欲しい。
Apr 30, 2009
子どもは今、いじめや虐待のほか犯罪被害、貧困などにさらされている。 また世界では過酷な労働や売春の強要だけでなく、兵士の徴用など、深刻な問題もある。 守るためには「子どもの権利」という考え方が重要ではないだろうか。 「子どもの権利条約」を国連が採択して二十年になる。 定めた権利は「生きる、育つ、守られる、参加する」の四つ。 要するに子どもの人権をどう守るかである。 しかし、まだ浸透した状況にはない。 この国連条約順守の取り組みを、日本で初めて具体的な市条例の形にしたのは川西市だ。 子どもを人権侵害から守る公的第三者機関「子どもの人権オンブズパーソン」を設置して、十年を迎えた。 相談を受けた専門家と相談員のチームが調査し、勧告も行うという。 相談は年間六百件前後で推移する。 子ども本人からの相談が増えており、「いじめ」「交友関係」が多い。 「おかげでいじめを乗り越えられた」「人を尊重するとはどういうことかを学んだ」などの声が事務局に届く。 「オンブズ」といえば市民による監視や追及のイメージがある。 しかし、チーフ相談員の森澤範子さんは「解決の鍵は関係者で対話を重ねることに尽きる。人間関係を築き直す調整役です」という。 川西市のような取り組みは、全国十数の自治体に広がっているが、十分とはいえない。 こうした地道な活動を積み重ねて、条約にある権利がもっと当たり前になる社会にしていって欲しい。
Apr 29, 2009
少し古いが、気になる数字があった。 大分県が昨夏、県政モニターを対象に行った新型インフルエンザの調査である。 国は、大流行に備えて最低2週間分の食料などの備蓄をと呼びかけている。 しかし、回答した133人のうち、その時点で備蓄しているのは10%だった。 最も多いのは「これから備蓄予定」で54%、「備蓄しない」も8%あったという。 また、病院での感染拡大を防ぐため、感染が疑われる場合は保健所に電話相談し、指示を受けるよう促しているのに、大半の人が医療機関に行くと答えたという。 行政の情報が十分伝わっていない。 この調査から随分時間がたっている。 全体の理解も深まっていると思いたい。 メキシコや米国で発生した豚インフルエンザの人への大量感染を受け、世界保健機関(WHO)は、インフルエンザの世界的大流行に対する警戒水準(フェーズ)を「3」から「4」に引き上げた。 人から人に感染する新型インフルエンザの発生が認定されたことを意味する。 最悪は世界的大流行のフェーズ6だ。 これを受けて、政府は麻生太郎首相を本部長とする対策本部を設けた。 メキシコ、米国、カナダの北米から欧州などにも感染が広がる中で、政府としては新型ウイルスが日本国内に入ることを阻止する水際作戦に全力を挙げる。 しかし、世界中を航空機が行き来している時代に阻止し続けるのは難しいだろう。 新型インフルエンザといえば1918年から翌年にかけて大流行した「スペイン風邪」がある。 世界で約4000万人が死亡したと推定される。 57年の「アジア風邪」、68年の「香港風邪」でも、それぞれ100万人以上が亡くなった。 ここでいま、私たちができることは最悪の事態も考えながら家庭や職場、地域の備えができているか点検することだ。 まずは最低2週間分の家庭の備蓄はできているだろうか。 政府は個人、家庭と地域向けに対策ガイドラインを公表している。 そこに長期保存食品、マスクとゴム手袋、消毒用アルコール、懐中電灯やカセットこんろなど備蓄リストがある。 外出をできるだけ控えた方が感染する可能性は小さい。 さらに、流行期には企業などの従業員の最大40%が欠勤するとの推計もある。 食料品や日用品の供給などが一時的にストップする恐れもある。 備蓄はそんな時に大いに役に立つ。 一方、企業などはこうした状況を頭に入れて事業を継続していくための計画をきちんとつくっておく必要がある。 都道府県や市町村は、必要な情報が適切に住民に伝わる体制ができているか、まずは確認して欲しい。 地域では、独居世帯などを把握し、必要な支援ができるようになっていれば嬉しい。 ここは行政の後押しもいる。 いますぐにでもと慌てる必要はない。 ただ、備えは無駄ではない。 地震などの防災対策にも共通するものだから。
Apr 29, 2009
「今晩、大きな余震があるらしい」。 そんなうわさが駆け巡った。 阪神・淡路大震災の被災地でのことだ。 ほかにも、さまざまなうわさや情報が飛び交った。 その中で、神戸市内の避難所に一枚のホワイトボードが立て掛けられた。 そして、住民たちが知り得た情報を書き入れた。 校舎や体育館の耐震性について書いた教諭がいた。 区役所に立ち寄ったボランティアは、物資が届き始めていることを伝えた。 まだ正確な情報は少なかったが、「分かってきたこと」「自分たちにできること」を共有することで、ざわざわした空気が落ち着いていった。 メキシコで始まった豚インフルエンザの感染が広がっている。 メキシコのほか米国、カナダで確認され、欧州などでも感染の疑いのあるケースが出ている。 世界保健機関(WHO)が国際緊急事態と認定したのに続き、米政府も緊急事態宣言を出した。 ホワイトボードの例でいえば、時間とともに「分かってきたこと」が増えている。 豚肉は、国産でも輸入されたものでも殺菌されており、心配はいらない。 日本国内では感染者は確認されておらず、水際での警戒が強まる。 「できること」は、繰り返し言われてきたことばかりだ。 マスクを着用して、手洗いやうがいを心がける。 人込みに近づかず、食料や生活用品を備蓄する。 日々いろんな情報を耳にするが、まずは分かってきたこと、できることから始めたい。
Apr 28, 2009
中国産ウナギを「愛知県三河一色産」と偽装したとして、不正競争防止法違反罪に問われた徳島市に拠点を置く水産物輸入販売会社「魚秀」社長の中谷彰宏被告に、神戸地裁は懲役二年六月、執行猶予四年、罰金二百万円の判決を言い渡した。 中谷被告と共謀した神戸市の水産物卸売会社「神港魚類」元担当課長ら四被告も有罪となった。 法人としての魚秀など三社にも、罰金一千万-五百万円が科せられた。 裁判官は「一般消費者の食品表示に対する信頼を大きく損ねた」と指摘。 「食の安全をないがしろにして、目先の利益、自己保身のために在庫の早期処分を図ろうとした」と厳しく断罪した。 消費者の国産ブランド志向に付け込んだ偽装は到底許されない。 事件の教訓を生かし、今回の判決を信頼回復への一歩としてもらいたい。 中谷被告らを実刑にしなかったことについては、税関検査で合格した冷凍かば焼きから使用禁止の合成抗菌剤が検出されるなど「偽装の動機に同情できる余地がある」とした。 しかし、だからといって、消費者を欺いた行為そのものが許されるわけではない。 判決結果を真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。 残念なのは、県内で食品の産地偽装がウナギにとどまらず、多くの食品で相次いでいることだ。 三月に中国産ハマグリの産地偽装で徳島市の業者が、今月にはウナギの産地偽装で阿南市内の二業者がそれぞれ逮捕された。 このほか、三月に阿南市の業者が中国産タケノコの水煮を徳島産や国産と表示して販売していたとして、県から日本農林規格(JAS)法に基づく是正措置を受けた。 なぜ、これまでの教訓が生かされないのだろうか。 依然として悪質な行為がはびこっていることに怒りを覚える。 関係業界が自ら徹底的にうみを出し切ってもらいたい。 それが消費者の不信を取り除く近道である。 農林水産省が、食品の産地偽装などJAS法違反で二〇〇八年度に事業者名を公表した件数は百十八件と、前年度の八十四件を大きく上回った。 警察庁のまとめでも、〇八年度に検挙された食品の産地や品質の偽装事件は前年度比十二件増の十六件と〇二年度以降で最多となった。 多くが中国産を国産と偽る事例という。 昨年一月の中国製ギョーザ中毒事件をきっかけに、中国産の販売不振が偽装増加の背景にあるようだ。 安易に利益優先に走り、企業倫理が希薄になっていることを物語っている。 一連の偽装事件で消費者の意識は高まっている。 老舗の船場吉兆が廃業に追い込まれるなど、消費者を欺けば企業の経営自体が脅かされる時代になっている。 食品業者はいま一度、責任の重さを再認識し、信頼回復に努めてほしい。 行政も食の安全を守るため監視態勢を強める必要がある。 今秋にも消費者行政を一元化する消費者庁が発足する。 不正の再発防止には、業界寄りではなく国民重視の消費者行政の確立が急がれる。
Apr 28, 2009
その映画のチラシにはこう書かれている。 「子供たちは大人がつくった世界で生きている」。 そして主人公の少女の瞳が、まっすぐこちらを見つめる。 アフガニスタンを舞台にした「子供の情景」という作品である。 大阪で上映が始まり、神戸でもこれから予定されている。 「学校に行きたい」と願う六歳の少女の一日を描く。 彼女の前に、越えなければならないハードルが横たわる。 背景に戦争があり、男女差別がある。 大人がつくったハードルが幼子の願いを阻む。 先週末、大阪の小学四年の少女が遺体で見つかり、死体遺棄容疑で母親と、同居の男らが逮捕された。 少女の目に映ったのは、どんな「情景」だったのだろうか。 一日中、ベランダに放り出されていた姿が目撃されている。 春先のことだ。 寒さで震えていたに違いない。 叫び声を聞いた、顔のあざを見たという人がいる。 虐待のサインはあった。 しかし命は救えなかった。 未成年の犯罪と向き合う少年法の「国親(くにおや)思想」を思い起こしたい。 親が親として振る舞えないことが犯罪の背景にあるのなら、親に代わって国が、かかわらなければならないという考え方だ。 虐待される子どもたちも同じだろう。 国が親になるということは私たち一人一人がかかわるということだ。 「生きたい」と願う小さな命が奪われる。 それが今の日本の「情景」であることがつらい。 そう、子どもたちは、大人がつくった世界で生きているのだ。
Apr 27, 2009
今月から見直された介護保険の要介護認定基準と厚生労働省の対応をめぐって、介護現場や利用者に混乱が広がっている。 要介護認定は、介護サービスの前提となるものだ。 まず調査員が、サービスを受ける高齢者の状態や生活能力をチェックし、コンピューターで一次判定する。 今回の見直しで、調査項目は八十二から七十四に減った。 さらに、各項目の判断基準も「日常生活への支障があるかどうか」から「介助されているか、いないか」などに変わっている。 要介護度は主治医の意見書も参考にして決める。 とはいえ、見直しに盛り込まれた一部の選択基準によって一人一人の実態が正確に反映しにくくなり、軽く判定される恐れがあるという指摘が出た。 例えば、寝たきりで車いすへの「移乗」という介助を受けることがない人が「自立(介助なし)」と判定される。 認知症の人が薬を飲むときに時間や量を間違えても自分で飲んでいれば「自立」となる。 「実態とかけ離れた結果になる」と介護団体などから疑問や批判が相次ぎ、厚労省は「移乗」のケースなど一部を修正した。 しかし、それを公表したのは、新基準導入のわずか一週間ほど前だった。 さらに導入から二週間後、今度は新基準で要介護度が軽くなっても、旧基準でのサービスが利用できる経過措置を発表した。 専門家による検証結果が出るまでの期限付きとはいえ、新旧二つの基準が混在する。 その場しのぎともいえる対応に振り回される現場は、たまったものでない。 厚労省の事前のサンプル調査では、新基準で20%の人がこれまでより軽度に判定されていた。 その要因などを検証していれば、もっと早く対応できたのではないだろうか。 新基準の導入は、要介護度を軽く判定し、介護費用を抑えようという狙いではないかという見方もある。 実際、そのような趣旨とも受け取れる厚労省の内部文書の存在が国会で明らかになった。 厚労省は見直しについて「主観を排し、認定のばらつきをなくすため」と説明するが、実態と離れては意味がない。 公平に認定できるように見直すことは、利用者にとって必要なサービスの提供や、安心の制度につながるだろう。 まず介護現場や利用者の声に耳を傾け、それに即した形での見直しでなければならない。 さらに、十分な説明と周知期間を設けることが大前提だと思う。
Apr 27, 2009

千姫ぼたん祭りに行く途中で結婚式があったようで花嫁花婿さんが人力車で披露しているところに出会った。 沿道の方に二人仲良く笑顔で挨拶されているのを見て、いつまでもお幸せにと心の中でつぶやいた。 お城の中に入ると姫路城内の西の丸庭園付近で、お姫様と殿様に扮(ふん)した人と無料で記念撮影できる催しを続けていると表示されていたので、早速、記念写真を撮ってもらった。 JRグループが県内各地で取り組んでいる観光キャンペーン「あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン」に合わせて実施。 四代目の「姫路城殿様ガイド」に就いた吉田正久さん(75)や「お姫様ボランティア」に応募した女性らが期間中の日曜日午前十時半-正午と午後一-三時に、西の丸庭園付近で待機しているようだ。 姫路城も色々な角度から撮ってみました。 天守閣から見た風景。 天守閣。 姫路城三の丸高台の千姫ぼたん園(姫路市本町)で25日、「第17回千姫ぼたん祭り」が始まった。雨のため、舞台発表は中止になったが、園内には赤や紫の大輪約1000株が咲き誇っている。祭りは26日の今日まで開催された。 同園は1993年に開園。ピンクの「花王」や黒い「黒獅子」など約80種千株が1・4ヘクタールの敷地内に植えられている。今年は例年通り、4月半ばから開花し、現在は八分咲き。5月上旬まで楽しめるという。 今日は、風が強くぼたんも激しく揺れていてかわいそうだった。 手品のショーをされていた。
Apr 26, 2009
昨年の流行語大賞に選ばれたアラフォーは「四十歳前後」のこと。 ではサブフォーは? ご存じの方は、きっとマラソンランナーか、家族・知人にランナーがいる人だろう。 サブフォーとは、フルマラソンで四時間を切ることだ。 市民ランナーの多くが、これを目標に練習に励んでいる。 ランニングが習慣になっている人が達成できるとされるが、初心者には大きな壁である。 市民ランナーの夢・サブスリーとなると道はさらに険しい。 月三百キロ以上の練習を三年間は続ける必要がある、などといわれている。 きょう、とくしまマラソンが開催された。 六百五十回目の完走を目指す七十一歳のマラソンおじさん、知的・発達障害を持つ若者のグループ、病床の母の回復を願って走る男性。 エントリーした四千八百二十七人の中には、さまざまなランナーがいる。 目標は違っても目指すゴールは同じ。 記録更新を狙う人も、とにかく完走という人も、楽しく駆け抜けていたようだ。 しかし、体調が悪くなったら棄権する勇気も大事だ。 レースはきょうが最後ではないからだ。 昨年同様、多くの県民の方が沿道から声援を送っていたようだ。 その中から自分も走ろうという人がたくさん出てくれば、来年はもっと盛り上がると思う。 まずは制限時間内のサブセブンから。 阿波踊りではないが「同じ阿呆(あほう)なら走らな損々」である。 私も足の回復が遅れていたが、これを機にもう一度走ろうと思っている。 負けていられない。
Apr 26, 2009
政府の「環境モデル都市」に選ばれた富山市は、二酸化炭素排出削減策を盛り込んだ行動計画を策定し、本年度から具体的な事業を始める。 六月補正予算案にも先駆的な取り組みの事業費を盛り込む方針だ。 県内はもちろん全国の都市の模範となるよう官民が協力して地球温暖化防止に努めてほしいと思う。 環境モデル都市は政府が公募し、温室効果ガスの削減目標や内容の先進性、独自性、実現可能性などの観点から審査した。 第一弾として昨年七月に富山市など六自治体、今年一月には七自治体が認定され、全国に計十三自治体ある。 「コンパクトシティ戦略による二酸化炭素削減計画」を掲げた富山市は、公共交通の活性化を図ると同時に、沿線に商店や事業所などを集中させ、住み替え支援で市民の住居も誘導していく考えだ。 マイカーを使わなくても生活できる都市をつくり、乗用車から公共交通への転換を推進して二酸化炭素を削減していく。 認定を受けて市は、これからの五年間の具体的な施策などを明記した行動計画を策定。 今年三月末に国に提出し、本年度から施策の事業化に着手していく。 行動計画は「公共交通の活性化」「中心市街地や公共交通沿線への機能集積」「エコライフの推進」「エコ企業活動の推進」の四本柱、計七十三事業からなる。 先の二つの柱の事業は、これまでの市のまちづくりの延長線上だ。 富山ライトレールの運行や路面電車の環状線化、JR高山線の増発実験などを行いマイカーから公共交通への転換を促進させる。 後者の二つの柱にはユニークな事業が盛り込まれている。 今年十月から始める予定の登録制レンタルサイクルもその一つ。 自転車をコンピューター管理し、中心市街地の約十五カ所に設置する専用ステーションであればどこでも乗り降りできる。 マイカーから自転車への転換を図るのが目的で、環境モデル都市を対象とした環境省の全額補助事業に採択された。 事業費は六月補正予算案に盛り込む。 構想ではGPS(衛星利用測位システム)が付いた自転車を約百五十台用意する。 利用状況を常に把握し、自転車が一部に偏らないよう専用の運搬車で移動させる。 市によると、コンピューター管理による登録制レンタルサイクルは国内初で、年間百四十六トンの二酸化炭素が削減できると算出している。 環境に優しいバイオマス(生物資源)の有効利用を目指すため、市内の間伐材を使った固形燃料「木質ペレット」の製造工場も整備する方向だ。 燃焼効率が良く灯油の代替燃料になるが、県内に製造工場はなかった。 市は利用を拡大するため市内で生産、供給する仕組みが必要と判断。 市は同事業で年間千八百三十二トンの二酸化炭素を削減できると見込んでいる。 レンタルサイクル、木質ペレットとも、行政だけの取り組みでは限界がある。 マイカーをなるべく使わないという市民の意識、地球に配慮した暖房設備を使おうという民間企業の志は重要だ。 先駆的な取り組みに対して全国の自治体が注目しており、実際に効果を上げ、環境に配慮することを目指す都市のけん引役となってほしい。
Apr 26, 2009
アンパンマン、ポケモン、ドラえもん…。 どれも子どもたちに大人気のキャラクターだ。 テレビのアニメなどで、大人も一度は目にしたことがあるだろう。 小さい子どものいる家庭は、ピカチュウやカレーパンマンなどの人形であふれ返っているかもしれない。 「片付けなさい」と、お母さんの小言が聞こえてきそうだ。 同じような母親の嘆きは、江戸時代にもあった。 式亭三馬の滑稽(こっけい)本「浮世風呂」には、最近の子どものおもちゃはぜいたくになったと、ため息をつくさまが描かれる。 「絵」を集め過ぎているのを見て、肝をつぶしたという話も出てくる。 ここで言う「絵」は、当時の浮世絵師が手掛けた子ども向けの「おもちゃ絵」の一つだ。 妖怪の百科事典のような絵札は、その名も「化物(ばけもの)尽くし」。 妖怪は当時の子どもたちにとって、今のポケモンやウルトラマンに登場する怪獣のような親しい存在だったのかもしれない。 そんな江戸時代の妖怪たちの絵は日本の漫画やキャラクター文化の源流ではないだろうか。 姫路の県立歴史博物館できょう始まる特別展「妖怪天国ニッポン」(六月十四日まで)が展示に込めた視点だ。 文字通り「化け物尽くし」の感がある。 おならで妖怪を退治する絵巻もあり、ユーモラスな雰囲気さえ漂う。 江戸時代の人々は疫病や飢饉(ききん)に苦しめられたが、大きな戦争はなかった。 妖怪もアニメのキャラクターも平和な時代だからこそ生まれるのかもしれない。
Apr 25, 2009
国会議員の世襲制限をめぐる議論が活発化してきた。 民主党は親族が同じ選挙区から続けて立候補することを認めない方針を確認、マニフェスト(政権公約)に盛り込む方向である。 一方、自民党は菅義偉選対副委員長が旗振り役になってマニフェストへの明記に意欲を見せている。 しかし、党内には異論が根強く、結局、民主党に先を越された格好だ。 永田町で石を投げれば、世襲議員に当たると10年以上前からいわれている。 麻生内閣も3分の2を占めている。 しかし、有能な新人の政界進出を妨げるなど世襲の弊害はこれまでも指摘されてきた。 制限論が浮上したのをきっかけに、国民的議論に盛り上げていって欲しい。 世襲が必ずしも悪いというわけでない。 「職業選択の自由」は憲法で保障されている。 幼いころから政治の世界を見聞きし、各分野で政策通といわれる議員も少なくない。 衆院議員を長年務めた山中貞則氏は生前、「政治家は1代限り」と語り、身内から後継を立てなかった。 それは世襲の弊害を懸念したからではなかったか。 首をかしげたのは小泉純一郎元首相が政界引退表明後、すぐに次男を後継指名したことだ。 自らも世襲議員の小泉氏は、圧倒的な強さで小選挙区での当選を重ねた。 次男が地盤(後援組織)、看板(知名度)、カバン(資金)をそっくり引き継げば、他の自民系候補が名乗りを挙げるすきはないだろう。 安倍晋三元首相、福田康夫前首相が2代続けて政権を放り出し、世襲議員の資質を問う声も高まった。 同じ世襲議員である麻生太郎首相は制限に慎重だ。 自民党は国民の批判に応えられる内容をマニフェストに明記できるよう論議してほしい。 共同通信の調べによると、次期衆院選の300小選挙区の立候補予定者のうち、国会議員を父母や祖父母に持ち地盤を継承したのは自民党で約90人に上る。 民主党は約20人で自民党の方が圧倒的に多い。 民主党が世襲制限の方針を打ち出したのは自民党の事情を見透かし、次期衆院選に向けて違いをアピールする狙いがあると思う。 しかし、制限の対象など詰める上で、身を切ってでも国民が納得する基準を設けなければ選挙対策とのそしりは免れられないと思う。 有権者の側にも、利権をそのまま受け継いでほしいとの期待から世襲を容認してきた面はなかったのだろうか。 あらためて考える機会にしたい。
Apr 25, 2009
紀元前に書かれた中国の文献に「うさぎは明月の精なり」とある。 月では「うさぎが薬を搗(つ)いている」とも(諸橋轍次著「十二支物語」大修館書店、1968年刊) そういう記述がなされた時代に築城の起源を見ることができる世界文化遺産に「万里の長城」がある。 「月からも見える」という言い方をされてきた。 見た人がいるわけではない。 うさぎから聞いたわけでもない 何はともあれ・ともすれば、などの意味で使う「とかく」は漢字では「兎角」と書く。 うさぎに角(つの)はない。 兎角はもともと「あり得ない」ことの例えだ。 「月から見える」もそのたぐいかと思われた。 中国では小学校で「宇宙からも見える」と教えていた、と聞く。 2003年に怪しくなった。 中国初の宇宙飛行士・楊利偉さんは「見えなかった」。 翌年、米国人宇宙飛行士が撮った写真(180ミリレンズ)には写っていたらしいが… 話を戻す。 ものの例え方にもお国柄が出る。 「兎角」を生んだ国は表現のスケールが何かと大きい。 唐代の国民的詩人・李白の詩には「白髪三千丈」「千里を1日で」「万重の山」などが出てくる。 「万里の長城」は8850キロ、と中国政府は先週発表した。 明代の長城を対象に塹壕(ざんごう)などを含めて総延長を調べ直していた。 これまでより2500キロ長い。 中国の現在の1里は500メートルだから「1万7700里」となる。 従来の長さでも「万里」を超えていた。
Apr 24, 2009
「SMAP」の草なぎ剛さん(34)が容疑者になってしまった。 国民的人気を保ち続け、重圧は相当だったのではないだろうか。 しかし、「特別なオンリーワン」の芸能人だ。 酒の飲み方は慎んでほしかった。 SMAPといえば子供からお年寄りまで知っている超人気グループだ。 メンバー五人のうち、草なぎ容疑者は穏やかさや人のよさがあふれるキャラクターで「草食男子」をイメージした場合の代表格ともされている。 それだけに、警察に逮捕されたと聞けば、たいていの人は驚いてしまう。 ましてや、都心の公園で未明に全裸になっていたという公然わいせつ容疑自体が信じられないファンもいるに違いない。 まず、テレビ業界に衝撃が走った。 草なぎ容疑者は数多くの番組に出演し、CMにも起用されているからだ。 逮捕直後からCMの放送中止決定が相次いだのは、容疑の内容が影響しているだろう。 草なぎ容疑者は韓国語を話し、韓国では「チョナン・カン」の名前で親しまれている。 逮捕でもっともショックを受けているのは国内にとどまらない彼のファンだろう。 「なぜ」の思いが尽きない。 逮捕から五時間後の飲酒検知で呼気一リットル当たり〇・八ミリグラムのアルコール分が検出されたという。 酒気帯び運転となる摘発基準と比べた場合、五倍以上の濃度だ。 警察官が現場に着いた際、全裸で芝生の上に座って「何が悪い」と叫んでいたとされる状況からも泥酔状態だったとみられる。 売れっ子の芸能人になれば買い物をしたり、外で食事するといった私生活でも服装や振る舞いに気を使うだろう。 この十年間、トップに君臨してきたSMAPのメンバーであれば、なおさらだ。 所属の芸能事務所はタレントの管理が厳しいといわれ、模範青年であることが求められる。 重圧はかなりなものと思われる。 酒好きという。 多忙の中で安心できる場所と相手だったために、つい酒量が過ぎてしまったのではないかと想像はできる。 裸でなければ警察の対応は異なっていたかもしれない。 しかし、酔って夜の公園で騒いだとしても、してはいけないことだ。 プレッシャーは理解できるが、社会的責任を心得るべき年齢だ。 二〇〇一年にメンバーの稲垣吾郎さんが逮捕された際、仲間として衝撃度と影響を思い知らされたはずではなかったか。 彼も、エンターテインメント業界も、失うものは大きすぎる。
Apr 24, 2009
ロングラン上映を続ける米アカデミー賞受賞映画「おくりびと」で主役を演じた本木雅弘さんは、納棺師の仕事を「洗練された所作が非常に美しく、茶の作法のようであり、パフォーマンス性もある」とインタビューで答えている。 静かに遺族の心に寄り添う。 そうしながらも、しっかり最後の記憶として残るようにサービス的抑揚もつける。 「その姿勢は曲を仕上げていく作曲家、もしくは指揮者のような立場でもある」と。 県内には「おくりびと」が約四百人いる。 映画のヒットもあってか、今春、冠婚葬祭会社で「葬儀の仕事に携わりたい」と入社を希望する若者が例年より多いそうだ。 納棺の儀式はもちろん、遺族との打ち合わせから通夜の準備、葬儀の司会まで運営全般をこなすという。 以前は「看(み)取り」の場は自宅であり、家族みんなで体をふき、お別れをしたから「死」は身近なものだった。 葬儀は近所や町内会の人々も協力した。 しかし、人生の最期を病院で迎えるようになり、核家族化や地域社会のつながりの希薄化が進んだことに伴って、人々は「弔う」ことから遠ざかっていったようだ。 「おくりびと」たちは、生前の人となりを遺族らに思い起こさせる。 と同時に、「看取り」や「死」へのかかわりが、現代社会で薄らいでいる現状を補う役割を担っているように思われる。
Apr 23, 2009
二〇一六年の夏季五輪開催を目指す東京で、国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会の現地調査が行われた。 大会ビジョンや財政についての説明を受けたり、会場予定地を視察したりしたムータワキル委員長は「東京のビジョンやコンセプトに大変感銘を受けた。五輪を開催できることが分かった」と総括し、東京の開催能力を評価した。 入念な準備が奏功したようで、心配された視察時の交通渋滞などのマイナスイメージを与えることもなく、まずは招致レースの一つのヤマ場を無難に乗り越えたと言える。 ただ、今回の評価は儀礼的な意味合いもあり、委員長の言葉をそのまま受け止めるわけにはいかない。 五輪にはシカゴ(米国)、リオデジャネイロ(ブラジル)、マドリード(スペイン)の三都市も立候補している。 各都市の調査報告書を踏まえて開催地を決める十月のIOC総会までは気が抜けない。 一九六四年以来、五十二年ぶりの開催を目指す東京がアピールしたポイントは、「環境」「平和」「コンパクト」の三つである。 「環境」では競技施設への太陽光パネル設置や電気自動車利用などによる「世界初のカーボン(炭素)マイナス五輪」、「平和」では戦争放棄をうたった憲法を根底に据え、「平和に貢献、世界を結ぶ五輪」との理念を打ち出した。 「コンパクト」では大半の競技施設を半径八キロ以内に集中させる「世界一コンパクトな五輪」を掲げた。 地球温暖化対策は今や世界的な課題であり、日本はそれをけん引する優れた環境技術を持っている。 また日本は戦後一貫して平和の歴史を築いてきた。 世界に平和を呼び掛け、地球に優しい五輪を目指すことを評価して欲しいものだ。 招致レースで次のヤマ場となるのが、六月にスイス・ローザンヌで行われるIOC委員へのプレゼンテーションだ。 シカゴはオバマ米大統領の地元、リオデジャネイロは南米初の五輪開催、マドリードは一二年大会招致で善戦した実績などを、それぞれアピールしている。 強力なライバルに負けないよう、東京開催の意義をしっかりと訴えて欲しい。 ただし、注文がある。 麻生太郎首相は「建てるべきものは建てます。必要な資金は手当てします」と国の全面支援を約束した。 しかし、財政事情は厳しく、百年に一度といわれる経済危機からの脱出時期も不透明だ。 経費を極力抑える工夫を求めたい。 「東京一極集中が進み、地方との格差拡大を招く」との指摘のほか、「オリンピックより福祉を」と招致に反対する市民団体もある。 五輪は経済効果を生み、閉塞(へいそく)感に陥っている日本を元気づけるのに役立つかもしれないが、今なぜ東京に必要なのかが伝わってこない。 こうしたことが、東京開催への国民支持が他都市に比べて低いことにつながっているのではないだろうか。 東京五輪の招致には、国民の理解と盛り上がりが不可欠ではないだろうか。
Apr 23, 2009
竹のかさをかぶった犬の置物を土産にもらったことがある。 「竹」の下に「犬」で「笑」いを招くという縁起物。 楽しい漢字遊びである。 漢字能力検定協会の不祥事は、私たちが大事にする漢字文化を食い物にした。 退職してもいないのに、トップに退職金が支払われたとも報じられた。 ヘンな話がまかり通る。 昨年暮れに選ばれた1年を表す漢字は「変」。 何のことはない、本家本元のゆがんだ姿を言い当てる字だった。 漢字には不思議な力があるのかもしれない。 越後の僧、良寛さんに「天上大風」の逸話がある。 たこ揚げに興じる子どもたちのたこに、その文字を書いてやったら、たちまち空高く揚がったという話だ。 「漢検だこ」も、ブームの追い風に乗ってぐんぐん揚がったが、ここに来て失速してしまった 前理事長は「いまの心境を漢字1字で」と問われ、無言だったそうだ。 過去の「今年の漢字」には「毒」「金」「災」など、ふさわしいのがいくらもあるのだが、よもや口には出せないだろう。 年末の恒例になった漢字の募集だが、もうやめどきかもしれない。 やっても「恥」や「怒」が殺到するに決まっているからだ。
Apr 22, 2009
7月25日の夕刻、その自治会が主催する夏祭りが始まった。 家族連れで、友達同士で、楽しいひとときになるはずだった。 地域の主婦らが作ったカレーの香りが、会場に三々五々集まってきた人々の食欲を刺激していた。 間もなく、カレーを食べた住民から吐き気を訴えたり、嘔吐(おうと)したりする人が相次ぎ、会場は大混乱に陥る。 翌朝にかけ4人が急性ヒ素中毒のために死亡、63人が病院で手当てを受けた。 亡くなったのは自治会会長と副会長、小学4年の男子児童、高校1年の女子生徒だった。 彼らが唐突に死ななくてはならない理由など、みじんもなかった。 1998年夏、約70世帯が暮らす和歌山市内の地域コミュニティー「園部第十四自治会」で起き、社会を震撼(しんかん)させた毒物カレー事件である。 この事件で殺人罪などに問われた林真須美被告に対し、最高裁が被告の上告を棄却する判決を言い渡した。 死刑が確定する。 被告が犯行を否認して無罪を主張、動機が不明という難しい裁判だった。 最高裁判決は「被告が犯人であることは、状況証拠を総合することで、疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」とし、長年にわたった保険金詐欺に絡む殺人未遂など複数の犯行にも触れて「犯罪性向は根深い」と指摘した。 一審で、カレーに含まれていたヒ素と、被告宅の台所から発見された微量のヒ素を、最新の放射光施設「SPring(スプリング)8」で科学鑑定し、「同一」とする結果が出たことも、裁判の行方を決める要素の1つになった。 一審の初公判から10年近い歳月を費やした裁判で、私たちが最も知りたかったのは、なぜ何ら罪のない人々を無差別的に殺傷しようとしたのか、標的を定めない殺意が、一体どのようにして生まれたのかだった。 その点が十分に解明できなかったのは残念だ。 この事件後、各地で模倣犯とみられる事件が相次いだ。 社会には、格差の拡大や孤立感の深まりなど、さまざまな理由で方向性を持たない不満や怒り、憎しみなど負の感情が積もっており、毒物カレー事件が引き金になって、それが連鎖的に噴き出した感があった。 現代社会の底に潜むこのようなつかみどころのない破壊衝動が、例えば昨年6月に東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件のように、様相を変えながら時折表面化しているように思えてならない。 ところで、毒物カレー事件が発生した当時、マスコミ各社の取材陣が現地に大挙して押し寄せ、メディアスクラム(集団的過熱取材)と呼ばれる状態が生じたことを、私たちは覚えている。 いかに衝撃的な事件であろうとも、被害者、容疑者、地元住民などすべての人の人権を侵害するようなことがあってはならないと思う。 この事件は、報道のあり方を考え直す一契機にもなったのではないだろうか。
Apr 22, 2009
春の健康診断のシーズンである。 昨年からは「メタボ健診」も加わり、四十歳から七十四歳の健康保険加入者は年に一回、必ず受けなければならない。 肥満が生活習慣病の元とされ、心筋梗塞(こうそく)などを発症する前に予防することが狙いだ。 メタボ健診では、まず腹囲を測ることになっている。 男性は八五センチ、女性は九〇センチ以上だと肥満とされ、中性脂肪や血糖、血圧のデータにチェックが入る。 逆に腹囲が基準値以下なら保健指導もなく、「大丈夫」となるはずだった。 ところが、心筋梗塞など循環器の病気の予防には、肥満を重視するメタボ対策より高血圧対策が重要とする研究が出てきた。 厚生労働省の研究班が先ごろ発表したもので、四十歳から六十九歳の日本人男女約二万三千人を、約十一年間追跡調査した結果という。 調査結果によると、心筋梗塞や脳梗塞を起こした患者のうち、男女とも半数近くは高血圧が原因と推定された。 さらに肥満でないにもかかわらず、高血圧や高血糖など他の要因で発症したと推定される患者は、男女とも10パーセント以上いるという。 太ってないから安心とは、もう言えないらしい。 もっとも、分別ある大人なら自分の体は自分で守るのが原則のはず。 健康診断でどこか悪いデータが出たなら、医者に診てもらう。 「メタボ」という流行言葉に踊らされてはいけない、ということだろう。
Apr 21, 2009
基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げる国民年金法等改正案が衆院を通過し、審議は参院に移る。 民主党が抜本改革を求めて反対しており、難航は必至だ。 仮に成立するにせよ、引き上げにより直ちに年金財政が安定するわけではない。 将来にわたり持続可能で国民が安心できる年金制度のあり方については、引き続き与野党で議論を深める必要がある。 国庫負担割合を現行の三分の一強から引き上げるのは、以前から政府が約束していたことである。 引き上げ時期が遅れると積立金を取り崩さねばならず、それだけ年金財政は悪化して将来の給付水準に影響するとされる。 ただし現状は、安定財源の担保がないままの見切り発車だ。 引き上げに必要な財源は年間約二兆五千億円に上ることから、前提として、税制の抜本改革を行い安定財源を確保することが挙げられていた。 しかし、確保の見通しは立たず、本年度と来年度に限り、特例的に財政投融資特別会計の「埋蔵金」を充てるとしている。 要は先送りされただけである。 政府は六月までに税制改革の道筋を示す中期プログラムを改定するため準備に入っている。 基礎的財政収支(プライマリーバランス)に代わる新たな財政健全化目標を検討しており、消費税率が焦点となるのは確実だ。 麻生太郎首相は引き上げに意欲を示しているが、同時に景気回復が前提条件とも強調している。 引き上げには慎重な意見も多く協議は難航するだろう。 不況対策などから当面は財政規律を棚上げせざるを得ない状況であり、安定財源を確保できる時期は見通せない。 厚生労働省が二月に公表した公的年金の財政検証に基づく今後百年の将来試算では、現役世代の収入に比べた厚生年金の給付水準(所得代替率)が50パーセントを維持できるとした。 厚労省が掲げるモデル世帯夫婦の場合の試算だが、積立金の運用利回り、賃金上昇率の長期見通しなどが現状とはかけ離れた楽観的数値となっており、「50パーセント維持」ありきの試算ではないかと批判されている。 さらに先日、保険料納付率が現行水準のままだと将来の給付水準は50パーセントを割り込むとの試算が明らかになった。 平成十九年度の納付率は63・9パーセントにとどまっているが、二月の財政検証は納付率80パーセントの前提で試算していたという。 80パーセントというのは、社会保険庁が目標に掲げている数字にすぎない。 もちろん、納付率は上がるよう努力してもらわねばならないが、まず信頼を取り戻さないことには上昇は期待できない。 宙に浮いた年金記録は約五千万件のうち、持ち主に統合できたのは二割にとどまっている。 厚生年金の記録改ざん問題は現在も尾を引いている。 財源の不確かさも都合の良い試算結果も、総選挙前に国民の負担論議を避けているために生じているのではないか。 まずは経済の立て直しが最大の課題であるのは疑いないが、その鍵となる個人消費は将来にわたる安心感があってこそ活発となるはずだ。 年金制度はその大きな柱となる。 与野党は政局の思惑を離れ、将来を見通した議論をしてもらいたいものだ。
Apr 21, 2009
自動販売機の売り上げが減っていると、飲料会社の幹部が嘆いていた。 自動車工場や電機メーカーの操業停止や短縮が響いているという。 生産ラインが止まれば、自販機で飲み物を買う社員が少なくなるからだ。 代わりに売れているのが水筒だ。 ある大型雑貨店では、エスカレーター前の一等地に弁当箱を集めたコーナーを設けた。 その隣に、さまざまな形や色の水筒が並ぶ。 前年比40%増の売れ行きだという。 職場でも弁当持参組が増えたきたらしい。 弁当とお茶の昼食に切り替えれば小遣いを減らさなくてすむ。 給料が増えない中で支出をどう抑えるか。 サラリーマンの知恵の絞りどころでもある。 企業も消費者の節約志向に対応したところが業績を伸ばしている。 高機能・低価格が売り物のユニクロを展開するファーストリテイリングは二月期決算で過去最高益を記録した。 円高を背景に商品を値下げした家具のニトリも増収増益となった。 お得感をいかにアピールできるかが商売の鍵のようだ。 庶民の生活防衛はあらゆる場面に及んでいる。 休日のリサイクルショップは掘り出し物を探す人たちでにぎわう。 流行遅れの服を「お直し」に出す人も増えている。 上越市では中学の制服を卒業生から新入生に譲る習わしが広がっている。 ものが簡単に売れる時代でないことは確かだ。 だが「倹約倹約」と眉間(みけん)にしわを寄せてばかりもいられない。 不用品を融通し合えるのも、人とのつながりがあればこそ。 先行き不安な時代だからこそ、友人知人らとの付き合いだけは節約したくない。
Apr 20, 2009
セイタカアワダチ草が密生したり、低木に覆われたりする田畑を、あちこちで見かけるようになってもう随分になる。 作付けされず、荒れていく耕作放棄地だ。 その実態について、農林水産省が初の全国調査を行い、先ごろ結果を発表した。 現状のままでは耕作できない農地は二十八万四千ヘクタールあり、うち十三万五千ヘクタールでは森林・原野化が進む。 あくまで推計値だが、兵庫県の二割近い広さの農地が修復できないまでに荒廃していることになる。 農業の衰退や過疎化が止まらない窮状を、あらためて示す数字といえる。 農水省は、本年度予算に二百億円を計上して新交付金を設け、二〇一一年度をめどに耕作放棄地の解消を促す方針だ。 ひとたび荒廃が進み、保水力が低下してしまえば、耕地への復元は容易ではない。 一方で、草刈りや整地などを施せば、八万二千ヘクタールの農地が復元できるという。 地域の実態に即した解消策を見つけ、農地としての有効利用を急がなければならない。 県内の実態はどうか。 先の数字とは基準が異なるが、四年前の調査では耕作放棄地が五千ヘクタールを超えた。 耕地の総面積は七万七千ヘクタールだから、その7%近くが利用されていないことになる。 耕作放棄の理由について、全国農業会議所が実施した調査によると、「高齢化・労働力不足」が最多で、「農産物価格の低迷」が次ぐ。 「土地条件が悪い」「鳥獣害」なども挙がる。 現実には、多くの要因が重なって耕作放棄地を生んでいる。 農業の担い手を地道に育て、地域をしっかり支える多角的な対策が欠かせない。 既に、そうした対策を実践する地域が多い。 その一つは、高齢化や離村などで個人では耕作できなくなった農地を預かり、集落で作付けや収穫を担う集落営農だ。 六集落の全農家が加わる加古川市の八幡営農組合では、水稲や麦をつくるだけでなく、そばなどの特産化や直販にも取り組む。 こうした営農組合は、県内だけで九百を数える。 地域に活力をもたらし、耕作放棄地対策としても有効なだけに、活発な取り組みに期待したい。 但馬や淡路では、遊休農地を和牛放牧に使う農家もある。 都市住民が農作業を支えるボランティアも広がってきた。 地域の持ち味を生かした対策を工夫し、耕作放棄地を出さない農村にする。 それは、食料自給率を上げ、食の安全・安心に応えることにもつながっていくと思う。
Apr 20, 2009
虎狩りならぬ「恐竜狩り」を仮想体験できるテレビゲームが根強い人気を集めているのだそうだ。 捕獲した恐竜の肉を食べ、時には身の丈をはるかに超える武器を振り回す勇壮さがたまらないのだろう。 実生活からたくましさが消えた裏返しのような気がする。 そう考えると、思い当たる現象がある。 まずは男のブラジャー着用だ。 女装の趣味が高じてというわけではない。 ごく普通の男性が愛用しているというのである。 ネット通販大手の楽天で一番売れている男性下着だという。 「集中力が上がった」「優しくなれる」と大変な反響を呼んでいると聞いても、にわかには信じられない。 パッドを入れて、胸板を厚く見せることもできるらしい。 海外にも記事が配信された。 日本発のファッションとして、世界中で流行する日が来るのだろうか。 今や男の美容は当たり前になっている。 化粧はもちろん、マスカラやマニキュアも施す。 ガードルをはいて、美脚と美尻効果を狙い、日傘も忘れない。 ズボンから派手な下着も平気でのぞかせる。 「草食系男子」が急増中らしい。 女性と友達感覚では付き合うが、そこから先は淡泊な男性のことだ。 二、三十代で顕著という。 ファッションに性差がなくなっていることとも無縁でないのかもしれない。 一方、女性は恋愛に積極的な「肉食化」が進んでいるといわれる。 「行って来い」で男女のバランスは取れているようにも思えるが、このままで大丈夫か、と気になってくる。 おっと、気付けば最近、野菜ばかり食べている。 こっちは年のせいか。ヽ(°▽、°)ノエヘヘヘヘ
Apr 19, 2009
脳死は人の死なのだろうか。 子どもの臓器提供は認めるべきだろうか。 人の命に深くかかわる臓器移植法改正案が今国会で採決される可能性が強まってきた。 改正法案は議員立法による三案が衆院で継続審議となっている。 与野党幹部は早期に法案を成立させる方向で一致した。 自民、民主両党などは採決での賛否を議員個人の判断に委ねる方針といわれる。 法案が三つもあり、党議拘束の解除が公言されるところに臓器移植問題の難しさが象徴的に表れている。 各人の死生観や宗教観にかかわっているからだ。 命の重みを考えながら、国会の審議を注視したいと思う。 一九九七年に成立した現行法では、脳死状態での臓器提供は本人の意思表示と家族の同意を求めている。 十五歳未満は提供できない。 改正案のA案は、脳死を一律に人の死とし、年齢にかかわらず家族の同意で臓器提供できる、B案は、提供年齢を十二歳以上とする、C案は、移植に慎重な立場から、脳死の定義を厳格にするという三案に分かれる。 採決への動きが急になってきたのは、世界保健機関(WHO)が海外での移植を規制する方針を五月の総会で決める見込みがあるからだ。 移植は当該国の患者を優先すべきだ。 国際的な臓器売買につながっているケースもある。 WHOの指摘にはうなずける点が多い。 国内での移植のハードルが高い日本では、海外で臓器提供を受ける患者が多い。 それが今後難しくなる。 特に子どもの場合は深刻だ。 一刻も早い法改正は親の切なる願いだと思う。 しかし、子どもの脳死判定は大人より難しいとされている。 親に虐待されて脳死となった疑いがある場合、臓器摘出の対象から除く必要がある。 こうした場合の対応がきちんと図れるのだろうか。 審議はA案を軸に進められるとみられる。 この案では本人の意思が不明な場合でも提供は可能となる。 しかし、脳死を人の死とすることには抵抗感を持つ人は多い。 脳死状態にありながら、数年間、心臓が拍動を続けた例もある。 脳死を一律に人の死と位置付ければ、終末医療にも影響が出るとの指摘がある。 国民にとっても判断は難しい。 臓器移植を望む患者の気持ちは尊重したい。 一方で、臓器を提供する人や家族の協力がなければ、移植医療は成り立たないのも現実だ。 法改正の動きは四年ほど前にあったが、実質的な議論は深まらなかった。 国民の理解がなければ事態は変わらない。 WHOが示す規制への対応を急ぐあまり、国会での審議が拙速になってはならないと思う。
Apr 19, 2009
「それを作れば、彼が来る」。 不思議な声に導かれ、広大なトウモロコシ畑をつぶし、一人黙々と球場を作っていく。 ケビン・コスナーが貧しい農民を好演していた。 やがて完成した球場に「彼」は現れる。 亡くなったはずの名選手ジョー・ジャクソンの幻影だ。 以前、米映画「フィールド・オブ・ドリームス」を見て、アメリカ人にとって野球は、ある種の神聖さを帯びたスポーツだと感じた。 目の前のゲームを、百年を超す球史に重ね合わせる。 記録や伝説を織り込んで、球場全体が「過去と現在」の夢物語を育てているかのようだ。 イチローがまた金字塔を打ち立てた。 思えば、大リーグで最初の快挙は、「彼」ジャクソンのルーキー最多安打記録の更新だった。 今回は大リーグ記録ではないが、日米通算十八年目で最多安打の日本プロ野球記録を塗り替えた。 記録を持っていた張本勲さんが見守る前での「大あっぱれ」だ。 先の映画を思い出して感動したのは、イチローが満塁アーチを放ったおとといの方だ。 全選手が背番号「42」ではないか。 黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソンの一九四七年のデビュー記念日を、球場全体が祝っていた。 「ヘーイ、黒んぼ。なぜ綿畑に帰らないんだい」(ロビンソン自伝)。 人種差別の言葉を浴びながら、ロビンソンは安打を打ち続けることで、相手を黙らせていく。 この野球の母国で今年、黒人大統領が誕生した。 「過去と現在」が織り成す夢舞台で、イチローら日本人大リーガーは、どんな伝説を加えてくれるだろう。
Apr 18, 2009
日米通算3086安打。 数々の記録を塗り替えてきた米大リーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手(本名鈴木一朗)にまた一つ勲章が加わった。 十六日、本拠地で行われたエンゼルス戦の第二打席で、ライト前に放った痛烈な一打が、張本勲さんの持っていた通算安打の日本記録を更新したのだ。 野球の国別対抗戦(WBC)で日本が世界一に輝いた興奮が、まだ冷めない中での快挙である。 テレビの前で「あっぱれ」と喝采(かっさい)の声を上げたファンも多かったのではないだろうか。 圧巻は前日の第五打席だった。 張本さんの記録にあと一本と迫った七回一死満塁のチャンスに本塁打を放ち日本記録に並んだ。 低めのカーブをバットにうまく乗せて運んだ。 イチロー選手ならではの技ありの本塁打だった。 スタンドでは張本さんも見守っていた。 記録への重圧は並大抵なものではなかったはずだ。 それでも集中力を鈍らせずボールに向かっていく姿勢には、すごみさえ感じた。 ただ「ホームランは狙って打つ」と公言するイチロー選手も、この日ばかりは「必死ですもん。あの場面は」と興奮を隠さなかった。 それだけこの記録の重さを感じていたのだろう。 イチロー選手にとっては十五日が開幕戦だった。 開幕直前に胃潰瘍(かいよう)を患い、初めて故障リスト(DL)入りを経験した。 病の原因はWBCの連覇へのプレッシャーともいわれた。 長嶋茂雄元巨人監督は「スーパースターはファンのどんな無理な注文にも答えを出さないといけない」と語っている。 DL入りのハンディを感じさせず、初戦で、しかも満塁本塁打で記録に並ぶ。 ミスターベースボールも脱帽のスーパースターぶりではないか。 イチロー選手は日本のオリックス時代の九年間で1278安打を記録し、大リーグでは昨年までの八年間で1805安打を積み重ねてきた。 日本では一九九四年に初めて年間200安打を達成、二〇〇〇年までの七年間、首位打者を守り続けた。 渡米した〇一年からの八年連続200安打は、大リーグ記録に並ぶものだ。 〇四年には大リーグ記録を大幅に更新する262安打を放った。 内野安打を生む俊足とレーザービームと称される強肩がファンをとりこにした。 走攻守に輝く日本のヒーローは、本場米国の野球観さえ変えたといわれる。 三十五歳のイチロー選手にとって3086安打は通過点に過ぎない。 シーズン200安打はどこまで続くのか。 その先にあるのは日米通算4000安打、大リーグ3000安打だ。 イチロー選手の目標に向かう姿勢が、私たちに希望と勇気を与えてくれる。
Apr 18, 2009
漢字一字で今の心境を表せば? 三時間に及んだ会見で、こんな粋な質問があったのに「考えていない」とは情けない。 これが漢字ブームの中心にいた人物だと思うと、がっかりだ。 急成長した日本漢字能力検定協会の理事長と副理事長の親子が、公益法人「私物化」を批判され、辞任した。 安くはない検定料を払い、年間二百七十万人もが挑む「漢検」ブランドを育てた。 脱サラした理事長だけに、商才の方はあったようだ。 年の瀬恒例となった「今年の漢字」発表など、話題づくりも巧みだった。 漢検のワンマン体制が崩れ、昨年の漢字「変」を地でいった格好だ。 でも「謝」の一字こそ、親子の口から聞きたかった。 諸橋轍次博士が、生涯をかけて編さんした大漢和辞典の第十巻に「謝」がある。 退く、しぼむ、礼を述べる、あやまる、つぐなうなど多くの意味を持つ。 あの辞任会見にぴったりの一字だと思う。 諸橋博士には戦時中、頼まれても決して書かなかった一字があったという。 教え子が次々と学徒出陣していく。 「祝○○君出征」の揮(き)毫(ごう)を請われると、「祝とは、とても書く気になれない」とつぶやいていたという。 空襲で膨大な漢字資料を焼失し、失明に見舞われながらも、博士は世界最大の漢和辞典を世に出した。 一文字に託す愛情と執念は、理事長親子とは天地の差だ。 「行不由径」(行くに径(こみち)に由(よ)らず)。 「学問に近道はない。大道を着実に進みなさい」。 博士は若者に論語のこの言葉を説き続けた。 漢字を蓄財の道具にするなど、考えも及ばなかったに違いない。
Apr 17, 2009
障害者団体向けの郵便料金割引制度には、いくつも穴があいていた。 郵便事業者による監視もなきに等しかった。 「心身障害者用低料第3種郵便物」となるのは障害者団体が発行する定期刊行物である。 一般的に障害者団体の財政は豊かではないから、割安料金で活動を支援しよう。 その目的は悪くない。 しかし、運用には問題が多かった。 割引制度を利用するにはまず、障害者団体であることの証明が必要だ。 従来は公共機関発行の証明書提出を条件としていた。 しかし、「公共」の定義があいまいだったため、証明書発行者は厚生労働省か地方自治体と改めた。 見過ごせないのは更新制度がなかったことだ。 最初に証明書を提出すれば、その後のチェックもなく半永久的に制度が使える。 しかも、調べてみると、公共機関による証明書提出が確認できなかったのもあったいう。 これではダメだということで、3年ごとに証明書を出させることに改めた。 さらに、年1回の定期調査のほか、特別調査が行われることになっていた。 しかし、実際にはほとんど実施されてなかったいう。 もちろん、これも改められた。 ほかにも条件があるが、順守されているかどうか、まともに調べられてこなかった。 これも改められることになった。 すきだらけだった制度運用がなぜ、引き締められたのか。 この割引制度を悪用して大量のダイレクトメールを発送していたことが分かったからだ。 昨秋、東証2部上場の印刷・通販大手ウイルコが約4年間にわたって、この制度を悪用していたことが発覚した。 自社の販売商品のDMが正規料金なら1通120円だが、障害者団体の「新聞」と称すれば8円で済む。 ウイルコは大阪市の広告代理店、新生企業(現・伸正)と組んで不正に手を染め、さらに、その輪を広げて、約30社から手数料収入を得ていたともいわれている。 大阪地検特捜部が、郵便法違反容疑で福岡市にある家電量販大手のベスト電器本社やウイルコ東京営業部(東京)、日本郵便新東京支店(同)などを一斉捜索し、同法違反容疑でウイルコのトップだった若林和芳容疑者やベスト電器元販売促進部長久保俊晴容疑者らを逮捕した。 ベスト電器とウイルコを結び付けたのは大手広告代理店、博報堂の子会社「博報堂エルグ」(福岡市)だという。 大手と言われる企業が絡んでいることに問題の深刻さを感じる。 ちょっと悪知恵の働く人間なら、穴だらけの制度を使ってひともうけしようと考えても不思議ではない。 障害者団体から名義を借りて、名義料を払っているから持ちつ持たれつですよ、と開き直るかもしれない。 しかし、まともな企業人にとっては禁じ手である。 ずる賢さとともに、目先の損得にばかりこだわる、さもしさを感じる。 大手も含めて企業人の倫理が希薄になっているのか。 心寒くなる事件だ。
Apr 17, 2009
春の陽光を浴びながら、葉が舞い散る。 木の根元や道路脇には、まるで秋のように、黄色や茶色、あるいはすすけた緑色の葉が積もっている。 常緑樹のクスノキの葉は、秋ではなく今ごろ散る。 冬も越したことだし、いっそずっと付いていてくれれば掃除も必要なくなるのだが、彼らには彼らの事情があるようだ。 樹木医の伊藤英夫さんによれば、長く葉が付く常緑樹とはいえ、細胞でできているだけに寿命はある。 古くなった葉がいつまでも付いているのは、効率が悪いだけでなく、木に負担をかける。 それなら新しい葉に交代した方がいい。 街路樹だから、木の中に有害物質がたまってくるかもしれない。 それを葉から外に出す意味も考えられなくはない。 緑色の葉が落ちているのも、それがない方が木の負担が軽くなるとの判断からだろう。 「植物は案外合理的」と伊藤さんは言う。 そうして古い葉が散った後も、木が裸になることはない。 ちゃんと新芽が準備されている。 つまりクスノキの葉は、しっかり働き、次世代をしっかり育てた上で、自分が負担になり始めたらさっと身を引くのである。 企業や自治体も、裸の季節が許されないクスノキのようなものだ。 元気に生き永らえるには、時々、葉が交代する必要がある。 例えば15年も20年も首長が代わらないのは、優秀さの証しとはいえ、本当に木のためになっているのかどうか。 クスノキの若葉の輝きに、物思う。
Apr 16, 2009
与野党は消費者庁設置関連法案の修正に合意した。 今国会での成立が確実となり、今年の秋にも消費者庁が発足する。 ここまでの国会審議への注文や今後の課題はある。 しかし消費者重視、つまり国民生活を守る一点で各党が歩み寄った姿勢は評価しても良いのではないだろうか。 政府案と民主党案の食い違いは大きかった。 修正協議で最大の焦点は監視機関の権限をどうするかだった。 法案自体のポイントともいえるこの部分で両者が互いに妥協し合えたことが、合意につながった。 消費者庁への国民の期待感は大きい。 その熱い視線を感じたからこそ与野党は修正協議に踏み切ったはずだ。 府省の縦割りを排し消費者行政を一元化する。 その狙い通りに機動的かつ有効な生活者保護の行動が取れるかどうかは今後の取り組みに懸かる。 付則には、財産上の被害者に対する救済制度の創設と、国民生活センターの在り方を含む現場の態勢整備の検討が盛り込まれた。 いずれも三年以内に方向性を固める。 重要な課題の先送りともいえる。 生産者や企業寄りになりがちな府省に消費者の視点を浸透させるには腕力がいる。 その意味で消費者庁の長官に誰を据えるかは重要だ。 民主党の主張を踏まえて権限の強化が図られた。 有識者でつくる「消費者委員会」を置くことがそれだ。 消費者庁が進める消費者行政を監視し、首相への勧告や府省への資料請求の権限を持つ。 委員会が十分に機能するかも今後の大きな課題になるだろう。 地方にとっての関心は、自治体の消費者行政や、現場の消費生活センターの取り組みが消費者庁の中でどのように位置付けられていくかだ。 むしろ消費者に向けて開く地方の窓口機能の充実こそが、消費者行政強化に向けたポイントともいえる。 地方の消費生活相談員の人件費の一部国費負担が与野党合意に盛り込まれた。 特に悪質商法などの犠牲になりやすい若年層、高齢者層を救う安全網の拡充につなげていって欲しい。 消費者庁構想は、食品偽装や悪質商法、製品事故などが相次いだことを受け、福田康夫前首相が改革の目玉として打ち出した。 この時点で既に遅きに失した感は否めず、昨年九月の法案提出後も景気対策が優先され、与野党対立の中でたなざらしにされた。 その経過は国民に政治の機能不全を印象付け、不信感を広げた。 消費者行政を確かなものにすることで信頼を取り戻す必要があると思う。
Apr 16, 2009
タイは、きょうまでの三日間が「ソンクラーン」という旧正月だ。 都会で働く若者は帰省して仏像を洗い、先祖を敬う。 水掛け祭りでも知られる。 ドラム缶に水をため、辺り構わず水を掛け合う。 トラックから放水する人、水鉄砲でずぶぬれになる人、観光地には鼻で散水するゾウも登場する。 どうか耕作期は雨に恵まれますように。 水を噴き上げる大蛇の神話にちなんだ雨ごいでもある。 だから、豪快な水まきが許される無礼講なのだ。 こんなめでたさに便乗した騒乱というしかない。 首都バンコクで反政府勢力のデモ隊が暴徒化し、死傷者を出した。 水鉄砲どころか、火炎瓶が投げられ、バスが炎上した。 治安部隊は銃を威嚇発砲する非常事態となった。 二〇〇六年九月に首相の座を追われたタクシン氏が、国外からデモを呼び掛けたという。 地方の農民や新興財閥が支持する「赤シャツ」のタクシン派は、ASEAN会議をぶち壊し気勢を上げた。 一方、昨年の空港占拠が記憶に残る「黄シャツ」の現政権支持派は、都市部の中流層が中心という。 第二次大戦後、未遂を含め約二十回もクーデターが起きたお国柄である。 利害関係が複雑に絡み、敵対感情を水に流すのは容易でない。 きのう国連安保理は、北朝鮮のミサイル発射を「非難」する議長声明を採択した。 「六カ国協議は必要なくなった」。 北朝鮮は協議のいすをける構えを見せる。 どんなに険しい道のりになろうと、話し合いを根気よく続けるしかない。 政治の安定も、和平も、暴力と脅しでは実現できない。
Apr 15, 2009
「日本が目指すべき国家像を議論してほしい」。 麻生太郎首相は初会合で、こう督励した。 それならまず首相自身が国家観をはっきり語るべきではないだろうか。 各界の有識者らで構成する政府の「安心社会実現会議」が十三日、初めて開かれた。 会議は麻生首相の肝いりで設置されたものだ。 社会保障や財政など国の基本にかかわる政策を中長期的な視点で話し合う。 首相は「安心できる社会の姿とそれへの道筋を議論する」と述べ、中身については「雇用、医療、年金・介護、子育て支援など政策目標や優先順位が議題になる」と語っている。 初回から、小泉政権が進めた構造改革路線への批判や消費税を医療や年金に使うことを考えるべきだとする意見が出された。 いずれも日本の将来を展望する上で大切なテーマである。 首相の姿勢があいまいなままでは、議論の核を欠くのではないだろうか。 首相は一月の施政方針演説で「安心と活力ある社会」の実現を訴え、「市場に委ねればすべてがよくなるというものではない」「中福祉を目指すなら中負担が必要だ」と強調した。 しかし、これでは分かったようで分からない。 安心社会構築に向けて除くべき不安を示してこそ実現への道筋が浮かび上がる。 明確にしてほしいのは構造改革路線への評価だ。 首相も小泉内閣の一員だった。 自らのかかわりを含めて説明することが求められる。 国家像や国家観は政治家や政党にとって最も重要な哲学であり、そのスタンスを定める基盤である。 ここをゆるがせにして、有識者会議に議論を任せるようでは責任転嫁ではないか。 安心社会実現会議は六月に提言をまとめ、その内容は経済財政運営に関する二〇〇九年の「骨太の方針」に反映される。 構造改革批判が基調になるとすれば、大きな転換である。 政治の側がきちんと総括もせず、会議の提言によって改革路線がいつのまにか清算されるような格好になれば政治は無用ということになる。 秋までには確実に衆院選がある。 首相周辺からは提言について「衆院選のマニフェストにつながる」との声も出ている。 後世にも大きくかかわる国家像を選挙目当てで拙速にまとめるなど安直に過ぎる。 安心社会実現会議は、政治のあるべき姿とは何かについても考えさせられる。 経営者や労組トップ、大手マスコミ首脳らオールキャストといっていい布陣が政府によって集められ、日本の将来を論じる。 これは本来、民意を託された政治家の役目ではないか。 「国民の安心」という最重要課題を有識者会議に預ける。 そのことに政治の非力を思わずにはいられない。
Apr 15, 2009
「医者の顔色をぢつと見し外(ほか)に 何も見ざりき 胸の痛み 募る日」。 石川啄木の『悲しき玩具』の一首である。 啄木は明治四十五年のきのう、二十六歳でこの世を去った。 病名は肺結核。岩手県生まれで、中学校を中退後、小説家を志し上京、歌誌『明星』で活躍し、歌人として認められたが、貧苦にさいなまれ、失意の中で亡くなった。 『たけくらべ』『にごりえ』でおなじみの樋口一葉もこの病魔に侵され、二十四歳で早世している。 肺結核は昭和二十年代半ばまで日本の死亡原因の一位を占め、多くの命を奪い「不治の病」「国民病」と恐れられた。 結核菌の空気感染によって起こり、微熱や全身の疲労感、寝汗、咳(せき)が出て、進行すると血痰(けったん)や喀血(かっけつ)などの症状がみられる。 衛生、栄養状態の改善と有効な薬、治療法の開発により、すっかり「絶滅状態」かと思っていたら「過去の病気」ではなかった。 最近、人気お笑いコンビの女性が肺結核のため入院し、東京都は女性が出演したテレビ番組や舞台の観客など、感染の恐れがある人の相談を受ける専用の電話を設けた。 昨年は全国で年間二万数千人が肺結核と診断されている。 県内でもここ数年の患者数は二百人前後だ。 過剰に反応する必要はないそうだが、一定の比率で存在する病気だという。 咳や微熱が二週間以上も続くときなどは要注意。油断は禁物だ。
Apr 14, 2009
旧日本郵政公社でも民間の保険会社と同じことが行われていたということだ。 国民には「やっぱり」の思いが強いのではないだろうか。 保険への信頼がまた揺らぐ。 公社時代の簡易保険で保険金の「不払い」「未払い」が明らかになった。 民営化で業務を引き継いだ「かんぽ生命」によると、不払いは最大八十万件に及び、調査費用だけでも三百億円に達する見込みだという。 かんぽ生命は「事務的なミスで、意図的な不払いはない」としているが、ずさんな業務と管理が招いた結果には違いない。 年金問題での社会保険庁と同じようなことをするつもりだろうか。 カネと時間の浪費が繰り返される。 二〇〇五年二月から民間の生命・損害保険で、不払い問題が相次いで発覚したことを受け、公社とかんぽ生命は〇三年四月-〇七年九月の公社時代に支払いがあった千二百五十万件の点検を行っていた。 三月末までに九割近くのデータ入力を終えたが、システム上の点検では二百四十万件の契約で正確に支払われていない疑いがあることが分かった。 過去の民間保険会社の不払いのデータを基にした推計で、前記の八十万件が浮かび上がった。 かんぽ生命は会計検査院から〇六、〇七年度で二百三件、一億四千四百九十二万円の不払いがあったと指摘されていた。 しかし、この時は公表されず、不払いが判明したのは今国会の参院総務委員会での質疑によるものだ。 民間保険の不払いが社会問題として大きく取り上げられている。 それなのになぜ迅速に不払いの実態を明らかにできなかったのか。 国民のカネを扱っているにしては無責任過ぎる。 民間生保の不払いは三十七社で百三十五万件、九百七十三億円に達した。 簡保は一社で八十万件である。 金額の推計は明らかにされていないが、巨額になることは間違いない。 今回明らかになったのは〇三年以降の公社時代のものだけだ。 それ以前の郵政省時代は闇の中である。 国直営、公社、民営と形態は変わっても、業務そのものが違うわけではない。 郵政省時代に不払いはなかったのか。 国は実態を究明し、責任の所在を明らかにしなければならない。 そうでなければ国民の信頼は回復できないと思う。 危惧(きぐ)されるのは年金不祥事のように際限なく不払い問題が広がることである。 公社時代の五年間の調査だけでも三百億円の巨費が必要となる。 調査経費は誰が負担するのか。 国ならば税金が使われる。 かんぽ生命なら日本郵政グループの経営を大きく圧迫しかねない。 いずれにしろツケは国民に回ってくる。 年金の二の舞いだけは絶対に避けなければならないと思う。
Apr 14, 2009
「ありがとう」の言葉に胸を打たれた人がいると思う。 神戸の病院で八年前、四歳の崚介(りょうすけ)ちゃんが小児がんのため亡くなった。 母きよみさんが献血への感謝をつづったメッセージが今月、日本赤十字社のチラシに転載され、兵庫県内で新聞に折り込まれた。 「おなか、痛い」と崚介ちゃんが訴えたとき、がんはもう全身に転移していた。 余命一カ月と告げられた闘病生活を献血が支える。 きよみさんは書く。 〈あの子は輸血されると元気になる事を知っていて「アンパンマンのエキスだ~」と言っていました〉。 崚介ちゃんはママに頼む。 「献血してくれた人にお礼を言って。僕は入院してて言えないから」。 輸血が連日必要になる。 〈「足りないので待っていてください」と言われ、祈るような想(おも)いで待っていた事もありました〉。 県内の献血が少なく、県外から届く。 献血が、家族で過ごす十カ月の時間をくれた。 崚介ちゃんが息を引き取って一カ月半後、きよみさんは初めて外出する。 三宮の献血ルームへ。 献血し、備え付けのノートに胸のうちを書いた。 〈献血していただきました皆様(みなさま)になんてお礼を言ったらいいのか。ありがとう! ありがとう!〉 日赤が広報の冊子に全文を載せた。 反響があった。 インターネット上で話題になり、八年後の今でも転載が重ねられる。 県内では昨秋から輸血用血液の需要が増え、前年より5%増の月が続く。 高齢患者の増加が影響しているという。 日赤は、きよみさんのメッセージを初めてチラシに載せ、献血への協力を呼びかける。 この瞬間にも輸血を待つ人がいる、と。
Apr 13, 2009
「樹齢200年の木を使ったら、200年は使える仕事をしなきゃ。木に失礼ですから」 「バイオリンは楓(かえで)の木からつくるんですが、その楓を育てた土から調べないと、いいバイオリンはつくれません」。 思わずうなる格好いいセリフを口にしたのは、職人たちだ。 永六輔著「職人」(岩波書店)で紹介していた。 決して華やかな印象の人たちではないが、今、子どもたちはそんな職人にあこがれているらしい。 クラレが毎年、小学1年生を対象に行っている職業希望調査によれば、男子は大工などの職人がスポーツ選手に次いで2位。 10年前は10位にも入っていなかった。 女子も「パン・ケーキ・お菓子屋」が1位で、こちらも職人と呼ばれる人たちが含まれる。 彼らの目に職人がまぶしく映るのは、親たちの目にも職人がまぶしく映っているからだろう。 不況下で手に職を持つ強みが光っているだけではない。 職人自体を見る機会が少なくなっており、その姿が焼き付きやすくなっている。 生産の機械化、大規模化、海外化が進み、物作りの現場を目にする機会は着実に減っている。 それ以上に、手抜きやごまかしが珍しくない社会では、自分の仕事に誇りを持ち、きまじめに非効率を貫く人たちが本当に輝いて見える。 やがて景気が回復すれば、親は心変わりし、子どもの希望も変わってくるかもしれない。 だけど将来どんな仕事に就くとしても、物作りと無縁になったとしても、職人を目指し続けてほしい。 職人という生き方を。
Apr 13, 2009
「秘密基地」という言葉に、郷愁を覚える人もいるだろう。 鎮守の森の茂みや里山で仲間だけの空間を作った記憶。 町の中にもあった。 路地に段ボール箱を置いて隠れ、資材置き場のすき間で仲良しと遊んだ。 秘密基地には、そこらじゅうに子どもがあふれていた昭和のにおいがある。 時を経て、子どもが基地を作れるような場所はなくなった。 なによりも安全が要求されるようになり、大人の目が届いていないと、安心して遊べない時代になったからだ。 ずばり、その「秘密基地」をテーマにした「佐用町昆虫館」が先ごろ、佐用郡佐用町船越にオープンした。 「西播磨のファーブル」と呼ばれる内海さん(83)らが守ってきた兵庫県昆虫館が、県の行財政改革の一環で閉館した。 それを惜しんだ県内外の虫好きの人たちがNPO法人「こどもとむしの会」を結成して館を再生し、土日と祝日に開いている。 秘密基地の呼び名がぴったりの施設だ。 館には標本以外、これといった展示物はない。 恵まれた景観と自然が展示物だ。 船越山のふもとにあり、周囲には山や川が広がり、無数の生き物がいる。 子どもたちは、昆虫館を拠点に自由に遊ぶ。 虫を捕まえ、自然観察する。 分からないことがあれば、かつて昆虫少年や植物少年だった大人が懇切丁寧に教えてくれる。 子どもたちは、楽しい秘密をいっぱい胸にため込んで家路につく。 都会にもこんな秘密基地がほしい。
Apr 12, 2009
不況が長引くなか、母子家庭中心の行政の経済支援を、父子家庭にも広げてほしいという声が強まっている。 厚生労働省の調査によると、二〇〇五年の父子家庭の平均年収は四百二十一万円。 児童扶養手当などを含む母子家庭年収のほぼ二倍だが、年収三百万円未満は37%いる。 一番困っていることは「家計」で、〇二年調査の「家事」を上回った。 国勢調査では、〇五年の父子世帯は約九万二千で、二〇〇〇年に比べ約6%増えている。 約七十五万世帯に上る母子家庭より少ないが、昨年来の厳しい雇用情勢の下で、賃金カットやリストラに追い込まれる父子家庭も少なくないそうだ。 一緒に暮らす子どもへの影響が懸念される状況だけに、放置できないと思う。 国のひとり親家庭への経済支援は、児童扶養手当をはじめ、修学資金などを無利子や低利子で融資する母子福祉資金貸付金など、母子中心である。 その理由として、厚生労働省は「収入差」を挙げてきた。 確かに、収入の少ない母子家庭にとって、月最大約四万二千円が支給される児童扶養手当は必要不可欠なものだ。 ただ、父子家庭というだけで、同じ所得であっても対象外になることには納得できない。 祖父母ら、家事や育児の協力者が近くにいないために、収入減を承知で残業や出張のない仕事に転職したり、二重保育など多大な出費をしてでも育児に奮闘したりする父親も多い。 国として、何か手だては考えられないものだろうか。 栃木県鹿沼市は、〇二年に全国で初めて児童育成手当を創設し、国の児童扶養手当と同じ基準で父子家庭に支給している。 千葉県野田市や岡山県新見市なども同様の制度を設け、いまでは十自治体を超えると聞く。 支給額は少ないが、加古川市のように父子家庭を含めたひとり親家庭対象の独自手当を設ける自治体も増えている。 この春には、東京の特定非営利活動法人が、父子家庭支援のための基金を設立し、寄付を募り始めた。 小渕少子化担当相も三月、衆院内閣委員会で児童扶養手当について「父子家庭が一律除外されているのは見直す必要がある」と述べ、舛添厚労相に検討を求める考えを表明した。 見直し実現につなげて欲しい。 社会保障費を抑制する動きもあるが、ひとり親への支援は、将来を担う子どもたちへの支援だ。 深刻な景気後退を考えれば決断をためらっているときではないと思う。
Apr 12, 2009
「草原や冬田の上で至るところにまねごとの野球戦が流行した。ベースには蓆(むしろ)の切れ端やぞうきんで用が足りた」。 物理学者の寺田寅彦は、一九二九年の随筆「野球時代」にこう書いている。 古くから日本人をとりこにしてきた代表的なスポーツである。 プロ野球のセ、パ二リーグ制が発足してから、今年は六十年目に当たる。 日本野球機構は節目の今季、スローガンに「野球とは、」を掲げ、初心に立ち返る。 セ、パ十二球団の監督にとっての「野球とは何か」が公開されたが、人柄がにじんでくるようで興味深い。 「天職」と答えたのは、現役時代に三度の三冠王に輝いた中日の落合監督だ。 ワールド・ベースボール・クラシックで侍ジャパンを率いた巨人の原監督は「青春と汗」。 楽天の野村監督は「日本の国民的スポーツ」と記した。 きょう、BCリーグ三年目のシーズンが始まる。 新潟アルビレックス・ベースボール・クラブは昨季と同様、「がむしゃらに」が合言葉だ。 必死に戦う姿勢を貫き、リーグ王座を目指す。 選手のヘルメットには「愛」の文字が入る。 大河ドラマ「天地人」にあやかって、地域活性化に貢献しようというチームの熱い思いが伝わる。 「野球とは、日々の試練」とする広島・ブラウン監督と、「絶対のないスポーツ」と気を引き締める阪神・真弓監督の激突がいまから楽しみだ。
Apr 11, 2009
問題の根はそれだけ深いということだ。 警察庁がまとめた二〇〇八年の自殺者数は三万二千二百四十九人に達し、十一年連続で三万人を超えた。 国の自殺総合対策大綱が〇七年に策定されて以降、うつ病を早期発見する体制を充実させたり、失業や多重債務、過重労働といった社会的要因を取り除くための対策を強化させたりするなど、さまざまな取り組みが行われてきた。 にもかかわらず、事態が大きく好転する兆しは見えてこない。 残念なことだが、自殺を「個人の問題」で片付けてしまおうとする風潮は、いまだに根強いものがある。 その意味で、国や自治体による粘り強い啓発活動が極めて大切ではないだろうか。 しかし、それだけで事態を改善させることは難しい。 自殺者の背後には十倍の未遂者がいるとみられている。 国や自治体は、それぞれの地域の実態に応じた実効性のある対策を急がなければならない。 警察庁は今年、自殺防止に取り組む民間団体などが迅速に実態を把握できるよう、統計データを例年より二カ月早めて公表した。 毎月の自殺者数も明らかにし始めた。 その月別データからは、さらに憂慮すべき状況が浮かび上がってきている。 〇八年で自殺者が最も多かったのは十月だ。 米国の金融危機に端を発した世界的な景気後退が鮮明になった時期である。 今年一月と二月を合わせた自殺者数も、前年同期を3・5%上回る五千百二十五人に上っており、十二年連続で三万人を超える可能性がある。 不況の長期化は自殺者の急増を招きかねない。 防止対策を一層進めなければならない。 徳島県内の〇八年の自殺者数は全国で最も少ない二百二人だった。 これは「徳島いのちの電話」による、息の長い地道な取り組みの成果だと思われる。 悩みを抱える人の話に耳を傾け、寄り添うように相談業務を続けているボランティアの人たちの努力が実った。 このような方たちの支えがあればこそだ。 ただ、県内の自殺者数は減少傾向にあるかといえばそうではなさそうだ。 〇八年は前年より九人増えた。 二百人を超えたのは五年ぶりだ。 一人でも多くの命を救うために、予防対策の中身を充実させていって欲しい。 本県の対策には何が足りないのか。 県内外の民間団体は、地域全体で自殺を防ぐネットワークづくりの必要性を指摘し、活動の中心になる市町村に奮起を促している。 中でも自殺者の高止まり傾向が続く県西部の自治体には、地域の実態を踏まえた的確な取り組みをお願いしたい。 学校現場における「いのちの教育」も重要であると思う。 二月、県医師会主催の「自殺防止フォーラム」で基調講演した秋田県医師会の稲村茂自殺防止プロジェクト委員長は「自殺者は(社会の)犠牲者であり、勝手に死んだ人ではない。周囲の支援があれば、自殺は必ず防ぐことができる」と訴えた。 自殺者の七割は事前に誰かに相談しているという。 助け合い、支え合う社会の実現が何よりも望まれると思う。
Apr 11, 2009
土いじり好きには、気もそぞろの季節になった。 つい一カ月ほど前までは閑散としていた園芸店の駐車場が、先日の日曜日に訪ねたら、満車に近かった。 花の種類も一気に増えた。 ちょっと前はビオラやパンジーくらいしかなかった店頭は、まさに春爛漫(らんまん)の景色だ。 ハーブや野菜の苗も出回っている。 鉢植えをいくつも抱え込んだ夫婦の姿も見えた。 今年は庭やベランダをどんな花で飾ろうか。 頭の中で緑の「設計図」を描くだけで楽しくなってくる。 「花を育てる魅力は、季節を実感できること。配置や彩りをあれこれ考えるのは格好の頭の体操」と、園芸農家の橋本ひろみさんがアドバイスしていた。 うららかな春の日々が続いている。 コートを脱ぎ捨て、屋外にいるだけで気持ちがリフレッシュできる。 朝、真新しいランドセルを背負った新一年生が、お母さんと手をつないで、うれしそうに歩いていた。 そんな光景を見ると、なおさらこの季節のすがすがしさを感じる。 各地で花見の宴が盛り上がることだろう。 また気もそぞろである。 高速道路の「千円乗り放題」を利用して、北上する桜前線を追いかけてみようか。 それも楽しそうだ。
Apr 10, 2009
報道内容が次々に覆されていく。 今度は「手記」を寄せた本人までが、その中身を否定した。 やはり虚報ではなかったのか。 疑問が深まるばかりだ。 一連の朝日新聞襲撃事件の「実行犯」を名乗り、週刊新潮に手記が連載された男性が「自分は実行犯ではない」と証言を否定した。 今週発売の週刊文春が報じた。 問題の手記は、週刊新潮二月五日号から二月二十六日号まで四回にわたって掲載された。 記者二人が死傷した一九八七年の阪神支局襲撃事件の詳しい犯行状況などについて述べ、動機や背景にも言及している。 しかし、この手記に関しては信憑(しんぴょう)性を疑わせる指摘が相次いだ。 朝日新聞は検証記事を掲載して「虚言」と結論付けた。 さらに週刊新潮に対して十一項目の質問に答えるよう求め、訂正と謝罪を要求した。 他の新聞や週刊誌も証言の内容を疑問視する記事を載せ、警察も否定的な見解を示している。 手記で襲撃の「指示役」とされた元米国大使館職員が「虚偽」として新潮社に抗議し、後に和解したことも分かっている。 言論の自由は、民主主義の根幹をなす。 メディアを狙う言論テロは社会への重大な挑戦だ。 その真相に迫るのは報道の責務だ。 朝日新聞襲撃事件は未解決のまま時効を迎えただけに、報道の意味はなおさら重い。 ただ、それも事実であればこそである。 残念ながら、今回の手記をめぐっては疑念が次々にわく。 裏付け取材は十分に行われたのだろうか。 男性の証言をうのみにして、そのまま報じたのではないか。 日本テレビの報道番組で虚偽証言があたかも事実であるかのように報じられたことは記憶に新しい。 週刊新潮は批判や疑問に答えるべきだと思う。 出版社系週刊誌の老舗として報道や企画に定評があり、社会に影響力を持つ有力メディアとして説明責任を果たすのは当然の義務だ。 それは読者の信頼に応えることでもある。 週刊新潮は男性が証言を翻したことについて「不可解」とし、来週発売する号で手記掲載に至った経緯を掲載することを発表した。 それでは遅すぎるのではないだろうか。 朝日新聞は手記連載中から反論記事を掲載し、矛盾点を指摘し続けている。 にもかかわらず、新潮側は誠実に対応してきたとは言い難い。 きちんと反論できるのなら早急に記者会見などを開き、取材手法なども含めて説明してほしいところだ。 そのうえで自らの誌面で経緯を伝えるというやり方もある。 事は一雑誌の問題ではない。 メディアが伝える「事実」とは何かが問われているのだ。 週刊新潮は、そこをあいまいにしてはならないと思う。
Apr 10, 2009

先日、親戚の家に用事で出かけた時に撮ってきました。 播州赤穂の御崎の桜も見事に満開でした\(~o~)/ 赤穂岬周辺には展望台、レストハウス、遊歩道などが整備されて、赤穂御崎温泉が湧き出す温泉宿もあります。 では、風景をご覧下さい(^_-)-☆ 大石内蔵介良雄の像です 赤穂御崎の桜と瀬戸内海・播磨灘の風景です 赤穂御崎の展望台です いかがですか? 赤穂御崎の桜も見事ですが、赤穂御崎から臨む夕陽は日本夕陽百選にも選定されています。 夕陽の赤穂御崎も一度見て欲しいです(^_-)-☆
Apr 9, 2009
先月、74歳の皇后さまが左ひざの靱(じん)帯を損傷された。 全治数カ月から半年との診断結果に心配しつつ、原因を聞いてほおを緩めた人もいたのではないだろうか。 けがをしたのは、あのテニスの最中だった。 誰と試合をしていたのかは伝えられていないが、一歳上の天皇陛下もご一緒に楽しまれていたであろうことは想像がつく。 軽井沢のテニスコートで生まれた愛は、今なおはぐくまれているのだろう。 そのお二人は明日、ご成婚から50年を迎えられる。 当時、日本中が沸き立った。 初の民間からのお嫁入り。 空前のミッチーブーム。 パレード見物に50万人が繰り出し、テレビが200万台しかないのに、中継を見た人は全国で1500万人いたという。 長嶋茂雄さんが天覧ホームランを打ち、南極から生還したタロとジロに胸を打たれた年の話だ。 ご成婚を祝うように日本は高度成長期に入り、世界第二の経済大国になっていく。 半世紀後、テレビは一家に何台もある時代になったものの、景気は見る影もないほど下向いている。 人々の顔も曇りがちだ。 お二人が早くテニスコートに復帰できるよう願うとともに、日本が元気に走り回る日が早く戻ってくるよう願う。
Apr 9, 2009
他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙を防止するため、規制や対策を強める動きが目立つようになった。 神奈川県では、民間施設も対象に屋内喫煙を制限する全国初の受動喫煙防止条例が成立した。 首都圏のJR各駅が今月から全面禁煙になったのに続き、京阪神近郊のJR駅ホームも七月から全面禁煙になる。 日本は先進国の中でたばこ対策が遅れていると指摘されてきたが、ようやく先進レベルに一歩近づいたといえるのではないだろうか。 神奈川県の条例は当初、飲食店やホテルなどを含む不特定多数の人が利用する施設での喫煙を全面的に禁じることを目指していた。 しかし、関係業界や県議会の反対もあり、規制対象外の施設が拡大するなど、内容は後退した。 条例では、官公庁、学校、病院などは全面禁煙とし、飲食店や旅館などは禁煙か分煙かを選択する。 違反した場合、喫煙者には二千円、施設側には二万円の過料を科す。 ただ、小規模な飲食店や宿泊施設などは規制対象外となった。 規制が緩和されたとはいえ、罰則を設けた条例は先進的な内容だ。 もはや「個人の自由」で済ませられる問題ではなくなったという判断ではないだろうか。 日本も批准している世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約は、公共の場での「受動喫煙からの保護」を二〇一〇年までに完全実施することを求めている。 国内でも受動喫煙防止を定めた健康増進法が六年前に施行されたが、罰則のない努力義務のため、「分煙」にとどまっている施設がまだまだ多い。 飲食店などの禁煙化が進む欧米との差は大きいとされる。 それだけに、今回の神奈川県の条例成立を、効果的な防止対策を進める契機にしたいとの声が上がる。 厚生労働省の有識者検討会は先月、飲食店や屋外の公園なども含め、公共的な場所を原則として全面禁煙にすべきとの報告書をまとめた。 「受動喫煙が死亡や疾病などを引き起こすことは科学的に明らかである」として厳しい対応を求めた。 飲食店、旅館は中小業者が多いことや、現在の経済情勢に配慮し、暫定的に分煙にすることを認めてはいるが、将来的には全面禁煙を目指す努力が必要とした。 他人の健康に被害を及ぼすなど、迷惑がかかるような喫煙は規制するしかないと思う。 国や自治体はさらに踏み込んだ受動喫煙対策に取り組むべきではないだろうか。
Apr 9, 2009
学生たちが組合をつくり、学者を招いて講義を聴く。 後にダンテやコペルニクスが学んだ世界最古の大学、イタリアのボローニャ大学はそんな形で始まった。 一〇八八年のことだ。 約四百年後、ローマ北東の山あいの街に学校ができた。 後のラクイラ大学である。 同じころ、教会や聖堂なども次々と建てられた。 ゴシックとルネサンスの影響が混在する街。 そのラクイラをマグニチュード6・3の揺れが襲った。 地震発生は現地時間の午前三時ごろだ。 強い揺れとともに辺りは真っ暗闇となったことだろう。 今もどれだけの人ががれきの下にいるのか、分からない。 そして、無情な雨と余震が救出作業の壁となっている。 現地から届いた写真を見る。 建物が崩れて、街全体にモザイクがかかったようだ。 辛うじて残る広場や競技場に、住民たちが着の身着のままの姿で集まっている。 七万人が住宅を失い、時間とともに死者の数が増えていく。 首相は国家非常事態を宣言した。 長靴の形をしたイタリアは、日本と同じく、大陸のプレートが複雑に運動し、火山も多い地震国だ。 その国で人々は、たとえ生活が不便でも、修復や補修を重ねて文化遺産を守ってきた。 陽気な国民性だけでなく、辛抱強い一面を持つ。 ルネサンスの先駆者ボッカチオは「デカメロン」に書く。 「悩み苦しむ者に同情を寄せるのは人間のみちだ」。 現地の情報に耳をそばだてて次の行動を考えたい。
Apr 8, 2009
「呼吸(いき)すれば、胸の中にて鳴る音あり。凩(こがらし)よりもさびしきその音!」。 石川啄木にそう言わせた。 正岡子規には、鳴いて血を吐くといわれるホトトギスにちなんだ雅号を付けさせた。 高村光太郎の愛妻・智恵子を天に召したのもこの病気だった。 結核だ。 文人に限らない。 幕末の志士・高杉晋作や新撰組の沖田総司など、あの人もこの人も結核で亡くなっている。 それもそのはず、1950年までは死亡原因の第1位で、年間十数万の老若男女の命を奪う国民病だった。 その後、急速に状況が改善されたのは、新薬で治療可能になったからだ。 天皇陛下を含め、多くの人が恩恵に浴し、かつてほど怖い印象はなくなった。 しかしまだ「過去の病気」と片付けてしまうには早い。 香川で約200人、全国で2万5000人以上が毎年新たに結核と診断されている。 多くは体内で菌を眠らせていたとみられる高齢者だが、若者も含まれている。 このたび感染した29歳の女性タレントの例に、実感した人も多いだろう。 啄木や子規ら文人は、病に向かう気持ちを作品に昇華させ、後世の胸を打った。 女性タレントも数カ月の休養を、自分を見つめ直すきっかけにするかもしれない。 結核にはそんな面もあるが、それでも感染や発症を願う人がいるわけがない。 世界全体では20億人の感染者がおり、毎年800万人が新たに発症し、200万人が命を落としているといわれる。 「凩よりもさびしき音」が胸の中から聞こえなくなるまで、粘り強く闘いたい。
Apr 8, 2009
これから新しい仲間を迎える歓迎会やコンパを開く機会が増えるだろう。 その歓迎会やコンパにつきものなのが、お酒だ。 会が盛り上がるにつれ酒も進むが、飲み過ぎには注意してほしい。 「イッキ飲み防止連絡協議会」(東京)によると、昨年急性アルコール中毒で死亡した人は未成年も含め全国で五人。 ここ数年はゼロから二人だったというから、増加に転じた。 協議会は「イッキ飲み」で息子を失った家族が、平成四年に設立した。 若い命が奪われる事件・事故を二度と起こさないでほしいと、翌年からその危険性を伝え、防止を図るキャンペーンを展開している。 今年のテーマは「『飲み会の伝統』が、後輩を殺した」。 サークルなどの「伝統」で新入生にイッキ飲みをさせる上級生ら、飲ませる側へのメッセージを強調した。 「無謀な飲ませ方は、人の命を奪う。『伝統』を断ち切る勇気を、今こそ」と訴えるポスターを、全国の大学に送付している。 上司や先輩に勧められると、断りにくいこともあるだろう。 そんな時に役立つ道具も作成している。 「イッキはNG(だめ)!」と書いたコースターや、携帯電話の待ち受け画面だ。 これなら上手に断れそうだし、話のタネにもなるのではないだろうか。
Apr 7, 2009
「宙に浮いた年金記録」問題の全容解明が、全く見通せない状況だ。 2007年2月、基礎年金番号に統合されず、持ち主不明の年金記録が5095万件もある問題が発覚して2年が過ぎた。 なのに、統合された記録は全体の2割の1010万件にすぎず、3分の1の1695万件が未解明だからだ。 このままでは、問題解決そのものが宙に浮いてしまう懸念が強い。 社会保険庁は先日の年金記録問題に関する関係閣僚会議で、これまでの取り組み状況と今後の対応を報告した。 それでは、3月末までに統合済みか、持ち主の死亡や脱退手当金の受領が確認された記録、名寄せが終わった記録など「解明済み」は3400万件とした。 しかし、未解明のうち入力や転記ミス、届け出の誤りなどから持ち主を特定する手掛かりがない記録が1162万件に上り、全容解明には程遠い状況だ。 麻生太郎首相は閣僚会議で、来年1月に社保庁の後継組織の日本年金機構が発足するまでには「決着をつけておきたい」とハッパを掛けた。 しかし、この会議は麻生政権発足以来初めての開催で、どこまで真剣なのか疑問を抱いてしまう。 そればかりか、この問題発覚後も、入力ミスでコンピューターの記録と紙台帳が一致しない問題や、厚生年金の組織的な記録改ざん問題などが明らかになり、解決どころか混迷が深まるばかりだ。 政府は「最後の1人まで救済する」とした公約を口約束で終わらせてはならないと思う。 体制を強化して、記録の確認と正しい年金の支払いにかかる事務処理のスピードアップを図るべきではないだろうか。 本来の年金を受給できないままに他界する人も出ており、こんな悲劇は避けなければならない。 社保庁は派遣などで担当職員を2000人以上増やし1万人超とするが、もっと増員できないのか。もどかしい限りだ。 記録の不備が見つかっても給与明細などの証拠がなければ、総務省の年金記録確認第三者委員会で審査する。 当初、審査は申立人側の「性善説に立って判断する」方針だった。 ところが、立証の審査が厳しく、結論が出たうち記録の訂正が認められたのは38%だけだ。 記録漏れや改ざんの可能性が高い場合は、救済の範囲を広げる政治的決断が必要ではないだろうか。 不正受給が分かれば、後で返還を求める手法もあろう。 現状では、最初の記録照会から年金の未払い分の全額支払いまで2年も要している。 社保庁は支払い期間を4カ月短縮する方針だが、さらに早めるべきではないだろうか。 今月から「ねんきん定期便」が現役加入者の誕生月に届く。 公的年金の加入履歴や改ざんが問題となった標準報酬月額などの記録が載る。 昨年までに全受給者・加入者に送られた「ねんきん特別便」には、3人に1人が未回答だ。 自分の年金は自分で守る姿勢で、記録の漏れや誤りをしっかりチェックしてほしい。
Apr 7, 2009
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