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子どもは親の背中を見て育つという。 何も語らなくても黙々と働く姿を見せるだけで、子どもには学ぶものがある。 それは働くことの意義であったり、素晴らしさだったりする。 もっとも現代社会にあっては、親の職場は工場やビルなどの中にあり、外からはうかがえない。 危険な作業や企業の秘密などもあって、子どもが親の仕事を見る機会は少ないだろう。 背中を見せようにも、見せられないのが現実だ。 そんな親の背中にかわって子どもたちが職場を見聞できるのが、「社会に学ぶ『14歳の挑戦』」だ。 県内の中学2年生が5日間、地域の企業などで仕事を体験する。 平成11年度に始まり13年度からは全公立中学校が実施、これまで9万人以上が参加したという。 ところが、その「14歳の挑戦」を受け入れられないとする企業や事業所があると伝えていた。 景気悪化で仕事が減り中学生が体験できる業務がないといった理由のほか、人員削減で中学生に対応する従業員を確保できない事業所もあるのだという。 不況の影響が、「14歳の挑戦」にまで及んでいることに驚かされる。 企業の苦境も理解できないわけではない。 しかし、子どもたちにとっては貴重な体験である。 不況にあえぐ企業が、現実をそのまま見せる形があってもいいのではないだろうか。 それこそ中学生が「今の社会を学ぶ」ことになるのではないだろうか。
Jun 30, 2009
「災害に遭う危険性が高まっている」と6割もの人が感じている。 今年の防災白書は、そう指摘する。 近年のそうした意識の背景には、異常気象による「短時間強雨」(ゲリラ豪雨)の頻発などがあるようだ。 新たな防災への課題として対応が迫られている。 実際、昨年夏はゲリラ豪雨による被害が相次いだ。 7月、神戸市灘区の都賀川の水位が短時間で急上昇し、5人が流されて死亡した。 8月には東京都豊島区で下水道工事中の作業員5人が増水で流された。 8月末には、愛知県岡崎市で1時間146ミリと史上7番目の雨量を記録した。 短時間の局地的大雨の発生は増加傾向にある。 1時間に50ミリ以上の強雨の発生回数を1000地点で調査した結果によると、1998年からの10年間は、76年からの10年間より1・5倍近く増えていた。 また、路面がコンクリートで固められた都市部では、水路や河川に雨水が一気に集中して増水する危険性が高くなっている。 内閣府が今年2~3月に実施した意識調査では、災害の危険性が「高まっている」と感じる理由(複数回答)として、「異常気象」を挙げる人が8割もいた。 最近の豪雨被害に加え、地震の多発などを反映した結果といえる。 ほかに「地域防災力の低下」「都市化の進行」「地方の高齢化」なども危険性が高まっている理由に挙がった。 いざというときに地域の助け合いが威力を発揮できるのかと不安を感じている様子がうかがえる。 たしかに、高齢化や地域コミュニティーの希薄化などにより、地域の防災力が低下していることは否めない。 それでも災害が起きたときに頼りになるのは地域のつながりだ。 高齢者や障害者など要援護者への救助、避難活動などの支援も住民の連携があれば大きな力となる。 内閣府の調査によると、地域防災活動への関心は決して低いわけではない。 防災活動への参加について、「条件が整えば」も含めれば7割の人が積極的だった。 その条件は「活動の曜日や時間が合えば」「活動内容や役割が選べれば」「要請があれば」など。 こうした回答をみると、地域の防災組織は工夫次第で活性化できる余地がまだまだある。 異常気象などによる災害の危険性を軽減するため、行政の対策は当然、必要だ。 同時に、助け合いによる地域の防災力をさらに高め、備えを充実させていって欲しい。
Jun 30, 2009
さまざまな「日本一」を公募で競う話を時々耳にする。 地域おこしを兼ねて自治体が主催するものが多い。 「日本一の友情・エッセーコンテスト」「日本一の夕陽フォトコンテスト」…。 「日本一小さなキャンバスの絵」というのもある。 14年前に愛媛県城川町(いまは西予市)が始めた「かまぼこ板の絵展」だ。 かまぼこ板に描いた絵を募る。今年は「こころ」のテーマに全国から1万点以上が寄せられた。 一番有名なのは「日本一短い手紙・物語」だろう。 16年前に福井県丸岡町(いまは坂井市)が「一筆啓上賞」として始めた。 2008年度のテーマ「夢」には6万通以上が集まり、累計では100万通を超えたという。 「日本一小さなキャンバスの絵」と「日本一短い手紙」を組み合わせると、どうなるか。 西予市と坂井市は一昨年から「コラボ展」もスタートさせている。 入賞作品を一緒に並べて味わい直すと、響き合うものが少なくないというコラボ展のポスターになったのは。 手紙は「電話だとちょっとテレ、だから手紙でそっとユウ。 「母ちゃんゴメン」。かまぼこ板には、懐かしの丸型郵便ポストに投(とう)函(かん)しようと背伸びしている猫が描かれている。 涙もまじる会場に用意されたノートには「手紙と絵の出合いに感謝」などの言葉がつづられる。 コラボ作品を陶板のプレートにして、 自殺する人が絶えない坂井市内の東尋坊に設置する計画を市は進めている。
Jun 29, 2009
先月の日豪対抗競泳で、200メートル背泳ぎの入江陵介選手が出した「世界新記録」は結局公認されないことになった。 新星の登場を印象づけただけに残念な結果である。 入江選手が使ったのは国内メーカー開発の新型水着だ。 国際水泳連盟は、今年3月に導入した新基準で審査し、承認できない理由について、空気をためて浮力を生む効果が大きいと指摘している。 一方、日本水連はすでに独自の基準で入江選手が着た水着を認め、日本記録として公認している。 このため日本記録が世界を上回るというおかしなことになった。 競技記録は、誰が見ても明快でなければならない。 日本水連は公認した日本記録に「注釈」を付けることを検討するという。 しかし、異なる基準が並び立つような状況は、やはり不自然というほかない。 それにしても、国際水連の結論には時間がかかった印象が残る。 新型水着の申請が相次ぐとはいえ、世界記録にかかわるケースは迅速に判断してほしかった。 宙に浮いた選手の心情を思うと、なおさらだ。 今回、他国選手の記録にも非公認の判断が下され、反発の動きが出ている。 国際水連は、水着の基準をもう一度精査し、分かりやすく一本化して示すべきだ。 新型の水着といえば、昨年の北京五輪を控えたころ、英国スピード社製水着を着た各国選手が次々と世界新を出し、注目を浴びた。 五輪には、ほとんどの選手がこの「高速水着」で臨んだ経緯がある。 その後、メーカー各社の開発競争で次々と新型が登場している。 今回、国際水連は、世界20社の計188タイプを承認したことも発表。 その中には、問題となった入江選手の水着の改良版も含まれる。 高度技術による用具・用品と選手自身の力との関係は難しいものがある。 やみくもに用具がハイテク化すればよいというものではない。 ただ、使う用具で大きな差が生じては競技とはいえない。 「水着が泳ぐわけではない」。 昨年の高速水着騒動の際、スピード社製で平泳ぎ200メートルの世界新を出した北島康介選手が言った名言である。 記録に挑む選手はやはり、そうあってほしいものだ。 入江選手は、日本競泳界を担う新星に違いない。 来月ローマで開かれる世界選手権に出場する。 会見ではすでに吹っ切れた様子をみせ、心配なさそうだ。 あせらずにステップを着実に上がって、公認の水着で文句のない世界新を期待したい。
Jun 29, 2009
ボランティア組織が管理する防犯カメラが住宅街に設置されることになった。 住民の監視体制の強化につながる懸念がぬぐえない。 警察庁が約6億円を掛け、東京など全国14都府県15地域に取り付けると発表した。 来年1月ごろから運用を始めるという。 国民のプライバシーにかかわることなのに、是非の議論がなされた形跡はない。 発表はあまりに唐突だ。 拙速な事の運びには驚きを禁じ得ない。 警察は全国の繁華街に約360台の防犯カメラを置いている。 不特定多数が集まる場所ではカメラによる監視は防犯上有効だろう。 しかし、新たに設置するのは住宅街である。 今回対象となる地域が、目立って犯罪が多発しているというわけでもない。 なぜ防犯カメラが必要なのか。 日本の治安はそこまで悪化しているのか。 警察庁には説明を求めたい。 防犯カメラの管理を住民に委託するのも初めてだ。 警察は犯罪捜査にだけ映像データを使い、基本的に運用は住民組織の自主性に任せるという。 住民のプライバシーに配慮し、録画機器を公民館などにまとめて置き、住民組織が登下校時だけチェックすることなどを警察庁は想定している。 しかし、カメラは24時間作動している。 公民館など人が自由に出入りできる施設にモニターなどが置かれることになる。 プライバシーを守るという割には心もとない。 警察庁は「住民参加」「自主的運営」を強調している。 ならば肝心の組織づくりはどうなっているのか。 対象地域の自治体からは「管理主体などはこれから考える」と戸惑いの声も上がっているという。 運用まで半年もないのにこんな状態でいいのか。 「登下校時」としながら、学校が防犯カメラの設置を知らされていなかったケースもあった。 住民に説明が行き渡っているのか疑問だ。 議論も情報開示もなく、予算が付いたから「やります」では、見切り発車と言われても仕方ないだろう。 人権にかかわる問題である。 最初から議論をやり直すべきだ。 防犯に地域の力は欠かせない。 住民同士のコミュニケーションを活発化させ地域の和を醸成する。 地域づくりこそ最良の防犯策であろう。 防犯カメラも使い方によっては「監視」の道具になる。 相互監視に陥れば地域の和が揺らぎかねない。 住宅地にカメラが本当に必要なのか。 住民がまずそのことを考えたい。 警察庁は「15地域をモデルケースにする」としている。 今後、全国の住宅街に防犯カメラを設置したいということなのだろう。 監視網が張り巡らされた社会では息苦しさが募るだけだ。
Jun 28, 2009
いつの時代にもその時代を象徴するスターがいる。 例えば、戦後の昭和を振り返ったとき、誰もが思い浮かべるのは美空ひばりさんだろう。 12歳でデビューし、アイドルから成熟した女性へと育っていく道のりは、戦後日本の歩みそのものである。 昭和が終わった年、美空さんもこの世を去った。 時代に愛された人だったと思わずにいられない。 この人も冷戦後、世界の超大国となった米国を象徴するスーパースターだった。 昨日訃報(ふほう)が届いた歌手のマイケル・ジャクソンさんである。 黒人大統領が誕生し、米国が新たな時代を迎えた年の悲しい出来事として、人々の記憶に刻まれることだろう。 音楽ばかりでなく、そのビデオ映像もテレビを通して世界中に流れ、人々の耳を目をくぎ付けにした。 手に入れた莫大(ばくだい)な富でビートルズの版権を買い取ったかと思えばエルビス・プレスリーの娘と恋に落ちる。 彼の人生には、アメリカン・ドリームがいっぱい詰まっている。 ネバーランドは永遠に子どものままのピーターパンが住む世界である。 ジャクソンさんは広大な敷地に自宅と遊園地をつくり、ネバーランドと名付けた。 そして奇行やスキャンダルが取りざたされると、そこに引きこもった。 50歳での急逝に驚く米国民の反応の中に、こんな一言があった。 「たぶん苦しい人生だったんだよ」。 大輪の花を咲かせ、深い影に沈む。 そこにまた、米国の姿が重なって見える。
Jun 27, 2009
男女を問わず誰もが子育てや介護をしながら仕事を続けることができる。 今国会で成立した改正育児・介護休業法を、こうしたゆとりある社会づくりへの一歩として欲しい。 未曾有の不況を理由に、育児休業中の正社員を解雇したり、非正規社員にしたりする「育休切り」が深刻化している。 地方の労働局では、育児休業をめぐる相談が急増中だ。 経営者側から「ほかの人を雇った」「勤務場所がない」などと言われ、復職できないという訴えが多いという。 こんな状況では安心して子どもも産めない。 少子化対策に逆行している。 改正法が衆参両院で全会一致で成立したのは、こうした危機感の表れだ。 育児休業法は1991年に制定された。 2005年の法改正では、条件付きでパート社員らも法の対象とするなど制度面での改善は進んだ。 しかし、厚生労働省の調査では、初めての子の出産を機に7割近くの女性が仕事を辞めている。 「保育園が開いている時間と勤務時間が合わない」「職場の理解がない」などがその理由だ。 一方で、男性の育休取得率は2%以下と、女性の90%に比べ極めて少ない。 改正法には 〇 3歳未満の子どもを持つ従業員に対する短時間勤務制度の導入の義務付け。 〇 配偶者が専業主婦(夫)でも育休取得を拒めない。 〇 違法行為に対する勧告に従わない場合、企業名を公表。 などが盛り込まれた。 残された課題もある。 大企業なら改正法に対応できる余地はあるだろう。 雇用環境を改善することで、従業員の意欲が高まり、結果的に生産性を上げることも期待できる。 しかし、中小企業はどうか。代替人員の確保で新たな負担がかさんだり、一部の労働者が過剰な労働を強いられたりするようでは法の趣旨に反する。 ワークシェアを積極的に取り入れることを検討したい。 例えば、中小企業同士が手を組んで、育休時などの従業員補充をやりくりするなどの方法だ。 中小企業への支援策なども含め、政府は新たな制度設計を考えてほしい。 非正規労働者の育休取得は法改正の対象とならなかった。 現行法は1年以上雇用され、子どもが1歳を超えても雇用継続の見込みがあるなどに限り、育休が取れるとする。 条件から外れるパートや派遣の女性は多い。 これを緩和するのは待ったなしといえよう。 介護支援では、要介護状態の家族の世話に利用できる短期の休暇制度を創設した。 家族の通院などに利用でき、一歩前進といえるだろう。 仕事と育児、介護の両立は容易ではない。 そのためには社会全体の意識改革が不可欠だ。 政府や自治体は啓発活動にも力を注いでほしい。
Jun 27, 2009
トマトにキュウリ、ナスと露地物の夏野菜が出回り始めた。 今では季節を問わず食べられるようになったが、やはり、お日さまをたっぷりと浴びた旬の味はいい。 特にトマトのうまさは格別だ。 もぎたてを生のままガブリとかじると、絶妙に絡み合った酸味と甘みが口いっぱいに広がる。 そのみずみずしさは渇いたのどを潤し、体に染みわたっていくようにさえ感じられる。 トマトは昔、トリカブトなどと同様に猛毒と思われていた。 1820年9月、米ニュージャージー州の裁判所前に2000人が押し寄せた。 ある軍人がトマトをみんなの前で食べると宣言したからだ。 毒にあたって倒れるとの予測が広がる中、軍人はトマトにかぶりついた。 その瞬間、悲鳴が上がり、失神する女性が続出した、と「トマトが野菜になった日」(草思社)にある。 もちろん死ぬはずはなかった。 悲鳴は感嘆のどよめきに変わったという。 このエピソードを裏付ける証拠はないと本には書いてあるが、それほど有毒説が根強かったということなのだろう。 パスタの本場イタリアでも、飢えをしのぐため仕方なく口にしたのが、トマトの食べ始めとされる。 今やトマトは食卓に欠かせない存在となった。 毒どころか、リコピンという成分が、生活習慣病などの原因となる体の酸化を防ぐとともに、老化を遅らせるアンチエイジング効果があるとされている。 本格的な夏の到来まで、あとわずか。 成分の効能はともかく、大地がはぐくんでくれた夏野菜を思い切り味わおう。 きっと太陽の味がするはずだ。
Jun 26, 2009
日雇いの原則禁止や賃金公開義務など派遣労働者の救済を目指す労働者派遣法改正案の審議が遅れている。 失業や低所得に歯止めをかけるには法改正が不可欠だ。 今国会での成立に全力を尽くして欲しい。 この半年間の派遣村騒動はいったい何だったのだろうか。 仕事も住む部屋も失った派遣労働者たちが炊き出しに長い行列をつくった。 政府は慌てて雇用保険の適用拡大などを決め派遣を含めた雇用対策を打ち出した。 一年前、二重派遣や禁止業務への派遣など相次ぐ違法行為により事業停止命令を受けていた日雇い派遣大手のグッドウィルは、廃業を表明した。 若者や女性たちを低賃金で無保険のまま働かせるという日雇い派遣の実態は、社会に大きな衝撃を与えた。 派遣法の見直しはこれがきっかけだった。 政府・与党は昨年十一月、改正案を国会に提出した。 柱は 〇契約期間三十日以内の派遣を原則禁止 〇派遣労働者の賃金や派遣会社のマージン率などの情報公開を義務付ける 〇違法派遣があった場合は迅速に処理するなどである。 当然、早期成立が期待されたが国会の動きは鈍かった。 経済界の反発などから与党の腰が重かったことに加え、野党側の対案づくりが遅れたためだ。 今週に入り民主、社民、国民新の野党三党は改正案を共同で今国会に提出することで合意した。 合意点は 〇契約期間六十日以内の日雇い派遣を原則禁止 〇製造業派遣および登録型派遣は一部の職種を除き原則禁止 〇違法行為があった場合は派遣先に雇用させるみなし雇用を創設などである。 野党側の対案づくりは遅すぎたが、会期はまだ残っている。 野党三党は近く改正案を提出する予定という。 提出されたら与党は速やかに修正協議に入るべきだ。 高失業率と求人倍率の低下など雇用情勢の悪化はまだ続く。 正社員にも雇用不安はあるが派遣や期間工など非正規労働者たちの方が深刻だ。 簡単に解雇されるような雇用形態を放置していいのだろうか。 現在の労働法制と雇用政策を、労働者保護の原点に引き戻すことが今回の改正の本当の目的である。 一九八五年に制定された労働者派遣法は通訳などの専門職種に限定されていた。 九九年に原則自由化、二〇〇四年からは製造業も解禁された。 今回の改正は派遣労働者を擁護する第一歩だ。 同時に企業が非正規雇用に頼りすぎた経営を是正するきっかけともなる。
Jun 26, 2009
結婚情報サービス会社オーネットが昨年、全国の20代から40代の女性900人を対象に、結婚に対する考え方を聞いた。 各世代とも既婚者および離死別した結婚経験者が半分、未婚者が半分。 結婚経験者の84%、未婚者の83%が「お金がないと幸せな結婚生活を続けるのは難しい」と答えた。 では結婚生活を始めるとしたら夫婦2人で月いくらの手取り収入が必要かを聞くと、未婚者は「30万円以上40万円未満」が32%、「40万円以上50万円未満」が22%だった。 非婚化や晩婚化が進んでいる。 経済的事情は結婚の障壁の一つだ。 出産、育児との両立が難しいなど女性は職を失う可能性を予想し、結婚前から家計の維持に不安が募る。 一方の男性はさらにシビアだ。 オーネットが今年5月に実施した、全国の20代から30代の未婚男性約1100人に聞いた調査では、40%が「妻には結婚後もフルタイムで働いてほしい」と答え、専業主婦を望むのは21%だった。 夫婦の平等意識が強まったともいえるが、妻に経済力を求める背景には不況の影響もあるのだろう。 経済環境が、結婚への意識や夫婦の形を変えつつある。 厳しい社会を生きている未婚の息子や娘に結婚を促したところで、「お金がないと幸せな結婚は続けられないでしょ」と言われたら、親の世代はどう答えるのだろうか。 「貧しくても幸せな結婚は続けられる」と言おうにも、普段の親を見ている息子や娘に説得力はどれほどあるのだろうか。 かくして非婚化、晩婚化は進む。
Jun 25, 2009
飲食店などの店づくりで「クレンリネス」という言葉が使われているそうだ。 直訳すれば清潔、きれいなこと。 店を繁盛させる基本とされる。 そのクレンリネスを徹底しているのがディズニーランドとコンビニだという。 コンビニは掃除が行き届いている上、店内がとても明るい。 蛍光灯の多いことに加えて床をぴかぴかに磨いて反射させ、照明効果を高める。 そうして商品をきれいに見せる◆誘蛾灯(ゆうがとう)のように明るい店は深夜でも客が絶えない。 24時間営業で便利な場所にあり、必要なものがそろう。 公共料金の支払いもできる。 消費者のニーズに対応して発展してきた。 単身赴任生活のときには帰宅途中に毎日のように立ち寄った。 そんなコンビニの最大手、セブン-イレブン・ジャパンが公正取引委員会から排除措置命令を受けた。 弁当安売りを制限したのが理由だ。 新鮮な商品の提供や定価販売というコンビニ商法の根幹にも影響する話だろう。 まだ食べられる弁当が捨てられるのは、やはりもったいない。 コンビニといえば京都市などで深夜営業の規制が論議になった。 景観や地球温暖化対策を理由にした見直し論だ。 全国に4万2千店。 現代社会に欠かせない存在になったコンビニの商法が問われている。 同時に、ひたすら便利さや豊かさを追い求めてきた暮らし方そのものが問われているのかもしれない。
Jun 24, 2009
戦争の、あの記憶が忘れられることは決してない。 風化させてはならない。 慰霊の日のきのう、沖縄全戦没者追悼式があった。 全国民が平和への誓いを新たにした。 第二次大戦の沖縄戦が終結して64年。 恒久的な平和を願い、紛争が絶えない世界へメッセージを送る使命が、私たちにはある。 大戦中、日本一の激戦地として島全体が戦場となった沖縄県。 沖縄戦は1945年3月26日から始まった。 住民を巻き込み、組織的な戦闘の集結とされる6月23日まで3カ月間続いた。 犠牲者は20万人に上り、その半数が一般住民だ。 悲惨さは語り尽くせない。 「鉄の雨」と言われた艦砲射撃、軍による住民の暴行、殺害。 女性への拉致などの証言も多数残る。 一般住民の集団自決が相次いだ。 日本軍の関与に関する訴訟や教科書検定など、いまだに大戦は影を落とす。 1月には糸満市で不発弾が爆発し2人がけが。 多くの不発弾が地中に残り、米軍基地を離発着する戦闘機の爆音と背中合わせの日々だ。 沖縄戦は遠い過去のことではない。 日本はしっかり現実に向き合うべきだ。 政府はこうした問題を早急に解決する必要がある。 仲井真弘多知事は追悼式で米軍がらみの事件・事故や不発弾の問題を指摘。 日米両政府に基地負担軽減と戦後処理を訴えた。 麻生太郎首相は「米軍施設集中は県民の大きな負担。切実な声を聴き、負担軽減に全力で取り組む」と述べた。 しかし基地への最新鋭戦闘機配備などで騒音は激化している。 一般論でなく、早急に基地問題の解決に取り組むべきだろう。 平和祈念公園にある「平和の礎」には毎年、戦没者の刻銘が追加されている。 24万人を超える刻銘には、アメリカや韓国の戦没者の名もある。 式典には韓国人軍属の遺族約30人も参列。 刻銘板の前で黙とうし、チマ・チョゴリの女性らが涙した。 多くの国を巻き込み、加害者ともなった日本。 被害を受けたアジアの人々。 さまざまな思いが交錯した式典だ。 そうした歴史を語り継ぐ人は年々、高齢化。 直接的な戦争の証言、記憶はいずれとぎれるが、それを風化させてはならない。 追悼式で詩を朗読した小学6年の比屋根憲太君(11)。 車いすの祖母から聞いた戦争の真実。 「ぼくは車イスをおして 祖母のいのりを引きつぐ 戦争のない平和な国を」と訴えた。 いまも、世界のどこかで戦争がある。 沖縄の心を紛争地に届けたい―という比屋根君の願いがかなう社会をつくるのは、私たち大人だ。
Jun 24, 2009
鋭い牙の並んだ口で、野太い声を張り上げていたのだろうか。 いや、外見に似合わずかわいい鳴き声だったかもしれない。 丹波市山南町の地層から、肉食恐竜の歯とみられる化石が見つかった。 それも、史上最大級とされるティラノサウルスの仲間だそうだ。 推定体長は約5メートルで、国内で発見された同じ年代層の化石では、突出した大きさだという。 映画「ジュラシック・パーク」を思い出した人も多いだろう。 地響きを立てて主人公の車を追いかけてくる場面では、恐ろしさに息をのんだものだった。 もちろん映画はフィクションだが、同じ姿の恐竜がこのあたりを闊歩(かっぽ)していたことは、間違いないようだ。 化石が出た地層は「篠山層群下部層」と呼ばれ、1億3000万年以上前の前期白亜紀に形成されたものらしい。 普段はせせらぎの音のみが響く渓谷とその一帯でここ数年、地球史上の新発見が続いている。 体長約15メートルの草食恐竜「丹波竜」の化石が見つかったのは3年前。 昨年はネズミに似た小型哺乳(ほにゅう)類の化石も確認された。 そして「最強の肉食恐竜」。 ただ、ティラノサウルスが本当に声を上げて走ったか、生態はよく分かっていないらしい。 今回も発見されたのは長さ2センチ足らずの歯だけである。 それでも丹波発のニュースのおかげで、頭に思い浮かべる太古の世界は格段に豊かになった。 そして人類も46億年に及ぶ地球の歴史の一部なのだと、あらためて思う。 次の発見が待ち遠しい。
Jun 23, 2009
国内で46年ぶりの皆既日食まで1カ月を切った。 来月22日午前、トカラ列島を中心に奄美大島北部、喜界島、口永良部島、屋久島、種子島南端が皆既帯に入り、最長の悪石島では6分25秒間、太陽が完全に月に隠れる。 鹿児島と皆既帯の離島を結ぶ直前の海や空の便は、予約受け付けと同時に満席になった便も多いという。 皆既帯と近隣の11市町村が決めている受け入れ可能人数1万7500人のうち、今月中旬までに約8割、1万4500人の予約が入った。 ほとんどの島に、住民の数を大きく上回る見物客が訪れることになる。 上下水道や電気、ガスなどライフラインの増強は十分だろうか。 緊急時の医療体制は大丈夫だろうか。 猛暑や台風対策も考えておくべきである。 地元自治体や関係機関は、あらゆる可能性を想定して安全チェックを怠りなく実施し、当日に備えて欲しい。 日食は天文ファンでなくても好奇心をそそられる天体ショーである。 ところが、トカラ列島の十島村では当初、「天災だ」との嘆きが漏れていた。 有人7島の住民は計約650人で、島々には最小限の社会基盤しかない。 大勢の来島者によって住民の生活に支障が出ることを心配した率直な心境だったのだろう。 その後、村は旅行会社と提携し、交通機関や宿泊施設の受け入れ能力を吟味した上で昨秋、ツアー参加者を上限1500人に決めた。 それ以外の入島は自粛を呼び掛けたのは、やむを得ない判断といえるだろう。 問題は、呼び掛けがどこまで浸透しているかである。 村営船やツアーのチャーター船以外の船舶で来島する見物客が出ないとの保証はない。 入島自粛の周知徹底を図りたい。 また、悪天候などで緊急避難的に入港や上陸を求める船舶が出た場合も想定しておく必要がある。 トカラ列島に限らず、離島ではあらゆる物資に限りがあり、天候次第では補給もままならなくなる。 リゾート感覚の来島者が厳しい実情に直面すれば不満が募り、客と住民の双方が不快な思いをすることにもなりかねない。 来島者には、事前に離島の事情を十分に知らせておきたい。 受け入れる島の多くが来島者との交流会などを計画しているのは、「島の良さを伝えたい」との熱意の表れである。 一方で、住民約50人に対して780人を受け入れる諏訪之瀬島が、「対応困難」と交流会を断念したのも理解できる。 無理せずに身の丈にあったもてなしが肝心だと思う。
Jun 23, 2009
沖縄県読谷村のチビチリガマを初めて訪ねたのは、20年ほど前だ。 中をのぞき込んだら、地元の人から「気をつけて」と声をかけられた。 足元を気遣ってもらったのかと思ったら、違った。 「まだ遺骨が残ってる。踏まないで」という。 ガマは太平洋戦争の米軍上陸地点に近い。 避難壕(ごう)として使った住民80人以上が「集団自決」した。 生半可な慰霊の気持ちなど跳ね返されてしまうような「現場」の生々しさに身がすくんだ。 あすは「沖縄慰霊の日」だ。 沖縄での日本軍の組織的な戦いが終わったとされる日から64年になる。 体験者が高齢化し、生の声を聞く機会が減っていくことに焦りを感じる。 鹿児島市でも気になることがある。 市内に1000カ所以上確認されている地下壕の埋め戻しや壕口の封鎖事業が進んでいる。 所有者不明などの理由で着手できない場所を除く600カ所で作業が完了した。 道路陥没や子どもの事故を招きかねず、住民の安心のため急ぐべき事業ではある。 しかし、安全を確保した上で一部を保存する方法はないものか。 空襲を逃れた市民が生と死の相克のふちで息を潜めた、紛れもない現場である。 戦争と人の命に思いを残すきっかけは多いほどいいのではないだろうか。 チビチリガマの中は暗くてほとんど何も見えず、何も聞こえなかった。 しかし、あのとき胸に刻まれた重苦しさは、「沖縄戦」の言葉を聞くたびによみがえってくる。
Jun 22, 2009
若者の間で大麻汚染が広がりを見せている。 今月8日には、新潟市のアパートで大量の大麻草を栽培していた23歳の無職男性が大麻取締法違反の罪で懲役2年6月(執行猶予4年)の判決を受けている。 新潟県内の大麻事件の摘発はこの4年間で約3倍に急増しているという。 県警によると、2004年が14件、9人だった。 08年は41件、26人に上り、20代が21人で8割を占めている。 ことしも5月末までに8人が摘発されている。 自ら吸引する目的で栽培する例が目立つ。 昨年も妙高市出身の大学生や村上市などの20代男性ら11人が栽培で摘発されている。 何が若者たちを大麻に走らせるのか。 県警は「インターネットや宅配便で種子が簡単に手に入ることが原因になっている」とみている。 「簡単に(栽培が)できるならと興味本位だった」。 有罪判決を受けた新潟市の先の若者は公判でこう述べた。 インターネットを通じて公然と種子などが取引されている危うさを物語る。 若者は以前から大麻を吸っていたが、密売人と連絡が取れず入手が困難になったため、同じく大麻取締法違反で起訴された知り合いの飲食店店員に誘われて栽培に手を染めたという。 2人は3DKのアパートを借り、すべての部屋で大麻を栽培していた。 鉢など水耕栽培の用具を東京の専門店から購入している。 扇風機や除湿器を使って室温を一定に保ち、栄養分を溶かした水を与え、土で栽培するよりも早く育つようにしていた。 現場からは栽培マニュアルなどが書かれた専門書も押収された。 法律違反の薬物を取り扱っているのにもかかわらず、県警によると罪の意識があまり感じられなかったという。 大麻の種子は取り締まりの対象外だ。 インターネットで検索すると、種子を販売するサイトがいくつも出てくる。 いずれも「観賞用」「栽培は違法」などと注意書きはあるものの、購入に際しての審査はない。 警察庁のまとめでは、08年の国内大麻事件は3832件に上った。 統計がある1956年以降で最も多く、20歳未満と20代が6割を占めた。 県内の摘発数は全国に比べてまだ少ないが、決して油断はできない。 大麻の使用が、危険な覚せい剤などを引き寄せる恐れがあるからだ。 若者たちを薬物から守るには、教育機関の役割も重要だ。 昨年、県外で相次いだ慶大などの学生による事件を受け、新潟大をはじめ県内大学でもホームページなどで注意を喚起している。 警察や行政、教育など関係機関の連携による啓発活動で、薬物への誘惑の芽を早期に摘み取っていって欲しい。
Jun 22, 2009
この日からセミが鳴き始める。 中国・唐代の暦にはこう記されているそうだ。 一年で太陽が最も長く空にある日。 つまり夏至のことである。 きょうがその夏至。 神戸では午前5時前に日が昇り、午後7時すぎに沈む。 太陽はいつもよりたっぷり時間をかけて天をめぐる。 「夏至の日の手足明るく目覚めけり」(岡本眸) 中国の古い暦と違い、関西ではまだセミの声は聞こえない。 地域によって日本でもセミの鳴き始める場所があるようだが、それでも盛夏の気分にはほど遠い。 第一、雨にたたられがちの季節である。 「菖蒲華(あやめはなさく)」。 明治時代の日本の暦では夏至の日にこんな記述があった。 「菖蒲」とはアヤメやハナショウブなどアヤメ科の花で、まさに今が見ごろだ。 三田市・永沢寺の「花しょうぶ園」では、300万本ものハナショウブが咲き誇る。 雨の中でも、色づく花を愛(め)でながら歩くのは楽しいだろう。 日が暮れたなら「キャンドルナイト」という趣向はどうか。 東京の事務局の呼びかけで午後8時から2時間、電灯を一斉に消すイベントだ。 ロウソクの明かりだけで一番短い夜のひとときを過ごす。 そうやって自然な夜を体感する。 どこにいても自由に参加できるのがいい。 梅雨も夏もこれからが本番。 ただし、昼の時間はきょうを境に確実に短くなる。 そう考えると、太陽の輝きが、かけがえのない季節の恵みに思えてきた。
Jun 21, 2009
この日からセミが鳴き始める。 中国・唐代の暦にはこう記されているそうだ。 一年で太陽が最も長く空にある日。 つまり夏至のことである。 きょうがその夏至。 神戸では午前5時前に日が昇り、午後7時すぎに沈む。 太陽はいつもよりたっぷり時間をかけて天をめぐる。 「夏至の日の手足明るく目覚めけり」(岡本眸) 中国の古い暦と違い、関西ではまだセミの声は聞こえない。 地域によって日本でもセミの鳴き始める場所があるようだが、それでも盛夏の気分にはほど遠い。 第一、雨にたたられがちの季節である。 「菖蒲華(あやめはなさく)」。 明治時代の日本の暦では夏至の日にこんな記述があった。 「菖蒲」とはアヤメやハナショウブなどアヤメ科の花で、まさに今が見ごろだ。 三田市・永沢寺の「花しょうぶ園」では、300万本ものハナショウブが咲き誇る。 雨の中でも、色づく花を愛(め)でながら歩くのは楽しいだろう。 日が暮れたなら「キャンドルナイト」という趣向はどうか。 東京の事務局の呼びかけで午後8時から2時間、電灯を一斉に消すイベントだ。 ロウソクの明かりだけで一番短い夜のひとときを過ごす。 そうやって自然な夜を体感する。 どこにいても自由に参加できるのがいい。 梅雨も夏もこれからが本番。 ただし、昼の時間はきょうを境に確実に短くなる。 そう考えると、太陽の輝きが、かけがえのない季節の恵みに思えてきた。
Jun 21, 2009
不況で企業が人員削減などを加速させるなか、働く人たちは長時間勤務や成果主義を強いられ、肉体的、精神的に追いつめられているのではないだろうか。 厚生労働省が今月まとめた2008年度の労災補償状況からは、そんな職場環境の実態が浮かび上がってくる。 厚労省の集計によると、過労など仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり労災認定された人が、08年度は269人と過去最多となった。 うち自殺(未遂を含む)は66人だった。 精神疾患の労災認定は、初めて200人を超えた06年度から3年連続して過去最多を更新したことになる。 厚労省も、こうした状況が続く要因を「経済情勢の悪化で依然、職場環境が厳しい状態にあることを反映している」と分析している。 しかし「心の病」は、労災申請するまでに専門医師の診断だけでなく、家族や会社の十分な理解と協力が必要であり、実際に申請して認定に至るケースは極めて少ないといわれる。 申請数はここ数年900人台で横ばい状態だが、この数字は「氷山の一角で、救済すべき人の多くが申請さえできないでいる」と指摘する専門家は多い。 救済されるべき人を確実に救済するためにも、厚労省には審査体制の充実が、企業には従業員の「心の健康」へのこまやかなケアと「心の病」にかかった人へのサポートが一層求められる。 「心の病」の労災認定で見過ごせないのは、一つは20代と30代の若い世代が増えていることだ。 08年度は両世代で精神疾患の認定の半数以上を占めた。 年代別の認定数でも30代が1位、20代が2位となった。 若い世代が職場でストレスをより強く受けている実態が浮かび上がる。 若年層の労災認定の増加を深刻な問題と受け止めたい。 若い世代の「心の病」が増えるような社会の未来は危ない。 もう一つは、職場でのパワーハラスメント(上司などによる嫌がらせ)やセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)、仕事上の失敗や不安などが要因とみられる労災認定が増えていることだ。 08年度は長時間労働との因果関係を調査・判断するまでもなく、そうした要因による精神疾患で労災と認定されたケースが前年度の1・6倍に急増した。 そこからは、効率主義や成果主義に走る職場環境の重苦しさやギスギスした人間関係が、働く若い人たちを精神的に追いつめている実態が見えてくる。 この状況を「一過性の現象」ととらえるべきではない。 「人より利潤」を優先する傾向が強まる日本の企業社会の在り方が問われていると受け止めたい。 企業だけでなく、社会全体で「働き方」を根本的に見直すときだろう。 ここ数年の若い世代の「心の病」の労災急増が、それを迫っている。
Jun 21, 2009
石川五右衛門を名乗る泥棒が金沢に現れた。 そう名前を記し、「2度と入りません」と置き手紙をした。 天下の義賊も安く見られた。五右衛門といえば、釜ゆでの刑が有名である。 作り話だろうが、豊臣秀吉暗殺を図って捕まった。 子どもと一緒に釜ゆでにされたとき、子を高々と持ち上げて息絶えるまで守った。 義賊の最期である。 そうではなく、熱さのあまり、子を踏み台にしてあがいたという話もある。 こうなると化けの皮がはがれる。 日本郵政社長人事をめぐる騒ぎを泥棒の釜ゆでに例えるのは失礼だろうが、釜の底に社長を沈めようとしたのが前大臣で、逆に社長を持ち上げたのが首相ではないだろうか。 話はそこで終わらず、正義を叫ぶ前大臣は内幕暴露に忙しい。 高々と持ち上げたはずの首相の足元も、ふらつき始めた。 しまりがつかない。 こうなると、火の手の上がる政府の中に飛び込んで、助太刀を買って出る有能な人材など、誰もいないだろう。元をただせば、膨大な赤字施設を作らせ、不祥事の温床を放置してきた政治家と官僚の罪である。 「天下の悪人はほかにいる」と、芝居の五右衛門なら、そう叫ぶ。
Jun 20, 2009
「大きくなったら、ぼくは博士になりたい。そしてドラえもんに出てくるようなタイムマシンをつくる」。 この時季になると、そんな書き出しの詩を思い出す。 小学生の少年が書いた「ぼくの夢」という詩だ。 子どものために身を捧げるというのは、何も母親の専売特許ではない。 父親だって、取引先の理不尽な要求や上司の嫌みに日々耐えているのは、多くは会社のためではなく、家で待つ子どものためだったりする。 特にこの不況時だ。 仕事がないと嘆く人たちがいる一方で、人員削減のあおりから、これまで以上に仕事を抱え込んでいる人たちもいるだろう。 すり切れた心と壊れそうな体にむち打って、昼間のパパは汗水流す。 関西地方の市役所に勤めていた少年の父も、そうして頑張ってきたに違いない。 しかし膨大な量の作業は、眠れなくなるほど彼を精神的に追い詰めた。 そして2000年3月、仕事に行くと言って自宅を出た後、市長あての遺書を残して自殺した。 冒頭の詩を少年が作ったのは、そうしたいきさつを知らされた後だった。 詩はこう続く。 「ぼくは、タイムマシンにのってお父さんの死んでしまうまえの日に行く。そして、「仕事に行ったらあかん」ていうんや」。 父親にとって子どもが大切な存在であるように、子どもにとっても父親はかけがえのない存在だ。 土曜も日曜も関係なく仕事に追われる人もいるだろうが、子どものためを思うなら、たまには早めに帰宅しよう。 明日は父の日。
Jun 20, 2009
「メロスは激怒した」。 国語が嫌いでも、この書き出しを覚えている人はいるだろう。 太宰治の「走れメロス」は小学校の、たぶん高学年の教科書にあった。 3日後の日暮れまでに王様の元に、立ち戻る約束をする。 親友を救い、自分は殺されるために。 教育学者の斎藤孝さんは近著「若いうちに読みたい太宰治」で、「音読している自分が、自分の言葉に酔ってしまう」と「メロス」を評した。 ほとばしる言葉の濁流は声を出して読むに限ると勧める。 その太宰自身が書き立ての「メロス」を、旧制新潟高校で音読した。 その話を「みみづく通信」に書いている。 1940年11月中旬だから、音読を聴いた幸運な生徒は、もう米寿ぐらいだろうか。 太宰は講堂で大声で読み「青春は、友情の葛藤(かっとう)であります」と話す。 生徒を砂丘に誘って夕日も眺めた。 100年前のきょう、太宰は生まれた。 38歳で心中を図り、遺体が見つかったのもきょうだ。 だから6月19日は誕生日にして「桜桃忌」となる。 戦後無頼派作家の代表格といえば、太宰と、あの砂丘に寝そべって学校をさぼった坂口安吾だろう。 安吾は「堕落論」で「墜(お)ちよ、そして生きよ」と生のメッセージを発した。 安吾は、太宰の死を「いつでも、死ねる。そんな、つまらんことやるな」と書き、「かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるのですよ。 戦いぬく、言うは易(やす)く、疲れるね」(「不良少年とキリスト」)と哀惜するのである。 太宰や安吾がまたブームだという。 「生きづらさ」を実感する人が増えているのだろうか。
Jun 19, 2009
日本が進むべき安心社会の方向は共有できる。 しかし、それを実現する財源に踏み込まないのでは、意味不明だ。 政府の安心社会実現会議がまとめた報告書のことだ。 日本の将来像のキーワードに「安心と活力の両立」を掲げ、安心社会とは「働き、生活することを共に支え合う社会」であると定義した。 高齢者だけではなく、全世代を通じた「切れ目のない安心保障」の構築を目指し、雇用を中心として、子育てや教育、医療、年金・介護の「五つの安心」の連携が大事だと強調している。 論議の出発点になった小泉構造改革については、その意義は評価しながらも、「活力を支える安心まで掘り崩す結果になってはならない」と指摘した。 改革で生じた格差や貧困問題に焦点を当て、国民の将来不安の根源となっている社会保障制度のひずみを正すという。 報告書が示した問題提起や針路は妥当だろう。 高齢者に手厚い社会保障給付を若者・現役世代にも拡充する提言も評価できる。 「政府が大きいか小さいかよりも、いかに無駄なく高機能であるかが重要」とした指摘も、もっともだ。 報告書は、実現に向けた短期の課題や中長期の道筋も描いている。 2011年度までの緊急施策として、減税と給付金支給を組み合わせて子育て・低所得世帯を支援する給付付き税額控除の創設など10項目を挙げた。 20年代初頭まで出生率を確実に上昇反転させ、35年には「便益の実感を伴った持続可能な安心社会」の構築を目指すとした。 しかし、実現への財源をどう確保するかは、具体的には示さなかった。 政府の社会保障国民会議は、社会保障の機能を強化すれば、15年度には消費税換算で3%台、25年度は6%が必要と試算した。 これに緊急施策を実施するとなれば、費用はもっと膨らむ。 報告書は「消費税を含む税制改革への行程を示す必要がある」とだけ指摘し、消費税の増税時期や引き上げ幅には触れていない。 この合意形成は政治の役割として、与野党が党派を超えた円卓会議を設置するよう求めている。 確かに政治の責任は重い。 しかし、衆院選を控え、与野党とも増税論議は避けたいのが本音のようだ。 国民も政治や行政への不信が強いため、負担増の議論には乗りにくい。 政治が国民の信頼を取り戻し、言いにくいことも言わなければ、いつまでたっても安心社会は築けない。 今度の衆院選でどんな政権が誕生しても、報告書が掲げた「安心保障」の構築は待ったなしの課題だ。 野党や国民との合意形成に意欲を示す麻生太郎首相がまず、実現に必要な費用と財源を明示し、堂々と議論を起こしてもらいたい。 でなければ、今回の提言も絵に描いたもちに終わる。 将来世代へのつけ回しこそ、もう終わりにしたい。
Jun 19, 2009
村上春樹さんの話題の新刊「1Q84」を買いそびれた書店で、懐かしい顔に再会した。 ポプラ社の「少年探偵団」シリーズだ。 30年以上も前に読みあさったのは単行本だったが、書棚にあったのは文庫本だ。 1964年の初版以来、累計発行部数は1660万部に上るロングセラーという。 日本の推理小説に新境地を切り開いた作者、江戸川乱歩の自伝も「怪人二十面相」を地で行くようでまた面白い。 大学卒業後、商社などに勤めるが長く続かない。 30歳でプロの作家になるまで、古本屋や市役所職員、組合書記長、新聞記者など十四、五の職を転々とした。 転居はもっと激しく、ようやく腰を落ち着けた40歳までに40回にも及ぶという。 「乱歩には変身願望があり、それが二十面相の変装に現れている」(「江戸川乱歩と少年探偵団」)。 飽くことのない変身願望が、奇想天外の変装アイデアに化け、不滅の怪盗を育てたようだ。 「政権の主」への願望が現実味を帯びてきた民主党に対抗し、麻生首相が「自民党は変わる」という変身公約を総選挙で前面に出すよう注文したという。 世論調査の内閣支持率は20%を大きく割り込み、献金問題の春の追い風がパタリと止まった理由もあるだろう。 きのうの党首討論の第2ラウンドは、福祉切り捨てと財源確保の堂々巡りだった。 不景気に雇用不安、老後の心配もどうする。 変身したいのは、この境遇を一刻も早く抜け出したい国民の方だ。 変心で揺れた麻生政権もそろそろ終幕、謎解きをして早くスッキリさせてくれないものか。
Jun 18, 2009
食品の表示をめぐって、また法律違反が明らかになった。 日本水産(東京)が販売した「ずわいがにコロッケ」の材料に安価なベニズワイガニを使っていたとして、公正取引委員会は景品表示法違反で同社に排除命令を出し、農林水産省も日本農林規格(JAS)法違反で是正を指示した。 ズワイガニは、卸売価格でベニズワイガニの約8倍に上る。 公取委によると、同社は2007年4月~今年2月、同コロッケ約85万パックを販売していたという。 消費者は、産地などの表示を信用して食品を購入する。 その表示を偽るとは、消費者への裏切り行為というしかない。 問題は、今回のように違反が公表されるのは一部とみられることだ。 農水省が08年、JAS法に基づき、食品表示に関して行政指導や厳重注意したケースは879件あったが、公表したのは110件にとどまったことが、共同通信社による同省などへの情報公開請求で分かった。 「すべての違反を公表すると、業者が受ける社会的打撃が大きいから」と、同省は非公表の理由を説明する。 消費者には到底、納得できない回答だ。 度重なる食品の表示違反を受けて、農水省は今年1月、違反が悪質で「指示」を出した場合は公表、過失による一時的なもので、業者が直ちに改善した場合は非公表の「指導」とする指針をまとめた。 今回の非公表の事例は指針をまとめる前だが、ホルスタインを「松阪牛」と表示したり、一度パック詰めした肉を詰め直して消費期限を延長したりと、過失とは思えないものが含まれている。 新しい指針も十分に生かされないようであれば、消費者の信頼回復にはつながらない。 同省の判断を外部からチェックする制度の検討などが必要ではないだろうか。 非公表の中には、業者が自主的に新聞広告などで謝罪したり、返金に応じたりした例もある。 業者に都合の悪い内容でも、分かった段階で公表し誠実に対応すれば、消費者の理解や信用は得られるはずだ。 消費者行政の司令塔となる消費者庁が今秋、発足する。 生産者重視から消費者重視への転換が期待されているが、同庁に移る職員の中に業界寄りの体質が残っているようでは、実効性が疑われかねない。 食品表示違反は原則公表し、判断は消費者に委ねる。 いまだに後を絶たない違反を防ぐには、この消費者重視の姿勢を取り戻すことが大切ではないだろうか。
Jun 18, 2009
皆さんは、今のこの社会をこの現実をどのように思っているのでしょう。 政府は、本当に国民のことを思って政治を行っていると思っているのでしょうか。 高齢化と少子化、雇用、不景気、医療どれをとっても何も解決されていません。 また、北朝鮮による核兵器の脅威によって拉致問題が影を潜めてしまった。 また、企業も人件費削減、経費削減と生き残りをかけています。 私は、こういう時世だからこそ、人のコミュニケーションが必要だと思うのです。 一人よりも二人、二人よりも三人と一緒に行動できる仲間が必要だと思うのです。 何かひとつ目標をもって行動できるって素晴らしいことだと思うのです。 一度きりの人生、楽しく生きたい、人のために生きたいと思うのです。 私は、大阪ブルーリボンの会のボランティアもしています。 そうです。 北朝鮮に拉致されている日本人を救う会です。 私たちは、全員を解放されるまで活動しています。 街頭に立って、声をからしながら訴えて署名運動と募金活動をしています。 でも、なかなか署名もされないのが現実です。 いつから日本人はこのような人間になったのだろう。 自分さえ良かったら良いという考えなのだろうか。 冷たいというか関心がないというか情けなく思えてしまった。 同じ日本人なのに・・・。 中学生とか小学生の時に誘拐されて暗闇の船底に連れて行かされて大声で泣きながら「お母さん、助けて」と爪でひっかきながら助けを呼ぶ子供の姿を想像してみて下さい。 一人よりも二人、三人よりも四人というふうに署名がふえていけば、国を動かすことも可能なのです。 私は、ボランティアを通じてもっともっと人のために何かひとつでもお役に立ちたいと思っているのです。 これから先のことを考えたとき、子供たちのことを考えたことがありますか? ますます厳しい世の中になると思います。 私は、何とか対策を立てておかないといけないと思います。 いつかは、世界中の子供たちがお互いに手に手をとって笑顔で生きていけるようになって欲しいと思っています。 それが今だと思うのです。 オバマ大統領は「チェンジ」と言いました。 私は、チェンジはチャンスだと思うのです。 この厳しい現実だからこそ、立ち向かう勇気が必要なのではないでしょうか。
Jun 17, 2009
「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」。 何とも衝撃的なフレーズだが、実は昨秋発行されたベストセラー本(町山智浩著)のタイトルである。 ニューヨークの場所なら、日本人でも半数ぐらいは地図で指さすことができそうだ。 ちょっと眉唾物(まゆつばもの)にも思えるが、れっきとした事実だというから驚きである。 全米地理学協会は2006年、18~24歳対象に調査を行った。 アフガニスタンの場所を88%が知らずイラクは63%が不正解。 ニューヨーク州も50%が誤って答えたという。 この本では宗教や政治、経済など米国の意外な現実が次々と暴露されている。 米国人の無知もその一つだが、他国のことと笑えない。 「日本人の小学生の6割は福井県の場所を知らない」。 国立教育政策研究所が昨年発表した調査報告。 小学6年生と中学3年生に都道府県の位置を地図上で選ぶテストを行った。 その正答率は小6で40%、中3で48%と全国最下位だった。 さらに徳島、宮崎、島根など西日本勢が並んだ。 県名覚えは一般に北から始めるためハンディもあるようだ。 福井県は今春「観光営業部」を創設し福井を懸命に売り込んでいる。 県立恐竜博物館では草食恐竜の全身骨格化石を購入し目玉にするという。 子どもは恐竜が大好き。 知名度アップにどれだけ貢献するか楽しみである。
Jun 17, 2009
不況下に人件費を削減したい企業が、育児休業中の女性正社員を解雇したり非正規社員にする「育休切り」が顕在化している。 家族を抱えた男性正社員より女性の方が経済的リスクが小さい、と企業が考えている節がある。 一方、主に都市部での話だが、夫の失業に直面した専業主婦は保育所問題の壁に突き当たっている。 子どもを保育所に入れて自身が働きに出ようと思っても、同様の事情を抱えた家庭からの申し込みが急増しているため、保育所に入るのが難しくなっているという。 以前の日本は、正社員で働く夫と家事育児介護をする専業主婦が夫婦のモデルだった。 しかし正社員の夫だって失業するかもしれないし、非正規労働者なら十分な収入が得られない。 そのため妻が働かなくては家計を維持することが難しくなってきた。 出産しても仕事をやめたくない女性も増えている。 夫婦が共に働くことがモデルになりつつあるのに、そうした変化に企業や社会が対応できていない。 育休切りや保育所不足はその象徴だろう。 正社員の夫が希望退職者の募集に応募したという女性がいる。 夫は次の就職先が見つからず自営業になるという。 夫が正社員なら妻の年金保険料を払わなくてもよかったが、自営業になれば収入はがくんと減るのに、妻も払わなければならない。 女性は制度のゆがみに気が付き、がくぜんとしたという。 夫が正社員で妻は専業主婦という旧来のモデルを守る制度もまた、耐用年数を過ぎている。 このままで良いのだろうか? もっと国民のことを理解しないといけないのではないだろうか。
Jun 17, 2009
結果だけでなく生きざまを見せるのがプロレスだと、日本を代表するプロレスラー三沢光晴さん(46)が、かつて自著で語っていた。 実際、戦績以上にその生きざまにファンは共感してきた。 19年前、選手の大量離脱で危機に瀕した全日本プロレスを救ったのは、彼のひたむきさだった。 体格もパワーも違うジャンボ鶴田選手という巨大な壁に食らいつき、乗り越える姿に、ファンは勇気をもらった。 受け身の名人と呼ばれるまでに練習を積み、どんな危険な技でも耐えてみせた。 少々の骨折などものともせず年間100試合以上に出場し、常に全力を尽くした。 それが彼の考える「強さ」であり、プロレスラーとしての「誇り」だったのだろう。 そんな彼にファンはしびれた。 リングの外で見せた男気にほれ直したこともある。 若手時代に共に汗を流した冬木弘道選手がガンで引退せざるを得ないと聞くや、新団体「ノア」の社長となっていた彼は、引退興行に手弁当で協力した。 冬木選手がかつての大量離脱組だったことなど、意に介さなかった。 こうした愚直な生き方をしてきた彼だからこそ、リングで命を落とすことになったのかもしれない。 そう思うとあまりに悲しい。 だけど彼の示してきた生きざまは、確かにファンの胸に刻み込まれた。 プロとは何なのか、人としてどんな生き方をすべきなのか、体を張って教えてくれた。 最後の最後までプロレスラーだった。 先に逝った鶴田選手や冬木選手に胸を張って再会してほしい。 合掌。
Jun 16, 2009
痴漢冤罪(えんざい)を通じ刑事裁判の矛盾を描いた映画「それでもボクはやっていない」。 題名が物語の展開を暗示する。 この映画のシナリオ本で、周防正行監督と対談した木谷明さんが「私ならちゅうちょなく無罪」と反論している。 最高裁調査官も務めた元エリート判事だ。 被害者がうそを言うはずがない、だったら被告人の無実の訴えはうそ? しばしば当事者同士の証言しかない痴漢事件でそんな二者択一に陥るのを、木谷さんは戒める。 被害者の間違いもありうる。 だからこそ証拠集めを尽くし、予断なく検証するべきだと。 至極当然だろう。 しかし、最高裁で先ごろ小差で逆転無罪になった防衛医大教授の痴漢冤罪事件をみると、当然のことを尽くしているか疑わしい。 「霧の中にすべての事実が覆い隠されて終わった」。 決定的証拠もなく翻弄(ほんろう)された教授が月刊誌で晴れぬ心境を語っていた。 こんな苦悩に市民も向き合うのが裁判員制度。 殺人未遂罪で起訴された事件が県内1号に決まった。 正しく判断できるか。結果を背負えるか。 それでもいまの司法よりは…堂々巡りに答えてくれるだろうか。 人を裁くとおじけづくのは無用、判断するのはあくまで検察側の証拠に納得できるかどうか、と周防監督。 ただ「桜吹雪がお見通し」の真実に迫りたいのが人の性(さが)。 それと裁判上の白黒を区別する―その辺りの行方も見きわめたい。
Jun 16, 2009
お笑いの世界では、芸が受けないことを「すべる」と言う。 関西の芸人が言い出した言葉だそうで、今ではお笑いに限らず一般的な会話にも使われるようになった。 最近は「すべり芸」なるものまであるらしい。 冗談やギャグを言っても観客の反応は皆無で、とっておきの「一発芸」を披露してもシーンと静まりかえっている。 困惑した芸人の妙な雰囲気が、逆に笑いを誘うというからちょっと複雑だ。 職場で「おやじギャグ」を連発し、周囲から白い目で見られるのも、すべり芸の一種かもしれない。 国土交通省が職員を対象に実施した「漫才研修」に、省内外から批判が相次いでいる。 お笑いの構成作家や漫才コンビらを講師に招き、プロの模範演技を鑑賞した後、2人1組となって「ボケ」と「ツッコミ」を体験する内容。 講師料は、数十万円だったという。 コミュニケーション能力を高めるのが目的とはいうが、果たして本物の漫才コンビまで呼ぶ必要があったのか。 漫画家のやくみつるさんが「笑いを身に付けたければ、テレビを見て練習すればいい」と言うように、「税金の無駄遣い」「研修に意味があるのか」との批判も、もっともだろう。 省内外に受けない研修は、いってみれば「すべり研修」。 研修担当者が困惑しているかどうか知らないが、税金をそんなところに使われては、国民はたまったものではない。
Jun 15, 2009
この期に及んでも、政府は「うそ」をつき続けるつもりなのだろうか。 1960年の日米安全保障条約改定の際に、日米が交わした米軍の「核持ち込み」に関する密約の存在のことだ。 核兵器を積んだ米軍の艦船や航空機の日本立ち寄りを日本政府が黙認するという約束があったことは、既に米国で公開された公文書で明らかになっている。 にもかかわらず政府はその存在を否定し続けてきたが、今度は外務次官経験者4人が共同通信の取材に答えるかたちで密約の存在を明確に認めたのだ。 日本外交の実務中枢にいた次官の証言である。 今回は隠し通すことはできないと思う。 政府はうそをついてきたことを認め、密約の全容を開示すべきではないだろうか。 米軍の核兵器持ち込みは、安保条約6条(米軍による施設・区域使用)に関する交換公文とそれに基づく政府間の口頭了解で事前協議の対象とされている。 つまり、核兵器を積んだ米軍艦船や航空機が日本に立ち寄る際には、事前に米側が日本政府に協議を申し入れなければならないことになっている。 ただ、現実には事前協議が行われたことは一度もない。 政府も「協議の申し入れがない以上、核持ち込みはない」との国会答弁を繰り返してきた。 しかし、元次官らの証言によると、米軍艦船や米軍機に積まれた核兵器は事前協議が必要な「持ち込み」に相当しないという秘密の合意内容を記した文書が外務省に存在し、中枢官僚が厳重に管理してきたという。 だとすれば、事前協議がないことを理由に「核持ち込みはない」とする政府の答弁には何の根拠もない。 結果的に国民をだまし続けてきたことになる。 密約の存在が明確になったいまも、政府は「密約はない」と強弁し続けるつもりなのだろうか。 日本は「核兵器は持たず」「つくらず」「持ち込ませず」の非核三原則を国是としている。 密約の存在は、これが虚構だったことを意味する。 今後も非核政策を堅持していく以上は、国是に反する密約は破棄するのが筋だろう。 元次官らの証言でさらに驚くべきは、密約の内容を外務省が信用できない首相や外相には伝えていなかったという発言である。 官僚が主導権を握る日本外交の実態が図らずも露呈したかたちだ。 米国の核戦略に関する日米間の重要な約束の存在を、国政の責任者に知らせないなどということが現実にあったとすれば、由々しき問題だ。 米のアジア戦略上「核持ち込み」はあいまいにしておくべきだとの反論もあるかもしれない。 しかし、日本は唯一の被爆国で「非核」を掲げる国である。 「核」外交で、国民をだますだけでなく国政の責任者にも恣意(しい)的に隠すような秘密主義があっていいわけはない。 外交に対する国民の信頼を損ねるだけだと思う。
Jun 15, 2009

「姫路セントラルパーク」(姫路市豊富町神谷)が開くイベント「ナイトサファリ」の説明会が13日夜、現地であり、担当者の方が夜行性の動物の迫力に見入った。 期間中、土曜日の午後6時30分から約2時間、催す予定で、同パークが飼育するライオンやトラなど約700匹の夜の生態がライトアップされ、間近で観察できるのが最大の魅力。 「光と影のコントラストや、動物の野生に近い身のこなしを見て楽しんで」とPRしていた。 撮影用のバスの前で撮影 集合場所に皆さん集まってきました ジェットコースターが走ってきた瞬間を撮影 今回はこのバスでサファリの中を見学させていただきました いよいよ出発です 百獣の王ライオンがお出迎え 凄い迫力というか貫禄十分といった感じ 車の中の撮影は難しい・・・ブレル トラも迫力満点 シカの群れを発見 バスの中から夜のサファリの風景 カバも昼間は寝ていることが多いですが、夜は活発に動いてエサを食べています ゾウはやっぱり大きいゾウ かわいいフクロウちゃんも出迎えています これからロープウェイでスカイサファリです レッサーパンダがいました しぐさがとても可愛いです ゾウにエサを与えているところです ゾウの歯は何本あるか知っていますか? バスに乗ってドライブスルーサファリへ入場し普段見ることのできない猛獣や草食動物の夜の様子を観察することができる。 歩いて回るウォーキングサファリには、レッサーパンダやホワイトライオン、ホワイトタイガー等の昼間と違う姿に会うことができる。 ドライブスルー30分とウォーキングサファリ40分。 ドキドキの連続だ。 昼間、寝ている動物たちも夜は元気に動き回っています。 是非、この機会にドキドキ感を味わってみて下さい。
Jun 14, 2009
高速道路を法定速度で走っているとビュンビュン追い抜かれる。 特にETC割引導入後は「少しでも遠くへ」と飛ばす車が増えた気がする。 排ガス抑制のためにも速度は控えめがお勧めです。 環境面から鉄道を再評価する自治体が増えている。 しかし、ローカル線の多くは利用者の低迷に悩んでいる。 糸魚川市と長野県を結ぶJR大糸線もその一つだが、実は鉄道ファンの間では大変な人気スポットだ。 姫川渓谷を縫うように走るのは1960年代に製造された気動車である。 旧国鉄色の3両が現役で活躍する姿は珍しく、全国から大勢の写真家が訪れる。 車両以上にお目当てとなっているのは、この地の自然の魅力という。 糸魚川は地質的特徴などを教育や地域振興につなげようと「世界ジオパーク」認定を目指す。 沿線にはヒスイ峡や雨飾山など見どころも多い。 長野県小谷村の役場でいま、大糸線にほれた愛知、兵庫などの鉄道写真愛好家9人が作品展を開いている。 山や渓谷を写し込んだ45点が見る者を飽きさせない。 出品者の一人、プロカメラマン山崎和彦さん(48)は横浜市生まれだが風景や人の情に引かれ今春、小谷村民になった。 鉄路を舞台に花たちがほほ笑んでいるような作品が温かい。 大糸線は山岳地帯を安全に運行するため、時速25キロで走る区間がある。 窓外の景色はゆっくり流れ、線路脇に咲く花の花弁一枚一枚を見分けられるほどだ。 速すぎない乗り物の魅力がそこにある。 ビュンビュンではないスローな写真展は9月6日まで。 10月には糸魚川でも開かれるという。
Jun 14, 2009
海の恐ろしさを見せつけられた一日だった。 13日、3人が乗ったとみられるプレジャーボートが相次いで転覆し、6人が死亡した。 朝から気圧の谷が断続的に通過し、雷や突風が発生しやすい気象状況になっていたという。 地方気象台では県内全域に雷注意報を出し、警戒を促していた。 出港時に穏やかに凪(な)いでいても油断は禁物だ。 海がいつ牙をむくか分からない。 海上では常に雲や風の動きに気を配る必要がある。 海洋レジャーはこれから本格的なシーズンを迎える。 沖合での事故は重大事故につながる。 ひとときの行楽を暗転させてはならない。 海難事故の防止に万全を期して欲しい。 胎内市の事故は荒川マリーナの沖合わずか30メートルほどの所で起きた。 午前5時ころから釣りをしていたが、午前7時すぎに波が高くなったため、マリーナに引き返す途中だったという。 転覆現場は荒川の河口近くだ。 海に注ぐ川の流れと沖からの波がぶつかり合い、複雑な波形をつくる。 しかも水深が浅いため大きな波が立ちやすい。 地元の漁業関係者も「注意が必要」という難所だった。 3人はいずれもライフジャケットを着けていなかったという。 マリーナが目の前という安心感があったのだろうか。 しかし、ライフジャケットは海上では命綱ともいうべきものだ。 海岸に近く、発見も早かっただけに、ライフジャケットさえ着けていればと思うと残念でならない。 プレジャーボートなどでは無着用をよく見掛ける。 自らの命を守ることに、もっと注意を払ってほしい。 新潟市のプレジャーボートも早朝に係留地の阿賀野川河口から出航したものとみられている。 ボートが発見されたのは午後3時半ごろだが、いつ事故に遭ったのかは分かっていない。 発見当時の空からの映像を見る限り、海は荒れていなかった。 なぜ3人の命が奪われたのか。 「早朝出航」「河口付近」など二つの事故に共通するものがある。 下越地域の沿岸で何が起きていたのか。 気象状況を含め徹底した検証を行い、原因を究明してもらいたい。 2004年には新潟市沖で漁船が転覆し、2人が死亡している。 昨年9月にも新潟市沖で遊漁船が転覆し、船長ら3人が犠牲となった。 海のプロともいうべき漁船や遊漁船でも事故は起きている。 プレジャーボートの多くは個人が所有する釣り目的などのレジャー船だ。 操舵(そうだ)に当たってはより慎重さが求められる。 海を侮ってはならない。 何より「安全第一」を優先させてほしい。
Jun 14, 2009
鳩(はと)と言えば、温和で平和のシンボルが通り相場だ。 ところが、「鳩」を辞書で引くと、意外な側面も浮かび上がる。 「鳩根性」という言葉があった。 クックーという独特な鳴き声は優しげだ。 でも、聞く人が聞けば、くぐもったその鳴き声から、表面はおとなしくても、不満がちな裏の性根を見抜いてしまう。 「鳩根性のふくれ声」などという。 今回の「鳩の乱」で、ご当人は国民の不満を代弁したと意気軒高だ。 総務相を辞任した鳩山邦夫氏である いかさま師を「鳩の飼い」とも言うそうだ。 山伏の格好で家々を回り、熊野のお宮話をしては、鳩のエサ代をだましとる。 そんな輩(やから)の故事らしい。 公金2400億円を投じた「かんぽの宿」が、なぜ109億円の二束三文になるの? 売り主の日本郵政も買い主も、「鳩の飼い」の出来レースでないか。 鳩山氏の怒りに国民は喝さいした。 その勢いはとどまる所を知らず、日本郵政の社長続投の反対にもこだわった。 どうやらその背景には、郵政民営化をめぐる自民党内の激しい綱引きもありそうだ。 そうなると「民営化に賛成でなかった」などと放言していた麻生首相ものんきでいられないと思う。 結局、鳩の乱であらためて見せつけられたのは、首相の優柔不断と指導力の欠如ぐらいではなかったか。 「総理になれないといわれた人(麻生氏)を総理にした」。 盟友にそこまで自慢された揚げ句、最後の頼みにした妥協案まで簡単にけっぽられてしまう首相も情けない。 その時の顔は「鳩が豆鉄砲を食らったよう」だったに違いない。
Jun 13, 2009
世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を最高の「6」に引き上げた。 世界的大流行(パンデミック)は1968年の「香港風邪」以来41年ぶりだ。 しかし、新型ウイルスの毒性が急に強くなったり、予想外の事態が起きたりしたわけではない。 国の対策レベルは「国内発生早期」の第2段階で変わらない。 国民は冷静に受け止め、感染拡大への備えをしていけば良いと思う。 メキシコから始まった感染が地理的な拡大を続けている。 フェーズ6への引き上げは、ウイルスが活発化する冬を迎えたオーストラリアで感染者が増え始め、感染者が多い北米などへの渡航と無関係に「地域社会レベルの持続感染」が認められたためだ。 5月上旬以降、警戒水準引き上げの要件はそろっていた。 しかし、ウイルスが事前想定の強毒性でなく弱毒性であることを踏まえ、社会の混乱や経済的打撃を懸念する日本や欧米などの主張をくみ、据え置かれてきた。 従来の地理的な要件に加え、感染者の健康被害についての3段階の新基準を設定し、WHOはフェーズ引き上げに踏み切った。 苦肉の策だったのだろう。 ただ感染拡大の勢いが、これ以上の躊躇(ちゅうちょ)を許さなかったといえる。 WHOは現状を3段階基準での「中」程度と位置付け、重症者や死者が突然急増することはないとした。 各国に国境閉鎖や旅行制限など過剰な反応をしないようにと呼び掛けている。 重要なのは、さらなる感染拡大が避けられない見通しが示されたことだ。 警戒を緩めず、発生状況の監視と拡大防止の努力、医療の強化を進めねばならない。 秋口以降に予想される第2波やウイルスの変異の兆候にも目を凝らす必要がある。 政府は診療行為により二次感染した医師らの休業中の損失を補償する方針だ。 感染者急増地域では一般医療機関でも患者を受け入れる新方針に対応した措置だ。 こうした医療現場の態勢強化や財政的支援が大切になる。 厚生労働省は新型ウイルスのワクチンは年内に2500万人分製造可能で、10月には接種開始できる見通しという。 優先接種対象者などを速やかに決め、国民に方針を説明してほしい。 先進各国と協調し、医療体制が十分でない発展途上国を支援することにも力を尽くさねばならない。 世界が一つとなって取り組むのでなければ、流行終息は遅れるばかりだからだ。 学校への嫌がらせ電話といった過剰反応は残念だ。 しかし、感染者の多くが自発的に発熱外来を受診するなど、社会がおおむね落ち着いた行動をしてきたことは心強い。 被害は最小限に抑えることができると信じる。
Jun 13, 2009
子どもの夢は、プロ野球選手やスチュワーデスなどに集まる。 種類が限られるのは、世の中の仕事を知らないからだろう。 「13歳のハローワーク」という本が話題になったことがある。 作家の村上龍さんが子どものために、500余りの職業を紹介した異色の本だった。 早くから職業への関心を高めた方がいい、とのメッセージが反響を呼んで、100万部を超えるベストセラーとなった。 こうした関心は一層高まっているようだ。 今春開園した子ども向けの職業体験施設「キッザニア甲子園」がにぎわっている。 仕事のテーマパークには消防士やパイロットなど人気の職種だけでなく、すし職人ほか約80種類も用意されている。 もう少し大きくなれば現実味のある経験も必要だろう。 注目されているのが「キャリア教育」である。 特定の仕事に対する職業教育ではなく、子どものころから働く意味や職業観をはぐくみ、将来の職業選択に生かす教育のことだ。 背景にはニートやフリーターなどの社会問題もある。 兵庫県では、11年前から中学生の職業体験として「トライやる・ウィーク」が行われてきた。 先駆けた活動は、うれしいことに全国へ広がっている。 中央教育審議会がキャリア教育のあり方を検討し始めた。 頭をよぎるのは国の肝いりによる職業体験施設「私のしごと館」が大赤字で廃止を決めたことである。 少々心もとないが、しっかり図面を描いてほしい。
Jun 12, 2009
食べ物の話になると場がよく盛り上がる。 外国産の農産物があふれているが、地元の野菜、果物などの生産と消費をもっと増やしたい。 地域がうるおい、自信を取り戻せるはずだ。 そんな「地産地消」の取り組みがこのところ、いくつも出てきて、頼もしい。 長野市真島では、農家の有志が空き店舗で農産物直売を始めた。 当面は日曜日の午前だけだが、数年後には毎日の営業に切り替えたいという。 上高井郡高山村の農家の人たちは、小学生に大豆栽培やみそ造りを教える農業体験教室を始めた。 須坂市の若手飲食店経営者らは、ゴボウなど地元の伝統野菜を使った料理を農家女性たちに披露し、交流を深めている。 長野県は地産地消の推進を本格化させ、先日「信州を食べよう推進会議」を発足させた。 生産者、直売所、流通業、学校給食の関係者らがメンバーだ。 県は昨年、地産地消推進計画を策定している。 これらを生かして、取り組みを広げ、長続きできる効果的な施策を展開したい。 県内の農家は高齢化に加え、外国からの農産物輸入で、厳しい状況にある。 その中で地産地消を進める意味はいくつもある。 一つは、身近な生産者なので消費者は新鮮で安心できるものを味わえることだ。 二つには、小規模農家、女性、高齢者も生産・販売しやすく、所得向上につながる。 仲間づくりの意味も大きい。 三つ目には、自分たちの食文化に自信を持つことにつながる。 独自の伝統野菜として、下伊那郡天龍村の「ていざなす」、飯田市の「下栗芋」、松本市の「松本一本ねぎ」など50種以上が県から選定されている。 その食文化をしっかり受け継いで欲しいと思う。 農村滞在を楽しむ観光客に魅力の一つとなるだろう。 地球環境に関心を持つきっかけにもになる。 フードマイレージという指標がある。 食品の量と移動距離を掛け合わせたものだ。 食料の多くを輸入している日本は特に高い。 その分、温室効果ガス排出も多くなる。 地産地消は指標が低いのが取りえだ。 地域ならではの工夫を凝らし、発信力を高めたい。 例えば、木曽郡木曽町日義の道の駅では、乳酸菌発酵の漬物「すんき」を使ったドレッシング、カレー、おかゆの3商品を売り出した。 地産地消にもっと多くの人が目を向ければ、農家の笑顔が増え、交流の輪も広がるのではないだろうか。
Jun 12, 2009
タイム申告制マラソンというのをご存じだろうか。 事前に自分が申し出た記録に近かった順に成績をつけるレースのことである。 新潟市や近郊のランニング愛好会が手づくりで開いている「生涯マラソン」は、先日の大会で33回を数えた。 練習を積んでいる人だと10キロ走って5秒と違わない。 もちろん腕時計など使わないでの話だ。 1キロ4分なり、5分なりのペースが体に染み込んでいるのだろう。 周りの速さに惑わされず、マイペースを守り通す。 これがなかなか難しい。 ペース感覚はフルマラソンを完走するためにも重要だ。 速くなったり遅くなったりすると、無駄なエネルギーを消費して、バテてしまう。 気分よく走れる速さを維持すれば疲労も少ないという。 分かってはいるのだが、会得するまでの走り込みはできそうもない。 車の運転も同じようなものだ。 エコランという競技がある。 速さではなく燃費の良さを競うのだ。 昔からあるレースで、エコはエコノミー(経済的)の頭文字だ。 ガソリン消費を抑えるという意味ではもう一つのエコ=エコロジー(環境保護)=にも通じる。 専用に開発された1人乗りの車だと、リッター3000キロなどという途方もない記録をたたき出すという。 ハイブリッド車など足元にも及ばない。 「急」の付く運転は控えて、滑らかに、静かに、ゆっくりと。 安全運転の心得と似ている。 電気自動車は買えないが、エコドライブならできそうだ。 あなたも挑戦してみませんか。
Jun 11, 2009
仕事を続けながら子育てや介護ができる環境整備をめざした育児・介護休業法改正案の審議が衆院で始まる。 育児休業の取得を理由に解雇や降格など不利益な扱いを受ける「育休切り」が相次いでいることもあり、論議の行方を注目していきたい。 政府は、3歳未満の子どもをもつ従業員を対象に1日6時間程度の短時間勤務の義務付けなどを盛り込んだ改正案を提案。 民主、社民、国民新の野党3党は、政府案の拡充に加え、「育休切り」の防止により重点を置いた修正案を提出している。 共働き家庭が増えた現状をみれば、勤務時間の短縮などを企業側に任せた現行制度では不十分であるという認識では与野党とも一致する。 時短と残業免除を企業に義務付けたのが、改正のポイントだ。 さらに政府案は、父母が手分けして育休を取る場合の取得期間を現行の「1歳まで」から「1歳2カ月まで」に延長した。 専業主婦がいる従業員にも取得を認めるなど、男性が育休をほとんど取れていない現状の改善をめざしている。 これに対し、野党案は、時短と残業免除の義務化を小学校入学前までに拡大。 育休の取得期間を、政府案よりさらに延長するなどの強化を求めている。 女性の約7割が第1子出産を機に離職している実態をみると、少なくとも政府案にある改正は必要だと思う。 代替要員の確保などで企業の負担は大きくなるが、国も助成金などの支援体制を拡充し、安心して働ける環境づくりを進めてほしい。 もう一つの焦点は、厳しい経済情勢下で続く「育休切り」の防止だ。 2008年度、全国の労働局には1262件の相談があり、前年度より1・4倍も増えた。 兵庫労働局でも68件と2倍になった。 このため、政府案は、調停機関を設けて勧告に従わない企業名を公表するなどの防止策を盛り込んでいる。 野党案は、従業員の育休中の待遇や復帰後の賃金など労働条件の明示を企業に義務付け、育休などを理由にした解雇をなくす構えだ。 改正がいずれの方向になるにせよ、社会の変化に合わせた労働環境の充実は、将来的にも欠かせない。 企業側の抵抗もあるだろうが、ここは、仕事も育児も介護も社会的な責務との意識で当たるべきだ。 大切なのは、育休などを希望する人ができるだけ利用しやすい環境にすることだ。 職場全体で支えていく相互理解が、何より大切であることを忘れてはならないと思う。
Jun 11, 2009
空からオタマジャクシが降ってきた(石川県七尾市)。 本来なら空中に舞い上がらない生物・無生物が降り注ぐ奇怪な現象を「ファフロッキーズ(空からの落下物)」と呼ぶが、原因を巡って、ちょっとした物議を醸し出している。 先日、駐車場の車や地面にオタマジャクシが降ってくるのが目撃された。 その数100匹。 同県白山市でも30匹。 ファフロッキーズ現象は竜巻説が有力だが、当日は発生しておらず、強風がオタマジャクシを巻き上げ、別な場所に降ろすことは考えられない。 子どものころ、アマガエルが裏の小さな池のそばに立つ高さ3メートルほどの木の枝にリンゴ大の白い泡に卵を産み付け、数日経つとオタマジャクシが池に落ちるのをよく見た。 このようにオタマジャクシが降るには、近くに水があることが条件だ。 ファフロッキーズ現象は紀元前からあるという。 20世紀では、フランスでカエルの雨が2日間も降り続き、オーストラリアでは1000匹のイワシが降りそそぎ、アメリカでは数カ月にわたり石の雨。 日本でも宮崎県で小石の集中降雨を受けている。 今、オタマジャクシ(カエル)の好きな田んぼや池が減った。 今回降ってきたオタマジャクシは「カラスなど鳥が吐き出した」とか、「局地的な突風で空に飛ばされた」とか、騒がれているが、小さな体で人為的な環境破壊や地球温暖化に大きな警告を発しているのかも知れない。
Jun 10, 2009
4度目のW杯出場を決めたサッカーの日本代表チームが、試合後、そろいのTシャツを身に着けていた。 胸に書かれた文字は「世界を驚かす覚悟がある」。 どうやら本気になってきたらしい。 過去3度出場しているとはいえ、日本が本大会で決勝トーナメントに勝ち上がったのは地元開催の1度しかない。 しかもチームの世界ランキングは30位台だ。 そんな彼らが「ベスト4」を目指している。 とはいえ1次リーグ突破が現実的では、と感じるのが普通だろう。 しかし以前、元弁護士の中坊公平さんがこんなことを言っていた。 「できることからやっていたら、いつの日か世の中良くなる、なんてことはない」。 まず目指すべき姿を描き、それを実現する道筋を考える。 そうすると最も効果的な手段も浮かぶ。 またそうでなければ、彼は豊島産廃処理や住専処理、豊田商事など、誰もが腰を引くような難問で成果を出すことはできなかったに違いない。 日本代表では、まず岡田武史監督が「ベスト4」と言い始めた。 同じように口にする選手も増えてきて、Tシャツで覚悟も示した。 何が足りないか何をすべきかが見えてきたら、あとは実践するのみだ。 期待は膨らむ。 本当はこうした手法は、政治家や役人こそ実践すべきなのかもしれない。 しかし彼らの多くからは、将来像も道筋も伝わらない。 もちろん覚悟も示さない。 「世界を驚かす覚悟がある」。 彼らがそんなTシャツを着るのはいつのことか。 ニッポンは勝ち抜けるのだろうか。
Jun 9, 2009
スリランカにはシンハラ語を使う多数派のシンハラ人と、タミル語を使う少数派のタミル人がいる。 それぞれの言語による国の呼称があり、いずれも公式の国名とされている。 このうちタミル語については、亡くなった国語学者、大野晋さんが「日本語の起源はタミル語にある」と唱えていたことで知られている。 学会の評価は定まっていないようだが、南インドからやってきた優れた文明が日本に弥生時代と日本語をもたらした、とするその学説には、悠久のロマンの香りが漂う。 そのスリランカで先月、政府軍と、タミル人の反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との25年以上に及んだ内戦が終わった。 大統領が国民に向けて勝利を宣言した当日、中心都市コロンボでは、街中に祝いの爆竹が鳴り響き、人々の歓喜の声がこだましたと、伝えられた。 LTTEが政治家暗殺を得意としたテロ集団であることに間違いはなく、人々にはその壊滅を喜ぶ正当な理由があるだろう。 しかし、時代の根っこには民族問題があり、内戦終結ですべてが解決したわけでは到底ない。 政府軍が総攻撃を開始した今年初め以降、数万のタミル民間人が政府軍の爆撃などで殺害されたとの情報もある。 戦火を逃れた国内避難民は27万人を超える。 政府が外国報道陣の戦闘地域立ち入りを禁じていたため、惨劇の実態は分からないが、われらの文明の祖であるかもしれない人々が直面しているであろう苦しみを思うと、心が痛む。
Jun 8, 2009
雇用危機が続いている。 雇用情勢は景気動向を後追いする傾向があるだけに、最悪期を迎えるのは、むしろこれからだろう。 政府や企業、労組の真剣な取り組みが問われるのもこれからだ。 4月の完全失業率は5・0%となり、5年5カ月ぶりに5%台に達した。 3カ月で0・9ポイントも悪化した。 完全失業者数は346万人と、前年同月より71万人も増え、増加幅は過去最大だ。 求職者1人に対する求人数を示す有効求人倍率は0・46倍で、10年前の過去最低に並んだ。 企業の雇用の過剰感はなお強く、改善の兆しは見えない。 このままいけば、完全失業率は2003年4月などの過去最悪の5・5%を超えることも覚悟しなければならない。 景気は底打ちしたとの見方も強まっているが、不況が長引けば企業への雇用調整の圧力は高まる。 将来の雇用不安が消えなければ、消費の低迷が続き、景気浮揚の足を引っ張ってしまう。 こんな悪循環を食い止めようと、政府は先に成立した09年度補正予算の柱として雇用対策の強化策を盛り込んだ。 雇用調整助成金の拡充に6千億円、雇用保険と生活保護の間をつなぐ「第二の安全網」となる緊急人材育成・就職支援基金に7千億円などが並ぶ。 企業が従業員に支払う休業手当などを国が補助する雇用調整助成金は、失業増加を防ぐには有効だ。 実際、4月の申請は253万人分に達した。 しかし、それでも解雇に踏み切る企業も出るだろう。 そのとき期待されるのが、3年間の時限措置として新設した就職支援基金である。 雇用保険の受給要件を満たさない人や失業給付が切れた人などを対象に、職業訓練を条件に月額10万―12万円の生活費を支給する事業が柱だ。 生活費の支給枠は計30万人分を確保、職業訓練も計35万人分増やすが、重要なのは訓練の中身だ。 若年労働者や非正規労働者らの多くは職業訓練の機会に恵まれず、基礎的な技能や知識が不十分な面が少なくないからだ。 企業のニーズに合った訓練内容にする必要もある。 このため、増枠分の訓練の半分は、パソコン操作など一般事務作業で必要な技術を身に付ける3カ月訓練に充てる。 あと半分は、医療や介護などで必要な技術を習得してもらう1年と6カ月の訓練を用意する。 基礎的な知識を身に付け、さらに成長分野と期待される職種にも挑戦できるようにする狙いがある。 ただ、いくら訓練を積んでも再就職できなければ意味は半減する。 介護など人手不足の分野をしっかりした雇用の受け皿にできるか、環境など新しい分野で雇用を創出できるかが鍵になる。 とにかく、現下の雇用危機を乗り切るには、この第二の安全網をきちんと生かさなければならない。 そのうえで、生活費給付の制度については臨時措置でいいかどうか、しっかり検討すべきではないだろうか。
Jun 8, 2009
「壺(つぼ)の中に入っているのは、毒だから近づかないように」と言われながら、太郎冠者と次郎冠者は主人の留守中、ぺろりと中身を平らげてしまう。 狂言の「附子(ぶす)」である。 実は中身は「砂糖」。 2人は相撲をして大切な掛け軸を破り、茶わんを壊したので、おわびに毒を食べて死ぬことにしたが、死ねなかったという言い訳を考えつく。 この狂言、人というものはいかに欲望に弱く、ついついうそをついてしまうものだと教えてもいるようだ。 県内のスーパーやコンビニで万引の被害が6年ぶりに急増している。 マイバッグを悪用し、持ち込んだ袋に商品を入れてレジを通り抜ける手口が多く、高齢者の犯行も目立つという。 不審に思った店員が声を掛けると、「後から払おうと思っていた」「金さえ払えばいいんだろ」と言い逃れようとする人もいる。 マイバッグはレジ袋を減らし、資源の有効利用と地球温暖化防止のため導入されたものだ。 それを悪用するのは、心得違いもいいところ。 背景に「昨今の不況で金を惜しむ人が多いのでは」という声もあるようだが、どんなふうに正当化しても、してはならないことである。 警察は巡回を強化し、店側は警備員を導入、増員したりして対策に乗り出している。 太郎冠者と次郎冠者のように欲望に負け、妙な気を起こしてはいけない。 現実はそう甘くはないだろう。
Jun 7, 2009
スギの間伐材や雑木をストーブやボイラーの燃料などに利用する取り組みが、兵庫県内の各地で広がっている。 人工林から出る間伐材や、製材工場で発生する「おがくず」などの再生可能な有機資源は、「木質バイオマス」と呼ばれる。 それを粒状に固めたペレットやチップにして燃料利用すれば、石油など化石燃料の消費を減らすことができる。 企業が温室効果ガスの排出枠を取引する市場づくりの試行が始まり、化石燃料から木質ペレットへの燃料代替や森林整備などを取引対象として認証する制度が新設された。 これが追い風になっている。 木質バイオマスの利用が広がれば、長い目で林業の活性化を促し、森林荒廃を食い止められる。 このことが資源の持続的な活用を可能にし、人類の重要なテーマである地球温暖化の防止にも役立つだろう。 米国や日本では、温暖化対策に景気浮揚の期待が高まっている。 クリーンな資源の活用を雇用の拡大にもつなげたい。 県は、農林水産業の廃棄物削減を狙いに、バイオマスの活用を盛り込んだ「農」のゼロエミッションに4年前から取り組んでいる。 年間10万トンに上る間伐材は、チップにして発電や公共施設のボイラー燃料に利用され、人工林の土留めや歩道整備にも使われる。 当初3割に満たなかった利用率は、今では5割を超えた。 豊岡市では、間伐材や里山の雑木をペレットにする施設を2年後に稼働させる。 市内の小中学校などに設置予定の150台のペレットストーブや、温泉施設のボイラーに年間1500トンを供給する計画だ。 地域に適した活用法を探り、こうした取り組みをもっと広げていって欲しい。 バイオマス活用の先進国はスウェーデンだ。 同国の国内総生産(GDP)は1990年以降で約1・5倍になったのに、温室効果ガスの排出量は逆に9%も減った。 その秘訣(ひけつ)は、エネルギー供給の3割近くを間伐材などのバイオ燃料が担うなど、クリーンエネルギーの積極利用にある。 地域暖房システムやバイオ燃料が普及するスウェーデンとは事情が違うが、同じ森林国として日本が学べることは多い。 木質バイオマスの利用を広げるには、森林をしっかりと育て、持続的に利用する循環を強める必要がある。 木材はもちろん、森林資源の多様な活用を工夫し、環境への負荷を減らす暮らしに変える。 その取り組みが、林業に活力をもたらすはずだ。
Jun 7, 2009
「人生を返してもらいたい」。 眼鏡の奥の瞳が怒りで震えていたようだ。 17年半といえば、6000日を軽く超す。 幼児殺害の汚名を着せられ、無期懲役の刑に服した悔しさは、想像を絶するものだろう。 足利事件では、菅家利和さんの逮捕も、再審請求での無罪が確実になったのも、DNA鑑定が決め手だった。 事件はDNA鑑定による科学捜査の先駆けとされた。 1990年当時、この鑑定の識別精度は「800人に1人」。 被害者の着衣に残った体液とDNA型が一致したとし、警察はどう喝的な取り調べで、自供を引き出したという。 現在のDNA鑑定は「4兆7000億人に1人」と飛躍的に精度が向上した。 これで再鑑定したら、まったく別のDNA型、つまり犯人は別にいるという結果が出た。 技術の進歩が冤罪(えんざい)を証明した格好だが、逆の心配も膨らむ。 冤罪の典型「弘前大教授夫人殺し事件」(1949年)の有罪の決め手は、無実の受刑者のシャツに残った被害者のものとみられる血痕だった。 ところがこれは警察が人為的に付けたものとされる。 これと同じように、もし誰かが、別人の毛髪や体液をわざと犯行現場に残したら…。 「数兆分の一」の誤差しかないDNA鑑定を法廷で示されたら、それを疑う市民裁判員などどれだけいるだろう。 「冤罪は、いうまでもなく、天災でなく人災である。しかも、国家権力による災害である」。 後藤昌次郎著「冤罪」(岩波新書)の冒頭である。 だからこそ、録画・録音による捜査全体の可視化が求められているのだ。
Jun 6, 2009
ため池にブラックバス、お堀にはミシシッピアカミミガメ。 公園ではヨーロッパカワラバトが群れ、山にはアライグマが出没する。 よその国の話ではない。 愛媛の、日本の自然が置かれた現状だ。 外来種問題が深刻さを増している。 早急な対策が必要だ。 生物が気候や地形などに応じて適応しつつ、数十億年をかけ築き上げたのが固有の生態系だ。 外来種の侵入は生態系に大きな影響を与える。 原因は私たち人間だ。 ペットや園芸植物などとして人為的に持ち込まれるケースもあれば、人の移動とともに偶然持ち込まれる例もある。 世界自然保護基金日本委員会などは、具体的な問題を次々に指摘している。 在来種を補食し、生態的地位が同じ在来種を放逐する。 近縁種同士の交雑による遺伝子汚染も懸念される。 法(のり)面緑化などに使われる外来植物が大繁殖し、在来の植物群落に大きな影響を与えている現状もある。 ほかにも多くの外来種が確認されている。 ブルーギルやジャンボタニシ、アメリカザリガニなどなど。 ジャンボタニシによる稲への被害拡大も懸念される。 山地ではアライグマの生息痕が発見された。 初めて生態系高次に位置する哺乳(ほにゅう)類が発見されたことで、タヌキやアナグマなど在来種に影響を与える恐れもある。 二次的被害は人にも及ぶ。 新型感染症だ。 哺乳類を媒体とする各種インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ熱などは国際的な問題だ。 世界全体で、外来種対策として投じられる費用は年間133兆円に上るといわれている。 生物多様性条約事務局の報告だが経済的損失も甚大となる。 放任できない事態だということを社会全体で共有し、解決に乗り出すべきだ。 環境省は1995年、生物多様性国家戦略を策定し2003年に改定。 05年には特定外来生物法で「侵略的外来種ワースト100」を指定し、対策に乗り出した。 県も専門家によるチームで「県野生動植物の保護に関する基本指針」を作成、調査を始めた。 しかし、具体的な対策はこれからだ。 外来種持ち込みや飼育種の野外放逐禁止はもちろん、水際作戦として個人の意識啓発が必要だ。 ホタルの放流や野放図な植林など、既存の事業も見直すべきだ。 侵入種については被害の程度、影響を解明し、必要に応じた駆除や管理などの措置も必要となるだろう。 地球温暖化と並び外来種は深刻な環境問題だ。 行政対策と並行し、私たち一人一人が重要性を認識し行動することが解決の大きな要素となる。
Jun 6, 2009
松本清張のベストセラー小説「点と線」には、函館が登場する。 九州博多で起きた心中事件の犯人と目された男が、犯行の時間には北海道にいたと手帳を確かめながら刑事にアリバイを語る場面だ。 「連絡船は14時20分に函館に着きます。これも根室行の急行に接続があります。 14時50分発の《まりも》です。札幌には20時34分に到着しました。…」。 時刻は小説が発表された前年、1957年のダイヤに基づいている。 函館と青森を結んだ連絡船は、津軽海峡線が開通した21年前に廃止された。 函館から根室までの長距離急行もいまはない。 小説を読むと当時は函館・札幌間が急行で約5時間半かかったことが分かる。 現在は特急で3時間半だ。 社会派推理小説と言われるジャンルを切り開いた清張は、今年生誕100年を迎えた。 亡くなってから17年になる。 中年以降の世代なら清張作品に夢中になった時期があるだろう。いや、若い人たちにも底堅い人気が続いている。 多作だった作家は、遅いデビューからの40年間に1000点以上の作品を書いた。 小説から歴史書、評論など分野は多岐にわたる。 すべてを読むのは不可能だろうが、好みの作品を選んで清張ワールドにひたることはできる。 函館市中央図書館では、生誕100年を記念して所蔵の全集などを今月末まで展示している。 好きな作品を借り出し、夜を徹してあの面白さにひたるのも悪くない。
Jun 5, 2009
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