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シューマン:幻想曲、幻想小曲集シューマン:幻想曲&幻想小曲集 [ マルタ・アルゲリッチ ]バッハ・トランスクライブドBach, Johann Sebastian バッハ / 『バッハ・トランスクライブド』 エレーヌ・グリモー、ドイツ・カンマーフィル 【SHM-CD】
2020年02月29日
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「あんまり気にならないですね」少ししてから、わたしは答えた。「へえ。わたしだったら気になってしょうがないかも。ほら、物が壊されるときって独特の音がするじゃないですか」「独特の音?」「ええ」女は家に顔を向けたまま肯いた。「壊される音です」(中略)「そういうのが、わかるんですか」「はい」女は肯いた。「わかりますね。和音の中で鳴っている一音を聞き分けるみたいに。そこに混じっている音がわかるんです」「いったい何が、その、音の成分を出しているんですか?」わたしは質問をつづけた。「なんなんでしょうね」女は少し考えるようにして言った。「でも、つもりみたいなものを感じることはありますね」「つもり?」「それが壊す側のものなのか、壊されるほうのものなのかはわからないけど」女は言った。「とにかくそこにはつもりのようなものがあって、それが聴こえるわけです。ただ壊れていくことと、壊されるということは、別のことなんです。今度、注意して聴いてみてくささい。きっとわかりますから」(川上未映子さん「ウィステリアと三人の女たち」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P132)
2020年02月29日
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バッハ:チェンバロ・ソナタ集J.S.バッハ:チェンバロ・ソナタ集(編曲ソナタ集) [ アンドレアス・シュタイアー ]
2020年02月28日
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その家には老女が住んでいて、ときどきその姿を見た。わたしたちがここへやってきたのは今からちょうど六年前のことで、その家には何度か引っ越しの挨拶に訪ねたけれど、誰も出てこなかった。ほんのときどき、朝か夕方にカートにもたれるようにしてゆっくりと家のまわりを歩いている彼女とすれ違うことがあった。会話をするでも言葉を交わすわけでもなかったけれど、そんなときは不思議と気持ちが和むような気がした。いつも黒いブラウスを着て黒のカーディガンを羽織っていて、春の夕暮れ時には、錆びた門から箒とちりとりを手に持ってゆっくりとした足取りで舗道に出てくるのを見かけた。藤の花びらはよく落ちた。アスファルトの灰色に、白と薄紫の濃淡になって広がり、風が吹くたびに何かを思いだすみたいにふわりと舞った。老女は長い時間をかけてそれらを端のほうから掃き入れていった。(川上未映子さん「ウィステリアと三人の女たち」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P116)
2020年02月28日
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バッハ:ゴールトベルク変奏曲【輸入盤】ゴルトベルク変奏曲 シュタイアー(+DVD) [ バッハ(1685-1750) ]バッハ:ゴールドベルク変奏曲【中古】 ベストクラシック100 62::バッハ:ゴールドベルク変奏曲 /マレイ・ペライア 【中古】afb
2020年02月27日
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あなたがわたしに求めた愛の証明について。昔、誰かが、神さまがいるってことを証明してみせたことがあるの。神さまというのは、完全な存在だから神さまなんだ。そして完全であるってことは、〈ない〉よりも〈ある〉のほうを含んでいる。だから神さまは存在するんだ、ってね。わたしがきちんとりかいできているかどうかはわからないけど、でも、それを読んだとき、何かがすうっとわかるような感じがしたの。愛は神さまのように完全ではないだろうから、おなじように証明することはできない。そんなふうに存在できる神さまと愛は違う。それはそうよね。でも、証明できないからって、それが存在しないことにはならない。人が何かを信じるのは、それが証明されているからじゃないもの。想像できるから信じられるの。つまり――神さまも愛も、ただそんなふうに信じることができるのよ。自分にしかわからない方法で。誰にも伝えられないありかたで、知ることができるのよ。(川上未映子さん「マリーの愛の証明」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P106)
2020年02月27日
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バッハ:ゴールドベルク変奏曲【中古】 バッハ:ゴールドベルク変奏曲 /グレン・グールド 【中古】afbバッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)【中古】 バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音) /グレン・グールド(p) 【中古】afb
2020年02月26日
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米本浩二さんの「評伝 石牟礼道子 渚に立つひと」を買書つんどく。「『苦海浄土 わが水俣病』の発表以来、文学界でも闘争の場でも神話的な存在であり続けた、詩人にして作家・石牟礼道子。しかし、水俣病に対する告発という面にとらわれすぎると、その豊饒な世界を見失いかねない。不知火海を前に育った幼年期から、文学的彷徨、盟友・渡辺京二との交流、苦闘の日々、暮らしと命を見つめてやまなかった晩年まで、創造の源泉と90年の軌跡を綴った初の本格評伝。読売文学賞評論・伝記賞受賞作品。」(「BOOK」データベースより)
2020年02月26日
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森や湖をいくら見つめてみても、迫ってくるものはもうどこにもなかった。それで、マリーはぜんぶどうでもいいような気になった。彼女の二つの肺のあいだには薄いつくりのコップがひとつあって、こういう気持ちになるたびに――まるで雨漏りを受けつづけるボウルのように、そこに何かが溜まってゆく。水のようにも見えるそれが本当はどんな色をしたどんな液体なのか詳しいことはわからない。どこからやってくるのかも、そして一体いつになればそれがいっぱいになってしまうのかもわからい。でも、それが、溢れてしまったときに、きっと自分は死んでしまうのだとマリーはかたく信じていた。どんなふうに死ぬのかはわからない。事故なのか、殺されるのか、自分で死ぬのかは、わからない。一滴、また一滴、それはマリーのコップを目指して落ちてくる。マリーはミア寮にいるほかの女の子たち同様、死にたいわけではなかった。しあわせになれるのなら、なってみたいとさえ思っていた。かといって、そこにコップが存在しているのもマリーのせいではなかった。もちろん、そこに何かが溜まってゆくことも。(川上未映子さん「マリーの愛の証明」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P102)
2020年02月26日
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バッハ:ピアノ協奏曲【中古】 J.S.バッハ:ピアノ協奏曲第1番・第2番・第4番 /マレイ・ペライア(ピアノ),アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 【中古】afbバッハ:ピアノ協奏曲【中古】 J.S.バッハ:ピアノ協奏曲第3番・第5番・第6番・第7番 /マレイ・ペライア,アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 【中古】afb
2020年02月25日
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死ねと言われてそのとおりに死ぬ人間なんてほとんどいない代わりに、死ねなんて言われなくても死んでしまう人間のほうがうんと多い。それは意味を持たない冗談なのだ。そんなことはわかっている。けれど、誰かがふざけてその言葉を口にするのを見聞きするたびに、マリーの体は硬くなった。どこからか父親が――小さな体に似合わない大きな手でマリーの肩をつかみ、彼女のささやかな失敗を何時間もかけて叱責し、執拗に震えあがらせてきたあの父親が飛んでくるんじゃないかとマリーはいちいち真剣に身がまえた。けれどもちろん、音楽室や共同リビングや、通信室や、くすの木の生えた中庭に父親は現れなかった。そう、ここはもう家ではない。ミア寮なのだ。(川上未映子さん「マリーの愛の証明」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P90)
2020年02月25日
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プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番、ラヴェル:ピアノ協奏曲【中古】 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番/ラヴェル:ピアノ協奏曲、他 /マルタ・アルゲリッチ,クラウディオ・アバド,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 【中古】afb
2020年02月24日
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買い物袋を抱えたままいつも立ち寄る公園の、いつものベンチに座って、しばらく夕焼けを眺めていた。べつに何を見ているわけでもないけれど、おなじ場所で、おなじところをこうして辛抱強く見つめていれば、向こうから懐かしい誰かが、そのままの姿で、わたしがよく知っている姿でやってくるんじゃないかという気がして、そうおもってしまったときからわたしはもう目がそらせない。そんなことありえるわけもないのに、でもいつか誰かがこんなことはぜんぶ嘘だったんだよと言いながら、すべてが元に戻るんじゃないかという気がしていて、でも、そんな都合のいいことは、今日もやっぱり起きないみたいだった。(川上未映子さん「シャンデリア」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P85)
2020年02月24日
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ラヴェル:夜のガスパール、ソナチネ、高雅で感傷的なワルツラヴェル:夜のガスパール/ソナチネ 高雅で感傷的なワルツ [ マルタ・アルゲリッチ ]バッハ:管弦楽組曲(全曲) J.S.バッハ:管弦楽組曲(全曲) [ カール・リヒター ]
2020年02月23日
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谷崎由依さんの「遠の眠りの」を買書つんどく。「大正末期、貧しい農家に生まれた少女・絵子は、農作業の合間に本を読むのが生きがいだったが、女学校に進むことは到底叶わず、家を追い出されて女工として働いていた。ある日、市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」に足を踏み入れ、ひょんなことから支配人と出会う。えびす屋では付属の劇場のため「少女歌劇団」の団員を募集していて、絵子は「お話係」として雇ってもらうことになった。ひときわ輝くキヨという娘役と仲良くなるが、実は、彼女は男の子であることを隠していて――。福井市にかつて実在した百貨店の「少女歌劇部」に着想を得て、一途に生きる少女の成長と、戦争に傾く時代を描く長編小説。」(集英社の紹介)
2020年02月23日
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わたしはすごく興奮しているかもしれないけれど、すでに死にたくなっている。この小さな石を四つか五つに割った、そのひとかけら分のお金を用意できなかったせいで死んでしまった母親のことを思いだす。いつものようにまた一歩、自分が死体に近づいたような気がする。箱とか要りません。保障証も。はい、このまま、つけて帰ります。そう言って、まだ落ちてはこないシャンデリアの下を這うように抜けて、タクシーに乗る。バタンと大きな音を立ててドアが閉まり、走り出す。わたしを乗せたタクシーの運転手もじつは死にたがっていて、バックミラー越しに目が合ったとき、お互いにそのことがわかってしまう。わたしたちが走るのはわたしたちのために用意された誰もいない灰色の直線だ。(川上未映子さん「シャンデリア」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P61)
2020年02月23日
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シューマン:子供の情景、クライスレリアーナ【中古】 シューマン:子供の情景 /マルタ・アルゲリッチ(p) 【中古】afb
2020年02月22日
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「そう。黒沢こずえは餓死したの。部屋で見つかったの。夏だった。部屋で死んでたの」「一人暮らしだったの?」「実家に残ってひとりで住んでた。ご家族はみんなそれぞれべつのところで暮らしてた。ニュースにもなったよ。新聞の記事にも出てた。今でもネットで調べれば出てくるんじゃないかな」彼女はそう言うと小さく息をついて眼鏡をかけなおした。それからショルダーバッグを手にとって肩にかけて、じゃあそろそろ行くねと言った。まるでこのことをわたしに伝えるためにここに来て、それを終えたらもう用はないんだとでもいうように。わたしに何を言いたかったのかわからなかったけれど、彼女が横を通りすぎるときに、じゃあまた、とにっこり笑って言ってみた。彼女はそれには答えなかった。そしてトイレの扉のまえで立ち止まってふりかえり、わたしの目をじっと見た。「わたしね、今日、あなたはぜったいに来ると思ってたの」静かな声でそう言うと、彼女は扉を押して出て行った。(川上未映子さん「彼女と彼女の記憶について」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P32)
2020年02月22日
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バッハ:ヴァイオリン・ソナタ全集Bach: Violin Sonatas【中古】バッハ :トッカータとフーガ〜オルガン名曲集Bach, Johann Sebastian バッハ / トッカータとフーガ〜オルガン名曲集 ヴァルヒャ 【CD】
2020年02月21日
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わたしには、友だちがいなかったのだろうか?わからない。いたのかもしれない。でも少なくともそれを思いださせてくれる女の子たちにはただのひとりにだって会えなかったし、友だちがいたとかいなかったとか以前に、考えてみればわたしは十代のあの三年間のことを、どうしてなのかうまく思いだすことができないのだ。同窓会の知らせを受けとったときもそうだった。思いだそうとするとまるでぶあつい綿の真っ白なシーツに頭からすっぽりと覆われてしまったように、風景や言葉なんかがふっと消えてなくなってしまう。光の感じから今が昼間だっていうことはわかる。でも自分がどの方向をむいていて、今が何時なのかがわからない。具体的なことを思いだそうとすると、とたんに何もかもぼやけて、知らないうちにわたし自身がそこから追いだされてしまうのだ。(川上未映子さん「彼女と彼女の記憶について」(「ウィステリアと三人の女たち」所収)P25)
2020年02月21日
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バッハ:ヴァイオリンとハープシコードのためのソナタ【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリンとハープシコードのためのソナタ /G.グールド/J.ラレード 【中古】afb
2020年02月20日
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お父さんと朝ご飯を食べるのは、とても久しぶりのような気がした。わたしはトーストを焼いてお皿にのせてもっていった。お父さんが苺ジャムの瓶をもってきて、牛乳やコーヒーと一緒にテーブルにのせた。瓶いっぱいに入った苺ジャムのふたをくるりとあけると、真っ赤な苺の小さな波がみえた。お父さんはそこに小さなスプーンを入れて自分のパンにたっぷりのせて、それからわたしにどうぞと言ってスプーンをわたした。ジャムつくったの、とわたしがきくときのうの昼間につくったんだよと言った。最近ずっと作ってなかったからどうかなと思ったけど、これはもう大丈夫だな、とお父さんが笑った(川上未映子さん「あこがれ」P245)というわけで、川上未映子さんの「あこがれ」を読みました。この「あこがれ」という本は、「ミス・アイスサンドイッチ」という「麦くん」の視点から見たお話と、「苺ジャムから苺をひけば」という「ヘガティー」の視点から見たお話で構成されていますが、発表されたのも出来事も2年ほどの差がある連作になっています。さて、「あこがれ」という総タイトルですから、どちらもなんらかのかたちで「あこがれ」について描かれているのでしょう。「ミス・アイスサンドイッチ」が、作者自身対談の中で「夢から覚めるお話で、その前後で物の見え方が変わってしまうお話です」、みたいなことを述べておられるように、サンドイッチ売り場の「ミス・アイスサンドイッチ」への「あこがれ」から覚める物語と読めたとして、「苺ジャムから苺をひけば」というなぞなぞのようなタイトルをもつお話のどこが「あこがれ」につながるのでしょうか。まず、見て取れるのは、亡き「母」と、どこかにいる異母の「姉」への思いというのがあるでしょう。「苺ジャム」をつくるのはお父さんで、それが、間接的に、亡き「母」の思い出へつながっています。一方で、異母「姉」とのつながりもまたお父さんの血を通した間接的なものです。どちらも「父」がキー・パーソンとなっており、苺」は「父」なのではないでしょうか。「苺ジャムから苺をひけば」なにものでもないのでしょう。同じように、この関係性から「血」である「父」をひけば幻のようなものになってしまいます。ということで、このお話は、なにもなくなってしまうところからいまあるところまでの、「父」との和解のお話なのだ、言ってみましょう。川上さんのお話は、そんな理屈っぽいことを誘発するようにわざと創られていると思うのですが、それはさておき、どちらもほんとにいいお話だと思いました。人によって共感するところは違うでしょうが、僕は、「ミス・アイスサンドイッチ」の夢のような、あるいは夢の話が好きです。
2020年02月20日
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バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全集(Blu−spec CD) /レオニード・コーガン,リヒター,レオニード・コーガン(vn),カー 【中古】afb
2020年02月19日
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お母さん、生きていないのは、わたしのお母さんだけだ、生きていないのは、お母さんだけなんだとわたしは思った。お母さんだけがもういなくて、お母さんだけがこの世界のどこにもいなくて、お母さんだけがいないんだ。そう思うと涙があふれてまえがみえなくなった。ここにはお母さんだけがいないんだとわたしは思った。そうだ、かわいそうなのは、ひとりぼっちなのはわたしなんかじゃないんだ、お母さんなんだ、みんな生きているなかで、お母さんはひとりで死んでしまったんだ、お父さんも生きている、まえの人も生きてる、子どもも生きてる、そしてわたしだって生きている、お母さんはたったひとりで、死んでしまったんだ、わたしは、お母さんと一緒に死んであげなきゃいけなかったんじゃないのか、わたしが一緒に死んであげなきゃいけなかったんだ、わたしが一緒に、お母さんだけが今もひとりで、お母さんだけがずっとひとりで、お母さんだけが――(川上未映子さん「あこがれ」P231)
2020年02月19日
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バッハ:音楽の捧げもの 【中古】 バッハ:音楽の捧げもの /ジャン=フランソワ・パイヤール,パイヤール室内管弦楽団のソリストたち 【中古】afb
2020年02月18日
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そう、ぜんぶが完璧で――わたしは自分の言った言葉をもう一度くりかえして言い、そこでふと足がとまってしまった。まるでわたしたちが来るのが最初からわかってたみたいに。妹ですって言われても、たいして驚きもしないで。冷静に家まで呼んで。思ってることをすらすら言えて――麦くん、とわたしは麦くんを呼んだ。「・・・・・ねえ麦くん、もしかしたら、もしかしたらなんだけど・・・・・あの人たち、今日、わたしが来るってこと、知ってたんじゃないのかな」わたしは自分の鼓動がどんどん早くなるのを感じていた。(川上未映子さん「あこがれ」P223)
2020年02月18日
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バッハ:音楽の捧げもの【中古】 バッハ:音楽の捧げものBWV1079 /カール・リヒター 【中古】afbバッハ:音楽の捧げもの【中古】 バッハ:音楽の捧げもの /クイケン・アンサンブル,バルトルド・クイケン,シギスヴァルト・クイケン,ヴィーラント・クイケン,ロベール・コーネン 【中古】afb
2020年02月17日
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このとき、自分がそんなことを言うなんて、まったく、ほんの少しだって思ってもみなかったのに、気がつくとわたしは、あの、と声をかけていた。そしてふりむいた女の人にむかって、わたし妹なんです、と言っていたのだ。「妹?」女の人は静かにくりかえした。「誰の?」「その――お姉さんの」とわたしは小さな声で言った。その声はちょっとかすれて微妙にふるえていて、いったい自分がどういうつもりなのか、いきなりこんなことを言ってどうなってしまうのか、恥ずかしさやこわさや胸のどきどきがまざりあって、顔がどんどん熱くなってゆくのがわかった。麦くんはわたしの隣に立ったまま何も言わなかったけれど、それでもすごく驚いているのがわかった。「わたしの妹なの?あなたが?」「そうだと、思います」「ふむ」と女の人はわたしの顔をまじまじとみつめて言った。「・・・・・妹がいるってきいたことはあるんだけれど、でも、これは急だね。急すぎない?」(川上未映子さん「あこがれ」P205)
2020年02月17日
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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 /ヒラリー・ハーン(vn),マーガレット・バーチャー(vn),アラン・ヴォーゲル(ob),ロサンゼルス室内管弦楽団,ジ 【中古】afbバッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 /諏訪内晶子(vn、cond),フランソワ・ルルー(ob),フォルクハルト・シュトイデ(vn),ヨーロッパ室内管弦楽 【中古】afbバッハ:ヴァイオリン協奏曲集バッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:協奏曲集 愛のコンチェルト /千住真理子(vn),アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 【中古】afb
2020年02月16日
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「こんなことが」麦くんがぽつりと言った。こんなことが、これからはだんだんふえてくるんだろうか。こんなことって?よくわからないけど、こういう気持ちになってしまうようなことが。わたしは麦くんとおなじようにうつむいて、自分のスニーカーのつまさきをじっとみつめた。(中略)ちょっと迷ってから、そうかもしれない、とわたしは言った。でも、こっちも強くなるからさ。こっちもただ困ってるだけじゃなくなるし、黙ってるだけじゃなくなるし、なんていうのか、動けるようになるんだからさ。動けるようになる?そうだよ、とわたしは言った。難しいこととかさ、いやなこととかさ、それはもういろんなことがわあってふえてくるんだろうけど、やってくるんだろうけどさ、でもこっちだって、そうじゃないところに自分がさっといけるようになるんだよきっと。(川上未映子さん「あこがれ」P147)
2020年02月16日
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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 SUPER BEST 100 88 /ヘンリク・シェリング(Vn、cond),ペーター・リバール(vn),コレギウム 【中古】afbバッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集(SHM−CD) /ユリア・フィッシャー(vn),アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ,アレクサ 【中古】afb
2020年02月15日
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そして、ぼくは夢をみた。大きな目の犬たちがお姫さまをのせて街じゅうを走りまわっている夢だった。ぼくはどこか遠くのうえのほうからそれをみている。星空はふくらみ、れんがづくりの道はとぶように去り、犬たちの目はどんどんむかれて大きくなる。息は荒く、犬たちの門のような牙がぼくのすぐそばまでやってきて、それが鈍く光ってみせる。ぼくも犬たちとおなじ速さで街じゅうを駆けぬけている。そして気がつけば、ぼくは三匹いる犬のうちの一匹になっていて、ごわごわとした茶色の毛につつまれた大きな手足は一秒ごとにのびつづけ、れんがを蹴る爪が大きな音をたてて火花を散らし、ぼくはからだのぜんぶを使って、城をめざして走っている。お姫さまのドレスのすそがぼくの背中にあたっている。ぼくは走りながらふりかえり、そこにお姫さまがいることを確認する。真っ白なドレスに身を包んで、ぼくの背中で横たわっているのはミス・アイスサンドイッチだ。ミス・アイスサンドイッチは水色のまぶたの目をとじて、うっとりとした表情をして、ぼくの背中に横たわっている。(川上未映子さん「あこがれ」P86)
2020年02月15日
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バッハ:イギリス組曲(全曲)【中古】 バッハ:イギリス組曲(全曲) /グレン・グールド 【中古】afb
2020年02月14日
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思いつくままにおばあちゃんにむかって話していると、胸が痛くなって、そのどくどくにあわせて急に目の奥から涙があふれてきて、ぼくはそのまま泣いてしまった。何が悲しいのかわからないけれど、涙はあとからあとからあふれてきた。ママの部屋のエンジェルの飾りとか、水色のクレヨンのにおいとか、指でなぞる座布団の模様とか、ヘガティーのランドセルがどんどん小さくなっていったこととか、ぼくのなかにあるぜんぶがたぶん大きくゆれていて、息をするたびにそれがふるえて、いつまでも涙はとまらないような気がした。(中略)すると、何かがふわりとぼくの頭にふれたような気がした。はっとして顔をあげると、それはおばあちゃんの手だった。眠っていたはずのおばあちゃんは起きていて、小さな目でやさしくぼくをみつめて、かすかに笑って、そしておばあちゃんの手はぼくの頭にやさしく置かれていたのだった。おばあちゃんはやわらかい目でじいっとぼくの顔をみて、おばあちゃんのその黒目には白い光が小さくゆれていて、そして、ほんとうにほんとうに小さな声で、泣いたらだめよ、とそう言っているのだった。(川上未映子さん「あこがれ」P80)
2020年02月14日
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バッハ:インヴェンションとシンフォニア【中古】 J.S.バッハ:インヴェンションとシンフォニア(全曲) /グレン・グールド(p) 【中古】afb
2020年02月13日
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「だから、きみ」とおばさんたちを見送ったあとで、ヘガティーは言った。「ミス・アイスサンドイッチに会いにいったほがいいよ」ぼくは黙っていた。「ぜったいに」ぼくはまだ黙ったままだった。「きみさっき、わたしの言うことわかるって言ったじゃないか」ヘガティーは抗議した。「言ったよ、言ったけど」「言ったけど、なによ」「いや、何でもない」ぼくは鼻から息をついて、運動靴のさきっちょを眺めていた。「しかも、みにいくんじゃなくて、会いにいくんだよ」「サンドイッチを買うだけじゃなくて?」「それはこれまでの話じゃん。これからは会うんだよ」ヘガティーは力強くそう言った。「どうやって会うの」ぼくは少しどきどきしながら素直に質問をしてみた。「はじめまして、って言えばいいんだよ」(川上未映子さん「あこがれ」P74)
2020年02月13日
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Backstreet Boys:Greatest Hits - Chapter One Backstreet Boys バックストリートボーイズ / Greatest Hits - Chapter One 【CD】
2020年02月12日
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前のメモの付け足し・・・・・「あこがれ」の「ミス・アイスサンドイッチ」に出てくる「火打ち箱」は、僕の持っている荒俣宏さん訳、ハリー・クラーク挿絵の「アンデルセン童話集」では、「ほくち箱」という題名で開巻一番に収録されています。兵隊さんが道を歩いていると、老婆から木の穴から地下に降りて「ほくち箱」を取ってきてくれるようお願いされます。そこには金貨もあるので、それは自分のものにしてよいという条件で、兵隊は金貨を手に入れるのですが、「ほくち箱」を渡してくれと老婆が言うと、いきなりその首をはねてしまいます。それから兵隊は、「ほくち箱」がら出てくる(アラジンの「ジニー」みたいな)大きな目の「犬」の手助けでお姫様と結婚して、めでたしめでたし、ちゅうなんとも不条理な話です。
2020年02月12日
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ぼくは鉛筆を動かしながら、ミス・アイスサンドイッチが銀ガニでさっとパンをビニルに入れるところを思い出した。かっこいいところ。怒鳴り男に何を言われても黙ったまま、にらみかえしていたところ。長い腕。きっとした目つき。そして大きな目。犬たち。れんがでできあがった道を走る犬たち。どこかの外国で、お城のまわりを走る大きな目をした犬たちだ。お姫さまを、そうだ、あのミス・アイスサンドイッチとおなじ目をした犬たちは、お姫さまをのせて走っているのだ。すその長くて大きくふくらんだドレスを着たうつくしいお姫さまをのせて、大きな目の犬たちはどこかへ向かって走っている。ミス・アイスサンドイッチは、どこかへ向かって走っている。大きな目をもっとみひらいて、ドレスのお姫さまをその背中にのせて、ミス・アイスサンドイッチは走っているのだ。(川上未映子さん「あこがれ」P64)(アンデルセン原作)
2020年02月12日
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バーバー、メイヤー:ヴァイオリン協奏曲【国内盤CD】【ネコポス送料無料】バーバー&メイヤー;ヴァイオリン協奏曲 ハーン(VN)ウルフ / セント・ポールco.
2020年02月11日
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「じゃあ、またみにきてよ。アルパチーノ」ヘガティーはにっこり笑って言った。「なにそれ」「さっきの映画のハナ警部だよ。アル・パチーノっていう俳優なの」「名前なんだ。どっかの国のバイバイって意味なのかと思った」「いいよ、それでも」ヘガティは肩のあたりまであげた手を小刻みにふってアルパチーノ、と言った。ぼくもおなじように手をふって、アルパチーノ、と言った。それから急におかしくなってどちらからともなく笑いはじめると、その笑い声がだんだんおかしくなってきて、最後にはふたりとも体をよじって笑いつづけた。そんなふうにふえてゆく笑い声のなかを光がみるみる近づいてきて大きくなり、ぶわんと音をたてて車がふたりのわきを通りすぎていった。(川上未映子さん「あこがれ」P60)
2020年02月11日
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秦基博:evergreen【中古】 evergreen /秦基博 【中古】afb
2020年02月10日
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ぼくの順番なんてずっとこなければいいのにと思いながらぼくはまばたきだってほとんどしないで、ただひたすらにミス・アイスサンドイッチをみている。それから、お金を受けとったりお釣りを返したりするときにまぶたがめくれて大きくなるあの目がやってくると、ぼくの頭のなかの黄色とオレンジを混ぜたような色をしてぐにゃぐにゃ動きまわってる部分がいきなりぐんと明るくなって、それから、あごのすぐ下と鎖骨のあいだのくぼんだあたりがぎゅっとしめつけられたような感じになる。似ているのは、ごはんを噛まないでそのまま無理やり飲みこむときのあの感じ。しばらくするとそのかたまりは喉から下へゆっくりゆっくり降りていって、それから今度は、もっとおおきな場所に出る。そこはすごく広々とした、なんていうか、うさぎの耳みたいにすてきなところで、息をすれば息をするだけどんどんむこうがのびてゆくのだ。たてにも、横にも、ぐんぐん広がって、海の真んなかとかはしっこなんてみたことないけどでもたぶんそういう場所で吹いているような風がどこからともなく走ってきて、ぼくをふわっとくるんでしまう。(中略)でも、ぼくがそこから手をのばしてミス・アイスサンドイッチからサンドイッチを受けとってしまうと、匂いが急に冷たくなる。ぼくにむけられていたミス・アイスサンドイッチの目はつぎのお客さんのほうへさっと動いてしまって、すっと風がやんでしまう。(川上未映子さん「あこがれ」P17)
2020年02月10日
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パガニーニ:24のカプリースパガニーニ:24のカプリース [ ユリア・フィッシャー ]パガニーニ:カプリース【中古】 パガニーニ:カプリース /五嶋みどり 【中古】afb
2020年02月09日
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「源氏物語 (七) 匂兵部卿ー総角」を買書つんどく。「世に数まへられ給はぬ古宮おはしけりー。出生の秘密をかかえる薫が慕う、落魄の親王八宮。宮家の美しい姉妹に、明石中宮の子で多情な匂宮も関心を寄せる。洛外宇治を舞台にした、薫と大君、匂宮と中君との恋。匂兵部卿から総角の六帖を収録、「宇治十帖」はじまる。」(「BOOK」データベースより)
2020年02月09日
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だがそれにしても、天照大神の霊威の高まりは、なぜ・・・・・常世浪うちよせる「傍国(カタクニ)の可怜(ウマ)し国」なる伊勢に鎮座するというかたちであらわれたのか。それは伊勢が大和の東の果てにあったからだ。「傍国」を堅固な国の意に取ろうとする向きもあるけれど、これはさかしらで、やはり文字通り海に片寄りたるよき国の意とすべきである。出雲が雲にとざされた、日の没する西の果てなる国であるのにたいし、伊勢は東の海からじきじきに日ののぼるウマシ国であった。前者が暗の死者の国に接しているとすれば、後者の接するのは陽としての高天の原であった。ここに働いている宇宙軸という磁力を度外視するならば、伊勢神宮の創立が何を意味するかを誤読することになるだけではなく、ひいては記紀の物語の舞台構造のなんであるかをも逸することになるだろう。(西郷信綱さん「古事記の世界」P40)
2020年02月09日
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ハイドン:ピアノ・ソナタ第3番、モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番、幻想曲とフーガモーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番ほか【中古】 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調「トルコ行進曲付」 /内田光子 【中古】afb
2020年02月08日
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かくして、彦姫による政治的・宗教的二重統治が日本固有の古い形式であったことを、ほとんど疑うわけにはいかない。かかる伝統形式に対し、天皇と斎宮との関係は、もはや兄と妹とではなく、父と娘の関係にかきかえられているのに注目しなければならぬ。これは父権のいっそう強化された姿である。いいかえれば、女の霊力のにない手を自己の姉妹から娘に移し、さらにそれを政治の中心から離れた伊勢の地に配置することによって、天皇の政治力の相対的独立性は強められ、王権のあらたな展開がここに可能となる。斎宮制を生み出したのは、王権の新たな展開、天皇の政治力の強化そのものであったと逆にいってもいい。斎宮制は女を神秘な霊の世界にとじこめたのであり、かくして政治と宗教との原始的な膠着状態が破られていく。(西郷信綱さん「古事記の世界」P39)
2020年02月08日
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ハイドン:ピアノ協奏曲集【中古】 ハイドン:ピアノ協奏曲集 /レイフ・オヴェ・アンスネス,ノルウェー室内管弦楽団 【中古】afbハイドン:チェロ協奏曲第1番・第2番、トランペット協奏曲、アンダンテと変奏曲 CD2【中古】 ハイドン:交響曲≪驚愕≫≪軍隊≫≪ロンドン≫、チェロ協奏曲第1番・第2番、トランペット協奏曲、アンダンテと変奏曲 /(クラシック),ヘルベルト・フォン・ 【中古】afb
2020年02月07日
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最後の手術から二週間後に息を引き取るまでのあいだに、潤一は人が送る生涯のおよそ半分に相当する時間のなかにいた。気がつくと時子と暮らしているマンションのベッドのうえにいてぱちりと目が覚め、何度か瞬きを繰り返した後、両手両足を確かめるように動かしてから体を起こし、それからリビングへ出ていった。時子はいつものようにこちらに背を向けて朝食のための野菜を刻んでいる最中で、彼に気がつくと明るい声でおはようと言った。潤一はまだぼんやりする頭でソファに腰をおろしておはようと返事をし、時子の背中をまじまじと見つめ、なにか大切な話が、忘れずに話をしなければならないことがあったように思うのだけどもうまく思い出すことができず、大きくひきのばしたあくびをひとつしたあと、時子のそばへ歩いていってグラスに水を入れて飲んだ。(川上未映子さん「十三月怪談」(「愛の夢とか」所収)P183)というわけで、川上未映子さんの「愛の夢とか」を読みました。独立した短編集ですが、一作一作のほとんどが話のつながりが見えづらくて、とりあえず少なくとも2回は読みました。特に、視点がころころ変わって、同じ場面なのに違う話が最後に一つになる「十三月怪談」は、きつねにつままれたような話ですが、ほんとのところはどうなんだ、ってやっぱり言いたくなるような話です。そんで、もちろん大島弓子さんの「四月」ではなく、べたに東日本の「三月」でもなく、また阪神・淡路の「一月」としないことに、なんらの含みがあるのやろうけど、「十三月」ってなんやねん。まあすべからくそういうこってす。(と、書きながら、「十三月」とゆうのは、「一月」と「三月」を組み合わせたもんやないやろか、それに、「一月」と「三月」を足したら「四月」やないか、もしそうならちょっとこわいな、などと考えてしまいました)ともかく、どこかしら死の匂いをただよわせているような趣きの作品にあふれていて、「お花畑自身」など、そのまま埋葬の話ととれますし、好みからいうと、読後感の良かった「愛の夢とか」も、「テリー」はほんとに生きている人だったのかな、などと思いました。で、引き続き、「あこがれ」を読んでいきます。
2020年02月07日
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