前回『天使の靴』を書きながら、若い女性が子宮がんで家族を残して命を落としてしまう、同じシチュエーションの話を思い出していた。
映画、イザベル・コヘット監督・脚本『死ぬまでにしたい10のこと(2003年)』だ。
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD3593/story.html
映画が素晴らしかったので原作本も買っていた。
そのまま積んどいたのを開いてみる。
コヘット監督が書店で偶然手にした短編集の中の1編である。
100ページほどの短編なので、監督がどれだけイメージを膨らませたかに感心する。
ストーリーはほぼ一緒だが、内容の深みを思えば映画の方をお勧めする。
小説は場末の病院の場面から始まる。
初めて受けたレントゲンで、子宮に悪性の腫瘍が見つかる。
映画だと、主人公は底辺に知的なものを感じる女性だったが、原作の主役ベリンダはもっと"蓮っ葉"なギャルだ。
17歳で始めの子供を産み、六歳、四歳、一歳の三人の子供と、友達のままの仕事の無い夫・ヴァージルと、トレーラーで暮らしている。
余命二ヶ月を宣告されたベリンダは、治療を放棄し、自分がやりたかったことを遂行することを選択する。
子どもの学校のノートから1ページをはぎとり、リストを作る。
死ぬまでにしたいこと
1.もう一度洗礼をうける
2.次にシアーズに写真家が来るときに、自分の写真を撮ってもらう(みんなに焼き増ししたものをあげる)
3.最低でも三人、ほかの人と愛し合う(どんなものか見てみるだけ)
4.ヴァージルに彼女を見つける
5.子供たちのために、みんなが二十一歳になる分までの誕生日のメッセージを、テープに録音する
6.毎日、子供たちにアイ・ラブ・ユーを言う
7.好きなだけ煙草を吸って、お酒を飲む
8.好きなだけ乱暴な言葉でののしる
9.言いたかったら、本当のことを言う
10.十ポンドやせて、もっといいヘアスタイルにする
そして、この項目を実行に移す。
髪に天使のようなウェーブをかけ、ダンスホールにナンパされに行く。
ベリンダはヴァージルしか男を知らなかった。
それで他の男を知ってみたいと思ったのだが、ここで出会ったゲーブルの虜になってしまう。
家に着くと、彼女はまっすぐキッチンに行き、リストを隠した鍋つかみのひきだしの底からリストを出した。
今のところ、チェックして消したのは「もっといいヘアスタイルにする」だけだった。
それで「好きなだけ煙草を吸って、お酒を飲む」を消した。
それから「最低でも三人」に線をひいて消し、その上に「ゲーブルと三回する」と書いた。
ベリンダは母親のクレジットカードでテープレコーダーを買う。
それから、毎日こどもたちが成人するまでのメッセージを吹き込んでいった。
ペニー、
きっと、かわいくなっているわね。
いろんなことは、パパに説明してもらってね。
パパは話したがらないだろうけど、でも聞き続けて。
知らないふりをしてても、パパは知ってるんだから。
もしパパに新しい奥さんがいるなら、その人に聞いてみて。
女の人のほうが、人生ってもののあれこれをよく知ってるのよね。
だってそのあれこれが起こるのは女の人だから。
アイ・ラブ・ユー。
パツィ、
ママは八歳のときにはね、「リリーってば、私よりずっといい思いをしてさ」なんて思ったの。
上に姉さんがいるってけっこうきつかった。
だから、あなたはそんな思いをしないで。
パパったら、あなたのことをペニーぐらい大きい子みたいに扱って、いろんなことを大きい子並みにさせるかもしれない。
そうかと思えば、ラマーぐらい小さい子みたいに扱って、やたらと、とろくさくなったりするかもしれない。
でもそれはね、全部あなたが真ん中だからなの。
パパはごちゃごちゃになっているの。
ママはあなたを愛しているからね。
ラマー、
あなたが「自分がほかの誰よりも、一番どなりつけられてばっかりいる」とか、「何でもかんでも自分のせいにされてる」って感じてるとしたら、それはね、あなたが一番小さいからなの。
そのうち、家中で一番大きくなるかも。
もし新しいママがいるなら、その人のことが好きだといいんだけど。
私に悪い、なんて思うことないからね。
愛をこめて。
ママ。
それからベリンダは、ヴァージルにあてて、クリスマスのメッセージをいくつか入れた。
ハロー。
ヴァージル、新しい奥さんのことなんだけど。
もしまだなら、気をつけて選んでね。
二回目なんだから、自分がいったい何をしているのか、よく注意しなくちゃだめなんだから。
ヴァージル、
これは、私が作る最後のクリスマス・メッセージ。
あなたにメリー・クリスマスを祈る死んだ妻の声をテープレコーダーで聞くのはいや、って言う女の人と結婚しているはずだと思うから。
私のこと、もう忘れちゃったわよね。
でも、もし忘れちゃってても、「そう、忘れたよ」なんていわないでよね。
エリク・リバーでの夜のことを考えたりする?
ベリンダはシアーズに子供たちの写真を撮りに行く。
すると、そこにヴァージルが昔好きだった女の子、キャンディが働いていた。
キャンディは離婚をして独り身だった。
事情を話し、住所を渡した。
そして、まるでベリンダの後任者が、仕事のあれこれを学ぶためのようにキャンディはやって来た。
小説は、リストの一つ残っていた「洗礼をうける」シーンで終わる。
女性の書いた小説であり、女性の撮った映画であるから、これは女性の思考回路なのだろう。
登場する男達は、夫も恋人も、映画版で存在する医者もみんなベリンダに振り回される。
二ヶ月の命をどう使うかを考えた時に、ベリンダは未来を見た。
夫のほかに恋人を作り、子供たちに送るメッセージを残し、夫の再婚相手を探す。
男だったら(僕だったら)過去を振り返ってしまうだろう。
せいぜい初恋の人に会いたいと思う程度。
根本的な"種"の違いを垣間見る思いがした。
本の帯には、小雪がコメントを載せている。
正直に言うと、この本は私にとって特別な1 冊になった。
なぜなら、「いま」全力をつくすこと、それがなかったら
「明日」の自分はないことを、いつも思いださせてくれるから。
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ダニエル社長著『コロナと金』 2022年09月27日
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