《 幸せのひろいかた 》  フェルトアート・カントリー木工 by WOODYPAPA

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2023年03月21日
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カテゴリ: 映画日記



香港で社会現象になったオムニバス映画『十年』(2015年公開香港映画)を元に、新鋭監督たちが自国の抱える問題点を軸に10年後の社会・人間を描く、日本、タイ、台湾の国際共同プロジェクト「Ten Years International  Ploject」の日本版で、是枝裕和監督監修による5人の作家によるオムニバス映画『十年Ten Years Japan』の中の1話を、早川千絵監督が自身でリメイクして、昨年公開されたのが『PLAN75』です。

”映画好き”としては押さえておきたい映画ではありましたが、僕の場合厳密には”昭和の映画好き”ですので、機会があれば見たいという程度の作品でした。

ところが先日、友人と会話の中で、この映画の話しが出ました。

「最近、どうも楽しいこともなくて、もう死んでもいいかなあと思うんだよ」

と、僕が言うと、

「そんな映画ありましたよね、安楽死する」と友人。

「あったあった、なんだっけ」

「たしか倍賞千恵子が・・・」

という会話の中で、老人・安楽死というフレーズから、俄然観たい映画にランクアップされたのでした。



「むかし『ソイレントグリーン』っていう映画があって、そこにも安楽死のシーンがあったんだけど、安楽死を迎える最期の場で、楽しい映像を見せてくれるんだけど、なんだかちっとも楽しそうに見えなかったなあ」

『ソイレントグリーン』は1973年のチャールトン・ヘストン主演のSF映画です。

『十戒(1956年)』や『ベンハー(1959年)』という歴史スペクタクルで大スターとなったチャールトン・ヘストンでしたが、1968年『猿の惑星』でSFという新たな境地を展開していました。

それで期待されていた『ソイレントグリーン』でしたが、僕の感想では”雑な作品”でした。

結末の謎は覚えていますが、それ以外のエピソードやシーンは記憶に残らず、社会批判の切り口もかなり雑でした。

ただ、安楽死を迎える老人のシーンだけは印象的で、さっき言ったように、決して感動するような映像ではありませんでした。

ということで、安楽死つながりで『PLAN75』と『ソイレントグリーン』が連想され、今回はこの二つの作品から安楽死を考えてみたいと思います。


まずは『PLAN75』の倍賞千恵子さんです。

倍賞千恵子さんといえば、『下町の太陽(1962年)』でデビュー、『男はつらいよ(1969~2019年)』の妹さくら、『幸せの黄色いハンカチ』『遥かなる山の呼び声』等等等、山田洋二監督映画には欠かせない名女優であります。

さらに歌手としても『さよならはダンスの後に(1965年)』など、大ヒットを持つ昭和の歌姫でした。

『PLAN75』でも、一節歌っているシーンがあって、素人っぽく歌っていますが、うまさは隠せず、歌声は健在のようでした。



倍賞千恵子がいつの間にか八十路に入っていたことに驚きです。

しかしあの声は全く変わらず、姿勢はしゃんとして、とても80には見えない。

顔のアップのしーんでは、倍賞千恵子のフォルムはそのままで顔だけしわだらけ。

特殊メイクかと思いました。

顔立ちは寅さんの妹さくらのまんまで、しわだけやたら目立つんだから。



キャスティングの問題と、設定の年齢にちょっと疑問が残りました。

監督のインタビューで、なぜ”75”にしたのかという問いに対して、「後期高齢者になる年齢が75歳だったから」と答えていました。

たしかに後期高齢者といわれると、お迎えの順番待ち、という印象があります。

人生の行く末に、”死”というゴールが見えてくるのです。


『PLAN75』の中の安楽死ですが、主人公や安楽死を選択する他の登場人物に、そうせざるを得ない事情が伝わりませんでした。

不治の病気でもないし、借金があるわけでもない。

主人公を追い込むような、強烈なエピソードもない。

このまま生きていても希望がない、ということだけです。

社会状況としても、老人を生かすことができないほど逼迫した様子もありません。

この種のテーマを扱う作品の前提として、そこはお約束ということなのでしょうか。

『ソイレントグリーン』の世界は、”人口爆発”と”食糧危機”という前提がありました。

他にも『楢山節考』に見られるように、貧しさがそうせざるを得ない、という悲しい掟のような前提があります。


『PLAN75』は、原題の『Ten Years Japan』からわかるように、『十年』後の日本を描いています。

公開時から10年後の日本は2032年。

日本の10年後に、”ディストピア”を想像するのは難しいということでしょうか。

『ソイレントグリーン』は50年後の世界なので、勝手な想像をしても否定も肯定も出来ない。

『バックトゥザフューチャー2』の未来も30年後だったので、そういうこともあり得るかなあという範囲です。



日本の10年後として想像できるのは、団塊の世代(1947~49年生まれの世代)が80歳代中盤になり、寿命を迎えるということです。

僕の知っている団塊の世代の人は、過酷な競争社会を生き抜いてきた人たちです。

ちっとやそっとで安楽死は望まないでしょう。

『PLAN75』に応募した老人は、支度金として10万円が支給されます。

10万円とは、ずいぶん寂しい。

生活が苦しいから10万円もらって早く死のう、と思う人はいないと思いますが。

もっと高額だと、その金で楽しいことをして、楽しみを覚えたことで、死ぬのをためらったりするかもしれません。

安楽死への導きには、絶望が必須です。

現代の日本には、最低限の生活でも何とか生きていけそうな社会福祉環境があります。

本編でも、生活保護を勧められるシーンがあり、現状を把握してなかった主人公が断っています。

日を改めて申請をすれば、彼女の問題は解決していました。


僕自身も、高齢で働けなうなったら、そして子供たちに見捨てられたら、生活保護でとにかく生きていくのだろうなあと想像しています。

歳を重ねるにつれ、欲望も減退し、何も欲しないまま、やたら早く過ぎ行く時間の波に身をゆだね、ただ生きていく。

庭の手入れをするだけで一日が過ぎてゆく人生でも構わない。

そんなふうに考えています。

だから、楽しいことが無くても、安楽死を望んだりはしないと思います。


もともと『PLAN75』はオムニバス映画の短編作です。

約100分で5作だから、1作20分程度(未見なので想像です)。

言ってみれば『ウルトラQ』の1話ぐらいです。

だと思えば、このアイデアはちょうどいいのでは。

ウルトラQ第17話『8/1計画』などは、人口爆発に対する計画で、似たシチュエーションとも言えます。

20分ならテーマも凝縮されているので、シンプルでわかりやすいでしょう。

ぜひ『十年 Ten Years Japan』も見たいと思います。


こう書くと『PLAN75』を低評価にしているようですが、映画の評としては、クオリティはすごく高くて、監督の能力も高いと思いました。

説明セリフなども一切なく、ナレーションのないドキュメンタリーのように、映像だけで物語の進行をします。

物語に関係のなさそうなカットも、すべて意味があり、監督の伝えたいことは伝わります。

早川監督の次回作は期待してもいいと思います。


ただ、日本の10年後にディストピアを求めるのは無理でした。

少なくとも50年後にしないと、現実から離れられないと思いました。

ということで、50年後を設定した『ソイレントグリーン』の話に移ります。

次回へ続く・・・





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最終更新日  2023年03月21日 14時51分14秒
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