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正月飾りにはナンテンやセンリョウなど、赤い実の成る花木が縁起が良いとされて飾られる。ナンテンは「難転」でセンリョウは景気よく「千両」のごろ合わせから、縁起を担いだものである。どちらも秋口から実が赤く色付いてくるが、正月以外には花材として用いられているのをあまり見かけない。ナンテンは語感が「難転」に通じることから、特に好まれる植物である。難の対義語は易だが、「難を転じて福となす」と続けて縁起を担いだものである。ナンテンを、鬼門または裏鬼門に植えると縁起が良いなどという俗信がある。福寿草とセットで植えて、「難を転じて福となす」ともいわれる。また江戸の百科事典「和漢三才図会」には「南天を庭に植えれば火災を避けられる」とあり、江戸時代はどの家も「火災除け」として玄関前に植えられたのだという。中国では紅事といって赤を縁起色としており、そんな風習が日本にも伝わったものであろう。また実の赤い色には厄除けの力があると信じられ、江戸後期から慶事に用いるようになった。便所の横には「南天手水」といって、葉で手を清めるために植えられた。ナンテンに含まれるアルカロイドは、古くから漢方や民間療法で咳嗽や喘息に用いられてきた。動物・植物・鉱物の全体やその一部に、乾燥などの簡単な加工を施して「くすり」として用いられるようにしたものが生薬と言われる。生薬は漢方薬の原料や民間薬として、または成分を抽出して医薬品原料にもされる。日本薬局方十六版では、276 品目の生薬が収載されている。センブリやゲンノショウコなどを植物性生薬、ジャコウ・ゴオウなどは動物性生薬、石膏・硫黄などが鉱物性生薬である。薬効を期待して使われる植物は、薬草といわれる。南天実にはドメスチン・イソコリジンが含有され、日本薬局方外生薬として「生薬及び漢方処方に基づく医薬品」に位置付けられている。果実は赤い色が一般的で、秋から冬にかけて果実が赤く熟す。僅かながら白実のナンテンも栽培されていて実が白い種類は、シロナンテンと呼ばれている。花材には赤実のナンテンの方が引き立つので、植栽されているほとんどは赤実ナンテンである。シロナンテンの果実の方により多くの薬効があると信じられているが根拠はなく、どちらも含有量は同じとされている。古くから、赤飯にナンテンの葉を添える習慣がある。葉に含有されるナンジニンから発生するシアン化水素に、防腐作用があるとの説を唱える人もある。青酸化合物は劇毒物だがほんの微量のため、人体には全く安全で毒作用を表わすことは無いと説明されている。ただ防腐のために葉を乗せるのであれば、赤飯は腐敗するほど何日間も保管はしないのでほとんど無意味と思われる。また譬え微量であっても猛毒のシアン化水素を、食品の防腐に用いることはあり得ない。防腐のためというのはこじつけで、赤飯は「ハレ」の日の食べ物だからむしろ「難転」の意味あいが強い習慣かと思われる。ナンテンには、ドメスチンやイソコリジンなどのアルカロイドが含まれている。これらの物質は知覚神経や抹消運動神経を麻痺させ、心臓の運動を抑制する作用が確認されている。(国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編) ナンテンの実に含有されるアルカロイドには咳止めの効能があることから、民間療法では咳嗽や喘息に用いられる。ナンテン葉から抽出された「トラニラスト」は、抗アレルギー薬(リザベン)として利用されている。ナンテンは漢名で、「南天燭」あるいは「南天竹」と呼ばれていた。これが日本へ伝わって、燭と竹が省略されて「ナンテン」になったのだという。南天燭の「燭」は南天の実が「ともし火」の形をして赤いところから、また南天竹の「竹」は株立ちが竹に似ているからこう呼ばれるようになったのだという。これが訛って地方によっては、ナルテン・ナッテン・ナピテンと呼ばれることもある。通常は直径2cmほどにしか成長しないが太く育ったナンテンの幹を床柱として使うことがあり、鹿苑寺(金閣寺)の茶室・柴又帝釈天の大客殿に使われている。また房総半島仁右衛門島の平野仁右衛門家には、1704年(宝永元年)に建て直したものと伝わる南天の床縁がある。葉は南天葉(なんてんよう)という生薬で、健胃・解熱・鎮咳などの作用がある。鎮咳作用のあるドメスチンは、多量に摂取すると知覚や運動神経の麻痺を引き起こすため、素人が安易に試すのは危険である。また近年の研究でナンジニンには、気管平滑筋を弛緩させる作用があることが分かった。実のドメスチンと葉のナンジニンは有毒成分に分類されており、ドメスチンでは知覚・運動神経麻痺、ナンジニンでは大脳・呼吸中枢の興奮からマヒを起こすとされる。(日本中毒情報センター)
2017年12月25日

カリンはリンゴ・ナシ・桜などと同じバラ科の植物で、漢字では花梨と書き別名では安蘭樹(あんらんじゅ)とも呼ばれる。医聖とも伝わる永田徳本(1513年) は、戦国時代後期から江戸時代初期にかけて活躍した異端の医師である。甲州で葡萄栽培などについて指導したことから、「甲斐の徳本」などとも呼ばれた。徳本が諏訪地方に入った時、この地方でカリンの栽培方や改良について指導したと伝わっている。その際地元の人から、「あれはカリンでなく、マルメロだ」と正された。これを聴いた徳本は強弁して、「名前なんか、マルメロでもカリンでもいい。カリンのほうが響きがいい。重要なのは世間に、カリンの産地は諏訪に限るという評判を立てることなんだ」と教えたという。諏訪地方は全国でも有数のカリンの産地として知られるが、カリンの砂糖漬として売られているものはマルメロである。マルメロは、イランやトルキスタンあたりの中央アジアが原産地とされる。マルメロの幼果の表面には白色の細かな産毛がびっしりと生えているが、熟すに従って毛は落ちて無くなる。一方カリンは中国原産で、元禄時代に薬用として持ちこまれたとされている。春先淡紅色の5弁の花を枝先に咲かせ、梨状の果実は晩秋に黄熟して脂粉の香にも似た怪しげな芳香を放つ。果肉は石細胞が多いため非常に堅くて、渋味と酸味が強いので生食はできない。カリン酒・砂糖漬け・ジャムなどに加工して、食用にされる。果実酒は喉に良いとされ、咳止めや疲労回復目的で飲まれる。果実を良く洗浄して芯・種子・皮をそのまま8等分して、砂糖と共にホワイトリカーに漬ける。2ヶ月くらいで淡黄色になり、半年ほど熟成させてからが飲み頃である。生では食べられないが加熱することで柔らかくなるので、ジャムやゼリーとしても利用できる。果実には果糖・ビタミンC・リンゴ酸・クエン酸・タンニン・青酸配糖体アミグダリンなどを含有している。古くから民間療法では、喉の炎症を抑えるとして咳止め・痰切りなどに利用してきた。バラ科植物の種子に含まれるアミダグリンは、酵素分解を受けて強い毒性のシアン化水素 (青酸、HCN) を発生する。カリンの果実のアミダグリンは熟すとともに消失するとされているが、仁(種子)のアミダグリンは遅くまで残るとされ注意が必要である。局方でカリンのことを木瓜といい漢方の「鶏鳴散加茯苓」に処方され、脹脛の緊張・圧痛・下肢の倦怠感に使われる。中国では、酔い覚まし・痰切り・順気・下痢止めの効用があるとされている。日本原産で山野に自生するボケ(木瓜)は生薬の木瓜と紛らわしいが、クサボケと言われ果実はカリンの中国名木瓜から取って和木瓜とか草木瓜と呼ばれる。日本では主に民間薬として咳止め・痰・喘息に使われ、喉飴にも配合されている。落葉する頃になると完熟して、芳香が強くなる。かごに盛って室内に置くと、香りを楽しむことができる。我が家のカリンの木は20年以上も前に庭へ植えたものだが、枝を伸ばし放題にしていた頃には千個近くもの果実がついて処理するのに苦労した。5年ほど前に10mにも伸びた幹を7mほどもバッサリ切って、現在は3mほどに纏めた。当然果実が着くのも50個ほどに激減したが、代わりに一個900gもの巨大な実が成るようになった。以前は毎年焼酎漬け・砂糖煮・ジャムなどを作っていたのだが、あまり家族は好まないので10年以上も前に漬けた焼酎漬の瓶が何個も物置で眠ったままになっている。ここ数年は一切加工しないで欲しい人に分けて、残りはジャガイモの発芽抑制に利用したり室内に置いて妖艶な香りを楽しんでいる。以前従兄会で大石内蔵助が偽りの放蕩の限りを尽くしたと言われる有名な茶屋一力亭で、舞子・芸妓・地方などを呼んで一夕を過ごしたことがある。コンパニオン等の女性は近代的な香水の香を漂わせるが、舞子や芸妓の用いる脂粉の香はカリンの香りに似ているようだ。
2017年12月10日

梅干しや紅ショウガの着色に使われるのは、赤シソである。赤シソの主色素はシソニン・マロニルシソニンでアントシアニン系の色素に属し、酸性で赤色・中性で紫色・アルカリ性では青色を呈する。青梅のphは約2.8とされ強い酸性を示すため、梅漬けに使用すると赤く綺麗な梅漬けができる。春の七草のスズシロは大根で、スズナはカブのことである。スズナの語源には諸説あり、その形が鈴に似ているからあるいは矢の先に付ける鏑に似ているところからとの説がある。またスズナの別名カブの語源には、頭を意味する「かぶり」・根を意味する「株」・またはカブラの女房詞である「オカブ」が語源だとする複数の説がある。カブは漢字で、蕪と書き、カブナともいわれる。万葉集(巻16/3825)には、「あおな」を詠んだ歌がある。蕪は古くは葉の部分を食用にしていたと言われ、あおなの中に蕪も入っていたのではとも考えられる。食薦敷 蔓菁煮将来 梁尓 行騰懸而 息此公食薦を敷いて用意し 青菜を煮て持ってきましょう。 そこの梁に 行騰を懸けて 休んでいらっしゃるご主人さま。※ 行騰(むかばき)・蔓菁(あをな)・食薦(すごも)竹を編んで簀子のようにしたもの カブは痩せ地でもよく育つことから古代中国では、春に芽・夏には芯(葉)・秋には茎・冬には根を食べる野菜として重要だったという。 中国の軍師諸葛亮が進軍の先々でカブをつくらせ兵糧としたという逸話が残り、カブを「諸葛菜」と称することがある。痩せ地でもよく育つことから、蕪の栽培で助けられた農民が感謝を表わしたものだという。カブはアブラナ科でアフガニスタン原産のアジア系と、中近東から地中海沿岸原産のヨーロッパ系との2変種に分かれる。日本へは5000年も前縄文時代に中国から伝わり、持統天皇の時代(693年)には栽培を奨励したとの記録がる。千枚漬けにされる聖護院カブが有名であるが、その他に50種類以上もの品種があるという。大きさや色で区別した、大カブ・中カブ・小カブ・長カブの他色で区別して赤カブなどの呼称がある。赤カブには、抗酸化物質ポリフェノールの一種のアントシアニンが含まれている。こアントシアニン(anthocyanin)色素は赤色~青色系統の色で、その色調はpHで変化し酸性が強いほど良く発色する。科学的論文は見当たらないもののカブが含有するポリフェノールには、疲れ目の改善・視力向上・活性酸素の生成抑制・血液をきれいにし・血圧抑制効果があるという。近年アントシアニンの抗酸化作用が注目され紫イモや赤カブの、コレステロール低減作用やイソチオシアネートの抗菌性についての論文が出されている。肥大した球形の根を可食部として利用するが、この部分は発生学上胚軸(茎になる部分で、下端は幼根になる。)と呼ばれる部位で、本当の根はその下に伸びた髭状の部位で食用とせずに切り捨てる。胚軸及び根は多くの場合球形で白色だが、赤色で赤蕪と呼ばれるものもあり東日本に多いとされる。肺軸が大根のように長く伸びたものは、漬けものに使われる。葉には、カロテン・ビタミンC・食物繊維が豊富に含まれている。アブラナ科に共通する苦味や辛味はあるが、カブは甘味が強く寒い時期ほど甘味が強まる。赤カブ(二十日ダイコンの変種)・血カブ(食用ビート)・カブカンラン・カブタマナ(コールラビ)・スウェーデンカブ、カブハボタン、仙台カブ(ルタバガ)・カブナ(野沢菜)など根が太る類似の形態をもつ野菜に、「カブ」の名を冠することがある。大きな球形となる部位を食用とするほか、茎や葉などの地上部も青菜類と同様に利用されることがある。 肉質が固いため煮物や味噌汁・シチューの具材として利用が多いが、蕎麦の薬味として大根おろしの様に利用しているところもある。加熱すると柔らかくなるため、ダイコンのように煮込む料理には向かない。 日本料理ではフロフキきにも利用され浅漬け・糠漬け・千枚漬け(聖護院かぶら)・酸茎などの漬物に加工される。聖護院カブは京都の伝統的酢漬け食品で関東では好事家の間で、自家製千枚漬けが作られるようだがカブが大根のようには流通していないし作付もされていない。そのため自家製千枚漬けを作るには、自分で育てる他ない。関東一円では種子の入手も困難で、種苗店から取り寄せる以外にない。栽培は大根に比較して、若干難しいのではと思っている。70坪ほどの菜園の一部で何年か聖護院カブと赤カブの栽培に挑戦したのだが、発芽はするのに双葉から本場の時期に大量の害虫に食されて消えてしまうか、発育初期を越しても猿の被害に逢って結局収穫までには至らない。そのため十数年前から、南信州の実家で栽培してもらっている。今年も先日、聖護院カブと赤カブを収穫してきた。赤カブの漬けものは梅漬けの紫蘇と異なり、独特の赤色を鮮明に出すためには触媒として食酢の助けを借りなくてはならない。赤カブ1kgに対して、塩大さじ1+酢200ml+砂糖100g・出汁昆布10cm×5cm・鷹の爪3本・容器を用意する。(塩大さじ1+酢200ml+砂糖100g)を鍋に入れ、火にかけて溶かし漬け汁を用意する。赤カブはスライサーで、3mm厚程度の食べやすい厚さにスライスする。容器にスライスした赤カブをキッチリ詰め、1cmの短冊に切り分けた昆布・種を除いき細切した鷹の爪を置きながら、順番に詰める。詰め終わった上から漬け汁をかけ、軽く重石をする。そのままでは筋っぽくなってしまうので、赤い水が上がったら重石をとる。3~4日で赤く染まったカブを食べることができるが、漬けて一週間後位が最もおいしい。冷蔵庫で保存すれば2週間は、美味しく食べることができる。食べ終わった後の漬け汁は、美しい赤色をしている。家内はワイングラスで少しずつ飲んでいるが、抽出されたカブのアントシアニンに言われるほどの効能があるかどうか人体実験である。
2017年12月03日
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