そなたが堅気にさえなってくれれば
浜津賀村の海神祭りの日がやってきました。村中に祭り太鼓が響き、みんなが楽しそうに盆踊りに興じています。
おこよから面をつけて来ればご本家にも知られない、好きな方をかぶって祭りに来ればよいといわれ、「 へえ
、 もし気が向きましたら
・・・」といい、 じっと面を見つめる
半次郎です。
おこよが祭りに出かけようと外へ出たとき、中富十兵衛が水戸から戻ってきました。中富の顔を見るや、半次郎は中富の素性を、何故浪人なんかになったか、そして若い衆十人を半次郎のところへ送って来た理由を聞きます。・・・ 親分になれる
し、またそのつもりなら、 村づくりも出来る
と見込んだからだと、中富が半次郎にいいますと、半次郎は神妙な顔になり、中富にいわれたことに動揺を隠せず廊下に出ます。
そのとき、賑やかだった祭り太鼓の音や歌が止んだことに、 二人は様子を見に出かけます
。
安五郎と平井の源左衛門達がこのときとばかりに、おとくとおけいの二人を襲ったのです。おけいを連れ去り、止めようとしたおとくは気を失います。
助けを求め走って来た おこよと二人は出会い
現場に着くと、逸る半次郎に中富は、「ここは俺が引き受けた、 お主はおけいちゃんを追え
」と半次郎にいいます。
おけいを追って行った半次郎が追いつきます。一人を捕まえて安五郎の一家のものかおけいに聞くと、
「違う」という。どこの一家の者か口を割らないので
半次郎「けえったら親分にいいな、 浜津賀の権兵衛
、こっちから楯突く気はさらさ
らねえが、 この上あこぎな真似をしやがると
黙っちゃいねえからな、いい
か」
と啖呵をきると、やくざは逃げ帰っていきます。
一部始終を見ていた中富は、おけいと半次郎が歩いてゆくのを見て、「さすがは親分、 貫禄だなあ
」と。そして、中富の「こんなことなら、 本家の後家の介抱をすればよかった
」というのを聞いて、半次郎「 おふくろさんが
・・・」と・・・。
本家に帰ってきたおけいを見て、臥せっていたおとくが誰に助けられたのか聞くと、おけいは入口の方に目をやります。「 おふくろさん
」 とは呼べず心配そうな顔をした半次郎
は、ただ おとくに悲しい目を見せる
のです。 おとくもそんな半次郎を見て何故か気持ちが動きます
。
子分から権兵衛という男の様子を聞いた源左衛門のところに、目明しの伊之助がやってきます。もしかしたら、権兵衛というのが半次郎では・・・と何とか誘きだす最後の手段にうってでます。
平田屋のおとくは、おけいからすべて聞いた、とおこよにいい、「権兵衛殿にあって是非いいたいことがある」と案内を頼みます。
分家でのんびりと村づくりの話をしているところへ、おこよが、おとくが来たことを知らせると ふたりは慌てるが
、おとくに知られてしまったことを話しているところへ、 おとくがやってきます
。
中富十兵衛のことはおこよから道々聞いたというと、「 権兵衛どの
」とおとくが声かけてきたので、半次郎は下を向いたまま「 えっ
、 へい
」と返事をします。すると、
おとく「そなた、生まれは何処です ?
」
半次郎「上州で」
おとく「親御は ?
」
半次郎「とっくに・・・」
おとく「 亡くなられたのですね
」
半次郎「・・・ へっ
」
そう聞いたおとくは、半次郎に折入って頼みがあると切りだします。
おとく「今日限り、 きっぱりとやくざから足を洗って
ください」
おとくは、五つのときに神隠しにあった子供のことを話しだします。陰膳据えて二十年、 その子が帰ってくるまでは
、 それを望みに今日まで生きてきた
が、所詮女だけでは村は守れないと知りました。 そなたが堅気にさえなってくれれば
、おけいの婿にして、平田屋の跡目を・・・、といってきました。
そこまでいってきたおとくに何もいうことが出来ない半次郎は、いてもたってもいられず庭へおります。
その様子をおとくはこのように理解してしまったのです。
おとく「この私に、あれほど冷たく扱われては、 そなたも腹がたつであろう
・・・
許してください、 この通り詫びをいいます
」
深々と頭を下げるおとくに
半次郎「 もったいねえ
、・・・願ってもねえお話で・・・思わずあっしは涙がでま
したが、 手前には手前の都合がございやす
、・・・ どうかしばらく
・・・
しばらく考えさしてくだせいやし」
そういう半次郎の様子に何かが気になるおとくの表情が印象深いものでした。
続きます
。
炎の城・・・(11) 2024年08月05日
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