旅の風来坊
この作品は、 1939
年 (
昭和 14
年 )
にこの作品の監督でもあるマキノ雅弘監督が片岡千恵蔵さん主演で、好評を博し大当たりをとった「清水港」の再映画化です。
作品の内容は、勤王、佐幕に日本中が大きく割れた幕末のころ、各地に大きな勢力を持っていたやくざの動向が、勤王、佐幕の争いにも大きくものをいったため、日本一の大親分として清水港に勢力をほこっていた清水の次郎長の動向を探るため、風来坊の政吉と名乗って一家にもぐりこんだ軽妙洒脱な一人の勤皇の志士の挙動を、面白おかしく描いたものです。
「清水港」で好評を博した実績があり、軽妙洒脱な人物を描いては右に出るものはないといわれるマキノ雅弘監督が橋蔵さんのユーモラスな一面をどのように引出してみせるのか楽しみになります。
主演の橋蔵さんも、劇全体の 90
%は徹底した三枚目の演技という新しいジャンルにいどんだ作品です。
「前に片岡先生が一度演られ、非常に評判をよんだ作品だったそうですが、残念ながら私はこの作品を見ておりません。だから、前の作品にとらわれることなく、私は私なりの二枚目半演技に撤したいと思っています。
とにかく、こんなに徹底した二枚目半役はほんとに初めてで、いささか演技面で苦心をしていますが、出来るだけ不自然な芝居をさけ、自然な笑いをさそうような作品に仕上げたいと思っています」と、二枚目半の新境地に橋蔵さんも激しい意欲をもやしていました。
◆第 65
作品 1960
年 7
月 31
日封切 「清水港に来た男」
政吉 大川橋蔵
お雪 丘さとみ
おすき 青山京子
お蝶 喜多川千鶴
お袖 小暮実千代
熊造 堺俊二
小松村の七五郎 加賀邦男
鳶の山の為五郎 阿部九州男
伝助 杉狂児
七助 本郷秀雄
角太郎 徳大寺伸
六助 田中春男
小政 石井一雄
大政 中村時之介
隣家のお内儀 赤木春恵
為五郎の用心棒 楠本健二
清水次郎長 大河内傅次郎
侍 進藤英太郎
清水港にやって来た政吉という風来坊は、突然の雨に降られ、とある家の軒先へと逃げ込みます。その家は清水一家の六助の家でした。覗き込んだ家の中には、ご馳走が・・・さしみにお銚子がついた膳が置かれてありました。お腹の減っていた政吉は我慢できずに家の中へ引き込まれてしまいます。家主の六助とその女房おすきが帰ってくると酒に酔って上機嫌になっています。口のうまい政吉を、六助はすっかり友達と勘違いしてしまいます。二人はたちまち意気投合し、政吉は居候を決め込もうとしますが、それが元で、六助は女房のおすきと大喧嘩に。六助と政吉は家を追い出され、次郎長一家の三下として住み込むことになるのです。
始まりは茶摘み女たちが茶を摘んでいる茶畑とくっきりと浮かびあがった富士山が映し出され、ちゃっきり節が流れてきます。
茶摘み女たちの唄う・・花は橘、花は橘・・そこへ 合いの手を入れながらやって来た旅の風来坊
、いかにも疲れたという足どりでふらふらっと茶畑を見ながら歩いていきます。・・・蛙が鳴くんで 雨ずらよ・・・という 茶摘み女たちの歌声に誘われるように空を見上げます
。
政吉「何が雨ずらよでい、この通りきれいさっぱりと、雲のかけら一つねえ空っぽ
の空じゃねえか。まるで、 おれの胃袋みてえなもんだ
、 くそ面白くもねえ
」
茶摘み女たちの歌は続きます。・・・ちゃっきりちゃっきりな・・政吉もチリチリチリチリチリツンツン、 テーントテンテン
、 トントンとくりゃと
合いの手を入れながら・・・よほど お腹が空いているようです
。
・・・蛙が鳴くんで、雨ずらよ・・また 空を見上げたとき
、 雷が響き雲行きが怪しくなった
と思うと豪雨ななりました。「あっ、いけねえ」政吉は急ぎます。
続きます
。
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