『ラ・フィネス』『ミチノ・ル・トゥールビヨン』勉強会議事録 32
ジェームズオオクボ的視点で選んだ心に残るあの店のあの料理(名物料理百選) 18
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コース料理・定食メニューの価格設定 ここのところの訪問で聞かれたのが価格設定についてです。コース料理・定食メニューの場合、その売価設定をいくらからいくらまでラインナップするかをしっかり考えることがとても大切です。それで私は一番下の価格設定が大切だと思っています。 一番下の価格はどれくらいのお客様を相手にするかを示します。予算、客層、利用シーンなどを意味するのですが、言葉は悪いですが一番裾野のお客さんをどこにするか。ここまでのお客さんをい相手にするか、を意味します。下の価格はお客様の広がりを出し客数を上げることができます。ただし、それによって店の雰囲気が変わることもあります。20年以上前、ランチをやっていなかった『いなば和幸』にランチメニューを導入しましました。580円のヘルシーランチを導入しました。メニュー名称にはあまり大意はないのですが、カロリーが少ないという感じでしょうか。それでヒレカツとカボチャコロッケの組み合わせにしました。当時の『いなば和幸』は女性客の来店比率がかなり低かったので、女性客が増えれば純増になるという仮説です。しかし、既存の男性客がロースカツ、ヒレカツから単価の低いメニューにスイッチしてはいけないので、男性があまり好まないかぼちゃコロッケを組み合わせたわけです。目論見通りになり、予算が低めで提供量を求めない女性客を取り込み全店ベースで昨対120%くらいになったように記憶しています。 ちなみに、一番上の価格は、その店でできる最高のサービスを意味します。上の価格帯をなくし、価格ラインを絞れば、ターゲティングが明快になります。
2024.04.30
思ったことを書いてみます 敵について 先日、パートナーの齋藤さんと、同じエリアにあるホテルのメインダイニングで食事をして、私のおいしさを私のプログラムで点数化して欲しいとお願いされました。実際、おいしさのエレメンツを拾って点数化してみるとすばらしい点数でした。食事をしてそれなりによかったと感じたのはこれだなと改めて実感しました。 それを見て齋藤さんが「敵ながらあっぱれだ」とおっしゃいました。私はこの言葉に違和感を感じました。齋藤さんは「敵」だと思っているんだ。私は、確かに依頼されたレストランの料理の評価を改善する仕事をしている。でも、それは「敵」とやらに勝つことではありません。そもそも、レストランの施設や機器、人員、歴史、現在の評価、料理人やギャルソンのこれまでの経験や既知が違うのだから、「敵」になる水準ではないことも多いでしょう。そして、何よりも大切なのは、現在の経営資源や制約条件の中で独自性を出して、お客様に喜んでいただくことだと思うのです。最大の「敵」は自分自身だと思うのです。そしてそれは多くの場合は妥協です。妥協はエクスキューズできる環境から生まれます。会社の方針は・・・だから、人がいないから、いろいろエクスキューズはあります。評価を良くするというのはお客様の喜びを集めることです。そして、まず、残念なことを無くすことです。この2点をを優先して、どうしたらできるかを考え実行しないといけません。喜びを集めることなんて少しがんばればはだれにでもできると思うんです。そのためのポイントは何ですかとの質問をいただきました。それはお客様の目の輝きであり、現場で携わる人の目の輝きだと思うのです。今週、会員である福岡のONOグループがオペレーションしているホテルのレストランで朝食を食べました。そのブッフェ会場でお客様の目が輝いているのを久々にみました。評価が上がらず口コミが増えないホテルの朝食はお客さんの目に輝きがありません。楽しそうな表情、これこそがレストランの独自性の根源だなと実感しました。そして、こういうレストランと関係して、つくづくよかったなと思うのです。大久保一彦の本【中古】 大久保一彦の「人」が集まる飲食店店長の秘密 / 大久保 一彦 / 日本能率協会マネジメントセンター [単行本(ソフトカバー)]【メール便送料無料】【あす楽対応】
2024.03.21
冬の連続講座 値付けのポイント その21価格ラインの価格差に応じた価値の見える化 その3~日経レストラン 連載コラム2014年10月分より前回よりの都筑 続いて、基軸となる価格ラインのコースの内容を決めます。このコースはスタンダードコースとします。例えば、さきほどの日本料理店なら、7000円のコースのお造りを、養殖などで周年安定して流通している鮃と本鮪の赤身、中トロと入れ、食べログのレビュアの評判を左右する茶碗蒸しを例えば雲丹にして、地元〇〇の野菜と海老の天ぷらとすれば、「7000円でこんな感じのものが食べられるんだ、コストパフォーマンスが良さそう」と基軸のコースの評価得ることができるでしょう。 続いては、この7000円のコースとの違いを作り、価格差の見える化をします。その前に頭に入れ欲しいことがあります。「品数が増えます」的な発想であまり深く考えずコースを組み立てている店を散見しますが、これはあまりよろしくないことです。例えば、若者が多ければ料理のボリュームが多いほうがよい、質より量の満足度を求める傾向が強く、年配の人はそんなに食べられないため量より質を求めるため、量が多そうに見えると二の足を踏むからです。 価格差の見える化を行う場合、電話予約のお客様の質問を頭に入れるといいです。それが、「7千円と8千円、1万円のコースはどう違うんです?」という問いです。この時に有効なのが、三回目のコラムでご紹介した“グルメ食材”の料理への活用です。“グルメ食材”をうまく使ったプラス一品の差を作りましょう。熱海の名店『古屋旅館』では前菜に世界三大珍味のフォアグラ、キャビア、トリュフを使うようにしており評判です。見える化された差の説明を聞いて、「それだったら、8千円がいいね」と即答が返ってくる差をつくるのです。 最後に、この違い作りがどれだけ重要かを、お手伝いをした新宿にある高級中国料理店の例を見ながら説明しましょう。このお店ではコース料理では8千円、1万円、1万2千円にしていました。このお店、実は銀座にも店がありました。現場では「新宿は銀座と違って8千円のコース料理しか出ない」と結論付けていました。そこで、私は銀座にある店の系列店の店長にどんなおすすめの仕方をしているかヒアリングをかけました。すると、8千円のコースを売る気がないトークをしていることに気が付きました。このコースがあったからこそ、1万2千円のコースが売れていたのです。そこで、新宿店のコースを見直し、「8千円はスタンダードな北京ダックのコースです。あと二千円出すと鱶鰭のスープがつき、さらに二千円出すと鮑料理が出ます」と“しかけ”に改めました。すると、「鱶鰭はつけて」「鮑もいるね」のようにほとんどのお客様が1万円あるは1万2千円のコースをチョイスしていただけるようになりました。このプロセスが価格差に応じた価値の見える化です。 基軸となる価格を真ん中や上に設定した場合は、逆に、何かを外したり、変更したりして差を作っていきます。なお、とある山陰地方の有名旅館の鯛茶漬けのように、高いプライスラインのコースにその店で絶対食べないといけない看板メニューを設定するというのが常套手段ですが、低いプライスラインは未来のお客様です。低い価格でも満足頂き、顧客教育によって上位の価格に設定したお料理を注文していただけるように設定したほうがいいというのが私の一貫した姿勢です。大久保一彦の本非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式/大久保一彦【3000円以上送料無料】
2024.01.15
冬の連続講座 値付けのポイント その20価格ラインの価格差に応じた価値の見える化 その2~日経レストラン 連載コラム2014年10月分より価格差に応じた価値の見える化をする 価格差に応じた価値が見える化がされていないと、お客様が高額商品を自然にチョイスするとはなく、一番低い価格の注文がほとんどとなり、冒頭の質問のような状態になります。そこで、まず、やるべきことが価格差に応じた価値の見える化です。お客様はそれぞれのコース内容を、ご自身の予算を斟酌しながら、見比べて選ぶ修正があります。そのため、“マスコミに登場する有名シェフ”や“マスコミに登場する有名店”以外の、“おいしさ”のアンカリングがされていない店は、比べて選ぶ環境、すなわち、選択肢をつくるべきです。 選択肢の数は三つが理想で、二つ以上、五個までがいいでしょう。同じ価格で利用シーンやチョイス内容を変える方法もありますが、本コラムの“儲かる値付け”の主旨に鑑みれば、お客様を教育して、将来的には今よりも高いものをチョイスしていただけるように長期的な店づくりをするのであれば、プライスラインをいくつかつくりチョイスの幅を広げるのべきです。選択肢の数は、評判でもうしばらくすれば人気店になりそうな登り馬の店なら二つ、一般的な店なら松、竹、梅の三種類用意して、但し書きに「その他、ご希望によりご予算は相談させていただきます」とするのがいいでしょう。続く大久保一彦の本善の循環経営【電子書籍】[ 大久保一彦 ]
2024.01.15
冬の連続講座 値付けのポイント その19価格ラインの価格差に応じた価値の見える化 その1~日経レストラン 連載コラム2014年10月分より 「先生、法事コースなんですが、一番安いコースしかでないんですが、どうしたらいいでしょうか?」とセミナーで知り合い訪問させていただいたある日本料理店の店主が尋ねました。この店に限らず、一番低く設定したプライスラインのコースがほとんどで、単価の高いコースのご注文をいただけなくて悩んでいる飲食店は多いと思います。今回は、下限価格から売りたいコースに誘導するためコースづくりのお話しをしましょう。 この日本料理店の法事の料理は7千円、8千円、1万円の三つあり、それ以上は相談に応じるというプライスラインを設定していました。「それぞれのコースの違いは何ですか?」とおかみに尋ねました。私の問いに、「高級食材が入ったり、素材が良くなったりるんですよ。それと、品数が増えます」と答えました。 さらに私は、「高級食材とはどんなものが入るんですか」と質問を繰り返します。「養殖の鯛が天然の鯛になったり、クロマグロをお造りに入れたりといった感じです」とおかみ。私は、このやりとりで日本料理店の難しさを感じました。何が難しいのでしょうか、この難しさがプライスラインに応じた商品設計につながりますので、今回のコラムで掘り下げてみましょう。 難しさのひとつめが、日本料理店のコース表現の難しさです。法事などの特別な席でのご予約の問い合わせをされるかたで、ネットで調べてホームページら問い合わせていただいた新規客は少なくないでしょう。新規客はお店の料理の質やボリュームやコストパフォーマンスの想像がつきません。しかし、品揃えの価格差が明快な店は稀です。そのため、「失敗しないように」という深層心理のブレーキが働き、失敗しなそうなわかりやすい料理を選ぶ傾向や低い価格のコースを選ぶ傾向が強く出ます。もうひとつが、旬の素材にこだわる店で、ある程度お客様が入いらない店は、法事のリーフレットやホームページに「何が入ります」とうたえないことです。そのため、価値の固定が難しくなり、わかりにくさに拍車をかけます。その結果、お客様にとっては意味のない品揃えに見えてしまうことすらあります。これでは、複数のプライスラインを用意した意味がないですね。続く大久保一彦の本【中古】儲かる!売れる!繁盛店のアンケ-ト術 飲食店完全バイブル /日経BP/大久保一彦(単行本)
2024.01.14
冬の連続講座 値付けのポイント その18お客様を増やすプライスライン その2~日経レストラン 連載コラム2014年9月分より価格ラインの数はいくつがいいのか? もし、市場に投入されたばかりのアイテム(導入期の商品)であり価格イメージが形成されていない場合や一見客が次々とやってくる一等地の場合であれば、複数の価格は必要がありません。既存商品や既存にある競争相手との対応というよりも、店の存在、あるいはそのアイテムの入手できることそのものに価値を見出すようにしたほうがよいからです。 しかし、多くの店は限られたお客様を相手にすることになるので、何度も利用していただいたり、週末、月末、期末にお友達をお連れになってご来店の幅を広げていただいたりする必要性が発生するでしょう。そのため、品揃えは多くなり、価格・アイテムのライン数が10以上のアイテムという状況が発生します。 一般的に同一カテゴリーの中からひとつのアイテムを選ぶ場合は、2~3の選択肢から選ぶほうが選びやすいです。また、新規客や来店経験の浅いお客様にとっては、失敗しないことが大切であり、“選びやすさ”や“わかりやすさ”を求めます。このようなプライスラインやアイテムが増加した場合には、ピックアップチョイスという方法をとり、見せ方の工夫をはかる必要があります。ピックアップチョイスとは、例えば、10種類のアイテムを品添えしたら、特に新規のお客様など何を選んだらいいかわからないお客様が出ますので、複数あるアイテムの中から「これを選んだほうがいいですよ」と2~3アイテムをウリのアイテムとして抽出してメリハリをつけて見せる方法です。 ところで、飲食店の旨みは繰り返し来店していただき長く関係を保つところにあります。そのためには、ある程度の利用頻度の場合、少ないアイテムを繰り返し利用すると、満足していたとしても、ある日突然、陳腐化します。(=多回数経験の飽き)その一方で、お客様は他の店や人付き合いの中からいろいろな知験もします。 そうすると、初回来店や来店経験が浅い段階からその先の奥深さをなんとなくでも感じていただけなければなりません。 日本酒をこだわるような担当者が気に入ったお酒を選ぶため「久保田は〇〇、八海山は〇〇」のような品揃えをし、プライスラインの幅が狭くなっている店をよく見かけます。プライスライン広げる最大の目的は、顧客教育の伸びしろをつくることにあり、類似したプライスラインに水平展開するよりも、入り口になるターゲット外の層を吸収し得る下限価格はとても大切です。その上で、未来の利用の教育カリキュラムを組み込んだ高価格までのプライスラインを垂直転回した品揃えすべきです。 プライスラインを狭めて、間口を広くしなければ、ピンポイントのターゲットを狙うことになります。日本酒を利用する人は増えないでしょう。店を長く継続するには、少子高齢化で人口減少の局面下ですから、いずれは新規客が枯渇するため、プライスゾーンを低めに設定して今は少しターゲットでないお客様にお客様の幅を広くとり、来店回数や接触回数に応じた教育を施し、将来、本当のお客様にする必要があります。 例えば、大阪の名店『万両南森町本店』では旭酒造の日本酒『久保田』を“百寿”から千寿、萬寿はもちろん、碧寿、彗寿、洗心まで品揃えしています。久保田という銘柄は有名ですが、銘柄を最初から指定できる人はおりません。そうすると、百寿が一番売れます。これでいいのです。多くの人にとってみると、久保田は久保田でいいと言うことになります。しかし、従業員との接触を繰り返し、千寿、萬寿、碧寿、彗寿、洗心を飲み、銘柄が指定できます。これだけ業界人に有名な蔵でそうなのですから、無名な蔵ならなおさらですね。 お客様というのは、来店を繰り返すと品揃えや客席の様子など様々なことがわかってきます。多回数経験による飽きは避けられません。この多回数経験による飽きを防止するには、来店経験の多いお客様の目に常に新鮮に感じる伸びしろを用意する必要があるのです。プライスラインを複数設定する奥行はその伸びしろをつくる上ではとても大切なのです。大久保一彦の本【中古】 この「気づき」で売上げがガンガン上がった! / 大久保 一彦 / 三笠書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】
2024.01.13
冬の連続講座 値付けのポイント その17お客様を増やすプライスライン その1~日経レストラン 連載コラム2014年9月分より 「先生、価格帯はいくつ用意すればいいですか?」商品開発のお手伝いをしているとこんな質問をいただきます。 メニューのリニューアルや商品開発に携わったことがあれば、いくつ価格を用意するのか悩んだことがあるのではないでしょうか? まず、同一カテゴリーのアイテムの一番高い価格と一番低い価格のことをプライスゾーンと言います。その中に、設定する価格がプライスラインと言います。プライスラインは本コラムの題名、“設ける値付け”という見地ではとても大切ですので、今回はこのプライスラインお話しをしましょう。下限価格の意味するものはその店が相手にする客層や利用シーンの最低ラインです。例えばランチの品ぞろえを下限価格500円ちょうどに設定すれば、「日々食べる日常的なランチのアイテムがあります」という意味であり、ある意味で「(着の身着のまま)気軽にご飯食べに来て」という意思表示をしていることになります。上限価格は逆にその店でできる一番上のサービスです。1万円の法事のラインナップがあれば、「特別な席での料理ができますよ」と意思表示していることになります。この下限価格と上限価格の間に中心価格を設定してアイテムを投入すれば、「一番安いものではちょっと・・だけど高い価格は贅沢だし・・」という“三段論法的な論理立て”で竹が売れる――すなわち、“松竹梅の原則”になります。 飲食店で言えば宴会などのちょっとした高額商品を売る場合、下限価格と上限価格のふたつのプライスラインしかない場合、下限価格のチョイスで収まることが多いのですが、上にひとつ高いアイテムをつくるだけで、多くの場合、高いほうのアイテムが売れるようになるという摩訶不思議な統計の結果にいきつきます。大久保一彦の本【中古】 誰も言わなかった!飲食店成功の秘密/大久保一彦(著者)
2024.01.12
冬の連続講座 値付けのポイント その16より高い価格のよい商品を売る抜く仕掛け その3~日経レストラン 連載コラム2014年8月分より微差にすぎない 実はどんなワインが合うかは微差にすぎません。微差と言うのは同時対比という実体験を通じて顕在化するのです。この微差の見える化というプロセスは価格設定時に価値による価格差ができる場合には必要なプロセスであるのです。そこで、私はそれ以来、対比メニュー――よりよい商品を売るために微差を見える化して微差や価値の多様性を認識していただき、よりよい価値のある高い商品価格に誘導する価格差を納得していただく手法を取り入れました。 対比メニュ―にはつかみとしての対比メニューと種類を認識させる対比メニュー、微差を認識させる対比メニューがあります。例えば、つかみとしての対比メニューには私の門下生が多用する“刺身の階段”や“希少部位の階段”のような階段メニューです。インパクトがあり、宴会メニューなどのつかみとして機能して設定した宴会プランのコストパフォーマンスを高く感じさせます。種類を認識させる対比メニューは、三種類の同時対比メニューです。回転寿司屋にある三種類の烏賊を並べた“烏賊三兄弟”は典型的な手法であり、この対比メニューによって烏賊には種類があることを認識させて、烏賊は烏賊でも、烏賊の味の微差を見える化することにより烏賊の種類で好みの烏賊をオーダーするように仕向けることができる手法であり、顧客教育の入口となって単価アップの入口にすることができます。 顧客教育に効果的なのが二種同時対比です。例えば『寿し常』では真鯛を“塩レモン”を一カン、普通に握った一カンの計二カンを同時に提供します。“塩レモン”がおいしいことがわかると、普段何気なく食べているものの範囲を広げます。『寿し常』では最初はトロや雲丹ばかり食べていたお客様がその他の魚種に注文の幅を広げていました。お客様の好みのお決まりの日本酒やワインを提供する前に、ワンランク上の面白みあるアイテムを同時対比すると微差に納得して、よりよい注文をするようになります。価格戦略として単価をアップを狙う場合、同時対比による微差の見える化で顧客教育することはとても重要な手法なのです。大久保一彦の本善の循環経営【電子書籍】[ 大久保一彦 ]
2024.01.11
冬の連続講座 値付けのポイント その15より高い価格のよい商品を売る抜く仕掛け その2~日経レストラン 連載コラム2014年8月分よりより高い価格に誘導する価格設定法とは? 例えば、パソコンのような高額商品を買う場合、いくつかのアイテム比較をして高いか安いか、あるいは高い価格であるが価値があるということを判断します。ところが、おいしさという概念が個々人の主観や経験に依存するためか、飲食店におけるメニュー選びに際しては、食べ比べてから価値と価格のバランスを考えて注文すると言うよりは、提供された料理を食べた後に、自身の持っているおいしさの価値観や過去の体験と比較しておいしいかおいしくなかったかを評価する傾向があります。そして、この評価は記憶して残り、その店のイメージを確定しますから厄介です。この評価された記憶の積み重ねによりその人の食文化を形成して、無意識気に入ったメニューを選択する傾向が高くなります。つまり、選ばれるメニューはその人にとって身近な限られた範囲にとどまります。このような行動パターンにより、おいしさや価値のストライクゾーンを自然に広げることはあまりなく、おのおのの選択肢というテーブルにのる価値の範囲は極めて狭い状態を保つ傾向になるのです。これが継続的に単価アップにつながらない原因と言えますが、単価アップをするにはこの価値の範囲を無意識に広げるそれなりのしかけが必要なのです。実は、パソコンの購買時にあるような“対比”をうまく使うことがその解決法となります。 なんとか単価の高い付加価値のあるメニューに誘導しようと、感情に訴えかけて無理やり衝動購買を促そうとしている店を散見します。実は私も十年以上前はそういうやりかたをおすすめしておりましたし、2002年にリリースした著書『飲食店儲かるメニューのつくり方』ではそうすべきだと書いてあります。しかし、繁盛店と関わることが多くなり、そのような店を見ていると、無理やり高い商品に誘導しようという姿勢がないことに気づきました。さらには、お客様は繁盛していない店にはない光景――自然に高額商品――例えばよりよいワイン、よりよい材料――を自然に注文しているケースを目の当たりにしました。 そうして「なぜ高額商品を自然に注文するのか」がとても不思議に感じ、その答えを求めて何度となく同じ店での食事の回数を重ねました。そして、気づいたのが“同時対比”というプロセスを活用した顧客教育だったのです。このことに気づかせてくれたのが大阪の繁盛店『ポルチーニ』のオーナーで、かつてはリッツカールトン大阪の『ラベ』に在籍しておりました中谷信裕さんで、す。中谷さんの店『タヴェルナ・ポルチーニ』で食事しているときに、「この料理にはどんな白(ワイン)があいますか?」と尋ねると二種類のイタリアワインとグラスをもってきて少しずつグラスに入れて「どうぞお試しを!」と何気なくサービスされました。 多くの店では、トークで「鉄板の組み合わせですが、牡蛎にはシャブリがあいます」「じゃあ、それで」というプロセスになりシャブリだけを飲むことになります。したがって、シャブリが本当に合っているという微差を認識することはありません。しかし、飲み比べて店合うワインをチョイスするというプロセスを加えれば、仮に一杯あたりの単価が高くても、合うのがこちらだと分かった以上、値段を気にせず注文するようになります。 『ポルチーニ』ではお客様に喜んでいただくことへの裁量権を各スタッフに与えております。しかし、飲んでみて対比して、料理にあうワインを選ぶという顧客教育のプロセスがあることを発見したのです。実は、自然に高額商品を注文して店として単価アップをはかるには、その人がいいものを納得して、食習慣には落とし込むプロセスが必要です。無理に感情に訴えてエモーショナルなコピーで一瞬売り抜いても、そのような働きかけは一過性のもので終わり、自然に単価元の状況に戻るでしょう。最悪な場合、他の店にスイッチしまうことも事態があるかもしれません。そうなれば、一過性の価格誘導は、リピーターとして来店することに最大の旨みがある飲食店のメリットそのものを無くしてしまうリスクすらあります。多くの人は、おいしいよりよい商品を継続して販売することはなかなか容易ではないと感じているかもしれません。そのため「ちょっと高いと売れない」と結論付ける料理人もいるでしょう。ただ、これは高い価格づけをしたより上位のアイテムに誘導する価格設定法を知らないからと言えます。続く大久保一彦の本【中古】 非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式/大久保一彦(著者)
2024.01.10
冬の連続講座 値付けのポイント その14より高い価格のよい商品を売る抜く仕掛け その1~日経レストラン 連載コラム2014年8月分より 「先生、ハンバーグのパテを店内加工に切り替えました。100円売価があがりますが、きっと喜んでもらえるはずですが、どうでしょう?」コンサルティングで店舗を回っているとこんな質問をよくいただきます。しかし、このありがちな“思い込み”は時として仇となることがあります。①おいしさは個々人の主観や日々の食生活に依存する面が大きいこと、②おいしさの違いは微差でありその微差の良さを必ずしも全員に認識されることがないこと③特にリピーターはおいしさには意外と保守的であり、飽きるまでは現状の料理で十分満足していることなどが理由です。 そして、多くの利用シーンで烏賊は烏賊よく、とんかつはとんかつで満足していて、障泥烏賊(あおりいか)や黒豚である必要は必ずしもありません。だからこそ、芝海老が“本物”である必要がなく、“芝海老騒ぎ”のような騒動になって気づいて注意深くなる消費者が多いわけです。 しかし、おいしさの微差は食の楽しさ、すなわち、レジャー性やエンターテイメント性の主要な部分であり、単価アップに導くしかけとして機能するのです。この微差を認識させるしかけはより高くてよい商品を売り抜くしかけは単価アップを長期的に狙う価格戦略を落とし込む上ではとても大切なのです。続く大久保一彦の本【中古】 成功する小さな飲食店の始め方/大久保一彦,小山雅明【共著】
2024.01.09
冬の連続講座 値付けのポイント その13客単価の設定が悪いとだれも来ない その2~日経レストラン 連載コラム2014年7月分よりおのおのが予算を持っている予算の範囲 それぞれがおのおの食習慣を持ち、それぞれに懐具合に事情があります。このような背景を元にランチの利用動機ごとに予算を区切ると表のようになります。そして、それぞれがランチの予算ゾーンを持っています。もちろん、ランチは習慣化されていますので、意識しているわけでありませんが、だいたい同じ価格ゾーンの店を利用しているはずです。日常使いの店選定時にこの習慣はとても大きく、ほとんどの人は無意識の予算によって行動範囲が決まります。そのため、冒険したとしても、せいぜいひとつ上くらいのゾーンになってしまいます。 ランチにおいては350円~500円は多くの人が考える予算であり、利用頻度が高くなり、マーケットのボリュームが極めて大きくなります。しかし、その価格でお客様に提供するには仕組みをつくり、生産性を上げなくてならないために難しく、多くの店はしかたなく500円~700円、自分の料理の差をわかってもらえるという願望をこめて700円~1000円に設定するでしょう。 しかし、サラリーマンのお小遣いの総額に限りがあるためにそう簡単にはいきません。また、1947年~1949年生まれの団塊世代が65歳を迎えて700円~1000円で食事する人のマーケットは年々縮小しています。そのため、ビジネス街におけるこの価格帯のランチの競争は急速に激化しています。経営は厳しくなるのです。 その解決策は三つあります。昼は350円~500円の弁当に専心して、日常食に対応すること、ランチの営業をやめ夜の営業に専念すること、そして、1000円~1400円ないし、1400円~1800円で勝負できるランチにすること。 昼の営業が夜のお試しの役割を果たさねば、夜にはつながりません。“食べログ”のような口コミサイトが普及した今、ランチのための食材を仕入れてやるやりかたはその特殊な営業が口コミとして書き込まれるためにプラスに働きません。そろそろ価格戦略を大幅に見直し、どうしたらお客様に来ていただけるかを真剣に考える時がきたのかもしれません。※参考「ライフスタイル・ラボ2013年サラリーマンのお小遣い調査」「ライフスタイル・ラボ サラリーマンのお小遣い調査30年白書(2012年12月)」いずれも新生銀行大久保一彦の本【中古】なぜあの店だけが流行るのか? / 大久保一彦
2024.01.08
冬の連続講座 値付けのポイント その12客単価の設定が悪いとだれも来ない その1~日経レストラン 連載コラム2014年7月分より 「先生、東京に来週行くんですが、おいしいお寿司屋さんありますか?」これは、地方の会員さんからよくいただく電話です。「ご予算はいくらですか?」と、この質問に私は決まって同じ質問をします。テレビで紹介された店や気になる店などを選ぶとき誰しも「この店だったら、いくら(支払う)かな」と考えます。このことは日常生活での気軽なランチでも同じです。ただし、日常生活のランチは決まった店を選ぶことが多いためその都度、意識されることはないかもしれません。すっかり日常生活に溶け込んでしまっており、その店で支払う対価はインプット済みで、少なくとも思わぬ出費となる不安材料はありません。ただし、何気なく利用するまでの間には何度とない失敗の歴史があるのかもしれません。 私は、食べログには利用した人の平均支払額が書かれているので、初めての店で食事の最中に「いくらかかるんだろう」というどきどき感や支払の不安がない点はとても便利な要素だと思います。「どれくらいかかる(支払う)のか」はお客様にはとても重要で利用するかしないかを決める大きな要素と言えるでしょう。飲食店が“客単価”という言葉を使いますが、裏を返せばお客様にとって「どれくらいかかるのか」を意味するために安易に決めるべきものではないのです。むしろ、客単価設定は戦略そのものであり、客単価をもとに個々の商品に値付けをすべきなのです。 客単価は大きくわけると日々のランチやひとりでの夕食のような日常的な利用と人をもてなす、おいしいものを食べに行くなどのようなレジャー的な利用で大きく変わります。ただし、人間そのものが違うのではなく、使い分けているだけです。 どの店でどれくらいお金を使うかはそれぞれの可処分所得やお小遣いの額と利用シーンに依存します。 例えば、新生銀行の「ライフスタイル・ラボ2013年サラリーマンのお小遣い調査」および「ライフスタイル・ラボ サラリーマンのお小遣い調査30年白書(2012年12月)」によれば、2013年のサラリーマンのお小遣いの平均は38,756円(前年との差▲1,299円)で、最大だった1990年の77,725円に比べて半分以下の水準で、金額ベースでも38,969円もの減少です。また、同調査によれば昼食代の平均(昼食代÷勤務日数)は2013年の実績で518円(前年比+8円)で、最高だった1992年746円に比べると約3割減少です。 サラリーマンの日々のランチの予算はワンコインになったと言えます。また、同調査によれば、昼食にかける時間が1983年では33分ありましたが、2012年には三分の二の19.6分に減少。2012年の調査では店を選ぶ基準の回答の1位が価格で74.2%、2位が近さで50.6%、3位が味で27.0%でした。そして、71.6%の人が現状の昼食に満足していると回答しています。このことから、利用頻度が高い日常的なランチを狙うならせいぜい700円くらいでないと厳しく、できれば500円はきったほうがいい。これがコンビニエンスストアや牛丼チェーンが確固たる地位を築いている理由と言えるでしょう。つまり、一見すると利用頻度が高そうで毎日来ていただいて胃袋のシェアを拡大できそうなランチでありますが、競争が激しい昨今、残念ながら多くの店はそんなに容易な環境ではありません。仮に都内で1,000円弱くらいの客単価であったとしてもお客様がわざわざやってくるなんらかの要素が必要なのです。私が長年「飲食店はランチをやめなさい」と言ってきたのはこんな事情が背景にあるのです。大久保一彦の本【中古】 ダントツ飲食店の儲けを生み出す「集客」の秘密/大久保一彦(著者)
2024.01.07
冬の連続講座 値付けのポイント その11高い価格に誘導できないのは設定した価格においしさ落としどころがないからだ その3~日経レストラン 連載コラム2014年6月分より中トロの大きさが携帯電話くらいあったわけ 先の行列ができる寿司店では、大げさな表現をすれば、握りの中トロのネタが私の持っておりました折りたたみ式の携帯電話くらいありました。鮃は、やたらぶ厚くて大きいものですから、固くて噛みきれないというのが私のクライアントがおいしくないと言って首をかしげた理由です。 しかし、この店にいらっしゃるのは鮨屋の職人ではなく、回転寿司とは違い、許せる予算で食べるお客様です。そういうお客様にとって大切なのは、回転寿司には出てこないキトキトなネタや高級食材がをありえないほどのデカいネタが食べられるというわかりやすいおいしさなのです。 おいしさの要素をまとめたチャートをご覧ください。デカメニューに代表される“見た目のインパクト”はおいしさの要素のひとつであり、おいしさの落としどころある売価をつくりやすいのです。続いては、おいしさの落としどころをつくりやすいその他の要素をみていきましょう。フォアグラ、キャビア、雲丹、超有名銘柄牛、伊勢海老、本鮪の大トロや大間のような有名な産地、鮑、蟹などに代表される“グルメ食材”も見た目のインパクト同様、価格においしさの落としどころを作ってくれます。例えば、高級鮨店では、一見客が来店した場合は本鮪の大トロや鮑、雲丹を提供します。その理由は、白身や光物の繊細なものより、これらの“グルメ食材”はおいしいと感じていただく落としどころをつくりやすいからであり、2万円~3万円という破格の支払い額を高いと感じにくくさせるためのテクニックなのです。残りの三つの要素――“有名店”、“有名シェフ”、“マスコでとりあげられる情報”はとても似ている要素です。 私がとなえる経営哲学に「最初から味のわかる人はいまない。最大のサービスはおいしさがわかるようにしてさしあげる」です。権威ある第三者があたえるお墨付きはおいしさの認識には非常に重要で、おいしさの落としどころある価格にもいい影響を与えるのです。先ほどの叙々苑の神戸牛のおにぎりは、おにぎりという日常食でも、ブランド価値ある叙々苑と神戸牛を組み合わせれば手の届く贅沢品として機能させることができるのです。これら五つの要素は高い価格に誘導するにはとても大切な要素なのでぜひ、覚えておきましょう。チャートに掲載しましたその他の要素を使っての価格誘導にもノウハウがありますが、この話はまた別の機会でご紹介しましょう。
2024.01.06
冬の連続講座 値付けのポイント その10高い価格に誘導できないのは設定した価格においしさ落としどころがないからだ その2~日経レストラン 連載コラム2014年6月分より高めの価格で売るには“おいしさの見える化”が必要 さて、みなさんに質問をしましょう。おにぎりを一個500円、1000円で売ることはできるでしょうか?答えは簡単で、できます。例えば、叙々苑が神戸牛を使って肉巻おにぎりにすれば簡単に売れるでしょう。これは叙々苑だからこそ成立するものであり、サイゼリアがやってもサイゼリヤの価格イメージに合わないために成立しません。 では、この構造を掘り下げ行きましょう。テレビのグルメ番組を見ていますと、タレントさんの「サクサクしていておいしい」「肉汁が出ておいしい」などと感想を述べているシーンをよくみかけます。このように、われわれは無意識においしさを認識して表現しています。もちろん、本当のおいしさは何であるかなどは知る由もありません。つまり、タレントさんの感想には、サクサクしているとか、ジューシーであるというおいしさの落としどころがあるわけです。 人間は生まれてから様々なおいしさに触れます。まず、赤ちゃんのときにオギャーと泣いて、お腹がすいたことを母親に知らせ、母乳を飲んで満腹中枢が刺激され安堵し眠ります。その後、大きくなってジュースお菓子の甘さにハマるでしょう。高校生になれば大盛りカレーやうどんの満腹感に酔いしれるでしょう。友達ができると外食を楽しむようになるでしょう。そして、様々な人との交わりや旅行や習い事の体験を重ねおいしさのバリエーション(多様性)を身に着けます。料理人の今があるのも学校や調理経験に基づき、多様性なおいしさを身に着けたからです。もちろん、生まれたときから味のわかる人はいないわけですから、料理人と見込み客の間にはおいしさを受容する能力の落差があります。したがって、おいしさの構造を理解して、わかりやすく見える化しておいしさの落としどころをつくる必要があります。 そして、一般的には価格イメージがある食べ物についてはそれで満足しているケースがほとんどであり、価格が高い一歩上の食べ物に誘導して納得いただくには、おいしさの見える化は必要不可欠なのです。大久保一彦の本非常識に稼いでいる飲食店だけがやっている儲けのルール [ 大久保一彦 ]
2024.01.06
冬の連続講座 値付けのポイント その9高い価格に誘導できないのは設定した価格においしさ落としどころがないからだ その1~日経レストラン 連載コラム2014年6月分より 「あんなにネタを大きく切りつけたらおいしくないと思うんでが・・」それは10年くらい前の話。とある地方で、週末には行列ができる寿司店にご一緒した鮨店を経営する店主がそう言いました。一見するとたわいのない嘆きにも聞こえなくもないこの疑問ですが、実は、価格決定プロセスにおいての重要な要素が潜んでいます。今回は“おいしさの落としどころのある売価”についてお話ししましょう。暗黙の予算 今から15年くらい前の独立したころ都心のおにぎり店のコンサルティングの依頼がありました。そのおにぎり店は一個250円で設定して販売しておりました。ふつうのおにぎりよりもむしろ小ぶりなおにぎりはなかなか売れませんでした。結論を先に言うと、おにぎりには一個100円~120円せいぜい、100円台後半という価格イメージが強くあるからです。 当時の私は「売り方を変えればどんなものでも売れる」と思っていました。しかし、このおにぎり店のフィジビリティチェックをしていて、おにぎりには価格イメージがあり、その価格イメージを翻すことがとても難しいことを認識するようになりました。この価格イメージが私の著書によく登場する言葉――“暗黙の予算”です。 さて、話を冒頭の寿司店に戻しましょう。北陸にある立ちの寿司店なのですが、回転寿司でみかける客層がたくさんおります。その秘密が今回のテーマおいしさの落としどころのある売価なのです。今や国民食となった回転寿司店ですが、回転寿司というと税別100円均一のイメージが強くあります。私も定点観測していて思うのは、「100円均一は安いな」ということです。ある程度食べても多くの場合、1000円くらいで済んでしまう。この日常使いできる価格には驚くばかりです。さて、こちらの寿司店で多くの人が注文している上にぎりが税別3000円です。そんなリーズナブルな回転寿司をさておき、お客様で賑わうのはなぜでしょう。実は、暗黙の予算で食べられるものとは違う、新しい見える化されたおいしさを提供しているからなのです。
2024.01.06
冬の連続講座 値付けのポイント その8意外と知らない価格のつけかた その3~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より市場が成熟したら、お客様がいくらなら価値を感じるかに敏感になれ! 売り手市場の環境下においては、志向価格決定法は効率の良し悪しの判断が容易で、キャッシュ増をもたらし、安定経営を支えてくれます。しかし、それは圧倒的な価格競争力を持つ強力なライバルが現れるまでの話と言えるでしょう。価格競争力を見出した強力なライバルは高利益体質の安定経営の基盤を揺るがしてくるのです。このような価格競争力の発想の原点はコストベースの価格決定ではなく、「いくらなら売れるか」という需要志向の価格決定にあります。需要志向の価格決定プロセスは、マーケットの急成長後、次々に参入者が現れる場面――すなわち、その価値が広く認知されて大衆化するかしないかのタイミングで特に功を奏します。例えば、外食産業では、石油ショック以来、レジャーとして成長を続けた第一次外食産業ブームのころ、1986年の男女雇用機会均等法の制定により女性の社会進出が進み食の外部化が急増し始めたタイミングで、需要志向の低価格チェーンが拡大しました。 もちろん、価格を潜在的なボリュームある需要に合わせることは容易ではありません。換言すれば、商品のあるべき姿やレシピという既成概念を再定義して、需要がある価格に合わせて――「いくら(この価格)なら多くのお客様が買う」という着眼点で買うか買わないかに直接関係ない部分を削るなり代替えを探し出す必要があります。例えば、私の経験では、不必要な量をちょうどいい量に変更したり、社員比率を下げたり、外国産の食材をしました。ります。あくまでも“売れる売価”ありきで商品設計をするのです。一人勝ちにさえなれば、マーケットを総取りでき、コスト構造が多少悪くても、キャッシュを増やすことができるのです。あくまでも、一人勝ちができればの話ですが・・大久保一彦の本【中古】 非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式/大久保一彦(著者)
2024.01.05
冬の連続講座 値付けのポイント その7意外と知らない価格のつけかた その2~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より価格のつけかた 「キャッシュを増やす価格決定法とは何ぞや」という話しする前に、価格決定法にはどのような方法があるのかを見ていきましょう。価格の決め方は大きく分けると、かかったコストをベースに価格を決定する原価ベースの価格決定法、お客様がこの価格なら買うという価格ありきで決める需要志向の価格決定法、競争入札で価格を決定する入札による価格決定法があります。 まず、コストベースで決定される価格決定法をみていきましょう。コストベースで決定されます価格決定法は大きく分けると、かかったコストに欲しい取り分をプラスする方法(コストプラス法)とかかったコストに一定比率をかけたり、コスト比率がある一定になるように計算したりして売価を決定するマークアップ法があります。まず、コストプラス法をみていきましょう。五反田に『原価バー』という面白い店があります。来店すると入口で一人1500円を支払います。店内に入ると、ドリンクやフードは原価で提供されており、キャッシュ・オン・デリバリーでその都度支払うシステムをとっている店です。このようにかかるコストは実費をいただき、ひとりあたりただきたい額をプラスして売価が設定される方法をコストプラス法と言います。飲食店では『原価バー』のようにコストプラス法で売価決定をする飲食店は珍しいと言えるでしょう。建設業やわれわれコンサルタントはコストプラス法で価格決定しているケースが多いです。 一方、原価率30%にしたい飲食店でしたら、新メニュー開発時に新メニュー、一人前分のかかった食材コストに4をかけます。そうすると25~30%くらいでだいたい管理できます。これがマークアップ法です。しかし、原価率が25%ちょっとに設定されていたとしても、お客様が減ってしまって売上をあげられなければ、“とらぬ狸の皮算用”で終わり、設定そのものが意味を為しません。お客様にとっての魅力は、売り手が負担しているコストと比例関係にはあるわけではありません。むしろ、原価率とは関係がない場合が多いと言えるでしょう。お客様にとって、原価率よりはむしろ、提供されている商品に対して、どれだけ価値があるかが大切で、その感じた価値で価格は決まると言えるでしょう。さらには、前回もお話ししましたよう競争が激しくなればなるほど価格競争が激しくなり、見込み客が他の売り手と大きな違いを見出さなければ価格は低くせざるを得なくなります。 しかし、他に比べるものが無くて、その商品をあなたから買うしかなければ妥協できる予算の範囲で仕方なくも購入するでしょう。つまり、高い価格でもお金を出すわけです。一般的に市場がアーリーステージから急成長に移行することまでは売り手に価格決定があります。そのために、売り手サイドの利益計算が楽な方法―コスト志向で売価が決定されます。しかし、市場が成熟してしまうと、価格の主導権は買い手に移ります。すると、大きな違いを作り出せない売り手がコストを主体で価格付けをし続けると思わぬ苦戦を強いられるようになるのです。大久保一彦の本【中古】 なぜか行列のできる飲食店の法則 味・値段・立地は関係ない!/大久保一彦(著者)
2024.01.05
冬の連続講座 値付けのポイント その6意外と知らない価格のつけかた その1~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より 「先生、円安の影響で食材が高騰しています。この際ですから、消費税率が上がるタイミングで価格を見直して値上げしちゃだめですか?」これは、税率アップ前にいただいた、電話相談の会員さんからいただいた相談です。実はこの相談は価格を決める上でとても重要なエッセンスが凝縮しています。儲かる値付けの第二回目は価格のつけかたについて説明しましょう。 健全な経営を考えると、手元のキャッシュが増えて、増えた分のキャッシュを再投資してお客様に喜んでいただき、よりキャッシュが増えるようにしていくことがとても大切です。したがって、価格と言うのはキャッシュが増えるか増えないかで判断すべきです。 その一方で、高騰した材料に合わせて価格を変えることは、お客様にとって喜ぶ要素はなく、店としては価格変更を自分自身が損をしないつもりで行うのでしょうが、値上げの結果、お客様を失うことになったり、極端に利用回数を減らしてしまうことになってしまえば、結果としてはキャッシュ増にはつながらないばかりか、キャッシュを減らすことになります。値上げというのは、最低限、お客様の数を維持できないと意味がないものになってしまうのです。値上げはかえってキャッシュを減らすことになります。価格の変更はキャッシュを増やすか増やさないかで決定されるべきなのです。大久保一彦の本【中古】 誰も教えてくれないカフェの始め方・儲け方 簡単にできる!利益率が高い!/大久保一彦(著者),工藤昌幸(著者)
2024.01.05
冬の連続講座 値付けのポイント その5あなたが値引き走るのは価格戦略を知らないからだその3~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より高い価格とは 価格とは自分の提供する価値を数値で表したものと言えます。 外食産業に関わる人の多くが安さに走るのは、食べ物自体がわかりやすく、多くの場合、商品自体に価格イメージがあるからでしょう。例えばおにぎりというと100円~150円前後のイメージがあります。生姜焼き定食なら700円~1000円くらいのイメージがあるでしょう。その時におにぎりを80円で提供したり、生姜焼き定食を500円で提供したりすることは売り手からすると、提案する価値がわかりやすいからです。 逆に高い価格をつけると売り方の工夫が必要になります。まず、高価格でありながら、ある一定のニーズがある範囲の価格を見極めること、比べるものがない状況をつくることなどの条件が必要です。 高い価格をつけるには、比べるものがないということが大切ということで、あまり同業者を気にしないことが大切です。それよりは、高級店に足を運び、その店のお客様が喜んでいることを見極め、現在の自分の経営にオマージュすることです。オマージュとは敬意をもって自分の店に生かすと言っていいでしょう。よそと比べる習慣がある人は自ら競合をつくる場合が多いです。比べようものないものから自分らしさをつくるというのが大切です。日頃から食べ歩き、横並び発想を捨て、独自路線を進むことが高い価格づけをする入口となるのです。 次回から、高い価格をつけるために必要な価格の知識を一年にわたりお伝えしたいと考えます。ご期待ください。大久保一彦の本【中古】いつも予約でいっぱいの「評価の高い飲食店」は何をしているのか /ぱる出版/大久保一彦(単行本)
2024.01.04
冬の連続講座 値付けのポイント その4あなたが値引き走るのは価格戦略を知らないからだその2~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より価格のつけかた さて、講義に入る前に、皆さんに質問をしましょう。 あなたは誰よりも高い価格の料理や商品を提供することができますか?※他の業界のかたはご自身が扱っていらっしゃる商品、例えば日本酒やワインなどに差し替えて考えてみてください。この質問を私の勉強会に入塾したばかりの飲食店経営者たちすると必ず同じ質問が返ってきます。「先生、私はそもそも料理技術がないのでそんなに高い商品は売れません」 しかし、私のところで長らく勉強している弟子のタルイタケシくんなら、その弟子にこう答えるでしょう。「高く売るためにすばらしい調理技術はあったらそれはそれでいいですが、それは絶対必要じゃありません。価格を決定する要素に食材や空間などいろいろな要素がありますし、そもそも競合状況で価格に対する主導権が変わってしまいます」 多くの人は、価格を自分自身で主体的に決めているように思っているでしょう。しかし、実際はそのような場合は少なく、ニーズの状況や競合などが複雑に絡み合い決定されています。ニーズがあるものには二つの特徴があります。競合他社が必ずいることと常識的な価格があることです。したがって価格は、自分自身で勝手に決めることなどほとんどなく、競合との折り合いをつけながら価格が決められます。その場合、マーケティング調査に基づいて戦略的に価格を決める攻めの経営の場合と、想定原価率をもとに価格を決める場合があります。前者はマーケットの総取りを狙う場合で、後者は外食産業にありがちな路線と言えます。多くの店の価格は、原価率で考えることが多いでしょう。そのため、なんらかの形で食材の高騰がおこれば、市場環境と関係なく値上げしたいという願望がおこります。しかし、市場の求める価格は食材の値上がりとは関係ありません。むしろ、値下げを期待するかもしれません。 もちろん、価格戦略を理解していれば、自分が主体となって高い価格をつけることもできます。そのために、まず、競合がないこと、あるいは、他とは違う明確な違いがあることのどちらかの条件を見出します。前者は潜在的なニーズを見つけ出し、競合がない市場ステージにある場合もあるでしょう。このようなステージでは需要に対して供給があまりにも少ないために自由に価格がつけられるのです。 また、他との違いがあればその点を考慮して意識的に高い価格をつけることもあるでしょう。 基本的に言えることは見込み客にとって原価は関係がないことです。そして、火急的なニーズを見出せば、ニーズを満たすことが優先され、価格は予算の範囲であればよくなり、高い価格をつけることができます。大久保一彦の本【中古】 アンケートの作り方・活かし方 売上が倍増する! PHPビジネス新書/大久保一彦【著】
2024.01.04
冬の連続講座 値付けのポイント その3あなたが値引き走るのは価格戦略を知らないからだその1~日経レストラン 連載コラム2014年4月分より 「大変です。となりの寿司屋が500円ランチを始めました」ある日、私と面談している社長さんの携帯電話からそんな声が確かに聞こえました。 ご無沙汰しております。久々に価格に関する連載のご用命をいただきました大久保一彦です。今回から、飲食店の経営にとても大切な価格についてお話ししていきます。早速ですが、あなたの店の未来にとってとても重要な価格についてしっかり勉強していきましょう。なぜ価格戦略を知っておく必要があるのか 価格は飲食店においては大きな戦略――すなわち、店として存続するための道筋を決める要素です。上記のような飲食店の500円ランチは戦略が無くやぶれかぶれでの場合が多く、多くの場合は長続きしない無理のある値引きです。したがって、それとは距離を置き、じっくりと長期戦で臨めばいいです。 しかし、それが戦略的な企業がしかける値引きだったら――それはとても脅威であり、それなりの作戦を練って臨まないといけません。※(付記)最近他社が値上げする中「サイゼリヤ」が価格据え置きするのは好例1947年~49年に生まれたいわゆる“団塊世代”806万人が2014年で満65歳。2012年~2014年の三年間で、生産年齢人口から離脱しており、外食産業のような内需型ビジネスは、人口減少分、胃袋の数が大幅に減少する分、食事の需要が激減しますから大きなダメージがあるでしょう。そうなると、生産性を上げるしかありません。生産性をあげるために今回から連載する価格はとても重要です。そして、価格について理解した上で、明確な価格戦略をもって日々の営業に落とし込む必要があります。そうでなければ、脅威にならないのに脅威を感じたり、侮ってはいけないのに侮り、マーケットを奪われたりします。しっかり価格についての知識をもちこの見極めをしないといけないわけです。大久保一彦の本【中古】 行列ができる店はどこが違うのか 飲食店の心理学 ちくま新書/大久保一彦【著】
2024.01.04
CH1 あなたが値引き走るのは価格戦略を知らないからだ その2~日経レストラン2014年4月号価格のつけかた さて、講義に入る前に、皆さんに質問をしましょう。 あなたは誰よりも高い価格の料理や商品を提供することができますか?※他の業界のかたはご自身が扱っていらっしゃる商品、例えば日本酒やワインなどに差し替えて考えてみてください。この質問を私の勉強会に入塾したばかりの飲食店経営者たちすると必ず同じ質問が返ってきます。「先生、私はそもそも料理技術がないのでそんなに高い商品は売れません」 しかし、私のところで長らく勉強している弟子のタルイタケシくんなら、その弟子にこう答えるでしょう。「高く売るためにすばらしい調理技術はあったらそれはそれでいいですが、それは絶対必要じゃありません。価格を決定する要素に食材や空間などいろいろな要素がありますし、そもそも競合状況で価格に対する主導権が変わってしまいます」 多くの人は、価格を自分自身で主体的に決めているように思っているでしょう。しかし、実際はそのような場合は少なく、ニーズの状況や競合などが複雑に絡み合い決定されています。ニーズがあるものには二つの特徴があります。競合他社が必ずいることと常識的な価格があることです。したがって価格は、自分自身で勝手に決めることなどほとんどなく、競合との折り合いをつけながら価格が決められます。その場合、マーケティング調査に基づいて戦略的に価格を決める攻めの経営の場合と、想定原価率をもとに価格を決める場合があります。前者はマーケットの総取りを狙う場合で、後者は外食産業にありがちな路線と言えます。多くの店の価格は、原価率で考えることが多いでしょう。そのため、なんらかの形で食材の高騰がおこれば、市場環境と関係なく値上げしたいという願望がおこります。しかし、市場の求める価格は食材の値上がりとは関係ありません。むしろ、値下げを期待するかもしれません。 もちろん、価格戦略を理解していれば、自分が主体となって高い価格をつけることもできます。そのために、まず、競合がないこと、あるいは、他とは違う明確な違いがあることのどちらかの条件を見出します。前者は潜在的なニーズを見つけ出し、競合がない市場ステージにある場合もあるでしょう。このようなステージでは需要に対して供給があまりにも少ないために自由に価格がつけられるのです。 また、他との違いがあればその点を考慮して意識的に高い価格をつけることもあるでしょう。 基本的に言えることは見込み客にとって原価は関係がないことです。そして、火急的なニーズを見出せば、ニーズを満たすことが優先され、価格は予算の範囲であればよくなり、高い価格をつけることができます。続く大久保一彦の本【中古】 ダントツ飲食店の繁盛ノート 売れるお店の採用教育・シフト編成・会話術 / 大久保 一彦, 加藤 雅彦 / 日本実業出版社 [単行本]【宅配便出荷】
2024.01.04
CH1 あなたが値引き走るのは価格戦略を知らないからだ~日経レストラン2014年4月号 「大変です。となりの寿司屋が500円ランチを始めました」ある日、私と面談している社長さんの携帯電話からそんな声が確かに聞こえました。 ご無沙汰しております。久々に価格に関する連載のご用命をいただきました大久保一彦です。今回から、飲食店の経営にとても大切な価格についてお話ししていきます。早速ですが、あなたの店の未来にとってとても重要な価格についてしっかり勉強していきましょう。なぜ価格戦略を知っておく必要があるのか 価格は飲食店においては大きな戦略――すなわち、店として存続するための道筋を決める要素です。上記のような飲食店の500円ランチは戦略が無くやぶれかぶれでの場合が多く、多くの場合は長続きしない無理のある値引きです。したがって、それとは距離を置き、じっくりと長期戦で臨めばいいです。 しかし、それが戦略的な企業がしかける値引きだったら――それはとても脅威であり、それなりの作戦を練って臨まないといけません。1947年~49年に生まれたいわゆる“団塊世代”806万人が2014年で満65歳。2012年~2014年の三年間で、生産年齢人口から離脱しており、外食産業のような内需型ビジネスは、人口減少分、胃袋の数が大幅に減少する分、食事の需要が激減しますから大きなダメージがあるでしょう。そうなると、生産性を上げるしかありません。生産性をあげるために今回から連載する価格はとても重要です。そして、価格について理解した上で、明確な価格戦略をもって日々の営業に落とし込む必要があります。そうでなければ、脅威にならないのに脅威を感じたり、侮ってはいけないのに侮り、マーケットを奪われたりします。しっかり価格についての知識をもちこの見極めをしないといけないわけです。続く大久保一彦の本【中古】繁盛の天才2時間の教え / 大久保一彦
2024.01.04
冬の連続講座 値付けのポイント その2~会報『四方よし通信』 2016年2月号より商圏ニーズ対応型の値付けは年間使用額に着目する 一方、商圏ニーズ対応型は、狙うべきターゲット層をきめ細かく具体化し、その需要が起きる場面を想定して、見込み客の予算を基に値付けを決めて行きます。ポイントは、見込み客の単価設定と利用回数を乗じた数字を最大化できる“個顧客”の年間売上を見出すこと、すなわち、年間使用額(年間顧客価値)という見方が重要です。つまり、ニーズ対応型のビジネスにおいては短期的な売上の増減に一喜一憂することはあまり意味がありません。 例えば、前回お話しをしました消費税率引き上げでガラッと変わった後の牛丼市場を例にみていきましょう。2014年4月に消費税率が8%となって、『吉野家』は牛丼(並)をまず300円に値上げし、同年12月には380円に値上げしました。『すき家』は増税後牛丼(並)を一旦270円に値下げした後、2014年8月には291円、15年4月に350円へ値上げをしました。一方、『松屋』は280円の牛めし(並、味噌汁付き)を2014年4月にを290円に改定と増税分の転嫁にとどめました。しかし、同年7月に、関東一都六県では「プレミアムめし」に切り替え、380円としています。施策の違いがもたらした結果は、牛丼チェーン大手3社の15年11月の業績に顕著に出ました。『吉野家』が前年比マイナス7.3%、『すき家』が前年比マイナス0.6%である一方『松屋』は前年比プラス3%で推移しています。 私は、牛丼は、税込300円を超えると気軽さが減り利用動機が大きく変わるという商品特性があると考えています。ちなみに、『ほっかほっか亭』ののり弁の価格は税込340円で『ほっと もっと』ののり弁は税込350円で牛丼(並)380円はこれらの売価を上回った値付けであることも大きいといえるでしょう。そのため、一都六県以外が牛丼(並)290円である『松屋』がその需要を吸い上げ、顧客価値を一社で吸い上げているという仮説が成り立ちます。牛丼のような日々のランチ需要に応えるビジネスモデルなら、利用頻度が高く日常性が高いニーズを想定します。その上で、弁当・店内での利用回数を最大化する単価設定と年間利用回数を考えないといけないのです。 宴会利用客も年一回の記念日需要なのか、よくある接待なのか、忘年会・歓送迎会のような期末利用であるのかで予算が大きくことなるので、そのニーズに合う値付けをすることが大切です。また、これらの値付けは、テーブルの稼働率も加味して瞬間最大売上を望むことができる値付けにすることが大切です。単価が低くてもテーブル稼働が高ければ、一日の産み出す価値が最大化できるからです。 値付けは店のコンセプトをよく斟酌してビジネスモデルにあう値付けをしなければならないのです。このことは、私の「儲かる値付け」を学ぶ前に押さえておいていただきたい原則です。 では、コラムを振り返ってみましょう。まずは、第一回目のコラム「あなたが値引きに走るのは価格戦略を知らないからだ」からスタートしていきましょう。第一回目は価格決定権の話で、値付けは市場環境で変わるという話です。供給が需要を上回るまでは、売り手に価格決定権がありますが、徐々に競合他社の出現して、店が選べるようになり過当競争が始まると価格の主導権は消費者に移ります。その需要と供給の原則からスタートしています。 そして、三回目では、高い価格を認識していただくために大切な、おいしさの落としどころの話があります。わかりやすいおいしさは、消費者を「やすい、うまい」という視点から、高単価に誘導する一歩のなります。この一歩でお客様と信頼関係を築き、顧客教育を始めます。三種同時対比、二種同時対比を駆使します。そして、顧客教育を通してアップセルをして、高い商品へ誘導していきます。顧客教育を始める前に“たしなむ(嗜む)”行為を誘発する、下限価格の品揃えについて六回目に触れています。最初は有名で安いラインナップからスタートして、同時対比でプレミアムに誘導することが大切でしたね。 では日経レストランで連載していた過去のコラムで振り返りましょう。大久保一彦の本【中古】 善の循環経営 人口減少時代を生き抜くメソッド/大久保一彦【著】
2024.01.03
冬の連続講座 値付けのポイント その1~会報『四方よし通信』 2016年2月号より値付けのポイント 外食産業をビジネスモデルの性質に基づき分類すると、商圏ニーズ対応型と理想追求型(未来像共有型)の二つのタイプに分類できます。値付けはこのことに対応して、商圏ニーズ対応型の値付けと理想追求型の値付けのふたつのパターンに大きく分類することができます。 商圏ニーズ対応型は、日常生活にある日々の食事需要(胃袋需要狙い)や忘年会などの需要にあわせるタイプでしたね。したがって、ニーズ(予算)ありきで組み立てるため、このニーズが値付けに大きな影響を与えます。値付けで決まってしまうことが多いです。一方、未来像共有型は、消費活動を通じて理想像や文化価値、ライフスタイルなどの提案を通じて、店とお客様とサプライヤー(生産者や流通業者)の間で共有する価値観を広めていくタイプです。ものの普及がひと一段落した成熟社会における欲求の高次元化に基づいており、消費者が社会的な存在意義に価値を見出そうとする需要に応えるあり方です。このため、値付けは理想像を追求するという性質から、「いくらなら売れるか」という需要動向よりも、提供する価値に応じて決めるのがセオリーとなります。 しかし、例えば健康に良い食品やあるいは将来残していきたい食材だとしても、消費者が日々の生活に高めの値付けをした食材や料理を取り入れるのはかなり難しいです。良いもの(理想像)とわかっていても、多くの人は消費の段階では現実的になり、妥協して“後戻り”してしまうでしょう。それは、理想像を理解するための日々の学びが必要で、さらに習慣化するには時間がかかることを意味します。そのため、理想像追求型のビジネスモデルでも当初は商圏内のニーズに対応して基盤を固めて、お客様そのものの母数を広げなければなりません。母数が広がったら、共有した価値観を体現する料理やドリンクなどを理解してもらうような顧客教育を行い、理想像に近づけていくという手順を踏む必要があります。大久保一彦の本【中古】 成功する小さな飲食店の始め方/大久保一彦,小山雅明【共著】
2024.01.03
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その18~会報『四方よし通信』 2016年1月号より2 利用客の分析2-2 顧客の階層と顧客の特徴、利用動機顧客がどれくらいいて、どのよう来店をしているのかをつかむこともとても大切です。住宅地商圏の場合は、時間経過とともに徐々に顧客が増えます。①顧客の特徴をつかむアンケート 顧客比率Q1 当店のご来店は何度目ですか? 初めて・ 2回目・ 3回目・ 4回目・ 5回目・ 6~9回目・ 10回以上 このアンケートは新規客の比率をつかむとともに、顧客の利用状況をつかむことができます。もちろん、「初めて」に印をつけた人以外が顧客ですが、回答いただいた方の中での比率を計算すると顧客の利用段階に応じた比率がわかります。②顧客の特徴をつかむアンケート 前回利用=利用間隔Q6 当店を利用したことがあるお客様に伺います。前回のご来店はいつごろですか? ①数日以内 ②1週間以内 ③2週間以内 ④1カ月以内 ⑤数か月以内 ⑥半年以内 ⑦1年以内 ⑧記憶にない このアンケートによって、前回利用がわかります。それによって、利用間隔、つまり、利用頻度を知ることができます。③顧客の特徴をつかむ」アンケート お得意様カード例お名前 住所 都・道・府・県 市 区 (番地) (マンション名など) 号室電話 ( ) ― お好きなお料理、食材 アレルギー、苦手な食材・お料理 ご来店日 年 月 日 曜日 二度以上利用している人は店のことを気にっていただいている人です。そのため、お客様カードを使ってお客様情報を早い段階でつかみ、お客様との接触をはかることはとても大切です。大久保一彦の本【中古】非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式 [単行本(ソフトカバー)] 大久保一彦「1000円ポッキリ」「送料無料」「買い回り」
2024.01.02
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その17~会報『四方よし通信』 2016年1月号より2 利用客の分析 最後に、店舗展開しようとする店を運営している場合、あるいは開業後の検証で重要なターゲット分析の仕方を説明しておきましょう。基本的にアンケートを活用します。2-1 新規客の比率と新規客の利用動機 新規客がどれくらい取り込めているかを開業後から分析することは大切です。住宅地商圏の場合は、時間経過とともに徐々に新規客の取り込みが少なくなります。①新規客の特徴をつかむアンケート 新規客比率Q1 当店のご来店は何度目ですか? 初めて・ 2回目・ 3回目・ 4回目・ 5回目・ 6~9回目・ 10回以上 このアンケートはターゲット検証の第一歩となるアンケートです。もちろん、「初めて」に印をつけた人が新規客ですが、回答いただいた方の中での比率を計算すると新規客の比率がわかります。②新規客の特徴をつかむアンケート 発見のきっかけQ2 当店をどのようにお知りになりましたか?店舗を見て ・チラシ ・ホームページ ・食べログ ・ぐるなび ・ホットペッパー知人の紹介 ・家族の紹介③新規客の特徴をつかむアンケート 発見のきっかけQ3 ご来店の目的を教えてください家族との食事 ・恋人との食事 ・会社の同僚との食事 ・会社の飲み会友人の飲み会 ・同窓会 ・歓迎会 ・送迎会 ④新規客の特徴をつかむアンケート 来店の決め手Q4 あなたが当店を利用するのに重要だと思うことにレを入れてください。(いくつでも) □350円以内で食べることができる □500円以内で食べることができる □ボリュームがある □そこそこうまい □ざるそばが十割そばである □商品の提供が速い □食べるのに時間がかからない □すぐ食べられる □あいさつが丁寧 □スタッフが元気よい □スタッフが笑顔である □ベテラン社員がいる □店が綺麗 □トイレが綺麗 □席が見えないQ5でチェックした項目のうち特に重要なものを3つお選びください □350円以内で食べることができる □500円以内で食べることができる □ボリュームがある □そこそこうまい □ざるそばが十割そばである □商品の提供が速い □食べるのに時間がかからない □すぐ食べられる □あいさつが丁寧 □スタッフが元気よい □スタッフが笑顔である □ベテラン社員がいる □店が綺麗 □トイレが綺麗 □席が見えない大久保一彦の本【中古】 儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術 飲食店完全バイブル/大久保一彦【著】,日経レストラン【編】
2024.01.02
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その16~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-3-1 縦のレイアウトのコンセプトシートの使い方 その4④お客様が得られるコト お客様が得られるコトは、左側のそこで過ごす空間や時間、お客様の印象(感じた情緒的な価値)、料理の経験などの実質的な価値を記入した上で、総括してください。情緒的な価値と実質的な価値をわかりやすい言葉で表現すると“安心”と“安全”です。消費者は食に敏感だとよく言いますが、多くの場合、意味するものは安心感であって、本当の安全ではありません。そのため、企業イメージを高める施策偏重の傾向があるとかじる方も少なくないと思います。大久保一彦の本売上が倍増する! アンケートの作り方・活かし方【電子書籍】[ 大久保一彦 ]
2023.12.30
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その15~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-3-1 縦のレイアウトのコンセプトシートの使い方 その3③店舗の方向性を決める 店舗のミッションが決まったところで、店づくりをどうするのか、そのロードマップを作成するのがその下の「外観・エントランス」以下のところです。それぞれの方向性を文章で表現しましょう。前回の続きⅳ)サービス サービスの方向性はどういうコミュニケーションをするか、どういう人を採用するかに関わります。タイプとしては、元気で活気あるサービス、思いやり(ギブ&ギブ)のあるサービス、セリフ仕立ての劇場型サービス、料理人によるサービス、全員ソムリエによるサービス、気を使わせないサービス、下駄ばき間隔で来店しやすいしすぎないサービスなどいろいろあります。ⅴ)商品、料理 商品が料理とは限りません。カフェのようにそこで過ごす時間が重要であり、その表現アイテムのひとつとしてコーヒーやカフェラテがあるという場合もあるでしょう。ただ、多くの店は料理に独自性を求めることが多いでしょう。その時に大切なことが料理のコンセプトです。この料理のコンセプトに基づき、「何はやるけど何はやらない」という線引きをしっかりすることはとても大切なのです。 例えば、今、躍進しているセオリー社の『方舟』の開業サポートで、「日本酒を売りたいなら、随時100種揃えるといい」と私はアドバイスしましたが、この100種類というのが、「日本酒の店だ」と物を言わせない品揃えのキーだと考えたためそう言いました。当時珍しかった、郷土色を出すという品揃えにも、他のものを置きたくても「北陸三県以外おかないほうがいい」とアドバイスしました。実際には、原誠志社長は新潟までエリアを広げて四県で品揃えしましたが、このような隙のない品揃えが、似たような競合を発生させにくくして、独自性をより強く感じさせると言えるでしょう。 店舗のミッションが「野草を知っていただきたい」のような今までにないものや、概念的なものにするならば、料理の構成の中に野草に興味を持つ印象的な皿や野草のおいしさや違いを認知する対比の皿を入れる必要があります。サイドリーディングにこちらのリンクをどうぞこちらに続く大久保一彦の本【中古】 この「気づき」で売上げがガンガン上がった! 知的生きかた文庫/大久保一彦【著】
2023.12.29
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その14~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-3-1 縦のレイアウトのコンセプトシートの使い方 その2前回の続き③店舗の方向性を決める 店舗のミッションが決まったところで、店づくりをどうするのか、そのロードマップを作成するのがその下の「外観・エントランス」以下のところです。それぞれの方向性を文章で表現しましょう。ⅰ)アプローチを含めた外観、エントランス まず、アプローチを含めた外観(顔)、エントランスはどんな印象がいいか。以前旅した、今は閉鎖されてしまったマルク・ヴェラの『オーベルジュ・レリダン』はフランスの避暑地アヌシーにありました。アヌシーの中心地の湖畔を10分ほど走ると、いきなり、ホテルのようなオーベルジュが出現するという設定です。入口を入るとどこか田舎のログハウス風のレセプションや売店があり、山奥にある田舎のレストランの雰囲気を感じます。ⅱ)店やシェフの特徴を伝える愛称 店のショルダーネームやシェフの特徴も重要でしょう。マルク・ヴェラは“香草の魔術師”とか“アヌシーの怪人”というニックネームがありました。シルクハット(正確にはサヴォアの羊飼いの帽子)を常時着用して、フランソワと野草を相手に新奇な料理を生み出す様がそう呼ばせたのだと思います。注射器や試験管など次々に新しい道具を産みだし、料理を再構築した偉業は『エルブリ』のフェラン・アドリアに引き継がれたのかもしれません。ⅲ)雰囲気 雰囲気は情緒的なものです。内装はもちろん、そこにいる人やあるものすべてを駆使して組み上げます。『オーベルジュ・レリダン』はエントランスから狭い、農家の家のような階段を降りるのがまず最初のしかけになっています。高級レストランではメインダニングまでどうアプローチをつくるかは大きなテーマでしょう。特に時代の安い田舎であればその演出がとても重要になります。その階段を降りると木の温もりがあるメイン・ダイニングです。印象的なのは、湖畔に向いたガラスの解放感です。そして、これから提供されます料理のお皿もガラスを有効に活用します。食卓の食器はとにかくユニークです。また、パンのワゴンなど小物もとてもユニークかつシンボリックです。そこで、野草のインスピレーションを活かした再構築の料理が提供されます。サイドリーディングにこちらのリンクをどうぞこちらに続く大久保一彦の本【中古】 非常識に稼ぐ飲食店がやっている「最高のチーム」を作るルール/大久保一彦(著者)
2023.12.28
事例 『オーベルジュ・レリダン』 2006年のコラムより~今回は、もう店は無くなってしまいましたが、本文にも登場しますマルク・ヴェラの伝説のレストランを少し古い訪問ですが、当時のまま紹介しましょう。 ジュネーブから高速道を30分ほど南下したところにランスの隠れた避暑地アヌシー湖がある。その湖の北側に三ツ星レストランオーベジュ・レリダンがある。ここのオーナーシェフ マルク・ヴェラ(Marc Veyrat)は香草の魔術師として知られている。マルク・ヴェラ氏はいつもシルクハットをしている。メインダイニングの扉を開ける農家の民家風の内装が広がる。そして、その横には売店があり、売店を通りぬけると、地下に通じる階段がある。着席する前だが、もう、ストーリーは始まっている。まず、麦穂がうまくディスプレイしてある。一段、一段、降りて行くとと水の音が聞こえる。そして、木の階段を降りきるとそこには、民家風の内装が広がる。石に木材、その下からシダが覗いている。そして、湖を望む席は光の演出がされており、大きなガラスがひときわ目立っています。民家風でありながら大きなガラスと融合している。そして、いたるところに植物のぬくもりがある。テーブルに、グラスが斜め一直線にセッティングされているのいがおもしろいなと思った。「うむ、これは期待できそう!」 まずはグラスシャンパンでのどを潤す。テタンジェ85年、シャルドネだけで作ったシャンパーニュ。料理は、シンフォニーなるデギュスタシオンを注文。デギュスタシオンとは新婚旅行など一生に一回しか来店しないお客様に、自分の味を体験してもらうためのメニューである。早速、アミューズが。しかし、このアミューズはちょっと違う。香りをかぐだけ!食べないアミューズなのだ。ローズマリーを主体とした香り、五感を刺激しようというのだろか・・・私たちはサボアのワインを頼むことにした。プィイ・フィッセのデミとサボアの赤である。サボアのワインとて安いわけではない!これには驚く。(実際、その後に訪れたレジス・マルコンはなんと割安に感じたことか・・・)続いて、パレットに乗ったアミューズが登場する。野草づくしだ。この時は友フランソワ・クープランがマルク・ヴェラと協業していたとは知るよしもなかった。特に印象的だったのが階段の内装で使っていたシダがスープにあしらってあることだ。そのスープは、なんとも不思議な味わいだ・・・続いて、木のワゴンで演出されたパンのワゴンサービス。まさに「できたて」って雰囲気が漲っている。三ツ星レストランの演出は、パンのサービスまで違う。トータルコーディネートの場合、部品ひとつ欠けてもだめなのだ。すべてに一貫性がある。続いて、「サービスだ」と陰干しのワインが提供される。ということは、やはりフォアグラだろう。フォアグラは二種同時対比で提供される。左は泡立てた玉子フランで、クリームの茶碗蒸しのような一品。がりっとくる岩塩はまさに脳ポイント。少し塩味が強いが、陰干しのワインの甘味が和らげてくれる。右がフォアグラのポワレである。このソースアニス風味のビネグレット・オイルだが、陰干しのワインと香りの微妙な対比ができる。3皿目が野の恵み食べ比べだ。人参にはラズベリーのソース、アーティチョークには胡桃のソース、トマトにはピスタチオのソースだ。味わいは、「????」(うむ、段々、難解な料理に入ってきている)わかったのは、対比、対比、対比・・・ということ。4皿目は、パスタに見立てたパプリカのエスプーマ仕立てだ。パルメザンチーズのアクセントが濃厚だ。以前のチーズのパスタがこれになったと思われる。ここでテーブルに奇妙なカトラリーが置かれた。桑の形をしたフォークだ。そして、ついに、注射器の料理、登場!レジス・マルコンにして、「料理に注射器など必要ない」と言わしめた料理が登場だ。卵の黄身に突き刺す。それをパンと、内側にがりがり砂糖の焼き菓子?につけて食べるというもの。これもやはり、対比だ!がりっとくる砂糖にこの酸味が確かにマッチしている。 ここで香草の魔術師登場!やはりハットは欠かせない。写真を撮りたいというと、快くオーケー!「はい、チーズ!」「おい、おい、ちゃんとフラッシュ焚かないとダメだ!」と、ヴェラ氏。彼は、自分の商品価値がわかっている。焚かなくて撮れる高性能デジカメだが、やむを得ず強制発光モードに設定変更し、「はい、ポーズ」何度も何度も、握手をしているヴェラ氏であった。さて、料理はここから、ガラスを使った食器で提供されていくことになる。内装との融合を考えているのだろう!すべて、この店オリジナルだ。まず、はけでソースを塗る淡水魚とパルジャーノ・レッジャーノのリゾットの団子だ。これは普通にうまい。次の皿はスープに変身のチーズ(大久保命名)。この、スープ皿素敵のひとこと!それをスモークした松ボックリで食べるというしかけ。チーズと松ぼっくりで、鰹節のような味と風味に変身!!続いては、スモークした木の上に載せた鱒。皮がくるくると巻いてある。その中に、野菜が入っているしかけだ。葉っぱのようなガラスの食器が鮮やか!そこに試験管に入った、酸味の効いたソースをかけてくれるという嗜好だ。次も試験管の料理。布に包んで蒸し焼きにしたパーチに、赤い茎の歯ごたえのあるハーブ添え。まるで、実験室のようだ。続いてがエクルビスのフォンデュスタイル(右)。ガラスの窪んだ皿に、ピンチョスをつけて食べるというもの。次がオマール食べ比べ。三角形のガスの器に、甘さのグラデーションを対比して食べる。「う、あまー」と、滝沢さん。口直しが、ホワイトチョコみたいな、バターに包まれたアーティチョーク。「ひしゃくで一気にお召し上がり下さい!」そしてきのこの香りのマッシュポテトが出て、次が、また奇妙な瓶詰めにされた、マンゴー・ジュースのようなソーダ。これをタンブラーに移して飲む!もはや、????そして、いよいよメインディッシュ。私は鶏のパイ包み焼き、香草風味、滝沢さんはカカオ風味の牛ヒレ。牛ヒレは、甘さを抑えたチョコレートをのせるとインパクトが出るしくみ。こちらがが鶏。こちらは滝沢さんの頼んだ牛。そして圧巻は、デザート!エンドレスで出てくる。昨年のクレムブリュレはヨーグルトに変身していた。ティラミスの微妙な食べ比べです。ティラミスとコーヒーのムース対角線に二種類一緒に食べるとティラミスに変身するという仕掛けだ。 「何種類出るんだ、この野郎!」ととなりのおじいさんがうんざり顔で私に目線を送っている!マルク・ベイラ劇場は驚きで幕を閉じた。
2023.12.28
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その13~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-3-1 縦のレイアウトのコンセプトシートの使い方①想いをまとめてみる まず、一番上の社長の想いに、自分の未来像を書いてみましょう。未来像は、若ければ「夢」、すなわちそうありたいこと、実現したいことです。ただし、“独立開業”は通過点であって、ゴールではありません。「店を通して何を実現したいか」を考えます。「野草で人類の食糧難を解決したい」これは私の友人フランソワ・クープランの想いです。②想いに基づきミッション(任務)を考える 続いては想いを実現するためにあなたはどんな任務(ミッション)を負うのかを考えます。フランワ・クープランは「兎に角、多くの人に知ってもらうことだ」と考え、料理教室を始めました。そして、スピード感を出すためにミシュランの星付きレストランのスターシェフと組むようになりました。代表がミシュランの三ツ星レストランを二件、ゴーミヨーで満点を獲った唯一無二のグランシェフ、マルク・ヴェラです。
2023.12.27
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その12~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-3 やりたいことありきのコンセプトの導き方 「生きるためにする糧は、心の糧にならない」これは、鍵山秀三郎氏が私に宛てて著書に書いていただいた言葉です。人は生きていると自分の役割に気づくことや社会性に目指すことがあります。若ければ夢に向かって行くでしょう。お金に苦労しなければ、やりたいこと、あるいはやるべきこと、使命などをベースに仕事をすることはとてもやりがいがあります。この場合は、弟子のタルイさんが作成してくれた下記のの縦のレイアウトのコンセプトシートを使います。
2023.12.27
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その11~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-2-2 想定するニーズのある場所を探す この場所探しが難しいですね。立地、商圏の質・量、条件、大きさなどドンピシャな案件は本当に少ないです。まずは、同業種で繁盛しているいろいろなお店を回り、その中からどんな場所が良いのかのイメージを持ちます。次にそのエリアをしっかり歩いてみてアンテナを張ることが重要です。また、物件は出物です。いい物件ほどスピード勝負になっています。これと思う物件に出会ったら素早い決断が必要となります。そのため、店舗開発には、絞り込みと条件面の可否のラインを決めておく必要があります。大久保一彦の本誰も言わなかった!飲食店成功の秘密 [ 大久保一彦 ]
2023.12.27
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その10~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-2 ニーズありきの場合のコンセプトの導きだし方 もうすでに展開している店舗の2号店、3号店を出すような多店舗化の場合や、先に狙うべきニーズが明確にある場合はもよくあるでしょう。この場合はニーズに合う場所を探さないといけません。ただし、なかなかドンピシャの場所はありません。立地や商圏の個別的事情を斟酌して、若干の軌道修正が必要な場合も多いでしょう。1-2-1 ニーズの導き方 「なぜ、うちの店が繁盛しているか分析して欲しい」こんなコンサルティングの依頼がよくあります。2号店を出す、3号店という場合は、そのお店を徹底的に検証してどんなターゲットのどんなニーズを満たしているかを徹底的に検証します。方法としては既存客にアンケートを行うのがいい方法です。新規客、顧客に分けてアンケートを実施して、アンケート結果をクロス分析を行います。まだ、店が無い場合でも狙いどころのニーズがある場合は、そのニーズをより具体的にしてターゲットを明確にします。自分の満たしたいニーズを満たしている店をベンチマークするのが一番いい方法だと言えるでしょう。大久保一彦の本【中古】 行列ができる店はどこが違うのか 飲食店の心理学 ちくま新書/大久保一彦【著】
2023.12.27
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その9~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 コンセプトマップ横の活用 そこで、ニーズのすり合わせをするためにコンセプトマップ横を活用します。まず、一番下にある弟子のタルイさんが作成した図をご覧ください。左側の生活者の下のターゲットの部分に、狙うべきターゲットを書きます。その横の利用動機・利用目的には、ターゲットに連動する利用動機や利用目的を書きます。例えば、ターゲットを買い物客としたなら「買い物のランチ」、恋人と記念日でしたら「記念日」とか「誕生日」と入れます。右側は、お店側の話で、強みを踏まえて記入します。いかに独自性を強みにできるかがポイントです。下側の時間コンセプトには、お客様が店で過ごす時間のコンセプトを昼、夜分けて書きます。また、どこからか引っ張ってくる部分も重要な要素な場合は、その事情も書きましょう。例えば、「ディズニーランド帰りのちょい飲み」のような感じです。最後に、真ん中でお客様の「〇〇したい」と店側の「〇〇できます」で摺りあわせます。大久保一彦の本【中古】 成功する小さな飲食店の始め方 / 大久保 一彦, 小山 雅明 / 西東社 [単行本]【ネコポス発送】
2023.12.26
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その8~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順④コンセプト決定 コンセプトは、ニーズと経営資源を元に狙うべきターゲットの利用動機を踏まえて具現化します。ニーズとは、店舗の立地、商圏から発生する固有のもので、ターゲットが明確になればなるほど具体的なニーズを掘り起こすことができます。そのニーズに対して、経営資源を元にオファーを摺りあわせます。 経営資源とは、経営サイドが持っている技術、経験、準備したり勉強したりしたこと、口が渇くまでいつまでも熱く語ることができるもの、それから私のような外部ブレインの強みです。ノウハウはお金で買える面がありますので、資金があることは選択肢を広げます。いずれにせよ、飲食店はオーバーストアの状態にありますので、最終的にその店固有の強みになりうるものでないといけません。大久保一彦の本【中古】いつも予約でいっぱいの「評価の高い飲食店」は何をしているのか /ぱる出版/大久保一彦(単行本)
2023.12.26
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その7~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順③ターゲティング ②で分類してイメージした見込み客の集団から狙いどころとなるターゲットを決めます。ターゲットはメインひとつ、サブふたつくらい想定すると良いでしょう。そして、そのターゲットを狙った場合、自分は業界の中でどんなポジションになるのか、ポジショニングマップを作ってみましょう。大久保一彦の本【中古】 行列ができる店はどこが違うのか 飲食店の心理学 ちくま新書/大久保一彦【著】
2023.12.26
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その6~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順②セグメント ①の見込み客の調査を元に分類してみます。分類の方法としては、住民統計や年齢、性別だけでなく、立地から得られる仮説を二つ以上組み合わせて、マッピングしてみます。例えば、年齢×性別×職種のような感じにです。狙いどころを決めるにあたってどんな切り口の人が見込み客になるかを考えるわけです。大久保一彦の本【中古】 繁盛力 女性リピーターが収益を運び込む! / 大久保一彦 / WAVE出版 [単行本(ソフトカバー)]【宅配便出荷】
2023.12.22
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その5~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順①どんな見込み客がいるかリサーチⅲ)足元商圏の調査足元商圏の調査をするには、住宅地図、コンパス、市町村が調べている人口統計を利用します。では調査の手順をみていきましょう。STEP1 商圏確定 まず、住宅地図に徒歩5分にあたる直線距離の350mをコンパスで印をつけましょう。その上で、実際に店舗を基点に四方八方に歩いて、5分のところに印を打ち、あらゆる方角に歩いたら、線で結び、5分圏を確定します。STEP2 商圏ボリュームを計算 商圏ボリュームは、人口統計を使って、地図にかかっている町の人数を算出します。線よりはみ出ているエリアはかかっている部分を按分して計算します。STEP3 競合店を調査 その後、商圏内の競合店を調査します。流行っている店があれば入ってみましょう。その商圏でどんな店が受けるかヒントがあると思います。STEP4 “凄い”戸別訪問 できれば見込み客を見つけるために凄い戸別訪問をしてください。参考:『非常識に稼ぐ 飲食店がやっている「最高のチーム」を作るルール』(ぱる出版) P15~P58参照大久保一彦の本【中古】 非常識に稼ぐ飲食店がやっている「最高のチーム」を作るルール/大久保一彦(著者)
2023.12.22
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その4~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順①どんな見込み客がいるかリサーチ前回より続くⅱ)店前通行者の量 店前通行者の量(店前通行量)は、営業可能時間帯を、三点法でで実測します。三点法とは、測定者自身と基準点二箇所を通過した人をカウントする方法です。測量にはカウンターを用意して、各時間2セグメント5分間づつ、複数回調べます。集計表は下記表を参考にしてください。各時間帯複数回測定したら、その平均値を計算して、一時間あたりに換算します。平日、土曜日、日曜日に分けて実施しましょう。天候などもありますので、日数を多くやると標準誤差が少なくなります。大久保一彦の本【中古】 誰も教えてくれないカフェの始め方・儲け方 簡単にできる!利益率が高い!/大久保一彦(著者),工藤昌幸(著者)
2023.12.22
商品研究 「ヨシヅヤ」の惣菜売場に陳列しています「まんぷく握り」本体価格550円こちらの画像は「ヨシヅヤ」の惣菜売場に陳列しています「まんぷく握り」本体価格550円 税込594円です。食品売場のランチ需要に対応した商品。昔、「新宿さぼてん」にいたころ、ひとくちヒレカツがふたつ入った弁当を「ヒレカツ弁当」として、通常売価税別550円を税込500円にしてGMSの食品売場でランチ需要を取り込むことができて各店舗で100個以上売ることができたことを思い出しました。500円って何年たってもランチ弁当のポケットプライスなんですね。そんなことを思い出しました。
2023.12.14
渓泉閣 @三朝温泉 ~シャリアピンステーキのランチ お昼は『渓泉閣』で用意いただいたステーキでランチをします。おや、食べるプラスチックか・・・そう言えば、病院でも出てましたね。2024年は海外の高級ホテルがくるので、トランス脂肪酸などにも注目が集まるかもしれませんね。シャリアピンステーキ。まさにタレで食べるご飯のおかずですね。これをFacebookに投稿したところ老舗高級ホテルで食べたけどおいしくなかったとコメントいただきあました。それに対して私は下記のようにコメントしました。あえてアンガスビーフを使ってタレで食べさせる勇気と覚悟が必要ですね。それと私の著書「貧乏人にタレを売れ!」を読んで頂かないとあきません。こちらの洋食出身の料理長、なかなか腕がよくて、火入れ完璧、ソース(タレ)もうまい。ただし、その料理には提供するのに向く利用シーンがあり、それがお客様の利用動機を決めます。アンガス牛を使ったこちらステーキは提供価格もそれなりに安い価格にできるので、それなりのボリュームのある立地で近くからよく来るリピーターを相手にするなら最高でな料理です。仮に「但馬玄」を使うなら、「但馬玄」を食べにわざわざやってくる人を狙う店作りが必要になります。渓泉閣〒682-0122 鳥取県東伯郡三朝町山田1800858-43-0828
2023.12.13
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その6~会報『四方よし通信』 2016年1月号より前回より続く②セグメント ①の見込み客の調査を元に分類してみます。分類の方法としては、住民統計や年齢、性別だけでなく、立地から得られる仮説を二つ以上組み合わせて、マッピングしてみます。例えば、年齢×性別×職種のような感じにです。狙いどころを決めるにあたってどんな切り口の人が見込み客になるかを考えるわけです。③ターゲティング ②で分類してイメージした見込み客の集団から狙いどころとなるターゲットを決めます。ターゲットはメインひとつ、サブふたつくらい想定すると良いでしょう。そして、そのターゲットを狙った場合、自分は業界の中でどんなポジションになるのか、ポジショニングマップを作ってみましょう。④コンセプト決定 コンセプトは、ニーズと経営資源を元に狙うべきターゲットの利用動機を踏まえて具現化します。ニーズとは、店舗の立地、商圏から発生する固有のもので、ターゲットが明確になればなるほど具体的なニーズを掘り起こすことができます。そのニーズに対して、経営資源を元にオファーを摺りあわせます。経営資源とは、経営サイドが持っている技術、経験、準備したり勉強したりしたこと、口が渇くまでいつまでも熱く語ることができるもの、それから私のような外部ブレインの強みです。ノウハウはお金で買える面がありますので、資金があることは選択肢を広げます。いずれにせよ、飲食店はオーバーストアの状態にありますので、最終的にその店固有の強みになりうるものでないといけません。大久保一彦の本善の循環経営【電子書籍】[ 大久保一彦 ]
2023.12.10
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その5~会報『四方よし通信』 2016年1月号よりⅲ)足元商圏の調査足元商圏の調査をするには、住宅地図、コンパス、市町村が調べている人口統計を利用します。では調査の手順をみていきましょう。STEP1 商圏確定 まず、住宅地図に徒歩5分にあたる直線距離の350mをコンパスで印をつけましょう。その上で、実際に店舗を基点に四方八方に歩いて、5分のところに印を打ち、あらゆる方角に歩いたら、線で結び、5分圏を確定します。STEP2 商圏ボリュームを計算 商圏ボリュームは、人口統計を使って、地図にかかっている町の人数を算出します。線よりはみ出ているエリアはかかっている部分を按分して計算します。STEP3 競合店を調査 その後、商圏内の競合店を調査します。流行っている店があれば入ってみましょう。その商圏でどんな店が受けるかヒントがあると思います。STEP4 “凄い”戸別訪問 できれば見込み客を見つけるために凄い戸別訪問をしてください。参考:『非常識に稼ぐ 飲食店がやっている「最高のチーム」を作るルール』(ぱる出版) P15~P58参照次回に続く大久保一彦の本非常識に稼いでいる飲食店だけがやっている儲けのルール / 大久保一彦 【本】
2023.12.09
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その4~会報『四方よし通信』 2016年1月号よりⅱ)店前通行者の量 店前通行者の量(店前通行量)は、営業可能時間帯を、三点法でで実測します。三点法とは、測定者自身と基準点二箇所を通過した人をカウントする方法です。測量にはカウンターを用意して、各時間2セグメント5分間づつ、複数回調べます。集計表は下記表を参考にしてください。各時間帯複数回測定したら、その平均値を計算して、一時間あたりに換算します。平日、土曜日、日曜日に分けて実施しましょう。天候などもありますので、日数を多くやると標準誤差が少なくなります。大久保一彦の本【中古】 行列ができる店はどこが違うのか 飲食店の心理学 ちくま新書/大久保一彦【著】
2023.12.08
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その3~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1-1-2 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトメイクの手順は、①どんな見込み客がいるかリサーチ、②セグメント、③ターゲット選定、④コンセプト決定となります。では、順番に見ていきましょう。①どんな見込み客がいるかリサーチⅰ)店前通行者の質店前通行者は質と量を分析ます。 質は交通を発生する施設TG(交通発生源)から導線を分析します。TGについては以前も講義しましたが、人は移動する時に必ず、通過ポイントを決めて移動することに着目して、駅のように人が目的にしやすい施設(交通発生源)を探して、その間のニーズをさぐるものです。実はこの類のTGからTGへ向かう人がどんな人なのかを考えると、そこにあるニーズや店舗の利用動機を逆算することができるのです。 例えば、駅以外のTGを消費という側面で見ると大きく分けて四つのタイプに分類できます。東京ドームやディズニーランド、美術館などのような娯楽施設、百貨店のようなショッピング施設、スーパーのような買い出し施設、オフィスビル・学校のような職場・学校です。その他、病院、役所などがあります。 東京ドームやディズニーランド、美術館などのような娯楽施設、百貨店のようなショッピング施設はお金を使いにきていますから、駅からこの類のTGに向かう人はお金を消費する傾向があります。逆に、オフィスビル・学校のような職場・学校に向かう人は、日常のランチの需要、カフェなどの時間つぶし需要、ちょい飲みの需要などが主で、駅からオフィス街や学校を結ぶ道路には、このようなタイプの店が殆どである場合も多いでしょう。本日のおすすめ実践!「繁盛立地」の判定・分析・売上予測[本/雑誌] (DO) / 林原琢磨/著 林原安徳/監修立地は怖くない【電子書籍】[ 林原安徳 ]
2023.12.07
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その2~会報『四方よし通信』 2016年1月号より1 ショップコンセプトの導き方 0-1での項目でビジネスモデルのパターンは大きく分けるとふたつあるとお話ししました。このことに連動して、開業時においては、ショップ・コンセプトの導き方は、下記のふたつの起点からふたつのパターンに大別できます。・店舗の場所(物件)ありき・やりたいことありきそして、この二つの要素に大きな影響を与えるのが“開業予算”など経営資源から発生する制約条件です。では、それぞれをみていきましょう。1-1 店舗の場所(物件)ありきの場合のコンセプトの導きだし方1-1-1 立地・商圏という制約 私が、店をプロデュースするを依頼されて、話がかみ合わないことがよくあります。それは、立地という制約をクライアントさんが忘れてしまうということです。先に結論を申し上げますと、店の場所を決めてしまうとできることが決まってしまいます。いくらやりたいことがあっても、その店の立地や条件ではできなくなるのです。開業をお手伝いする上で、場所が決まっていて、柔軟なかたなら話は簡単ですが、やりたいことがある人は少しややこしいです。やりたいことをやるのに必要な見込み客がいないという環境もあるからです。まずは、その話をしましょう。 見込み客の中で一番取り込みやすいのは目の前を歩いている人です。お店を知っていただくという集客においてとても難しいハードルがないからです。差し迫ったニーズさえあれば、一度は取り込めます。次に見込み客の中で取り込みやすいのが、近くにいる人でしょう。近くにいると言えるのは店舗までの移動時間が5分~10分(足元商圏)です。この人たちになんらかの外食ニーズがあり、店選びのプロセスで思い出せば(有力な選択肢)にあげられれば、来店いただきます。ちなみに、そのために、脳科学的には、脳の“海馬”に刷り込むことが重要だという話を2014年12月号でしましたね。また、『食べログ』や『ぐるなび』対策の手法をたびたび紹介してきておりますが、このこともこの店選びのプロセスで優位にたつことにあたります。 一方、一見すると良さそうに思える不特定多数の人があるいている一等地の一階店舗だと、誰でも来店してしまう環境があり、また、賃料が高いこともありわかりやすい店しか作りにくいです。一等地であるがゆえに思うことができない場合があります。逆に、住宅地立地のように限られた人しかいないような場所だと、単価の低い薄利多売ビジネスモデルや真新しいビジネスモデルは成り立ちにくいです。また、二階以上の空中店舗や地下に店舗があると目的がないと来店しなくなり、衝動来店のお客様を取り込むことは、スターバックスのような知名度がないと厳しいです。入口がセットバックしている物件も同様に目的意識が必要になります。さらに、目的来店の隠れ家的な店の場合は滞留時間が長く、客席回転率は高くなりません。これらが、立地から発生する制約です。立地が決まっているとこれらの事情をふまえて、多くの場合はやりたいことをある程度妥協しなければなりません。立地固有のニーズや利用動機にあわせて店を作る必要があるのです。このことはある程度店舗をやっていないとわかりにくいことなんだと思います。つまり、これが冒頭の私とクライアントで価値観が共有できないところなのです。だから、こそ、私の言ったことを盲信的にやっている人がうまくいくのかも知れません。大久保一彦の本売上が倍増する! アンケートの作り方・活かし方【電子書籍】[ 大久保一彦 ]〔予約〕文豪ナツメは料理人が嫌い 3 /松本渚/久部緑郎/大久保一彦【1000円以上送料無料】
2023.12.06
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その1-2 前回の続き 生産年齢人口の激減はこれまでの常識や基盤が意味を為さなくなるということを意味する反面、リポジショニングや創業のチャンスです。先月でもふれましたが、男女雇用機会均等法とバブル崩壊により過剰な労働力が供給された結果、これまでの外食産業のビジネスモデルができたわけです。しかし、これは大量の低所得者を創り出しました。その結果、日本経済に光は見えず、デフレスパイラルに拍車がかかり、お金が回らなくなっています。 しかし、見方を変えて、安倍政権が掲げている「一億総活躍」という言葉を借りるならば、これまでにない視点で、これまでにない雇用をこれまでにない生産性と高い実質賃金にて創りだせば道は開けるのです。そのために必要な柱がミッションあるいは私の言葉でいう未来像、あるいは理念(理想+信念)です。そして、ミッションあるいは未来像あるいは経営理念は「(わたしたちは)〇〇のために〇〇をする」という表現になります。 例えば、「授産施設で時給300円くらいで働いていて自立できず、将来に希望を持てない障害者に活躍の場を創りだそう」というミッションを掲げる長野県諏訪市の原さんや、「離婚して子供が小さい貧困女性に活躍ができる環境を創りだそう」というミッションを掲げるようなことが、ビジネスチャンスを生み出すのです。インターネットやスマートフォンの普及で、情報発信、情報交換が容易になりました。これからの時代、未来像が需要になるというのは、未来像で結ばれる関係が仲間を広げるからです。では、早速、コンセプトメイクの講義を進めましょう。大久保一彦の本善の循環経営【電子書籍】[ 大久保一彦 ]
2023.12.05
冬の連続講座 店のロードマップを作ろう その1~会報『四方よし通信』 2016年1月号より0-1 ビジネスモデルのパターン コンセプトを新規に考えたり、リポジショニングしたりするために重要なことはビジネスの本質を理解することです。 外食産業をビジネスの本質に基づき分類すると二つのタイプがあります。まずニーズ対応型で、日常マーケットを狙う胃袋狙いや忘年会などの行事というニーズを狙う場合があります。もうひとつのタイプが、未来像共有型(理想追求型)のビジネスモデルと私が言っているものです。成熟社会において欲求が高次元化して、自分自身の社会的な存在意義に価値を見出すことから生まれるものです。消費活動を通して理想像、文化価値やスタイルなどに共感・共有できる価値を見出し、その欲求を実現します。 ニーズ型は、狙うべきニーズを明確にした上で、そのニーズが起こる場面を想定して、狙うべきターゲット層をきめ細かく具体化してすすめるタイプで、そのターゲットの視点に立って、独自性と事前期待を上回るValue(ヴァリュー)を組み立てます。そして、年間顧客価値(年間に使用する額)を最大化する単価と利用回数の設定をします。ちなみに、日々の売上で一喜一憂するのでは意味がありません。いくつかのグループにわけ、単価設定と利用回数を乗じた数字が最大化できる“個顧客”の年間売上を見出さねばなりません。 例えば、牛丼業態を例にみましょう。リンク先の図参照 牛丼市場は消費税増税後の値付けで市場環境ががらっと変えましたね。牛丼は、税込300円を超えると気軽さが減り、利用動機が大きく変わるという商品特性があるからです。ちなみに、『すき家』の並350円は『ほっかほっか亭』ののり弁の価格340円を、『吉野家』の380円の値付けなら、『Hotto Motto』の税込350円を上回ってしまいました。そのため、『松屋』並290円(関東一都六県はプレミアム牛めしで並380円)は圧倒的なヴァリューとなり優位に働き、2015年11月度で前年同月対比プラス3.5%と高く、いわば一人勝ちになったと言えるでしょう。牛丼のような日々のランチ需要に応えるビジネスモデルなら、利用頻度が高く日常性が高いニーズを想定します。その上で、弁当・店内での利用回数を最大化する単価設定と年間利用回数を考えないといけないのです。ちなみに、スターバックスのように、基本後者に重心を置いた、中間的な位置づけになる折衷型もあります(リンク先の図参照)。この大枠を覚えておくことがとても大切です。 この表は厚生省が毎年発表します、出生数、死亡者数を元に私が、失われる見込み客(65歳以上をターゲットにする店は除く)及び、労働可能人口を算出してみました。安倍政権が発足した2012年から比べるとオリンピックのある2020年には累積で約1000万人の労働可能人口が失われるわけです。現在はその半分の段階です。ここがビジネスモデル構築には大きなカギになるでしょう。ビジネスモデル実現の方法としては、過去講義した内容と重複しましたが下記に列挙します。 ・機械化して少ない人数で運営する (例)自動製麺機・券売機・スマホによる自動精算システム・・生産性の高い現場を実現して、実質賃金を上げてどこよりもよい雇用条件で雇用する (例)社宅・寮完備、託児所と提携・少ない人数でより高い売価×多売のシステムをつくる (例)通販、手土産・今まで雇用されていない人の採用 (例)高齢者、障害者、離婚して子供が小さい女性・起業意欲のある人との未来共有に連鎖的集合体の確立 (例)リスク共有型の暖簾分けこちらに続く大久保一彦の本【中古】 アンケートの作り方・活かし方 売上が倍増する! PHPビジネス新書/大久保一彦【著】
2023.12.05
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