『ラ・フィネス』『ミチノ・ル・トゥールビヨン』勉強会議事録 32
ジェームズオオクボ的視点で選んだ心に残るあの店のあの料理(名物料理百選) 18
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2008年後半の債権バブルの崩壊で、消費者の外食の利用回数減がおきています。そのため、消費をするときに吟味をして店選びをするようになりました。特に高額になればなるほどシビアにチェックされています。 また、弁当を作って職場に出勤する人も出現し、“巣篭もり”と言われるように外食よりもコストパフォーマンスの良い通販などを利用して家で食事や団らんをする人も増えており、今、食事のスタイルが大きく変わりつつあります。しゃぶしゃぶなどは、通販できっちゃんから買えば、それなりのサービスがない店になど行く必要はないですからね。 これにより特別な消費でない場合は予算を下げ、無駄銭を使わなくなりました。ほどほどの値段でほどほどにいい店で業績の悪い店が増えています。それは、回数が激減して、特別な場面を主体に外食を利用するとなると、今までのちょい外食という利用シーンが無くなってしまった店も多いからなのです。 そうなると「なんとなく」という利用動機はなくなり、そのタイプの店の売上は激減します。 安いか、価値ある利用動機にかなう店になるか悩みどころですね。言えるのは安易な価格変更は危険ということ。
2010.08.18
資本主義がもたらしたものに貨幣の流通、すなわちお金という概念があります。 昔は金本位制度でしたから、金と交換をベースに貨幣の価値が決まりました。イギリスのポンド、これは「1ポンド当たり」という意味があります。 産業革命により大量生産が可能になりました。これにより、多くのもの生産し、交換して、お金を蓄積することが可能になりました。 自分の労働と交換でお金を買い、そのお金でものを買う。資本があれば、人の労働と原料から大量のお金を手にする。こんな流れができました。 そして、石油を燃料として、私たちの拡大再生産は大きく進行したのです。 18世紀とは比べものならないくらい人口が増えました。 ものの普及から、サービス業など、ありとあらゆる普及が続きました。 しかし、この拡大再生産は永遠には続かず、今まさに曲がり角にさしかかっています。グローバル競争の時代、大企業をはじめとした企業にコスト削減の圧力が高まり、財政的で余裕が無くなりました。グローバル競争の時代は労働者側からみても、自分の売る労働力の価格競争にさらされています。その結果、冨が下々の人まで再分配されなくなりつつあります。 1990年代後半から、生産年齢人口の減少、2006年からその激減と人口減少の局面に入ったのですからさらに厳しさに拍車をかけています。私たちは拡大再生産して冨を得るということ以外に価値を見出す必要に迫られています。 100年に一度の不況というきっかけの示唆するものが今までのやりかたの変更です。 それがお金、すなわち、冨の追求ではなく、やっていること自体の心の充足の追及なのです。 確かにお金があれば便利です。しかし、お金があったとしても、必ずしも幸せにはなれません。お金は手段に過ぎません。まして、市場が成長しないとなると、お金を求める時代ではないと言えるでしょう。そうなるとごくごくありふれた日常生活への満足を見出すことが重要なのです。 そこで、生活の中で占める時間ウエイトが高い仕事の時間の心の充足が求められます。この心の充足のキーワードがお金ではなく、仕事自体となるのです。 具体的には、拡大を前提とした顧客第一主義と決別して、従業員第一主義への転換をしないといけません。 さらに、従業員満足度が高くなれば、それによってお客様に魅力を与えます。この世の中に誰も活き活きと働いているような会社や店で時間の消費をしたいと思わない人はいないでしょう。その活き活きとした姿が人をお客様や働きたいという人を呼び込むの時代なのです。 景気が悪いから売れないのではありません。活き活きと働くという環境に転換していないからお客様も従業員もやってこないのです。 従業員満足度を高めることは商売の繁栄にもつながるためにこれからのビジネスのキーワードなるのです。
2010.08.17
偶然に感謝をするようにようになると、気持ちに余裕ができます。確かでは決してないはずなのですが、何か結果がわかると言いましょうか・・ 「なんとかやっていける」多くの繁盛点のオーナーがこう思ったと言います。この段になると、結果はやったことの必然。小手先に走らなくても、自分の生きている意味や、その生きている意味に向かって命を費やす強い意志、そして、そうし続けたいという情熱、そのためにやるべきことを優先順位付けして、やり抜く。 そんな一連の流れがあることを私は夢ー商通信の取材で理解するようになりました。 この流れができると、人は必然に必要な人に会い、援助を受け、そして、一歩進みます。その人も、いずれは誰かを助け、施しあうことになります。結果として・・すべでの善は循環しています。 もちろん、その反対の悪も循環しています。でも、善循環するか、悪循環するかは、その人の根っこしだいです。 多くの人は、家庭や、仕事やあるいは立場によって、その人の命を費やすことに出会うはずです。善とはこの出会いから始まります。 出会っていないと思っている人も多いでしょう。でも、もう出会っているのです。納得できるかできないか・・その価値を見出すのはあなたなのです。そうでなければ、悪の循環にはまるはずです。
2010.08.16
ある程度ものごとうまくいくと、うまくいったのはもちろん自身の努力の成果もあるのですが、偶然の要素が大きかったことを実感します。 偶然やったこと、偶然のお客様、偶然の従業員、偶然の取引先様。そして、家族ですら偶然の産物だと認識するでしょう。重なったこれらの偶然という点がつながり、あなたの商売の継続という線になることに気づくはずです。 そうなると、その偶然の点ひとつひとつにあなたは感謝するはずです。その感謝がまたあなたの未来の点を繋ぎます。それが商売であり、あなたのこれまでやってきたことの全てなのです。
2010.08.16
チェーン・レストランには「開店したときがピークで、以降、売上は下がるのは当たり前だ」という考えかたがすっかり定着しています。店の出店、拡大に主眼をおいた経営をしてきた成長の時代の遺物であります。 外食産業の市場規模がピークを極めた1997年は店舗の運営方法において大きな転換となりました。実はこのことに気づいたのが繁盛店であり、日々の営業における現場重視の運営をしています。 店舗の業種業態やパッケージそのものに魅力があり、市場性が高ければマニュアル化して決められたことを広げていけばよかったわけです。 パッケージそのものに魅力が無くなるといと、昨日と同じ店であることはリスクとしてとらえないといけません。 現場で働く人にとっては耽々と時間が流れ、一日が終わり、また翌日になる。仕事はまるで、きめられたことをコピーすることで営業は繰り返されます。 しかし、このような決められたことのコピーはふたつの側面の劣化によりリスクを顕在化させます。 ひとつが、同じことを繰り返していることを見続けることでお客様から見た店の鮮度劣化です。 もうひとつが意外と成長の時代には気づかなかったことですが、コピー機でコピーを繰り返すうちに劣化していくことと同じように、店の営業が劣化していくことです。私はこの現象を“営業劣化”と言っています。 鮮度劣化は営業劣化に大きく影響をうけます。ですので、営業劣化をさせない職場作りが重要です。営業劣化には順序があります。順序だてて対策を練らねばなりません。(ステップ1 生産性をあげる)フランスのアルザス地方にある小都市リクヴィルで私の友人の弟さんが料理人として経営をまかされています。彼のところには、アルバイトのスッタフや日本から料理の勉強にやってきた見習いの若者がいます。彼はつねに「体より頭を使え」という言葉を繰り返します。この意味するところは、決まったことをまず何も考えないでする――すなわち体をまず動かすのではなく、まず、本当に今やろうとしていることでいいのかを考えて、そして行動に移しなさいということです。 営業劣化が止まり進化する現場に転じさせる状況というのは余裕のある中では生まれません。今現在の自らの限界を超えることに各自が挑み、成就して初めて生まれるのです。 チェーン・レストランで営業劣化が顕著なのは、チェーン理論によるところの標準化――すなわち、誰でもできることに業務を集約したにあります。 営業劣化は成長の時代に重視されたQSCと別次元にあります。だれにもできないことをだれでもができることによって、営業は進化し、そのとき初めて営業劣化は無くなり、営業コピーでなく営業するごとに進化するようになります。営業が進化するようになると、営業日数を増すごとに売上が増えるようになるのです。 限界に挑むと言っても、彼の職場は怒鳴り声が飛び交う体育会系の雰囲気ではありません。彼の営業の進化は次のようなどこの店でも日常的に繰り返しているルーチンワークの中から生まれています。「例えば、ソースでもひとつの容器に入れておくより、使う分だけ真空パックする。真空パックだと3~4ヶ月も日持ちし、火を入れればすぐ使える。こんな感じでうちのアルバイトや見習いは頭を使っていかにロスがないようにクォリティが高いものを、常に言い状態で量産できるか考え実行すします」 つまり、営業を進化させることは現場サイドで自発的な生産性の追求をすることを意味します。現場の最前線のアルバイトやパートでしか気づかない小さなことに目を向け、すかさず改善します。小さな改善ですが、これを繰り返すと営業劣化はおこりません。そして、この積み重ねがある一定レベルを超えると生産性がアップします。 このアップした余力をさらにハイタッチなお客様にとって価値を生み出す業務にふりわけます。そうすると圧倒的な営業力ある現場となるのです。 彼はなんと13歳から出張料理してきました。そして、その出張料理から現場の小技を習得したと言います。出張料理とは過酷な現場です。「フライパン一個しかない」「小さな鍋が三つくらいしかない」などままあるのです。 このような場合であったとしても、彼は「できます」と言うしかありません。料理を完成させなければならないからこそ、予定時間に合わせてありとあらゆる努力をするのです。毎回違う環境で仕事をする出張料理には営業コピーというのはないのです。 しかし、目標はいつもかわりません。「お客様に喜んでいただくこと」ために、「できました」と必ず言えるよう現場改善をするのです。 「じゃがいもの皮むきの達人は、皮を剥くスピードが速いのではなく、準備やかたづけが違う」と彼さんは言います。彼の営業劣化しない職場作りの根源は出張料理にあったのです。今までは、だれでもすぐできるということを重視してきましたが、これからの時代は、小さな積み重ねで生産性は高めないとけないのです。 そのためには、パート・アルバイトに長く勤めてもらえる職場作りをしないといけないのです。 成熟の時代は、生産性アップは会社が与えるものではなく、現場がつくり出すものなのです。そのために、営業をコピーしない現場作りをしないといけないのです。
2010.08.16
外食産業の成長期は、「売上100億円」のような共通の目標を描きやすい時代でした。このような環境下に問題に直面した場合、企業の成長、売上規模拡大といった目標(答)が存在していましたから、ものごとの判断は比較的容易でした。 しかし、1997年に外食産業がピークを迎え徐々に本部が決めたことをやっていても必ずしも売上が改善しなくなりました。2005年くらいの人口減のタイミングから新しい局面になりました。2005年くらいから繁盛する店の特徴は現場に「考える習慣」があり、それが適切な改善がされているケースが多いです。 そのような現場で多用されているのがSWOT分析です。SWOT分析とは市場環境を大きく自分自身の内部と外部にわけ、まず、自分の会社(Company)の強み(Strength)、弱み(Weakness)を見極め、外部環境である企業がコントロールできない事象である人口動態、経済状況、外交上の理由などのマクロ環境を見極め、顧客(Customer)の分析を行いその市場の競争状況(Competitor)を分析した上で、市場の機会と脅威を見極めて自社の強みと弱みと照らしながら戦略を練るというのが俗にいうSWOT分析(Strengths-Weaknesses-Opportunities-Treats)です 上記の通り、もともとは新業態開発などの経営上重大な戦略を練るときに用いていたのでした。しかし、市場が成熟して、繁盛店はこのSWOT分析を、現場力を引き出すための手段として、パート・アルバイトに教えて、活用するようになりました。 広島にありますアジア料理のブッフェの業態「是空」では実際にこのSWOT分析を活用して現場が改善し繁盛店の仲間入りをしました。 この店のオーナーは現場改善したいときに現場のスタッフとコミュニケーションをとります。そのときに、良いところ(Strength)、悪いところ(Weakness)を徹底的に考えさせます。 例えば、お客様の満足度を高め、客数アップを目論み、メニューのリニュアルを考えたときの話です。「アジア料理のブッフェの良いところ悪いところをどんな細かなことでも良いから気づいたことをリストアップしてみよう」と、言いました。あげられた内容を列挙しましょう。良い点専門店ということで利用動機がわかりやすいブッフェなので料理名がわからなくてもいろいろ食べられる(ビギナー向き)ブッフェなので金額の上限が明確ブッフェなので長居ができる野菜を使ったメニューが多くヘルシーブッフェ自体が魅力であり、看板商品が要らない料理が懲りすぎていないので、誰でも馴染める悪い点辛いイメージがあり、辛いものが苦手な人に拒絶される可能性があるエスニックが苦手な人にも敬遠さえる一人でも、辛いものが苦手とか、エスニックが苦手な人がいると厳しい滞留時間が長く混む時間が限定される多くのお客様が料理名をわからない中年男性には馴染まず、主に20~30歳代の女性がターゲットになってしまう SWOT分析を導入しはじめた最初の段階では、現場スタッフには良いこと悪いことまでを考えさせ、解決策は店長やオーナー自身で考えることが大切です。 実際、現場のパート・アルバイトは費用などの面を斟酌して解決策を考えまぜん。多くの場面でお金をかけたらといって物事が解決するわけではありません。ところが、経験が少ないパート・アルバイトはないものねだりに向かうことが得てして多いのです。そして、そんな状況下で考えさせても、費用面などの理由からせっかくの提案を没にすると逆効果になるケースが多いです。ひいては真剣に考えなくなってしまうこともあります。 最初は、店長やオーナーが解決策を考え、少ない費用で売上アップすることを見せるべきなのです。そうすることで、「こうすれば、ああなるんだ」「こうするとだめなんだ」と、うまくいったこと、うまくいかなったことを学びます。この試行錯誤がひとつしか答えがないわけではない成熟期を向かえた今の時代に大切です。それかた次のステップ、解決策を考えさせるに入ります。 ちなみに、是空では、洋風メニューを少しと、辛くないふつうのカレーを増やしました。前者によって、エスニックが苦手な人がグループにいた場合のエクスキューズに、後者は小さな子連れの女性客の快適さを生み出しました。子供はお腹がいっぱいになればぐずりませんのでよいわけです。そして、このメニュー改訂を行った結果として、子供をリラックスさせないと短所になるとスタッフが指摘しました。結果、お絵かきツールを用意したり、ベビールームを設けたりという改善に結びつきました。この積み重ねが定着し、是空は繁盛店となったのです。大久保一彦の既刊もよろしゅう儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術アンケートの作り方・活かし方小さな飲食店が成功するための30の教え成功する小さな飲食店の始め方「現場力」で勝つ!「カフェ」の始め方・儲け方増補改訂版
2010.08.16
稽古を行うと技術が身につくのはもちろん、良い習慣として体に身につきます。それが人としての魅力となりオーラになります。 私は、学生のころたまプラーザから車10分ほどのところにある川崎北部市場の佃煮問屋「佃三」でバイトしました。このオヤジさんには「クボちゃん」と言われていましたが、かわいがってもらいました。佃煮屋での仕事は佃煮屋に来たお客様への販売、そして、お買い求めをいただいた商品を駐車場まで運び車に積む仕事でした。 佃煮屋のバイトは食の知識をつけるという今となっては貴重でした。日本の伝統の食材、食習慣を知らず知らずのうちに身につけました。今、伝統回帰の時代でからとても役に立っています。 しかし、私が一番勉強になったのは、二階にある倉庫への商品の積み下ろしでした。とくに、納品された商品をきれいに整頓して置くことを徹底するオヤジさんの姿勢は半端じゃなく、よく怒られました。「くぼちゃん!角をそろえてぴしっと置かないとダメだよ!」当時の私は「うるさいオヤジだな・・」とオヤジに怒られないためにやっていた面もありましたが、今となっては感謝しています。「梵事徹底」の大切さを教えてくれ、それが後の仕事の評価につながったからです。 その理由は細かい点に気を使うことが習慣化して私のシゴトにキレを出すのです。ダンボールをきれいに重ねなくてもなんら問題がないことは多いです。しかし、そうすると、仕事の出来栄えに際立ち感が出て、どこで仕事をしても高い評価を受けることができるのです。そう、習慣とは評価されるものなのです。 また、オヤジさんはシゴトができるようになると信頼してくれました。そして信用を得る大切さを知りました。うるさいくらいに教えて、きちっとできるように習慣化されたら、次の仕事を任せることで評価をしてあげる。これからこれがとても大切だと思うのです。大久保一彦の本もよろしゅう「現場力」で勝つ!おすすめの本おまんのモノサシ持ちや!
2010.08.15
戦術を身につける量稽古について掘り下げましょう。 私は高校生のころ将棋部に在籍していました。その将棋部には、同じ中学校に通っていました今井君が在籍していました。 今井君は高校一年生のころは初心者同様で非常に将棋が弱かったです。しかし、彼は努力家で、コツコツと努力をし、最終的には大きな目標をクリアする人間でした。 彼がなぜ将棋を始めたのかはわかりません。もし彼にあうことがあれば、聞いてみたいです。 最初のころは、盤面を見なくておそらく私は勝ちました。夕方になり気が向いたバイトのない日、部室にいき彼と対局しました。来る日も来る日も楽勝でした。 しかし、ある日、私は頓死し負けました。将棋は基本的な手筋があります。これを覚えて、その場、その場で判断する。基本と記憶力、判断力の勝負です。 彼は基本のマスターを重ね、私との対局で私の棋風(将棋の打ち方の癖)を記憶して、私のミスに乗じて、彼はカウンターを食らわせたのでした。 この時、私は、きちっと積み重ねてコツコツやる強さをまざまざと見せつけられました。どんなに立派な戦略をたててもそれを実行してやり遂げる力がなければ意味がありません。その成し遂げる力は一見無駄とも思える基本をしっかり繰り返した結果として得られるのです。 野球の名監督広岡達郎氏は、守備が下手な人間には目の前にゴロをコロコロと転がして、正面で捕らせる練習をしたそうです。そうすると難しい打球でも正面で捕るようになる習慣がつくからだそうです。 私は何かがあるとこの今井君を思い出して量稽古の大切さを思い出します。トイレ掃除、ゴミ捨て、水うち、お茶入れ、玉ねぎ剥き、キャベツの千切りなどなど。機械化、分業化、外注化などで何かと便利になりましたが、今をふりかえると何かを成し遂げるために大切なことはいろいろあることを!大久保一彦の本もよろしゅう小さな飲食店が成功するための30の教え
2010.08.15
本コラムでは繰り返しになりますが、新規客の再来店をどのように高めるかを考えます。 まずは、新規客かどうかの認知方法の確立です。次に、どのようにして事後評価を高めるか。そして、忘れられないために何をするかです。この三つの方向性をしっかりたてましょう。 次に、顧客になったお客様が自然消滅しないように来店頻度が低いお客様に対しては思い出される方法と、来店頻度が高く、継続的なおつきあいをしているお客様にどのように飽きられないようにするのかを明らかにしましょう。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.08.14
商売を継続する上で大切なことはお客様を増やすことです。その中でも新規客の補充はあなたの将来に繋げる重要な栄養源のようなものです。どのように新規客を見つけるのかしっかりした方向性を練らねばなりません。新規客をつかむための枠組みが営業戦略です。 営業戦略の中身は、見込み客を決める要素の確認、見込み客の決定、見込み客に発見されるメディア選定、メディアの予算組み、メディアに表現する魅力のコンセプト、そして、半歩来店です。 メディアは予算が許す限り複数使ったほうが、発見される確率は高まります。そして、複数見ることで思い出し効果も高いです。 客層を決める四要素を配慮してあなたメディアを落とし込んでいきます。 半歩来店は心配ごとを無くするために、仮想来店をどのように引き起こすかです。下にに表を用意しましたので、書き込んでみましょう。チャート 営業戦略表(1) 見込み客を決める要素確認予算商品自体利用動機移動のコスト(時間、お金) ↓(2) ターゲットとする見込み客決定 ↓(3) 見込み客に発見されるメディアと予算12345 ↓半歩先来店の方法大久保一彦の本もよろしゅう「現場力」で勝つ!
2010.08.13
開業を夢見て私の門をたたいた人の多くは、「どこで商売をやったらいいですか」と尋ねます。 その答えに対して、多くの場合、「そうですね、原子力発電所のそばがいいんじゃないかな」と、答えます。 「また、先生冗談言って」と笑う人もいますが、半分本当です。なぜなら、原子力発電所が稼動さえしていれば、隔絶した場所に、かなりの見込み客がいます。何もないような場所では、商売の技術は要りません。 このことを私の恩師でキッチントマトという繁盛惣菜店を経営していた古田基さんは、「東京のど真ん中でやることは甲子園の本大会で野球をするようなものだ」と、言っていました。 確かに、どこかで実績を上げたりして自信があるから、東京の一等地で商売をやる人は多いわけで、東京のど真ん中で商売することは見込み客こそ多いのですが、甲子園の本大会で野球をするように熾烈な勝負に勝ち抜くこと意味するのです。 どこに店を構えるかは小商圏化が進む中で重要になっています。出した場所でお客様の利用動機が変わってしまいますし、競争相手の状況も変わってしまうからです。 そして、店の出した場所によってお客様の文化度も違います。そうなるとやりたいことまでたどりつくのに時間がかかります。時間をかけて文化度をあげて、理想に近づけてないといけません。そして、それまで、お金が続くように資金の手当てをしないといけません。
2010.08.13
どんな客層を狙うかは重要です。 客層を決める要素はおおまかに予算、商品自体、利用動機、来店に要するコストの四つです。この四つをみてみましょう。 まず、予算です。予算が低ければ何度も利用し安心できる店ではあまり価格を気にせず利用します。逆に、予算が高ければ特別な場面での利用となります。前者は気軽であり、後者特別ということになります。 次が商品自体です。これは商品戦略でみましたように、料理と空間とサービスのバランスです。そのコーディネートによって、あなたが生活の中の食を売るのか、文化に通じるような特別な食事、非日常の場面を演出する食事を提供するなど違いがおこります。 三つ目が利用動機です。人は消費を場面、場面で使いわけます。サラリーマンでも、500円で弁当を買うこともありますし、接待なら1万円の食事をすることもあります。 「店に行く目的は何なのか」、つまり利用動機で同じ人で客層はかわるのです。 最後が移動にかかるコストです。生活に密着したものなら、遠くに移動しません。しかし、特別なものであるならば遠くに移動します。移動にかけた時間やお金にふさわしい利用をするのです。ですので、観光地ですと700円の定食より3000円の御膳のほうが売れることがよくあります。そのお客様は「せっかくきたんだから」という「失敗したくない」と深層心理が高い商品に向かわせる面があるのです。
2010.08.10
人はそれぞれのいろいろな場面でお金を使いますが、人それぞれ予算を持っています。したがって、見込み客を想像してどれくらいの予算の客層を狙うのはとても重要です。 一般に、日常遣いの場合は予算が低く、来店するたびに予算は減ります。逆に、非日常の場合は満足度を優先する傾向にあり、予算はそれに見合うものを探します。 価格戦略は競争状況も考慮する必要があり、客層と見込み客の量を決める重要な戦略項目と言えるでしょう。 価格戦略はアンケートを使って価格感度※1をつかんだ上で、たてるといいです。 では、価格戦略をうまくたてて成功した事例のお話をしましょう。 栃木県にあるラーメン天華というチェーンの例を見ながら価格戦略をみていきましょう。このラーメン天華さんはくるまやラーメンの流れをくむローカルチェーンです。2000年ころ、幸楽苑の出店加速で、価格競争が激化しました。同チェーンも影響を受け価格をなるべく低くすることで対抗してきました。しかし、安さで幸楽苑には勝てず、私は価格戦略大きく見直し、それに伴ってリニューアルを全店舗にかけました。内装は木の温もりを感じるレトロな空間にしてチェーン店らしいベンチシートを基本的にやめ、椅子に入れ替えました。このような空間で食べることになんとも言えない優越感を感じるように、当時一杯390円のラーメンをウリにする幸楽苑に対して、ラーメン一杯を500円から580円にしました。 主力価格帯を780円になるようにアイテムを配置して、意図的に幸楽苑よりお客様の予算が高いポジショニングしました。 リニューアルは成功し、多くの店は売上を50~100%増にすることができました。 お客の感情は不思議です。商品によっては価格を高くしないと価値を感じない場合もあるのです。とくに良いものは手間がかかることをわかっている予算が高めでよい客層は、「安くていいものは買えない」ことをなんとなくわかってくれます。 このようにほかより品質などが優れていることをあえて強調する場合は高めの価格をつけます。 目安としては、市場にあるスタンダードな商品の価格の1.4倍以上(二の平方根が大きく変わったと感じるブレイクポイントとなると言われています)のプライシングをするのです。これにより、価格がこれだけ違うのだから、かなり違うなと思わせることができるのです。 たとえば、1000円で売っているなら、1400円以上を、2000円なら2800円以上をつけます。 ついつい1000円で売れないと900円とか800円で売ることを考えがちですが、こういうときこそ高い価格をつけてみるのです。高い価格をつけられるか、この決断ができるかどうかが繁盛店になるポイントなのです。 ひとつだけ注意点を上げておきます。一般に高いプライシングをするときは、世間の価格が上昇基調にないデフレのときがいいです。逆に、世間が価格上昇を目論んでいる場合、便乗値上げという印象を与えかねないので避けるべきです。※1価格感度 お客様がいくらなら買いたいかという心の中の予算大久保一彦の本もよろしゅう儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術小さな飲食店が成功するための30の教え行列ができる店はどこが違うのか
2010.08.09
外食産業の商品とは、料理と空間とサービスを組み合わせた価値です。この三項目のバランスをどのようなものにするかで店の方向性は変わります。 例えば、カウンターしかないと場というものが無くなります。そうなると、食べ物その物を食べるという行為を商品として扱う要素が強いです。 例を出して話しましょう。私のお手伝いお客様に「立ちの高級店の寿司を回転寿司で」というコンセプトの店があります。この店は数年ほど前の開業時大繁盛して月商5000万円の売上をたたき出したそうです。この時代、この地方都市にあまり回転寿司が無かったために、いろいろなお客様が来ました。選択肢がないからいろいろな想定外のお客様が幅広く来たと行ってもいいでしょう。 しかし、冷静に考えてみると「高級店で寿司や和食を食べたい」という見込み客は確かにいっぱいいます。しかし、具体的な利用する場面を考えると、お盆とか年末のような「じゃあ、ご飯でも行こうか」という日常生活の中ではレジャー的な要素のあるハレの場面だと想像がつくと思います。したがって、お客様の利用するタイミングが限られ、店が増えた今、この店は土日は忙しいが平日はお客様でなかなか埋められません。 逆に、そんなに高級食材を使っていなくても、カウンター主体の食べるということにフォーカスした100円均一で安心してお腹がいっぱいになる回転寿司に日常使いの利用動機の場合は流れてしまいます。 そして、日曜日の「ご飯でも行こうか」という場面を想像すると家族単位になりますね。そうなると、高級店をイメージしたカウンター中心の席配置では、家族で向かいあって座れません。そうなるとボックス席の多い、チェーンの100円均一に物理的な使い勝手から流れてしまいます。 また、東京のように寿し常のようなたちの寿司で料金均一の非日常の空間をもつ店に流れます。つまり、店の空間と商品の組み合わせで利用するタイミング、予算、お客様の店への来店頻度が決まってしまいます。 サービスでも同じようなことが言えます。日常使いの定食屋はちょっとぶっきらぼうなくらいのおばちゃんがいいです。それは気を使わないからです。不満に思うような気の利かない人ではいけませんが、ちょっとぶっきらぼうな印象くらいのほうが、気軽さが演出できるのです。 一般にサービスはいいほうがいいと思うかもしれません。しかし、これは利用する場面で異なるのです。わかりやすい例をしましょう。15年くらい前に、会社勤めをしているころ、お尻から出血していたので、病院に行きました。すぐ内視鏡で見ることになりました。そして、若い女性の看護士が紙のパンツを差し出し、「これに履き替えてください」と言います。私は、初めてでよくわからず穴をお尻のほうにして履きました。それを見て、その看護士さんは「逆ですよ」とちょっと笑って言いました。おまけに内視鏡をお尻から入れるのがとても無様で驚きました。私は担当した看護士さんがとても美人だったので、とても恥ずかしかったことを今でも覚えています。そのときは「なんで看護士さんはおばちゃんじゃないんだ」と思いました。病気は別に無かったからいいわけですが、「もう、こんなことにはならない生活をしよう」と病気にならないことを誓い、私は独立を決心しました。 余談はさておき、店は料理、空間、サービスを組み合わせたとたんに売りやすい、売りにくい、利益に結びつきやすい、利益に結びつきにくいが決まってしまうのです。
2010.08.08
昔、私の師匠であるランチェスター経営の竹田陽一先生が戦略・戦術の語源はギリシャでそれぞれ、ストラテジア、タクティコースであると説明していただきました。 実はこのふたつは大切で、この両方がなければ商売はうまくいきません。 戦術を意味するタクティコースの語源はほうきでを使って掃除する人を指すそうです。繰り返し、繰り返し同じことをしてきれいにするということを表したと言っていいでしょう。 戦略とは経営目的を達成するための効果的な道筋を定めることを指します。 戦略をたてる理由は目標達成を効果的にするためです。それは、ナビゲーションもなく地図を持たずに航海に出たとしても、その船は遭難する確率が高いのと似ています。戦略があれば、目標とする到達点に向かうとして、無駄に時間がかかってしまうことを改善してくれます。 商売の目的を達成するために決める道筋は概ね下記の通り9項目あります。それが、商品、価格、客層、地域、営業、顧客、組織、財務、時間です。この要素の中に、このコラムで勉強してきた要素がたくさん盛り込んであれば必ず成功できます。 船がその定めたルートまで効率よく到着するには航海の運行技術が必要です。波が荒いときどうするか?経験という引き出しとそれをクリアする技術が必要です。この技術にあたるのが戦術です。 技術ですから上手な人と下手な人がいます。その下手な人は練習を繰り返し上手にならないといけません。何をするにも立派な仕事をするには経験と身に付いた技術がいるのです。掃除が下手な人であっても、あるいは苦手な人であってもある程度、しっかりやりかたを教わり、繰り返し、繰り返し量をこなせばある程度は上手になります。これからの時代の理想的は戦略もしっかりある人、売る技術がしっかりある人の双方が必要です。商売の目的達成を助ける技術、すなわち戦術を身につけておくことはこれからの時代、とても大切なことなのです。大久保一彦の本もよろしゅう小さな飲食店が成功するための30の教え儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術売れてます
2010.08.08
経営の目的をとりあえずでも考えたら、その心を忘れないでください。本当の目的に出会ったら邪念は捨ててください。でも、これは覚えていてください。商売はうまくいかないことのほうが多いということを。商売は思った通りになるほうが少ないと思っていたほうがいいです。したがって、何かやりたいことをやろうとするとかならず失敗に直面するでしょう。でも、それで良いんです。その失敗はその時は失敗に見えて落ち込みそうですが、気持ちが前にあれば後ろに進んでいるように見えますが、必ず前に進みます。 そして、そんなときはこう思ってください。「うまくいかないのは自分が未熟だから」「自分が未熟だから」というのは一種の諦めの境地ですが、前向きな諦めの境地を指します。「最初からうまくいっているようだったら、みんなうまくいっている」そう思って、見る角度を変え、やったことを細かく分析して、先入観を捨てて、そしてもう一度トライするのです。3回でうまくいったら天才、10回なら秀才、100回なら凡人、1000回ならぶきっちょそう思うのです。今の世の中、多くの人が自身が持っている引き出しと経験のわりに「できる」と思い込んでいる人が多すぎると思います。 この時にあなたに守るべきものがあれば強いです。私は、43歳後半にして子供をもって強くなりました。そして、妥協して仕事をしていた部分を排除しました。それは守るべきものができからで、だからこそ是が非でもやりとげようと思う気持ちなるのです。 老舗のオーナーも同じような気概でやっている人が多いです。今までの時代は成長の時代ですから100年~200年くらいの老舗の中には儲けに目がくらみ他の商売に手を出し、受け継ぐものを失った人は多いです。しかし、運よくというか、人口が減少して国内の経済は低成長の時代になりました。そうなると、このように先祖から受け継いだものが以外と強く、そのことが大きなモチベーションになる時代になるのです。 今やっていることについて、あなたは「ちっぽけな店だ」とか「つまらない商売だ」と思っているかもれません。しかし、超成熟時代の2020年~2035年以降に見直される可能性は高いです。なぜなら、人口減少で仕事は減り、就職先は激減して、あなたのやっていることがとりでになるかもしれません。 京都の老舗の「平八茶屋」があります。その平八茶屋の家訓に「当主たるもの料理人たれ」という言葉があります。平八茶屋は応仁の乱や幕末、第二次大戦後の混乱期などに、商売などとてもできないようなたいへんな時期を経験しました。そんなときに雇いの人に暇を与え、当主自身ひとりで暖簾を守るという苦汁の決断をしないといけないことがあります。それぐらい長く商売を続けるのは厳しいことなのですが、次のような含みがあると私は推察します。(これはわたしの推察ですのであしからず)1 長い目でみれば、商売の環境としては悪すぎることが10年、いや数十年続くことがある。そんなときは、ひっそりやるしかない。ただ、失っていけないのは店の存在意義、つまり理念だ。少なくとも先祖が築いた名誉は逸していけない。2 長い目でみれば、優秀でない代もあるだろう。しかし、それは何代か先には物凄く優秀な代もあるという裏返しである。だから、才能がない経営者は愚直になり、こつこつと経営し、その代を待てばいい。 今のあなたは時期が悪かったかもしれません。あるいは、あなたに才能が無かったのかもしれません。その場合は、「将来こうしたい」「将来、お客様にこうなってもらいたい」という思いは継承し、将来に託せばいいのです。ただ、あなたはやる気を持ち続ければいい。希望を持ち続ければいいのです。 商売の炎をあなたのやる気で常に燃やし続けてください。あなたのため、あなたのかかわっているスタッフのため、そしてお客様のため、商圏のため、地域のために、そして、未来の継承者のため、さらには日本のために。ときたまそのことを思い出してもらえば、あなたは変わるはずです。
2010.08.06
商売を始めて、あるいは仕事をはじめて売上や生活が安定すると、「これでやっていける」と根拠がわからない場合が多いですがこみ上げるような自信がつくはずです。 この段になって、絞り込むべきなのが、商売の本当の目的です。それまでの活動から、自分の才能などの身の丈がわかり、本当の意味で、「お客様にこうなって欲しい」「自分の店は商圏の人たちのためにこういうことをしたい」「商圏の人とこうかかわっていきたい」「商圏の人にたいしてこういう存在であり続けたい」という具体的な商売の目的を認識するでしょう。 そのときにあなたのやるべきことが固まります。つまり、経営理念です。経営理念はミーティングで決めたり、コンサルティングが決めたりするものではありません。悟るものなのです。 次の世代に小さな感動を伝えるためには、考えたものではなく、悟ったものである必要があります。そして、それを人に伝えたときに、次のようなことを必ず言われるでしょう!「なんてすばらしい!」「私も参加させてください」 経営理念は会社が倒産しそうな状況でも譲らないことであり、判断基準です。それがぶれると会社や店の存在意義が失われるものです。これがないと、例えば会社であればかかわる人は良い人でも組織の論理が割賦してしまいます。 ちなみに、私の事務所の経営理念は次の通りです。「善い商売を広める!子供が生まれ、その子供が育つことは感動の連続です。そして、その子供に善い商売をつないでいくことを想像すると感動しませんか?私たちは善い商売を学び、伝え、広め伝承します」 経営理念を決めたら、具体的な目標を決めます。目標は当座の通過点的な位置づけでいいでしょう。 私の事務所は「1万年経営」という長期的な目標を掲げています。一万年経営とは100年店舗100件という掛け算から導きだしたものです。 もちろん、1万年という数字はおそらく私一代でできません。おそらくこの願いが崇高であり世の中の人に必要と思っていただければ、小さな感動を子供の代、そして孫の代、受け継ぎ達成してくれると思っています。だからこそ、私は実績よりも信用を重んじ、長い視点でクライアントの店作りを手伝わねばならないのです。 これからの時代、自分の代一代で経営目標を完成させる必要はありません。だから、開業当初からやりたいことをしなくてもいいです。とくに若い頃いいと思っていても必ずどこかで考え方は変わります。だからこそ、遠回りでも、今、あなたが信じている目的に確実に向かえばいいのです。そして、経営の目的という精神を脈々と受け継ぎ、伝えていけばいいのです。
2010.08.05
お客様に小さな感動を与え、お客様をひきつけて離さない店になるにはいろいろな要素が必要だということをこれまで見てきました。その中で、「あなたが商売を通してしたいこと」が大切だとお話しましたね。この商売に駆り立てるものがなければ、時代に流されて軽率な判断をしてしまいます。結果、お客様には小さな感動を与えることはできず、いずれは店をたたむことになります。 生産年齢人口が5年で1000万人も減少し、供給過剰でものあまりの時代がずっと続きますから、仮に一瞬うまくいったとしても長続きはしません。 私のコラム読むくらいですから、あなたは将来を実りあるものにしたいと思っているはずです。もしそうでしたら、「あなたのやりたいこと」、「あなたがこうなりたいこと」をまず明確にする必要があります。 そうは言ってもいきなり最終的にやりたいことが見つかりませんから、仮でも言いですから決めましょう。私の経験で言えば、やっているうちに、「これだ!」というものに出会います。 このやりたいことを探すのには次の質問が便利です。思いついたことを一杯書いてみてください。 「10年後のあなたはどうなっていたいか?」「あなたは子供のために将来何をしたいのか?」「あなたがやりたいことを50個書くと・・」「あなたがお客様に『こうなって欲しい』と思うことを50個書くと・・」「過去の経験で人に伝えたいことを30個」「あなたの唇が乾くまで語りたいこと・・」「あなたの夢」「あなたが守らねばならないもの」「あなたの運命的な因縁」 真の目的を探すために、何でもいいから仮の目標を決めて動き出しましょう。
2010.08.05
見込み客が新規に店を選ぶ過程で「いい店に行きたい」という気持ちはもちろんありますが、これが最終的な決め手にはなりません。 では、何が重要かというと失敗しないことです。特別な場面であればあるほど失敗しないために最善の策を尽くすと言っていいでしょう。そんなときに大切なことが半歩来店、あるいは仮想来店です。 半歩来店とは、まだ来ていない見込み客に、「ここは失敗しない大丈夫」と、事前に提供する情報から思わせる活動を意味します。 例えば、年に一度くらいしか利用しないような店に予約をしたり、旅行などで温泉旅館やホテルに宿泊したり、特別な場面で店選びをする場合はまず、過去の良かった店や旅館、ホテルを選ぶでしょう。過去に経験がなければ、親しい人に聞いて見て、良かった店を考えます。インターネットで評判な店を調べる場合もあるでしょう。これら全ての仮想来店が私の言う半歩来店です。 そして、このような情報を比較検討して一番失敗しない選択肢を選びます。 実は、多くの場所で極限られた一、二軒だけがほとんどの人に選ばれて、予約がとれないような状態であるにもかかわらず、残りの多くの高級店や観光地のレストランあるいはホテルや旅館が選ばれないのはこのためです。 つまり、来店前に店が繁盛するかしないかが決まっているといっても過言ではないのです。このことに気づいたのは、私が数年前から繁盛店のサポートが主になったからですね。コンサルタントは一般論として売上の悪い店を手伝うことが多い。でも、私は、20冊を超える業界で二番目に多い書籍のおかげもあり、繁盛する店がもっと繁盛するお手伝いをするようになりました。その過程で意外なことをいっぱい知りました。 さて、ホームページなどのメディア作りは非常に重要です。そのホームページで「失敗しないだろか?」という失敗のリスクや不安に対応することが優先課題になります。 にもかかわらず、多くの店は自分のこだわりや訴求を一方的にうたっているケースが多いです。「わかって欲しい」と!でも、繁盛店にそんなリクエストを受けたことがありません! 繁盛店にあったのは半歩来店というスキームなのです。半歩来店にはどんなものがあるのでしょうか? まず公共性が高いテレビの情報は半歩来店としてはとても協力です。とくに、食通で知られる料理評論家やタレントの言動は半歩来店をより充実したものにします。また、カリスマブロガーや情報に信憑性が高く、テレビと同じような期待ができます。例えば、テレビでよくリッツカールトンが紹介されますね。優雅なタレントに紹介されるとリッツカールトンに行った気分になれます。その気分が深層心理にインプットされます。これが私の言うところの半歩来店であり、結婚記念日などの特別な日という利用動機が発生したときに覚えていれば、「ぜひ行ってみよう」というアクションにつながるのです。 さらに、テレビの番組やカリスマブロガーなどで大々的にとりあげられた場合、ホームページなどの情報もしっかり補完しておくと効果です。それはテレビを見た後、ホームページアクセスして確認することが多いかからです。 つまりメディアのトータル的なコントロールが半歩来店には重要なのです。 情報として弱いメディアや弱くなったメディアの場合も情報の補完が求められます。 インターネットのダウンロードに時間を要したような遠い昔、ぐるなびのようなグルメ検索サイトは非常に効果がありました。しかし、今は情報過剰になっており、グルメ検索サイトは若干翳ってきています。また、最近は知らない店に行く場合、食べログなどの口コミサイトで照合する人が増えています。そうなった理由として店が増えたことと、情報の選択肢が増えたことが大きいのです。また、グルメ検索サイトでは掲載者が集客にはしりがちで、誇大広告の情報を発信しているケースも見かけますので、信じて店に行ったら「失敗した」という経験からそうなってきたこともあるでしょう。ちなみに、この口コミを気にする傾向は、そのカテゴリーのビギナー層に強くみられます。 このようにメディアが単独では弱くなったときに、他のメディアを併用して情報の補完をするのです。 例えば、ラクシャリーホテルに慣れない人が結婚記念日などの人生の節目でリッツカールトンを利用する場合、ガイドブックを買うとか、口コミ情報を見たりしてどのプランがいいかを調べます。 お客様の声もあるマーケットでは半歩来店としての情報を補完します。実際お客様の声をのせると来店率や問い合わせ件数など見込み客が増えると経営本によく書いてあります。これは実際に利用した第三者の声をのせることで、「失敗しなさそうだ」と不安を解消して、見込み客の来店率があがるからです。 オフィシャルホームページも半歩来店の情報の補完で重要性が増します。そして、この情報の補完は単に書いてある内容に留まらず、店格、客層、客単価、利用シーンなどとのテイストの整合性も必要です。 逆に、昔ながらの富裕層は文化度が高いために、「失敗しないかな」という目では店選びはせず、どれだけ場面にふさわしい非日常のサービスが受けられるのかというところで店を決めるからです。また、富裕層は最高のサービスや料理も求めますが、その店のエッセンスやユーモアなどを求めますので、真面目すぎてもだめいけません。 いい店なのに簡素な自作のホームページでは半歩来店という見地からとてももったいないのです。これからは実際の来店前の半歩来店をどう演出するかが重要なのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方売れています寿司屋のカラクリ小さな飲食店が成功するための30の教え繁盛の天才2時間の教え「現場力」で勝つ!
2010.08.03
商売良いときもあれば悪いときもあります。今が良いからといって必ず未来永劫まで良いということはありません。そもそも常に業績がいいなんていうのはありえません。 プロ野球のようなスポーツでも常勝球団などありません。栄華を誇った世界のトヨタだった同じです。大きければ、繁栄時の後光は強く見えますが、その反動は大きいです。 2005年を境に人口減少の時代に入っており右肩上がりの経済成長がない以上、このような良いときと悪いときが現れる現象は顕著になるでしょう。人口が増えていた時代でしたら、新しい道を探すという方法もありました。多くのお店は新業態開発と称して、真新しいものを躍起になって探しました。 しかし、今、一見、良さそうに見えても、その後も必ず良いという状況が続かないというのであれば、いっそのこと邪念を捨てて今やっていることを極めることのほうが将来に大きな差になるというのも良い方法なのではないでしょうか。 食という商いはハイテクノジー産業ではありません。確かに、今まではグローバル化の波がありましたから、新しい食が我々国民に広められてきました。これからも、外交の関係でまだ日本では広がっていないロシアのブルヌイ(クレープ)やイスラム圏の料理などがブームになるかもしれません。 しかし、もうそれほど真新しいものはないのです。食べ物屋はローテクノロジー産業なのです。 例えば、景気が良いときは消費の気運があがり、中流に属する人は少し良い店にいきます。リーマンショックの前に続々オープンしていたおしゃれな店などは典型的ですね。でも、景気が悪くなるとこれらの人たちは今まで行っていた店にいかなくなります。そして、ラーメン屋や格安の焼き鳥屋などが活況を呈します。 これらは単に高い安いというのではなく、心理的な日常感が強いからです。心理的な日常感とは、これまで慣れ親しんだ生活習慣の培われた深層心理の気軽さを無意識に感じることです。それはポジティブな消費をしなくなるために冒険しなくなる心理が強く働くからです。 最近、鳥貴族というチェーンが注目されています。飲食店経営誌の取材で鳥貴族は出店をするときに和民を基準に出店していると書いてありました。その鳥貴族が和民のお客様を奪いとっているようです。同じ価格でそんなに商品に遜色ない和民より280円均一の焼き鳥チェーンの鳥貴族のほうがお客様に選べる理由は日常感です。同じような価格で商品を売っているのですが、カウンター主体の焼き鳥のほうが、個室主体の和民のような居酒屋チェーンより、心理的な日常感は強いのです。 ただ、鳥貴族がずっと良いとはいえません。チェーン店ですから、拡大にするにしたがって陳腐化します。280円均一のメニューも今は斬新ですが、慣れれば斬新さはなくなり、経時劣化します。この運命は避けられません。サイゼリアも1990年代後半に登場したときは強烈に「安い!」ということでお客様が押し寄せました。今は、日常生活の中に溶け込み斬新さよりは、安くて利用しやすく、商品価値もありいろいろな場面で使い勝手がいいという便利さに魅力は変わっています。 つまり、時代は移り変わりを繰り返すわけですから、時代の流行、廃りに合わせて店をころころ変えることは長い目でみるとマイナスなのです。経営規模が小さい場合はとくにそうです。悪いときは諦めて、今やっていることを極めるくらいの気概が必要です。 あなたの経営しているときに日の目を見なくても時代さえ合えば必ず先々で日の目を見ます。これからの時代は瞬間を追うより、10年、20年、いや50年、100年の中で利益の最大化をはかればいいわけで、じっくり構えて商売をする必要があるのです。そして、じっくりやるには、自信をもって徹底的にやることが重要です。あの麻生元首相の時代や鳩山元首相の時代に「ぶれている」、「ぶれてない」という言葉がよく使われました。多くの人の目の前にたち、政治家という立場だと、短期的な責任を負わされます。だから、やりたいことを続けることは非常に難しいです。しかし、短期的発想から店作りを安易に行う時代ではなくっています。長期的な発想で店作りを行うには、信じたことを続ける必要があります。そのためにはとっても勉強しないといけません。人から聞いただけのことではいけません。店を休んでも見聞を広めないといけません。人から聞いたことなら、自分の目で確かめないといけません。 しかし、極めるということは長く商売を続けるキーワードであって、それ無しには商売はできない時代なのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方売れています寿司屋のカラクリ小さな飲食店が成功するための30の教え繁盛の天才2時間の教え「現場力」で勝つ!
2010.08.02
例えば100円回転寿司だったら気軽に週に一回くらい利用されるファミリーも結構いますよね。でも、グルメ回転寿司となると記念日しか利用できません。 回転寿司は気軽さで日常使いを売っているのに良いネタを使うとお客様にとって予算が高くなってしまう。この心理的なギャップがグルメ回転寿司あり、業態的な弱さとなってしまいます。 東京都北区の赤羽駅に隣接したアルガードという商業施設にある「寿し常」という店はこのギャップを解決して、グルメ回転寿司が本当はターゲットにしたかった客層を取り込みました。 この店がオープンしたのは私が独立したころの1990年代の後半でした。当時、急成長していた回転寿司を脱却して、当時にぎりがどれでも一貫130円均一の店をはじめて大繁盛しました。 その秘密は、寿司のカウンターで食べるステイタス性です。回転寿司は気軽な良さがあるものの、たちの寿司店のステイタス性のようなものを、ネタをよくしようと、寿司職人を使おうが出せません。どれでも同じ値段にして価格に対する不安感を排除して、カウンターに座って寿司職人に好きなものを注文するという寿司の醍醐味を実現しました。 雰囲気というのは大事です。最近回転寿司でも注文が入ったら寿司を握るという方法をとっていますが、おいしさは増しても、目の前にレーンがある以上大衆的な雰囲気は消せません。この寿司の醍醐味を味わうことができることこそ「寿し常」の違いだったのです。 面白いのは最初、ウニやトロのような高級ネタを食べる人もいるようですが、お店に通うようになると職人さんにお薦めを聞いて食べるようになるそうです。これは、以前「寿司屋のカラクリ」という本を書くときに専務さんがおっしゃっていたことです。 「寿し常」の取材の結果、次のような回転寿司になりユニークなお客様の段階があることに気づきました。1 安心感で来店する。2 雰囲気になれ、少しカウンターに座ることに余裕ができて目の前が見えるようになる。3 職人さんと少しだけ商品を聞いたりするようになる。4 だんだん顔なじみになって会話をするようになる。5 会話をするようになるとお薦めを食べるようになる。 おいしい食べ方も教わり、寿司の醍醐味を知る。6 この醍醐味が伝わると生涯顧客となる 興味本位で利用したお客様も、店の雰囲気になれ、スタイルに慣れ、通のお客様になっていきます。最初は不安がいっぱいだったお客様も店に慣れ、寿司の食べ方という食文化の階段を上がっているように見えます。これを私は、文化の階段と名づけました。 飲食店を経営するにおいて、つかんだお客様に卒業されないためには、わかりやすさだけでなく食文化などに通じる奥行きが必要です。ある程度利用して、これ以上学ぶべきもとがないと、単なる気軽な店で終わってしまいます。そのためには、ある程度のレベルの商品を扱うか、技術が必要です。 ある程度のレベルの商品や技術はある程度見る目を養わないとわかりません。店の用意した文化の階段にしたがい、店が徐々にお客様を上の階段へ誘導することで見る目をつけていくのです。逆に、ある程度のレベルの商品や技術がないと、その時は満足していても、何かのきっかけで、もっといい店を知ってしまうと、その瞬間お客様は来なってしまいます。 以前、静岡で蕎麦店のセミナーをしたときに、清水の有名寿司店の末広寿司の話が歓談のときに出ました。そのときに、末広寿司で鮪のトロを食べたら、「今までの鮪は何だったんだろうと思った」と口をそろえておっしゃっていました。店としては価格差もあるし、そんなに問題ないと思いがちです。しかし、お客様の心理は微妙で、お客様の卒業となることも十分ありうるのです。 私はよく「出会いは成長の証、別れもどちらかの成長の証」と言います。商売というのは店とお客様が同じスピードで成長しないと、長く付き合えないものなのだと思うのです。どちらかが、先を行き過ぎてもダメで、もし前に店が進んでしまったらな、階段を少し下がり、手をとって誘導する親切さが大切なのです。 お客様の卒業を防止するにはこのことに心血を注ぐ必要がありそうです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方売れています寿司屋のカラクリ小さな飲食店が成功するための30の教え繁盛の天才2時間の教え「現場力」で勝つ!
2010.08.02
わざわざやってくる目的来店という切り口のお話をしましたので、対局にある衝動来店のお店について説明しましょう。わざわざ行く店の反対にあるのは便利な店です。 お客様にとっての便利は大きく分けてふたつあると私は考えています。まず、バブル崩壊後にマクドナルドやコンビニエンスストアなどを筆頭にチェーン店が展開してきたタイプの便利さです。 多くの消費者は時間がないと思っています。そして、時間に追われています。「時間がない」という気持ちが潜在意識にあり、手早く決めないといけないときの購買活動や飲食店の来店にとって重要なポイントが「失敗しない」という安心感です。 例えばビジネス街のランチではしたら、早く料理が提供されそうな雰囲気は時間というリスクに対する「失敗しない」という安心感を与えます。入り口回りでの低価格のキャンペーン商品を訴求すれば、思わぬ出費をしないという「失敗しない」という安心感を与えます。大衆的な雰囲気を漂わせれば、価格の割安感やボリュームでの「失敗しない」という安心感を与えます。 このように、「いつでも」、「どこでも」、「気軽に」、「安く」、「早く」というキーワードは多くの消費者の心に響きやすく、これらのニーズに対応するこれらのやりかたは市場が成熟する2005年までは非常に有効なやりかたでした。 これに対応して、外食産業の大手チェーンは多店舗化、大型化、標準化、低価格化し大衆化をつきすすみました。これらのチェーン店の功績で、よっぽどの場所でない限り買い置きをしなくて良い環境になりました。 一人暮らしの人の中には、冷蔵庫にドレッシングやグラスしか入っていないなんていうこともあると思います。 さて人口減少が始まった2005年を転換点にもうひとつの便利さを提供している店が小商圏をターゲットとした繁盛店に見ることができるようになりました。その便利さとは潜在的な願望を満してくれるというものです。 例えば、2000年~2005年くらいの間に居酒屋業界では個室で差別化をはかる店が増えました。これは20~30歳代の若者が、兄弟が少なく、子供部屋を与えられた環境で育ちったことと、飲み会が会社から職場単位、そして職場単位からパーソナルへと移行しなどの理由からで、非日常の利用動機に位置づけされる客単価3500円(東京では5000円)をこえるアッパー・ダイニングなどでは個室が好まれるようなりました。しかし、差別化を重ね、しっかりと個室を作ってしまうと、団体客を収容できず、お客様の限られた利用動機しか満たせない場合も出てしまいます。こうなると商圏が広くとれず、人口が少ないエリアでは経営が厳しくなってしまいます。そこで、ふだんは個室にしておくのですが、パーツを組み替えれば大部屋にできるよう内装を変更しておき、団体で利用したいときでも利用可能にしておけば、普段使いや宴会などの繁忙期の団体需要にも対応でいるわけです。 あるいは、ある店では従業員休憩室を改装して、カラオケ部屋にしました。ふだんは、従業員休憩室にしているんですが、来店頻度が高いお客様にカラオケ部屋という裏メニューがあることをお知らせします。これが評判でカラオケ好きのお客様の予約が結構入ります。 潜在的な願望に対応するということは「こんなものあったらなぁ」という潜在的なニーズを顕在化して満たすどらえもんのポケットのような便利さです。それは全部のお客様にとって必要なのではなく、よく利用していただいている、限られたお客様にとって必要な便利さです。2005年くらいまでは人口増の局面にあり、新規客が増えていた環境下なので不満を与えないことに外食産業は力を入れきました。 しかし、それではよく利用している本当は生涯お客様としてつきあいたい大切な顧客を失ってしまいます。ロイヤル顧客を失うのはマイレージやポイントカードに代表されるプレミアムが弱いのではなく、このどらいえもんのポケットのような引き出しがないためにもっといい店を見つけ他の店に移ってしまうからなのです。確かに便利な店が増え、便利なったおかげでさ迷う客層が増えました。しかし、それらの店はさ迷い続け便利さに流されます。このどらえもんのポケットを満たすやりかたで便利さに流されないお客様をしっかりつかまえるべきなのです。大久保一彦の本もよろしゅう小さな飲食店が成功するための30の教え
2010.07.30
1970年代からの市場成長で2005年くらいまでの間に急激に小商圏化が進みました。 小商圏化は前述しましたように、お客様のやってくる範囲が店が増えることによって縮小することです。 小商圏化が進むと今までのやりかたをしていたらお客様は減少するので、何らかの対応が求められます。 ひとつが、小さくなった範囲で成り立つ商売にシフトしていく方法です。見込み客が少なくなる分、日常生活のあらゆる場面でできるように利用動機を増やします。そして、日常生活に溶け込み、変幻自在の営業をする方法です。 例えば、成長の時代、旧来のチェーンは主に食事需要に絞り込んで営業して経営効率を高めてきましたが、夜の宴会や通過儀礼行事もとれるようにします。そうなると、ランチなどの食事需要に対して、低価格ではギャップができてしまうので、あえてプライスゾーン的には980円くらいから1400円くらいのプライスゾーンで営業をします。そうすることで、ゆったりとしたイメージを損なうことなく、食事客を取り込むことができます。 小商圏化が進むと成長の時代のように新規客が増えなくなり、決まった人を相手にせざるをえなくなります。ある限られた利用動機で来店頻度をある一定以上上げることは難しいです。この現象に対応する場合、ふたつの選択肢が考えられます。 ひとつは、あまり利用動機を限定せず年間トータル来店回数を増やす店作りをしないいけなくなります。 もうひとつは、来店のスタイルを目的来店型にして商圏を広げる方法です。この場合は、目的をもってわざわざ遠くからやってくる店作りをしなければならなくなります。 例えば蕎麦屋でしたら、日常の食事需要に対応してカツ丼と蕎麦のセットのようなセットメニューにすると、わざわざやってくるお客様に向かなくなります。したがって、利用動機が「近いから」という顧客に限定して裏メニュー的な位置づけで営業する分にはいいですが、売上構成比が高いからとPOPやメニューブック上で目立つようにしてしまうと、遠くからお客様をとれなくなります。 蕎麦屋で目的来店を狙いたいなら、その店にしかない蕎麦開発し、なるべく特殊な提供方法で提供し、お客様の目的意識を刺激すべきなのです。横浜に田中屋という繁盛蕎麦店があります。この店の人気メニューは板そばです。大きな杉板で提供します。 この板そばは見た目にインパクトあるためにわざわざお客様がやってきます。そして、つけ汁を選べるために、家族や大人数で食べられます。そして、ざる蕎麦の大盛りと商品設計は同じなので、慣れると日常の昼食という位置づけに近いかたちでも食べることができます。 さて、遠くからお客様をひっぱるには、先行した情報が重要です。はまりそうな評判を先にある程度浸透させておくのです。 次にどう発見してもらうかを考えます。「商品が一番の販売促進」と考えにかなり原価をかけていて集客できているならいいのですが、そうでない場合は、いかにメディアに載せ見込み客に知らしめるか、しっかり見込み客に知ってもらうための営業戦略をたてないといけません。そして、気長に浸透させる一方で追い風が吹くのを待たねばなりません。追い風が無いときに無理に羽ばたこうとすると、墜落してしまうことがあります。「いい風が吹いたな」と思ったら、思い切り、いち早く飛び立つのです。しかし、多くの場合、ブレイクする前に店をやめてしまうか、売るものを変えてしまうというケースが多いです。それだけ我慢強く信じて待つことは常人にはできないことなのです。 時代の狭間は、大きなチャンスです。何かを感じたら、先行した情報を仕込み風が吹いたら先んじて一気に羽ばたいてください。大久保一彦の本もよろしゅう小さな飲食店が成功するための30の教え
2010.07.29
飲食店はよっぽどの気概がないと、基本的に、目が覚めるような良い食材を売りに来ません。儲かるものであって、扱いやすく、「まあこんなものかな」というものがほとんどです。流通しているものの限界です。 例えば京野菜の九条葱ですが、最近では東京でも流通しています。 しかし、その九条葱は硬めのしっかりしているものしか、流通していません。 それは、流通の段階で傷むからです。京都の鷹峯地区に京野菜を代々作っている樋口農園という農家があります。最近よくマスコミに登場する樋口さんですが、ここの九条葱はとてもやわらかく香りが豊かです。採れたての葱を食べると市販のものとは明らかに違うことがわかります。 実は、野菜はどんなこだわりの農法で作ったとしても取れたてにはかなりません。これが肉や魚と大きく違うところです。 取れたて、掘りたて、もぎ立てを“三たて”と言いますが、野菜自体が生きているために、採られても一生懸命生きつづけようとします。そのためにどんどん呼吸をして自らの糖を燃焼してしまいます。よく産地でとうもろこしを食べて甘くておいしいから買ってきたらおいしくなかったという話をききますよね。あれは、糖が時間経過とともにかなり減少するためなのです。見た目は同じでも実は大きく商品のクォリティは下がっているのです。 ですので、その農園で食べた味が本物の味であり、どんなにいい野菜を仕入れても産地に近い店に東京の店は勝てません。 野菜の予冷※、温度管理※、CA貯蔵法※などのポストハーベスト技術の発達で鮮度維持がなされてはいますが、産地に行ってみれば取れたてかどうかの違いははっきりわかるはずです。 特に、流通業者からの仕入れですと収穫してから店に入るまでに3~4日はかかるので、このギャップは野菜の場合、非常に大きいです。地方の人が東京で食事をすると野菜がおいしくないというのはこのためです。 したがって、飲食店はまず生産地に赴き本当の味を知らないといけません。旅行が身近になり産地直送が当たり前になると消費者はあなたがいいと思っているものをおいしいと思わないレベルになっているかもしれません。もうそうであるならば、その味をどう近づけ再現するのかを再構築する必要があります。 アメリカのバークレーにシェ・パニーズというレストランがあります。そのレストランのオーナーであるアリス・ウォータースはもう40年も前に「レストランは生産者に近づけ」と提唱しました。アメリカは第二次大戦後のチェーンレストランブームで食品は工業化され、生産者もわからない状況にありました。そんな当時のアメリカのレストラン業界への提言をしたのです。 日本の外食産業も2005年に人口が減少局面にターンした今、やっとこの生産者に近づくタイミングになったと言えるでしょう。 実は日本でもこのようなことにお気づきになられた経営者も結構いらっしゃいます。その中でも1990年代後半に野菜バイキングの店を始めた元岡健二さんの言葉は印象深かったです。元岡さんは以前大手チェーンにいらっしゃっていろいろな生産者を回ったそうです。あるとき、元岡さんはそんな生産者の中に自らが農薬の被害に合い、細々と農業をやっている人の話をされました。その生産者の野菜はとてもおいかったそうです。しかし、形がでこぼこでチェーン店は使えなかった。その野菜を使いたいということで始めたのが野菜バイキングの店なのだと思います。 チェーン店を中心に飲食店はメニューをきっちり計画して決めレシピ管理をするようになりました。レシピ管理すると食材はレシピにあわせる必要が出てきます。 例えばトマトなら「Mしかだめだ」のようになります。そうなると、使うことができる野菜が限定的になるわけです。 欲しい食材はどこの会社も同じですから、逆に人気の無いサイズは使われなくなります。そうなると食材の廃棄にもつながります。 逆に素材に合わせて運営するとしたらどうなるでしょう。実はレシピが邪魔になるのです。ある程度のレシピは役立ちますが、原価管理のためにレシピにないものは使えないとすると、旧来のメニューブックを使って素材から売場は作ることができません。 また、メニューブックを作ると売れ筋が発生して、やはり売れるものを仕入れるしかありません。つまり、メニューブックがあること自体が難しいのです。 そこで、メニューブックを廃止して、素材から発想していろいろな料理を作ってお客様に自分でとって食べてもらうバイキングという方法にいきつくのです。 このやりかたの良いところは売りの商品が必要ないため商品に縛られないことです。飲食店特有のメニューという縛りがなくなるのがわかるわけです。メニューはある意味、阻害要因であったわけです。 メニューが必要ないために、商品力も必要なくなります。お客様も予算さえ合えば気軽に日常的に利用しでき、そして何度利用してもある商品に偏っていないために飽きがこない点が非常に良いです。 さて、食材を足で稼いで仕入れる目的にはもうひとつ重要なことがあります。それが、お客様に自分が保証するということです。究極的には自分以外お客様に品質を保証できる人間はいません。それをあなたの目で確かめることで確実性を増すことができるのです。 さらにお客様に品質を保証しようとすると、自分で作るようになります。店に近い自家菜園で野菜を作ればお客様に安心とおいしさを提供できるのです。 同じようなことはわれわれコンサルタントに言えます。今までのコンサルタントはアドバイスをすることが仕事で、ホームページの制作、チラシの作成、メニューブックの制作や内装のコーディネートなどはそれぞれの専門業者をご紹介してきました。しかし、細かなところまで行き届いたサービスを行なうには、自社の中ですべてをなるべく同じスタッフがやったほうがいいです。今、そうしているところとそうでないところではお客様へのサービスに大きな差が出ているように思います。中抜きの時代といわれますが、単なる紹介業では必要がなくなっているのです。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.28
真面目でコツコツやる人が生きていくのが大変な時代になりました。 日本の戦後教育は言われたことがきちっとできるというスタイルの教育がなされてきました。 よく日本の教育と海外の教育の違いは「5+2=?」は「?+?=7」だと言われています。 もちろん、前者が日本で、真面目に覚えれば良かったのです。 市場が成長局面にあれば、真面目にコツコツやってくれたほうが効率はいいです。 企業戦士と言いますが目標に向かってマシーンとなり、いかにそつなくやるかが企業に求められます。 しかし、今は違います。同じことをやっていて差が出る時代ですから、単に店で決められたことをやっていてはいけません。これまでの人口増加の時代に求められた人材の真面目できちっとやる人から、変わり者でも現状を大きく変えてくれる人が必要な時代なのです。世の中では同一労働同一賃金が是とされていますが、そもそも、サービス業において真面目にコツコツというのがあり得なくなった時代、同一労働という概念が成立しないのです。もし、同一労働であるなら、人による差は生まれないはずですからね。 確かに農業であれば真面目にコツコツやり草を1本1本丁寧にとった畑のほうがいい作物が育ちます。 しかし、サービス業となると単に愚直なまでに真面目にコツコツやっても評価されません。 それならば、真面目に仕事はするにしても、楽しく自分流に仕事をやったほうがいいのです。そのほうが傍から見ても楽しく見え、魅力に感じます。 成熟の時代とはやりたくないことを真面目にコツコツやる時代ではなく、やりたいことを真面目に楽しくやったものがちの時代なのです。だから、楽しいことを知っていないといけません。繁盛店のオーナーは遊び人であったり、ジョークが好きだったりと人生を楽しんでいる人が多いです。 あなたは楽しいことをしていますか?そうでないとしたら、はじける必要があります。 あなた自身が輝くために仕事を楽しみましょう!そして、お金なんて無くてもいいじゃないですか!将来なんて心配しなくていいじゃないですか!どの道、日本の人口は激減するんです。内需は減り、右肩下がりなんですからね!それなりにあなたの人生を楽しんでください。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.27
「思ったとおりのお客様が来ない」という声をよく聞きます。とくに、地方となればなおのことです。しかし、最初から思ったとおりのお客様などいないことを頭に入れておかなければません。 良いお店、良いお客とは、お店とお客様のお互いのチューンが合って初めてそう感じるのです。 では、思ったお客様で店を固めるには、あなたがお客様に教えることが重要です。教えるというとおこがましいですが、お店がお客様に楽しいことを教えてあげると思えばいいでしょう。 自分よりお客様のほうの文化度が高かったら、商売は成立しません。 お客様のほうが自分より低い位置にあるからこそ、対価をいただくことができ、商売として成立します。 しかし、実際、低い文化度のお客様にやりたいことを理解してもらうことはとても大変です。 わかりやすいところから慣れることからはじめて徐々に教えるレベルを上げていかなければなりません。 常に面倒だと思わず、粘り強く懇切丁寧に。それが教えるという言葉の意味するところです。 例えば、あなたはあなたのエリアのお客様がワインを飲まないと嘆くかもしれません。しかし嘆いていてはこれからの時代商売はできません。 大切なことはワイン飲むことの素晴らしさを教えることです。どんな人でも子供のころからビールを好きで飲んでいる人などいません。誰が教えたからこそ、ビールを飲むようになったのです。 同じようにワインはおいしいということに慣れてもらうように、ごくごく初歩的なことから始めて徐々においしさのレベルを上げていけばいいのです。これだけ多くの人がワインスクールに通うのは何らかのきっかけでワインの楽しさを知ったからです。最初は親しい友人が無償で教えてくれのかもしれません。ものすごく高いワインをご馳走してくれたからかも知れません。でも、誰が導いた結果なのです。それが教えてあげるということなのです。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.27
「すいません。赤ちゃんに水をいただけますか?」飲食店の現場にいればこのような不意のお願いを受けることはよくある話です。このようなお願いは、同じようなパターンが多く、今までの外食産業でもルール化したりマニュアルを作ったりしてより良い対応ができるように工夫してきました。 しかし、今の時代はここにさらなるレベルが求められるようになりました。 例えば、冒頭の事例で「赤ちゃんに水を頼まれたら氷の入っていない水を持っていく」というルールを作ったとしましょう。学生アルバイトさんの多くは素直なスタッフも多く、お客の言うとおり氷抜きでお水を持っていきます。 ルールに従って言われたことをするスタッフであるならば、サーバーの中でキンキンに冷やした水をグラスに注いでお客に提供します。 しかし、常にお客様の目線にない無意識を見ているスタッフなら、「待てよ、赤ちゃんだったら、冷やしすぎた水よりも少しぬるめお湯のほうがいいな」という結論に至るはずです。子供を育てた経験があれば、「ちょうど飲みやすいようにしてあげよう」と思うでしょう。 成長が続いた時代は、店を軌道にのせて次の店を出店して市場規模を拡大することを是としてきました。そのために、開店時に軌道にのせることが最優先事項だったと言うことができるでしょう。したがって、ひとつのことをいちいち考えて、考えて掘り下げるようなアルバイトや社員はわずらわしくさえ思え、何でもいわれたとおりにそつなくやってくれる資質のスタッフを求めていました。 ことアルバイトとなると、決められたとおりに、あるいは会社の意図したとおりに効率よくやってくれる資質こそその時代に求められていたものでした。 ところが市場が成熟してしまうと、それなりのレベルの店ではお客様にひきつけられるような魅力にはなりません。ただ、大きく違う必要もありません。大切な場面で、ちょっとしたことが「あの店は違う」という評判を得ればいいのです。 しかし、その場面だけできるということはありませんから、日々の積み重ねが同じようであって同じでない状態でなければならないのです。 この分かれ目が条件反射で動くのか、どんなに小さなことでも「常に考える」習慣を元に常に改善できることはないかという思いで行動しているかどうかです。 どんなに小さなことでもいいから、疑問を感じ、常に改善する方法を考え、やれることはすぐに行動する習慣どうつけるかで現場は変わってしまうのです。 この習慣がその人の育った環境に依存します。その素質のある人を採用し、現場においてもどんなに小さなことでも常に考え行動してもらうには、入社時のオリエンテーションがとても大切です。 一般的に「人手不足の店ほど現場力が低い」という私の経験則があります。 なぜ、そうなるのかというと、人手が不足していて頭数が必要な店は結果として、いきなり作業に割り当てることが多いからです。いきなり、作業に割り当てると「(この職場は)決められたことをやればいい」という発想が深層心理についてしまいます。そうなると、作業を覚えると安心してしまい、その後伸び悩むことになるのです。 もちろん、オリエンテーションを行っている店も多いでしょう。しかし、ハウスルールの説明や会社の経営理念の説明で留まっているとしたとするならば、不十分なのです。何が不十分なのかと言うと、オリエンテーションに「考える」習慣付けの入り口になるプログラムを入れないといけないのです。 そのためには、例えば赤ちゃんの水を頼まれたお客に対する対応のような事例をもとに考えさせるプログラムを入れるのです。もちろん、Off-JTが終了した後でも、考えるということを基本にトレーニングを行います。すると、今までの時代のように業務手順書が書かれたものを引き渡すスタイルは合わなくなります。 逆に、ある程度、白紙のマニュアルを渡して話を聞きながら、自分で理解しながら、そして考えながら自分自身で考えさせるスタイルが良いわけです。 私は、今まで多くのチェーンの現場に立ち業務改善をしてきました。その起点が考えることでした。当たり前と思うことでも常に「本当にそうなのかな……」と考える習慣が大きく現場の問題を顕在化させ、解決へと向かわせました。 「新宿さぼてん」の荻窪店の店長に私が赴任したときに、ピークタイムのお客が入れ替わる時間の不思議な現象を考えました。 それが、何で、アルバイトたちは入りきらない下膳したお盆を床に置くのだろうということでした。 考えた末に客席数と下げてくるお盆を収納スペースのミスマッチであることに気付きました。私はこのために棚を増設しました。すると、これをきっかけに飛躍的に売上を伸ばしました。 面白いのは、私のこの考える習慣はアルバイトにも影響を与え、次々と業務改善を提案してきました。 また、そんなに遠くない立地に数店舗ある場合、週に5回くらい勤務するパートやアルバイトに発注などを任せることにしました。適正在庫量を考えてもらい、コントロールさせてみる。 そして、このときのポイントは不足した食材を近隣の店舗から都合させることです。取りすぎたら、回りの店舗に引き取ってもらうことを徹底するのです。もちろん、いろいろなミスが発生しますが、それが考える習慣をさらにバージョンアップさせるのです。 また、近隣の店の在庫の状況なども考えるようになり、ひいては運営の状況なども理解するようになるのです。考えるという習慣をリーダーが持つとスタッフはおろか、アルバイトの意識まで変えます。 言われたことをするだけのあなたからの脱皮はあなたが輝くためにとても重要な第一歩となるのです。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.27
売上がいつになっても増えない店、お客様に支持されない店には共通点があります。 それは、「店が何をしようとしているのかを具体的に示していない」ことです。もし、あなたの店が何をしようとしているのかがはっきりしていないのであれば、具体的に考え、やろうとしていることに向かって進むためにその象徴的な行動指針を示す必要があります。そして、それを徹底するのです。 例えば、CH8の冒頭で入れ忘れの苦情処理の事例で、私にとってたかだか一枚のとんかつをお客様の立場に置き換えると、家族だんらんのための重要な一枚だったお話をしましたね。新宿さぼてんは単にとんかつを売っているのではなく、「とんかつ店を通して、家族団らんを売っている」のでした。 しかし、そうスーパーバイザーの私が言っても、現場は忙しいので、「でもねバイザーはいつも現場にいないからそう言うんですよ。そういう苦情は人がいないときに来るもんなんです」そう言うに違いありません。 ふつうの人間であれば、「物理的に厳しかった」「人がいなかった」「時間がなかった」などという逃げ口を考え、建前は建前と思ってしまいがちです。そして、そんな状況下での苦情処理はとても面倒くさいですからね。 だからこそ、やるべき方向が決まったら、ぼんやりした抽象的な行動指針ではなく、「この人本気だよ!逃げられないんだ」と思うようなシンボリックな行動で示す必要があります。 私は、「店を閉めてもいいから、タクシーを使って入れ忘れは届ける」と、いう行動指針を示しました。そうすることで、パート・アルバイトの意識の中にはっきりと「とんかつ店を通して、家族団らんを売っている」と、いうことを植え付けることができます。「とんかつ店を通して、家族団らんを売っている」ということが、店の隅々まで浸透したからこそ、私の担当していたエリアの店舗の多くには専属の社員はおりませんでしたが、パート・アルバイトで運営する売場でも素晴らしい店になり、売上や利益を自然に最大化することができたのです。 あなたの向うべき方向がきまったら、シンボリックな行動を示し仲間と共有すことがこれからの時代大切なのです。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.27
あれは今から15年ほど前のことです。私は荻窪ルミネにあるとんかつ専門店「新宿さぼてん」で店長をしていました。当時の駅ビルの食堂街は娯楽としての需要があり、ある意味いい時代でした。ただ、1990年半ばというバブルが崩壊した後ということがあり、気軽に食事ができるとんかつのような業種は、業績が上向きつつある時代でした。あるとき、一通の手紙が当時の私の上司から届けられました。 手紙を読み始めると「あー、あのお客さんだ」と、その日の出来事が私の頭の中に昨日のことのように蘇りました。「私はルミネの抽選で1万円分の食事が当たりました。せっかくだからといつも利用している“新宿さぼてん”で食事しようと思いました」こんな書きかただったと思います。 当時の店長は入り口でお客様を席に誘導するグリーターや会計をするレジ担当をすることが多かったのですが、その日の私も入り口におりました。確か、そんなに忙しくない日だったと記憶しています。お客様がルミネの発行した食事券を私に差し出し、「この食事券は使えますか?」と尋ねました。 食事券の額面は1万円。それは、夏と年末に駅ビルで行う抽選会での賞品。1万円ですから、かなり幸運なお客様だったのではないかと思います。 私は、こう応えました。「使えますが、うちの店ではたいした金額にはならないのでもったいないですよ。となりの『築地玉寿司』や『新宿つな八』で使われたほうがいいですよ」 しかし、それでもうちの店で食事をされたいとのことでした。「そこまで言うならまあいいか」と思い、お客様を席にご案内しました。 ご注文をいただいた伝票を眺めながら、私は「せっかくだから、このお客様にお土産でも注文していただいて、1万円分をほぼ全額使ってもらおう」と邪まなことを考えました。 この食事券はお客様が利用した分のレシートを事務所に提出すれば、その金額分を交換してくれるシステムでしたので、うまいことを言ってお客様に何らかの商品をお買い上げいただけば良いと思ったのです。もう少しでその月の予算達成が迫っていたことを思い出したのだと思います。 お客様にお土産の提案をすると、「悪いはね、それじゃ……」と言って、お土産の弁当を4つ注文されました。4つになると金額が1万円を超えてしまうので、それを伝えると「いいのよ」とおっしゃいました。そのせいもあり、その月の売上は見事予算を達成したのです。 ところが手紙の内容は次のような物だったのです。 「たぶん店長さんだと思うのですが、男性のかたが『1万円の食事券なのでもったいないですよ』と言われました。『それでも構いまいませんよ』と伝えて私たちは店に入りました。 注文が終わると、その男性が私たちの席までやってきて、『注文した商品では5000円くらいにしかならないので、お土産でもお詰めいたしますか?』と言いました。私たちは男性のご提案に従い、お土産のお弁当を持ち帰ることにしたのです。 私たちは食事券が当たって無料で食事をしているにもかかわらず、この店長には心から親切にしていただきました。このときのことが忘れられず、会社のかたに知って欲しくなり、この手紙を書くことにしました」 それは、そのときの私の思惑とは大きく異なるお客様の感謝の気持ちでした。それは、私のそのときの価値観を翻すものとなったのです。当時の私は、「給料に見合った仕事をしていればいい」という価値観を持っていました。裏を返すと「給料なりの仕事をすればいい」という意識が当時の私にはありました。 両親が病気だったとはいえ、「給料が納得できない」という理由で私は何度も転職を繰り返していました。もちろん、このことがあった後もそう思うことがたびたびありました。しかし、何度かその気持ちをひきとめたのもこのお客様とのこのできごとが大きかったように思います。 一般的に仕事というと生活に必要な手段ととらえている人が多いでしょう。しかし、お礼状をもらってみて、そのもらったときの嬉しい気持ちが、お金では得られないなんとも言えない魅力を感じました。その魅力が当時の「新宿さぼてん」の現場にはあったのでしょう。なんだかんだで私は「新宿さぼてん」の現場に立ち続けました。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.26
可処分所得の激減やその不安は今、生活様式を変えようとしています。 例えば、今までは何気なく出費していた日常必需品も、考えて行動する人が増えています。スーパー、コンビニの値下げ合戦が進んでいるのを見ればわかりますね。 日経レストランによれば、「しかたない場合は除き必要のない外食はしない」という解答が増え、外食回数が激減しています。確実に出費したくないという心理が消費にブレーキをかけています。 一般に、不景気のときは割安感を感じる食事需要の業種が良いと言われます。ラーメン、とんかつ、カレーなどは他の業種に比べると業績が良いと言われます。これらの店はもともとリーズナブルでそんなに高いイメージがなく、看板などの打ち出しを変えるだけで消費を刺激し「お腹がすいている」今すぐ需要を吸収することが可能だからです。 逆に、接待するサラリーマンやOLが多いエリアでの少し前に流行っていたダイニングは苦境に立たされています。OLに支持されていたフレンチやイタリアンも同様です。これらの店は来店前に店を吟味しますので、業績の良い店と悪い店での業績の二極化が顕著になっています。 業績の良いところは高単価であってもお得感があります。逆に、景気の良いときに出店した店は投資がかかっており、雰囲気で売っているケースも多く、割高感を強く感じてしまうケースが多いです。 さて、後者のようなカテゴリーの店はもともと来店頻度が低いために、一度来なくなったお客様を呼び戻すことが困難です。消費を躊躇するようなムードの報道が続くとお客様は店から足が遠のくでしょう。その遠のいたお客様をまず取り込むのがもともと長く続けている繁盛店であり、そうでない店は沈んだまま浮上できないというのが一般的です。その理由は忘れられ、記憶の奥にしまいこまれ、思い出してもらえないことが大きいです。 思い出してもらうには思い出しきっかけを作らなくてはなりません。思い出してもらう、忘れられないというのは成熟した時代の商売の基本です。 新規客が増えない時代、思い出してもらうきっかけを作りを戦略的に行なうことが重要なのです。大久保一彦の本もよろしゅう行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.26
100年に一度という経済不況になってどのようなことが起こり、商売にどのような影響を与えているかを見ていくことにしましょう。 まず、企業の業績の急速な落ち込みにより雇用調整が進んでいます。もちろん、失業者も増えていますし、新卒の採用を見送る企業も増えているのは連日報道で伝える通りですね。 雇用創出という言葉が闊歩していますが、内需だけを考えれば、2005年くらいから人口が減少して、ニューカマーが激減しているわけですから、基本的に、ここ20年~30年は売上ダウン、すなわち、仕事が減るのは目に見えていますね。 だから、もしかしたら、「いい学校出て就職する」という私ぐらいの世代が持っている価値観自体崩壊しているのかもしれません。また、いつかは中国の経済も成熟しますし、また新しく新興国が現れても経済成長はストップします。まして、グローバルな競争を行なっているわけですから、競争力のあるところが一人勝ちします。したがって、いま雇用されているなら、無くならないように自ら死守するように行動を改めないといけません。これは公務員でも同じかもしれません。ひとり油断やぶる下がり根性がこのような時代、悲劇においやるのです。 商売の環境を考えても現場が大切ですし、自分の仕事を無くさない上でも、行動を改める必要があるのです。これからの時代は個人経営者おように自分の働き口は自分で死守するくらいの覚悟が必要なのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.07.26
私にはコンサルタントをやっている同業者のから、手に負えない案件のご紹介というか無茶ブリがあります。 そんな紹介を受けたお店のオーナーが私に口をそろえて同じことをいいます。「客数が急速に減っています。どうしたらいいですか?」 実は「お客様が減っている」→「さあ大変」という図式の人は考え方自体が人口増加でニューカマーがやってきた時代の遺物的な考え方以外何ものでもありません。 人口の減少の時代ですから、発想の転換が必要なわけで、「どんな客が減っているのか」をもっと掘り下げて考える必要があるのです。 わかりやすく言えば、新規客が増えないのか、今まで来店されていたお客様が減っているのかのように「どんなお客様が減っているのか」を考えていかないといけないのです。そうなると、見た目でもなんとなくわかりますが、アンケートなどを使って定点定量観測などをする必要があります。 新規客であるならば、アンケートで「来店の目的は何ですか?」「今回のご来店はどなたと一緒ですか?」など利用目的を把握する必要があります。 そのうえで、「当店をお選びになった決め手は何ですか?」「当店をどこでお知りになりましたか?」という問いで、メディア戦略をたて、集客メディアを見直す必要があります。 CH16でお話しましたように、小商圏化していますから、目の前、近く、遠くの順で見直します。 例えば、食需要の店であれば、目の前を歩いている人はお腹がすいていれば今すぐ来てくれます。目の前の人に発見されるために看板や外装を考えます。5分圏の人であれば、何らかのきっかけで知ってもらえば来店に結びつきやすいでしょう。5分圏内なら、チラシのポスティング、折り込みチラシ、御用聞き営業です。遠くからなら、雑誌やホームページなどの飛び道具が大切です。ただし、遠くから来るだけの価値がなければ意味をなしません。 今の時代、メディアを使いこなすためには幅広い知識が必要です。昔のようにただ折り込みチラシを思いつきで入れても新規客は増えません。メディア選定、内容の吟味がなければお客様の集客はできないのです。 新規客をつかむことも大切ですが、ニューカマーが減少している時代ですから、同時に新規客の再来店も押さえておかないといけません。ここがやっかいです。発見時の魅力を増やせば、利用後の小さな感動は得にくいからです。 今、東京などの店が多いエリアでは新規客の再来店率が都会では20%から30%しかないと言われています。初回来店のお客様はまだお店との人間関係を築いていませんから、離れやすいです。都会での新規客の再来店率が低いのは、利用後に感激した人が少ないことを物語っています。また、店が多いため、小さな感激では忘れられてしまう面もあります。 新規客の再利用率を上げるには、再来店を妨げる重要な要因をアンケートで探り、カバーする必要があります。 お客様が店や商品に求めているものが満たされていなければ、再利用率は上りません。 そのために、不作為に項目を入れて「あなたが当店(商品)をご利用のうえで、重要なことに○をつけてください」という質問のアンケートを実施して、お客様が潜在的に重要だと思っていることを押さえます。その上でいろいろなことをします。 サービス業のように目の前にお客様と相対で商売している場合は、始めてかどうかを見極めることはとても効果的です。なぜならば、始めてのお客様はとても不安で、この不安が作用してちょっとしたことで、気分を損ねてしまうからです。 そして、新規客かどうかを見極め、心配に思っていることをさりげなく、アプローチします。 また、アンケートの「来店の決め手は何ですか?」という問いの答えには「スタッフを知っているから」という回答が多いです。そこで、店のスタッフに親近感を持っていただくために、名刺交換などをしてお客様との距離を縮めることで再来店率をあげ、客数増を実現した事例があります。 このように、同じお客様ではありますが、店を利用する動機は千差万別。しっかりわけて考えることが重要なのです。※アンケートの実施方法につきましては、「飲食店完全バイブル 売れる儲かる繁盛店のアンケート術」(日経BP社)をご覧下さい。儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術売れています!
2010.07.25
店は店が増えることで商圏という概念が出てきます。例えば、同じような店ができれば、新しくできた近いほうの店に行けばいいわけです。この繰り返しがお客様の来店範囲を規定します。 店あまりの時代ですから、よほどのことがない限りわざわざ遠くになってしまった店に行きません。お客様が遠くの店に行かなくなり、商圏が狭まることを小商圏化といいます。 東京のように店がひしめくようになると、よほどの店でない限りお客様は5~10分以上移動しなくなってしまいました。東京にはそれくらいありふれた店はいっぱいあるわけです。 これは東京のような都市部に限った話ではありません。地方も2005年までの大量出店で店が溢れる状況になりました。 小商圏化によってお客様によほどの店でない限り移動しないという習慣が身に付いてしまいました。そのためにお客様が遠くにわざわざ移動するのは、山間部などや原子力発電所があるような辺鄙な場所でそのエリアか、特別で店がないためのような特別な事情がある場合だけに限られるようになりました。 消費者は特別な場面でない限り、10分くらいの移動距離の中で消費を行っています。トイレットペーパーなどの最寄品の場合はさらに行動範囲が狭まり5分圏になっていると言われます。通信販売が一般化すると消費者はこのような便利さの中でさらに移動しなくなっています。 商圏の大きさは移動手段に依存します。5分という移動時間を距離で表すと徒歩なら350m、自動車でも1km。とても狭いです。 例えば、数年前、飲酒運転の取り締まりで郊外型の居酒屋が売上不振に陥りましたが、あれはまさに移動手段の変更による小商圏化という現象なのです。 小商圏化が進むとお客様の来店する範囲が狭まり、極端に見込客が減ります。小商圏化の時代を生き抜くにはまずお客様の再来店率が重要になり、加えて次の三つの条件のいずれか必要です。1 需要が十分あり競争が少ない場所を選ぶ2 競合がある狭い商圏でも店が成り立つための十分見込み客のいる場所を選ぶ3 わざわざ来るに足る店の独自性を高め魅力をアップするこの三つのどれにもあてはまらない、どこにでもある無難な店が集客に困り、値引きに走りデフレが進行しています。そのような店は値引き以外、手段がないからです。 小商圏化すると広めに商圏がとれた時代と大きく変わる点がもうひとつ出てきます。出店場所による客層の違いです。 チェーン店も外食拡大期には、まだある程度の範囲から見込客がやってきましたから、どの店も似たような客層や利用シーンのお客様を相手にすることができました。 ところが、市場が成熟すると、商圏は小さくなり店を出した場所によって客層や利用シーンが変わってしまいました。そうなると、お客様に支持されるには出店した店の商圏に合わせて個別的な対応が必要になってきました。つまり、最大公約数的な統一フォーマットによる従来型のチェーン店が適合しなくなってしまったのです。それは、マニュアルをもとに決められたことをしっかり教育訓練しサービスでの差別化をしてきた人口増加の時代とかけはなれたことであり、「わかっているけど、できない」という状況に多くのチェーン店は陥っています。小商圏化という現象はチェーン店を支えたシステム自体を無意味にしてしまったのです。いち早く市場が成熟したアメリカでは流通チェーンのホールフーズマーケットはみごとにやってのけて急成長しています。しかし、老舗的な既存チェーンは大きすぎて変ることができず、苦戦しています。 そんな中、地方の現場主義を唱える若手経営者が伸びています※3。 お客様は日々新しいものに接し、知識を付け変化しています。その変化を感じ取り、自分の店の目的に適合させ、やりたいことを実現に向かうよう現場を微調整できることが重要となっているのです。ひとつの店に手間をかけて商圏にあわせて進化させていくことが重要になった今、「開店したら、はい次の店」とフォーマットのコピーを繰り返し、維持だけを行なっていた旧来のチェーンのやりかたは通用しません。退場あるのみなのです。今日のおすすめの本デフレの正体大久保一彦の本もよろしゅう 【中古】ビジネス ≪ビジネス≫ 「行列のできるダントツ飲食店」の秘密【PC家電_171P10】【10P26jul10】〈ダントツ飲食店の〉儲けを生み出す「集客」の秘密絶版間近!ダントツ飲食店の繁盛ノートおかげ様で絶版間近!!
2010.07.25
日本は戦後のベビーブームで人口が著しく増加しました。復興も重なり、産業にとってはハレの日が続いたのです。しかし、2005年、人口減少に転じ、時代は大きく変わり始めました。そのことに気づいていない企業が多いのではないでしょう。もちろん、企業だけではありません。 市場が飽和して競争が多元化していますから、商売の難しさは増しています。この難しさに拍車をかける要因が人口減少なのです。 日本は戦後、高度成長期を体験しました。日本の世の中のしくみや企業経営の前提は、経済成長を前提にしている面が多いです。あまりこれまでは触れられることはありませんが、経済成長は人口の増加という前提があっての話です。 世界的にみても、産業革命以降、人口が増える時代が始まりました。そして、石油の普及で人口は飛躍的に増えました。しかし、多くの国は、右肩上がりに人口が増加しなくなり、経済が成熟していきました。ベビーブームが起こると、急速な人口増加が起こります。それから20年~30年の時を経ると消費のピークが始まります。そして、いずれは市場は成熟し、新しい局面に入ります。 まず、1975年~1990年バブルまでの時期、団塊世代の就業、結婚などにつれ消費のピークとなりました。1990年~2005年というのは団塊ジュニア+お金のある団塊世代でバブル崩壊ももろともせず経済を立ち直らせました。こんな時代、大衆マーケットは拡大を続け、成長しました。店には次々と新規客が訪れ、経営もしやすかったわけです。 しかし、2005年くらいから人口が減少という局面に移りはじめました。右肩下がりに人口が減少するわけですから、長期的には内需が確実に下がることになります。 長期的と言っても、今年が団塊世代の最後の大量退職期ですから、10年後には確実に低成長に入ります。 さて、人口減少という現象はすでに一部の大学の学生数に表れています。多くの人気のない大学はここ数年定員割れが続き、先行きも非常に深刻になっています。閉鎖が決まった大学も多いです。 今まさに、最後の退職期を迎えた団塊世代が75歳以上となる10年後のポスト2020年を見据えなければならないタイミングなのです。そうでなければ、肥大化した店は確実に経営破綻します。 人口が増えない時代とは新規客が増えない時代でしたね。新規客が今までのように増えないのですから、店はお客様と長期的な関係を築く必要が出てくるのです。そのことに気づいている人が多いから生涯顧客づくりという言葉が囁かれるようになったのです。 ずっとつきあえる店とは、流行に流されない店作りを意味します。多少、流行を取り入れるくらいはいいのですが、流行を軸にしてはいけません。流行というのは需要の気運ですから、市場が成長しているときにはプラスに作用しますが、いずれは収まります。だからこそ、長い視点での経営が重要になるのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.07.24
人間はものを選ぶときに目の前にはっきりと見えているものの印象にとらわれて選択をする傾向にあります。 例えば、高卒の人間より、大卒の人間、見た目が美人のほうが印象はいいはずです。 サービス業ですから、対お客様となると印象がよいにこしたことがありません。 しかし、職場の仲間内となるとそうでもありません。「あの人はいい大学を出たのに仕事ができない」「あの人は美人だけど、性格が悪い」 実際は、いい大学を出ていることと仕事ができることに因果関係はありませんし、美人だから性格がいいという因果関係はありません。 人間は目に見える印象を評価の基準としてしまい、相手の評価に大きく影響を与えてしまうケースが多いのです。しかし、このような習慣を持っている人は感動する店作りはできません。なぜならば、感動とは目に見えない積み重ねが大切だからです。 私は2005年くらいまで“小手先系”の講演の依頼が多かったです。しかし、「夢―商通信」で地方の繁盛店や高級店、銘店、老舗など向けに情報提供をはじめてしばらくするとお招きいただく講演も「商売とは」という切り口で実践的なお話をさせていただくことが多くなりました。 ダブル講師の場合も多く、相手の先生のお話はとても私にとってもとても有意義なことが多いです。 2009年にリッツカールトンホテルの国際親善大使をなされている井上冨貴子先生と一緒に講師をさせていただきました。その講演で井上先生はリッツカールトンホテルの総支配人より、「最後の一滴が落ちたんだね」と言われたときのエピソードをお話になられていました。 感動は瞬間的な刺激ではなく、細かく積みかねたことが土台になって、最後の一押しがあって起こるもの。それは、リッツカールトンのドアマンのさりげない挨拶から始まり、レセプションの爽やかな笑顔や対応、案内係の気配りなどがあって、何か特別な対応があって感情がはちきれます。ドアマンやレセプション、それぞれの持ち場の人が一滴ずつコップに水を入れており、感動は、最後の一滴が入った瞬間コップから溢れるという例えなのです。 映画監督は細かい演出にこだわります。画面にさりげなく映ったテーブルの上のオレンジひとつをとっても偽者ではいけないのです。いや、お金のない家庭を表現したいならいかにも安っぽいオレンジを、裕福な家庭は千疋屋総本店の一番高いオレンジでないといけないのです。ぱっと見にはオレンジにしか見えませんが、このような積み重ねが感動する瞬間に大きな影響を与えるのです。 いわばお客様の心にコップがある考え、一滴、一滴地道に注ぎ続ける。そして、最後の一滴を入れるところまでたどりつけるかどうかが感動の分かれ目なのです。 派手でわかりやすいものに迎合される時代ではまだございますが、売れる店と売れない店の差を作り出すものは、このような小さな違いなのです。 あたなはお客様の心の中のコップを意識していますか?大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.07.23
私は世界のレストランを回って食事をしています。このことが飲食店の演出家としての引き出しを増やしていることは言うまでもありません。レンタカーを運転して数時間かけて、山の中の三ツ星レストランなどへ行く飲食コンサルは私くらいでしょう。 本当、いろいろな店や宿に行きました。 これだけいろいろなレストランやホテルの旅をしながら、いいものに接することに慣れてくると、それらをじっくり見る心の余裕が生まれ、本当に感動することは多くなります。 私の好きな菜根譚の中に「春の花、夏の涼風」という言葉があります。春の花を見て「美しい」、夏に木陰で吹いた風を「ああ涼しいな」と感じるくらいの心の余裕は持ちたいものだという例えです。 忙しいとついつい見過ごしてしまいそうなことですが、日常生活の身近なところに「いいな」と思うものはいっぱいあるし、それくらいの心の余裕が人を幸せにするのです。 しかし、現代社会はとても忙しく、誰にでもわかるようなわかりやすいものでなくてはダメな時代になってしまいました。 しかし、競争の激化と情報の発達で底辺の店のレベルは上がり、ふつうの店と底辺のレベルの店の運営水準はあまり大きな差がなくなっています。 例えば、30年前の飲食店に比べて、料理がまずい店や、サービスが悲惨な店は珍しくなったと思いませんか? また、世の中がとても便利になった一方で、現代人はとても忙しく、時間に追われるようにもなりました。時間がないことを背景に、日常生活では、「たいした差がないなら少しでも安く済ませたい」という店選びが主流になります。 面白いんですが、その一方で新婚旅行や特別な場面では、「それなりの場面だから多少は出費したとしても、感動に値する商品や店やホテルを選びたい」という店選びなります。 私は老舗料亭のお手伝いが多いのですが、お食い初めのような子供の行事にはとてもお金をかけていることを実感します。 店選びの基準ですが、前者はそんな商品の良し悪しを吟味している必要がないので、基本機能(味のインパクト、満腹感)がしっかりしていて安いという意味でのわかりやすさが、後者の場合は人の評判となるくらいのわかりやすさが重要です。 さて、多くの人の評判を得るには、基本的に継続的なおつきあいをお客様がしない以上時間をかけて教育などしている暇がありませんから、別の要素が必要となります。 私は多くの店やホテルを旅して気付いたのが、わかりやすい「卓越」したものがあることです。 例えば、ナイアガラの滝は自然の驚異としか言えません。初めて瀑布をそばで見たら誰でも驚くでしょう。 店だって同じです。ニューヨークのブルックリンにリバーカフェというレストラン&バーがあります。このレストランはまさに摩天楼の写真そのもの。卓越した夜景が見ることができます。だからこそ評判になりお客様が絶えません。 実は料理を代表する技術も同じことが言えます。ある一定水準以上の技術となると見るものを魅了し、なんとも言えない感動を呼び起こします。 例えば、野球のイチローは代表的です。イチローのプレーは感動に値しましたよね。プロゴルファーの石川遼だって同じです。テレビでゴルフを見ていてなんとも言えない思いがこみ上げることがあります。 しかし、プロの選手になるだけでも立派ですが、いくらプロだとして並の選手はこれらの選手のときに感じるような、なんとも言えない気持ちにはならないと思います。せいぜい、マラソンのケガでもう走れないくらいなのにふらふらになりながらゴールする場面のようなときだけですね。 実は、誰もが感動するには素人にもわかるある一定水準を超えた技術が必要であり、並の技術ではだめなのです。 実は料理人の技術にも同じことが言えます。私も料理で感動したのは卓越した調理技術のある人でした。例えば、フランスのオーブラック地方、ライヨールという町に、ミッシェル・ブラスというレストランがあります。この店のスペシャリティに野菜のガルグイユというメニューがあります。たくさんの野菜をその素材に合わせた料理法でそれぞれ調理して、白い皿をキャンバスに見立てて芸術的に盛り付けた料理です。この料理がテーブルに並んだ瞬間、「わぉっ!」と叫ばずにはいられないでしょう。この料理に感動し、この料理を模して東京でも提供している店がありますが、ライヨールで食べたミッシェル・ブラスの皿を超える店はありません。北イタリアのクレモナから1時間ほど走ったところにあるダル・ペスカトーレの南瓜のトルッテリというパスタも凄かったです。テーブルに置かれた瞬間に美しさにため息をつきました。そして、食べみてさらに感動はボルテージに達しました。過去食べた中でこれだけおいしいパスタはありませんでした。 卓越した技術を活かすにはもうひとつ重要なものがあります。ステージです。イチローや遼くんが多摩川の河川敷でプレーしていてもおそらく感動しないと思います。プロの集まる最高の場面でプレーしているから光るのです。 料理人も同様です。料理人が輝くためには空間が必要です。空間も、内装だけでなくわざわざその店のために行くようなロケーションなど卓越したものが必要です。雑居ビルでは難しいでしょう。 私は「パリの三ツ星が何か足りないなぁ……」と常々思っていましたが、それが空間なのです。しかし、多くの店はこのような空間がありません。 最後に素材があります。多くの店は「高級食材を使っている」と言います。しかし、実際は卓越した素材も使えません。卓越するために卓越した素材を使わないといけません。二番では卓越できません。しかし、多くの店は卓越した素材を使えません。 卓越した素材の店を紹介しましょう。 東京都世田谷区の奥沢に入船寿司というマグロの有名店があります。この店のオーナーの本多さんは最高のマグロしか使いません。入船寿司は一年中近海の本まぐろ尽くしが1万5000円です。この価格を高いと思うでしょうが、多くの人は「安い」と言います。 ちょっとエピソードを話しましょう。この店で食にかかわる人20人と勉強会を開いたことがあります。オヤジさんは青森三厩のマグロをそのために仕入れていました。とても美しいためにみんなが写真をとっていたそのマグロですが、実は一塊、450万円もしたそうです。 その中に和食の料理長がいました。彼は思わず私に「どうやったら(マグロ尽くしを)この価格で出せるのか?」と聞いてきました。 このカラクリは後ほどお教えするとして、その料理人もこのようなマグロを扱うことはないわけで、その素晴らしさに魅了されていました。 「私はマグロの寿司を握るのが趣味ですから、その日の一番だったものしか使ったことしかありません。仮に高かったとしても最高のものに代用品はありません」と、オヤジさんは言います。 実はどこでも最高の素材だと主張しますが、卓越した素材などめったにありません。私はホームページ制作をよくサポートしますが、「そんなことよく言うな」と思うことがあり、多くの場合、「それはまずいですよ」と誇大広告にならないようにしています。つまり、簡単そうで難しい、卓越した素材を使う条件がいくつかあり、この条件のなかに感動の原資が潜んでいます。ひとつは継続です。どんなに必要がなくても買い続け、使い続けなければなりません。 新橋に名人長山一夫さんがやっている第三春美寿司がありますが、この店の車えびは天然しか使いません。天然の車えびの割合は0.0000……%と言われています。したがってこのエビは驚くくらいの仕入れ値段です。この車えびを仕入れるには、まず、廃業などで買い続けられない人が出たときに、そこに割り込み、そこに割り込んだら買い続けないとなりません。最高の素材は、自分の都合の良いときだけ手に入れられるというわけではないのです。 千葉の佐倉市に年商4億円を誇る山田直喜さんがやっているレストランテカステッロという店があります。この店も千葉産の赤座エビを買い続けています。千葉の最高の食材を東京に流出させないためです。 これらの店には共通の特徴があります。それがオーナーシェフの店ということです。これが食材で卓越する条件の2番目です。 なぜ卓越するにはオーナーシェフの店である必要があるのでしょうか?オーナーが別であったり上場企業であったりすると、何をするにも数値目標を決め管理をするということが発生します。また、新しくお金のかかることをする場合は稟議にかけなければなりません。このしくみ自体は悪いことではないのですが、こと卓越する食材を使うとなるとブレーキのような機能として働いてしまいます。 オーナーシェフの店であれば、最終的なジャッジを管理数字にとらわれず、オーナー自身が決定できる、これが今の時代の強みとなるのです。つまり、食材の高騰なんていうのは一日、二日の話です。せいぜい続いてもワンシーズン。商売が代々続くことを考えれば一瞬にすぎません。オーナーの店に限らず、短期的な利益が優先されない体勢が重要です。 三つ目は、何年も店を継続していていることです。何年も経営していると背負っている借金が少なく、新しい店に比べると少ないという強みがあります。さらに、自社物件ならなお背負うものが少なくなります。この背負うものが少なければ損益分岐点も低く、より常にお客様との人間関係を優先した判断ができます。 このような状況が重なるとダイナミックな仕入れができます。リーマンショック後に東京の一等地にある資本と経営が分離した投資目的の多くのレストランが閉店を余儀なくされているにもかかわらず、素材で卓越して比較にならない魅力があり不景気もなんのそのという店の差になるのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.07.23
最近は、よく二極化の時代と言われます。ものすごく価格が低い店か、逆に特別な日に利用するような高い価格の店しか成立しないと言うことです。 その理由は、今の時代がメディアを通じて次々と新しい店が紹介される情報氾濫の時代であり、店に行くこと自体が目的化してしまっていることにあります。 その結果、初めて訪れる店を選ぶ場合も、あるいはその店に再来店するかどうかも、ちょっとした印象で決まってしまいます。印象ですから、じっくり見て、つきあって判断するのではなく、表面的なことで決まります。結果的に、お客様の再来店率が極めて低くなります。 私の事務所には、そこそこおいしい料理を良心的に提供している職人の店が経営難に陥り、「なんとかしてやってくれないか?」というサポートの紹介がよくあります。 そんな店を訪れて共通して思うのが、「真面目にお客様のことを思って良心的に商売をしている店は厳しいことが多いな……」と、いうことです。 その店の経営者が、チェーン店のセントラルキッチンで作った料理よりも手作りで心のこもった料理を食べて欲しいと思っていることも伝わります。しかし、その思いが私に伝わってくるのは、ひとつだけ但し書きがあっての話です。 その但し書きとは私が専門家であるということです。私は、毎日いろいろな店の料理を食べており、その料理がメーカーのできあいなのか、手作りなのかがわかります。 たとえば、薬味のネギにしても、職人が手で切れば辛くならないので水にさらすことなく使えます。機械で切れば辛くなるので水にさらさなければなりません。水にさらせばネギ本来持っているおいしさも抜けてしまいます。 しかし、それをわかるのは私がプロだからです。 家庭でも同様の話が進んでいます。野菜や肉などの材料を買わずに惣菜で毎日の食事を済ませる家が増えてくると、「家族のために手作りで心をこめて食事を作る専門家」である主婦はどんどん減っていきます。 ちょっと前のバブル崩壊くらいまでの時代であれば、スーパーの惣菜などは“できあい”など言って嫌がられましたが、今はそんなことはありません。 つまり、今は「心をこめて作るプロ」、そしてそれが「わかるプロ」は激減してしまったのです。確かに商品自体おいしくなって消費者のニーズに見合うものに進化したのは事実ですが、手作りであることをわかる人が減ったという見えない事実があるわけです。 実は、店の使命とは、お客様にこのような違いをわかるように教育し、食の楽しさを伝えたり、もっと面白いことを教えたりすることにあります。 しかし、成長期の飲食店は市場の拡大を優先し、お客様に一歩前に進めてあげることよりも、わかりやすいことを優先し満足を売ってきました。 かくゆう私もそれに気づいたのはそんなに前のことでありません。「新宿さぼてん」の荻窪店で店長をしていたときに常連さんがやたらソースをつけて食べることに疑問を感じました。「何であんなにソースをドボっとつけるんだろう。あれじゃ肉の味がわからなくなってしまうじゃないか?」こんな疑問が浮かびました。 そのお客様だけでなく常連さんの多くはそのような状態でした。しかし、あるとき、次の結論に至りました!「そうかソースが命ってやつだ!お客様は肉を食べているのではなくソースを食べているんだ!」 つまり、お客様にとっては肉のおいしさよりも、ソースの味のほうが重要だったのです。しかし、逆に我々店側の人間は商品の試食をするときソースもつけずに「うーん、これいいね」のように肉の味を評価します。これが論理的な理屈と現実のギャップです。 この気付きがあった後、回転寿司などのいろいろな大衆店を回りました。お客さんの多くは、回転寿司では寿司を醤油ドボ漬けにしていましたし、サラダではドレッシングをたっぷりぶっかけて食べていました。 そして、B級グルメでよく“秘伝のタレ”と言っている意味もよくわかってきました。 普段の何気なく食事をしているときには、素材ではなくタレが大切。なぜならタレはわかりやすいからです。素材の味よりも、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、塩ダレのほうが、それまでの経験が要らずわかりやすいんですね。 私は、どんなにいい素材でも、タレでドボ漬けにして提供する必要があることを認識しました。逆に言えば、大衆の食はタレをドボ漬けにしても、負けない味が大切であることに気付きました。 マグロで赤身でなくトロがうけるのも、牛肉でオーストラリア産より和牛の霜降りがうけるのも、ドレッシングが売れるのもすべてタレが大切であることに気付いたのです。 しかし、料理人はちょっと勉強してしまったためにプロになってしまい、いい素材を使ってしまいます。究極の食材なら誰でもわかりますが、ちょっといい素材ではほとんどのお客様にはわかりません。飲食店はブラインドテイスティングする場所ではありません。食事をしながら会話したり、いろいろなことをしたりしています。 それに、ランチならちょっとした味の違いであれば予算が優先されるでしょう。あるいはお腹いっぱいが重要です。 このような環境を打ち消してでも、少しでもいい素材をわかってもらうには、お客様を継続的に教育するノウハウが必要なのです。ある程度教育されれば、知識をつけたお客様はそのものを見る目が養われ、ふつうのものでも「すばらしい」としみじみと思うわけです。これが日本人の美的感覚の侘びであり、風流なのです。 例えば、私はスキーをしますが、はじめてパラレルターンができたときの感動は忘れられません。しかし、スキーでもいきなり急斜面でこぶがいっぱいのところに連れて行かれ、「あとは、気合だ」「根性だ」などと言われても困りますし、なんの役に立ちませんね。それよりは緩斜面のボーゲンのようなどんな滑り方でも思うように滑って、「スキーって面白い」と思うことのほうが重要なのです。 つまり、その人のレベル、店で言えばお客様の目線にあわせてわかりやすいところからスタートして楽しんでもらう必要があるのです。どんな滑りかたでも結構、まずは楽しいと思ってもらい、理想論的な論屈と実際のギャップをどう埋めて、それからが本番と考える。次第に本来の良さがわかるようになり、最終的感動につながればいいのです。大久保一彦の本もよろしゅうアンケートの作り方・活かし方
2010.07.22
とある駅蕎麦でアルバイトする知人からこんな話がありました。 「22時の閉店時間になったので閉店した。閉店業務を始めようとしたころ、男性が入ってきたので『閉店です』と答えたのだが、『2分前だろ!』と怒って暴れだした」と言うのです。 私はこの話を聞いてとても複雑な気持ちになりました。そして、成長の時代に我々が犯した大罪を実感したのです。その大罪とは「便利さの満足」を売るということです。 10年以上前に「新宿さぼてん」が成功したのは、まさにこの「便利さの満足」の追求で評判を得たからです。 当時は、閉店間際のお客様こそお金をしっかりいただけると、閉店前のチャンスロス撲滅に努めていました。今のようにコンビニエンスストアもそんなにない時代ですから、ここで、できたての弁当が買えるか買えないかはお客様にとってお金以上の価値があったのです。 それまでは、閉店前に見込みで弁当を作りおきし、売れ行きを見ながらディスカウントするというのが通例のやりかたでした。しかし、閉店業務を見直し、中間清掃をして、閉店間際でもしっかりとできたてをお作りして対応するようにシステムを変えました。 当時、そこまでやっている店はあまりありませんでした。したがって、とても評判になりました。お客様の中には「あまりものでいいのよ」と言っていただける人もいたほどです。 閉店間際でもフライをわざわざ揚げてできたてで提供しましたから、「ここまでしてくれないでいいのに……」お客様にはそう思っていただけたのでしょう。当時の商品を受け取るお客様の顔は嬉しそうで、ほとんどのかたが「悪いね……」とか「助かったわ」と言ってくれ、特別なサービスに感謝の意を表してくれました。 また来店前や夕方に電話予約してくれる人も数多くいました。「従業員さんの帰りが遅くなっては悪いから」というお客様の思いやりが伝わってきました。 このような思いやりは店のスタッフも嬉しく、店とお客様はいい関係が築けていたのです。 店はお客様の潜在的な願望を汲み取りサービスに組み込みます。その一歩先のサービスがお客様に感動すら与えます。しかし、いいサービスはどこの店でもやるようになります。そうなると、お客様にとっては当然のサービスになるのです。24時間営業の弁当屋が当たり前になり、コンビニエンスストアの店舗数が郵便局の数を上回るようになると便利さの消耗戦になります。 もはや、感謝される一歩先のサービスでなく、単なる「便利さ」の奴隷となってしまいます。顧客満足という大義名分のもと、果てしない便利さが考案され、いつしか、夜間の救急診療に軽い風邪で診療に訪れるコンビニ受診者、とりあえず居酒屋に大人数で予約を入れて電話もなく来店しないコンビニ予約などいったコンビニ現象というのに波及しています。 俗に言うモンスターカスタマーが激増し、従業員が感謝されことなど当然なくなりました。いや、場合によっては怒られてしまうような時代となってしまったのです。 感謝の満足というのはお客様と従業員の対等な関係から生まれ、お互いが相手を思いやる気持ちから生まれるものです。ものが豊かになり便利になり、心の豊かさが求められるようになって、商売の姿勢は市場性ではなく、すなわち、対等な人間関係に基づいた正当なサービスで人のいかにたつかという原点に立ち返る時期に来ているのです。
2010.07.21
サービスなどの運営技術のレベルが日進月歩良くなる時代です。次々と営業を進化させなければ、お客様目線では、店が劣化してさえ見えるのです。そのために時間を作り出す力は重要です。 時間をつり出すために大切なことがあります。 意外かもしれませんが作業力です。作業力とよりサービスをアップするために、効率のよい運営をする技術です。 その作業力は時間が解決します。誰でも同じことをし続ければある程度のレベルになります。 つまり、量芸子が大切なのです。1回よりも10回。10回より100回。100回より1000回。1000回より10000回。同じことを繰り返せば確実に力つきます。 しかし、バブル崩壊後、人手不足の時代が続きましたから、量芸子を重んじる店舗が少なくなりました。多くの店はアルバイトやパートの非正規雇用を重んじ、「誰でもできる現場」を求めました。マニュアル化し、量芸子より、即戦力を求めました。 例えば、ホテルの厨房の小僧の仕事だった玉ねぎ向きはカット野菜業者に委ねられるようになりましたし、凄まじい記憶力だったスーパーのレジ担当の女子社員はレジスターにとって変わられました。洗い場のスタッフも消え、職人芸的な検札のおじさんもいなくなりました。 転職が是とされ、下積みを嫌う若者は体裁のいい安易な仕事に走りました。 忘れていけないのは、専門性的なスキルがないと、ただ、簡単なオペレーションのコマとなり、人口減少で仕事が激減するなかで、雇用調整の的にもなってしまうことです。 実は、バブルくらいから世の中は本来あるべき方向と逆の方向に行ってしまった気がするんですね。 労働者は快適な労働環境を求め、企業は下積みという非効率な教育を忌み嫌い、世に中から下積みが無くなったのです。 本当は逆だったですね。仕事が少なくなればなるほど、きめ細かいことができる作業力がある人が重んじられるからです。 師匠である竹田陽一先生は私が独立したころ、私にこう言いました。「大久保一彦さん!お金をもらう、もらわないにこだわらず、できるだけ早く人前で1000回しなさい」とおっしゃいました。 最初はその意味がわからなかったのですが、ある時から、あがったり、緊張したりしなくなり、「(参加している人を見ながら)どう役に立つ話をするかな・・」と相手のことを考えながら話を変える余裕すら出てきて、満足度の高い話ができるようになりました。 「執筆もいっぱいしなさい」とおっしゃいました。ですので、お話をいただいたら執筆しました。そのおかげで、本を20冊も書きましたが、書くたびにわかりやすくなり、読みやすくなってきたと思うんですね。 また、もうひとりの師古田基先生には、海外視察の回数の重要性を教わりました。10年前からトータル日数で2年くらい分海外視察をしました。そのおかげで、この店はなぜ流行っているのかわかるようになりました。 私の師匠はみんな量をすすめてくれて、私は独立してから10年以上、量を数字に表すことができることを実践してきました。 そして、わかったことがあります。それは、その量がある程度以上の量になったときにとてつもないパワーが生まれ、セミナーの聴講者、著書の読者、お店の視察の話が人を魅了するようになるということです。そして、コンサルタントとしての能力も格段に上げてくれました!!! わかったと思いますが、繁盛店にあって、繁盛していない店にあるものは作業力の蓄積です。量芸子を重んじ、作業量が蓄積する社風やしくみが必ずあります。そして、この作業力の蓄積は人を魅了する感動の原資になるのです。
2010.07.21
私は会員を募り、会員向けにビデオマガジンを販売しています。 始めたきっかけは、コンサルティングをしていて相談される多くの店が知識や経験など「経営の下地が不足しているな」と感じたからです。 当時まだ、30代と若かった私は、「繁盛しないのは勉強し、視野を広げ、しっかり戦略を練らないからだ」と、決め付け、そのビデオマガジン「夢―商通信」をスタートしました。 2005年くらいは、情報商材を売ることが旬だったこともあり、「勉強して売上アップ!」というスローガンを掲げた夢―商通信の会員は一気に増え、200人を裕に超えました。 しかし、3年目から一気に減少に転じ、半分以下まで落ちてしまいました。 「何が違うのかな?」そう思った私は、退会されるかたに理由を聞くようにしました。 やめる人がおっしゃる理由の多くは「ビデオを見る時間がない」と「経費削減」のふたつに集約されました。 面白かったのは、「ビデオの内容が良くない」「ビデオが約にたたない」という答えがほとんど無かったことです。 とは言え、「ビデオの内容が良くない」「ビデオが約にたたない」とは私や事務所のスタッフに言いにくいのかも知れないと思い、まず、ビデオの内容を見直すことにしました。 内容を見直すにあたり、「ではどういう人が継続してくれているか」を調べてみました。そうすると、お付き合いでとってくれている人、小さな個人店、地方の繁盛店、勉強して仮説をたてて常に考えている人の三つパターンがあることがわかりました。 最初のお付き合いという人は私が社交的な人間ですから、私を気に入ってくれてとっていただいているのだと思います。そういう方の店や事務所を訪れると、届いたビデオが山積みになっている場合もありました。まあ、これはこれでいいかなと思うことにしました。 二つ目の「小さな個人店」は売上のアップダウンは景気でなく、自分次第だと気づいている人が多かったです。そんなときに映像を見て気分を一新したり、気になった店を訪問したりして気持ちをリフレッシュしていました。月商の少ない個人店になぜ利用が多かったのかというと、ラーメン店、焼き鳥店、ショットバーなど人件費が少ない店なので、月謝一万円は高くなかったようです。むしろ、孤独な店ゆえ、電話相談などもできるということで入会いただいていることがわかりました。 最後の「勉強して仮説をたてて常に考えている人」は、ビデオを引き出しのひとつと考え長期的な視点で考えようとしています。仮設を立てるにあたって情報のストックはそれなりに意味深いようです。 逆にやめられるかたは、「時間がない」という言葉が示すように、手っ取り早く売上アップに結びつくテクニックを求めている人だったのです。 このようなことがわかったので、「勉強して売り上げアップしよう」というスローガンを下げて、「長く愛される店を作るための引き出し作り」に変更しました。ターゲットもお付き合いでとってくれている人、小さな個人店、地方の繁盛店、勉強して仮説をたてて常に考えている人の三つとして、業績をすぐに改善したい人にはその人向けのサポートを用意することにしました。 私は「時間がない」という人は一般論としてお金を稼ぎ出す力が弱い傾向が強く、結果繁盛する人が少ないことがないことがわかり始めました。「時間は作り出すもの」であり、お客様のために、今やっている仕事を見直し効率をアップし、浮いた時間をさらに喜んでいるもらうために使うことができなければ、お客様が感動することは難しいでしょう。つまり、時間を作りだすということは感動の原資なのです。 「時間がない」という人にいかに「時間を作ろう」という意識を持たせるか、そのためには可能性あるお客様に関しては、私がすぐ結果をなんらかの形で出してあげて、そして、時間を作るという方向に向けないといけないことに気づいたのです。
2010.07.20
先日、ご紹介を受けたとある老舗ホテルをお手伝いさせていただきました。 あまり売上のないその店では、肉をブロックで買って、店で切り分けサランラップで一枚ずつ包んで、また冷凍庫に入れて補完していました。 アイスキューブを作ろうと水を容器に入れて冷凍庫に入れると膨張しますね。実は、食品も同様で、冷凍するときや解凍するときにマイナス数度の温度をゆっくり通過すると膨張した水分で細胞膜が壊れ、味が悪くなってしまうのです。そこで、生協など冷凍肉を扱う業者は瞬間冷凍をかけて消費者に届けています。 冷凍技術や流通が革新され、ネット販売網も確立された現代、ネットで簡単にほとんどのものがいい状態で手に入るようになっています。だから、このような店なら家で食べたほうが品質はいいわけです。時代は大きく変わったんですね。 この時代の大きな変化をその店の年配の料理人は気づいていないのです。 このような消費者の日常生活のレベルよりも下ではお話になりませんが、忘年会などのちょっとふんぱつするようなときに、家庭で簡単に手に入るようではお客様が来なくなることを意味するのです。 例えば、ふく衛門というネット通販を開いてください。伊万里焼にのせて国産のトラフグをお届けしてくれ人気です。近江牛を扱うキッチャンをご覧ください。最高の近江肉を送ってくれます。これらはみんな私をご贔屓にしていただいているお店なのですが、とても人気です。 ちょっとした食材しかない飲食店で繁忙期という理由で、1時間半でラスオーダー、その30分後に追い出される店があります。しかし、そこそこの値段のためにある程度でお帰りいただかなければなりません。それなりの空間であったり、旬な店であったりすれば、お客様も「しかたない」と納得するかもしれません。 しかし、誰かのご自宅と対して変わらない空間でしたら、通販を間違いなく選ぶでしょう。これらの通販でひとり5000円も出せば、レストランではひとり一万円の料理が食べることができますからね。 百貨店に行かなくなったのも、書店に行かなくなったのも、楽天やアマゾンのほうが品揃えはいいからです。 昔は百貨店ってとても品揃えがいいと思っていましたが、効率の追求で品揃えが悪くなりました。 私は俗に言う棒タイと言われる蝶ネクタイをしますが、蝶ネクタイを扱っている店は百貨店の中でも少ないです。 ワインも同じです。私は年代もののレヴィオール・ラスカーズ(ボルドーのシャトー)や、最近だと、ペルナン・ロサンという2000年を最後にやめてしまったブルゴーニュの作りの手のワインを買いますが、楽天で買っています。 私の事務所ではメニューブックの表紙を自作しますから、その材料のようにそこの店で見ないと買うことができないものでしたら足を運びますが、品番が決まれば通販で探して買ってしまいます。 つまり、感動していただく前に、店まで足を運んでいただかねばならないわけで、そこに行かないできない体験が無ければ、お店に来る理由すらないのです。時代に合わせて常にそこにいかないと体験できないものを提供することも感動の原資となるのです。
2010.07.19
「このエリア(地方都市)の人にパスタをラーメンのように食べる店を作りたい」数年前にこんなこと言っていたイタリアン帰りのオーナーシェフがいます。 先日このオーナーに合うことがあり、現在の商売の状況を聞きました。すると、全く違うことをするとおっしゃっていました。実はこのオーナーとある商業施設に出店して苦戦しているようです。だから、違うことをしようとしているのかもしれません。 そのオーナーは今、借金を返さんとやりたいことから売れそうなことに興味が動いているように見えます。 確かにお金が必要なことはわかりますが、皮肉なことに借金を返すことから遠ざかっているように見えます。今風の言葉を使えばブレているのです。 私がブレているというのは理由がありまして、その根はこれも今の日本の外食産業の状況にあります。市場が成長しているならば、客層自身が自分の都合のよいように拡大解釈してくれますから、最大公約数的な使い勝手のよい店をやっていれば市場性がよいです。そのために、見た目、それなりにやっていればよいわけです。 しかし、市場が成熟してしまうと消費者は一番自分の好みにあう店や使い勝手がよい店を選ぶようになります。いわば、好みや趣味やお客様自身の都合で店を選ぶようになりますので、万人受けする店は選ばれなくなります。 例えば、ファミリーレストランなどは選ばれなくなった店の代表でしょう。市場が成熟して、よっぽど立地に恵まれているか、見込客や来店したお客様に「好きだ」「この店いいな」と、思ってもらえる店でない成立しない時代になったのです。 そのためにお客様に自分の店が向かう方向を指し示す必要があります。つまり、自分がやりたいこと、やるべきことは小さな感動の原資になるのです。 実は私が「新宿さぼてん」の現場にいたころは中食の市場が拡大していた時代ですから、私の会社や私のやりたいことは多く店を出すことでした。当時、年商100億円という数字を掲げていました。 しかし、あるクレーム処理を行ったきっかけから、私は私自身のやるべきことに気づき、商売の目的を持つようになりました。その結果、自身の取扱商品によっては年商100億円など難しくないことを知ったのです。 では、そのお話をしましょう。 「さっき、とんかつ買ったんだけどさー、とんかつ一枚足りないよ!」 オープンしたてで運営が落ち着いていない売場にこんな電話が入りました。偶然、受話器をとった私はいつものようによくあるクレームの処理を行おうとしていました。 「入れ忘れの豚カツは次回のご来店のときでもよろしいですか?」 この言葉は魔法の言葉です。お客様のお話をじっくり伺ってお詫びを申し上げ、頃合をみてこの言葉を切り出せば、多くのお客様は「(仕方ないわね)わかりました」と答えが返ってくるからです。首尾よくこの答が返ってきた暁にはお客様のお名前を聞き、次に来店されたときに入れ忘れの商品をお渡しして、“クレーム処理”が完了していました。 テイクアウト専門店では、商品の入れ忘れは日常的によくあるミスで、このような苦情の電話も多かったのです。私はそれまで、悪いなとは思っていながらあまり重要ことだとは思っていませんでした。 しかし、このお客様は違っていました。「ばかやろー! カツが1枚足りないと食事ができないだろ!」その電話は男性のお客様がひどく怒っていたのです。誰かに届けてもらおうと、売場のスタッフを見ると開店したばかりで、みんながとても忙しそうした。もちろん“苦情処理”に向かうことができそうにありません。しかたなく、私は自分が入れ忘れのお客様のご自宅に入れ忘れたとんかつを詰め、タクシーで届けることにしました。 到着して、「怒ってんだろうなぁ。なんか嫌だな・・」と、重い気持ちを胸に玄関のチャイムを押しました。 「ピンポーン!」音は住宅街の暗闇に響きます。「ばかもーん!」磯野波平のようなコワ~いお父さんが出てきそうです。扉が開くと、意外にも奥様が玄関先に出てきています。にこにこしているようにも見えます。その上、「あら早かったのね。ありがとう」とおっしゃいます。その後ろから、小さなお嬢さんができて「とんかちゅ、来たぁ?」と言いました。 苦情処理としてはなんでもないことでしたが、私は大きな出来事でした。 というのは、たった1枚のとんかつの到着をお客様が食事をせず待っていたことを発見したからです。 確かに、4枚のとんかつを注文したにもかかわらず、1枚を入れ忘れると3枚で、それを4等分して食事はできません。だいたいそういう場合は、お父さんかお母さんが食べないことになります。 そうすると食事は楽しくないはずです。 しかし、このことはずっとひとり暮らしをしていて子供もおらず、家族団らんから遠ざかっていた私には思いもつかないことだったのです。 つまり、この苦情処理を行ったおかげで、「私にとってはたかだか1枚のとんかつだが、お客様にとっては楽しい食事の大切な道具であり、私たちは、家族団らんの大切な道具を売っている」ことに気づくことができたのです。 実は後日談があって、私のエリアを担当しているエリアマネージャーを呼び、この苦情の話をしました。そして私の気付きについて話し、入れ忘れが発生した場合の対応として「タクシーで迅速に届ける」ことにしたのです。 スタッフから「忙しくて届けられないときはどうするんですか?」と、いう質問がありました。それに対して私はこう答えたことを記憶しています。 「これから買う人よりも、買ってくれた人に対する誠意が大切。店の営業をストップしてもいいから、入れ忘れた人間が届けなさい」 今思うとスタッフはしぶしぶ従うという状況だったのかもしれませんが、私の管轄ではこの対応が徹底されたようです。また、店の営業がストップすることもありませんでした。 そして、この徹底で入れ忘れが格段に減りました。しかし、それだけには留まりません。私が管轄していた約20店舗は、どの店もみるみる売上が上がったのです。もちろん、この時代でしたから、他のスーパーバイザーが管轄していたエリアも売上は伸びていましたが、その勢いが違いました。 そうなった理由は簡単です。持ち帰りの店は忙しいとどうしてもお客様を捌くことに集中してしまいます。すると、数にばかり目がいき、お客様が何を求めて来店して、どうすれば楽しい食卓をお手伝いして喜んでくれるかを考えなくなってしまいます。その典型がそれまでの苦情処理だったのです。 入れ忘れ多ければ、そのたびにお客様の心の絆を失うため、ファン層減らしかねません。しかたなく買うお客様はいますが、「新宿さぼてん」が旬じゃなくなれば買わなくなります。結果的に開店して数ヶ月経つと売上が頭打ちになるのです。 逆に楽しい食卓のお手伝いをして喜んでもらうことを常に考え続けると売場は進化します。それが、あるときにお客様の心に響き、確かなファン客になるのです。そうなると、お客様がお客様を呼びます。 私が、スーパーバイザーから店舗開発に人事異動になったときに私の担当していたエリアは月商1億円、月間経常利益1千万円になっていました。 お客様が増えず売上が上がらない理由の一番目は伝えたいことがないことです。 あなたが商売を通して何をしてお客様の役にたちたいのかを考える必要があります。いや、私のようにお客様が教えてくれることもあるでしょう。「お客様をどうしてあげたいのか」それをまず、考える必要があるのです。大久保一彦の本もよろしゅう儲かる!売れる!繁盛店のアンケート術アンケート作りの参考書アンケートの作り方・活かし方飲食店バイブルの使い方がわかります!一緒にどうぞ!小さな飲食店が成功するための30の教え行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.18
「ちょっと面白い寿司屋があるんですよ」金沢の私の友人が超繁盛寿司店の「松の」に連れて行ってくれました。店の前に立ち、その外観はなかなか雰囲気のよさそうな寿司屋です。 ガラリ戸を開けて、中に入ると、「ちょっといい寿司屋に入ったな」という印象です。 しかし、私のいきつけの高級店とは光景がちょっと違っていました。ほとんどが若いお客さんなのです。私や私の友人はかなり年齢層としては高めです。「よおぅ」オヤジさんは同業者で顔なじみの友人とかるく挨拶し席につきました。 辺鄙な場所にも関らず、とても賑わっており、オヤジさんは「ごめん、ちょっと待っててね」と一声かけてきました。 「何で、こんな場所でこんなに流行るんだろう」私は考えていました。 カウンターの上にあるお品書きには2100円、3150円、4200円と松竹梅のメニューが書いてありました。 「がってん寿司」や「銚子丸」のように値段に段階のある回転寿司チェーンの客単価(ひとりあたりの使う金額)が1800円くらいですから、ちょっと高めです。私はあれこれ考えていました。 オヤジさんは軽快に何かをつぶやきながら、手を動かします。そして、となりの三人組のお客様の目の前にカニの軍艦がおかれました。「どーん!」といった感じでしょうか、軍艦にのったカニはゆうに6本はありました。 いよいよ私たちの順番になり、「何にします?」とオヤジさんが聞いてきたので、友人が上寿司3150円を注文しました。 まず、真鯛が出されました。その真鯛は明治の板チョコを半分に割ったような大きさ(ちょと大げさかもしれませんが)です。その真鯛は新鮮なので固くて、もごもごします。なかなか噛み切れません。二つ目に提供された平目も、その次の鰤も同じように大きな切り身がのっていました。 私は「そうか!あのパターンか」私は大分の繁盛店「錦寿司」の大将を思い出していました。このやりかたはデカネタというカテゴリーで一時この業界では大流行しました。実は、このデカネタのような、わかりやすいやりかたが序章でお話しました大きな感動です。 一時期流行したというのは、ただネタがでかいだけでは、いずれはお客様のこの大きな感動になれ、最終的には自分の好みの店に納まり、来なくなるからです。多くの店はこのように消滅したのです。 後のセミナーでじっくりお話をしますが、日本の外食産業は成熟期に入りました。市場が成長しているならば、次々に新規客が訪れます。新規客が主体であるから、大きな感動が重要です。そのために、見た目にわかりやすいことが重要です。 しかし、大きな感動は劣化します。いずれは興味がなくなります。あんなに多くの人が通っていた派手なサービスが消えたのは飽きなんです。 では、なぜ、この松のはお客様に支持されているのでしょうか?それが、深さです。 深さとはぱっと見では店のやっていることが見えず、「(何だかわからないが)また行きたい」と思う要素です。この深さが「好きだ」「この店いいな」と感じされる原資になります。その深さは、店が与えて行くものなのですが、お客様自身の知識、経験の蓄積から生じます。つまり、お客様の知識、経験の蓄積が小さな感動の原資となります。そのために、店側には知識、経験や技術の蓄積が必要になります。 いわば、お客様にお店側の知識、経験や技術を無理のないようにひとつひとつ手渡します。そして、お客様自身に知識、経験が蓄積していきます。その知識や経験などを受け取ったときに小さな感動が芽生えるのです。 この松ので待っているときにとなりのカップルに「これ冷めちゃったから」と玉子焼きをサービスしました。お腹の加減をみてサービスすることはすし屋でよくあるのですが、この松のはそうではありませんでした。 私たちの寿司のコースも最後になりかけたころ巨大な玉子焼きの握りが熱々で出てきました。「こんなに忙しい店なのに、玉子を焼くために一人つけている!」私は小さな感動を覚えました。つまり、サービスで出した玉子焼きは本当に冷えてしまったからだったのです。多くの店は忙しいという理由で玉子は焼いた既製品を買うでしょう。せいぜい、開店前に焼いておきます。しかし、この松のはお客様のために、その都度焼くのです。
2010.07.17
大きな感動は誰にでもとてもわかりやすく、ある意味、こまかな説明は不要です。 しかし、小さな感動は人によって感じかたが違いますので、その点が難しさです。 人は過去の経験やその経験の積み重ねからできた価値観をもっていますからね。その価値観によって感じかた変わってしまうのです。 私はコンサルタントですから様々な相談がきます。 その中で多いのがワインを売ることです。 地方でワインバーを始めて「(東京などの都会と違って)地方にはワインをわかる人が少ない」と嘆くオーナーがいます。そのオーナーは「リーズナブルでこんなにおいしいのになぜ(お客様が来ない)?」と、思っているようです。 しかし、地方ではワインを飲む富裕層か、全くワインを飲まない人かしかおらず、その中間はほとんど存在おりません。そのことが今一歩わかっていないのです。 もし、富裕層を狙うのであれば、このオーナーは富裕層の心理がわからないといけません。 富裕層は経験も知識も豊富です。ワインの価格は正直ですから、安さより、1万円以上払ったとしても、本当においしいことのほうが重要です。「誰でも予算が関係なければDRCのモンラッシェを飲むでしょう」 したがってその人の基準にあるワインよりおいしいものを提供しないといけません。 そのためにはお客様を圧倒する経験と知識が必要になります。例えば、自分でワイナリーを巡って本当においしいものを提供できるレベルであるとかですね。 逆に、まったく飲まない人に飲んでもらうことを考えるなら、「この地域の人にワインの美味しさを広める」という大義のもとある意味、”ワインの幼稚園”から始めてないといけません。 まったく価値観のない人には、まず慣れることからはじめて、だんだんわかってきてやっと、次のステップに入ります。 やっとわかってきたころ、面白さが増すような仕掛けが重要です。つまり、店は商売でなく学校を目指さないといけません。 そのためには、まず自分の時間をお客様に差し上げないといけません。そして、ある程度勉強してもらう期間の販促費としてワインをおいしく飲んでもらうのにお金を使わないといけません。 そう、最初はお客様が少ないわけですから、やりたいことをやるのはとてもたいへんなんです。 例えば、経験や知識のないお客様ですから、最初は大きな感動を与えて興味を持ってもらうことは大切です。最初に仕入れ値で1万円以上する高価なワインをイベントで飲んでもらったらいいでしょう。DRC社のラターシュやモンラッシェは香りが抜詮(ばっせん)した瞬間の香りが違います。この香りはだれでもおそらくわかります。そこからはじめるのです。 そして、しばらくして「こないだのワインはめったに飲めませんが、となりの畑のレ・ゴーディショ(Les Gaudichots)なら1万円弱で飲めるんですよ」と誘うのです。 そして、興味を持っていただいたなら、味の違いを認識していただき、「やっぱり高いワインは違う」と少しずつ知識をつけてもらい勉強してもらうのです。決して、いきなり、足し算引き算を飛ばして関数を教えようとしてはいけません。最初は、わかりやすい違いでいいのです。 そして、オリの落としていないレ・ゴーディショと落としたレ・ゴーディショを飲んでいただき、ブルゴーニュは飲み方でかわることを認識してもらいます。だんだん、だんだん、わかりにくい部分に勉強を移していきます。このような地道な繰り返しがお客様にワインを文化として定着させるのです。 実は地方でのワインバーで扱うワインという商材は新しい文化であり、日常生活でほとんどの人が飲む習慣がないものです。したがって、まず、馴染んでいただき、ワイン自体をあたり前に感じていただく必要があるのです。 それから、本来自分がやりたい手ごろでおいしいワインを飲んでいただくという作業に写ります。 つまり、大きな感動からはじめて小さな感動と組み合わせをしてやりたいことにたどり着くように考えないといけません。 だから、難易度が高いのです。今、ないものを地方にもっていくときに共通するんですが、ワインバーという業種が無いから「需要がある」という市場性ではじめるのではなく、「ワインの楽しさをこのエリアの人に知ってもらいたい」という熱い思いからはじめるべきものなのです。このような場合、選択肢の多い時代ですから、大きな感動と小さな感動を同時組み合わせて提供すべきなのです。 では、実際にワイン文化を地方に定着させたモデル的な店を紹介しましょう。千葉の佐倉市の郊外にリストランテ・カステッロという店です。この店のオーナーの山田なおきさんがこの地にきたときは、一ヶ月に数本しかワインを注文するお客様がいませんでした。20年以上経った今ではワインを月に700万円売ります。 それは、山田さんが、グラスワインからはじめて、ワインの勉強会をしたりして、じっくりと時間をかけてワイン文化を広めたからです。もちろん、従業員の間でも勉強会をします。もの凄い高いワインを開けることもあります。そして、ワインの最大の楽しみである料理との組み合わせマリアージュをお客様に教えました。 私も以前、ひらまつレストランのワイン会があり、参加しました。フランスのモンペリエにありますジャルダン・デ・サンスのオーナーシェフのプルセル氏が来日して、シャトーヌフ・デュ・パプのシャトー・ボーカステルのワインと料理をあわせました。 冷たいポルチーニのジュレと温かい栗南瓜のスープとボーカステルの白の組み合わせと松阪牛と松茸のグリエと年代ものの赤の組み合わせが出されました。ワインと料理が合うというのはありますが、素材を超えて1+1=2ではなく、1+1=100になるような「こんなことができるのか」という感動体験をしました。それくらいワインと料理のマリアージュは奥深いのです。 カステッロを見て思うのは、最初は大きな感動からはじめて、時間をかけて小さな感動を与え続ければ、ふつうの人が飲む習慣がないワインだったとしても文化として必ずお客様は増えるのです。
2010.07.17
日本の戦後は大量出店時代でした。大型のスーパーや駅ビル、百貨店、あるいは飲食店。真新しいものが次々とオープンしました。これらの真新しい情報はテレビのようなマスメディアにもその都度取り上げられ、消費者は新しいものへの刺激に興味をました。実際、多くの消費者は次々と登場する真新しいものに衝撃を受けたはずです。刺激が強かったのでしょうか、店がオープンすると毎日、毎日訪れるお客様も多数いました。バブル崩壊まで、世の中全体が真新しい刺激に向かっていました。バブルが崩壊して真新しいものへの消費の機運がさがり、競争が激しくなると、それでも新しい刺激を求ました。その新しい刺激とは斬新な価格でした。 「衝撃的なプライス!」「スーツ9割引!」「玉子1P10円!」折込チラシではこのような宣伝が闊歩しました。 「こんな値段でこれが買えるの!」消費者も今まで高くて手がとどかなった新しいものが買えるようになり、新しいことを経験できるようになりましたので、この劇的な価格にはやはり多くの消費者が衝撃を受けたはずです。 そして、その刺激にある意味、大きな感動を得たのです。 このように2005年くらいまでの時代は、このような大きな感動が重視されてきました。当然、新規客に焦点をあてた市場全体の消費者に大きな感動を与えるわかりやすいやりかたが主流だったように思います。 大きな感動の時代の経営はよくバケツに例えられました。 「まず、バケツは大きくて、大きな穴があいていないほうがいい。そして、穴はなるべくあいてなければいい」 集客メディアが大きくなればなるほど、お客様という水は多くなります。バケツから溢れるとまず売上に結びつきません。見込み客はしかたなく行列するかもしれませんが、店が増えればその店に行かなくなります。また、見た目は衝撃的でも中身のないものであったり、運営に問題があったりすればバケツに大きな穴が空いている状態であり、新規客の供給が減少するとすぐにお客様が減ってしまいます。 多くの企業では、不満を減らすべく、マニュアル化して教育訓練でサービスの差別化をはかっていきました。新規客が減り始め、チラシなどの集客の状況が悪くなると、細かな部分までマニュアルかして、サービス力アップを目論みました。いずれにせよ、お客様という水が流れ出ないように、バケツの穴をふさぐ必要があるのです。 小さな感動の取り扱いは大きな感動とはちがいます。例えて言えば、このバケツに入った水を使って、お客様に接近して、お客様の心にあるコップに水をスポイトで一滴、一滴注ぐ作業のようなものです。 一滴、一滴スポイトで注ぐと、いずれは水が溢れます。このときに、しみじみとした小さな感動を覚えるのです。 したがって、大きな感動とは違い、消費者の集団にわかりやすい大きな感動になるものを差し出すのではなく、それぞれのお客様にひとりひとりに地道にキャッチボール行う必要があります。 そして、最大の違いは、人間関係が築かれていなければ気づかない些細なことでいいのです。決して、特別なことは要りません。家族や親しい友人にするように、相手のことを思いやって接すればいいのです。 例えば、カフェでしたらこんなやりとりをするでしょう。今までのカフェだったら、豪華な内容や斬新なメニューが必要でしたが、お客様を増やす店は(図1-2)のような些細なやりとりで十分なのです。(図1-2)スタッフ :(笑顔で)こんにちは大久保さん。お元気ですか?私: はい、裕美ちゃんも元気?スタッフ: 元気ですよ。毎日楽しいですからね。 さっき、裏庭の菜園のカブをとってきたので、 サラダの入ったメニュー注文してくださいね。私: ありがとう(食後)スタッフ: いかがでしたか?私: カブ甘いね。採れたては違うね。スタッフ: そうなんですよ。だから、自家菜園のできる店を探したんですよ。私: また来るね。ありがとう。スタッフ: ありがとうございます。また、よってください。(その数日後)スタッフ: (やっぱり笑顔で)こんにちは!今日は少し遅めの時間ですね。 私: ちょっと、来客があってね。スタッフ: 私のお店もちょっと忙しかったんですよ。私: じゃあ、ちょうど良かった。スタッフ: 今日もランチですね。ちょっと、お待ちください。裏からハーブとってきます。私: ありがとう。よろしくね。 よくお客様に合わせると言います。小さな感動をひきおこすにはお客様に合わせることが大切だからです。そのためには相手のころをよく知って、記憶しないといけません。 家族や親しい友人に対しては長年の付き合いで相手のことを知っています。だから、どんなことをすれば喜ぶのかがわかっています。 しかし、お客様となると、会話や接触を重ねて地道に相手のことを知らないといけません。そのために、上記のようなさりげないやりとりの積み重ねが重要になるわけです。お店のスッタフにとってはたくさんのお客さんなんですが、お客様にとっては、いつもいるひとりのスタッフなのです。このことを忘れてはいけません。だからこそ、さりげない会話をして記憶を蓄積していかないといないのです。 相手のことがよくわかると、相手の価値観の違いによって、説明のしかたや、接しかたが変わり自然にお客様それぞれに合わせることになります。結果として、そのお客様にとって良いサービスにつながるのです。それが小さな感動につながるのです。
2010.07.17
詳しくはいずれでお話しますが、日本の市場は第二次大戦後に二度にわたるベビーブームがありましたので、大幅な人口増加に支えられていました。 これは他の欧米先進国にも類をみない波で、このおかげで多くの業界が急激な成長を遂げました。 この人口増加によって学校を卒業してニューカマーとなる見込み客が常に供給され続けました。たまたま提供しているものに魅力があり、大きな感動を与えさえすれば、次々と新規客が供給されましたので、CH1の(図1-1)に掲げました1の営業のスキルが低い状態でも問題はなく、商売を継続することは難しくありませんでした。 まして、(図1-1)の2~6は次々と新規客が来る時代でしたから、必要ないという言いすぎですが、あったらあったで良いくらいだったのです。 実は2005年くらいから、人口減少がはじまり、その上一気に少子高齢化が急速に進んでおり、この状況が一変しました。はじめにの冒頭にあった「最近、経営がジリ貧状態だ」「デフレのせいで安くないと買ってくれない」「お客さんが外に出なくなった」「予約のお客様が減った」「いいお客さんが少なくなった」というのはこの時代の変化に気づいていないことを意味します。 高校や大学などを卒業する若者が激減している上に、就職超氷河期ですから、新規客や若年労働者は激減しています。この若年層の減少のスピードはすさまじいもので、2010年の発表によれば15歳以下の人口が19万人減少したというのです。ざっくり言えば、生まれた子と16歳になった人の差が19万人ですから、5年で100万人のニューカマーや若い労働者が減るというのです。 その結果、商売は新規客中心から、既存客に中心に変更することが求めれています。今、ご縁をいただいているお客様や従業員との関係が大切なわけで、大きな感動で新規客をつかむことから小さな感動でお客様との関係を継続することに世の中全体が移行しているといえます。そのことにもっと気づくべきなのです。大久保一彦の本もよろしゅう小さな飲食店が成功するための30の教え行列ができる店はどこが違うのか
2010.07.17
よく感動という言葉を使いますが、実は感動には二種類のタイプがあることをあなたはわかりますか? 意外とこのふたつがごっちゃになっているように思いますので、私の経営メソッドを理解するうえで、この違いを頭に入れおく必要があります。 まず、ひとつ目の感動は真新しいものやサービスなどに出会ったときの感動です。 「衝撃的だ!」若いころにこんなことを思った経験は誰でもあると思います。 奇跡の逆転などオリンピックや甲子園などのスポーツの感動は衝撃的です。 スポーツでなくても、今まで見たこともない想像を絶する凄いもの美しいものを見たときにこの衝撃を感じます。 私もナイアガラの滝を初めて見たときにとても衝撃を受けました。数キロ手前から飛沫が上がっているくらい凄い水量と、ものすごい音にはっきり言って驚きました。ナイアガラの滝に限らず、自然の驚異っていうやつを一度は見たことがあるんじゃないでそうか。 「衝撃的だ」という言葉が象徴的なので、大きな感動と私は呼んでいます。 この大きな感動を感じるかどうかは、人生経験が豊富かどうかに依存します。したがって、人生経験が少ない若い頃には衝撃を受けやすく大きな感動をうることができるのです。 この衝撃は刺激という言葉で置き換えることができます。「なんか、刺激がねぇー」と、大学生のアルバイトの子がよく言っていました。だからこそ、都会に刺激を求めてやってくるわけです。 話は戻りまして、人は成長に伴い、新しいものに出会い、衝撃的であれば大きな感動をします。 高校生、大学生、社会人となるにしたがい、行動範囲も広がり、新しいものに次々と出会います。その都度、大きな刺激があれば、感動して興味を示します。 しかし、そのような強い刺激にもいつかは慣れ、なんとも思わなくなり興味は次の対象に移ることになります。 「人間40にして惑わず、50にして天命を知る」と孔子様は言いましたこれは、大きな刺激と関係するのかもしれません。 確かに、40歳を過ぎると衝撃的な出会いは少なくなるように思います。 もうひとつのタイプの感動は、しみじみとあるいはじわじわと心の中から沸き起こるようなものです。 自分の赤ちゃんが成長するときに、そのようなしみじみとした感じを受けますね。幸せを感じるときと言ってもよいと思います。そんなときにしみじみとし感動があるのです。 このしみじみとしたものを感じると、涙が自然に溢れることもあるでしょう。 しみじみとしたもの、じわじわくるということで、私は小さな感動と名づけました。 小さな感動とは、真新しいものではなく、肉親、師匠と弟子、信頼関係を築いた仲間同士、何気ない身の回りのものや自然などの日常にあるものベースに感じます。 小さな感動を得るにはある程度の人間関係や継続的な接触が必要になります。 人間関係があることや継続的な接触で見えない部分を感じたりわかったりすることが求められるからです。 そして、小さな感動を感じるとこの身近なものとの絆をより深いものとするのです。
2010.07.16
今の時代、業績の良い店と業績の悪い店の違いはぱっと見ではわかりません。 私は華々しくテレビなどでご活躍のかたの紹介を受け、経営指導にうかがい損益計算書を拝見することがあります。損益計算書を見て驚くんですね。「大変だな・・」と。 そんなこともあってか、「大久保さんは店のどんなところを見るんですか?」と、聞かれることあります。ありますというより、多いと言ったほうがむしろよいかもしれません。 私は「何も先入観を持たず、何も考えず店に行く」と答えます。 このような店でも同じようにします。面白いのは、ぱっとみは華々しいが実際台所は火の車の店に先入観を持たずに客として利用すると、「?(なんだろう?)」と感じることが多いのです。 この違和感が実は大切です。不振店には必ずこの違和感があるからです。 はじめにでも書きましたが、私は繁盛店と不振店の差をつかむべく、日本全国やアメリカ、ヨーロッパの多くの繁盛店を、業種を問わずとにかく店を視察してきましたし、今でも視察します。 その回った数は独立してから1万数千件、繁盛店と不振店の差を掴もうと思ってからも数千店舗をまわりました。 量芸子とはよく言ったもので、このようにたくさん店舗を診ると、繁盛店か不振店か入った瞬間にわかるようになりました。 そうなんです。この入った瞬間に感じる空気の差こそ、繁盛店(正確には良い店)とそうでない店の違いなのです。 私はこの空気の差を感じさせるものは何かとずっと考えてきました。 そのためにはじめたのが、全国の繁盛店のオーナーや店長のインタビューです。もう、数百人にインタビューさせていただきました。 その結果、差を生ぜしめる原因がいくつかあることがわかりました。 それでは、不振店に欠けている代表的なものをいくつか書きましょう。(図1-1)不振店に欠けている点1 営業のスキルが低い2 店や会社の進むべき方向――すなわち、やるべきことやコンセプトが 明確でないので、やっていることに一貫性を感じない。3 ターゲット像が明確でない4 集客に必死で、お客様がせっかく来店していても、再来店しない。5 お客様の心の変化に敏感でない6 従業員がお金のためにだけに働いている まず、1の営業のスキルが低いというのは致命的です。商品開発力、接客技術、広告メディアを使いこなす技術、人間力、センス、オペレーション力などお店を支える技術は欠くことができません。もし、この要素が不足しているのであれば、知識を高め、不足した部分は専門的な技術がある人間を招聘しないといけません。 2~6の項目は共通していています。本コラムでこれから述べていきます小さな感動がリンクしていることです。 お店の運営は、お客様の不満にならないという土台の部分と、お客様の感動を呼ぶ部分とふたつに分けられます。お客様を増やすにはこの双方が大切です。1はその不満にならないための要素が多く、2~6はお客様のほんの一歩先をゆき、お客様の心を刺激して感動を与えること意味します。
2010.07.16
はじめに 「最近、経営がジリ貧状態だ」「デフレのせいで安くないと買ってくれない」「お客さんが外に出なくなった」「予約のお客様が減った」「いいお客さんが少なくなった」 今、あなたはこんなふうに感じていませんか?この本を手に取るくらいですから、あなたもそう感じているかもしれません。私自身、全国を講演や勉強会で歩いていてこのようなお悩みのご相談を受けることがままあります。特に、2010年以降、この傾向は顕著になっています。 「いい店だかし、がんばっているからなんとかできないか」私のところにはいろいろな方から、こんなふうに売上不振でお悩みの店舗のかたのご紹介をいただきます。やはり、2010年になって顕著に増えています。 しかし、紹介していただいたお店に行ってみますと、売上不振などでお悩みというのに一見するとそんなに悪い店じゃないことが多いということをいつも思います。 だからこそ、「大久保さんならなんとかしてくれるだとう」と私に紹介していただいているのだと思うのですが、さすがに私でも、日増しに再生は難しくなっているように感じています。 私が処女作をリリースしたのが2002年。あの「行列ができるダントツ飲食店」シリーズを日本実業出版社から出し始めたのが2004年。それから、次々とお店のサポートをして参りました。しかし、2005年くらいから、お店の建て直しの難易度が高くなり、時間もかかるようになったように思います。 そんなこともあって、私はなぜ繁盛するのかを研究するようになりました。 2005年くらいから私の身の回りの繁盛店のオーナーやご縁をいただいた繁盛店のオーナーをインタビューして回りっているのはそのためです。 実際、不振店が多い時代ではありますが、お客様に愛されている店は全国どこにでもあります。二極化とはよく言いますが、商売の状況は極端に差が広がっているように思えます。 私は取材をするに従い、繁盛店と不振店とどこが違うのかを考えるようになりました。この違いにこそ、商売のヒントがあるのではないかと思ったわけです。 そして、ある程度、その本質的な違いがわかるようになりました。その本質的な違いで結論に至ったのが本連載で論じるお客様の心の部分の感じさせ方です。 お客様の心の部分というとわかりにくいので、わかりやすく言うと“感動”させるポイントということになるのですが、業績不振の求める感動と繁盛店の求める感動の質に違いがあることに気づいたのです。 この求める感動の違いに気づき、日々の営業に反映されたときに、店は変わります。この変化にお客様が気づくと、お客様が増えはじめ、業績は上向きになります。そして、いずれ確かな手ごたえを感じるようになるのです。 本連載では、繁盛店の求める感動をわかりや解説しました。実践いただければ、次のようなかたにとても効果があるでしょう。 「お客様といい関係になり、ずっとおつきあいしたい」「働くスタッフがずっとあなたの店にいたいと思ってもらいたい」「愛される店になりたい」「尊敬される店になりたい」「短期的な利益より、長期的にやっていけるほどほどの利益をあげたい」 もし、上記のいずれかにあてはまるようでしたら、ぜひ、本連載書をお読みください。上記のようなことは決して難しくなく、考え方や行動をあなたが変えれば、誰にでも可能なことなのです。 それでは次回。
2010.07.16
大久保一彦のゴルフ場経営誌連載ホールアウト記念、全原稿連続アップ!大久保一彦のホームページはこちらからどうぞ今回は15回目の原稿です!ヘルシーメニュー展開例<リード>前回は成人病という重いテーマを基にヘルシーと言えるメニューはどういうものであるかについて言及した。その理由は企業の社会的責任という概念が高まっているからである。今回はその知識を基礎におきながらも、ゴルフ場レストランにおけるヘルシーメニューの展開方法についてお話したい。<本文>よく、「これからは“健康”だ」ということで、いきなりメニューとしてはめ込むお店を多く見受けますが、実際、「導入したメニューが動かない」という声をよく聞きます。健康メニューを売るには、まず前回お話した使命感といいますか、健康メニューに対する思いが必要となります。最低限でも、なぜ、ヘルシーメニューを導入するか、そして、どのようなメニューがヘルシーメニューと言えるのか理解しないと売れません。ここまで、たどりついたら次のステップ売り方に進みましょう。今回のテーマです。 ヘルシーメニューを販売する上で大切なことは、価格、見せ方です。まず、価格について見ていきましょう。 日常の食事を提供するレストランには概ね三つのタイプのお客様がいます。まず、最初は、リーズナブルな値段でお腹がいっぱいになることを望むお客様。二番目が、ちょっと高くてもいいからおいしいものを食べたいと思うお客様。三つ目が、健康面で何か制約がある、あるいは健康面に気を使うようになったお客様です。全体で見ますと私の経験では、最初のタイプが60%、二番目、三番目が20%という割合になります。最初のタイプのお客様も、価格のところでお話しましたが、350円から500円くらいをリーズナブルと考えるコンビニ、牛丼のグループ、500円くらい700円のリーズナブルランチグループ、700円から1000円の一般ピープル(略して般ピー)グループに分けられます。二番目のグループは1000円以上の価格帯になり、1500円から2500円でも許容範囲の価格となります。では、三番目のタイプのお客様の価格帯はどうなるのでしょうか?私の経験では、利用動機で大きく変わります。最初から、潜在的な健康に対するなんらかの意識に訴えかける場合、例えば、女性に店頭のサンプルなどのディスプレイで商品設計のしっかりしたメニューを見せて売る場合や、すでに病気になっており、ヘルシーな食事をしなくてはいけない場合、1000円以上の高めのプライシングをして販売します。しかし、リピーターを狙い食後感でヘルシーさを演出する場合は、700円~1000円、500キロカロリー弁当などは700円弱のプライシングが理想です。価格がリーズナブルであることで、なんとなく健康によさそうなメニューでも十分おいしく食べれますとこの商品の支持者となり、場合によっては、ゴルフ場の顔、すなわち、四番バッター商品になる可能性するらあるからです。見せ方で大切なのは「だれに売りたいか」、すなわちターゲットをまず明確にすることです。ターゲットの真理をつかみ、商品設計を行うこれが二番目のポイントとなります。例えば、誰に売るかによってそのメニューの見せ場となるメインディッシュ、すなわち、主菜を変えないといけません。そうでないと、あなたの作ったメニューは行き場を失いただ売れないメニューとなってしまいます。例えば、30歳代~40歳代の男性にヘルシーメニューを販売するなら、ハンバーグなどがいいでしょう。このハンバーグという見た目から、中身をヘルシーメニューにするのです。どのように作るかは、後でお話します。しかし、20歳代~30歳代女性に対するヘルシーメニューなら、トマトソースを前面に出し、見た目を女性が好むようにし、かつ、男性と違い、見た目からヘルシーに感じるように具材を選定します。例えば、トマトソースの主菜の場合、少し脂肪の少ない皮なし鶏の胸肉を入れ、玉葱、色づきピーマン、ズッキーニなど野菜を入れて煮込んだり、炒めたりしたりすればよいのです。女性はフィーリングが重要です。ですので、健康的と感じる見た目を大切にします。例えば、女性へのヘルシーメニューで肉を使うときは、鶏肉を主体にし、牛肉はあまり使わないことが大切です。最初からボリュームを求めるコロッケやシチュー、カレーなどのメニューならいいのですが、ヘルシーメニューでボリューム感を感じる食材は、例えカットが小さくても使わないことが大切です。また、調理方法としても、フライものは基本的にはいれず、グリルしたものや煮込んだもの、茹でたものを使う必要があります。それくらい、見た目で判断するのです。男性にヘルシーメニューを提供する場合は逆になります。見た目は男性が好むものにし、中身を食べたときに納得してもらえるように商品設計をしなければなりません。例えば、ハンバーグなどを主菜で入れると効果的です。「ハンバーグじゃヘルシーメニューにならないじゃないか?」と思われるかもしれませんが、ハンバーグ自体をヘルシーなものにしておくのです。男性の場合、原材料は牛挽肉を使ってください。女性と違い、男性は、食後感をある程度重視した方が「また食べたい」と思うのです。食後感を考えながら、ヘルシーな心遣いをする。これが、男性に対するヘルシーメニューの基本です。さて、この場合、牛肉の配合を少なめにします。その代わり、豆腐を増やし、油脂ではなく、炒めた玉葱をふんだんに入れ、コクを出します。もちろん、細かく刻んで軽く加熱調理した人参、椎茸、竹の子などの野菜を入れればなお理想的です。竹の子などの歯ごたえのある野菜を加えて食感を出すと満腹中枢を刺激し、満足感を与えます。そして、グラム数も少し控えめにし、通常なら最低でも100グラム以上のところを70グラムから80グラムに抑えます。量感を出すために、下に、女性用に使ったトマトソースで調理した野菜を土台にするのです。 このように、価格設計、ターゲットにあわせた商品設計をしっかり行えば、あなたの店で取り組んだお客様への思いは甘い、甘い果実となってあなたの店を豊かにするでしょう。
2006.08.04
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