“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2024.01.03
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冬の連続講座 値付けのポイント その2

商圏ニーズ対応型の値付けは年間使用額に着目する
 一方、商圏ニーズ対応型は、狙うべきターゲット層をきめ細かく具体化し、その需要が起きる場面を想定して、見込み客の予算を基に値付けを決めて行きます。
ポイントは、見込み客の単価設定と利用回数を乗じた数字を最大化できる“個顧客”の年間売上を見出すこと、すなわち、年間使用額(年間顧客価値)という見方が重要です。
つまり、ニーズ対応型のビジネスにおいては短期的な売上の増減に一喜一憂することはあまり意味がありません。
 例えば、前回お話しをしました消費税率引き上げでガラッと変わった後の牛丼市場を例にみていきましょう。2014年4月に消費税率が8%となって、『吉野家』は牛丼(並)をまず300円に値上げし、同年12月には380円に値上げしました。
『すき家』は増税後牛丼(並)を一旦270円に値下げした後、2014年8月には291円、15年4月に350円へ値上げをしました。一方、『松屋』は280円の牛めし(並、味噌汁付き)を2014年4月にを290円に改定と増税分の転嫁にとどめました。
しかし、同年7月に、関東一都六県では「プレミアムめし」に切り替え、380円としています。
施策の違いがもたらした結果は、牛丼チェーン大手3社の15年11月の業績に顕著に出ました。
『吉野家』が前年比マイナス7.3%、『すき家』が前年比マイナス0.6%である一方『松屋』は前年比プラス3%で推移しています。

ちなみに、『ほっかほっか亭』ののり弁の価格は税込340円で『ほっと もっと』ののり弁は税込350円で牛丼(並)380円はこれらの売価を上回った値付けであることも大きいといえるでしょう。
そのため、一都六県以外が牛丼(並)290円である『松屋』がその需要を吸い上げ、顧客価値を一社で吸い上げているという仮説が成り立ちます。
牛丼のような日々のランチ需要に応えるビジネスモデルなら、利用頻度が高く日常性が高いニーズを想定します。その上で、弁当・店内での利用回数を最大化する単価設定と年間利用回数を考えないといけないのです。

 宴会利用客も年一回の記念日需要なのか、よくある接待なのか、忘年会・歓送迎会のような期末利用であるのかで予算が大きくことなるので、そのニーズに合う値付けをすることが大切です。
また、これらの値付けは、テーブルの稼働率も加味して瞬間最大売上を望むことができる値付けにすることが大切です。単価が低くてもテーブル稼働が高ければ、一日の産み出す価値が最大化できるからです。
 値付けは店のコンセプトをよく斟酌してビジネスモデルにあう値付けをしなければならないのです。
このことは、私の「儲かる値付け」を学ぶ前に押さえておいていただきたい原則です。
 では、コラムを振り返ってみましょう。
まずは、第一回目のコラム「あなたが値引きに走るのは価格戦略を知らないからだ」からスタートしていきましょう。第一回目は価格決定権の話で、値付けは市場環境で変わるという話です。
供給が需要を上回るまでは、売り手に価格決定権がありますが、徐々に競合他社の出現して、店が選べるようになり過当競争が始まると価格の主導権は消費者に移ります。その需要と供給の原則からスタートしています。
 そして、三回目では、高い価格を認識していただくために大切な、おいしさの落としどころの話があります。わかりやすいおいしさは、消費者を「やすい、うまい」という視点から、高単価に誘導する一歩のなります。この一歩でお客様と信頼関係を築き、顧客教育を始めます。三種同時対比、二種同時対比を駆使します。そして、顧客教育を通してアップセルをして、高い商品へ誘導していきます。


 では日経レストランで連載していた過去のコラムで振り返りましょう。


大久保一彦の本


【中古】 善の循環経営 人口減少時代を生き抜くメソッド/大久保一彦【著】







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Last updated  2024.01.14 17:01:46


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