“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2022.11.04
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霜降の連続講座 飲食道、幸福の法則 Vol51 売れる扇風機の謎 福瀬智広
売れる扇風機の謎
 扇風機が売れている。ジャパネットたかた社長に言わせると「昨年の10倍」もの売れ行きなのだそうだ。それにしても何故にそんなにも扇風機が売れるのか。そもそも地球温暖化の影響により今年の夏は昨年よりも気温が上昇するであろうとは言われてはいたが、ここにきて扇風機の売上が高すぎるのはなぜなのか。

 ひとつの理由として挙げられるのは「エコ」なのだが、それにしても10倍という数字はどう考えても不自然だ。以前よりたかた社長は「エコ商品」しか売れない時代にシフトしてくると公言していた。だが、ここにきてその需要は一気に高まった。その原因のひとつに東北大震災の影響がある。いわゆる「節電」によるものだ。

 私は岡山に住んでいるので「計画停電」なるものを経験したことがない。
だが、飲食店の場合は冷蔵庫の稼働もストップしてしまうわけだから計画停電中は営業ができなくなる。考えられないことだ。我々は「電気」がなければ商売自体が成り立たない業態であることをあらためて思い知らされる。

 そもそもここ近年の「エコ意識」は高まりつつあった。そのタイミングであの大震災が起きたのだ。そして「扇風機」となるのだが、ここで疑問がある。
 それは、ひとり一人の「個人」がそのエコ意識(節電意識)を明確に持ち「行動」しているということだ。

 不謹慎な言い方だがここでよく考えてみてほしい。それは「自分ひとりくらい節電しなくたって何の影響もない」と考えて行動している人は誰一人としていないんじゃないか。そう思うくらい世の人々は「節電」に対し真摯に取り組んでいるように見える。

 エアコンの温度を出来る限り上げ、出来る限り少ない電力にする為に扇風機やサーキュレーターを使い、気流による冷気の循環を良くするなどそのアイデアはとどまるところを知らない。首に巻くヒンヤリタオルなどもここにきて爆発的に売れていると聞く。もはや日本列島各地で高まる「エコ意識」は過去最高のレベルに達しているといっていいだろう。

 では何故「自分ひとりくらいは・・・」と考える人がいなくなったのか。

世の中に対して「節電」を行っている自分、「エコ」を常に意識し社会に貢献している自分。そんな自分が好きなのだ。そしてそんな行動を取っていること自体が「心が豊かさ」を求めているということなのだ。

 以前このコラムでも触れさせていただいたが、今の日本人は確実にそこへ向かって突き進んでいる。そのスピードはこの度の大震災により急速に高まった。
みんなで助け合い「心の豊かな日々を過ごそうよ」という気持ちが今、ひとつになろうとしているのだ。

 たかた社長は「今後はエコを意識した商品しか売れなくなる」と断言している。それは言い換えれば「心が豊かになる商品しか売れなくなる」
ということでもある。

 例えば、あるひとつの商品に出会えたとする。
それは今後の自分の人生の日々を間違いなく変えてしまう魅力的な商品だ。
その商品を手にすることにより自分自身の心がとても豊かになる。だが、それはとても高価で今の収入では買うことができなかったとしよう。

 もし、そうなった場合どうするのか。
それは「心の豊かさを感じない商品は買わないようにする」のだ。そして心の豊かさと商品を同時に手に入れるのである。これはいってみれば「価格訴求型の商売」はもう通用しないということでもある。

いくら「値段」を下げても買わないものは買わない。そんな感じで今、多くの人々は「心の豊かさを感じないモノ」を「無駄なもの」と捉え、次々とカットしていっているのだ。


「自分自身に対して心に豊かさを与えないモノの消費をしなくなった」のである。しかも、その判断基準は以前にも増して、より手厳しくなっているのだ。

 これはあらゆる商売に通じていえることである。当然ながら私達の営む飲食店もだ。それは「そこに行くことにより心が豊かになるお店」が今選ばれているということになる。逆に「心の豊かさを得られないお店」にはもう行かなくなってきているということでもあるのだ。

 そう言われてみれば心当たりのある言葉を最近よく耳にする。当店は開店して10年になるがお客さんどうしの会話の中で「幸せ」という言葉をやたらと聞くようになった。「ここでこうやって食事をしていられて幸せだね」といったようなことを語り合っているのだ。

 だが「心が豊かになるね」とは誰も言わない。そう、これはあくまでも「無意識」の行動なのだ。知らず知らずのうちに「心が豊かになるお店」とそうでないお店とを無意識の中で判別しているということなのである。

 その判断基準はそのお客さんが持つ「価値観」などによって変わってはくるであろうが、それはもはや「味」だけではないその他のものによって決められていくのだ。私が思い、日々感じることは「幸福」な気持ちになれる店がその判断基準の中に大きく関わっているのではないかということだ。


「味」だけにこだわりすぎてはいないだろうか。ハード面ばかりにとらわれて肝心なソフトの部分がおろそかになってはいないだろうか。逆にソフト面への気持ちが先走り「らしさ」を失っているのかもしれない。

 いずれにしても今後、生き残っていくお店の絶対条件として「心が豊かになるお店」でなければならないことは間違いない。その為に変えていかなければならないこと、変えてはいけないことをもう一度しっかりと考え、日々の営業に取り組まねばならないのだ。

次回は「飽きることの秘密」です。お楽しみに!

福瀬智広 - Profile 
1966年生まれ。島根県隠岐出身。岡山市内に寿司店「活種鮮寿(いきだねせんじゅ)」を開店し10年目を迎える。マグロやトロ、うになどの高級ネタは一切置かない「おまかせ形式」にもかかわらず地域で根強い人気を誇る。広告宣伝はしない、値引きもしない「飲食道」を忠実に実践している。





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Last updated  2022.11.09 10:41:03


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