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2022.10.04
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カテゴリ: 気になる本
ノーベル賞受賞者が決まるシーズンと相成り、6日にはノーベル文学賞が決まるようです。
今年も村上春樹は外れるのではないかと思ったりするが・・・・
『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』を復刻してみます。

『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』3 より

***********************************************************
図書館で『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』という本を、手にしたのです。
毎年、ノーベル文学賞発表の時期には、村上春樹受賞の知らせを待つのが恒例となっているが・・・この本には村上春樹やカズオ・イシグロが載っていて、興味深いのです。
(カズオ・イシグロは2017年に受賞したが、この本は2014年刊なので、当然、触れていません)





青月社編、青月社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
27ヵ国38人の作家が大集結!

<読む前の大使寸評>
毎年、ノーベル文学賞発表の時期には、村上春樹受賞の知らせを待つのが恒例となっているが・・・この本には村上春樹やカズオ・イシグロが載っていて、興味深いのです。

rakuten ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち



ノーベル文学賞受賞の本命ともいえる村上春樹を、見てみましょう。
p15~20
<記憶をめぐる冒険>
 1978年4月1日の13時半頃、神宮球場でヤクルト・スワローズのデイブ・ヒルトンがレフト線にツーベース・ヒットを放ったとき、外野席にいた村上春樹は、小説を書くことを決意したという。

 彼は当時29歳で、千駄ヶ谷で「ピーター・キャット」というジャズ喫茶を経営していた。そうして『風の歌を聴け』(1979年)が出来上がり、ヴォネガットやブローティガンの影響下にあったことを作者自身が認めているその作品は、群像新人文学賞を受賞する。

 同作と、つぎの『1973年のピンボール』(1980年)は芥川賞候補になるが、落選。その後、村上は、カーヴァーやチャンドラーやサリンジャーなどの翻訳を精力的に手掛け、多くのエッセイや紀行文なども発表しながら物語を創造し続けて、野間文芸新人賞や谷崎潤一郎賞、読売文学賞、フランツ・カフカ賞、エルサレム賞などを受賞し、近年では、ノーベル文学賞候補の筆頭に挙げられている。

 村上春樹は長編小説も書けば短編小説も書く。彼によれば、短編小説は陸上競技でいうと短距離、スプリントの世界であり、長編小説はフル・マラソンの世界である。村上は自らを「生まれつき長距離ランナー」(じっさい彼はフル・マラソンを走り、トライアスロンにも参加する!)であるとみなし、「基本的に長編作家」だと述べている。

 これまでに13の長編小説が発表されているが、なかには短編小説を母体とするものもある。「街と、その不確かな壁」(1980年)から『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)が生まれ、「蛍」(1983年)から『ノルウェイの森』(1987年)が生まれ、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」(1986年)から『ねじまき鳥クロニクル』(1994年)が生まれた。

 主人公はたいてい30代の男性で、喪失感や空虚感を抱えている。そして何か(誰か)を探し求めている。それは、ピンボールであったり、羊であったり、妻であったり、小学校の同級生であったりする。そうした探究の過程で、現実と非現実の境界線が消失し、闇の世界が開けてくる。主人公はそこへと向かう、冥府に下るオルフェウスのように。

 村上作品では、しばしば、二つの物語が平行して進んでゆく。『1973年のピンボール』の「僕」と「鼠」の物語がそうだ。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』になると、「僕」と「私」の物語が、はっきりと二つのパートに分けられるようになる。

 短篇から長編へと発展したこの作品について村上は、「何か違うものをくっつけてツイン・ターボで行くしかないと思った」と述懐しているが、これと同様なメカニズムが、カフカ少年とナカタさんのパートからなる『海辺のカフカ』(2002年)や、天吾や青豆(さらには牛河)のパートからなる『1Q84』(2009年)を駆動することになるだろう。
(中略)

 『ねじまき鳥クロニクル』では、主人公が電話の女の正体がわからないということが、つまり彼の「記憶」の「死角」が、物語を牽引する。そして間宮中尉の「褪せない記憶」によって表象されるノモンハンの戦争が「凍りつ」き、すっぽり「抜け落ち」る。ナカタさんの記憶はすべて失われる。佐伯さんは、あらゆる記憶を焼き払うことになるが、それでも、記憶は「なによりも大事なものになる」と語る。

 『アフターダーク』(2004年)は、人間は「記憶を燃料にして生きていくもの」だから、いろんなことを思い出すようにと励まされた浅井マリが、最終的に姉エリとの親密な思い出を取り戻す。『1Q84』では、天吾と青豆が、幼いころに互いの手が残していった「感触の記憶」とともに生きている。

 記憶とは、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で言われているように、「アイデンティティー」にかかわるものであり、二つとして同じもののない「心」の問題に通じる。その意味で村上春樹は一貫して心を問題にしてきたと言ってよい。そして記憶には、ノモンハンの戦争が出てくる『ねじまき鳥クロニクル』の頃から、歴史性が加わるようになる。


『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』2
『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』1 :カズオ・イシグロ


『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』が面白いので紹介します。
・2021.11.20  『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』5
『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』4 :51冊からマンガに関する2冊
『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』3 :村上さんの書棚
『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』2 :冒頭のインタビュー
『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』1 :辛島デイヴィッド×小野正嗣による対談





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Last updated  2022.10.04 00:47:03
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