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2019年07月12日
映画「ファイナル・カウントダウン」世界最強の原子力空母ニミッツが真珠湾攻撃直前のハワイ沖へタイムスリップ
「ファイナル・カウントダウン」
(The Final Countdown) 1980年アメリカ
監督ドン・テイラー
脚本デイヴィッド・アンブローズ
ピーター・パウエル
ゲイリー・デーヴィス
トーマス・ハンター
音楽ジョン・スコット
撮影ヴィクター・J・ケンパー
〈キャスト〉
カーク・ダグラス マーティン・シーン
キャサリン・ロス チャールズ・ダーニング
1945年の第二次世界大戦の終結と、東西冷戦下で予想される第三次世界大戦の勃発。そのような中で世界の覇権を目指そうとするアメリカは軍事力を強化。
1958年には世界初の原子力空母「エンタープライズ」が建造を開始して1961年に就役。続く1975年には原子力空母「ニミッツ」が就役します。
長距離空対空ミサイルを搭載したF-14トムキャットなどの艦上戦闘機を搭載した「ニミッツ級」は現在でも「海に浮かぶ都市」と形容され世界最大・最強を誇っています(F-14トムキャットは2006年に退役)。
「ファイナル・カウントダウン」は、その原子力空母「ニミッツ」がハワイ沖を航行中に、1941年の日本海軍による真珠湾攻撃直前にタイムスリップしてしまうお話し。
1980年。
民間人のウォーレン・ラスキー(マーティン・シーン)が「ニミッツ」乗艦のために海軍のヘリに乗り込むところから物語は始まります。
彼は大手企業タイドマン社からニミッツの視察を命じられた人物で、海軍基地に停まっている車の中にはラスキーの乗艦を見守るタイドマン社の社長の人影。
ラスキーは社長に挨拶をしようと近寄りますが、挨拶は拒まれます。
この顔の見えない謎の人物はストーリーのオチとして最後に再び登場するのですが、それはそれとして。
ハワイ沖を航行中のニミッツに乗り込んだラスキーは艦長のマシュー・イーランド海軍大佐(カーク・ダグラス)に迎えられ、あてがわれた部屋へと案内されます。
その日の気象予報では好天のはずだったのが、突如雷雲が発生したとの気象係の連絡をイーランドは受けます。
気温も下がり、気圧は急激に下がっていきます。荒れ模様となった天候の中、危険を感じたイーランドは真珠湾へ引き返そうとしますが、突如として海上に巨大な渦巻きが発生してニミッツを飲み込みます。
計器類は故障。気圧の急激な低下によるものか、低周波の影響なのか、乗員のすべてが極度の頭痛に襲われる中、しばらくして渦巻きは消え、海上は再び穏やかさを取り戻します。
レーダーは正常に戻り、音声をとらえますが、それは現在使われていない旧式の暗号で、ソ連とアメリカ、それにドイツが開戦したというものでした。
第三次世界大戦の勃発かと緊張の走る中、ラジオからはすでに亡くなっているはずのジャック・ベニーの放送が流れています。
イーランドはE-2早期警戒機を飛ばし周囲の状況を偵察しようとしますが、戻って来たE-2がとらえた航空写真には、1941年当時そのままに“アリゾナ”“ウェストバージニア”“テネシー”などの戦艦が真珠湾に無傷で停泊しています。
ニミッツ上空を飛来する日本のゼロ戦。
洋上には時代遅れのヨットが一隻。
不可解な事態にラスキーはタイムスリップを予感しますが、状況を飲み込めない乗員との間で激しい議論が戦わされる中、ゼロ戦が洋上のヨットを攻撃し始めます。
ヨット救出のためにニミッツから飛び立ったF-14はゼロ戦とのドッグファイトを展開しますが、いくらゼロ戦が無敵の格闘性能を誇っているとはいえ、近代兵器を装備し、マッハの速度を持つトムキャットの敵ではなく、2機のゼロ戦はあえなく撃墜されてしまいます。
ゼロ戦に攻撃されて転覆したヨットから救出されたのは、1944年の大統領選挙の候補とされている民主党の上院議員サミュエル・S・チャップマン(チャールズ・ダーニング)と、彼の秘書ローレル(キャサリン・ロス)、そしてローレルの愛犬チャーリー。
救出されたチャップマンは次期大統領と目されている人物で、彼は本来、1941年12月7日に行方不明になるはずでした。
そのまま生存していれば、1944年の次期大統領は民主党のフランクリン・ルーズベルトではなくサミュエル・S・チャップマンが大統領職に就くことになります。
すでに歴史に介入してしまった「ニミッツ」。
さらにイーランドは、撃墜したゼロ戦の戦闘員で捕虜となったシムラの口から、日本海軍の空母6隻が千島列島を離れ、真珠湾へ進撃していることを知ります。
歴史的事実である日本軍の真珠湾攻撃を翌日の未明に控え、イーランドは歴史に介入するか否かの決断を迫られますが、軍人としての責務を果たす、として介入を決断。
中国全土を完全制覇した高い空戦性能を持つゼロ戦を擁して連戦連勝の勢いに乗る日本海軍対F-14などの最新鋭の要撃・攻撃機を擁する原子力空母「ニミッツ」の決戦は、最終的な秒読み“ファイナル・カウントダウン”に入ってゆきます。
製作費2000万ドルの巨費を投じ、アメリカ海軍の全面的な協力のもとに作られた「ファイナル・カウントダウン」は、アメリカ国民が最も屈辱を感じるとされる日本海軍による「真珠湾攻撃」の前日に、アメリカが誇る世界最強の原子力空母「ニミッツ」がハワイ沖にタイムスリップをするという、いわば時空を超えた雪辱戦が展開される、というストーリー。
監督は「トム・ソーヤーの冒険」(1973年)、「ドクター・モローの島」(1977年)のドン・テイラー。
この人は俳優としても「花嫁の父」(1950年)、「第十七捕虜収容所」(1953年)などの出演作があります。
ニミッツの艦長に「炎の人ゴッホ」(1956年)、「OK牧場の決斗」(1957年)、「スパルタカス」(1960年)などの大スター、カーク・ダグラス。
ニミッツの視察に乗り込むウォーレン・ラスキーに、「地獄の逃避行」(1973)、「地獄の黙示録」(1979年)のマーティン・シーン。
マーティン・シーンはテレンス・マリックの監督デビュー作「地獄の逃避行」の主役以降、あまりパッとしない俳優でしたが、「地獄の黙示録」の主役がスティーブ・マックイーンやハリソン・フォードらの相次ぐ降板によって主役の座をつかみ、後には「ウォール街」(1987年)で息子で三男のチャーリー・シーンと共演するなど、数多くの映画に出演。
しかし映画「ファイナル・カウントダウン」の主役は、カーク・ダグラスでもマーティン・シーンでもありません。
主役は原子力空母ニミッツであり、F-14トムキャットであるといってもいいと思います。
タイムスリップを題材にしたSF映画ですが、過去に遡(さかのぼ)ることに対するタイムパラドックスにおける問題とか(ラスキーと乗員との論争はありますが)、複雑な話はワキへ置いといて、原子力空母ニミッツやF-14トムキャットなど、すべて本物を使った迫力は圧倒的で、そのために、アメリカの軍事力を誇示したいだけの映画と見られても仕方のない面はあります。
私は以前、陸上自衛隊明野駐屯地(三重県)での航空ショーをのぞきに行ったことがありますが、間近で見る対戦車ヘリAH-1Sコブラや、F-2、F-15といった戦闘機の迫力に驚いたことがあります。
現在の主流であるステルス戦闘機のF-35はずんぐりむっくりした体型になってしまいましたが、「ファイナル・カウントダウン」に登場するF-14トムキャットは、そのしなやかな機体から人気は高く、退役した現在でも人気の衰えていない艦上戦闘機です。
すべてが本物志向の「ファイナル・カウントダウン」(さすがにゼロ戦はニセモノですが)、ストーリー的にはやや肩透かしをくらう面は否めませんが、コンピューターグラフィックスに頼らない本物の迫力を楽しめる映画です。
(The Final Countdown) 1980年アメリカ
監督ドン・テイラー
脚本デイヴィッド・アンブローズ
ピーター・パウエル
ゲイリー・デーヴィス
トーマス・ハンター
音楽ジョン・スコット
撮影ヴィクター・J・ケンパー
〈キャスト〉
カーク・ダグラス マーティン・シーン
キャサリン・ロス チャールズ・ダーニング
1945年の第二次世界大戦の終結と、東西冷戦下で予想される第三次世界大戦の勃発。そのような中で世界の覇権を目指そうとするアメリカは軍事力を強化。
1958年には世界初の原子力空母「エンタープライズ」が建造を開始して1961年に就役。続く1975年には原子力空母「ニミッツ」が就役します。
長距離空対空ミサイルを搭載したF-14トムキャットなどの艦上戦闘機を搭載した「ニミッツ級」は現在でも「海に浮かぶ都市」と形容され世界最大・最強を誇っています(F-14トムキャットは2006年に退役)。
「ファイナル・カウントダウン」は、その原子力空母「ニミッツ」がハワイ沖を航行中に、1941年の日本海軍による真珠湾攻撃直前にタイムスリップしてしまうお話し。
1980年。
民間人のウォーレン・ラスキー(マーティン・シーン)が「ニミッツ」乗艦のために海軍のヘリに乗り込むところから物語は始まります。
彼は大手企業タイドマン社からニミッツの視察を命じられた人物で、海軍基地に停まっている車の中にはラスキーの乗艦を見守るタイドマン社の社長の人影。
ラスキーは社長に挨拶をしようと近寄りますが、挨拶は拒まれます。
この顔の見えない謎の人物はストーリーのオチとして最後に再び登場するのですが、それはそれとして。
ハワイ沖を航行中のニミッツに乗り込んだラスキーは艦長のマシュー・イーランド海軍大佐(カーク・ダグラス)に迎えられ、あてがわれた部屋へと案内されます。
その日の気象予報では好天のはずだったのが、突如雷雲が発生したとの気象係の連絡をイーランドは受けます。
気温も下がり、気圧は急激に下がっていきます。荒れ模様となった天候の中、危険を感じたイーランドは真珠湾へ引き返そうとしますが、突如として海上に巨大な渦巻きが発生してニミッツを飲み込みます。
計器類は故障。気圧の急激な低下によるものか、低周波の影響なのか、乗員のすべてが極度の頭痛に襲われる中、しばらくして渦巻きは消え、海上は再び穏やかさを取り戻します。
レーダーは正常に戻り、音声をとらえますが、それは現在使われていない旧式の暗号で、ソ連とアメリカ、それにドイツが開戦したというものでした。
第三次世界大戦の勃発かと緊張の走る中、ラジオからはすでに亡くなっているはずのジャック・ベニーの放送が流れています。
イーランドはE-2早期警戒機を飛ばし周囲の状況を偵察しようとしますが、戻って来たE-2がとらえた航空写真には、1941年当時そのままに“アリゾナ”“ウェストバージニア”“テネシー”などの戦艦が真珠湾に無傷で停泊しています。
ニミッツ上空を飛来する日本のゼロ戦。
洋上には時代遅れのヨットが一隻。
不可解な事態にラスキーはタイムスリップを予感しますが、状況を飲み込めない乗員との間で激しい議論が戦わされる中、ゼロ戦が洋上のヨットを攻撃し始めます。
ヨット救出のためにニミッツから飛び立ったF-14はゼロ戦とのドッグファイトを展開しますが、いくらゼロ戦が無敵の格闘性能を誇っているとはいえ、近代兵器を装備し、マッハの速度を持つトムキャットの敵ではなく、2機のゼロ戦はあえなく撃墜されてしまいます。
ゼロ戦に攻撃されて転覆したヨットから救出されたのは、1944年の大統領選挙の候補とされている民主党の上院議員サミュエル・S・チャップマン(チャールズ・ダーニング)と、彼の秘書ローレル(キャサリン・ロス)、そしてローレルの愛犬チャーリー。
救出されたチャップマンは次期大統領と目されている人物で、彼は本来、1941年12月7日に行方不明になるはずでした。
そのまま生存していれば、1944年の次期大統領は民主党のフランクリン・ルーズベルトではなくサミュエル・S・チャップマンが大統領職に就くことになります。
すでに歴史に介入してしまった「ニミッツ」。
さらにイーランドは、撃墜したゼロ戦の戦闘員で捕虜となったシムラの口から、日本海軍の空母6隻が千島列島を離れ、真珠湾へ進撃していることを知ります。
歴史的事実である日本軍の真珠湾攻撃を翌日の未明に控え、イーランドは歴史に介入するか否かの決断を迫られますが、軍人としての責務を果たす、として介入を決断。
中国全土を完全制覇した高い空戦性能を持つゼロ戦を擁して連戦連勝の勢いに乗る日本海軍対F-14などの最新鋭の要撃・攻撃機を擁する原子力空母「ニミッツ」の決戦は、最終的な秒読み“ファイナル・カウントダウン”に入ってゆきます。
製作費2000万ドルの巨費を投じ、アメリカ海軍の全面的な協力のもとに作られた「ファイナル・カウントダウン」は、アメリカ国民が最も屈辱を感じるとされる日本海軍による「真珠湾攻撃」の前日に、アメリカが誇る世界最強の原子力空母「ニミッツ」がハワイ沖にタイムスリップをするという、いわば時空を超えた雪辱戦が展開される、というストーリー。
監督は「トム・ソーヤーの冒険」(1973年)、「ドクター・モローの島」(1977年)のドン・テイラー。
この人は俳優としても「花嫁の父」(1950年)、「第十七捕虜収容所」(1953年)などの出演作があります。
ニミッツの艦長に「炎の人ゴッホ」(1956年)、「OK牧場の決斗」(1957年)、「スパルタカス」(1960年)などの大スター、カーク・ダグラス。
ニミッツの視察に乗り込むウォーレン・ラスキーに、「地獄の逃避行」(1973)、「地獄の黙示録」(1979年)のマーティン・シーン。
マーティン・シーンはテレンス・マリックの監督デビュー作「地獄の逃避行」の主役以降、あまりパッとしない俳優でしたが、「地獄の黙示録」の主役がスティーブ・マックイーンやハリソン・フォードらの相次ぐ降板によって主役の座をつかみ、後には「ウォール街」(1987年)で息子で三男のチャーリー・シーンと共演するなど、数多くの映画に出演。
しかし映画「ファイナル・カウントダウン」の主役は、カーク・ダグラスでもマーティン・シーンでもありません。
主役は原子力空母ニミッツであり、F-14トムキャットであるといってもいいと思います。
タイムスリップを題材にしたSF映画ですが、過去に遡(さかのぼ)ることに対するタイムパラドックスにおける問題とか(ラスキーと乗員との論争はありますが)、複雑な話はワキへ置いといて、原子力空母ニミッツやF-14トムキャットなど、すべて本物を使った迫力は圧倒的で、そのために、アメリカの軍事力を誇示したいだけの映画と見られても仕方のない面はあります。
私は以前、陸上自衛隊明野駐屯地(三重県)での航空ショーをのぞきに行ったことがありますが、間近で見る対戦車ヘリAH-1Sコブラや、F-2、F-15といった戦闘機の迫力に驚いたことがあります。
現在の主流であるステルス戦闘機のF-35はずんぐりむっくりした体型になってしまいましたが、「ファイナル・カウントダウン」に登場するF-14トムキャットは、そのしなやかな機体から人気は高く、退役した現在でも人気の衰えていない艦上戦闘機です。
すべてが本物志向の「ファイナル・カウントダウン」(さすがにゼロ戦はニセモノですが)、ストーリー的にはやや肩透かしをくらう面は否めませんが、コンピューターグラフィックスに頼らない本物の迫力を楽しめる映画です。