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2021年07月21日
映画「ワイルドバンチ」− 時代に取り残されていく男たちの美学 壮絶なクライマックスへ
「ワイルドバンチ」
(The Wild Bunch )
1969年 アメリカ
監督サム・ペキンパー
脚本ウォロン・グリーン
サム・ペキンパー
撮影ルシアン・バラード
音楽ジェリー・フィールディング
〈キャスト〉
ウィリアム・ホールデン アーネスト・ボーグナイン
ウォーレン・オーツ ベン・ジョンソン
ロバート・ライアン エミリオ・フェルナンデス
クライマックスの壮絶な銃撃戦が話題を呼んだ、巨匠サム・ペキンパー監督のバイオレンス・アクションの傑作。
20世紀初頭。アメリカ=メキシコ、国境の街。
パイク・ビショップ(ウィリアム・ホールデン)に率いられた強盗団5人は、銀行を襲撃すべく軍服に身を包んで街に現れます。
襲撃はいったんは成功したかに見えましたが、それは鉄道会社が仕掛けた罠で、パイクのかつての仲間であるディーク・ソーントン(ロバート・ライアン)率いる賞金稼ぎたちの待ち伏せに遭い、一味の一人は射殺され、凄惨な銃撃戦の中をかいくぐってパイクたちはかろうじて逃げのびます。
強奪したと思った金貨も、実はただの鉄くずだったことで一味は深い落胆に陥りますが、気を取り直して次の仕事に取り掛かります。
一方、パイクたちを取り逃がしたソーントンは、会社側から厳しい言葉を投げつけられます。
本来、刑務所で服役しているはずのソーントンは、パイクたちを捕まえる条件で釈放されている体で、これ以上失敗を重ねれば、再び刑務所に戻すと脅されたソーントンは、粗野な賞金稼ぎたちを引き連れてパイクたちの後を追いかけます。
強盗団のひとり、エンジェル(ジェイミー・サンチェス)の故郷に潜伏したパイクたちは、政府軍の将軍マパッチ(エミリオ・フェルナンデス)が小銃や弾薬を欲しがっていることを知り、アメリカ軍の軍用列車から武器を奪うことに成功。
しかし、この列車にはソーントンも乗り合わせており、右往左往するアメリカ軍を尻目に、ソーントンの執拗な追跡が始まります。
マパッチに接近したパイクは武器を渡し、盛大な歓待を受けますが、そこには、村を飛び出してマパッチのものになった、エンジェルのかつての恋人テレサがマパッチに抱かれて、エンジェルに見せつけるようにマパッチを愛撫。
逆上したエンジェルがテレサを射殺。
凍り付くような緊張感の中、機転を利かせたパイクたちによって、一時は事なきを得ますが、その後、エンジェルはマパッチに捕らわれ、激しい暴行を受けて瀕死の状態に。
エンジェルの惨状を見たパイクは、俺たちには関係ないんだと、静かに立ち去ります。
ライル(ウォーレン・オーツ)、テクター(ベン・ジョンソン)の兄弟は酒と女で派手に騒ぎ、パイクも子持ちの若い女とひと時を過ごします。
静かな時が流れ、女に払う金のことで揉めているラウルの部屋に入り、パイクはこうつぶやきます。
「let's go」
パイク、ライル、テクター、そして、外で待っていたダッチ(アーネスト・ボーグナイン)を加え、エンジェルを救うべく、政府軍の待ち構える中へ、たった4人で乗り込むことになります。
男たちの美学に貫かれた骨太い傑作で、20世紀に入って近代化が芽を吹き出し始め、西部にも自動車が登場して、「なんだこれは?」と驚くパイクたちは、揺れ動く時代の波の中で、自分たちの生きた世界が過去になりつつあることを自覚するわけで、そういった男たちの滅びの美学を描いた映画であるといえます。
また、男たちの絆、団結なども強く描かれていて、冒頭、銀行襲撃が罠と判り、持ち帰った金貨を前に仲間割れが始まろうとする。
実は金貨ではなく鉄屑だったと判り、誰からともなく笑いがあふれ、それが全員に伝播していく場面は、小さいゴタゴタなどは(実際には殺気をはらんだ睨み合いですが)笑い飛ばしてしまおうとする豪快な大らかさが描かれて、とても印象的なシーン。
そういった場面は、ウイスキーの回し飲みをするシーンでもよく表れていて、一味の道化物的存在のライルが最後に飲もうとすると、すでにビンは空になっている。渋い顔をするライルの表情と、それを見てみんなが大笑いをする場面は、時代に取り残されていこうとする男たちの、哀しみを裏返した陽気さであったように思います。
出演者たちもサム・ペキンパー好みの一癖も二癖もある俳優たちが勢揃い。
強盗団の首領パイク・ビショップに「第十七捕虜収容所」(1953年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、その後も「麗しのサブリナ」(1954年)、「慕情」(1955年)、「戦場にかける橋」(1957年)など、名作や大作に欠かせない存在のウィリアム・ホールデン。
「ワイルドバンチ」と同年の「クリスマス・ツリー」では、偶然の事故で放射能を浴びてしまった息子の余命が残り少ないと知り、息子が欲しがっていた狼を友人のブールヴィルと二人で動物園から盗み出す父親を好演。
息子が亡くなるラストは、「パパありがとう」のクリスマス・カードと共に、狼の哀しい遠吠えが涙を誘う名作でした。
パイクの片腕ダッチに、「地上(ここ)より永遠(とわ)に」(1953年)で、フランク・シナトラを徹底的に苛め抜く軍曹役で強烈な印象を残し、「マーティー」(1955年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したアーネスト・ボーグナイン。
また、パニック物のハシリとなった1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」では、神父のジーン・ハックマンとことごとく対立するニューヨーク市警の刑事を熱演。
翌年の「北国の帝王」では、伝説のただ乗り男リー・マーヴィンを乗せまいとする鬼車掌を演じ、久しぶりにアクの強いボーグナインを見せてくれました。
強盗団の中では、ちょっと間の抜けたライルに、アカデミー賞作品賞受賞の「夜の大捜査線」(1967年)で注目されたウォーレン・オーツ。
「ワイルドバンチ」出演が転機となったのか、その後、「さすらいのカウボーイ」(1971年)、「デリンジャー」(1973年)、巨匠テレンス・マリックの「地獄の逃避行」(1973年)など、タフで粘り強い性格俳優として活躍。
1974年には「ガルシアの首」で再びサム・ペキンパーと組んでいます。
ライルの兄テクターに、「三人の名付親」(1948年)、「黄色いリボン」(1949年)、「リオ・グランデの砦」(1950年)などで、巨匠ジョン・フォードと縁の深いベン・ジョンソン。
サム・ペキンパー作品には「ワイルドバンチ」以外にも「ダンディー少佐」(1965年)、「ゲッタウェイ」(1972年)に出演。
最後まで生き残る老人サイクスに、「殺人者」(1946年)、「白熱」(1949年)のエドモンド・オブライエン。
1954年の「裸足の伯爵夫人」ではアカデミー賞助演男優賞を受賞。
極悪な政府軍の将軍マパッチに、メキシコ人俳優で監督でもあるエミリオ・フェルナンデス。
パイクを追う元相棒のソーントンに、「誇り高き男」(1956年)、「史上最大の作戦」(1962年)、「バルジ大作戦」(1965年)、「狼は天使の匂い」などの名優ロバート・ライアン。
無数のアリがサソリに群がり、それを喜んで見ている子どもたちの異様な雰囲気で始まる「ワイルドバンチ」。
時代に取り残されていく男たちと、壮絶な銃撃戦で幕を閉じるこの映画は、一方で、ディーク・ソーントンの存在がとても大きく、かつてパイクの相棒だったソーントンは、列車強盗に業を煮やした鉄道会社の言いなりになってパイクを追いかける立場となっているものの、その仕事にはなんとなく気が乗らない。パイクを捕まえなければならない反面、捕まえたくない気持ちも大きく、その両方で揺らぐ複雑な立場をロバート・ライアンが好演。
ラストでは、パイクたち全員が殺され、虚脱した体で街の外に座り込むソーントンに、生き延びたサイクス老人が、また一緒にやろうぜ、ひとりよりはいいだろう、と声をかけ、ソーントンが馬に乗ってサイクスたちと荒野に消える場面は、傑作にふさわしい見事なラストシーンでした。
1969年 アメリカ
監督サム・ペキンパー
脚本ウォロン・グリーン
サム・ペキンパー
撮影ルシアン・バラード
音楽ジェリー・フィールディング
〈キャスト〉
ウィリアム・ホールデン アーネスト・ボーグナイン
ウォーレン・オーツ ベン・ジョンソン
ロバート・ライアン エミリオ・フェルナンデス
クライマックスの壮絶な銃撃戦が話題を呼んだ、巨匠サム・ペキンパー監督のバイオレンス・アクションの傑作。
20世紀初頭。アメリカ=メキシコ、国境の街。
パイク・ビショップ(ウィリアム・ホールデン)に率いられた強盗団5人は、銀行を襲撃すべく軍服に身を包んで街に現れます。
襲撃はいったんは成功したかに見えましたが、それは鉄道会社が仕掛けた罠で、パイクのかつての仲間であるディーク・ソーントン(ロバート・ライアン)率いる賞金稼ぎたちの待ち伏せに遭い、一味の一人は射殺され、凄惨な銃撃戦の中をかいくぐってパイクたちはかろうじて逃げのびます。
強奪したと思った金貨も、実はただの鉄くずだったことで一味は深い落胆に陥りますが、気を取り直して次の仕事に取り掛かります。
一方、パイクたちを取り逃がしたソーントンは、会社側から厳しい言葉を投げつけられます。
本来、刑務所で服役しているはずのソーントンは、パイクたちを捕まえる条件で釈放されている体で、これ以上失敗を重ねれば、再び刑務所に戻すと脅されたソーントンは、粗野な賞金稼ぎたちを引き連れてパイクたちの後を追いかけます。
強盗団のひとり、エンジェル(ジェイミー・サンチェス)の故郷に潜伏したパイクたちは、政府軍の将軍マパッチ(エミリオ・フェルナンデス)が小銃や弾薬を欲しがっていることを知り、アメリカ軍の軍用列車から武器を奪うことに成功。
しかし、この列車にはソーントンも乗り合わせており、右往左往するアメリカ軍を尻目に、ソーントンの執拗な追跡が始まります。
マパッチに接近したパイクは武器を渡し、盛大な歓待を受けますが、そこには、村を飛び出してマパッチのものになった、エンジェルのかつての恋人テレサがマパッチに抱かれて、エンジェルに見せつけるようにマパッチを愛撫。
逆上したエンジェルがテレサを射殺。
凍り付くような緊張感の中、機転を利かせたパイクたちによって、一時は事なきを得ますが、その後、エンジェルはマパッチに捕らわれ、激しい暴行を受けて瀕死の状態に。
エンジェルの惨状を見たパイクは、俺たちには関係ないんだと、静かに立ち去ります。
ライル(ウォーレン・オーツ)、テクター(ベン・ジョンソン)の兄弟は酒と女で派手に騒ぎ、パイクも子持ちの若い女とひと時を過ごします。
静かな時が流れ、女に払う金のことで揉めているラウルの部屋に入り、パイクはこうつぶやきます。
「let's go」
パイク、ライル、テクター、そして、外で待っていたダッチ(アーネスト・ボーグナイン)を加え、エンジェルを救うべく、政府軍の待ち構える中へ、たった4人で乗り込むことになります。
男たちの美学に貫かれた骨太い傑作で、20世紀に入って近代化が芽を吹き出し始め、西部にも自動車が登場して、「なんだこれは?」と驚くパイクたちは、揺れ動く時代の波の中で、自分たちの生きた世界が過去になりつつあることを自覚するわけで、そういった男たちの滅びの美学を描いた映画であるといえます。
また、男たちの絆、団結なども強く描かれていて、冒頭、銀行襲撃が罠と判り、持ち帰った金貨を前に仲間割れが始まろうとする。
実は金貨ではなく鉄屑だったと判り、誰からともなく笑いがあふれ、それが全員に伝播していく場面は、小さいゴタゴタなどは(実際には殺気をはらんだ睨み合いですが)笑い飛ばしてしまおうとする豪快な大らかさが描かれて、とても印象的なシーン。
そういった場面は、ウイスキーの回し飲みをするシーンでもよく表れていて、一味の道化物的存在のライルが最後に飲もうとすると、すでにビンは空になっている。渋い顔をするライルの表情と、それを見てみんなが大笑いをする場面は、時代に取り残されていこうとする男たちの、哀しみを裏返した陽気さであったように思います。
出演者たちもサム・ペキンパー好みの一癖も二癖もある俳優たちが勢揃い。
強盗団の首領パイク・ビショップに「第十七捕虜収容所」(1953年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、その後も「麗しのサブリナ」(1954年)、「慕情」(1955年)、「戦場にかける橋」(1957年)など、名作や大作に欠かせない存在のウィリアム・ホールデン。
「ワイルドバンチ」と同年の「クリスマス・ツリー」では、偶然の事故で放射能を浴びてしまった息子の余命が残り少ないと知り、息子が欲しがっていた狼を友人のブールヴィルと二人で動物園から盗み出す父親を好演。
息子が亡くなるラストは、「パパありがとう」のクリスマス・カードと共に、狼の哀しい遠吠えが涙を誘う名作でした。
パイクの片腕ダッチに、「地上(ここ)より永遠(とわ)に」(1953年)で、フランク・シナトラを徹底的に苛め抜く軍曹役で強烈な印象を残し、「マーティー」(1955年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したアーネスト・ボーグナイン。
また、パニック物のハシリとなった1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」では、神父のジーン・ハックマンとことごとく対立するニューヨーク市警の刑事を熱演。
翌年の「北国の帝王」では、伝説のただ乗り男リー・マーヴィンを乗せまいとする鬼車掌を演じ、久しぶりにアクの強いボーグナインを見せてくれました。
強盗団の中では、ちょっと間の抜けたライルに、アカデミー賞作品賞受賞の「夜の大捜査線」(1967年)で注目されたウォーレン・オーツ。
「ワイルドバンチ」出演が転機となったのか、その後、「さすらいのカウボーイ」(1971年)、「デリンジャー」(1973年)、巨匠テレンス・マリックの「地獄の逃避行」(1973年)など、タフで粘り強い性格俳優として活躍。
1974年には「ガルシアの首」で再びサム・ペキンパーと組んでいます。
ライルの兄テクターに、「三人の名付親」(1948年)、「黄色いリボン」(1949年)、「リオ・グランデの砦」(1950年)などで、巨匠ジョン・フォードと縁の深いベン・ジョンソン。
サム・ペキンパー作品には「ワイルドバンチ」以外にも「ダンディー少佐」(1965年)、「ゲッタウェイ」(1972年)に出演。
最後まで生き残る老人サイクスに、「殺人者」(1946年)、「白熱」(1949年)のエドモンド・オブライエン。
1954年の「裸足の伯爵夫人」ではアカデミー賞助演男優賞を受賞。
極悪な政府軍の将軍マパッチに、メキシコ人俳優で監督でもあるエミリオ・フェルナンデス。
パイクを追う元相棒のソーントンに、「誇り高き男」(1956年)、「史上最大の作戦」(1962年)、「バルジ大作戦」(1965年)、「狼は天使の匂い」などの名優ロバート・ライアン。
無数のアリがサソリに群がり、それを喜んで見ている子どもたちの異様な雰囲気で始まる「ワイルドバンチ」。
時代に取り残されていく男たちと、壮絶な銃撃戦で幕を閉じるこの映画は、一方で、ディーク・ソーントンの存在がとても大きく、かつてパイクの相棒だったソーントンは、列車強盗に業を煮やした鉄道会社の言いなりになってパイクを追いかける立場となっているものの、その仕事にはなんとなく気が乗らない。パイクを捕まえなければならない反面、捕まえたくない気持ちも大きく、その両方で揺らぐ複雑な立場をロバート・ライアンが好演。
ラストでは、パイクたち全員が殺され、虚脱した体で街の外に座り込むソーントンに、生き延びたサイクス老人が、また一緒にやろうぜ、ひとりよりはいいだろう、と声をかけ、ソーントンが馬に乗ってサイクスたちと荒野に消える場面は、傑作にふさわしい見事なラストシーンでした。