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2019年05月31日

 家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <17 子供の椅子>

子供の椅子
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叔父は自分を不始末の子と言っていた。聡一の愛人の子供の話を他人ごととして聞けないのだろう。叔父は祖父の愛人の子として生まれて、しかも母親を早く亡くしていた。この子の境遇と似ていた。叔母も自分の夫の気持ちをよく理解しているのだろう。二人の間ではもう結論が出ていた。叔父が外で作った子として引き取りたいという話だった。

これには真梨がとても嫌な顔をした。「なんで、この年で急に弟ができるのよ。おかしいじゃないの!」と叔父に食って掛かった。一人っ子の真梨は両親の愛を一身に受けて育った。両親がよその子にひどく同情する様子に嫉妬したように見えた。

「真梨、確かに不自然は不自然やねんけど、でも血はつながってるんやし。全く他人やないんやから、そこは気持ちを大きく持ってほしいのよ。」と叔母がとりなしても真梨の表情は和らがなかった。

「だって、その子1歳に成るかならないかでしょ?私と兄弟って変じゃないの!」と真梨がいうと、叔母が「それはそうやけど、パパの外の子っていうことで承知してほしいのよ。」と親子喧嘩が始まった。

「第一、相続で揉めるのが眼に見えてるじゃない!その子だって外の子って言われながら暮らすなんてかわいそうじゃない!」と真梨が言った。僕は、真梨が何を言いたいのかわかっていた。

「それはもちろん考慮する。聡一や聡の方からも何らかのものがあるはずだから真梨に迷惑をかけるようなことはしないよ。」と叔父は面食らいながら答えた。叔母は「真梨、情けない。いい加減にしなさい!」と怒った。

真梨は「情けないのはこっちよ。見損なわないでほしいわよ。普通に考えたらその子は私たちが育てたほうが自然じゃないの。ねえ、そうじゃない?」と真梨が僕の方を見た。

僕はこの時点で心が決まっていた。僕たちの二番目の子、絵梨の兄弟の椅子はこの子のために空けてあったような錯覚をした。真梨が相続やら何やかやとごねているのは、その子をどうしても自分の子にしたいからだった。

真梨は体の奥底でこの子こそが自分の二番目の子供だと感じているのだ。「僕もその方がいいと思います。もともと僕の弟の話なんですから。僕に異存があるわけないですよ。」と答えた。

真梨が「そうよ、もともと聡ちゃんのことなんだから、お兄ちゃんにも責任の一端はあるんだし。」というと、叔母も「そういえばそうやね。俊ちゃんにも責任の一端があるわけやし。育児は私も協力するし。」と答えた。

叔父は「ありがたいが、2、3日考えさせてくれ。」といって、「この話は、俊也には全く責任のない話だよ。わかってるのかな?2人とも」といった。僕も、なんでここで僕の責任の話になるのか不思議に思っていたところだった。それでも、この子を僕の家族として迎えたいと強く思っていた。

結局のところ叔父が真梨の提案が一番妥当だという結論を出した。今なら絵梨もあまり違和感なく弟を受け入れるだろうと思えた。それを考えると話は急いだほうがいいということになった。

継父は泣いて喜んでくれた。「パパ、僕、恩返し出来たら嬉しいよ。」と言うと、「ばかもん、恩なんかない!恩なんか言われたら悲しい。」と怒った。

その夜、聡一から家に電話があった。「迷惑かけて申し訳ない。色々な面で気をつけさせてもらう。ありがとう兄ちゃん。幸せにしたってくれ。頼む。本当に申し訳ない。」と泣いた。聡一にしてみれば第一子だ。可愛くないはずがなかった。

聡一は翌週には家に来て小切手を置いて行った。「これで、恩返しができるとは思ってない。今はこれが僕ができる全てなんや。」といった。真梨も僕も固辞したが頼むから受け取ってほしいということだった。子供の預金として預かった。


続く


家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <16 不幸な子>

不幸な子

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ある日継父が叔父の会社に来た。三崎専務に丁寧にあいさつして僕には目を合わせただけで何も言わなかった。珍しく深刻な顔をしているので少し心配になった。

その日継父は、社長室で叔父と2時間ぐらい話してそのまま帰っていった。継父が来ればたいていは三崎専務と僕を誘って食事に出た。酔って「俊也が、俊也が」と叔父を差し置いて父親ぶりを発揮した。それが今日は挨拶もそこそこに帰ったのを三崎専務も気にしていた。三崎専務が社長室へ資料を持っていくように指示をくれた。

僕が社長室に行くと叔父は難しい顔をして天井を見ていた。考え事をするときの癖だった。「何かありましたか?」と尋ねると、「うん、ちょっと複雑な話だ。今晩、家に来てくれないか?真梨も一緒に頼む。プライベートな話だ。」といった。

三崎専務には「親戚の問題みたいです。ご心配かけてすみません。」と断った。「そうか、大変だね。もし私で役に立つことがあれば言ってくれ。」と答えた。三崎専務は接待の時には面白くて豪快な営業マンだが普段、オフィスではマナーも頭もいいビジネスマンだった。

夜7時ごろに叔父の家に着いたときには、真梨と絵梨が来て待っていた。いつもなら叔母が大張り切りで夕飯を用意しているのだが、今日は近所の寿司屋からの出前が来ていた。

叔父は「まず飯だ。」と言って夕食を優先した。叔父の性格では用事が先で、それをすませてから食事にするのが普通だったが今日は違った。それだけ面倒な用事だと思った。

沈んだ雰囲気で食事が終わった。普段は叔母と絵梨の掛け合いでみんなが笑うのだが今日は叔母が冗談を飛ばすことは無かった。

食事が終わって絵梨が寝てしまってから話し合いが始まった。「養子をとろうと思うがどうか?」という唐突な話だった。養子にしようとしているのは大阪の聡一の息子らしい。

聡一は大手のデベロッパーに就職して地元の名士の娘と結婚していた。田原の家には住まずに大阪の中心部にあるマンションに住んでいた。いずれは田原の家に入るにしても一時的にはそういう暮らしがしてみたいということだ。特に珍しいこともない普通の結婚だった。

聡一の妻という人とは、たまに会うがおとなしい人であまり皆となじむことは無かった。しかし感じの悪い人ではなく気立てもいいようだ。聡一はその人を大切にしていた。ただ、引っ込み思案ということで、なかなか親戚に馴染み難いようだった。

聡一に家の外に女性がいたことを初めて知らされた。サラリーマン時代の後輩の女性らしい。聡一は彼女が妊娠していることを知らずに彼女と別れた。そして今の奥さんと結婚した。聡一の恋人は妊娠も出産も聡一に知らせなかったらしい。出産後、彼女の母親から知らされてはじめて知った。

女性は聡一の新妻の妊娠が分かった時期に出産した。子供は既に6カ月になるらしい。聡一は養育費や慰謝料などすべて用意して家庭の外の母子を支えていた。聡一は子供可愛さにその女性との縁が切れなかったのだ。

多分、子供の母親のことも好きだったのだろう。そのまま大学を卒業するまで援助するつもりだったらしい。聡一にしてみれば、その子こそ第一子だった。

ところが、その子供の母親が交通事故で亡くなってしまった。赤ん坊は一時的に母親の兄に引き取られたが見ていて幸福になれそうな気がしないという。聡一がなんとか田原の養子にしてほしいと頼み込んだそうだ。

考えてみれば図々しい話だ。自分が確実に目が届いて、絶対に信用ができる相手に、しかも絶対に断らないだろうと見込んだ申し込みだ。本来は聡一が育てるべき子供だ。

継父の悩みは聡一の妻が病弱だということだった。継父は「嫁さんが弱いんや。」と叔父に打ち明けた。「身体が弱いだけなら家政婦を雇えば解決できる。実は心も弱いんや。」というのが継父と聡一の悩みだった。

今もマタニティーブルーで悩んでいる。この上、外にできた子供を育てろ等ととても言えたものではない。継父の養子にしたとしても聡一の妻の心は乱れるだろう。

一番問題なのは無理して引き取っても、その子が幸福に育つような気がしないということだった。それは当たり前だ。自分の妊娠中に生まれた夫の愛人の子を愛せる妻はそういない。


続く


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2019年05月29日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <15 冷たい体>

冷たい体

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不妊治療を中止しして3カ月ぐらいたったころから真梨は徐々に以前の明るさを取り戻していた。「ママに謝りたいんだけど蒸し返すのもよくないのかな?」と相談された。

「あの時、多分ホルモンの関係だと思うんだけど、今思ってもよくわかんないの。なんであんなに子供子供って思い詰めてたのか。欲しいのは確かだったの。でも絵梨一人でも普通に幸福だと思ってたのよ。できる努力はしてみようって思っただけだったのよ。なんであんなに思い詰めるようになったのかがよくわかんないのよ。」といった。

男女差の最も大きい部分の話だった。僕はただ「そうだったのか。」と思うだけだった。真梨が夢から覚めたように気分がしっかりして、言うことも以前のように穏やかになったことにホッとしていた。

結局、休日に叔父夫婦を夕食に招待して真梨の手料理でもてなした。叔父も叔母もずいぶん喜んだ。それだけだが叔母は少し涙ぐんだように感じた。僕たちは表面的には以前のような円満な関係を取り戻していた。

ところが現実は不妊治療を中止してからは夫婦関係は無くなっていた。一年半、とにかく妊娠だけを目的に関係を持っていた。目的がなくなったとき、僕たちの夜は単なる睡眠時間になった。

僕も真梨も寝室に入ったが最後、以前のようにおしゃべりをするでもなくすぐに眠ってしまう。その方が気が楽だった。

その夜は真梨が先に寝室に入った。僕達はいつもどちらからともなく寝室に入る時間をずらしていた。僕は真梨より20分ぐらい遅れて寝室に入った。明かりは落とされていたので薄暗さに目が慣れるまで1分ぐらいかかった。

目が慣れてから床をみて心臓が止まりそうになった。真梨がベッドの横で倒れていた。うつ伏せに丸くなって少し震えているように見えた。呼吸が早いような気がした。「どうした!」と大きな声が出た。横のベッドで寝ていた絵梨が寝返りを打った。

真梨は胸を押さえて苦しんでいた。驚いて「苦しいのか!」と聞くと無言でうなづいた。「胸か!」と聞くとまた無言でうなづいた。抱き起していいものかどうか迷った。額に手を当てようとしたとき、真梨が突然仰向けに寝返った。僕は体勢を崩して真梨にかぶさるように倒れた。

僕が「作戦か?」と聞くとこっくりうなづいて声を上げて泣き出した。「ばか、そんな声を出したら絵梨が起きるぞ。」といいながら真梨の口を手のひらで押さえた。真梨の体は驚くほど冷たかった。「ずっと床に寝てたんか?」と聞くと「うん」と答えた。

「アホか君は、他の作戦思いつかんかった?」と聞くと「ホントに全然思いつかなかったのよ。ちょっと焦ってたし。」「焦ってた?」「だってお兄ちゃんに嫌われてるんだもん。」と言ってまた泣き出した。「そんな声を出したら絵梨が起きる。静かにしないと。」と言った様な気もする。

真梨を僕のベッドに寝かせて二人で布団をかぶって温めあった。数カ月ぶりの熱い昂ぶりが襲ってきた。真梨は、多分僕をつなぎとめようと必死だったのだと思う。何度も私のこと好き?と聞いてきた。僕が知っている真梨よりももっと情熱的だった。

結局僕は真梨に「今度から寂しかったら僕のベッドに入って待つこと。わかった?」と念を押していた。僕は同じ作戦に2度引っかかって以前よりももっと深い罠にはまっていく、本当に扱いやすい男だった。


続く


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家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <14 不妊治療>

不妊治療
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僕たちの第一子は女の子だった。名前は絵梨と付けた。僕に似ているというよりも僕の母に似ていた。僕が言うのも可笑しいが僕の母はエキゾチックで華やかな美人だった。絵梨はその母に似ているが母よりも小作りで可憐な感じがした。叔父も叔母も絵梨を見ればニコニコ顔だった。

真梨もいい加減甘やかされて育ったが、絵梨は両親のほかに祖父母が付くから人にかまわれていない時間がないくらいだった。生まれながらに多くの愛情と幸福に包まれて育った。

絵梨が生まれて2年経っても次の子供を授かることは無かった。僕たち夫婦は比較的早婚だった。それに夫婦仲もいい。にもかかわらず一向に授からない。僕はこのことを不思議に思っていたが不満に思ったことはなかった。叔父や叔母も特に不満を言うわけではなかった。しかし真梨自身が子供は3人と決めていた。

真梨のたっての願いで僕たち夫婦は不妊治療を開始した。数カ月は夫婦ともに一生懸命だった。妊娠を目指して、それなりに仲良くやっていた。しかし、毎月毎月希望を持っては失望することを繰り返す日々は大きなストレスだった。

真梨は最初の1年間の不妊治療で妊娠できなかったことにショックを受けた。僕も最初の1年間はこんなものかと思って協力してきたが、これがまだ続くのかと思うとうんざりした。

若かった僕は絵梨が生まれてからも夜は楽しみだった。しかし不妊治療を始めてからというもの夜は楽しみというよりは作業に近かった。日を決められて目的をもってする作業だった。

それでも最初は一時の我慢だと思っていた。しかし現実は長い長いトンネルに居るようなものだった。僕は不妊治療というものがどんなものかもよく調べずに安請け合いしたことを後悔した。

真梨の負担は尋常なものではなかっただろう。心の負担と痛みを伴う検査、たくさんの薬を飲む負担、薬の影響が体調にも気分にも大きく影響した。一番困るのは原因がわからないことだった。解決すべき問題は何もないのに結果はいつも不可だった。とにかく先が見えない。

1年を過ぎたころには真梨は常に情緒が不安定だった。昼間は絵梨がいるので何とか気持ちを持ちこたえているが夜になると不機嫌になった。

不思議なことに不妊治療を始めてからというもの、真梨の気持ちは生活のすべてが妊娠を目的にしていた。妊娠につながらないことには意味がないと感じているようだった。妊娠につながらない日には夫婦関係も無くなった。

これには参った。夫婦の関係にも微妙に影が差してきた。時々僕に当たり散らすときも出てきた。

それでも僕は離婚は考えなかった。それは真梨への執着ではなく絵梨のためだった。不安定な真梨に幼い絵梨を預けるわけにはいかなかった。正直真梨には辟易していた。

僕は真梨を独占したくて結婚した。真梨にのぼせ上っていた。その真梨にこんな気持ちを抱くようになるとは想像もしていなかった。

ある日、見かねた叔母が不妊治療を中止してはどうかと提案してくれた。僕も叔父もいつ言い出そうかと悩んでいたことだった。叔母が言い出してくれてほっとした。ところがこれが真梨の神経を逆なでしてしまった。

「ママには私の気持ちなんてわからないのよ!私が毎日一人ぼっちでどんなに寂しかったと思ってるのよ!なんでもう一人でもいいから生んでくれなかったのよ!」と食って掛かった。

叔母は眼に涙を浮かべて「ごめんね。真梨がそんなに寂しい思いをしてたなんて知らなかったんよ。ホントにごめんね。」と謝った。

真梨があんまり大きな声で怒鳴ったので慌てて僕が叔母に謝った。いつもほんわかムードで場を盛り上げるように冗談を飛ばしていた叔母が、その日はトボトボと家に帰った。

そのあと叔父から電話があって「悪いね、なんだかゴタゴタして。」と謝られてしまった。僕も「僕たち夫婦のことで叔母さんに嫌な思いさせて、すんません。」と男二人は外野でボール拾いをするだけだった。

結局真梨はこの時を境に不妊治療を中止した。叔母は何事もなかったように相変わらず僕たちの暮らしを支えてくれていた。叔父に「叔母さん大丈夫ですか?」と聞くと「こんなにいい亭主が付いてるんだから心配無用だよ。悪いが真梨を頼む。」といわれた。


続く


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2019年05月27日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <13 新生活>

新生活
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会社を辞めて2か月後には僕は叔父の会社に入社した。総勢12人の会社の一業務社員だった。社用車に乗って毎日、経営するフィットネスジムやカフェの売り上げを確認しながらマンションの管理状態を見て回った。

恐ろしく体力と忍耐力のいる仕事だった。名刺を渡すと、いろいろなところで「息子さん?」と聞かれた。「いえ、婿です。」と答える日々が続いた。

僕が新入社員として右往左往しているころ、真梨はオーナーの娘として動き出していた。幼児塾の経営を画策し始めたのだ。どうも事業欲が盛んなところは叔母譲りのようだ。そして実務にこき使われるのが婿養子だった。

叔父は眼の付けどころがいいと乗り気で、右も左もわからない僕を引き連れていろいろ動いてくれた。その幼児塾は、その後の僕たたちのライフワークになった。さすがに利益率はあまり大きくはなかった。しかし、社会的信用を得るという意味では大きく貢献した事業に育った。

このころ真梨が妊娠した。結婚して2年目の秋だった。叔母は真梨に仕事をやめるように説得したが真梨は働き続けた。妊娠中も幼児塾の講師を募集したリ、他の講師とカリキュラムを組んだりしていた。叔母は一生懸命僕たちの家庭をバックアップしてくれた

僕は一人っ子の真梨が羨ましかった。叔父も叔母も真梨のことに全力投球だった。僕はこういう愛情の掛け方をされてこなかった。物心ついたときには母は水産工場の作業に追われていて僕はその周りで一人遊びをしていた。母の再婚後は大事にされたが母の中では僕は弟の次の存在だった。

この家に入ってから叔父も叔母もどんな時でも僕を立ててくれる。真梨可愛さから来ることに違いないが、それでも嬉しかった。

叔父の会社では僕は三崎さんという人の部下になった。もう、いい年だったが大きな声で場を盛り上げる人だった。酒の苦手な叔父の代わりに接待もこなした。対外的には堅物で物静かな社長と楽しくて商売上手な専務だった。好いコンビだった。

叔父は会社では大人しい人で通っていた。ひたすらPCをにらみコーヒーもお茶も自分でいれる、時々自分でデスクの雑巾がけをしている。社長室の外で社員たちが、はしゃいでいても特段文句を言うこともなかった。ただ、自分が一緒になって笑うことは無かった。こういう叔父の姿を気難しいと敬遠する社員もいる。僕も多少煙たかった。

ところが近しく生活するようになって叔父のイメージは一変した。家の中では叔母の冗談によく笑った。妻や娘の言いなりになって暮らす軟弱な中高年が叔父の姿だった。


続く



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2019年05月26日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <12 実父>

実父

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真梨が大学を卒業した年、僕は会社を辞めた。この年僕と真梨の本当の意味の結婚生活はスタートした。会社を辞めて2カ月ぐらい生まれて初めて無職になった。

最初の一週間は暇で暇で毎日がウキウキした。次の一週間は暇で暇でまるで主夫のように夕飯を作って真梨が返ってくるのを待っていた。カレーとチャーハンとチキンライスを二巡して自己嫌悪に陥った。次の一週間は暇で暇でもう何もすることがなかった。

叔父が四国の父に会いに行くように言ってくれた。生まれ故郷を訪ねて来いと言ってくれたのだ。叔父は「父親の生きざまを見たら人生観が変わる」と教えてくれた。真梨は一緒に行きたいといったが僕は断った。みじめな実父の姿を新婚の妻に見られるのは恥ずかしかった。

僕の仕事以外の一人旅はこれが最後になった。車は止めて飛行機と鉄道を使った。本当に田舎だった。僕がすっかり忘れていた生まれ故郷の町は海産工場の町だった。父が作業をしている横で遊んでいた記憶がよみがえってきた。母も作業をしていた。

そして、祖父が母を叱り飛ばす声もよみがえった。祖父は「とっろいのお。何やらしても役にたたんわ。」と皆の前で母を罵倒していた。今思えば母は激しい嫁いびりにあっていたのだ。父は母の肩を持つでもなく黙々と作業をするだけだった。

そのころの母の姿をぼんやりと思い出した。おなかが大きかった。そうだ、母はあのころおなかが大きかったのだ。その子はどうなった?海産物問屋や小さな工場が点在する漁港町を歩きながら、おもわず立ち止まってしまうほどの衝撃だった。

父の乾物屋は商店街のはずれにあった。間口が狭くてアルミサッシの戸が閉まった店だった。「本山乾物店」と看板があがっていた。それは僕の生家の屋号だった。午後2時を過ぎた店内には客はいなかった。「こんにちは」ガタつくアルミサッシの戸を開けて声をかけた。

中から白髪頭のオヤジが出てきた。ヨレヨレのポロシャツと作業ズボンに黒の長靴を履いていた。オヤジはしばらく呆然と僕を見つめた後、穏かな声で「俊也か?」と聞いた。よう、わかったな。」という僕に「俺に似て、ええ男やからな。」と答えた。

涙の再会を予想していたが静かで穏やかな再開になった。「上がるか?ゆっくりできるんか?」と聞かれたので、「うん」と答えて店の奥の畳の間に上がった。

何もない。殺風景だが掃除は行き届いていた。「ビールいけるか?」と聞かれたので「まだ商売あるんやろ。お茶でええよ。」と答えた。「いくらなんでも店閉めるわな。こんな日、もう一生けえへんわ。」という返事だった。

そして、立ち上がって店の入口の細いシャッターを降ろした。冷蔵庫から缶ビールを取り出して畳の上にトンと置いた。店の売り物らしい干物を焼いてくれた。

「実は2年前に結婚して今は東京住まいや。」「おう、田原さんから手紙来てる。お嬢さんらしいな田原さんの。ようお嬢さんもらえたな。」と言った。僕は「うん、向こうが僕を望んでくれた。」と言うと、父は「お嬢さんが惚れてくれたんか?」と聞くので「うん」と自慢した。父は苦笑いをしたが嬉しそうだった。

父が大きなアルミ製の菓子箱を出してきた。その中には、たくさんの手紙が入っていた。輪ゴムで丁寧に整理されていた。差出人は田原聡のものもあったし、田原真一のものもあった。

「二人とも手紙出してるのん自分だけやと思たはる。さすが双子や。」と父が言った。
若いころから驚くほどよく似た顔をした二人を父は双子だと思っていたようだ。

小学校、中学校、高校の入学式の写真があった。東大の正門前で撮った写真もあった。当然のように結婚式の写真もあった。継父と叔父は顔が似ているだけではなくすることもよく似ていた。「俺は一回も返事ださんよ。奥さん方に知れたら悪いからな。」と父は言った。父は自分の妻だった女を「奥さん」と呼んだ。涙が出そうになった。

「お前が、どんどん立派になっていくよってに俺もまじめにがんばれたわ。田原さん約束守ってくれた。」と静かにほほ笑んだ。昔、母に重傷を負わせた男は、今は穏やかな老人になっていた。

「なあ、お母さんのおなかの子はどうなったん?」と気になっていたことを尋ねた。「覚えとったんか?無理さしたさかいに死産してしもた。その一週間後に実家へ帰ったんや。頼りない亭主に見切り付けたんや。

実家ゆうても父親も母親もうちの使用人やった。連れ戻されるのんが嫌やったさかいにお前連れて大阪へ逃げたんや。たぶん母親が逃がしたんやと思う。」と答えて「すまんことしたなあ。」と謝った。

夕方まで話してその日は帰った。帰り際に「しんどい日は電話してくれ。嫁さんも、お父さんのことわかってる。気兼ねするな。」と声をかけた。父は「ありがとう。別れはいっつもつらいのう。」と言って初めて涙ぐんだ。僕の親権を渡した日、父は泣いたのだろうと思った。

その年のクリスマスには真梨が父に手紙を書いて毛布を贈ってくれた。クリスマスのプレゼントは3年間継続されたが4年目の8月に父は帰らぬ人となった。リンパ腫だった。

遺された預金は予想外に多く800万円に上った。通帳には僕の名前の付箋が貼ってあった。別れた年から細々とためられていた。親を甘く見てはいけない。



続く


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2019年05月25日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <11 結婚式>

結婚式
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結納は東京から大阪の田原家に行われた。家は東京の叔父が最近建てた家の近くに買うことになった。会社から車で20分ぐらいの場所で大きくはないがきちんとした家だった。

大阪の田原家からは家財道具の代金が贈られた。実際には真梨と僕が選んだ家具の代金を大阪が払うというものだった。真梨は余り高価な物を選ばなかった。自分が使っていたものも新居に持ち込んだ。叔母の躾だとおもった。

結婚式は東京で行われて式費用も両家折半だった。叔母と真梨は結婚式の衣装合わせに夢中になった。二人で何度も会場のホテルに足を運んだ。こういうことに無頓着そうに見えた叔父も衣装合わせの写真を見ては、きれいだきれいだと喜んで、結局レンタルで済ませる予定だった衣装を買い取ってしまった。夫婦で盛り上がって楽しそうだった。

結婚式には当然親戚が出席したのだけれど一つの親族が集まるだけだから大規模にはならなかった。会社関係の招待客はごくわずかだった。

僕は新婚旅行の代金だけを出した。ここでも真梨は贅沢を言わなかった。というよりも言えなかったのだろう。僕の貯金はごくわずかだった。結婚のセレモニーはすべてこなしたが、どれも地味なものだった。

驚いたのは浅田隆一からの祝儀があまりにも大金だったことだ。浅田隆一は大阪の田原家と古い付き合いのある政治家だった。今は引退して選挙とは無縁になっている。さすがに政治家だ。目立つところには大金を使うのだと感心した。

真梨との生活は、お気楽そのものだった。サラリーマンとして一花咲かせたかった僕は毎日遅くまで働いた。真梨からクレームが付くかと思いきや、何のことはないしっかり実家の世話になって大学を卒業した。

真梨は結婚を機に大学をやめるのかと思ったが以前より熱心に勉強しだした。もともと教育学部で児童心理学を専攻していたのが婚約を機に勉強に熱が入りだした。子供の教育を見据えての話なのだろう。

真梨の服装は相変わらず紺色や白、グレーなど学生のようでしかも相変わらず優等生タイプだ。家の中はきちんと片付き食事も栄養バランスのいいものだった。紙製の栞のように思えた色気のない少女はいつの間にかしっかり者の良妻になっていた。そして夜は新妻らしくセクシーだった。


続く



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2019年05月24日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <10 継父>

継父
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真梨が納得してくれたことを叔父に報告した。叔父は穏やかな表情で喜んでくれた。そして小さな声で「女ってすごいだろ?」と聞いた。「はあ、予想外の反応で、なんとなく尻に敷かれそうな気がします。」というと叔父は珍しく「はっはっは」と大声で笑った。

そして「問題は聡だ。」と言った。僕は「いや、父は喜んでくれると思います。」といったが叔父は「結婚は喜ぶが、お前が東京に残ることは納得しないと思う。聡の中で長男はお前だ。お前が田原興産を継がないことを聡は納得しない。」といった。

確かにそうだった。継父はよく、僕と聡一を並べて家の事業の話をした。その時に、いつもそれとなく、僕が後を継いで聡一が補佐をするような話しぶりをした。母はその様子を好ましく思っていなかった。おばあちゃんに申し訳ないといった。この家の惣領は聡一なのにとよく言ったのだ。

祖母は、そんな、そぶりを微塵も見せることはなかった。祖母の本当の気持ちは今は分からない。ただ、継父は僕を長男としてとらえていたのはよくわかっていた。

だからと言って叔父が真梨を大阪へ出すわけもなかった。叔父の中では僕が婿に入るのは決定事項だった。僕も、それが両家にとって一番いい形だろうと思っていた。母も一息つけるだろうとも思った。ただ継父がこれを簡単に納得するとも思えなかった。

最初に継父に結婚の話を切り出すのは僕の仕事だろうと思うけれど、継父が納得するまで説明してくれるのは叔父だと思った。叔父と継父の間には特別な何かがあるように感じていた。

真梨と僕で大阪に行った。結婚したいという気持ちを伝えるためだった。もちろん両親はとても喜んでくれた。「真梨ちゃんやったらいつでも歓迎や。何ならこのまま大阪に住んだらどうや?」とのっけから継父に先制攻撃をされてしまった。とにかく、その日は結婚の許しをもらうという形にした。その日一泊して東京へ帰った。

それから改めて叔父夫婦と僕で大阪へ行った。叔父は継父に向かって珍しく改まったものの言い方をした。服装もスーツにネクタイだった。叔父は「この度は、結婚を認めてもらってありがとう。真梨も本当に喜んでいる。俊也君なら間違いないし僕も本当に安心した。」とまずは頭を下げてくれた。二人の間で頭を下げるなどは、ついぞないことだった。

叔母も「俊君が真梨と結婚してくれるのんホントにうれしい。これ、真梨の初恋成就やねんよ。」とにこやかに話した。

叔父が口火を切った。「知っての通り真梨はうちの一人娘だ。真梨を外に出すわけにはいかない。ついては俊也君をうちの婿にいただきたいんだが。」といった。僕が立ち上がって「僕もそのつもりをしております。」と挨拶した。継父に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

僕の実父との約束を果たすべく一生懸命僕を養育してくれた父だった。僕をこの家の跡継ぎにすることは継父の意地に近いものだったと思う。

父と母は母の離婚が成立する前に始まった関係だった。他人から見れば不倫だ。僕の養育に本気で力をそそいでくれたのは継父の贖罪的な気持ちも働いていたことだろう。それを婿養子に出してしまえば、継父の贖罪は未完成のままになってしまう。そんな気がした。継父はまぎれもなく僕の人生の大恩人だった。

継父は苦い表情をした。「そういうことを言われるとは思ってた。でも真梨ちゃんは、うちにも良く慣れてるし大阪住まいが嫌やったら東京に住んでもええ。俊也は婿には出されへん。うちの惣領や。」といったまま口を開かない。

同席していた聡一が「じゃあ僕が真梨ちゃんの婿になったろか?僕は東京住まいでもかまへんよ。」といったとたんに、叔母や母が大げさに笑い出した。叔母が「無理、無理、わがまま娘と生活するのん大変やから。真梨がのぼせ上ってる俊君しか無理。」というと、母が大げさに笑った。聡一は「ええ〜、僕、もうふられたん?」と大げさに驚いて見せた。そんなこんなで笑いに包まれて大団円、とはいかなかった。

皆がことさらに大声で笑う中、継父が苦虫をかみつぶしたまま黙りこくっていたからだ。叔父も言葉の接ぎ穂がなく黙ってしまった。聡一の体を張った懐柔策は見事に失敗に終わった。

その時叔母が継父の心臓めがけて大きな矢を放った。「7人中6人が賛成してる話に1人だけ反対しても無理やから。よう考えてみて。ヨリちゃんが凄い気兼ねしながら子育てしてきたこと。俊君がその気持ちを読んでしんどがってたこと、聡君はそれで悩んでたこと、全部わかってるんでしょ?それで意地はったら友達なくすよ。」と。

みんなが呆気に取られていると継父が微笑んだ。「おねえ、兄ちゃんと結婚して女らしなったと思たけど中身はオヤジのままやないか、久しぶりにオヤジ節聞いた。」といった。

「僕が俊也を放したくないのは意地や約束のためやないよ。俊也がいると楽しかった。俊也と聡一と三人で話すのが楽しかったからや。そこは、兄ちゃんも、ねえもわかっといてほしい。兄ちゃんやから僕は了承するよ。幸せにしてやってくれ。頼む。」継父は花嫁の父のように頭を下げた。

話し合いが終わって帰り際、母がこっそりと僕に話しかけた。「真梨ちゃん、事情全部知ってやるの?昔のこと。」と聞かれたので「うん、全部話した。わかってくれた。」と答えた。「そう、よかった。おめでとう。」という短い会話だった。不器用な母の精一杯の愛情表現だった。

帰りの新幹線の中で叔父が「凄いね、あんなに揺さぶられたら、誰だって嫌だって言えない。やっぱり昔取った杵柄だね。」というと、叔母が「交渉のプロよ。」と自慢した。

「え、叔母さん交渉事強いんですか?」と聞くと、叔父が「田原興産で一番売り上げを上げていた営業マンだよ。」と笑った。僕が子供のころ叔母が黒のレンジローバーに乗っていたことを思い出した。叔母の天然が素なのか演技なのかわからなくなった。


続く


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2019年05月23日

THE SECOND STORY 俊也と真梨 <9 告白>

告白
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叔父の許可が出て最初の土曜日、真梨と食事の約束をした。大手をふって僕の家で手料理を作ってくれた。お定まりの肉じゃがだった。叔母好みの牛肉の甘辛味だ。大阪育ちの僕の口に合った。真梨と結婚すると、こんな特典もついているのだと嬉しかった。

食後、決まりごとのようにセクシーな雰囲気になった。僕は結構必死の思いで話を切り出した。顔が引きつっていたかもしれない。「真梨、知ってるかもしれんけど。ちゃんと聞いてもらう話がある。」こう切り出したとき真梨の顔は緊張した。

「僕は母の連れ子で父親は田原の父じゃない。実父は四国にいる。」と言うと、真梨は「なんだ、そんなこと知ってるわよ。びっくりした。隠し子でもいるのかと思った。」と答えた。

「何で?誰に聞いた?」

「聡ちゃん、聡ちゃんも悩んでたから。おばちゃん、お兄ちゃんばっかり怒るから。聡ちゃんも辛かったのよ。覚えてる?いつか、私が膝小僧にけがをして大騒ぎになったことあったでしょう?あの時、聡ちゃんは一生懸命兄ちゃんは悪くないって言おうとしてたんだって。でも、ちゃんと説明できなかったでしょう?聡ちゃん、自分がお兄ちゃんに嫌われてるんじゃないかって、すごく辛かったの。」

「聡一が辛かった?」

「うん、聡ちゃんはお兄ちゃんは自分のせいで家を出るんじゃないかって辛かったのよ。」

「いつ頃の話?」

「聡ちゃんが中学生の時。私が高校に上がったころ。」

僕が大学進学で東京へ来た頃だった。僕が田原の家がしんどくて逃げ出したころ、聡一は聡一で何かを感じ取っていたのだ。その相談相手が真梨だったという話は初めて聞いた。

一番言わなければならないことは実父に犯罪歴があることだった。それも、母を刺して逮捕された、僕がそんな人間の子供だということだった。

「真梨よく聞いてほしいけど、その四国の父には犯罪歴がある。母親を刺した。命にかかわるレベルの刺し方をした。僕の目の前で。」といったとき、真梨は驚いて大きな目を見開いたまま動かなくなってしまった。

「お兄ちゃん、見てたの?いくつのとき?」

「4歳の時、何が起きたかわからんかったけど。」といった時には、真梨の目は赤くなって鼻をひくひくさせていた。「お兄ちゃん、怖かったよね。怖かったよね。」といった。

いきなり、本当にいきなり僕の両頬を手のひらで包んで目を覗き込んだ。「その時のこと、誰かに話した?」と聞かれたので「誰にも話してない。その時、なにも思い出せんかった。それを思い出したんは小学校の4年生ぐらかな?それまで、その光景は、すっかり記憶から抜けてた。」と答えた。

「小学生がそんなつらいこと思い出したの?それ誰かに話した?」真梨に両頬を押さえられたまま昔の記憶をたどっていた。「普通はね、小学生が苦しくて辛い時にはママにいうのよ。叔母さんに言った?」なぜか真梨に叱られているような雰囲気になった。

「だって、ママそんな雰囲気じゃなかった。僕はいっつも我慢ばっかりしてた。僕怒られてばっかりでママは僕の味方じゃなかった。」僕は涙を流していた。一瞬、小学生に戻ったような錯覚をしていた。

「お兄ちゃん、小学生の時から我慢ばっかりだったよね。聡ちゃんが一番気にしてた。おじちゃんも、うちのパパもママも気にしてた。でも、みんな分かってたのよ。それがおばちゃんの、お兄ちゃんへの愛情だって。おばちゃんにしてみたら自分がお兄ちゃんに厳しく当たったら、その分、みんなお兄ちゃんにやさしくなるっていう作戦だったのよ。みんな、それが分かってたのよ。ホントはそんな作戦必要ないんだけど、おばちゃんはそれがお兄ちゃんのためになると思ってたの。周りはみんなそれをわかってたの。でも、お兄ちゃんが一人で孤独と戦ってることは誰も気が付かなかったのよ。」

いつの間にか真梨が僕の頭を抱いて髪を撫でていた。「ごめんね、ごめんね。小学生の俊君ごめんね。みんな気づかなくて。」真梨は小学生の僕の姉のようだった。「俊君、その時のことちゃんと話して。その時のこと私におしえて。」と耳元で優しく声をかけてくれた。

いままで誰にも話さなかった辛くて苦しい思い出。忘れたかったが忘れられるわけもない思い出を真梨に話した。話しても真梨は僕を嫌いにならない、そんな確信があった。

その日、いつものように母に連れられて保育園に行こうとした。母と二人自転車を置いている路地に入った時、待ち伏せていた父が突然僕たちの前に立ちはだかった。「帰ろ。家へ帰ろ。」と父は母の手を引いたが母はそれを振りほどいて「もう、来んといて。もう、ほっといて。二度と帰らへんから。」といった。

その時、父が持っていた袋から包丁を取り出して母の腹を刺した。一瞬だった。母が僕をかばって前のめりになると今度は背中を刺した。父は何度も何度も「死んでくれ。死んでくれ。」と喚いた。

僕は、母が死んでしまうのではないかと恐れおののいた。もう怖くて怖くて何が何だかわからなくなっていた。

気が付いたときは救急隊の人が母をタンカにのせていた。警察官が父を取り押さえていた。父は、そのアパートのすぐ近くに交番があることを知らなかったのだ。

真梨は僕の説明を聞いて一緒に泣いてくれた。人の涙が自分の耳たぶに滲みだすのを初めて経験した。驚くほど熱い涙だった。

「お兄ちゃん、お兄ちゃんのお父さんは、おばちゃんを殺そうとしたんじゃないのよ。おばちゃんと一緒に死にたかったのよ。死んでくれって、一緒に死んでくれってことなのよ。」と真梨に言われて初めて気が付いた。

あの時父は母を殺そうとしたと思っていた。しかし、父は母に無理心中を仕掛けたのだと今になって気が付いた。

どのみち大けがをさせたのだから大した違いはないのだけれど、ほんの少しだけ父を許せる気がした。父は母に執着していたのだと思った。執着心を愛と呼んでもいいのなら父は母を愛していたのだ。

真梨は、もう一度僕の頭を抱きなおして、「お兄ちゃん、もし今お兄ちゃんが私以外の人となんか有ったら私だって、きっと、お兄ちゃんに一緒に死んでっていうと思う。ひょっとしたら、お兄ちゃんを刺すかもしれない。」真梨は、見た目から想像もつかないような恐ろしいことを言った。

「お兄ちゃん大丈夫よ、お兄ちゃんの悲しい気持ち、私がちゃんと引き受けたから。もう大丈夫。私がいるからね。」と言った。いつの間にか真梨はまるで姉さん女房のような口調になっていた。

「おばちゃん、お兄ちゃんの上におおいかぶさったんでしょ?それがすべてなのよ。わかるでしょ。」と真梨に言われて、その通りだと思った。拗ねることはないのだ。

その日は抱き合った時から、なにか今までとは違う緩やかな時間が流れた。真梨は僕が思っていたよりもうんと大人の女だった。真梨は愛が何かを知っている。いままでセックスに慣れた女が大人の女だと思っていた。でも、そうではないことが今日分かった。大人の女は人を愛する方法を知っているのだ。

なんとなく要領よく浮気止めの釘をさされた気がしないでもなかった。真梨が僕に対して執着心を持ってくれているのが分かった。情熱だけとは違う、静かな落ち着いた満足感が僕を満たした。

もちろん、その日のうちに送っていく。叔父が婚約もしていないのに何事だと怒る姿が目に映った。


続く



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2019年05月22日

THE SECOND STORY 俊也と真梨 <8 素性>

素性

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叔父に父の話をする時、僕は卑屈になった。「僕は実父の素性も犯罪も知っています。こんな素性の男が真梨と結婚していいのかどうか。叔父さんが本当は認めたくないんじゃないか、そのことが気になってしょうがないんですが。」と切り出した。

叔父が「僕は妾の子だよ。正真正銘の不始末の子なんだ。そのうえ母は、ほかの男と結婚して、その男と心中してしまった。人の出目をとやかく言える立場じゃない。それに好きでそうなったわけじゃない。人間、そうとしか生きられない時ってあるもんだよ。」と言った。

僕は叔父の出生の話を聞いて言葉が継げなくなってしまった。裕福な出身でないことはなんとなく知っていた。しかし叔父の母親にそんないきさつがあるのは初めて知った。サラッとした言い方だったが結構ドラマチックな話だ。

叔父は「梨花は全部知ってる。だから家の中では僕は気楽だよ。梨花に、その話をして付き合いが始まった。真梨はその娘だよ。知らされなければ怒る。知らされたら理解する。そんなに馬鹿には育てていない。真梨には君から説明してやってくれ。それが礼儀だろ?」といった。

叔父は父が今は商店街で乾物屋をやっていることを知っていた。大きくはないが繁盛している。そんな中でも再婚もせず独身生活を続けているらしい、と教えてくれた

「本山さんがお前の親権を渡したのは聡に会ったからだ。聡と話したからだ。聡がお前や依子さんを幸福にできる男だと悟ったからだ。辛かったはずだ。泣いて頼まれたよ。それでも、お前たちの将来を考えて親権を放した。あの時、お前たちを幸福にできる唯一の方法だったんだ。親を甘く見るな。それより、まだ婚約してないんだから、呼び捨ては変だろう。呼び捨ては婚約してからだ。」と厳しく叱責された。なんとなしに不機嫌だったのはこれだった。

僕は、叔父に感謝した。叔父は父の消息を見ていてくれたのだった。真梨には父や母のことを話しておかなければならなかった。世間知らずで一途な真梨に、そんなおどろどろしい話をして冷静でいられるだろうかと心配だった。

一番怖かったのは婚約をやめたいといわれることだった。けっこう、いろいろなことを決心しなければならなかった。近い将来サラリーマン生活に区切りをつけることも決心した。多分、婿養子になるだろうことも決心した。

婚約破棄で最も困ることは真梨への執着心の持っていきどころがなくなってしまうことだった。叔父は「真梨はそんなに馬鹿ではない」といった。でも、恋人の父親が犯罪歴を持っていることが分かって婚約をやめることがそんなに馬鹿だとは思えなかった。


続く


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