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2019年06月08日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <25 放蕩>

放蕩

rose-616013_1280[1].jpg

真梨は教育熱心で絵梨も純一も幼少期から、さまざまな習い事をしていた。特に純一は学業が優秀で将来への期待も大きかった。

ところが困ったことに純一は高校を卒業するころから異性関係が乱脈になった。同級生と関係を持つようなこともあれば、年上のOLと関係ができたりした。大学に進学してからは年上の水商売の女性との関係がつづいた。

始めは僕たちに内緒にしていたが、最近ではもう僕たちも知っていた。隠せなくなっていた。学業が優秀で金にもきちんとしている。それでも、なんとなく崩れた感じがした。ここへきて真梨ははじめて自分の教育について大きな悩みを抱えることになった。

絵梨は母親と同じく児童心理学を学んでその道で働こうとしていた。地味で目立たない娘だった。化粧もせず、眉も伸び放題、髪も後ろで束ねただけのジーンズ姿が定番だった。

純一は絵梨を軽く扱うようになっていた。実際、純一が相手にする女は絵梨よりも大人で、純一から見ると絵梨は幼稚であか抜けない女だったのだろう。絵梨は弟が自分を小ばかにしたような態度をとるのを辛そうにしていた。

それでも純一をかわいがる気持ちは変わらないようで誕生日にはささやかなプレゼントを用意していた。キーホルダーや財布などで、純一に似合いそうなブランドを自分で決めて贈っているようだった。そう高くもない純一の年相応のものだった。

しかし純一は絵梨から贈られたものは一度も使う様子はなかった。年不相応の高価なものを使っていた。真梨は、それを野暮ったいといって嫌がった。それでも、純一が養子だということは念頭になかった。それよりは自分の教育の問題だと悩んだ。

絵梨が成人式の日に初めて化粧をして振袖を着た。記念写真を撮る間だけのほんの2時間程度のことだったが、普段が普段だけに、その美貌に驚かされた。

僕の母、絵梨の祖母は時々外国人と間違えられるようなエキゾチックな美人だ。絵梨はその血を引いたようだ。母よりも少し小作りで可憐な感じがした。何かと家族行事に反抗的な純一も外出を取りやめて一緒に記念写真におさまった。


続く


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2019年06月07日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <23 記念のワイン>

記念のワイン
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叔父に何度か僕たちの家へ来るように勧めたが、叔父が自分たちの家から離れることは無かった。「まだ梨花がそのあたりにいるだろうから寂しくはない。」と言ってきかなかった。叔父は几帳面で清潔好きだ。洗濯も掃除も自分でしたが食事はいい加減になっていった。

僕たちの家から近いので、なんとなく家族が出入して賄っていた。叔父の大ファンだった純一だけは叔父の家を離れることができずにいた。深夜に叔父の部屋をのぞくこともあったようだ。

叔父は純一に「心配性だね。梨花に似たんだね。」と言って、それなりに喜んでいた。僕たちは叔父のこの言葉を不自然に思わなくなっていた。

叔母の35日法要をすませて二日後の夜、みんなで叔父の家で夕食をした。叔父が叔母の大切にしていたワインを開けるから来てほしいと皆を集めたのだ。叔母が自分たちの金婚式用に取っておいた年代物のワインだ。叔父と二人で開けるのを楽しみにしていた。

普段飲まない叔父が、この日は、おしゃべりをしながらワイングラス一杯を空けた。食事は叔母の好物の寿司だった。「みんなご苦労だったね。色々お世話をかけた。おばあちゃんも喜んでると思うんだ。このワインは梨花から俊也と真梨へのお礼だよ。」といった。

珍しく孫たちに昔の話をした。「おじいちゃんの両親は早く亡くなって、おばあちゃんと出会うまでは、ずっと一人だったんだ。ちっとも寂しくなかったんだよ。でも、おばあちゃんと出会って一緒に暮らして、今じゃ凄い寂しがり屋になっちゃったんだよ。それなのに先に居なくなっちゃうんだから罪だね、おばあちゃんは。」といった。

叔父が叔母に甘いのは子供たちも慣れていた。ただ叔父が、いわゆるお惚気を言うようなことはなかった。ところがこの日、唐突にお惚気を言われて子供たちも少し驚いたようだった。

真梨は見えないところへ行って涙ぐんだ。絵梨はうつむいて何も言わなかった。純一は黙って叔父をみつめた。この時家族全員が、なんとなく叔父も近いうちに逝ってしまう、そんな覚悟めいた感情をもっていた。

叔父は、そのまま自室に入った。その直後に薬を飲んだようだ。なかなか風呂に入らないので呼びに行った純一が見つけた。すぐ救急車を呼んだが、多分ダメだろう事は分かっていた。錠剤を入れていたジップロックとコップと水差し、遺言書が丁寧にセンターテーブルに並べてあった。

僕は救急隊員に「明徳第二病院にお願いいします。叔母がそちらで待っていると思います。」と口走っていた。真梨も同じように「そうなんです。母が待っているんです。」と言っていた。

救急隊員は「多分そうなります。ここからだと一番早いから。」と言って一瞬不思議そうな顔をして「この方の奥さんですか?」と聞いた。それから、慌てて叔父を救急車に搬入した。真梨が同乗して僕と純一と絵梨が車で追いかけた。みんな慌てていたが動転はしていなかった。

叔父が叔母の耳元で「すぐ行く」と言っていたことは家族の中で周知のことになっていた。みな覚悟を決めていた。

叔父は亡くなる前にも、うわごとで「行く、僕が行く、行くから」と何度も言った。叔父の死因は睡眠薬の過剰摂取によるショック死だった。睡眠薬だけなら胃洗浄で何とか持ち直せたかもしれないが高齢の身にワインが効いたようだった。

叔母の死後、叔父は眠れないと訴えて医師から睡眠薬の処方を受けていた。何度も眠れないといっては医師を困らせていた。周到に睡眠薬の調達をしていたのだ。明徳第二病院を選んだのは叔父の意思だ。叔父が僕たち夫婦に言わせたに違いなかった。叔父のすることには抜けがなかった。

叔父は、友人の少ない人だった。妻と娘が何よりも大切、親戚が大事、あとは親しい友人が少し。仕事関係の付き合いは多かったが、それらの付き合いは利害優先で深く付き合うことはなかった。

この周到さや抜けのなさは、時には仕事関係の人間に煙たがられた。こんなに、きっちり段取りをつけてくる人間と付き合うのは誰でもしんどい。友人が少ないのも無理もない話だった。僕が45歳、真梨が42歳の冬だった。

THE SECOND STORY 俊也と真梨  <24 継父の最期>
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叔父が亡くなった時、継父は自分の姉が亡くなった時よりも、もっと落胆した。「終わってもたなあ。おもろい付き合い。」とつぶやいた。その継父も、それから5年後に亡くなった。叔父と同い年で逝った。

継父は遺言書とは別に僕宛てに遺書を残していた。「自分は、俊也と聡一の二人とも可愛かった。俊也が自分に恩義を感じているとしたら、それは筋違いだ。」と書かれていた。

そして、「聡一と仲良くお互いの家族を守ってくれ。」と書かれていた。誰が見てもいいように、はっきりと名前を出してはいなかったが、それが純一のことを指しているのが、僕や真梨にはよくわかった。

僕の母は長命だった。今は亡くなった祖母と似てきたような気もする。祖母と僕の母は嫁と姑で血縁ではないのだが、なんとなく似て見える。神経質そうに見えた母も今は、どっしりとした大奥様になっていた。

真梨のことは下にも置かないように大切にした。真梨の誕生日にプレゼントを欠かすことは無く、季節ごとに高価な食べ物を届けてきた。真梨は、それらの贈り物に秘めたメッセージをしっかり受け止めていた。絶対に言葉に出してはいけないメッセージだった。

続く



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2019年06月06日

 家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <22 深紅の通夜>

深紅の通夜

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叔母の通夜は自宅で行われた。叔母は仏間に真っ白な布団で眠っていた。叔父は二階へ上がったかと思うと、何か箪笥を開け閉めする音をさせた。いったい何をしているのだろうと思い名が舞っていると叔母の若い時の着物を持ってきた。

その着物は僕たちが見たこともないものだった。もう何年もしまいっぱなしになっていたものだろう。叔父は深紅の着物を叔母が眠る布団の上に広げた。仏間は一気に華やかな雰囲気になった。

僧侶は多少驚いたようだが叔父は「この衣装は妻の母が嫁入り用として作ったものです。実は結婚当初私は経済力がなくて結婚式を挙げることができなかったんです。それで妻は一度もこの衣装に手を通すことがありませんでした。今でも、この美しさですから、その当時ならどんなに美しかったかと思うと妻が可愛そうでして。どうぞ、この衣装を着て旅立たせてやってください。」と丁重に頼んだ。

僧侶は「構いません。大往生ですからな。華やかなお見送りの方が故人も喜ばれるでしょう。」といった。僕たちは叔母の最期を深く悲しんでいたが年齢から言えば大往生の部に入るのだろう。少し気分が軽くなった。

叔父は通夜の間中、しょっちゅう叔母の顔にかかっている白い布をはずして顔をのぞいた。そのたびに叔母がほほ笑んでいるように思えた。「真ちゃん、落ち着いて。ちゃんと待ってるから。落ち着いて」そんな声が聞こえるような気がした。

通夜は大阪の継父や母も参列して、しめやかに行われた。皆が涙を流したが叔父は泣かなかった。ただ、うつむいて数珠を合わせるだけだった。


続く





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2019年06月04日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <21 叔母の最期>

叔母の最期

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ある朝、叔父からいつになく取り乱した声で電話がかかってきた。「梨花が倒れた。今救急車を呼んだ。意識が朦朧としてしゃべれないんだ。」

叔父の家に駆け付けた時には、キッチンのカウンターの下に倒れた叔母に叔父が毛布を掛けていた。「卒中だったら動かしてはいけないだろう。」とそばに寄り添って救急車を待っていた。待つ間、叔父はずっと叔母の手のひらや腕をさすっていた。

僕は慌てて火の元を確認した。真梨は入院の準備をした。絵梨と純一は叔父と並んで同じように腕や足をさすった。叔母は明徳第二病院に運ばれた。この近辺では大きな病院だった。

叔母の卒中発作は二度目だった。一度目は朝起こしても目覚めないので救急車を呼んだ。病院でしばらく寝ている間に普通に目覚めた。脳梗塞だといわれた。最初の発作の時に叔父は自分が叔母の健康状態に鈍感だったと、ひどく気に病んだ。

それでも叔母は普通の生活をしていて僕たち一家が行くといえば夕食の準備に大張り切りする。しかし叔母が実際に大人数の夕飯を作ることは叔父が許さなかった。叔母をおだて倒して出前を取る。

「絵梨や純一は梨花と話したいそうだよ。梨花が忙しいと面白くないらしい。」「真梨が教えてほしいことがあるようだ。和服のことは君が詳しいからね。」といった具合だ。

今度の発作で叔母は危篤状態に陥った。叔母は意識がうっすら戻る時と眠っている時を行きつ戻りつしながら2日たった。叔父はほぼ不眠不休だった。叔母のベッドの横の椅子に座って手をさすっていた。
叔母がかすれた声で何かうわごとを言った。「真ちゃんが大好き・・。」というと眉間にしわをよせた。「ママ。ママ。苦しい?苦しいの?」真梨がすこし大きな声を出した。叔父は「真梨、ちょっと二人にしてほしい。」といって叔母の手を握った。

僕たちが病室を出るとき、叔父は確かに言った。「大丈夫。すぐ行くよ。すぐ行く。直ぐだよ。すぐだ。」と叔母の耳元で何度もささやいていた。そして僕たちが病室に戻った時には叔母はもう安らかな表情になっていた。少し微笑んでいるようにも見えた。

それから病室は急にバタバタしだしたが蘇生は行われなかった。叔父の意思だった。叔父は粛々と葬儀をこなし叔母の遺言書を真梨にあずけた。もう僕たちが内容をよく知っている遺言だった。絵梨と純一には同額の遺産が残されていた。叔父や僕たち夫婦と相談して決められた配分だった。僕がその処理を任されていた。

僕は叔父の言葉が気になってしょうがなかった。「お義父さん、病室でお義母さんと二人きりになった時すぐ行くよって何度も言ってた。絶対お義父さんから目を離したらいかん。あぶない。」と真梨にいった。

「あなた、いいのよ。パパの好きなようにしたら。ママあってのパパ。パパあってのママだから。ホントに仲良かったの。」真梨はある程度の覚悟はしているようだった。

「パパもあなたを信用してるし、今は純一も絵梨もいるんだから、パパもあんまり思い残すこともないと思うの。好きなようにさせてあげたいの。パパが今、気になるのは、ママがあっちで道に迷わないかってことだけかもしれないの。」

叔母は軽い認知症が出ていた。去年の冬、歯医者に行った叔母が「帰り方がわからない。」と電話してきたことがあった。叔父は歯医者のあるショッピングセンターを走り回って叔母を探し出して連れて帰ってきた。

それ以降、叔父は完全に仕事を辞めて日々叔母と行動を共にしてきた。叔母は道がわからなくなる、住所が言えない以外は普通だった。それでも火の用心が不安だった叔父は家中をすべて電気にしてしまった。

おもしろくて、おしゃれで、いつまでもきれいなおばあちゃんだった。叔父は雑踏の中では叔母と腕を組んだり手をつないだりした。叔父は叔母を1人では逝かせられないだろう。そんな気がした。


続く


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THE SECOND STORY 俊也と真梨 <20 ペアブロッサム>

ペアブロッサム

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叔父夫婦もいいおじいちゃんとおばあちゃんになった。叔父はこのころ榊島に有料老人ホームを建設し始めていた。小規模な施設で市とタイアップしたものだった。住民用の老人福祉施設は市が作っている。どちらかといえば外部の富裕層を市内に呼び込むための施設だ。ペアブロッサムというおしゃれな名前がついていた。叔父のアイデアだ。

あまり、大規模な施設より小規模ホテルのようなものの方が負担も少なく転用しやすいという叔父の考えだ。どうも叔父は夫婦でこちらに住みたい気持ちもあるようだった。だが叔母に軽い認知症が出た時点で断念した。医師から環境を変えるのは良くないといわれたからだ。

もともと田原の家は榊市とは縁が深い。今の市長は田原真輔という僕たちの祖父に当たる人を知っているらしい。

僕たち4人家族と、叔父夫婦は徒歩5分ぐらいの場所で暮らした。叔父は自分はあまりしゃべらないが賑やかなことは大好きだった。僕らは、しょっちゅう叔母の夕飯をごちそうになった。なんということもない平凡な日々だった。僕は相変わらず真梨の術中にハマり幸福で過酷な毎日を過ごしていた。


時短ケアなのにお肌の内側にしっかり効く!
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老け見えの原因になります。



いつまでも美しくありたい女性に!

2019年06月03日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨  <19 深い罠>

深い罠

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真梨は幼児教室のスタッフとして働いたし僕も少しだけ出世していた。我が家は典型的な共働き家庭なのでとても忙しい家庭だった。叔母の協力を得てやっと成り立つ状態だった。

その夜も僕はベッドに入ると、すぐにうとうとした。真梨の寝付けない様子が気配で分かった。「どうした?したくなった?」と聞くと「だってお兄ちゃん触るんだもん。」と答えた。普段はパパとかあなたと呼ぶ。お兄ちゃんと呼ぶときはセクシーな気分になっているサインだった。

「え、触った?どこ?ここ?ここ?」と寝ぼけた声で答えた。「いいのよ、明日早いんでしょ?遅刻したら社長に怒られるんでしょ?」というので「社長に直接、怒られるほど偉くないよ。いいのよって言われても僕もモヤモヤする。」と答えると、「じゃあお兄ちゃんおとなしくして。真梨がしてあげる。」と答えた。

真梨の高校生時代、僕は3年間家庭教師をした。真梨が有名私立大学に合格したとき、叔父も叔母も僕のおかげだといってくれた。でも、真梨はもともと利発で努力家だった。一度教えれば、次の週には応用問題もできるようになっていた。いわゆる優等生タイプの娘だった。

その性格は僕たち二人の夜の時間にも大いに成果を表した。真梨はいつの間にか僕がどうしたら喜ぶかを習得して、今は応用問題も充分にこなせるようになっていた。ひょっとしたら何かの本で勉強しているのかと思うこともある。僕の脳は気持ちよくしびれていた。

こんな時、僕は時々叔父を思い浮かべる。叔父は寡黙で孤独好きだが勘の鋭い経営者だった。会社ではおとなしい人という印象で余り怒らないが時々爆発もした。それが叔母と一緒にいるとへらへらした軟弱な男になる。叔母に対して強い言葉を発することままずなかった。

なぜか不思議だったが最近になって、その原因が分かってきた。叔母も真梨も孤独な男を見つけるのがうまい。そして、ものすごい性能のいい武器で孤独な男を骨抜きにしてしまう。麻薬のように幸福な気分にさせて働かせる、こういう虫だか魚だかがいたような気がする。

真梨は朝、目が覚めたら明るくてさわやかないい母親だった。昨夜の女は誰だったのだろう?


続く


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最近なんだかお肌がくすんできた
しわやタルミが目立つようになってきた
それはお肌の奥のコラーゲンの劣化が原因です



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2019年06月01日

家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <18 特別養子>

特別養子
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純一は1歳になる直前に僕たちの子供になった。僕たちは考えた末に純一を特別養子にした。戸籍上も完全に僕たちの子供だった。絵梨4歳の年だった。

いくら小さいといっても1歳を前にした子供だ。母親を亡くして、その後の養子先であまりかまってもらえなかった経験は過酷だったのだろう。感情の起伏のない表情の薄い子供だった。僕たちは、うまくいくのだろうかと心配した。

ところが絵梨は驚くほど、この突然できた弟を可愛いがった。食事の世話もしたがったし寝るのも一緒に寝たがった。頬ずりをしたり、ごろごろ寝転んで遊んだり、純一は絵梨に触られまくって、やがては、よく笑う子供に育っていった。

絵梨は保育園でも純一をみかければ、必ず手を振って「純く~ん」と声をかけた。純一は、絵梨の姿が見えると、ぴょんぴょんはねて喜んだ。

真梨も僕もいつの間にか純一が僕らの実子のような気になっていた。叔父や叔母も、純一がいて当たり前、絵梨と純一はワンセットのような扱いになっていた。聡一とよく似た顔立ちをしていた。真梨とも、なんとなく似ていた。絵梨と純一は世間的にも、ごく普通に兄弟として受け入れられて育った。

僕も聡一もあまり深く付き合わないようにした。家族同士の接点はできるだけ減らした。そのおかげで聡一の奥さんも不自然さに気づくこともなかった。

絵梨は純一が来た日から自分のことを「姉ちゃん」と呼んだ。絵梨と純一の仲の良さは大きくなっても変わらなかった。とりわけ純一は、姉ちゃん、姉ちゃんと言って絵梨を慕った。

純一が小学校へ上がる時、叔父が純一に黒いランドセルを買ってくれた。ところが、純一は姉ちゃんと一緒がいいといってぐずった。赤いランドセルを欲しがったのだ。叔父は苦笑しながらも二人の仲の良さを喜んだ。

純一は絵梨のすることを何でもまねたがった。絵梨が小学校からの優等生で生徒会長などを務めるようになると、自然に純一もそういう活動をするようになっていた。僕も真梨も自分たちの選択が正しかったことを実感してうれしかった。


続く



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