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私:パワハラ、暴力、助成金不正配分など、競技団体や大学スポーツで不祥事が続出する背景について、世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級元王者の木村悠氏(34)は「鎖国されてきたスポーツ界で、時代遅れの部分がようやく顕在化している」という。 木村悠氏は、7年間、アマチュアの経験もあり、競技団体の空気をよく知っていて、2016年に現役を引退し、今は講演活動などで、選手ファーストのあり方を発信している。 「上」の意向がメンバーや代表の選考に直結するスポーツ団体は、「排他的なムラ社会」になりやすく、選手は指導者に従い、選手を国際試合に送り出す指導者は競技団体に従う。 そうやって、「独裁体制」がつくられてしまう。 木村氏は、「世の中がハラスメント防止に動いてきた中、『ムラ社会』のスポーツは取り残された。インターネットやSNSで選手への共感が広がるようになり、ようやく選手が影響力を持った」とみる。 A氏:本来、選手が訴える理不尽は世間の後押しの前に、スポーツ界が自浄できなければならない。 その役割を担う暴力・ハラスメントの内部通報制度や相談窓口は、日本オリンピック委員会(JOC)や各競技団体に、あるにはあるが、木村氏は、「私も判定に不満があったとして、同じ協会の人に話すかというと、干されるリスクを考えると声は上げにくい。競技団体と一定の距離を置く第三者の機関が必要です」という。 「ムラ社会」だけでは、だめとなると、外側から監視する機能が必要になり、その意味では、国が競技団体に任せず、スポーツ界の健全性確保に乗り出したのは、あり得べき流れではあり、スポーツ庁が12日から、その方法を検討する会合を始めた。 私;有効な監視機能は必要だが、ただ、その構築を含めた健全性確保への道筋は、国ではなく、スポーツ界が主体となってつくらなければならない。 そのために、まずは「脱ムラ社会」と中小路徹氏はいう。 スポーツジャーナリストの玉木正之氏がTVコメンテーターで「日本にスポーツが入ってきたときは問題なかったが、戦時中に学校体育に軍事訓練が入り、厳しい上下関係のあるスポーツとなり、暴力、パワハラの体育会系的伝統が生まれた」というのが持論だね。 それに、スポーツの勝敗に「根性論」という精神論が関係してくるんだね しかし、この悪しき体育会的伝統では勝てないと、これを否定した岩出監督の帝京のラグビー部は9連覇を達成中。 箱根駅伝4連覇の原監督も選手の自主性を重んじ、体育会系的指導の否定をしているので有名。 逆に日体大の駅伝の渡辺監督は選手のパワハラで解任。 かってはパワハラは、女子柔道にあったが、最近は、日大アメフトの反則行為が発端で、その後、女子レスリング、ボクシング、女子体操、重量挙げ、箱根駅伝と続々連鎖して拡大。日本のアマチュアスポーツに共通した特徴が露呈化し、体育会系的中心人物は続々と解任され、悪しき伝統は消えつつあり、木村悠氏のいう「選手ファースト」に大きく変わりつつあるようだ。
2018.09.15
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私:3氏のうち、佐藤丙午氏は、元防衛庁防衛研究所主任研究官、元外務省参与で、専門は安全保障論(軍備管理・軍縮)なので、話の内容が具体的なので、この人に焦点を合わせたい。 兵器の動作は大きく「認知」「分析」「反応」にわけられるが、AIはその全てに活用可能で、既存兵器に組み込むことで、一般市民が巻き添えになるのを減らしたり、戦争を効率化したりすることは、1990年代から考えられてきた。 すでに、韓国やロシア、イスラエルなどは、AIを部分的に組み込んだ兵器を実戦配備し、特定の攻撃に対する防御兵器などを実用化している。 日本が米国から購入している「ファランクス」も、対艦ミサイルなどを探知し、自動的に撃ち落とすことができる。 A氏:「認知」から「反応」までAIで連動させた兵器システムはまだ存在しないが、「キラーロボット」が現実になる前に議論が必要だとの声が高まり、2013年、国連人権理事会に自律ロボット兵器システムの問題を指摘する報告書が提出された。 これを機に本格的な議論が始まり、現在は非人道的な通常兵器を規制する条約の枠組みの下で、各国の専門家や市民団体が議論しており、佐藤丙午氏も当初から加わっている。 市民団体には驚きだったようだが、人間が介在しないAIの兵器利用や「キラーロボット」への拒否感は、各国の軍人も共有しており、英国は「人間が関与すべき『タッチポイント』を確実にすべきだ」と主張。 米国は詳細な技術規制を求めていて、技術的な優位を保つと同時に、AIの突拍子もない使い方の出現を防ぐ狙いもあるようだという。 化学兵器や生物兵器の禁止条約にならい、継続的に技術的な監視や情報収集をする機関と仕組みを作って透明性を確保すれば、規制は可能で、軍と市民社会が納得できる合意に向かい議論が進んでいると、佐藤氏は感じているという。 私:しかし、AIはすでに拡散した技術で、民間を含め技術開発にブレーキをかけることにも、民間技術の軍事転用をブロックすることにも、各国は反対。 たとえAIの兵器システムの開発に規制がかかっても、AIの軍事利用はどんどん進むと予想されるという。 日本の防衛相はこうした技術進展に鈍く、つい最近までAIへの関心は高くなく、年末の策定に向け見直し作業が進む「防衛大綱」で、AIの活用が入る見込みになったのは良かったと思うと、佐藤氏はいう。 この先の5年、10年安全保障でAIの活用を視野に入れていなかったら、とんでもないことになるという。 佐藤氏は「日本学術会議が昨年、大学の軍事研究に消極的な声明を出したのは残念です。AIなど民生にも軍事にも使える技術と安全保障をめぐる議論が国内でぱたっと止まってしまったからです。もう一度見直して、真剣に議論する必要があると考えています」という。 栗原聡氏は、AIの利用にも「キラーロボットには使わない」という社会的な合意が不可欠で、そのためには研究者以外の人も含めた議論が必要という。 瀬名秀明氏は、AI兵器の「人道的」の線引き、難しいと不安感をもっている。 いずれにせよ、佐藤氏のいうように規制しながら、各国では開発が進むようだ。 化学兵器、生物兵器、原子力兵器にならんで、AI兵器が危険な兵器として登場するのか、まだ明らかでないようだ。
2018.09.14
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私:北海道の胆振地方東部で6日未明に起きた地震では、専門家が「過去に例がない」という大規模な土砂崩れが発生し、多くの被害が出た。 専門家は、軽石層が土砂崩れの原因と考えている。 軽石はスポンジのように保水力があり、地震の揺れでつぶれて滑りやすくなり、崩壊が発生し、傾斜や地形を問わず、広い範囲で、上にある表層の土砂もろとも崩れたという。 今回の地震は、断層の破壊が地下深くから浅い方に向かって進んだことが分かっており、強い揺れをもたらしたことも影響したとみられる。 この軽石層は固まっていない上、国内に分布する軽石の中で最も密度が低く、非常に軽く、表層の土砂の方が重く、不安定な構造で崩壊したのだろうという。 一方、軽石層の下の岩盤が崩れた痕跡はみられなかった。 岩石などによる摩擦もなく、上に載っていたものが自然落下のように流れ出したのではないかという。 A氏:過去の地震では、土砂災害が何度も発生し、被害を拡大してきた。 降雨では水が集まる急傾斜地などで起きやすいが、地震ではそれ以外の緩い傾斜地で発生することも珍しくなく、注意が必要。 今回のように、火山灰や軽石でできた地層が原因となる土砂災害は、「地震では典型的」だという。 2016年の熊本地震で起きた阿蘇地方の地すべりや、1923年の関東大震災で神奈川県秦野市の「震生湖」をつくった地すべりも、軽石や火山灰の層が滑って起きた。 比較的深い場所にある風化した軽石などの層が、地震の揺れで「すべり台」となるという。 泥や砂などでできた堆積岩が崩れることもあり、2004年の新潟県中越地震での多くの地すべりや、08年の岩手・宮城内陸地震の荒砥沢の地すべりがその例。 堆積岩は地層の境目で滑りやすい。 私:地震による地すべりは、「緩やかな傾斜地」で発生することが多く、京大防災研究所の千木良雅弘教授は「緩やかな傾斜地は、土砂災害防止法に基づく急傾斜地の対象にならず、ノーマークの所も多い」という。 今回の北海道地震では、停電や水道の人工のインフラ問題以外に、未知の活断層の問題が出たり、緩やかな傾斜地での地震による地すべりなど、地震に関係する新たな自然災害問題も登場したね
2018.09.13
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私:アンドレイ・ランコフ氏のインタビュー記事は、北朝鮮の経済改革に詳しくふれているので、これに焦点を合わした。 ランコフ氏は、5月に北朝鮮を旅し、ここ数年、平壌では高層アパートの建設が進み、新車も増え、携帯電話を使う市民の姿がよく見られ、事実上、個人経営のタクシーもあり、スーパーは中国の店に劣らず商品があふれ、多くは国産品で、首都に比べれば劣るが、地方でも豊かさを感じるという。 昨年以降、経済制裁が影響を及ぼしつつあるが、金正恩政権下、経済成長は4~7%程度。 これは、1980年代の中国でトウ小平が取り組んだような改革が進んでいるため。 まずは2012年からの北朝鮮の農業改革。 協同農場では農民の小グループが、決められた土地の耕作に責任を持ち、収穫の3分の1程度を国家に納めれば、残りは市場などで売ることができ、農民のインセンティブ(やる気)を刺激し、生産性が高まった。 製造業でも14年ごろから「企業責任管理制」が導入され、企業所は原材料や部品を市場で調達し、製品の一定量を安い価格で国に納めれば、残りは市場で売れ、よく売れる製品をつくれば、労働者の賃金は上がる。 しかし、中国の改革では、「開放」が伴ったが、北朝鮮では「開放」は進まず、むしろ統制が強まる、「開放なき改革」。 A氏:ランコフ氏が、5月に北朝鮮で見たのは、黒のスカート、白の上着を着て街角に立つ女性同盟員の姿。 彼女らは、服や髪形が規則に違反している人を見つけると、笛を鳴らして取り締まり、当局は、外国映画やドラマのDVDにも目を光らせている。 北朝鮮が「開放」に慎重なのは、豊かで自由な韓国という存在があるからで、南北の経済力格差は少なくとも15対1、40対1という見方もある。 もし、北朝鮮が「開放」すれば、韓国から製品や情報がどんどん入ってきて、そのとき北朝鮮の人たちは「同じ民族で同じ文化を享受しているのに、なぜ我々は貧しいのか。なぜ優秀なモノを作れないのか。それは政治体制が悪いのだ」と思うだろうと、ランコフ氏は指摘する。 そして、韓国と早く統一しようという動きにつながり、体制崩壊の危機となる。 だから、北朝鮮ができるのは、開城工業団地のように狭い地域を限定的に開放し、労働者を厳重に管理し、外国資本を受け入れることで、中国のような大規模な「開放政策」はとれない。 私:金正恩政権は、独裁のもとで経済発展を目指す。 韓国でも60、70年代は、朴大統領が独裁をしき、経済を発展させたが、「開発独裁」体制は、途上国では珍しくない。 北朝鮮では白米でなくとも、トウモロコシを食べることができるようになり、餓死者が出なくなり、「開放なき改革」が成功すれば、よりましな状況だと思うと、ランコフ氏はいう。 北朝鮮の非核化については、ランコフ氏は、「北朝鮮の核放棄はない」と思うという。 この点、韓国の多くのメディアはあまりにも楽観的だと指摘している。 北朝鮮が核開発を始めてから約60年、膨大な投資をしてきて、核を放棄したらどうなるか、彼らは、リビアのように外から攻撃されて政権が崩壊すると考え、最近ではトランプ米大統領がイランとの核合意を破棄したことで、米国で政権交代があれば、前の政権との約束を簡単に否定するので、米国は信じられなく、頼りになるのは、やはり核兵器だ、ということになる。 北朝鮮が6月に米国との首脳会談に応じたのは、米国による攻撃の可能性を減らすこと、そして厳しい経済制裁を少しでも緩和することが狙いだと、ランコフ氏はいう。 ランコフ氏は「状況は変わりつつあります。米国と『貿易戦争』で対立する中国は、もはや北朝鮮への制裁を厳しく実行しようとはしません。抜け穴ができ、北朝鮮も一息つけるようになりました。核やミサイル開発で譲歩しようという意思は、年初より弱まっているでしょう」という。 確かに、北朝鮮の非核化はなかなか、具体的な進行がみられないね。
2018.09.12
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私:移民や難民に寛容な「人道大国」と言われるスウェーデンで、反移民の動きがたかまっていることは、すでにブログ「反移民の波、『人道大国』にも スウェーデン 極右政党、第1党うかがう」でとりあげたが、そのスウェーデンで、9日、総選挙(定数349)があり、反移民・難民を掲げる極右「スウェーデン民主党」(民主党)が、選挙前の49から62に議席を増やす見通し。 オーケソン「民主党」党首は開票の途中で「勝利」を宣言し、「我々は今後、スウェーデンで起きることに大きな影響力を持つだろう」と語り、政権入りを目指し、他党との交渉に意欲を示した。 A氏:ロベーン首相率いる「社会民主労働党」は、約100年にわたり守ってきた第1党の座に踏みとどまったが、得票率は過去最低で、中道左派の与党2党と、議会で協力する左翼党を加えても約4割にとどまった。 ロベーン首相は続投する意向で、政党間の協力を呼びかけたが、「ナチズムに根ざした政党がもたらすのは信頼ではなく憎悪だ」として、ネオナチの系譜にある「民主党」との協力は改めて否定した。 今回のスウェーデンの総選挙は、中東やアフリカなどから人の波が欧州に押し寄せた2015年の難民危機後、初めて行われた。 「人道大国」を自任するスウェーデンは、人口あたりで欧州最多の難民申請を受け付けたが、「反移民の波、『人道大国』にも スウェーデン 極右政党、第1党うかがう」でとりあげたように、犯罪増加や、充実した福祉が割を食うとの懸念が世論に広がり、「民主党」の躍進につながったとみられる。 与党系陣営と野党連合の連立協議が不調に終われば、それぞれ「民主党」との協力を探らざるをえなくなるが、反移民・難民や反EUといった民主党が掲げる排外主義的な主張が勢いを増す可能性もある。 私:同じ頃、ドイツでは、東部のザクセン・アンハルト州ケーテンで8日夜、アフガニスタン難民の男2人とけんかになったドイツ人男性が死亡する事件があり、翌9日夜、極右勢力による抗議デモに発展。 ドイツでは8月下旬にも難民による殺人事件を契機に大規模なデモがあり、緊迫した状況が続いている。 極右による9日のデモは事件現場の公園付近で始まり、ネットの呼びかけに応じて約2500人が参加。 「外国人は出ていけ」「われわれこそが国民だ」などと訴えて市内を行進し、ナチスをほうふつとさせるシュプレヒコールも起きた。 死亡した男性の兄弟が極右の活動家で、今後デモが過激化する可能性もある。 EUの反移民・難民問題は拡大しつつあるようだね。
2018.09.11
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私:米国のグーグルやアップル、フェイスラインのように革新的な企業を日本でも生み出すには、どうすればいいのか。 IT大手「ミクシィ」を社長として立て直した後、スタンフォード大学で起業家の聖地シリコンバレーを研究したシニファイン共同代表の朝倉祐介氏(36)に聞いている。 上場したばかりの会社に行って、「こうやったら成長を模索できるんじゃないか」と議論しても、「うちはずっとPL(損益計算書)が黒字だから問題ない」と言われることもあり、それじゃダメだと、朝倉祐介氏はいう。 A氏:朝倉氏も「ミクシィ」にいたとき、少しでも赤字幅を減らすとか、利益を守るといったことだけを考えてしまいそうになることもあったという しかし、新しい事業を創ろうとしないと、将来の「ミクシィ」が生み出す価値はどんどん減ってしまうので、目先の赤字幅が拡大しようとも、新しい事業に資金投下したという。 朝倉氏は、企業価値を最大化するという考え方に変えましょうと提案しているという。 世の中によい価値を提供した見返りとしてもらえるものがお金で、企業の価値は、会社が将来にわたって生み出すことができると思われるお金の総額を現在の価値に置き換えた時の大きさに近く、企業価値の最大化はそれをどうやって大きくしていくのかということ。 私:朝倉氏は、企業価値を最大化するための根本の考え方を「ファイナンス思考」と呼んでいる。 その対立概念として「PL脳」という言葉を出していて、多くの日本企業が「PL脳」にとらわれた経営をしているという。 「PL脳」の人は目先のPLを良くすることがルールだと思っているが、それは違い、企業価値を最大化することがルールだということを知らない経営者もいるという。 朝倉氏は、「日本のマーケットは縮小する。そんな中でPL脳に基づいて行動していたら世の中は貧しくなる。でも、貧しい国でどうやって楽しく生きていくかを受け入れろと言われても、そんな敗北主義には乗れない。少しでも後世に継いでいく価値を大きくしたい」という。 朝倉氏は、近著に「ファイナンス思考」がある。 多くの日本企業が「ファイナンス思考」に変われるかが、日本企業の「革新性」が問われることになる。
2018.09.10
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私:昭和の末期、「親方日の丸」体質のもと、毎年1兆円超の赤字を垂れ流し続ける国鉄に、国民の批判が殺到し、1987年には国鉄がJR7社に分割民営化され、上場を目指して利益を上げさせることにした。 市場に公共交通を委ねる動きは、平成に入ってさらに強まり、鉄道やバスの廃止は許可制から届け出制になり、新規参入もしやすくし、競争を促した。 市場原理は確かに、都市部で大きなサービス向上をもたらし、JR東海は総額9兆円のリニア中央新幹線を自腹でつくる体力をつけた。 A氏:一方で、しわ寄せがいったのは、都市に人口を吸い上げられる地方で、鉄道廃線後の代替交通を担うバス会社の経営も、鉄道会社と同様に厳しい。 国交省の調査によると、16年度は3大都市圏以外の地方のバス会社(30台以上保有)の82%に当たる136社が赤字。 15年度までの10年間に廃止されたバス路線は計約1万6100キロに上る。 私:西日本でバスや路面電車を運行する両備グループ(岡山市)の小嶋光信代表は「もうけだけが行政の基準になり、公共交通から『公共』の考えがすっぽりと抜け落ちてしまった」という。 また、小嶋氏は「公共交通をどうするかは、どんな国をめざすのかに通じる。日本では、そのビジョンが見えない」という。 小嶋代表のイメージにあるのが、欧州諸国の交通政策。 鉄路や車両などは行政が設置・所有し、運行する経費だけを民間が分担する「公設民営」が一般的。 「人口減時代にあった法整備を真剣に考えないと、十数年で半分の路線や会社は潰れる危険がある」と小嶋氏は警告する。 A氏:赤字でも、交通弱者の学生や高齢者に欠かせない公共交通があり、赤字を抑えて「地域の足」を維持する工夫が欠かせない。 北海道留萌市では、国と道が赤字補填するバスが鉄道と並行して走り、市は10年に「地域公共交通総合連携計画」を作ったが、バスの利用促進策ばかりを並べ、鉄道とバスが互いに赤字を膨らませる構図が続く。 名古屋大の加藤博和教授(公共交通政策)は、「公共交通を事業者任せにできる時代は終わり、地域が主体的に関わらなければ守れなくなった」と指摘。 私:一方、JR北海道も大変だね。 人口減もあって赤字が膨らむJR北は16年、全路線の約半分に当たる1237キロが「単独では維持できない」と島田社長が表明し、政府に対しては30年度までの支援を求めたが、政府は今年7月、23年度までの5年間を「集中改革期間」と位置づけて経営再建を命令。 政府は、19~20年度の計400億円超のみ支援を決め、21年度以降は「JR北と地域の取り組みを検証する」と留保。 島田社長は「北海道に国の財源を使うのは当然、と納得していただける成果を出すことが重要」と述べ、まず5区間311キロを廃止し、存続路線でも利用促進策などの地元協議を急ぐ考えを示した。 同時に、「2年間で数字的な効果を出すのは難しい。納車まで3年ほどかかる車両を思い切って発注もできない。トンネルや橋の修繕工事の計画も立てられない」として、21年度以降の支援も示すよう訴えた。 赤字路線廃止などを加速させても、赤字体質脱却には北海道新幹線が札幌に延伸される30年度までかかるとの前提に立った発言だが、黒字化には疑問の声が根強いという。 北海道は、今年は異常気象の上、今度の地震の災害と前途多難だね。 背景に少子高齢化による地方の疲弊がある。
2018.09.09
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私:子供時代から比較すると、「ハエ」が少なくなったね。 今は、家の中に「ハエ」が一匹でも飛んでいるのを見たら、大騒ぎで殺虫剤をまき散らすね。 ところが、この書評を読んで「とんでもない昆虫」であることを知ったね。 それに評者の保阪正康氏は昭和史の研究で有名で、「ハエ」との組み合わせは奇抜だね。 著者は大英自然史博物館勤務の「ハエ」に憑かれた研究者で、本書は、その「蠅学概論」。 世界の昆虫個体数は「およそ千京(10の19乗)」で、そのうちの約8・5%がハエ目(双翅目)という。 もっともここには「ハエ」、カ、アブなども入るというが、人間1人につき1700万匹の「ハエ」が存在することになる。 「ハエ」は、伝染病の媒介者であり、ときに死への誘い役でもあり、害虫扱いするが、その一方で著者によると、「ショウジョウバエ」は繁殖力が旺盛で、過去100年にわたり、人類の遺伝を探る研究に多大な貢献を果たしてきた。 「クロバエ」の幼虫は、死亡日時の特定に役立ち、殺人事件の解決に協力する。 壊疽の治療では生きた蛆虫を傷口に置くと、蛆虫は壊疽の組織を食べてしまう。 チンギス・ハーンは遠征軍に大量の蛆虫を馬車で運び、負傷した兵士の治療に用いたそうだ。 「ヤチバエ」の幼虫は、住血吸虫症の原因となるカタツムリや巻き貝を捕食するという。 A氏:古代エジプト人は捕食性の「ハエ」は、自分より大きな獲物に向かっていくその勇気と粘り強さで「ハエ」を尊敬していた。 昆虫や甲殻類まで捕食し、加えて北極のマイナス60度から熱帯雨林まで平気。 「ハエ」は卵、幼虫(蛆虫)、蛹、成虫の4段階を経て、幼虫時代は食べることのみに費やされ、糞便、死肉から野菜までなんでも食べ、成虫になると交尾し、分散して行く。 その生命力は凄まじく、どんなところにも卵を産み、しかも、「ハチ」に産み付けられた卵は、幼虫になり、宿主を食べる。 私:著者は、「ハエ」に憑かれているだけではなく、まだかなりいるらしい新種の「ハエ」を発見する喜び、多様なハエの種類から「求愛」の様子、最大級で6センチもあるムシヒキアブモドキ科などに触れていくときの高揚は、読者を刺激すると評者はいう。 この書評を読んで今度、家の中に「ハエ」が飛んできたら、すぐ殺虫剤をまかないで、しばらく動きを観察しようかと思ったね。
2018.09.08
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私:今月の保守の論客・佐伯氏の主題は20日に自民党の総裁選に関連して3選が実現しそうな安倍首相だね。 ひるがえってみると、1990年代初頭に、小沢一郎氏が自民党を割って出て以来、政治改革、行政改革、経済構造改革等々、「改革」こそが野党の役割であると彼らは訴えてきた。 そして、小選挙区制の導入、二大政党による政策論争、政治主導による官僚行政の制御、市場競争原理の広範な導入など、「改革論」の主張はかなりの程度において現実化した。 そこで、結果はどうなったのか。 小選挙区制の導入は、わずかの票差で与野党が逆転する不安定な政治、もしくは、一方の政党が大勝するという独裁型の政治をもたらし、政策論争による二大政党政治どころではなくなった。 政治主導による行政は、官僚たちの萎縮や忖度行政をもたらし、さらに市場中心主義へ向けた構造改革は、長期にわたるデフレ経済の一因となった。 こうした帰結は実行する前からほぼわかっていたと佐々木氏には思われるが、20年におよぶ「改革」の結果が現にそれなのであり、もっぱら「改革」を旗印に政権奪取を目指した野党は、「自分で自分の首を絞めてしまった」ことになる。 これは、民主党が政権をとったとき、京大名誉教授中西輝政氏が失敗を予測していたね。 これはブログ「英国『政権交代』失敗の教訓」で扱っている。 そのブログによると、中西氏は、イギリスの政権交代の歴史からの教訓は「最初の政権は得てして失敗する」ということと「真の二大政党制が確立するまでには、膨大な時間がかかり、苦渋に満ちた学習期間が必要だ」と言っている。 イギリスの労働党が政権担当能力を持てたのは、第2次大戦でチャーチル首相が挙国一致内閣を呼びかけ、その5年間の大連立で国家運営の大変さを学習したからだという。 それ以前は、労働党政権は選挙で勝っても短命で終わっていた。 議会政治の本家であるイギリスさえ、最初の政権交代から真の二大政党制が根付くまでに、実に20年以上の時間と5年間の大連立という長い学習期間を必要としたことになる。 ましてや、政権の学習期間のなかった民主党政権の失敗はイギリスの経験からして明らか。 A氏:佐伯氏は、「改革」という点では、自民党は民主党より、したたかで、実際には、96年の橋本政権あたりから自民党もりっぱな改革政党になり、小泉政権では、この内閣自体がもっとも急進的な改革を唱えるようになり、もはや野党の出番はなくなってしまう。 小泉政権以降の自民党の迷走によって民主党政権が実現したものの、中西輝政氏が予測した通り、素人政治とも揶揄されたこの政党の政権運営の失敗が、結果として「1強多弱」の安倍長期政権を生み出した。 私:佐伯氏は、安倍首相はつくづく不思議な人だと思うという。 第一次安倍内閣においては、「戦後レジームからの脱却」や「美しい日本の実現」という「大胆な保守的理念」を大きく掲げていたが、それが現実の前で挫折するや、今回はこの保守色をいっさい封印し、焦点をもっぱらデフレからの脱却という「経済の現実」に置いき、その経済についても一方で構造改革を維持しつつも、他方ではかつて誰もやったことのない大胆な財政・金融政策を打ち出した。 また、小沢氏らの行政改革論者が唱えた「政治主導」を、これほど全面的に利用した首相はおらず、改革論者は、内閣への権限の集中によって政治的リーダーシップを強化し、政治的意思決定の迅速化を進めるべきだと主張したが、まさに安倍首相はそれを実行。 だから「モリ・カケ問題」などを持ち出して、安倍は独裁的であるとか、官僚は忖度しているなどと批判しても、野党に説得力はなく、どうみても、野党の方が後手に回っていると、佐伯氏は指摘する。 A氏:安倍首相の政策論の核心は、今日のこの地球的規模のグローバル市場競争の時代においては、国益をめぐる激しい国家間の軋轢が生じているので、そのなかで日本が一定の立ち位置を保持するには、イノベーションによる経済成長を達成して、日本の国際的な地位を高める必要があり、また、不安定な国際情勢に対処するための安全保障は主として日米関係の強化によって万全のものとする必要があるというもの。 こうして、例をみない金融緩和や成長戦略、トランプ大統領との親密な関係が演出され、そして、インバウンド効果によって訪日外国人が押し寄せ、東京オリンピック景気も手伝って未曽有の人手不足になっている。 5年前に比すれば明らかにムードが変わり、外国人から見て日本は好感度トップクラスの国になっていて、この「ムードを変えた」ことは安倍政権の大きな成果であろうと佐伯氏はいう。 私:しかし、佐伯氏にはまさにそのことが気になり、この楽観的ムードが気になるという。 本当に大事なことが先送りされているのではないか、という気がしてしまうからだという。 今日、われわれを取り巻いている基本的な状況の「第一」に、日本では今後、恐るべき巨大災害が予想されている。 実際には、7年前の東日本大震災によってわれわれは大きな社会構想の転換を迫られていたのではなかったろうか。という。 「第二」に、人口減少・高齢化社会の到来であり、この社会は、もはや成長と競争を軸にした社会ではありえない。 そして「第三」に、競争そのものがきわめて不安定な状況を作り出していて、それは、経済的には投機資本によるグローバル市場の不安定化を意味し、政治的には市場や資源をめぐる国家間対立を意味し、このグローバル競争と不安定な世界に対して日本は長期的にどう対処するのか、ということ。 A氏:上記の「三つの条件」を前提とするなら、佐伯氏には、安倍首相の成長戦略やグローバル競争路線、そして親米政策も最善とは思えないという。 より長期的な観点からするより大きな社会構想が必要だと思うという。 しかし、与党からも野党からも、またマスメディアからもこの種の議論がでてくる気配はなく、もしも長期政権となるのなら、アベノミクスのその先まで視野にいれた社会構想を語る、絶好の、そして最後の機会であろうと、佐伯氏はいう。 私:まさにその通りで、「第一」の巨大災害の点については、佐伯氏が、この原稿を書いた直後、予言するように、巨大台風の襲来で大阪地区の歴史的な高潮と強風の災害と、ついで起こった北海道地震などの巨大災害が連続しているね。 東日本大震災同様、「想定外」の自然災害と言うが、復旧と今後の対策には、発想の転換と巨大な費用が必要だろう。 佐伯氏はあげていなかったが、ブログ「安く安全な水、黄信号」でとりあげたが、少子高齢化もからんで、高度成長時代に普及したインフラの老朽化対策も必要だろうね。
2018.09.07
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私:西南戦争で、有名な事件は「熊本城炎上」と「田原坂の戦い」だが、近年、発掘の成果をもとに研究が進み、新たな史実が見えてきた。 まず、「熊本城炎上」の事件は、1877年2月19日に起きた。 官軍がこもる熊本城の天守閣が「謎の失火」で焼失し、薩軍(鹿児島軍)の工作員が火をつけたという「放火説」のほか、官軍関係者による「失火説」などが従来は唱えられてきた。 ところが、熊本市が1999~2006年に出火元とされる本丸御殿跡を、発掘し、報告書を作る過程で新事実が判明。 御殿の中でも「小広間」と呼ばれる部分が激しく焼けており、詳細な火元がほぼ特定された。 市文化振興課によると、「小広間」は出土品などからみて、官軍幹部の執務室だった可能性が高く、「小広間」が位置するのは御殿の一番奥。 そこまでに火をつけやすい場所はたくさんあり、「薩軍(鹿児島軍)の工作員がわざわざそこまで潜入して放火したとは考えにくい」と同課の美濃口雅朗主幹は推理。 A氏:ではなぜ出火したのか。 昨年、熊本市で開かれた西南戦争に関するシンポジウムで「特定の軍関係者以外は入れない場所から火が出、かなり離れた天守閣に延焼するまで有効な消火活動が行われた節がない。官軍の幹部が自ら火をつけたとみていいのではないか」という説が、発表され、大きな反響を呼んだ。 官軍による「自焼説」は、熊本博物館元副館長の富田紘一氏が以前から唱えており、近代戦では天守閣は砲撃の格好の目標となる可能性が高かったため。 それが考古学で裏付けられた。 私:次に、最大の激戦地となった田原坂は、官軍がこもった熊本城の北の幹線上にあり、薩軍はここに陣を張り、官軍の援軍の熊本入りを阻止しようと試みた。 通説では、当初優勢だった薩軍が官軍に押されるようになり、1877年4月に敗走するが、大きな要因は、使用武器の優劣とされる。 薩軍が各自持ち寄った旧式銃で戦ったのに対し、官軍は当時最新とされた単発後装式のスナイドル銃を使っていたという。 俺は、薩軍は武士の集団だから、刀で徴兵された官軍に立ち向かったと思っていたが、薩軍も銃を使っていたのだね。 A氏:だが、近年の研究で、薩軍と官軍の間で武器の優劣にはほとんど差はなかった、との見方が強まっている。 根拠の一つが、2008年から行われた山頭遺跡の発掘調査で、この遺跡は薩軍陣地の一つで、道路工事に伴い戦争当時の銃の弾や茶わんなどが出土。 銃によって弾丸や薬莢が大きく異なるため、発射した銃が特定でき、薩軍もスナイドル銃を多く使用していることがわかった。 未使用弾に残る火薬の分析では、鹿児島の火山に特有の硫黄成分が検出され、薩軍が火薬を自ら供給できた証左とみられる。 発掘を担当した熊本博物館学芸員の中原幹彦氏は「銃器の優劣で負けたというのは誤伝。薩軍は『敗走した』というより、退路が断たれるのを恐れて自ら退いたとみるべきだ」という。 A氏:近代の戦場跡を考古学の調査対象にする動きは1980年代に米国で本格化。 先住民との戦闘で全滅したカスター将軍率いる第7騎兵隊の戦場跡なども発掘されている。 日本での本格調査は、西南戦争関連遺跡で緒に就いたばかりで、中原幹彦氏は「近代の遺跡でも地域にとって重要なら積極的に発掘していくべきだ」という。 私:「西南戦争の考古学的研究」の著書がある考古学者の高橋信武氏は「西南戦争でも大分と熊本では銃器の使われ方が違うなど、考古学的手法でしかわからないことも多い。現地の地形や遺物出土状況などから近代戦を考える視点がより重要になる」という。 真実の歴史は「考古学的手法」で作られるのかね。
2018.09.06
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私:評論家の岩田昭男氏は、各種のカードに詳しく、キャッシュレス派という。 岩田氏は、「最近、急にキャッシュレスが進んでいる。事務所近くでは、電子マネーが使える喫茶店が全然なかったのに急速に増えた」という。 岩田氏は、2千円以下の場合は決済が即時に済む電子マネー、それ以上は後で明細が把握しやすいクレジットカードと使い分けている。 例えば、通勤時や外食はJR東日本の電子マネー「Suica(スイカ)」。 タクシーは、カードの利用額として請求される電子マネー「iD(アイディ)」。 公共料金はカード引き落とし、という具合だ。 冠婚葬祭では現金を出すというが、それも将来どうなるかはわからない。 A氏:俺とほぼ同じだね。 コンビニで買い物をするときは「Suica(スイカ)」。 総合病院での支払いはカードで、近く大きな薬局もカード。 個人のクリニックや、その近くの小さな薬局はカードはダメだが。 個人クリニックでもこないだ歯医者はカード支払いした。 タクシーは、カード払いのできる車の場合はカードだが、伝票にサインがいるね。 カード支払いの場合は、毎月、カード会社から支払い一覧のハガキで来るので確認がしやすい。 公共料金は銀行通帳引き落とし。 私:大体、俺と同じだね。 ところで、愛宕神社(東京都港区)は2014年から、1月の「仕事始め」の日に、電子マネー「楽天エディ」の端末でおさい銭を受け付けている。 楽天の実験的な取り組みだが神社側にも、金融機関に大量の硬貨を持ち込むと手数料が取られるので、電子マネーだと浄財を目減りさせないというメリットがある。 キャッシュレス化が進めば、売り上げを銀行に持ち運ぶ手間が省けるなど店舗での金の管理が簡単になり、不透明な現金のやりとりも難しくなり、脱税などの不正が減る効果もありそうだ。 国は「様々なメリットが期待される」としており、関係企業を中心とした推進協議会も7月に立ち上がった。 海外に比べると、日本はキャッシュレス化が遅れていて、経産省のまとめでは、日本の15年時点のキャッシュレス決済の比率は18・4%で、韓国(89・1%)や中国(60・0%)、米国(45・0%)などに遠く及ばなかった。 指摘されている遅れの理由のひとつが、店側の事情で、様々な決済手段に対応する端末の導入に費用がかかり、クレジットカードで決済するとカード会社に手数料を支払う必要もある。 ただ、最近はQRコードを活用し、専用端末なしで決済できる仕組みも出始めた。 A氏:NTTデータ経営研究所によると、中国では、個人の「信用情報」を活用し、支払いの遅れがない人はホテルの予約時の預託金などが不要になったり、金融商品の金利が優遇されたりするサービスも出てきているという。 岩田氏は「日本でも導入の動きがあるが、支払い能力が低く、借金の返済に苦しむ人はサービスを受けられず、格差の拡大につながりかねない」と懸念する。 また、富士通総研の上級研究員・森田麻記子氏によると、店舗でのキャッシュレスの決済率が8割程度というデンマークでは、子どもの小遣いも電子マネー化し、実際のお金を生活でほぼ目にしない世代が登場。 金銭感覚の醸成が課題になっているという。 私:たしかにそうだね。 タクシーまでカードを使いだしたら、気楽にタクシーを使いだしたような気がする。 まあ、コンビニで買い物をするとレシートにSuicaの残金が出るので、それを見て金銭感覚が戻るようだ。 猛暑でクーラーはつけっぱなしだが、月1回の電気料金請求書(銀行通帳払い)で、金銭感覚がもどる。 カードの場合は、カード会社の毎月の支払い報告で金銭感覚がもどるが、子供などそれに関心がない世代は、金銭感覚の醸成が課題になるかもね。
2018.09.05
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私:3日、北京で「中国アフリカ協力フォーラム」が始まった。 今回はアフリカで唯一、中国と国交のないエスワティニ(旧スワジランド)を除く53カ国が代表を派遣し、うち30近い国が首脳級を送り込んだ。 習国家主席はアフリカへの支援として無償援助150億ドルを含む総額600億ドル(約6兆6500億円)の拠出を表明。 これまでの借款を18年末までに償還できない一部の国に対し、債務を免除する方針も示した。 今後3年間で重点的に取り組む「8大行動」も発表し、500人の農業専門家の派遣や50項目の環境保護政策などを打ち出し、さらに習氏は安全保障面にも支援を広げていく考えを表明し、「銃声なきアフリカ」の実現を目指すとし、アフリカ諸国が安保上の課題を自主的に解決するために「治安維持能力の向上を支援する」と語り、中国軍事筋は「今後は共同訓練なども視野に入る」としている。 A氏:南アフリカのラマポーザ大統領は開幕式で「技術移転はアフリカのビジネスの持続的発展につながる」として、中国に期待しつつ、新たな形での貢献を求めた。 中国のアフリカ進出には、資源の確保や中国製品の輸出先の拡大を目的とする「新植民地主義」との批判がつきまとう。 中国の資金によるインフラ建設なども中国企業が受注し、中国人労働者が大挙して押し寄せ、現地の雇用には貢献していないといった指摘が根強い。 私:習指導部はこうした声を意識している模様で、北京の外交筋は「中国政府は、援助プロジェクトへの融資のノウハウの不足を深刻にとらえている」と話す。 そこで、援助額はこれまで通りに据え置いた上で、気候変動対策を強調するなど、援助の質の向上を強調し、さらには現地の雇用を生む工業製品などの輸入を増やす考えを示した。 A氏:中国がアフリカ諸国への影響力を強めていることに、日本政府関係者は「採算を度外視した支援ができる中国に日本は勝ち目がない」と懸念を深めていて、今回の協力フォーラムについて情報収集する一方、国際社会と連携しながら協力の「質」を売りに対抗する構え。 外務省関係者は「日本は中国との関係でアフリカを発展させるのが主眼の同フォーラムと異なり、国際社会全体でアフリカの発展をめざす」と話す。 念頭にあるのが、日本が主導し1993年に発足させた「アフリカ開発会議(TICAD)」。 来年8月には第7回会議を日本で開く予定で、日本の外務省幹部は「自国の国益を優先しない『信頼度』で勝負するしかない」と話す。 私:中国の浸透には欧米からも懸念の声が上がり、英BBCがフォーラム開幕日の3日、「巨額債務はアフリカ諸国を窒息させる」との専門家の指摘を伝えたほか、3月には米国のティラーソン国務長官(当時)が「中国式支援は各国の主権を弱め、長期的な成長を阻む」と批判。 日本はカンボジアの民主化支援で中国と争い、やられているね。 このブログでは、下記のように「チャイナスタンダード」の知的街道がある。 「独自の統治モデルを意識、『Gゼロ』世界、中国の好機」、「幅を利かす中国的価値観・欧米の人権外交にも影響」、「中国手本『民主化なき発展』 カンボジア、『安定』優先」、「ネット監視・管理、価値観の過渡期」、など。 最近の米中貿易戦争の影響で、中国はアフリカにさらに目を向け、アフリカの「チャイナスタンダード」化を急ぐのだろうか。
2018.09.04
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私:EUからの離脱(ブレグジット)交渉の期限を来年3月末に控え、英政府は8月23日、「EUからの合意なしの離脱」に備える対応策を発表。 交渉の最大の障害は、北アイルランドとアイルランドとの間の国境管理問題で、先行きの不透明感から、本社機能をEU側に移転する企業が相次ぐ。 この欄の記事の筆者の石合力氏は、イベリア半島の南端の英領ジブラルタルに赴く。 ジブラルタルは、18世紀初めのスペイン継承戦争の際に英海軍が押さえ、300年以上、英国の統治が続く。 広さは東京23区の100分の1強の6・8平方キロ、人口約3万3千人。 英国がEU加盟国と地続きなのは、英領北アイルランドとここだけである EUと国境を接するのはジブラルタルも北アイルランドと同じだが、ジブラルタルの自治政府のトップ、ピカード首席閣僚に石合力氏が聞くと、離脱後の行方には極めて楽観的。 ピカード首席閣僚は「離脱後も人の移動の自由を維持し、ビジネスに悪影響が出ないようにする。それはスペイン、英国、我々、ブリュッセル(EU本部)も同じ考えです」という。 A氏:アイルランドと英領北アイルランドの間には検問所がなく、共通旅行区域(CTA)制度で旅券の審査なしに往来できるため、離脱後の人とモノの管理の方法を巡る交渉が難航。 これに対し、スペインとの間にもともと検問所があるジブラルタルでは、人とモノの管理が可能というわけだ。 フランコ独裁体制下の70年代には国境を完全に封鎖していたスペインだが、現在は関係も良好で管理は緩やか。 スペイン側に歩いて渡った際には旅券の審査があったが、石合力氏が車で越えてみると旅券、荷物ともチェックなしだった。 外交、防衛以外の自治権を持つジブラルタル自治政府は、法人税の優遇などで英国の金融、保険、オンラインのカジノ会社などを呼び込んでいて、英国の1人当たり国内総生産が約4万ドルであるのに対し、ここでは、その倍以上。 私:住民はスペイン、イタリア系など多様で、法制度やビジネス慣習は英国式だが、温暖な気候のもと、豊かな食事で人生を楽しむ。 市内を走る2階建てバスは左ハンドルだ。スペインとの共同主権案には住民の9割以上が反対する一方、国民投票の際には96%がEU残留に投じた。 ジブラルタル人は、原則と実利の絶妙なバランスを保ち、ピカード首席閣僚がいう「地中海的な英国人」なのだろうと石合力氏は指摘する。 私:英国の「EUからの合意なしの離脱」が現実味を帯びるなか、当地ジブラルタルの事情から学ぶ点があるとすれば、違いにこだわるより、互いの利益を実現するための方策を優先させることだろうかと、石合力氏はいう。 英首相府とも緊密に連絡をとる首席閣僚ピカード氏は、EUとの交渉の行方を「英国とEUは主要部分で合意に近づいている。互いの努力と善意があれば、相違を埋めることは可能だ。ニュースにはならなくなるかもしれないが、『EUからの合意なしの離脱』は実際には起きないと思う」と見るという。 英国政府は石合力氏のいうジブラルタルの「地中海的な英国人」に学んで、「EUからの合意なしの離脱」を避けることができるだろうか。
2018.09.03
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私:「社説」はタイトルで、主張の内容がすぐ想像できるので、中味は読んでいないことが多い。 しかし、ジャカルタ・アジア大会の記事は、メダルばかりのニュースなので、視点を変えた「社説」なので、全部、目を通したね。 まず、アジア大会が、五輪にも通じる大会の肥大化という課題だ。 14年の韓国・仁川大会で36だった競技数は42になり、地元の人気スポーツを入れたい開催地と、拡大志向のアジア五輪評議会(OCA)の思惑が重なり、過去最多に並んだ。 その結果、初採用のパラグライディングでは、1人の選手がタイムを競う種目と着地精度を競う種目の双方をこなすよう義務づけられたが、これは、参加人数と経費を抑えるためだが、両種目は用具も技術も異なり、アジア大会で戦うことは選手らの励みになるだろうが、事故の危険性を含め、現場に過重な負担を強いる運営は考えものだと「社説」はいう。 A氏:そこで、「社説」は、26年に愛知県と名古屋市で次々回のアジア大会が開かれることを心配。 経費は850億円とされるが、体育館や競技場をはじめ、恒久施設の整備などにかかる費用は別。 このまま肥大化の波にのみ込まれてしまっては、際限のない支出が待ち受ける。 94年広島大会も巨費を要し、その後の広島市は公共事業や人件費の大幅削減を強いられた。 4年前の仁川も、競技場の建設などで920億円の借金を抱えたという。 ごまかしのない数字を公開して、不断の見直しを重ねることが求められると「社説」は指摘する。 私:さらに、気になるのは、大会を開く愛知・名古屋ならではの意義がはっきりせず、地元でもいまだ認知度が高まっていないことだという。 他に立候補する都市がないまま、多くの市民にとって唐突に開催が決まり、それから2年たったいまも組織委員会は未発足で、先日のOCA総会では、大村知事が「質素で合理的で機能的な大会」、河村市長が「楽しい大会」にするとアピールしたが、果たして共通のイメージはあるのかという。 「すみやかに課題を整理し、方向性を定める。将来のモデルとなる大会にするには、残された時間は決して多くない」と最後に「社説」はいう。 ところで大会のメダルニュースと前後して、足元の日本のスポーツ界は、最初、アメフトにはじまり、女子レスリング、アマチュアボグシング、そして、最近の女子体操と、選手ファーストでない不透明な組織のガバナンスの課題が共通して起きているが、日本としては東京五輪を機に五輪前に解決しておくべきだね。 スポーツ庁はどう動くのだろうか。
2018.09.02
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私:1978年に結ばれた「日中平和友好条約」をめぐる交渉は、国益をかけたギリギリの折衝が続いた。 この本の著者の田島高志氏は、外務省中国課長としてこの大仕事に携わった。 引退後、ともに交渉にあたった先輩の勧めもあって、「当事者として正確な内容を明らかにする義務がある」と、3年かけて本書を書き上げた。 岩波書店刊行で、価格が4644円というから、かなりの大著だね。 A氏:中国、ソ連など関係各国の思惑や、78年4月に尖閣諸島沖に中国漁船が多数現れた際の日中両政府の水面下での攻防など、臨場感にあふれていて、条約の文言をめぐる調整で苦心する場面、懸案が解決し外務省幹部が手を取り合って喜ぶ場面もありのままに描く。 緊迫した交渉の合間、中国側が日替わりで用意するギョーザやシューマイなどのおやつを楽しんだりするエピソードもあり、硬くなりがちな外交交渉録だが、随所に人と人との交流のぬくもりを感じるのは、田島氏の人柄がにじんでいるからだろうという。 田島氏は、終戦時、9歳だったが、戦後、多感な時期に復員軍人の手記などを読み、「日本軍が中国でいかに残虐なことをしたか知った」という。 田島氏は、戦争という歴史があるからこそ、友好に努めなければとの思いを胸に交渉にあたった。 私:本書では、78年10月、トウ小平副首相が来日し、天皇陛下と会見した際の「秘史」も明かされている。 天皇陛下が「一時不幸な出来事がありましたが、それを過去のこととして、条約により親善が進み、平和が保たれることを心から願っています」と、自ら率直に「過去」に触れたら、その陛下にトウ氏は胸を打たれた様子で、「陛下のただ今のお言葉に大変感動致しました」と述べた。 この陛下とトウ氏の田やりとりは今でも田島氏の耳に残っているという。 「日本の象徴たる天皇陛下と中国の事実上の最高首脳であるトウ氏との信頼関係が、この瞬間に深く築かれた」という。 A氏:2012年の尖閣国有化で悪化した日中関係は、徐々に改善しつつあるが、歴史認識など、今なお火種を抱えたまま。 40年を経て両国の立ち位置は大きく変わったが、「率直に冷静に、言いたいことを言い合える間柄になってほしい」と、田島氏は、本書には、そんな願いを込めたという。 私:永続敗戦論の白井聡氏が、ドイツが、今ではEUの中核国になっているのに、日本はいまだに近隣諸国と歴史問題や領土問題でもめていて、アジアで指導的な立場をとることができないのと対照的だと指摘するが、日本は戦争による被害者意識は強いが、加害者意識がすくないせいだろうか。 田島氏が、戦後、多感な時期に復員軍人の手記などを読み、「日本軍が中国でいかに残虐なことをしたか知った」という経験は日中関係交渉では重要なポイントだったのだろうね。
2018.09.01
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私:今月の「池上彰の新聞ななめ読み」は、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行の経営統合をめぐる公取委と金融庁との対立についての報道をとりあげているね。 日銀の低金利政策で、全国の地方銀行の経営は苦しくなっている背景がある。 そこで、長崎のFFGと十八銀行は経営の効率化を進めるため、一昨年、経営統合の方針を打ち出したが、これに対し、公取委が待ったをかけた。 A氏:公取委は独占禁止法の運用の番人で、ライバル企業が一緒になることでフェアな競争が行われなくなることがないように監視しているが、このFFGの傘下には長崎県佐世保市に本店のある親和銀行があり、長崎市に本店のある十八銀行と合わせると、長崎県内での融資の比率が7割に高まり、これが離島では2行でほぼ100%になってしまうところも出る。 こうなると、銀行からお金を借りる側が弱い立場になり、ます。この2銀行以外に資金を借りる銀行が地域に存在しなくなると、高い金利を押し付けられても拒否できなくなる恐れがある。 私:独占企業は大きな力を持ち、ライバルがいなければ競争が生まれず、長い目で見れば健全な資本主義の発展につながらないという観点から、戦後まもない1947年に独占禁止法が成立。 この法律を運用するのが公取委で、「内閣総理大臣の所轄に属する」(第27条2)と定められているが、「公取委の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」(第28条)と「独立性」が認められている。 この公取委が、FFGと十八銀行は一昨年の経営統合に対し、独占禁止法の疑いで、待ったをかけたわけだ。 ところが、一方、金融庁は、今年4月、日銀の低金利政策で苦しくなっている銀行同士が経営を統合して経営の効率化を進めるべきだという、統合の必要性を訴えるリポートを発表。 当然、金融庁は、FFGと十八銀行の経営統合に待ったをかけた公取委と対立し、公取委の判断に金融業界で大きな注目を集めた。 A氏:その結果の見通しを各紙が24日の朝刊で伝えた。 「日経新聞」は1面で、公取委が統合を認め、「24日にも発表する」と報じた。 これを追いかけたのが「朝日新聞」で、発表当日の夕刊トップで大きく掲載。 たとえ他社に抜かれても大きく扱うのは、立派な心がけだと池上氏は評価している。 私:翌25日朝刊の「日経新聞」では、公取委はなぜ経営統合を認めることになったのかを次のように解説。 〈突破口となったのは、融資先企業に競合する金融機関に借り換えてもらう手法だ。佐賀銀行や長崎銀行など周辺の地銀、信用金庫やメガバンク、商工組合中央金庫など約20の金融機関が受け皿となり、貸出額で計1千億円弱相当を移す。これにより長崎県内での中小向け融資シェアは18年1月時点の約75%から約65%に下がる〉 〈今後は長崎県での統合の行方を横目に再編を模索してきた他の地銀の動向が焦点になる〉 池上氏は、今回の公取委の判断で、全国の地方の金融機関の統合が大きく進むかもしれず、それだけ重大な判断だという。 A氏:しかし、池上氏は、25日付「朝日新聞」朝刊3面の解説記事に注目。 〈かたくなな公取委の姿勢を変えたのは、債権譲渡だけだったのか。金融界で指摘されるのは、6月、官邸肝いりの「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)で地域金融のあり方も議論されることになった影響だ。会議で具体策が打ち出されたわけではないが、「あれで風向きが変わった。公取委への牽制(けんせい)になったのでは」(地銀幹部)との声がある〉 池上氏は、この記事により「これが本当なら、ここでも『忖度』が働いたのでしょうか。公取委の独立性が問われる事態ではないのか。その後の追跡取材が望まれます」という。 日銀の異次元緩和策はアベノミクスと関連し、それに基づく低金利策という政治の流れには公取委も「忖度」せざるを得なかったのかね。
2018.08.31
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私:俺は特に同性婚に興味はないんだが、同性婚に関する木村氏の明快な憲法論が楽しみだね。 今回、この欄では、同性婚の法制化については、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定めた憲法24条に違反すると誤解している人が意外に多いので、木村草太氏は、その誤解を正すために、明快に憲法解釈を論じている。 まず、戦前、 旧憲法・民法の下では、婚姻の成立に家制度における「戸主」の同意が必要とされていたが、戦後、GHQ案作成に関わったベアテ・シロタ・ゴードン氏はこの状況を憂え、男女両当事者の婚姻意思を尊重する条文を起草し、日本側も受け入れ、現在の憲法24条が成立。 制定経緯からすると、同条が禁じるのは同性婚ではなく、当事者、特に女性の意思に反する婚姻で、憲法学の通説も、そう解する。 最高裁判例も、同条は婚姻が「当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべき」ことを規定したものとする(2015年12月16日大法廷判決)。 A氏:では、憲法24条は、同性婚を積極的に保護することを求めているかというと、通説は、同条の「婚姻」は異性婚を指し、同性婚を保護せずとも違憲とまでは言えないとする。 この点、政府解釈も、「同性カップルに(憲法24条にいう)婚姻の成立を認めることは想定されておりません」とする(15年2月18日の参院本会議、安倍首相答弁)。 これは、憲法24条の「婚姻」は異性婚の意味だとする通説を前提に、同性間での異性婚の成立は想定できず、同条の保護は同性婚に及ばないとしたものと解される。 たしかに、男女の不平等が存在しえない同性カップルでは、憲法24条を適用する必要もない。 もっとも、最高裁判所例は夫婦別姓訴訟判決において、「当事者」の合意を強調しつつ、「男女の合意」という言い方を慎重に回避した。 同性婚に憲法24条の保護を及ぼすことに含みを残すと木村氏はいう。 通説・政府解釈は、憲法24条の保護は同性婚に及ばないとするが、これは、同性カップルの婚姻に法律上の効力を認めると違憲になる、という意味ではない。 木下智史氏は共著「新・コンメンタール憲法」で、同性婚に法律婚の地位を与えることと、同性婚に法律婚の地位を与えることを禁じることは異なるとし、「同性婚に法律婚としての地位を与えるかどうかは、法律に委ねられている」とする。 芦部信喜「憲法学」、奥平康弘「憲法3」、佐藤幸治「日本国憲法論」などの著名な教科書にも、同性婚に法的効力を認める法律が違憲無効だとする記述はない。 私:他方、同性婚を認めないことに、違憲の疑いをかける学説も増えてきている。 宍戸常寿氏は共著「憲法1」の中で、異性婚と同性婚の保護の不平等は「合理的な根拠」がない限り、平等権侵害になると指摘。 高橋和之著「立憲主義と日本国憲法」は、同性婚の権利を自己決定権として保護する解釈を検討すべきだという。 松井茂記「日本国憲法」は「同性間の結婚が許されないのであれば、その合憲性が問題とされよう」と述べる。 辻村みよ子「憲法」も、同性婚制度の不在は「13条(個人の尊重)、14条(差別の禁止)」から「問題」だとする。 A氏:木村氏は、このように、通説・判例・政府解釈は、同性婚違憲説をとっていないことになり、むしろ、同性カップルの保護不足に違憲の疑いが強まっているという。 私:木村氏は、婚姻は、個人のアイデンティティーのよりどころ、生活基盤となり得る重大な事項で、婚姻するかしないかは自由だが、「その選択権がそもそもない」という状況は、早急に解消すべきだろうと、さらに、一歩ふみこんでいる。 7月30日、立憲民主党は、同性婚の法制化に取り組む方針を発表したが、この木村氏の解釈で憲法24条の違憲でなく、合憲としての流れと考えられるね。
2018.08.30
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私:ここでの「錬金術」というのは、 古代から中世にかけて欧州では化学的に精錬で本物の金を作りだそうと挑む人々がいたが、それは夢に終わったが、1千年前の中国では発想の大転換によって、「紙幣」という別の「錬金術」が編み出されたということからきている。 18世紀初め、実業家のローは、フランスの経済政策をまかされて、米ミシシッピ川の開発会社を設立し、株価を高騰させ、それを担保に大量の紙幣を発行し、大赤字だったフランス財政は大いに潤った。 この国家的な「錬金術」を巨大システムに発展させたのが、現代の中央銀行で、いまでは紙幣を刷るだけでなく、電子データでいくらでもお金を生みだせるが、無尽蔵に発行はしない。 紙幣でも電子データのお金でも、信用を失えばただの紙切れ、ただの記号になってしまうからだ。 A氏:秩序が変わったのはリーマン・ショック後。 主要国の中央銀行は恐慌を防ぎ、経済を再生するためと、こぞって超金融緩和で異常な量のお金を生み出し、ばらまき始めた。 ショックから10年で、危機は去り、いま世界経済は空前の同時好況が続き、当然、米欧の中央銀行が超緩和を縮小し正常化を進める。 私:これに対し、ひとり日銀だけがいまも超緩和路線をひた走る。 先月末、日銀は「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と名づけた新方針を発表。 異次元緩和によって市場機能や金融機関の経営に副作用が目立ってきたため、批判にこたえて修正に乗り出した。 とはいえそれは苦し紛れの策でもあり、当初、2年の短期決戦として始めた異次元緩和は5年過ぎてもインフレ目標を達成できず、さらなる長期戦に持ち込まざるをえなくなり。正常化が遠のいたという点で、むしろ問題はより複雑で深刻になっていると、原真人氏は指摘する。 A氏:先に例をあげた、18世紀初めの米ミシシッピ川の開発会社では、株価バブルはほどなくはじけ、紙幣の信用が失墜し、フランス国家経済は急速に悪化。 それがフランス革命の遠因にもなった。 この「ミシシッピ・バブル」の経緯は、バブルとその崩壊がどれほど国民生活にひどい影響を及ぼすかを後世に伝える教訓となり、世界3大バブルの一つに数えられる。 私:紙幣をどんどん刷って、政府の巨大な財政赤字を穴埋めするかつての18世紀のローのやり方は、国家財政を事実上支えるいまの日銀の姿に重なると、原氏はいい、さらに、「おかげで日本国民は、本来支払うべき税金の半分ほどを政府に納めるだけで毎年度の財政をしのげる。ありがたき『錬金術』かな。いや、こんな都合がよすぎる政策がずっとまかり通るのなら『魔法の杖』と呼んでもいいほどである」と厳しい。 好調な景気で世界を引っ張る米国に目を転ずると、2月に就任したパウエルFRB議長は、日本とは違い、着実に利上げを進めている。 米国の景気拡大は2009年から続いたが、徐々に減速する可能性があり、利上げで過熱を抑えつつ、減速した時の利下げに備える必要もあり、パウエル氏は難しい手綱さばきを迫られるという。 また、金利上昇によるドル高は米国からの輸出には不利で、トランプ氏は利上げを「喜んでいない」と、パウエル氏を公然と批判する。 今後、パウエル氏とトランプ氏の姿勢の違いが鮮明になれば、世界経済をさらに揺るがしかねないという。 現代の「錬金術」は世界的にも難しい問題を抱えだしているね。
2018.08.29
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私:スウェーデンでは、約100年にわたって社会民主労働党が第1党を維持し、中道左派勢力が政権をほぼ独占。 租税負担率は日本の25%に比べて52%と高いが、そのぶん社会保障は充実していて、経済も好調で、成長率は前年比2・4%(2017年、国際通貨基金調べ)と西欧の国々と比べても高い。 これまでの選挙では雇用や社会福祉の充実が問われたが、今回は移民や難民への対応が焦点となっている。 スウェーデンには、移民や難民を広く受け入れてきた歴史があり、1950年代にはソ連軍の侵攻から逃れてきたハンガリー難民、60年代は好景気を支えるため欧州各国から労働者を受け入れた。 その後も中南米や東欧などから、政変や紛争を逃れた人たちを迎え入れてきた。 中東やアフリカの紛争地などから難民や移民の波が欧州に押し寄せた15年にも、スウェーデンは積極的に受け入れ、人口1千万人に対して16万3千人という数字は、人口あたりで欧州で最も多かった。 A氏:だが、一気に多くの人々を受け入れた反動も大きく、歓迎ムードは動揺に変わり、特に人々を不安にさせたのが、多発する銃撃事件で、銃による死者は昨年43人と、90年代前半のほぼ10倍に達した。 学校の先生は移民の子の指導にかかり切りになり、地域の子の学力レベルが落ちた。病院は外国人が占拠し、地元のお年寄りが何時間も待たなければいけなくなったとか、苦労して納めてきた高い税金は、私たちの福祉の充実に使われるべきだという声もある。 私:そういう声をもとに、勢力を伸ばして来たのが、88年、ナチスに共感する若者らが立ち上げた極右の「スウェーデン民主党」。 当初は有権者に見向きもされなかったが、ネオナチやあからさまな人種差別主義者を排除して、一般の人に受け入れられやすい政党へと組織改革を進めた一方で、難民や移民支援の予算を削って社会福祉の拡充に回し、警察権限を強化すると主張し、難民や移民の受け入れに反対する層から支持を取り付けた。 10年に国会で初議席を得ると、4年前の総選挙では349議席中49席を獲得し、第3党に躍り出た。 最近の世論調査では20%前後の支持率を保ち、14年まで8年間政権を担った中道右派の穏健党をしのいで、社会民主労働党に迫る勢い。 9月の総選挙では第1党をうかがう勢いで、移民や難民に寛容なことで知られる 「人道大国」を誇る社会は変質してしまったのか。 A氏:8月半ば、「スウェーデン民主党」のジミー・オーケソン党首は、「社会統合とは、何世代にもわたってスウェーデンに住む人たちの慣習を学ぶことだ」として、移民や難民に社会への「同化」を迫り、「スウェーデン人重視」の姿勢を鮮明にした。 「スウェーデン民主党」の支持層については、「農村部や工業地帯の労働者が多く、3分の2は男性。移民や難民が自分の職を奪う脅威とは捉えず、自分を『グローバル化の敗者』とも考えない、普通の人たちだ」という。 支持層は、一方で愛国主義的で、政策の決定権を奪う存在としてEUを嫌う傾向もあり、「スウェーデン民主党」は選挙で勝てば英国のようにEU離脱を問う国民投票をすると主張している。 「スウェーデン民主党」の躍進を、既成政党も意識せざるを得なくなっていて、17年の難民申請者は2万6千人にまで減ったが、社会民主労働党を率いるロベーン首相はさらに半減させると宣言。 政府は入国手続きに必要な資料を持たずに来た外国人への支援をやめ、難民認定されなかった人たちの本国送還を加速することも打ち出している。 私:ところで、日本では、留学生や技能実習生の増加に伴い、2017年末時点の在留外国人は約256万人と過去最多。 政府はさらに、複数の分野の人手不足に対応しようと、一定の専門性や技能を持った外国人労働者を受け入れるための新たな在留資格を来年4月から設けることを決めており、在留外国人の人数は膨らむ見通し。 17年の訪日外国人旅行者数も過去最高の約2869万人を記録し、増加傾向にある。 この政府が進める外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、法務省は来年4月から入国管理局を格上げし、「入国在留管理庁」(仮称)を設ける方針だという。 日本の移民問題はこれからだね。
2018.08.28
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私:「年金への信頼回復」を掲げた年金機構設立から8年。 ところが、年明けから受給者の苦情が相次いでいた。 日本年金機構が、この時期に送った昨年分の公的年金の源泉徴収票で、家族の名前の誤りが続出したためだ。 2月、今度は年金額の振込通知書が届いた受給者から「今月の年金が少ない」との問い合わせが増えた。 この二つのトラブルは、機構本部がデータ入力業者「SAY(セイ)企画」(6月に解散)に委託した「扶養親族等申告書」の処理をめぐって起きた。 受給者が記入した氏名などの「個人データの誤入力」が多数あったほか、「未入力のまま放置」されていたものもあった。 同社の作業実態は契約に違反していて、従業員数は契約時の申告数を大きく下回り、入力も手入力をせず機械で読み込ませていて、作業の一部を、中国の関連企業に再委託していた事実も判明。 一方、機構本部の担当部署も、違反の多くについて昨年10月の作業開始後まもなく気づいていたが、「納期に間に合わせることを優先した」との理由で具体的な対応は取らなかった。 A氏:機構の外部委託をめぐって起きた不祥事は今回が初めてではなく、2012年には「扶養親族等申告書」の入力漏れで約7万人に計約17億円を過少支給する問題が発生。 13年には全国31道府県の事務を委託した業者が破産手続きに入り、機構が従業員を直接雇用して対応した。 15年には和歌山事務センターなどの年金情報入力を委託していた業者が、契約に反して別業者に作業を再委託し、再委託先では給与の未払い問題も発生。 私:機構は今回の問題を受け、「外部委託のあり方を抜本的に見直す」とし、能力重視の入札方式の拡大や、機構が用意した場所で作業させる「インハウス型委託」の推進など再発防止策を打ち出した。 しかし、それらの対策の多くは、機構設立前の08年に閣議決定された「当面の業務運営に関する基本計画」で、業務品質を保つための留意事項として示されていた内容の焼き直し。 10年もたっているのに呆れるね。 それでもリスクを軽視した外部委託が続くのは、「コスト削減」という制約に強く縛られてきたからだと、佐藤啓介氏はいう。 A氏:もともと、機構は10年、年金記録問題や怠惰な職員の仕事ぶりへの批判を受け、解体した旧社会保険庁を引き継ぐ形で発足。 「親方日の丸体質を解消する」として、徹底した業務の見直しや人員削減によるコスト削減が打ち出され、外部委託はその柱と位置づけられた。 運営経費削減の取り組みは、厚生労働相が毎年行う業務実績の評価項目にもなっていて、。このうち外部委託費を主とする業務経費は13年度の968億円を基準に5%削ることが当面の目標とされ、16年度は5・6%減の913億円。 S~Dの5段階で「計画を概ね達成」にあたるB評価を受け、17年度は4・3%減の926億円で、秋にも評価が下される。 私:過去に、機構の組織体質は不祥事のたびに問われ、数々の再発防止策が打ち出されてきた。 15年に、不正アクセスで125万件の個人情報が流出したときは、人事や業務のあり方など71項目の「再生プロジェクト」が策定され、組織再編や信賞必罰の評価制度といった改革のたびに、現場では業務見直しが繰り返される。 関東地方のある年金事務所では、約50人の職員の4割が非正規で大半が5年で退職。正職員も2~3年での転勤が多く、所長は「複雑な業務をこなす力が積み上がりにくい」という。 この事務所では、年金相談員を委託していた社会保険労務士が今回の問題で多数の苦情を受けて辞めてしまい、所長は「信頼回復には正確な業務とサービスの向上しかない。可能なら職員の増員など、それを後押しする改革を本部には求めたい」という。 外部委託のあり方を検証した「三者委員会の報告書」は、今回の問題で「年金への信頼を損ねたという目に見えないコストが生じた」と指摘。 コストを考える際、目の前の経費削減だけでなく中長期的な視点を持つよう強く促している。 厚労省幹部の一人は、この報告書を踏まえて機構が打ち出した見直し策により「安さ最優先の外部委託をなくす」と説明したが、別の同省幹部は「問題が起き、予算や人が足りないと言えば『焼け太りだ』と批判される。経費を増やす方向で合意を得るのは容易ではないのが実情だ」という。 A氏:日本総研の西沢和彦主席研究員は、「国は不祥事があれば機構職員の能力や姿勢の問題と矮小化し、メディアも『社保庁と何も変わっていない』という批判に終始してきた面がある」という。 また、さらに今回過少支給になった人には、税制改正などで様式が変わった申告書を提出しなかった人も含まれており、「国がすべきは毎年のような複雑な制度改正を避けるなど、ミスの要因を減らす工夫だ」とも指摘し「適正な運営には相応のコストがかかるという認識を共有し、外部委託を含めた業務のあり方を問い直すべきだ」としている。 私:問題を起こし、解体した旧社会保険庁を引き継ぐ形で、問題を改善するために発足した機構が、10年経っても本質的に改善されておらず、相変わらず、「年金への信頼」が確立されていないのは何故だろう。 費用対効果の基礎知識なしのいたずらなコスト追求姿勢を含め、機構の体質の原因を追及した「解説」がほしかったね。たい
2018.08.27
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私:NYタイムズのコラムニスト・トーマス・フリードマン氏は、2020年米大統領選は、トランプ氏は経済、社会問題、移民を取り上げ、民主党候補は所得格差、民主社会主義、トランプ氏の人格を取り上げるという、2020年版の左右対立米国政治でなく、「母なる自然」という重要な争点が眠っていると確信しているという。 欧州を干上がらせ、カリフォルニア州やカナダで激しい山火事を起こし、スウェーデンでも森林火災を起こし、北極圏の北方でも8月の気温がカ氏86度に達し、日本には観測史上最大の雨と、その2週間後に、東京の北西にある熊谷市に最高気温をもたらし、東部オーストラリアには、記憶に残っている限りで最悪の干ばつをもたらした。 気候変動と関連する今年のあらゆる異常気象がさらに悪化し、損害を増大させるとしたら、2020年の大きな争点が、右と左ではなく、暑いか寒いか、豪雨や干ばつなら、誰がロシア政策や北朝鮮政策で失敗したかではなく、「誰が地球を失ったか」ならどうだろうと、フリードマン氏はいう。 2020年がひどい被害をもたらす干ばつや暴風雨の真っただ中なら、民主党はトランプ氏に対抗できるかもしれない。 それは、トランプ氏は「米国を再び汚染された国に」という環境戦略で、気候変動の脅威を認めるのを拒み、クリーンエネルギー技術で世界をリードすることで米国がより豊かで、健全で、安全で、そしてより尊敬される国になる素晴らしい機会を逃す姿勢だからだ。 トランプ氏は答えを持っておらず、彼は米航空宇宙局(NASA)が報告する気候科学が真実だと思っておらず、風力やソーラー、省エネが、より安価でクリーンかつ健全な代替になっている時に、石炭を取り戻そうとしている。 中国が将来のクリーン電力と電気自動車市場を制しようという姿勢を明確に打ち出したこの時に、である。 また、米国の自動車業界に、ガソリンを大量消費する車を無理やり引き戻そうとしており、日本と韓国がデトロイトを破産させ、米国がベネズエラやロシア、アラブ世界やイランなどの石油独裁者を豊かにさせた1980年代から2000年代にかけて以来のことで、トランプ氏は、嵐の直前に傘を投げ捨てようとしている大統領であると、フリードマン氏は厳しく指摘する。 A氏:「グリーン」政策は、弱々しくて、採算が合わず、愛国心に欠け、なんとなくフランス的だ、とトランプ氏はあざ笑うだろうが、民主党は「グリーン」は地球規模では重要戦略で、地元に利益をもたらし、労働者階級のためになり、「グリーン」こそ新しい赤、白、青、つまり愛国心を表すと、容易に反撃できると、フリードマン氏はいう。 こうしたメッセージは、ミシガン州やオハイオ州のような工業地帯の激戦州ですぐに役立ち、クリーンエネルギー産業に関する最新の調査では、米国中西部の12の州で71万4257人が、再生可能エネルギー発電や「クリーン」な送電、エネルギーの効率化、「クリーン」な燃料、先進的な輸送に関する仕事に就いていることが明らかになり、オハイオ州だけでも、石炭・石油・ガス業界で働く人が3万8千人なのに対して、「グリーン」産業で働く人は約10万8千人。 民主党のメッセージは簡単な計算から始めることもできる。 現在地球上には76億人が暮らし、2030年には86億人になり、わずか10年間で新たに10億人が増え、たとえその半数でも、現在の米国人のように車を手に入れ、エアコンを所有し、高タンパクの食事をすれば、我々は、地球を食べ尽くし、燃やし尽くしてしまい、クリーンエネルギーやエネルギー効率化が次の大きなグローバル産業になるほかない。 私:2020年の大統領選挙には、民主党の戦略は次の「4つのゼロ」を軸に構築すべきだという。 1.電力網の脱炭素化。そして排ガスゼロの車。 2.これを組み合わせれば、輸送の脱炭素化の実現。 3.エネルギー収支ゼロの建物。断熱性に優れ、ソーラーパネルを取り付ける。 4.廃棄物ゼロの製造業。 これこそが、民主党が最も必要とする、労働者階級と米国の安全保障の強化を可能にするという。 フリードマン氏は、「トランプ氏とこの構想を戦わせよう。2020年に向けて『母なる自然』が破滅的な道を進み続ければ、強い女性についてのトランプ氏のお気に入りのセリフ『あの女を投獄せよ』は、馬鹿げて見えるだろう」という。 ここでいう「母なる自然」は、ブログ「『人新世』 地質に痕跡、後戻りできぬ人類」でふれた「人新世」への人類としての一つの対応を意味するね。 果たして、「人新世」問題は2020年の米大統領戦の争点になるだろうか。
2018.08.26
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私:ジャック・アタリ氏は、81年にミッテラン大統領の特別顧問、91年に欧州復興開発銀行の初代総裁で現大統領マクロン氏の政界入りも主導。 最近出版された「新世界秩序」(作品社刊)では、30年の世界像を描いている。 数々の予言を的中してきた人で、06年に米国の住宅向け融資「サブプライムローン」の危険性を指摘し、翌年、実際に世界金融危機が起きた。 07年6月にiPhone(アイフォーン)が発売される前に、世界を自由に横断する「ノマド」が持つ情報発信機器として「オブジェ・ノマド」の普及を予測し、スマートフォンの大衆化を言い当てた。 A氏:最近出版された「新世界秩序」(作品社刊)では、30年の世界像では世界のGDP総額は現在の2倍になり、地球上の総人口は15%増え、85億人と予測。 うち、70億人が携帯電話を持っており、大国はライバルを圧倒するのに手いっぱいで、自国の利益のためだけに立ち回り、市場のグローバル化が国家をのみ込み、国境を越えた不正行為が増え、麻薬や売春などの犯罪経済が世界のGDPの15%を超えるという。 それは破局に直面し、無政府化とカオス化が進んだ世界だという。 私:そんな状況になったのは、最も憂慮すべきは、最近の米国の関税攻勢に見られるような保護主義が原因。 中国は歯車が破局へと自転しないよう、賢明な対応をしているが、日本と欧州は、共通の「危機」にさらされていると、アタリ氏はいう。 その「危機」とは、米中の2大国に加え、ロシアやインドなど近未来の大国は、友好国にすら容赦しなくなり、日本と欧州は、資本や高い技術を持ちながらも、守勢に立たされがちで、企業買収や技術移転などを通じ、悪い表現だが、「生き血を吸われる」危険があり、それを防ぐには、以前よりも多様化した同盟関係を結ぶ必要があると、アタリ氏はいう。 地球規模で利己主義と利他主義、つまり「自分の幸せのために」と「他人の幸せのために」という価値観がせめぎ合っているという。 A氏:また、アタリ氏は、現在の世界情勢と1910年代の類似性も指摘。 1910年代は、技術発展の時代で、これらの技術を背景に、強力なグローバリゼーションが進み、ロシアや中国などで急激に民主化運動が広がったのもこの時期。 そして反動が来た。 1907年に米国で金融恐慌が起き、14年に第1次世界大戦が始まるまでの間、テロリズムやニヒリズムが広がり、保護主義とナショナリズムが台頭。 そして2度の大戦を経て冷戦が終結に至るまで、75年もの圧迫の時代に世界は突入。 現在も、急激な技術発展とグローバリゼーションが進む一方で一国主義や懐古趣味が広がっているのは危険な兆候だという。 私:アタリ氏は、以前、東シナ海や南シナ海での「日米対中国」の構造は大きな軍事的火種だと指摘した。 いま世界で一番リスキーなのは、米中のライバル関係で、北朝鮮への対応をめぐり、両国間に何かが起こる危険がある。 ただ、アタリ氏は、中国は戦争を望んでおらず、彼らが最も求めているのは「尊重されること」で、彼らの軍事力が米国に肩を並べるのは、2030年ごろだとみていて、それまで中国は戦争を回避し続けるという。 6月の米朝首脳会談は、現時点では、何らかの成果をもたらしたとは言えず、最も重要なのは非核化の実現は、現在、その兆候は希薄で、このままだと米国は成果を求め、強硬手段に訴える危険性があり、10~11月ごろに、北朝鮮の核廃絶の意思が本物か否かが見えてきて、この時期が東アジアにとって、非常に重要な局面になると、アタリ氏は、考えているという。 また、「経済制裁」について、アタリ氏は、米国の政策のまずい点は、間違った認識の上に成り立っているとして、例えば、旧ソ連の崩壊は、米国が考えている「経済制裁の成果」ではなく、ゴルバチョフが民主化を望んだからで、もし彼が民主化を嫌っていたら、ソ連という国は今も存在しているはずで、ベネズエラやキューバや北朝鮮も同様。 「経済制裁」は一層、非効率的な手段になり、当時ソ連を支援した国は皆無だったが、今は北朝鮮を中国が支え、米国が北朝鮮やイランへの「経済制裁」が不首尾だったと判断すると、年末ごろ、強硬手段に訴える可能性があると、アタリ氏は指摘。 A氏:日本の役割について、アタリ氏は、日本は世界で唯一、核兵器の惨禍を体験した大義名分を持つので、朝鮮半島の非核化に向け世界にキャンペーンを張るべきで、米国との協調も重要だが、もっと幅広い回路を駆使し、持てるすべての外交力で、半島の非核化を目指すべきだという。 また、 NATOを発展させた組織への参加も、日本は検討すべきだという。 30年後、欧州は共通の軍隊を持っているか、欧州自体がなくなっているか、そのどちらかだと、アタリ氏は考えていて、日本と今以上の親密なパートナー関係を築くことは、双方にとって長期的に重要な課題だという。 私:市場の中心が環太平洋に移動したとのアタリ氏の持論では、世界経済の核となる「中心都市」は13世紀のベルギー・ブリュージに始まり、8番目が1929~80年のニューヨーク、80年代以降はロサンゼルスで、東京は金融や官僚組織の古い体質、バブル対策の失敗、世界から優秀な人材を誘引できず、個人主義も未開花な点などが理由で、9番目の中心になる機会がありながら、逸したという。 失われた30年だね。 アタリ氏は、日本の最大の課題は人口問題で、減少は止まらないから、女性にはもっと働きやすい環境が必要で、男性の育児休業だって取りやすくするべきで、家族政策は永続性が重要だという。 フランスは20年以上かけて人口減を食い止めたので、良いモデルになり、必要なのは文化的側面まで見据えた施策で、女性の地位を高め、出産や育児によりキャリアが不利にならない文化を定着させる努力が欠かせないという。 さらに、日本の問題は、現在、公的債務がGDPの230%に達していることで、この問題の深刻な点は、次世代の蓄えに依存して、現世代が生きていることで、経済も、環境問題も、年金や福祉も、課題が次世代へ先送りされており、人口が減少すると、国民の負担は破局的に深刻化し、施策の幅を狭め、相続放棄の出来ない借金を次世代へ課すことになると、警告している。 A氏:日本や欧州に、破局を回避する処方箋として、未来志向の社会的な実験を専門的に担う銀行や環境犯罪を裁く国際法廷の創設、企業定款に次世代への貢献内容の明記を義務づけることなどを提言してきたが、実は、能力も、テクノロジーも、財源も、起業家も、独創的な人材もみなそろっているという。 私:アタリ氏は、この残っているのは力を合わせることで、新著「新世界秩序」に詳しく書いたが、国境を越え、高い独創性を発揮する「超ノマド」と言うべき階層が現れ始めていることに、特に注目すべきで、危機感を共有した「超ノマド」たちが、既存国家の枠組みを尊重しながらも、資源や軍備、食糧生産、環境などの現状と展望を示すことで、それが第一歩になるはずだと、アタリ氏はいう。 まさに世界は「新世界」に挑戦することになるが、「超ノマド」はどこに存在するのかね。
2018.08.25
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私:三菱マテリアルの子会社などによる品質データ改ざん問題で、東京地検特捜部が7月に複数の子会社を不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで捜索し、強制捜査に乗り出したことが関係者の話でわかったと報じている。 捜索が明らかになった子会社は社内調査で発覚後も不正を続けており、特捜部はこういった対応を悪質とみて、押収資料などをもとに実態解明を進めている。 A氏:三菱マテによると、子会社3社では2016から17年までに、三菱マテへの内部通報や監査などをきっかけに、データに関する社内の不正が発覚したが、その後も三菱マテへの報告を怠ったり、データが改ざんされた製品の出荷を続けたりしていた。 子会社の一つであるダイヤメット社では、不正の発覚後、前社長が関連資料を隠蔽するよう指示していたという。 一方、三菱マテも今年3月の報告書の公表時に、本社直轄の直島製錬所の不正を把握しながら明らかにせず、本社は不正に全く関与していない、などとしていた。 三菱マテグループでは、これまでに子会社5社で製品データに関する不正が明らかになっており、対象製品は関西電力の大飯、高浜原発や航空機などに使われていたという。 特捜部は三菱マテの一連の対応も重視しているとみられ、担当社員らへの事情聴取などで、不正が続いた原因についても調べている。 私:品質データ改ざん問題をめぐっては、法人としての神戸製鋼所が7月に不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪で起訴されており、これに続いて三菱マテの問題も刑事事件に発展。 製造業の品質データに関する問題は、ブログ「スズキ、30車種で検査不正 条件逸脱し測定 抽出調査の半数6400台」でもとりあげたが、スバル、日産とはじまり、神鋼、三菱マテと続くが、市場や顧客の品質クレームになっていないのは、不思議だね。 スバル、日産で、資格のない検査員が最終検査しても、それが原因で市場クレームになっていない。 それは、最終検査の前までの製造プロセスで厳しい作業管理をしているので、最終検査は品質面であまり意味がないことを現場が知っているからだろう。 また、神鋼、三菱マテと顧客の規格外の製品でも出荷して問題ないのは、現場も顧客の技術者が規格が無意味に厳しいこと知っていて、製品の現物は品質上、問題ないことを暗黙のうちに両者とも了解していたのではないか。 しかし、書類上は規格内にして合格品とするといういいかげんな形式にしているのは、顧客の技術者とのなれあいによる現物重視、そして、形式的な書類軽視の考えが現場に根付いていたせいだろう。 特捜が、そこまで捜査でつきとめられるか、新聞の追求も甘いね。 ところで、これらの企業は、品質マネジメントシステムの国際規格・ISO9001を認証しているので、書類上の不備は審査機関のクレームとなり、認証取り消しをしているはずで、これを新聞は詳しく報じていない。
2018.08.24
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私:作家の鴻上尚史氏は、著書「不死身の特攻兵、軍神はなぜ上官に反抗したか」で、「特攻」を9回命じられ、9回生きて帰ってきた陸軍の操縦士・佐々木友次氏に話を聞き、彼の生き方を描いたという。 「特攻」は、軍幹部ですら、「統率の外道」と指摘したとされる異常な作戦であったというが当時、これに突き進んだ空気感があったという。 鴻上尚史氏は、陸軍の操縦士・佐々木友次氏のことで「まずその事実に驚きました。ただ帰るだけでなく、爆弾を落として船を沈めているのですが、参謀や司令官たちはまったく評価しない。21歳の若者に『次は死んでこい』と言うわけです。『爆弾を落として船を沈めればいいと思います』と佐々木さんが言っても、『爆弾を落とした後に体当たりしろ』と言う。死ぬことが目的になっているのです。これだけ言われても、なぜ9回とも帰ってこられたのかを知りたかった」という。 帰ってこられた最大の理由は、鴻上氏は、操縦士・佐々木友次氏は、上官にいくら文句を言われても、パイロットだから飛び立てば一人なわけで、精神の自由を保てたのだと思うといい、「飛ぶことが好き」なんて考えは、当時の軍隊のような超ブラックな組織ではまず言えないことで、日本型組織は、少数の異論を持つ人に暗黙のうちに多数意見と合わせるよう求める同調圧力が強く、これに対抗する最も強力な武器は、「本当に好きだ」という気持ちを持ち続けることだと思うという。 A氏:若者たちは自ら「特攻兵」になったのは、上官が隊員を並ばせて、「志願する者は一歩前に出ろ」と言い全員が出るまで待ち続けた例や、「行くのか行かないのかはっきりしろ」と突然叫んで、全員が反射的に手を挙げた例もあったといい、好きでなったとは言えない状況だったという。 志願という名の強制、命令だったのは明らか。 命令した側は自分たちの責任を明確にしたくないので、「我々が非難されるのは甘んじて受け入れるが、国のために散った若者を馬鹿にしないで欲しい」という、実に卑劣で巧妙な言い逃れをしていると鴻上氏は指摘し、「特攻」を命令した側と命令された側を、ひとまとめに「特攻」と呼んではいけないという。 「特攻」を賛美する論調が近年、目立ち、特攻兵が「ほほ笑んで自らを犠牲にして散っていった」のようなわかりやすい物語はどの時代でも受け入れられやすいが、その裏に本当は何があったのかを伝えていくのも、大切な仕事だと思うと、鴻上氏はいう。 私:「特攻」を生み出した日本社会のあり方は変わったかというと、日大アメフト部の選手が悪質なタックルをした問題の構造が、「特攻」の構造とあまりに似ていて、怒りを通り越してあきれたと、鴻上氏はいう。 指導者側は選手が自発的にやったと言い、選手側は指示だったと言い、ただ選手は従わざるを得なかったわけで、僕らは同調圧力の強さの中で、つい忖度してしまう我が国民性は共通。。 その国民性は、日本の文化の奥底には村落共同体を守ろうとする意識があって、これを壊そうとするのは天災ぐらいで、天災にはあらがってもしょうがないと、与えられたものを受け入れ、現状を維持することが一番重要なんだという文化が根づいているのだと、鴻上氏はいう。 しかし、共同体は悪ではなく、良い面もあって、東日本大震災で壊滅状態だった道路の大半が1週間で通れるようになったのは共同体が機能した例。 しかし、鴻上氏のこの著書「不死身の特攻兵」は、最初は歴史好きの人が、その次にサラリーマンが買うようになり、そのうち女性も買うようになり、ネット上では「PTAと全く同じ」という反応があり、最近は高校生や大学生が「これって俺たちのコーチの話じゃん」と反応していて、日本はこのままではいけないと思い始めている人が、増えてきていると、鴻上氏は感じるという。 戦後、高度経済成長期やバブル時代を経ても、「世間」はなかなか変わらなかった。 豊かになることに向かいこの国は進んできたけど、バブル経済の崩壊後、失われた20年が来て、我々は今、ポジティブに言えばどこに向かうべきかを探している時代で、ネガティブに言えば喪失した時代。 A氏:一部の人は、世間の人々がみな仲良く助け合っていた、古き良き伝統ある日本に回帰することを目指していて、鴻上氏は、それを「世間原理主義者」と呼ぶが、「世間」と呼ばれる共通の価値観で生きていく前提は既に崩れているのに、それを取り戻そうとすると、同じ価値観に染まらない人たちへの排斥が始まり、それがLGBTの人は「生産性がない」という驚くべき発言につながるわけで、世の中が多様になる流れは必然なのに、排斥しても何も始まらないはずだという。 「生産性」というような視点でしか語れない政治家がいる一方で、すぐに抗議デモが起こるが、これは、両者の分断が進む危険性もはらんでいて、おそらくネットが普及した影響が大きく、新聞がメディアの一番手だった時代は、自分が読みたくないものも目に入ったが、今は自分の読みたい文章だけ読んで一生を終えられるようになり、情報が「こつぼ化」しているという。 私:日本の将来に希望があるかどうかについて、鴻上氏は、「最近も政府が2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策のため、サマータイムの導入を検討すると言っています。導入しなくても、マラソンは朝7時スタートを5時にすればいいだけで、なぜ国民を総動員するんでしょう。いいように忖度する国民なので、目覚め続ける不断の努力が必要です。うかうかしているとえらいことになります。あきらめたら負け。頑張らないと」と警告する。 たしかに一億総動員という言葉は、未だによく使われるね。 また、一億総懺悔にならないようにしなくては、「歴史を学ぶ」ことにならないね。
2018.08.23
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私:「Gゼロ」とはリーダー役不在の世界をさす。 特に、国際協調から背を向ける米国と、強権体制を強めつつ経済強国路線を突き進む中国との対立が問題になっている。 米国のトランプ政権が、中国に通商紛争を仕掛けるのは、トランプ氏は貿易赤字は悪いものだと、ひたすら信じ込んでいて、通商について何も知らず、側近の高官たちはそれをわかっているが、大統領に直言できないからだと、ブレマー氏は厳しく批判している。 かつて、米国など西側社会には中国が消費者主導の経済になれば、政治改革は避けられなくなるとの楽観論があったが、それは誤りだった。 習近平国家主席は「終身元首」として権力を固め、「西側モデル」を採用するつもりはないどころか、国際通貨基金(IMF)や世界銀行など米国主導の多国間協調と異なるシステムを築こうとしていて、米国側には、今のうちに中国をたたいておくべきだとの中国への脅威論も背景にある。 一方、トランプ氏は習氏を強いリーダーとみなしていて、彼は同盟国よりも強権国のリーダーと良好な関係を持つことを望んでおり、通商問題と、北朝鮮など安全保障上の思惑を結びつけて考えるのもトランプ氏の特徴。 A氏:中国市場の閉鎖性に対しては米国に限らず批判が強まっている。 ブレマー氏は、「米国モデル」は価値基準を受け入れれば誰もが等しく参加できるが、「中国モデル」は普遍性に欠けるから、中国が国家資本主義と強権体制を維持しつつ、世界最大の経済大国になることは、「グローバルな自由市場の終焉」を意味するという。 中国の一帯一路構想も、(中ロと中央・南アジアの計8カ国が参加する)上海協力機構も多国間協調の体裁を装っているが現実は違い、自転車のハブとスポークのような構造で、中心にあるのは北京で、中国の経済的利益が最大化される仕組みだと、ブレマー氏は指摘する。 私:トランプ氏も保護貿易主義への姿勢を強め、WTOへ敵意をあらわにしているが、トランプ氏が関心を持つのは長期的戦略や国益ではなく、目先の政治的利益。 自分の思うままに振る舞える方が他の強権リーダーとうまく渡り合え、プーチン氏や金金正恩氏との首脳会談もそうだと、ブレマー氏はいう。 A氏:また、ブレマー氏は、「私が『Gゼロ』の問題を提起した7年前は、ここまで事態が進むとは予想していませんでした。世界的に好調な経済でかろうじて持ちこたえていますが、『Gゼロ』」がもたらす混乱は予想より長く続き、危険なものとなりそうです」という。 しかし、ブレマー氏は、トランプ氏が「Gゼロ」の主原因というわけではなく、米国に限らず、過去5年間で世界でリベラルな民主主義は弱体化したという。 世界でポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭、グローバル化を支持してきた既存の政治に対する大衆レベルでの反感の広がりなどが原因。 G7(主要7カ国)やNATOなど国際秩序を支えてきた枠組みも弱体化し、トランプ時代が終わっても、元に戻らないかもしれないという。 私:世界が米国と中国だけによって仕切られるシナリオもあり得て、とりわけ先端技術分野で米中は他国より飛び抜けて先行し、互いに対抗しており、新たな冷戦の到来を予感させるほど。 まさしく「世界を二分するシステム」と呼ぶべき状況で、グローバルな秩序とはいえままいとブレマー氏はいう。 とりわけ、ブレマー氏が、深刻に懸念するのはAIをめぐる米中の対立で、中国は独自のビッグデータを用いて米国と全く異なるシステムを築きつつあり、両国の軍拡競争の一翼をAIが占めているが、この分野では抑止力も相互の協力も対話もない。 「冷戦」にとどまらず、現実の戦争につながりうるリスクだとブレマー氏はいう。 ところで、ブレマー氏は日本について、「素っ頓狂な話と思われるかもしれませんが、大国の中で民主主義が比較的うまく機能しているのが日本です。人口減少に伴い労働者層の状況が良くなっている。欧米で起きているような移民の大量流入がない。戦争をしていない。ソーシャルメディアの普及度が他国と比較して低い。かくしてポピュリズムへの耐性を備えている」という。 A氏:トランプ政権に追随する日本の姿勢については、トランプ氏は政治家としてあまりに異色で、安倍首相との関係も一方通行で、日本が得たものはあまりないという。 私:巨大化する中国に日本はどのように向き合うか、については、ブレマー氏は、中国は(20、30年のうちに)支配的なパワーになるから、中国との関係改善こそ日本がとりうる唯一の選択肢で、AIIBに日本は参加すべきだし、軍事力を強化して対抗していくことは賢明な策とは言えず、歴史認識をめぐる対立も解消しておいた方がいいという。 また、ブレマー氏は「しかし、日本は中国にないものを持っています。優れたインフラ、質の高いサービス産業。高齢化社会にうまく適合している。中国は豊かになればなるほどそうしたものを欲しがります。日本がそれを利用しない手はありません」という。 中国の巨大化に対応して、「Gゼロ」の世界の中で、先進国トップの少子高齢化問題をかかえる日本の対応は難しい課題をかかえていることだけは確かだね。
2018.08.22
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私:多賀谷克彦氏が、2年前、パリのオルセー美術館を訪ねたとき、マネの代表作の一つ「笛を吹く少年」の前で、小学生十数人が床に腰を下ろしていて、先生らしき人が話しかけていたが、しばらくすると、子どもたちが次々と話し始めた。 どうやら絵の感想を語り合っているようだった。 多賀谷氏は、日本との違いを感じた。 日本ではフランスと違い、美術品は、静かに鑑賞するべきもので、何人かがしゃべり始めようものなら、しかられるだろうし、小さい子どもも、あまり歓迎されない。 鑑賞会でも、学芸員の説明を一方的に聞くことが多いだろう。 ところが、関西経済同友会が今秋、会員企業が所蔵する絵画を持ち寄って展覧会を開き、小学生を招待し、しかも、オルセーで見たような「対話型鑑賞会」を開くという。 A氏:日本では美術鑑賞・教育といえば、作品にまつわる情報、時代背景や技法などが重視される。いわば「この絵はこう見なさい」という一方的な教え。 しかし、「対話型鑑賞」は違う。 ナビゲーターとともに、絵から何を感じるかを考え、直感力や、それを感じた根拠を説明できる表現力が求められ、他者の感想も聞く。 異なる意見をどう受け止めるか、彼らとどう対話するか、コミュニケーションの基礎である。 私:この「対話型鑑賞」は1991年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が開発。 MoMAに勤務し、対話型の普及に努めた京都造形芸術大教授の福のり子氏が同僚から聞いた話だが、小学生の男の子にモネの「睡蓮」を見せたとき、彼は「カエルが葉の上にいっぱいいた。僕が来たから池に逃げた」と言ったという。 福のり子氏は、モネはカエルを描いていないが、小学生の男の子は描かれた数多くの波紋からそう思ったらしいと言い「学校の授業なら、何を言ってるの、となるでしょう。でも素晴らしい想像力じゃないですか」という。 A氏:「対話型鑑賞」によって養われる力は、子どもだけでなく、社会人にも求められるもので、我々が受けてきた教育は、用意された答えを見つける作業。 でも、「対話型」にはあらかじめ用意された答えはない。 これからの時代に求められるのは、社会の課題がどこにあるかを見つける力で、問題を見つけられなければ先には進めないと、多賀谷氏はいう。 私:経済団体といえば、財政や税制など自らの企業活動の利害に絡む政策課題について提言するのが主な仕事だったが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が示すように、社会が抱える課題は多様化している。 政府や公的機関だけでは解決できない課題がほとんど。 この「対話型展覧会」を企画した一人、関西経済同友会の坂上和典氏(博報堂特任顧問)は「提言だけではなく、経済団体も地域社会、次世代の人たちに何ができるかを考えるとき」と語る。 自らの役割を見つめ直して見つけた問いであると多賀谷氏は高く評価しているね。 「対話型鑑賞会」での小学生の多様な発言の場を見たいものだね。
2018.08.21
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私:人間は近代以降、「知」を力にして自然を征服し、今、地球の歴史も変える段階に到達し、人間による新しい地質世代「人新世(じんしんせい)」が世界の地質研究者の間で、提唱されている。 今回の講座は福山市立大学准教授・桑田学氏(専門は経済思想史)に聞いたもの。 約1万1700年前から続く「完新世」が終わって、地球が「人類の時代」を意味する「新しい地質世代」に入ったのではないかと、世界の研究者の間で議論されていて、この「新しい地質世代」を「人新世」という。 従来、地層に含まれる化石や岩石から環境の変化を読み取って地質年代が区分されたが、人間の活動が小惑星衝突や火山の大噴火に匹敵するような恒久的な痕跡を残すほどになった。 すなわち、二酸化炭素(CO2)による大気組成の変化や、人工的なプラスチックやコンクリート、放射性物質などの地層への堆積だ。 まだ承認されていないが、国際的に地質学関連の学界で検討が進んでいるという。 A氏:「人新世」は、1784年、ワットが蒸気機関の実用化に成功した産業革命を象徴する年を起源とするいう意見があり、石炭燃焼の開始を起源とし、最近有力なのは、第2次世界大戦以降の人間活動の爆発的拡大期。 CO2濃度の上昇やオゾン層や生態系の破壊、海洋酸性化など様々な指標で急激な変化が起きている。 素晴らしい時代のような響きがあるが、2000年に最初に問題提起したのはオゾンホールの研究で知られ、ノーベル化学賞も受けたパウル・クルッツェン氏で、気候が後戻りできないほど変質し、破滅的な災厄をもたらすという危機感があるという。 私:広島県は7月の西日本豪雨で大きな被害を受け、その後、被災地を含めて連日の酷暑が示すように、世界全体が気候の非常事態を迎えつつあるとの危機感が広がっていて、大気中の温度上昇が臨界点を越えれば、永久凍土の溶解や氷床崩壊が起きて、海流の循環が変わる恐れさえあり、様々な破滅的事態を連鎖的に引き起こしかねないと、桑田氏は指摘する。 こうした事態を招いたのは人間だったという反省の表れが「人新世」だという名称が生まれた面もあるが、単純には言い切れず、クルッツェン氏らは、成層圏に硫酸エーロゾルを散布して温暖化を抑える研究の推進を求めている。 これは、微粒子が大気を覆って太陽光入射の反射率を高め、地球を冷却するという「気候工学」と呼ばれる人為的な気候改変技術の一つ。 上空20キロほどで飛行機から散布するだけなので、コストも安くすむと言われ、国際的なCO2削減がなかなか進まないなか、気候の非常事態に備えて、本格的に研究を進めるべきだという主張。 A氏:意図的ではないにせよ、地球を大規模に改変してしまった力を持った人間の責任として、今後は地球の賢明な管理者になるんだ、科学技術がもたらした危機を、科学技術で解決するという発想がある。 人間の自然破壊の歴史を根本的に反省するとき、注意しなければならないのは、「人新世」は「人類」と一般化するが、現在の状況の責任は、すべての人類が負うものでなく、西洋近代の資本主義の歴史と切り離せないと、桑田氏はいう。 その成長は非西洋世界を植民地化したことで成り立った。 資源や土地、労働力を、自国の外部から収奪してきた結果で、日本も収奪した側に含まれ、「人新世」を「人間由来」と語ることは、責任の所在を隠してしまうので、「人新世」を「資本新世」と呼ぶべきだとの意見もあるという。 一方で、自然に翻弄されるもろい人間の存在から脱することは進歩と刷り込まれてきて、例えば、火を使う人間の特性ゆえ、「人新世」に必然的に到達したのだ、と時に説明される。 一面、自然に対する人間の圧倒的な勝利と素朴に言われるが、生存を可能にしてきた条件を、人間自身が踏み越えつつあることこそ、「人新世」が示す大事な点だと桑田氏はいう。 「人新世」の見方は、完全には制御できない自然が、生存を支えたり、脅かしたりすることを、改めて自覚する機会でもあり、気候工学のような技術まで検討されるのは人類の苦境の表れだという。 今後、CO2が安定した水準に戻るには数百年から数千年かかるとされ、使用済み核燃料の保管期間は10万年と、途方もないタイムスケールで荒廃させた世界の中、決定的な気候変動や「地球史で6度目となる種の大量絶滅」の進行に、ただただおびえ続ける。 人間に待ち受けるのはそんな未来かもしれないと桑田氏はいう。 「新世紀」を迎え、この世紀で人間は生き延びることができるのだろうか。 「新世紀」は人類滅亡の世紀となるのだろうか。
2018.08.20
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私:「陰謀の日本中世史」の著者の日本史学者・呉座勇一氏は「陰謀と陰謀論は別で、『歴史に学ぶ』のはやめるべきだと伝えたかった」と語る。 武士が政治の表舞台に出てくる「保元の乱」、明智光秀が織田信長を討った「本能寺の変」、勝った徳川家康に強大な権力を与えることになった「関ヶ原の戦い」。 誰もが知る「日本中世の歴史」を、呉座氏は著書「陰謀の日本中世史」で、「陰謀」という切り口で読み解く。 公家、武家、皇族など、様々な立場の人間の思いや計略が交錯した時代は、今なお高い関心を集めるからこそ「教科書に載っていない○○」などと、学会では相手にもされない歴史の「真相」を語る陰謀論が注目される。 近年のSNSの浸透で、引力がさらに増しているように感じると呉座氏はいう。 「陰謀論」は「自分だけが知っている」という優越感をくすぐる。 だから、その「陰謀論」のパターンを示すことが、歴史分野に限らず、日常で情報の真偽を見定めるための参考になると思ったと呉座氏はいう。 A氏:「陰謀論」は「はめたつもりがはめられていた」という加害者と被害者の逆転だったり、一番得した人間が黒幕だったりと、根拠がとぼしいまま、特定のパターンに当てはめられた「物語」ばかり。 「歴史に学ぶ」というと一見良いことのように感じられるが、「こうした『物語』に基づいて教訓を得ることを意味するなら、やめた方がいい」と、呉座氏はいう。 呉座氏が例に挙げるのが、太平洋戦争。 日本軍が奇襲を多用することになった背景の一つとされるのが、源義経が一ノ谷の戦いで見せた「鵯越の逆落とし」で、断崖絶壁を馬で駆け下り、敵陣の背後を急襲して大軍の平氏を破ったもの。 それが転じて「奇襲でアメリカに勝てる」となったが、うまくいったのは真珠湾攻撃など最初だけで、後は連敗。 「鵯越の逆落とし」の話は後の研究で創作と考えられていると呉座氏はいう。 私:歴史的事実は、常に覆され、更新されていく可能性をはらむから、呉座氏は「重要なのは『歴史に学ぶ』ではなく『歴史を学ぶ』である」というのだね。 呉座氏は、「複雑な資料を読み進めながら、仮説を立て、調べ、資料の真贋を見定め、事実と言える程度にまで自分で高めていく。こうした歴史学の手法は、現代の情報社会を生きるうえで重要になりつつあると思う」という。 呉座氏の「歴史陰謀論」は中世に焦点をおいているが、近代の世界史における「陰謀論」はブログ「陰謀史観」秦郁彦著でとりあげているね。 まず、日本はルーズベルトの仕掛け罠にはまり、真珠湾攻撃を決行するという陰謀論。 「コミンテル陰謀論」は、日米中はスターリンの仕掛けた罠にかかり戦争をしたというもの。 その他、「ユダヤ陰謀史観」もある。 マッカーサーは、占領後の安定した統治のために天皇制を利用するが、同時に宮家を大幅に減らしたことで、男系の天皇の維持を困難にする天皇制の継続崩壊を狙ったという「マッカーサー陰謀論」まである。 まさに「歴史に学ぶ」ではなく「歴史を学ぶ」だね。
2018.08.19
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私:この講座の4時間目は、京大高等研究院特別教授で、霊長類学者の松沢哲郎氏が、チンパンジーと人間の比較から「人間とは何か」を研究してきたので、今、人工知能(AI)にその「地位」を奪われることが現実味を帯びて語られているときに、人間は「万物の霊長」という認識はそもそも正しいのか、氏に聞くという講座だね。 人間は特別な生き物でなく、自己中心的な世界観を持ちやすい生き物で、一直線の進化のフロントランナーに人間がいるみたいな誤解をしているが、今生きているものはみんな約38億年の命をつないできもので、どの生き物も特別ということが分かっていれば、人間も特別なのだと、松沢氏はいう。 松沢氏は、「私はチンパンジーも『1人、2人』と数えます。ヒト科だから。ゴリラ、オランウータンも含め、ヒト科は4属だと心に深く留めて下さい」という。 A氏:秀でた知性があるのが人間だというのは、素朴な信念にとらわれていて、1977年に京大霊長類研究所に女性のチンパンジーのアイがやってきたとき、息子アユムはランダムに並んだ数字九つの位置を0・5秒で覚え、各数字を四角形で隠しても、小さい順から触っていき、瞬間記憶は人間より高い力を持っていることがわかり、人間中心的な世界観への決別となったという。 チンパンジーが研究対象となっている理由は、人間だけを見ていても、人間のことは分からないが、DNAの塩基配列が約98・8%まで同じで、約500万~700万年前に共通祖先から分かれたチンパンジーとの比較で、人間が分かるからという。 例えば、人間の赤ちゃんの寝る姿勢のことなんて、誰も考えないが、仰向けで寝るチンパンジーの赤ちゃんはいない。 産むと同時に、子どもがお母さんに手でしがみつき、樹上でいつも母子が密着しており、ここで重要なポイントがある。 人間は、親子が離れているからこそ、コミュニケーションが必要になり、ほほえみを交わしたり、泣くなど声を発して大人を呼んだりするが、チンパンジーのように母子がくっついていればコミュニケーションは必要なく、ひもじくなったら、自分でおっぱいを探してお乳を飲めばいいのだから、あおむけ姿勢が人間を進化させたと思っているという。 コミュニケーションには、共感力や相手の心を理解することが必要で、「分かち合う心」を持つように人間は進化してきた。 食卓にイチゴを盛った皿があるとして、イチゴを口に入れてもらった子どもは、「はい、お母さんも」「お父さんも」と、犬のぬいぐるみの口にまで入れようとするが、これで「私があなたに、あなたが私に」という互恵的な利他性が成長していき、これこそが人間らしさだと、松沢氏はいう。 私:例によって授業のポイントを3つ、下記のようにあげている。 1.チンパンジーとヒトのDNAの塩基配列は約98.8%同じ。チンパンジー研究で人間が分かる。 2.「分かち合う心」を持つように人間は進化した。互恵的に相手のために行動できるのが人間の特性。 3.チンパンジーは「いま」の世界を生きる。人間は未来を想像し、悲観もし、希望も持つ。 チンパンジーに人間のように互恵的な利他性はないが、顕著に違うのは、人間には想像力の負の側面として嫉妬やねたみがあること。 理想の自分をつくり、現実の自分とのギャップでコンプレックスも生まれるが、チンパンジーにはそういった感情はない。 チンパンジーは今ここにあるものを見て、人間はそこにないものを考える、想像する力が人間とチンパンジーを隔てるものだという。 A氏:人間と同じ機能を持つ機械をつくろうとしている人もいて、技術の進歩はめまぐるしく、人間自体が変わっていくのではないかと考えられるが、松沢氏は、それは「進化」と「進歩」をごっちゃにしており、「進化」というのは生物学的な流れの中で変わっていくもののことで、何十年、何百年じゃ人間は何も変わらないという。 また、松沢氏は、人間の未来が不安だという考えに対し「安心して下さい。思いやる、慈しむ、分かち合うことで、人間という集団は生き残ってきた。心に愛を持つように進化してきた人間はずっと続いていくんです。たとえどんなに状況が悲惨でも、未来に希望を持てる知性があるのが人間じゃないでしょうか」という。 人間のあるべき未来についてはすでにブログ「科学技術発展のリスク AI社会、新たな世界観を」で宗教学者の中沢新一氏は、言葉や自然科学など、事物を分類して整理する「ロゴスの論理」に対し、事物を独立したものとして取り出さず、関係の網の目の中の作用として認識する「レンマの論理」が、人間に新しい世界観をもたらすかもしれないと述べているのを連想するね。 また.ブログ「死を考えること 人に優しい社会への一歩」で人に優しい社会への提言も連想するね。
2018.08.18
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私:デカルトが「我思う、故に我あり」といった自己「意識」は人そのものだというが、どれだけ機械や人工知能(AI)が発達しても、自己「意識」だけは人の特権と思っていたが、脳科学者で、機械への人の「意識」移植を目指す渡辺正峰氏は、機械にも「意識」が宿る日が来るという。 グーグルでAI研究を率いるレイ・カーツワイル氏は、今世紀半ばには人の「意識」の機械への移植が実現することを予言しているという。 いくつかの仮説が正しければ、技術的な障壁はそれほどでなく、マウスを使っての実験で5~6年、その後に猿で実験と、20年後に人での実用化もまったくの夢ではないと渡辺氏はいう。 その方法は、渡辺氏は、開頭手術をした上で脳と機械を接続し、脳と機械の「意識」が一体化してしまえば、たとえ脳が終わりを迎えても、「意識」は機械側に存在し続けるはずだという。 人の脳は、左右に分かれた脳半球が三つの神経線維束で結ばれて情報をやりとりしていて、左右の脳がつながるのと同様に脳と機械をつなげられると考えられ、脳はニューロン(神経細胞)を組み合わせた神経回路網に過ぎず、それを十分に模した機械を作ることができれば、そこには「意識」が宿るはずだと多くの科学者が考えているという。 例によって、この授業のポイントを下記のように3つあげている。 1.人の意識の機械への移植は今世紀半ばにも実現? 脳は神秘の器官ではなく神経 回路に過ぎない。 2.機能においては、現時点でも人の脳と機械は大きく変わらない・。 3.脳や体がなくても、「我」は存在する。生身の人間ではできないことも可能に。 A氏:そもそも「意識」とは、物事を処理する時に伴う感覚体験。 喜怒哀楽のような感情も「意識」の一部で、「意識」と思われがちな認識、思考、意思決定は別の機能。 人の脳の行う機能の多くは、機械によって実現していて、例えば車の自動運転機能やデジタルカメラの顔認証機能。 これらは、周囲の状況を認識し、適切な行動を判断し、実行に移し、一連の動作は人と同じだが、ただ、自動運転にはドライブが楽しいという感覚はない。 しかし、機械は冷徹で、人は感情的という単純なものでなく、人間らしく振る舞う機械は既に存在し、見た目だけでなく動作や受け答えまでまるで人と変わらない機械もできるだろうと渡辺氏はいう。 人は時に損得勘定を抜きにした行動を取るのは、行動経済学の研究などで実証済み。 見返りを求めない手助けをするとプログラミングすれば、人情があるような行動が機械もできるだろうという。 プログラミング次第で、どんな人間くさいことでも可能と考える研究者は多いが、「意識」がなくとも様々な行動が原理的には可能なのだから、実は「意識」は人の本質ではなく副次的なものかもしれないという。 主観的なものだから、客観的な検証ができないので、渡辺氏は賛同しない説だが、人と同じことができる現時点で機械に「意識」は宿るとする研究者も数多くいるという。 A氏:機械の「意識」を確かめるには、渡辺氏は「私の脳を機械につなぎ、自身の主観をもって機械の意識を味わうしかないと考えています。例えば、私の脳だけでは分からない機械側の体験を感じられたとしたら、機械に『意識』が宿っていて私の『意識』と連結したとしか言えないでしょう」という。 そこまでして「意識」を移植しようとする理由は、死を避けるためで、渡辺氏は中学生の時から、自分の存在が無になってしまうことへの恐怖を抱いてきて、実現すれば、渡辺氏の「意識」は機械の中で永遠に生き続け、機械に宿った「意識」であるがゆえに、何百年にもわたる恒星間の宇宙旅行なども可能になるだろうという。 「意識」の不死はマッドサイエンティストと呼ばれてもある意味仕方なく、これは倫理的な問題で仮に先進国では許されなくても、こうした技術を活用しようとする国はでてくるだろうという。 私:人とはいったい何なのかと言えば、デカルトの言う「我思う、故に我あり』」はまさに「意識」そのもので、渡辺氏、脳と機械で「意識」を共有した後に肉体が死を迎え、脳も体も存在しなくなったとしても、我は存在するという。 「意識」は副次的なものとの考えを紹介したが、一方で自分そのものでもあると渡辺氏はいう。 「我」は、死後も存在するというわけか。 墓が機械になるのかも。
2018.08.17
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私:この問題は、横浜市大付属病院が6月下旬、心臓の治療で6年前に受けたコンピューター断層撮影(CT)検査で「腎臓がん」の疑いが見つかった60代男性が、診断が遅れて今年4月に亡くなったと発表したことから拡大。 病院の担当は科別だから、心臓専門の循環器内科の医師は患者の心臓の検査には関心があるが、腎臓という泌尿器科のことはあまり関心がなかったのだろう。 事実、放射線科の診断医はCT画像の異常に気付き、「画像診断報告書」に「腎臓がん」の疑いについて記していたが、男性患者の主治医の循環器内科医はその「報告書」を見ておらず、その男性は「腎臓がん」治療の機会を逸したもの。 6月には、同様の確認不足でがんの治療が遅れた例が、千葉大病院、兵庫県立がんセンターでも相次いで発覚。 医療事故の分析にあたる日本医療機能評価機構によると、「報告書」の確認不足は2015年1月~18年3月に37件あったといい、ある大学病院幹部は「氷山の一角に過ぎない」という。 A氏:昔は主治医の診療に必要と判断した体の部位だけを撮影したが、今は広範囲に撮るのが一般的で、画像はまず、早く患者に説明したり、治療の方針を決めたりするため、検査を依頼した患者の主治医に送られる。 主治医は自分の知りたい分野だけみるわけだ。 その後、放射線科の診断医がCT画像を詳細に見て「報告書」を作成。 「がん」などの異常はその際、診断に必要なかった部位で見つかることが多く、後で「報告書」は送っても、自分の分野に必要な情報をすでに得た主治医は「報告書」を読まずに異常に気づかない。 専門化、細分化された現代の医療現場では、専門外の異常に気を配るのは難しく、関東地方の拠点病院のベテラン外科医は「患者1人にかけられるのは15分が精いっぱい。限られた時間とリソースは自分の専門につぎ込みたいし、その方が患者のためになる。他分野までカバーしろというのは正直無理だ」という。 対策の一つとして、阪大病院は主治医が予期しなかった「がん」などの異常のうち、月単位の確認の遅れが患者に重大な影響を及ぼすもののみ、電子カルテ上で他と異なるアラートで主治医に通知しているという。 私;逆の例もあるね。 俺の知人が喉に違和感を覚えたので耳鼻咽喉科のクリニックに行き、そこの紹介状で地域の総合病院でCT検査をした。 その総合病院はIT化が進んでいた。 総合病院の耳鼻咽喉科担当はCT画像をみて、咽喉に異常はないと言ったが、ただ、肺の右上の端に気になる画像が出ているので「肺がん」の疑いがあるとして、呼吸内科にまわされた。 呼吸内科では、「がん」なら呼吸外科だということで、さらに専門医にまわされ、ここでフォローが行われた。 実は、その知人は、十数年前に、すでにかかりつけの街の医者でレントゲンだが同じ箇所に映像があり、「肺がん」の疑いから、毎年、経過をみるため10年くらいの間、レントゲンをとったが変化なし。 彼は、小学生の時、肋膜炎をしているので、その跡だろうとなっていたんだ。 ただ、レントゲンと違い、CT画像は実に鮮明に画像が出るので、再びクローズアップしたわけだ。 喉の異常でCTをとり、それが「肺がん」の疑いになるとはね。 いいことだがね。 医療過誤原告の会の宮脇正和会長は「患者には一つひとつが命に関わる大切な情報。医療者は患者と共有する視点で、医療安全を考えてほしい」と訴えると報じているが、専門化、細分化された現代の医療現場では、個々の医者の注意力に依存するのでなく、阪大病院のように、別の専門処理ルートを設置すべきだね。
2018.08.16
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私:昨日の講座は、人工知能という知能に関することだったが、今日の講座は人間が持つ肉体の運動や知覚、認識能力を高めるような研究が中心。 「人間の拡張」のテーマは、義手や義足などでハンディキャップを克服することにとどまらず、人間の元々持っている運動や感覚、認知などの能力を伸ばして、ゼロをプラスにすることも含むテクノロジー。 サイボーグは人をベースにしているが、義足や人工臓器のように物理的に体にくっついている特徴があり、「人間の拡張」はそれよりも広く、人間に成り代わる知能をつくるAIの技術をも取り込んで人間の能力を伸ばすアプローチが「人間の拡張」。 例えば、パソコンのマウスは、操作する人にとって、画面に現れたカーソルは体から離れていても一体感があり、歌舞伎などのイヤホンガイドも感覚の拡張と言ってもいいと井上智洋氏はいう。 例によってこの「人間拡張」の授業のポイントを下記の3つあげている。 1.セルフ(自己)とアザー(非自己)の壁は、0.2秒のはざまに 2.テクノロジーによる外部の刺激で、人間は内面も振る舞いも変わる 3.人間も機械も生態系の一部。どちらが上位ということはない 1.の「セルフ(自己)とアザー(非自己)の壁は、0.2秒のはざまに」はちょっと意味がわかりにくいが、パソコンのマウスの例をあげているのでわかりやすい。 マウスを動かしてから、画面上のカーソルの反応が0・2秒以上遅れると、自分と一体化していないと思うという。 ほかにも、自分をくすぐるロボットの手を作ると、自分の命令から0・2秒以内に実行するとくすぐったくないけれど、それ以上の時間差だと、くすぐったくなるという。 A氏:直近の研究では、複数のドローンで体を持ち上げ、月面を跳ぶような感覚が得られる「オーグメンテッド・ジャンプ」がある。 これはサイボーグに近い身体的な「人間の拡張」で、高齢者や体の不自由な人が自宅にいながら旅行を味わえるような「ジャックイン・スペース」もある。 「ジャックイン・ヘッド」という装置は、全天球カメラをつけた機械を頭に装着した生身の人が見た映像を、遠隔地の人がディスプレーで見る仕組みで、スポーツで使うなら、プロのサッカー選手がプレー中どこを見てどう体を動かしているかも追体験できる。 「人間の拡張」で人間のありかたも変わるという。 今、ネット上でCGのキャラ(アバター)を操って動画を配信する「バーチャルユーチューバー」がはやっているが、例えばおじさんユーザーが女の子のキャラを使って、ネット上で「可愛い」とちやほやされると、現実のおじさんも、おしとやかになるそうだと、井上氏は指摘する。 ゴジラのアバターを使うと、現実の体が重くなる感覚にもなり、テクノロジーによる外部の刺激に、人間は振る舞いも内面も引っ張られるという。 私:「人間の拡張」は技術的にSFやドラえもんの世界でも、見方を変えれば近いことが結構でき、ドラえもんの「どこでもドア」自体は作れないけど、離れた場所にいるロボットや代理人が撮影した映像を見て、そこに行ったかのような状況は作れるという。 だが、脳に電流や磁界をあてる「ボディーハッキング」といわれる技術があり、これもある種の「人間の拡張」で、大多数は神経リハビリの研究などに使われるが、将来スポーツで脳ドーピングは問題になるかもしれず、電流や超音波でパフォーマンスが上がる。 しかも薬と違って痕跡が残らない。 でも、多くのテクノロジーは、両刃の剣で、どこまでダメと一言でいうのは難しいと井上氏はいう。 人間と機械の関係について、井上氏は、デカルト的な人間と自然の二項対立の世界観でなくて、老荘思想のように、すべてが相互に影響を与え合うという東洋哲学の方が好きという。 機械も人間も生態系の一部で、どっちが上ということはなく、人間が技術を発明したとも、その逆とも言えて、機械やAIが人間の奴隷のように扱われ、暴走するディストピアはしっくりこないという。 最先端の技術思想に老荘思想の東洋哲学が根底にあるのは興味深いね。 ブログ「科学技術発展のリスク AI社会、新たな世界観を」でふれたように西洋の「ロゴスの論理」でなく東洋の「レンマの論理」だね。
2018.08.15
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私:1時間目の授業のポイントは下記のように3つになる。 1・2030年以降、汎用AIに大半の人間の雇用が奪われる。 2・「ベーシックインカム」の導入を。全ての人に無条件に、最低限の生活費を一律給付。 3・労働は人間の本質ではない。価値観の転換が必要。 井上智洋氏は、30年ごろには、人間と同じふるまいができる「汎用AI」開発のめどがたつと言われていて、ロボットに組み込めば色んなことができ、人より安くて効率良く働けるなら企業はそちらを雇うという。 普及を考えると、大半の人の仕事がなくなるのは早くて45年、遅くて60年くらいという。 人間に残る仕事は、小説を書く、新商品の企画を考えるといったクリエーティビティー系。 工場管理、会社経営などマネジメント系。 看護師などホスピタリティー系。 この3分野は、ある程度残るという。 A氏:仕事をして、十分な所得があるのは、1割くらいのスーパースター労働者だけになって、「脱労働社会」となり、スーパースター労働者と資本家がめっちゃもうかるようになる社会。 そんな社会にふさわしいのはベーシックインカム(BI)で、全ての人々に、最低限の生活費を一律に給付する制度。 井上氏は、もし今すぐ導入するなら、1人月7万円くらいが妥当かと思うといい、AIの発達など社会の変化に合わせて、給付額や制度は柔軟に変えていけば良いという。 古代ギリシャでは、市民は政治や数学に熱中したり、哲学したりで、労働は奴隷がするもので、忌むべきものだったというが、近い将来、かつての奴隷の仕事がAIやロボットにとってかわられ、古代ギリシャのような世界になるかもしれないという。 賃金労働でなくても社会との接点は作れる。 私:井上氏は、高度にAIが発達したら、人間は怠けていても別に問題なく、今の社会でも、働かない、働けない人には色々な理由があると思うが、単に怠けていたとしても、それは一種のハンディキャップで、人間はあらゆることを意志でコントロールできるものではないから、いま働いている人は、たまたま労働意欲や能力に恵まれてラッキーってことだという 井上氏は、すぐにでも、全ての人にBIを給付すべきだと思うという。 人間は働くことで自己実現したり、承認欲求が満たされたりする面もあるという考えに対し、井上氏は、労働が人間の本質であるとはあまり思わず、近代になって労働の価値が高められた部分があり、国民に労働をさせて国力を高めることが、国際競争の中で必要だったからだという。 特に日本は、憲法に勤労の義務があり、それくらいこの国では、労働に重みがあるという。 しかし、社会にしみついた「働かざる者食うべからず」という価値観が変わるべきだという。 働く以外にも素晴らしいことはあるし、生きているだけで貴いという価値観に変えていかないといけないという。 遊んで暮らすもけっこう、くらいにゆるい社会にならないと、今でも生きづらさを感じている人は多いし、ますますそうなってしまう。 労働以外のことに意味や価値を見いだしている人の生き方も肯定していかないと、立ちゆかなくなると、井上氏はいう。 別な話題からだが、こないだテレビで学校スポーツの討議をしているとき、橋本徹元大阪市長が、「学校スポーツで頑張って、卒業して社会に出たら、頑張らないでのんびり生きればいい」と言っていたのを連想したね。
2018.08.14
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私:小型無人機ドローンによる遠方への荷物の配送が、早ければ今月中にも、人が少ない離島や山間部に限って解禁される。 国交省によると、ドローンの飛行は現状、航空法に基づく規定により、操縦者か補助者が常に目視で機体を確認できる場所に限られているが、それを今回、高度150メートル未満の「山や川、海などの人が立ち入る可能性が低い場所」に限り、目が届かない場所でも飛行できるよう改める。 離着陸の場所に人が近づかないようにすることも要件となるため、実際に荷物を運ぶ場合は柵などで囲まれた発着基地「ドローンポート」を設け、利用者はそこまで荷物を取りに行くことになる。 ドローン配送は、過疎地などで暮らす人にとって買い物などが便利になるほか、事業者にとってコスト削減も期待される。 A氏:将来、物流の効率化にも貢献できるだろうね。 12日の朝日新聞では、別欄の「(平成経済)第4部・老いる国、縮む社会:11」欄で「物流悲鳴、担い手置き去り」」と題して、物流の担い手であるトラック運転手の人手不足と賃金について、報じている ボストン・コンサルティング・グループの森田章パートナーは、27年にトラック運転手は24万人足りなくなると予測している。 森田氏は「17年の運転手数は83万人。宅配便は増え続け、10年後には96万人が必要になる。一方、高齢者の引退などで担い手は72万人にとどまる。「幹線道路での自動運転化に加え、異業種の共同配送なども進める必要がある」と訴える。 私:国交省などは自動運転技術を使い、複数のトラックを運転手1人で走らせる「隊列走行」の実験を始めた。 ドローン使用もその一つだね。 日立物流は、運転手や倉庫作業員の代わりに荷を積み下ろしするロボットの開発などに取り組む。 しかし、現状、何より大切なのは働き手の待遇改善で、大型トラック運転手の昨年の年間所得は454万円で全産業平均より1割安い。 労働時間も2604時間と1・2倍になっている。 神奈川大の斉藤実教授は「運送業者は、過当競争で抑えられてきた運転手の賃金を上げることが急務だ。運賃の上昇は待遇改善のきっかけになる。荷主や消費者はこのことを理解する必要がある」と指摘する。 物流は、われわれの日常生活の大動脈の一つだけに、早急な対策が必要だね。
2018.08.13
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私:AI社会の未来については、ブログ「科学技術発展のリスク AI社会、新たな世界観を」でとりあげているが、これにブログ「死を考えること 人に優しい社会への一歩」を関連させて考えてきた。 本書は、データサイエンスを熟知した著者が、AIとビッグデータへの警告とともに今後の方向を提案する、大変重要な一冊。 AIとビッグデータは、(1)膨大な量のデータを集め、(2)そこから、ある目的のためのアルゴリズムを作り、(3)そのモデルを当てはめて予測を引き出す。 大学ランキングを例にとると、(1)で、受験者の学力データ、2年生に進級する割合、寄付の額など、いろいろなデータを集め、(2)で、よいと思われる順に大学が並べられるよう、それらの変数に重みづけをする計算アルゴリズムを作り、(3)で、各大学のランキングをはじき出す。 この場合、(1)のどんなデータを集めるべきかは、人間が決める。 次に(2)のアルゴリズムも人間が決める。 (1)にも(2)にも、人間の価値観やバイアスがどっぷり入っている。 だから、(3)で、出てきた大学ランキングは客観的に見えるが、本当に客観的かわからないのに、大学はこれに振り回される。 A氏:毎日、スマホを使って買い物したりするたびに、その行動は、人々の好み、交遊範囲、金銭状態に関するデータとなり、その膨大なデータをもとに、どんな傾向の人物なのかをはじきだすアルゴリズムがあり、人々が分類される。 分類によって個人の評判が決まり、そのデータは売られ、アルゴリズムの詳細は企業秘密なので公表されない。 これって公正だと思います?と評者はいう。 AIとビッグデータで何をしているのか、プロセスに透明性がなく、間違いがきちんとフィードバックされない。 モデルの目的が効率化なら、公正は無視され、便利だから急速に増殖し、大量の人々が悪影響を受ける。 評者は、数学をまとった「兵器」ではないかと警告し、「モラルや想像力は人間固有のものだ。AIをどう使うべきか、もっと精査が必要だろう」という。 やはり、ブログ「科学技術発展のリスク AI社会、新たな世界観を」、ブログ「死を考えること 人に優しい社会への一歩」でふれた人間固有のモラルや想像力の世界を、AI社会でこそ重視すべきだね。
2018.08.12
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私:今年は明治維新から、150年。 それを振り返るのに、この鼎談は時代を切り拓き推し進めた人たちの自伝や評伝を手がかりにしているが、落語や講談が登場したりして、興味ある視点からの150年の歴史談義だね。 まず、福沢諭吉(1835~1901)の「福翁自伝」(1899)。 身分差別が強かった江戸時代に下級武士の家に生まれた福沢は、学問による独立自尊を唱え、「どこに帰属しているか」から「何ができるか」に価値が変わっていき、福沢にとって維新前後の激変は、「一身にして二生を経る」ごとき体験だった。 山室信一氏は、「しかし、門閥制度は本当に打破されたのか。戦前は藩閥や軍閥・財閥が動かし、いま自民党の政治家の多くは二世、三世。安倍政治について欧州では『クローニズム』と指摘されています。政権に近い人に恩恵やポストを与えるということです。これは戦前の政商だけでなく、モリカケ問題など、今も続いている」と指摘。 A氏:山室氏は、また、「言葉」ついての興味深い逸話として、福沢は父の役目から大坂育ちで、元々の地元である大分・中津に戻った時、近所の子どもと言葉が違って仲良く出来ず、福沢によれば、藩や職業によって言葉遣いも違う数千万もの「窮屈な小さい箱」に閉じ込められていた人々が、日本という一つの箱に解放されたのが明治維新で、一方で、中央集権国家になった結果、地方が弱くなったという問題もあり、中国や朝鮮へのある種の蔑視も書かれているという。 サンキュータツオ氏は、文語と口語の乖離も、国民にとって大きい問題で、結果的にいわゆる「言文一致」につながったのが、三遊亭圓朝(1839~1900)の落語だという。 一人で座布団から動かずにしゃべるスタイルを作り上げた人だが、速記隊を編成して口演を活字にして新聞で連載。 二葉亭四迷「浮雲」(1887)を書くときに、坪内逍遥から圓朝の速記を参考にするようアドバイスされたといわれる。 「言文一致」というと、四迷のような作家の名が挙がるが、実は落語家が大きな影響を与えていたわけだ。 山室氏は、「言文一致」は、「演説」からも始まっていて、「福翁自伝」も日常語で時代の変化を見事に写し取っていて、福沢は英国の議会を見て、議論によって政権が変わることに驚き、スピーチで社会を動かすために三田演説館を作ったという。 また、福沢の演説を見た講談師の松林伯圓がテーブルに花を置いて講談を行い、その伯圓の講談を東大の初代総長・加藤弘之が見て授業の仕方を工夫し、大衆演芸と政治的議論や学問的講義とが相互に影響を与え、オーラルとライティングのメディアミックスも起きた。 私:圓朝が様々な試みをしたのは、当時勢いがあった講談への対抗でもあったという。 尊皇思想を広める大教宣布運動に、宗教家や芸人などが動員され、伯圓は、天皇の前で講談を披露するに至った。 サンキュータツオ氏は、落語は、侍文化を伝える講談よりも下に見られ、下世話だからと政府に弾圧される危険もあったが、新しい時代に対応するために圓朝は「塩原多助一代記」(1885)のような立身出世物語を作ったり、井上馨や山岡鉄舟といった政府の権力者とも交流したり、時代の変化の中で、落語を守ろうとしたという。 山室氏は、文字が読めない人に耳から教える耳学問が講談や落語で、目から教えるのが歌舞伎や演劇で、これらを通じて、契約の観念や「時は金なり」という資本主義の精神が伝えられたという。 サンキュータツオ氏は、当時の流行語だった「神経」をもじって取り入れたのが1887年から新聞連載された圓朝の「真景累ケ淵」だという。 本当に怖いのは「人の心」ということで、ここにも、近代的な発想があり、圓朝は、落語の地位向上を思い、落語家の言葉遣いや意識変革にも取り組んだが、それが、口うるさいとけむたがられ、この世代には「天保の老人」と揶揄もされ、圓朝の問題意識は、当時の落語家とはほとんど共有できなかった。 30歳近く下の世代になる夏目漱石は、圓朝にはあまり触れないけれど、弟子の圓遊は「三四郎」(1908)で三代目小さんと同等に褒めていて、圓朝が権威の塊にみえたんだろうとサンキュータツオはいう。 次週の続きを期待したいね。
2018.08.11
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私:スズキとマツダ、ヤマハ発動機の3社は9日、出荷前の自動車や二輪車の排ガスや燃費を測定する検査で、検査条件を逸脱した無効な測定を有効なものとして処理する不正が見つかったと発表。 スバルと日産自動車で排ガス・燃費の測定データ改ざんが発覚したことを受け、国土交通省から指示された社内調査で判明したもの。 新車の出荷前に排ガスや燃費性能を100台に1台の割合で調べる「抜き取り検査」という工程で、データを測定するために車を走らせる速度が国のルールから外れていたもの。 スズキによると、主力の軽アルトなど30車種(旧モデルを含む)で不正があり、検査に関与した検査員19人は、不正にあたると認識していなかったという。 また、検査条件を確認するのに必要な機器の性能が不十分で、検査員の判定ミスを招いたと説明。 マツダでは自動車10車種の72台で不正が発覚し、検査員が排ガスデータの数値だけに気をとられ、検査条件が有効かどうかの確認を怠るミスが原因という。 ヤマ発でも二輪車7台で見つかったが、検査の際にバイクを走らせる速度について、検査が無効となる条件を経営陣も現場も認識していなかったという。 A氏:3社とも測定データの改ざんはないとしていて、リコール(回収・無償修理)の予定もないとしている。 検査データの改ざんが明るみに出たスバルや日産自動車に比べ、「書き換えや改ざんはなかった」として、悪質な不正ではないとのことだが、今回のスズキの不正は、改ざんをするかしないか以前の問題をはらんでいる。 すなわち、検査に詳しい管理職を配置していなかった▽検査員の速度基準の認識が不十分だった▽基準を逸脱した時の再試験などのルールがない▽1台ずつの検査時にモニターに表示される基準逸脱を示す数値が、検査の終了後にすぐ別の画面に切り替わってしまうなど、明らかにしたのは、こんなずさんな検査実態だった。 私:このような「ものづくり」に関する検査の不正という報道では、いつも担当する記者の「ものづくり」の基礎知識が不十分なのを感ずるね。 そして、日本車の品質にかかわる不正は一段と拡大する様相となったと大げさな結論にまとめていて、事態の突っ込みが浅い報道ばかりだね。 例えば、「検査に関与した検査員19人は、不正にあたると認識していなかった」という問題は「検査員の訓練システム」はどうなっていたのか、取材し報ずるべきだ。 「検査条件を確認するのに必要な機器の性能が不十分で、検査員の判定ミスを招いた」 というが、必要な機器の性能の管理は誰がどうやっているのか、取材し報ずるべきだ。 「検査員が排ガスデータの数値だけに気をとられ、検査条件が有効かどうかの確認を怠るミスが不正の原因」というが、そのようなミスを予測し、検査の手順の中にポカヨケはなかったのか、取材し報ずるべきだ。 「検査に詳しい管理職を配置していなかった」というが、検査員グループに班長、係長などはいないという組織だったのか、取材し報ずるべきだ。 「基準を逸脱した時の再試験などのルールがない」というが、日本の「ものづくり」現場では現場の作業ルールを定めた標準書があるのが一般的だが、なぜ、基準を逸脱した時の再試験のルールを誰が標準書に書いてなかったのか、取材し報ずるべきだ。 「1台ずつの検査時にモニターに表示される基準逸脱を示す数値が、検査の終了後にすぐ別の画面に切り替わってしまう」というが、そのモニターを誰がテストして、検査現場に提供したのか、取材し報ずるべきだ。 全部、「ナゼ」の追求が甘いが、すべてマネジメントの問題でどうも記者はマネジメントの基礎知識に乏しいようだね。 だから、この問題は「日本車の品質にかかわる不正」でなく、「日本車メーカーのマネジメントにかかわる弱点」だね。 品質は関係ないね。
2018.08.10
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私:山極寿一氏は、ゴリラが専門の霊長類学者。 山極氏は、この春、「人間とは何か」という問いに、AIとゴリラと仏教の視点から考えるシンポに参加。 大乗仏教では、世界を構成するあらゆるものは「縁起」によってつながっていると考え、一見、AIによるネットワークの拡大と似ているが、AIがデータ化された情報によってつながっているのに対し、仏教は「直観」により世界を把握しようとする。 たとえば、科学は人間の身体や心の動きを図や画像、数式によって捉えようとするが、それは生物の一側面に過ぎない。 生物は本来、仲間や他の生物の動きを様々な「感覚」を用いて「直観」的に予測し反応しており、そこに情報には還元できない認識力や生物どうしの関係が存在する。 宗教学者の中沢新一氏は、言葉や自然科学など、事物を分類して整理する「ロゴスの論理」に対し、事物を独立したものとして取り出さず、関係の網の目の中の作用として認識する「レンマの論理」が、人間に新しい世界観をもたらすかもしれないと述べている。 「レンマの論理」に対応するのが西洋の「ロゴスの論理」で「A」か「非A」か、「善」か「悪」か、というふうに、常に二者択一。 A氏:「レンマの思想」は、大正から昭和初期に発展した「西田哲学」や、今西錦司氏の「自然学」にも反映されているもので、現代の科学は時間を空間的に理解しようとするが、生物はその二つを同時に「直観」的に認識し、それが生命の流れを感じることだと西田幾多郎氏は言う。 今西氏は、この世界の構造も機能も一つのものから分化したものであるから、生物は互いに理解しあい共存する能力を持っていおり、その生命の認識や相互作用、生物どうしが織りなす全体像を、現代の科学技術はつかむことができないという。 私:AIも「レンマ」もつながりを重視することに変わりはないが、手法が違うので、結果はまるで異なったものになる。 情報によって効率的な暮らしを与えてくれるAI社会は、個体がデータに置き換わり差別や格差を広げる危険をはらむ。 一方で「レンマ」は生命のつながりや流れに目を開かせ、私たちに新しく生きる目的をもたらしてくれるかもしれないと山極氏は指摘する。 AI社会になってもブログ「死を考えること 人に優しい社会への一歩」でふれているように「レンマ」の「宗教意識」は重要なようだね。
2018.08.09
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私:トランプ大統領の貿易摩擦、イランへの制裁強化など、国際的に大きな「トランプ旋風」が起きているが、トランプ氏の目的は米国国内の11月の中間選挙に勝つためだという。 その行方を占う前哨戦の選挙として、中間選挙前に行われる最後の国政選挙が、7日に投開票されるオハイオ州の下院12区補選。 7日、投開票された結果は、与党・共和党の州議会上院議員トロイ・ボルダーソン氏が、野党・民主党候補のダニー・オコナー氏をわずかに上回り、勝利宣言。 ただ、共和党が30年以上も議席を維持してきた牙城で接戦に持ち込まれたことは、2016年の大統領選で起きた「トランプ旋風」が失速し、民主党の勢いが広がっていることを鮮明にした。 A氏:開票結果の数字は、共和のボルダーソン氏が10万1574票(得票率50・15%)、民主のオコナー氏(31)が9万9820票(同49・29%)で2千票差以内の大接戦。 共和のボルダーソン氏は7日夜、支持者を前に、「この選挙区のために死にものぐるいで働く」と勝利宣言したが、米メディアによると、再確認が必要な票が4千票近くあるといい、正式に勝者は確定しておらず、また、両者は11月の中間選挙で再び戦うことになる。 トランプ氏の信任投票となる中間選挙を3カ月後に控え、トランプ政権と共和は大きな不安を抱えることになった。 私:もともと、オハイオ州の同区は、1982年以来、共和が議席を保ってきたところで、トランプ氏を熱狂的に支持する白人労働者が多い「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)の一部で、保守層が強い。 16年の大統領選ではトランプ氏が11ポイント差で勝利し、同時に行われた下院選でも現職が35ポイント以上の差で圧勝するなど、共和が「勝って当然」の選挙区。 ところが、直前の世論調査では、支持率44%のボルダーソン氏を、オコナー氏が43%と追い上げていた。 危機感を持った共和はトランプ氏が直前の4日に現地入りして演説し、ペンス副大統領も投入し、好調な経済や移民対策の強化など実績を訴えて逃げ切った。 しかし、トランプ氏の排外的な言動に、郊外に住む女性や穏健な保守層などが反発。投票に行かないなど、「トランプ離れ」も印象づけた。 A氏:米国では、トランプ政権が目玉政策と位置付ける中国などへの関税措置による制裁で、輸入品の価格が上昇。 さらに、中国との「貿易戦争」のあおりで、同区の主要作物である大豆農家や、自動車工場をはじめとした製造業に「痛み」が出始めたことも、今回の苦戦の原因とみられる。 私:民主党のほうは、オコナー氏は、保守層に人気のない民主党の幹部とはあえて距離を置き、社会保障などの政策を訴え、銃規制の問題でも、安全対策の充実といった中道路線をとり、トランプ氏の排外的な言動を嫌う穏健な保守層の取り込みを図っていた。 最近の下院補選をみると、共和党は苦戦を強いられていて、3月のペンシルベニア州補選では、共和の地盤にもかかわらず敗北している。 11月の中間選挙はトランプ氏に厳しいものになりそうだが、これらの補選結果に対応して11月までに「トランプ旋風」は、さらに吹き荒れるだろうか。
2018.08.08
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私:原真人氏は、年に何回か大学の授業で話をすることがあり、ここ1年で接した学生は約800人。 そのつど彼ら彼女らに「日本の未来に楽観的? それとも悲観的?」とたずねてみると、驚くのはどの大学でも学生の99%が悲観的なこと。 理由をたずねたら、日本の競争力の後退、人工知能に仕事を奪われるなど、今風の課題をあげる学生は思いのほか少数派。 多数があげたのは「人口減少」「超高齢化」「社会保障の未来」。 つまり「学生の不安」をなくすのに必要なのは、物価を上げることでも株価を維持することでもなく、地に足の着いた課題の解決なのだと、原氏は指摘する。 A氏:そこで原氏は、「人口減少と社会保障」の著書があり、厚労省の官僚時代、「ミスター介護保険」と呼ばれた社会保障のプロである山崎史郎氏を訪ねた。 山崎氏は、「本格的な人口減少が始まれば、社会保障の支え合いの基盤が加速度的に弱まります。それに備えて、新しい支え合いの基盤を早く作り直すべきです」と警告。 そこで心配になるのがいま40代となった団塊ジュニア。 この世代は、就職氷河期に社会に出て、非正規のまま働き続けている人が少なくなく、20年後に65歳以上となったとき、相当数が単身で低所得の高齢期を迎える恐れもある。 一刻も早く本格的な職業訓練や仕事のあっせんで対応することが望まれるという。 2008年に1億2808万人でピークを打った日本の人口は下がり始めたばかりで、本格的な減少はこれからで、「いわばジェットコースターの頂上からの急降下が待っています」と山崎氏は警告する。 私:何も手を打たなければ人口は2053年に1億人を割り、2110年に約5300万人まで減り、あまりに急激すぎてショックが大きい。 ただ、有効な対策が打てれば、60年以降、9千万人台で安定させることは可能だという。 人口減対策は社会保障、都市政策、雇用政策、地方行政などありとあらゆる政策がからむ連立方程式。 原氏は、「総合的に数十年がかりで粘り強く取り組まないといけない。政府と国民の強い決意も必要だ」という。 原氏は、このエッセイの文頭で、今日さえ良ければそれでいいといわんばかりの刹那的な「経済政策」がはびこっているとし、政府は財政健全化の目標をないがしろにしているし、国債市場、株式市場の支え役と化した日銀は「異次元緩和」をやめられず、恒久化の兆しさえあるという。 そうやって景気てこ入れに走ることでかえって日本の将来を危うくし、「若者の希望」を奪ってはいないかという。 日銀の「異次元緩和」には、少し、変化がみられるが、「経済政策」の中心である「成長戦略」はまだ継続中。 「若者の不安」が吸収できず、第2のオーム事件の背景にならないことを祈るね。
2018.08.07
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私:今月の「異論のススメ」は「死」に関連して宗教にふれている。 人々の活動の自由をできる限り拡大し、富を無限に増大させるという、自由と成長を目指した近代社会は、確かに、「死」を表立って扱わないで、「死」を論じるよりも「成長戦略」を論じる方がはるかに意義深く見えると佐伯氏はいう。 しかし、かつてないほどの自由が実現され、経済がこれほどまでの物的な富を生み出し、しかも、誰もが大災害でいきなり死に直面させられる今日の社会では、「成長戦略」よりも「死の考察」の方が、実は必要なのではなかろうかという。 「死生観」は、ひろい意味での宗教意識と深くつながっている。 なぜなら、多くの宗教意識は、この現実を超越した聖なるものを想定し、その聖なるものによって人々を結びつけ、また、この聖性によって、人々の現実の生に意味を与えるものだからであるという。 A氏:たいていの社会には、漠然としていても、何らかの宗教意識があり、「イスラム」はかなり明白であるが、米国は「プロテスタント」中心のいわば宗教大国であり、西欧では、かなり薄められたとはいえ、西欧文化のいわば母型として「キリスト教」があり、それらが、ゆるやかに西欧人の「死生観」を形づくっている。 明治の近代日本では、「神道」の国家化と反比例して「仏教」は排斥され、戦後になると、すべて宗教の立場は著しく低落し、宗教は、近代社会の合理主義や科学主義、自由主義や民主主義とは正面から対立するとみなされ、そして、近代以前に人々が自然にもっていた「死生観」も失われていった。 私:先日、「オウム真理教」の元幹部たちが死刑に処せられたが、もしも、われわれが、多少なりとも「仏教」の教説を知っておれば、この団体が若い人たちにこれほど大きな影響力をもつことはなかったのではないかと思うと佐伯氏はいう。 佐伯氏は、そういうが、「オウム真理教」はもともと殺生を禁ずる「仏教」の一派をもとにしていて、ヨガ道場を皮切りに麻原は独自の考えを発展させ、いわゆるキリスト教の終末思想のように、倒錯した世界観を形成させる。 罪の多い現代地球人は一旦半絶滅させてカルマ(宿業)を強引に清算しないと救われない、自分たちがそれを実行しないといけないになっていき、要は、徳の高い自分たちが、殺してあげて魂を一旦宿業清算し、後は自分たちが真理に基づいた文明を作るという妄想を持つ。 これを信じた信者がサリン事件まで起こす。 A氏:その意味では、戦後の「宗教意識」の排除が、逆に、秘教的なカルトへと安易に寄りかかる道を開いたとも思われ、佐伯氏のいうように、「オウム真理教」に走った若者を既存「仏教」が吸収できなかったのは、問題だったね。 「仏教」の教えの根底には、現世の欲望や我執を否定し、無我や無私へ向かい解脱を願うという志向があり、「さとり」を開くことによって生への執着や死の恐怖を克服しようとするところがある。 これは、西洋のような「絶対神」をもってきて、神との契約の絶対性や神の教えの道徳的絶対性を説くやり方とはかなり異なっていて、西洋では人は神に従属しているが、日本の「宗教意識」においては絶対的な神は存在しない。 むしろ、清明心であれ、静寂であれ、無常観であれ、「無」へ向かう性向が見られることは間違いないであろうと、佐伯氏はいう。 私:佐伯氏は、もしもこのような「宗教意識」が今日のわれわれにある程度共有されておれば、これほど騒々しく他人の非を責めたて、SNSで人を誹謗し、競争と成長で利益をえることばかりに関心を向ける社会にはならなかったのではないかと思われ、今年から学校では道徳が教科化されたのなら、ぜひとも、日本人の「宗教意識」や世界の宗教の簡単な解説ぐらいはすべきではなかろうかという。 ブログ「オウム真理教と閉塞の時代 危機感植え付け遊びを本気に」でふれたように、高度経済成長も一段落した1960年代の昭和の終わりの若者の鬱屈を片山杜秀氏が指摘し、それが「オウム真理教」は吸引したように、佐伯氏は、現在の「宗教意識」を論じるよりも「成長戦略」を論じる方がはるかに意義深く見える世相の「鬱屈」を指摘しているようだね。 「オウム真理教」に走った若者のことを考えると再発防止の一つとも言えるね。
2018.08.06
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私:中国の習近平国家主席は任期撤廃による「終身制」で、権力集中を進め、強固な権威を築いてきたが、習氏へ過剰な礼賛が続く状況に個人崇拝との批判が噴出しはじめた。 中国共産党の指導部や長老らは毎年夏、河北省の避暑地、北戴河に集まり重要案件を非公式に議論するが、市街地のあちこちに党のスローガンを掲げた看板などに、習氏の政治理念「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」は、「習近平」の文字を抜いた表記が目立った。 党関係者は「7月に入り、習氏個人への直接的な礼賛を抑えるよう党宣伝部から指導があったようだ」という。 メディア関係者によると、習氏の扱いが個人崇拝を進めた毛沢東に近づき、「時代に逆行している」などの批判が内部からも出ていたという。 党中央宣伝部長が、7月25日に兼務していた国務院新聞弁公室主任の職を突然解かれたことも、宣伝戦略の見直しとの関係で関心を集めている。 A氏:習氏の権力集中への批判に火をつけたのは市民や知識層の動き。 習氏の顔写真に市民が墨をかける事件が上海で起きた。 清華大教授が国家主席の任期撤廃を批判する論文を発表したりする事件が続いた。 今月1日には山東大学の元教授が米政府系放送局「ボイス・オブ・アメリカ」の電話取材で「政府は貧困対策を後回しにして海外に金をばらまいている」などと発言し、当局が生放送中に連行する騒ぎとなった。 私:これまで封じられてきた異論が噴出する背景には、党や政府が課題への対処に手間取り、指導力に疑問の目が向けられていることも関係しているようだ。 国内では7月中旬に明るみに出た、狂犬病ワクチンの不正製造の問題が収束せず、衛生当局筋は「問題は全国的に広がる可能性もある」とみる。 米中の貿易摩擦も出口がみえない。 7月31日の党政治局会議で景気対策を優先する経済政策の転換が議論されたが、党関係者は「(貿易摩擦の)影響はある程度覚悟せざるを得ない」として、交渉を担当してきた劉鶴副首相の責任論が出ているとの情報もある。 党関係者は「国の安定と発展には権力集中が必要だと党の多くの者が理解している」と習指導部に揺らぎがないことを強調しつつ、「『終身制』がありえないことは明確にする必要があるのかもしれない」とも語ったという。 どうも「終身制」には無理があるようだね。 米中の貿易摩擦や南シナ海問題もどう影響するだろうかね。
2018.08.05
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私:片山杜秀氏は、1980年代にオウム真理教が成長していく背景を日露戦争後の1900年代と比較しているね。 日露戦争の勝利で維新以来の右肩上がり志向も一段落し、若者は何をしていいか分からない閉塞感が漂うのを石川啄木は敏感に論じた「時代閉塞の現状」を書いたのは1910(明治43)年。 一方、高度経済成長も一段落した1960年代の昭和の終わりにも、やはり若者の鬱屈をオウム真理教は吸引して成長し、文明は行き詰まっている! 人間自体が変わらねば! 理性ではなく霊性や超能力を問題とした。 オウム真理教はもともと殺生を禁ずる仏教をもとにしていたが、その一派である阿含宗(オカルト)の考えから出ていて、ヨガ道場を皮切りに麻原は独自の考えを発展させ、いわゆるキリスト教の一神教の終末思想のように、倒錯した世界観を形成させる。 A氏:実は啄木の活躍期も、千里眼や念写のブームと重なっていた。 右翼革命家、北一輝が『国体論及び純正社会主義』(『北一輝思想集成』所収、書肆心水・7452円)を著したのは明治39年。 そこで北は、天皇の霊性に照らされた日本人が人類から神類にすぐ進化しうると説き、ダーウィンの進化論を応用した疑似科学的記述がいっぱい。 大正に入ると世間では「手かざし」による病気治療や特殊な食事による体質改善が流行し、閉塞と超能力の時代は明治末・大正期にもあった。 御船千鶴子(1886-1911)は透視能力者で、日露戦争で軍に関する予知を命中させたり、当時の三井合名会社からの依頼で透視を行い万田炭鉱を発見し、現在にすると約2000万円の報酬を得たりしたという。 長南年恵(1863-1907)は大人になってからも肉体、精神ともに子どものようだったといわれており、何もない空中から水を発生させることができ、その力で心霊医療を求める人が後を絶たず、無免許による医療行為で逮捕されたが、裁判中に空気中から水を取り出す実演をすることで最終的には無罪の判決が出ているという。 私:だが、疑似科学はじきに見破られるし、それでも似た真似を続けるとすれば「ごっこ」にならざるを得ない。 「遊び」と「本気」の違いは、やめられるのが「遊び」で、「いちぬけた」となり、無責任、刹那主義、思いつきとなり、昨日千里眼、今日手かざし、明日断食という具合。 かくして「ごっこ」も短命に終わりそうだが、そうならないときもあり、「ごっこ」の内部で非常時を演出し、外部に敵を作って内部の凝集力を強め続けられたとき。 麻原は、教団が外部から毒ガス等で攻撃されていると主張し、信者に危機意識を植えつけ、カリスマのもとで敵に向かって結束。 世の中からはみ出ているというコンプレックスの共有が、内部の一元化・同質化と、外部に対する攻撃性を相乗的に高める。 この回路が働き出すと容易に止まらず、「遊び」が「本気」に化ける。 1930年代のファシズムの本質はそれ。 教団ぐるみで起きることは国ぐるみでも起きる。 A氏:麻原がオウム真理教を設立してから死刑になるまで31年。 北一輝が「国体論及び純正社会主義」を刊行して右翼のカリスマとなり死刑になるまで、やはり31年。 最初に異常な何かとして現れたものが装いを変えて一般化するのに程よい長さなのかもしれず、北は2・26事件に連座して銃殺刑に処せられたが、そのとき北の夢見たファシズム的体制は日本国家によってかたちにされつつあった。 オウム真理教のファシズム的性向を、閉塞する現代日本は無意識になぞっていないかと、片山杜秀氏は指摘する。 私:しかも、オウム真理教はテロの高度科学技術化という点では世界史的に突出。 戦前の右翼テロは刃物や拳銃で、戦後の新左翼のテロも手製爆弾だが、オウム真理教は化学兵器を都心で使用し、国家と見紛う武装を民間でなした。 もしもオウムとドローンが結びついていたらと、ポスト・オウム時代のテロへの想像力がふくらむ。 片山氏は、「オカルト、ファシズム、テクノロジーのトライアングルとして、オウム真理教が改めて見つめ直されるべきだろう。同じ穴に落ちないために」という。 オウム事件の謎はまだ深いね。
2018.08.04
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私:この連続する暑さの「異常」さは今まで経験したことのないものだね。 しかし、気候変動で、この夏の暑さは「異常」でなく、これからは「普通」になるだろうという。 A氏:環境省が推奨する暑さ対策の一つに「日傘や帽子を使う(帽子は時々外す)」とあり、日差しを遮る有効な手段の一つとして、改めて日傘に注目が集まっているが、問題はこれまで男性にはなかなか広がらなかったことだ。 俺も何か男として、日傘をさすのが、気がひけるね。 私:この記事を書いた男子の記者(28)は、2日午後3時すぎ、厳しい日差しがアスファルトに照りつける銀座の街を歩いてみた。 数分で額から汗がしたたり落ち、持参した温度計は36度を指した。 女性はあちこちで日傘を開いているが、男性の日傘は見当たらないが、記者は勇気を出して日傘を開いた。 日傘で、頭から胸にかけて日陰ができ、頭上の熱が引いていくが、すれ違う人たちがちらっと自分を見る視線が気になるという。 この傘は猛暑が続いていた先月下旬、記者が生まれて初めて買ったもので、黒地に白いチェック柄の折りたたみタイプで雨晴兼用で、「紫外線カット率99%以上」とある。 A氏:環境省は2011年、上着を脱いで日傘を差すと発汗量が2割抑えられるという調査結果を発表。 「男性用日傘の商品開発・普及も必要」と呼びかけた。 高知県四万十市で当時の国内観測史上最高の41・0度を記録した13年には、猛暑で男性向け日傘の売り上げが伸びたことを多くのメディアが取り上げ、「日傘男子」が新語・流行語大賞の候補になったが、普及には至らなかった。 私:ところが、連日最高気温が30度台後半を記録している今年は変化の兆しがあるようで、銀座ロフトでは、暑さが厳しさを増した7月中旬から男性向けの日傘の売り上げが急増。 7月上旬の6倍ほどになり、若いビジネスマンから年配者まで幅広い年代が購入しているという。 SNSでは、日傘デビューを報告する男性も続々出ていて、その1人、福島県郡山市に在住の30代男性は7月21日、ツイッターに「10年早く買っとくべきでした。外を歩く全ての男性に超おすすめ」と投稿。 尋ねると、前日から通勤などに日傘を使い始め、「外を歩いた後もあまり疲れない。外出への抵抗が薄くなりました」と、効果を実感しているという。 日本洋傘振興協議会の担当者も「今までにない広がりを感じている」といい、同会では5年ほど前からホームページなどで男性の利用を呼びかけ、昨年は埼玉県に男性用日傘20本を提供。 A氏:銀座を「日傘男子」でためしに歩いた記者は「体感でも効果は間違いないが、日傘を差して街を歩くのはやはり気恥ずかしい。周囲の目線が視界に入らないように、日傘を前に傾けて隠れてしまう」という。 5年ほど前から日傘を使っている「ベテラン」の哲学者で早大教授の森岡正博氏に、その抵抗感について話すと「自分が思うほど注目されていないですよ」という。 私:森岡氏は、「日傘を差す男性がまだ少ないが、男らしくない、という見方は薄まってきたように思う。ここ数年、ジェンダーの境界はあいまいでいいという考えが少しずつ広がっているのでは」という。 今日は、日中の外の暑さで体調がよくなかった。 明日、外出するときは、家内の小さな雨傘兼用の傘で外出するか。 ある意味、この暑さへの挑戦だね。 そして、これは「異常」でなく「普通」の夏のダンディな男子スタイルにする第一歩だね。
2018.08.03
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私:異常な猛暑で家のクーラーはつけ放し。 特に急ぐ用事がなければ、外出とりやめ。 8月も全国的に気温が高くなりそうだが、しかし、今夏も電気が足りなくなることはなさそうだという。 省エネの定着や再生可能エネルギーの普及で、十分な供給力を確保できる見通しだからで、政府は夏の節電要請を3年連続で見送っている。 日本では西日本豪雨に続いて記録的な猛暑、世界でも米国や北アフリカ、インドで50度を超えるなど異常気象が続いているが、これらは地球温暖化の影響かどうかについて、ロックストローム氏は、答えは科学的にとても複雑で、『イエス』とも『ノー』とも言えるという。 世界の平均気温は産業革命前より1・1度上昇し、これは異常気象に影響を与えるだろうが、多くの複雑なプロセスが絡み合っていて、そのうちの一つが、気温上昇による大気中の水蒸気の増加。 大気中により多くの水分がたまれば、どこかで放出しなければならないので豪雨が増え、温暖化と豪雨災害を切り離すことはできない。 一方で、個々の異常気象と気候変動を単純に結びつけることはできず、一つの豪雨が直接、温室効果ガスの排出に関連していると証明する方法を、我々は持っていないという。 A氏:温室効果ガスの排出が温暖化をもたらし、温暖化が気候変動を招き、気候変動が気象に影響を与えるという3ステップになっていると、ロックストローム氏はいう。 世界の平均気温は産業革命前より1・1度上昇しているが、それは大気汚染などによるエーロゾル(浮遊粒子物資)に日射を遮る冷却効果があるからで、これがなくなれば1・5度近くに急上昇することを覚えておくべきだという。 地球の気温は、すでに最終氷期終了(約1・2万年前)後で最も高くなっていて、たとえ2度未満に抑えても、影響を軽減するために膨大な適応策が必要になるという。 私:プラネタリー・バウンダリーという用語がある。 人類が安全に活動できる範囲を、数値化したもので、地球の「健康状態」を示す 限界値を超え、回復力を失うと、不可逆的に生態系や環境が悪化し、人類を危険にさらす。 我々が化石燃料から脱却することはもちろん必要だが、それ以上に重要なのは、地球の陸地や海洋の自然生態系が、いまの均衡状態を保とうとする回復力を失わないようにすることで、そのための土台となるのがプラネタリー・バウンダリーの枠組みで、中核が気候システムと生物多様性だという。 ロックストローム氏は、地球の回復力には亀裂が生じていて、それを示す出来事が最近あった。 それは、2015年と16年、増え続けてきた世界の二酸化炭素(CO2)排出に歯止めがかかり、大気中のCO2濃度上昇にもブレーキがかかると思ったら急上昇した。 人間がCO2排出を削減したのに、森林や海などの自然生態系がこれまでのように吸収しなかったからで、森林火災や干ばつが増えてCO2吸収量が減るエルニーニョの年ではあったが、これは、回復力喪失のサインで、自然も潜在的なCO2排出源になり得るという。 A氏:残念ながら、すべての傾向は依然として悪い方向に進んでいるが、一方で楽観的でいられる理由もあり、それは、例えば、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は、急速な技術的進歩もあり、大きなビジネス機会になっていること。 トランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱を表明してから、1年余りが過ぎたが、今のところ悪い影響は出ておらず、実際に離脱できるのは次の大統領選の時期だという。 都市や州、ビジネス界から多くの怒りの声や「パリ協定」を守る機運が生まれ、9月、トランプ大統領に対抗して、米サンフランシスコで『グローバル・クライメート・アクション・サミット』を開くが、悪影響としては気候研究に関する予算は危機にさらされていること。 私:昨日の朝日新聞報道では、「全米405自治体、『パリ協定』実施」として、反トランプの主導のロス市長インタビュー記事が載っている。 市長によると、この405自治体で米国の国内総生産の半分を超え、「連邦政府がパートナーになれば(排出削減すべき対象の)2割程度は貢献する可能性があるが、おそらく8割は我々の住んでいる場所にある」と述べ、自治体の取り組みで実効性のある対策ができることを強調。 日本には、環境対策が経済や雇用にマイナスという考えが、まだ根強く残っているが、ロックストローム氏は、環境問題の解決のために、環境だけに注目するのをやめなければならず、それは経済や雇用、豊かさ、繁栄の問題なのだという。 ただ、変革は急を要し、25年で脱化石燃料の経済を実現し、いますぐ生物多様性の喪失を止めなければならず、そのためには、政治やビジネスのリーダーシップが必要だと、ロックストローム氏はいう。 最近の西日本豪雨に続いて記録的な猛暑は、環境対策が急を要していることを身近に感じるね。 我々は、徐々に地球温暖化による「死滅する恐竜」になるのだろうか。
2018.08.02
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私:安倍政権では、日米、日中、日ロと、首脳外交の予定が持ち上がるたびに、訪問先国への「手土産」づくりのため、経産官僚が企業に協力を要請する光景が定着。 そこでは、経済合理性に基づいた投資戦略などの検討より、目先の案件集めが優先され、ある企業幹部は「後で嫌がらせを受けないよう、ある程度お付き合いせざるをえない」とこぼし、経産省内からは「企業からも『お付き合いしないといけないですか』と言われる。ほとんどは中身がなく意味がない」と疑問の声が漏れる。 「経産省内閣」と呼ばれてきた安倍政権では、首相の最側近とされる首相秘書官の今井尚哉や、首相補佐官と内閣広報官を兼ねる長谷川栄一ら経産省出身の官僚が重用されてきた。 第2次安倍政権発足時には、財務省の影響力が強い経済財政諮問会議とは別に、「日本経済再生本部」を立ち上げ、前経産次官の菅原郁郎や前経済産業審議官の柳瀬ら経産官僚主導で「成長戦略」もまとめた。 しかし、今井や長谷川は経産省が送り込んだわけではなく、安倍との個人的な親密さから起用された「官邸官僚」。 最近の経産省本体は、その「下請け」となる場面が目立ち、政権発足当初の高揚感は失せつつあるという。 A氏:「成長戦略」も、成果をみる134の評価指標で目標達成が明確とみられる項目は半分以下の60。 本来なら、省内でじっくり戦略を練り直すところだが、毎年新たな目玉施策を求める官邸の要求は厳しくなる一方で、「若手は官邸からの宿題をこなすのに精いっぱい。『成長戦略疲れ』だ」と経産省幹部はため息をつくという。 私:通産省の「看板」である通商政策でも、8月9日に米ワシントンで開かれる日米二国間の新たな通商協議(FFR)の初会合で、米通商代表部(USTR)代表のライトハイザーとの交渉に臨むのは、内閣官房のTPP等政府対策本部を率いる経済再生相のTPP交渉をまとめた茂木敏充で、通産省ではない。 A氏:エネルギー政策をめぐる議論も通産省の思うに任せない。 7月3日に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」には、経産省が当初明記を狙った「原発の新増設の必要性」の記述はなかった。 幹部が官邸に新増設を明記する方針を打診したが、内閣支持率への影響を気にする官邸官僚に「門前払いされた」(関係者)。 経産省OBは「専売特許のエネルギー政策さえ、官邸の軍門に下った」と嘆く。 私:城山三郎の小説「官僚たちの夏」では、日本の産業政策を牽引し、高度経済成長を支えた旧通産官僚たちの姿が活写されている。 しかし、5年半にわたる長期政権を経て、いまの経産省には、官邸がはめた枠のなかで動かざるを得ない閉塞感が漂うという。 「成長戦略」の実現も危なくなってきたね。 財務省、文科省と続いた官僚の劣化現象が通産省まで伝播する恐れも出てきた。
2018.08.01
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私:「孤独」問題はすでに「人間関係の質の低下 孤独の病、助長するSNS」と、英国が今年1月、孤独担当相を新たに設け、国家として孤独問題に取り組む姿勢を鮮明にした「英国人、実は孤独? 成人の5人に1人実感」のブログでもふれている。 インタビューした3人のうち、家・田中慎弥氏は「孤独」経験者の話し。 したがって、他の2人の意見を中心にまとめよう。 まず、岡本純子氏は、体験から、日本人は一つの会社に長く身を置く傾向があり、会社というムラ社会の内部で重視されるのは、上意下達のタテのコミュニケーション。 タテ社会だね。 しかも、内の人との和を大切にしすぎて、望まない人間関係も強いられ、人と関わることに疲れ切ってしまい、その結果、外の人や異文化とわかり合う努力をしなくなり、フラットなコミュニケーションが苦手になるという。 また、日本では、定期的に集まる教会、市民団体などでの活動などがあまり身近になく、人と人とのつながりや信頼関係を意味する、「ソーシャルキャピタル」の充実度のランクは149カ国中101位と、先進国で最低。 最近の「1人で十分」「つながりはいらない」という、「孤独」美化の風潮が、日本人の「孤独」化を悪化させることを岡本氏は危惧している。 引きこもり、介護、貧困、いじめなどの社会問題は、誰ともつながらず、「孤独」であると深刻化し、様々な事件でも「周囲からの孤立」が背景にある場合が多いという。 A氏:「英国人、実は孤独? 成人の5人に1人実感」や「人間関係の質の低下 孤独の病、助長するSNS」でもふれていたが、孤独は健康にもよくない。 米国の前公衆衛生局長官は、「病気になる人々の共通した病理は孤独だった」という論文を発表。 岡本氏は、日本も孤独対策を急がなければ、手遅れになり、急がないと、「一億総引きこもり」の時代が来てしまうという。 私:南後由和氏は、「孤独」を客観的な「ひとり」という言葉で、都市空間の中の「ひとり」のあり方を研究してきたという。 戦後は進学や就職で上京し、単身になるパターンが定着し、現在はカプセルホテルやひとりカラオケなど、「ひとり」向けの空間が膨大に存在し、都市は「ひとり」を集める機能があり、「ひとり空間」の集積は自然。 都市に「ひとり」が多いのは当然だが、近年、災害などで、隣人さえ知らない都市住民の孤立した生活ぶりや、地域コミュニティーの希薄さが明らかになり、「絆」や「みんな」が強調されるようになって、「孤独」が問題視され、「孤独」が解決すべき問題として注目され始めた。 その間も、都市の単身者は増え続け、30~40代の独身女性が「おひとりさま」という言葉で消費の主役とされる一方、単身高齢者の「孤独死」などで、「無縁社会」といった言葉も登場。 単身高齢者の増加は、解決すべき社会問題で、南後氏が現在滞在中のオランダでは、ある高齢者施設で若者を無料で入居させ、世代間の交流を促進している。 A氏:スマートフォンによる「常時接続社会」で、他者とつながり続けたい気持ちと、他者から切り離されたい気持ちがせめぎ合っているという。 いまは複数のSNSのアカウントで、属する「みんな」を使い分ける人もいて、「ひとり」と「みんな」は簡単に切り替わり、その間にもグラデーション(濃淡)があり、「孤独」の ありようは、SNSごとや個人ごとにさまざまな形を取り始めていると南後氏はいう。 私:しかし、米国では、ブログ「人間関係の質の低下 孤独の病、助長するSNS」で述べているように、ソーシャルメディアを長時間使用している人の方が寂しい思いをしているというだけではなく、インターネットを長時間使う人は、すぐそばの隣人と接して、世話をし合ったり、手を差し伸べたりすることがずっと少ない傾向にあり、近隣住民の社会構造において、何か大きな変化が起きている。 岡本氏がいうように、日本も「孤独」対策を急がなければ、手遅れになり、急がないと、「一億総引きこもり」の時代が来てしまうね。いう。 特に日本は少子高齢化先進国だけに、対策が急がれるね。
2018.07.31
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私:タイ軍事政権のプラユット暫定首相は9日夜、北部チェンライ郊外の洞窟に閉じ込められた少年ら13人の救出活動の現場を訪れ、「命を守ることが最も重要だ。政府のお金をいくら使っても問題ではない」と言って、家族や救助隊を激励。 結果、全員救出で、「軍政幹部はとにかくほっとしただろう。作戦が失敗すれば、中心となった軍のメンツはつぶれ、批判の矢面に立つところだった」と外交筋は指摘する。 プラユット氏は7月中旬の世論調査でも、次期首相にふさわしい人物の首位を保った。 A氏:クーデターで軍が実権を握ってから4年が過ぎ、民政移管に向けた総選挙の実施を引き延ばし、批判を浴びながらもプラユット氏が一定の支持を得ているのは、政争による混乱が続いたタイの政治に、力による抑え込みとはいえ「安定」をもたらしているからだろうと、貝瀬氏はいう。 だが、総選挙の先送りにも限界があり、軍政は6月末、来年2~5月の間という日程に言及したが、軍政がいま腐心しているのは、選挙後いかに軍の影響力を残すかだ。 プラユット氏を再び首相の座につけるべく「親軍政党」が動く、とのシナリオが語られているという。 その中核になるとみられている新政党「国民国家力党」の内部には、クーデターで追いやられたタクシン元首相派にかつて属していたメンバーもいて、タクシン派の元議員らのさらなる引き抜きを画策しているという。 「かなりの処遇を約束されているようだ」と政界筋は話す。 私:反軍政の立場を鮮明にする新政党「新未来党」のタナトーン党首は、こうした動きを「私もやろうと思えば買収はできるが、そういう人々はまた誰かに買われる。私は、強くて長持ちする新しい家を建てたい」と切って捨てる。 タナトーン党首は、自動車部品大手の創業者一族出身の39歳で、大学時代は学生運動に力を注ぎ、軍の政治介入に反対し、軍政下で制定された現憲法の廃止を主張し、格差の解消や分権、マイノリティーの権利擁護などを掲げる。 「新未来党」の支持率は世論調査で今のところ4位につけ、総選挙になれば一定の存在感を示すとみられるが、組織はまだ弱く、タナトーン氏自身、「長い時間をかけた戦いになる」と認めつつ、「この国の非民主的な土台を揺さぶり、崩していきたい。可能性は日々、大きくなっていくと思う」と語る。 A氏:支持者も、その覚悟に付き合う構えで、中小企業オーナーの男性は「軍政や既成政党の古い考え方や体制が、若い世代の足かせになってきた。この党は新しい解決を導ける」と期待を寄せる。 貝瀬氏は「意識の変化は感じられる。新しい風はどこまで吹くのか。この目で確かめていきたい」という。 私:今、問題になっているカンボジアの選挙は、人民党の「1強支配」を強めるだけで、厳しい評価にさらされいぇいるが、同じアジアのタイの民主主義の未来はどうなるだろうか。
2018.07.30
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私:「格差」と「不平等」との違いについての大野博人氏の指摘にはなるほどと思ったね。 それは、成立した改正公職選挙法で、議員1人あたりの人口の「格差」が1対3・08から2・985に縮小したということだが、背景にこれを「格差」と呼ぶレトリックがあるというわけだ。 問題のより本質的でより正確な名前は1票の「不平等」であって「格差」ではないと大野氏はいう。 取り組まなければならないのは、「格差」の縮小というより一票の「不平等」の解消のはず。 確かに、「不平等」には、本来実現しなければならない「平等」が損なわれている、という含意があり、「格差」ではそれが置き去りにされがち。 A氏:そういう視点からみると、「不平等」から「格差」への言い換えは、1票の重みについてだけ見られるわけではなく、経済、世代、男女、教育、情報など、ほかの多くの問題の語り方にも入り込んでいるというわけだ。 京都女子大学客員教授の橘木俊詔氏の1998年に出版した著書「日本の経済格差」は、日本に「不平等」が広がっているといち早く指摘、分析して反響を呼んだ本だが、「最初は書名に『不平等』という言葉を使おうとしたのだけれど、編集者と相談して『格差』になった」という。 橘木氏は、「『不平等』というと過激な思想を連想されそう。だから当時、書名をオブラートに包もうとしたのだと思う」という。 その後2006年に著した「格差社会」も前作以上に話題となったが、橘木氏は、「でも、たしかに英語や仏語の世界では同じ問題を『不平等』として論じている。私も英語で書くときは『不平等』を使う。悩ましいところです」という。 私:公的機関やメディアでも日本語での記述には「格差」の方が目立つ。 たとえば経済協力開発機構(OECD)のリポートで英語の原文が「所得の不平等」でも、邦訳では「所得格差」になる。 新聞などで「経済的不平等」という言い方が使われるのはグローバル世界や外国のニュースのときが多く、日本についてはたいてい「格差」。 「格差」の言葉によってさまざまな「不平等」がイデオロギーの次元から解放され、議論しやすくなったという面はあるのかもしれないが、同時に肝心な部分を見えにくくしたのではないかと大野氏は指摘する。 まさに「格差」ではポイントがぼけるね。 A氏:この本質的な問題を見えやすくするために、大野氏はこれからは各選挙区の投票用紙に正確な「票数」を記しておいたらどうか と提案。 一番人口が少ない選挙区と比べて「あなたが行使できる投票権は3分の1人前」とか「2分の1人前」というように。 あるいは、自分の票の重みがどう変わったかわかるようにしてもいいように、「前回までは3分の1人前以下でしたが、法律の改正で2分の1人前に少し近づきました」とか。しかし、これでは、有権者が議員を選ぶのでなく、議員が有権者を選んでいるようだ。 これで「前より平等になった」と喜ぶ有権者がいるとは思えないと大野氏はいう。 私:「格差」が縮小したと言ってごまかし、有権者を「3分の1人前」扱いする「不平等」を放置したまま、どうやって議員の信頼を回復できるだろうかと大野氏はいう。 まさに、国民は「格差」と「不平等」のレトリックから脱すべきだね。
2018.07.29
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私:明治新憲法の制定については、伊藤博文ら政府の限られたメンバーで密室で行われたということをよく記憶しているが、実は、「民権憲法」は各地の結社を中心に各層の「公議公論」によってつくられたということがあり、これを本書は明らかにしているようだ。 A氏:保阪氏の見立てでは、近代日本の草創期、選択すべき国家像には次の四つのタイプがあった。 (1)先進帝国主義の後追い (2)帝国主義的道義国家 (3)自由民権思想の国家創設 (4)幕藩体制を継承する連邦制国家 だが、明治初年代から10年代には(3)の民権国家の誕生もありえたという。 それほど自由民権運動は広がった。 本書は、その運動の広がりの中で自主的に憲法草案をまとめた西多摩地域・五日市の人々、とりわけ条文を書いた千葉卓三郎の軌跡に、研究者としての著者自身の歩みをからませたもの。 著者は、50年前の大学生時代、五日市町の旧家(深沢家)の蔵を開けた折に、一私人による憲法草案を発見。 それを歴史の中に位置づけるのが自らの仕事になったという。 A氏:この草案は全5篇からなり、国帝、公法、立法権、行政権、司法権といった構成で204条にまとめられていて、第1篇の「国帝」の条文には、国帝の権利として「軍隊に号令し、敢て、国憲に悖戻(はいれい)する所業を助けしむることを得ず」(第22条)とあり、軍隊に憲法に違背する行動は起こさせないとの意味だという。 「立法権」では民選議院にふれ、議員は20万人に1人、任期は3年、2年ごとに半数改選と民主的方向を模索する。 私:本書によると、全国の民権結社は、1874年から90年までの17年間で2128を超えたといい、これらの組織が中央政府への自由民権運動の下支えになっていた、と著者は見る。 つまり、「民権憲法」擁護の勢力でもあった。 明治憲法が伊藤博文ら政府の限られたメンバーで密室で行われたのに対し、「民権憲法」は各地の結社を中心に各層の「公議公論」によってつくられた、との著者の分析は興味深いと評者はいう。 A氏:明治天皇の五箇条の御誓文の第1条の「広く会議を興し、万機公論に決すべし」は、まさに、「民権憲法」作成過程でみられたんだね。 明治憲法制定により帝国議会が開設されるまでの間、自由民権派は御誓文の第1条の実現を求めて政府に対する批判を繰り返していた。 私:評者は「五日市憲法にも植木枝盛の私擬憲法草案の影響が見て取れる。起草者・千葉卓三郎の生涯を追った数々のエピソードにも、明治草創期の躍動が反映していて、『民権憲法』が主流になっていれば、との思いに改めて駆られる」という。 今年は、明治維新150年だが、明治の「万機公論」は消滅しているような今日この頃だね。
2018.07.28
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