全4件 (4件中 1-4件目)
1
明日からもう三月だ。 二月はわたしの誕生月であると同時に、辛い思い出の月でもあった。 離婚したのが二年前の十月末で、それからわずか三ヶ月ばかり経ったわたしの誕生日に、彼は余命宣告を受けたのだ。 別れても尚支払っていた彼のがん保険証書を、娘に持たせたことがそれを知るきっかけとなった。 あれよという間に入院し、去年の夏、彼は二度と帰らぬ人となったのだった。 がんセンターの、誰もいない待合ホールは誘導灯の青い光がほの明るかった。 わたしは彼に背を向けて、嗚咽をこらえていた。 「ごめんよ。ちゃんと立ち直ったら、皆を一つ屋根の下に呼ぼうと思っていたんだけど。こんな身体になっちゃった。でも、がんばって必ず治すから。とにかくこのままでは死ねないんだよおれ」 そう言いながら、わたしの背中に手を置いて、いつしか優しくさすってくれた。 わたしは悔しかったのか、悲しかったのか。 そのどれも当てはまらない自分の気持ちの正体を、人影のない待合ホールの長椅子に座って、懸命に探していた。 「あなたはずるいよ。ひどいよ。わたしより長生きするって、生命線が長いからっていつも言ってたのに。嘘つき」 腹の底から沸き起こる怒りに似たやるせない感情を、命の期限を突きつけられた病人の彼に、ただ突きつけていた。 一番悲しくて辛いのは、わたしだよ。 ヒステリックに叫ぶばかりのわたしに、そのとおりだと大きな身体を深く半分に折った。 今でも夢をみる。 この時の光景を。 だから、二月の誕生月は、わたし。 はしゃぎまくる。 こんなことを思い出さないために。 だけど、彼の誕生日もやはり二月で、そのことも思い出さないように、はしゃぎまくるのだけれど、ふと何もかもが押し寄せて、切ない二月となるのだった。 明日から三月。 わたしにとっては、一歩踏み出す月になる。
2006年02月28日
コメント(0)
誕生日に、懐かしい人からメールが入った。 本日なのかどうか、自信がなさそうにくれたメールだったけれど、ドンピシャリの当日である。 ああ、憶えていてくれたのか、とすごく嬉しかった。 だから、速攻でメールを返した。 最近、わたしはヒップホップダンスを始めた。 目的は、ただ汗を思い切りかくためなのだが、中々若者についてはいけないのが現実である。 悲しい思いや、辛い思いも味わうのだが、最近ようやく楽しいかもしれない域に来た。 そんな思いをメールに乗せて返した。 誕生日の昨日から、わたしは年をひとつずつ返して行くことにした。 だから、わたしは年々若くなる予定。 次は何を始めようかしら?
2006年02月11日
コメント(6)
柔らかな午後の陽射しの中で、ほんのひととき眠ってしまった。 借りてきたDVDの、ドラマのストーリーは途中が抜け落ちている。 ちゃんと見るつもりでいたのに、ついうっかり目を閉じてしまったようだ。 少し戻してモニターに目を戻したのもつかの間で、またうとうとが始まった。 どうやらこの柔らかな陽射しがいけないらしい。 数回同じことを繰り返し、DVDは諦めた。 このまま眠ってしまおうと、リモコンのボタンはオフにした。 なんて素敵な時間だろうか。 襲う睡魔に身を委ねたまま、何も考えずに眠りに落ちることの……。 ソファーにもたれて、家事を放棄した。 こんな休日があっても良いじゃない。 少し開き直った自分に、苦笑する。 午後のまどろみは、ほんの少しだけわたしを怠惰へといざなった。
2006年02月05日
コメント(2)
先日の大雨。 春の兆しかなーと思う。 母の「これからは一雨ごとに春が来るのよ」という言葉を思い出す。 辛いなーと感じていても、冬はいつしか春に変わるから、わたしもなんとか前に足を出せるのだ。 目まぐるしい日常のほんのひととき。 淹れ立ての珈琲をすすりながら、その雨音に耳を立てる。 もしかして、これってものすごく素敵に幸せなのかもしれない。 そして豆まきが終われば、暦の上では春である。 子供が育ちあがった今。 いつしか豆まきの習慣も端折ってしまった。 今夜は、久しぶりに豆まきをしてみようか。 年の数だけ豆を食べて、新しい季節の到来をるんるんと楽しむのも悪くない。
2006年02月03日
コメント(6)
全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()

