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孫子 虚實第六その8 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 故形兵之極、至於無形。 無形、則深間不能窺、智者不能謀。 因形而措勝於衆、衆不能知。 人皆知我所以勝之形、而莫知吾所以制勝之形。 故其戰勝不復、而應形於無窮。 故に兵を形すの極は、無形に至る。 無形なれば、則ち深間も窺うこと能わず、智者も謀ること能わず。 形に因りて勝を錯(お)くも、衆は知ること能わず。 人皆な我が勝の形を知るも、吾が勝を制する所以の形を知ること莫し。 故に其の戦い勝つや復(くりかえ)さずして、形に無窮に応ず。 The ultimate skill is to take up a position where you are formless. If you are formless, the most penetrating spies will not be able to discern you, or the wisest counsels will not be able to do calculations against you. With formation, the army achieves victories yet they do not understand how. Everyone knows the formation by which you achieved victory, yet no one knows the formations by which you were able to create victory. Therefore, your strategy for victories in battle is not repetitious, and your formations in response to the enemy are endless. ◆コメント ▼「究極の技能は,態勢に決まった型がない,というものである。 型がなければ,いくら深奥部に入り込んだスパイでも(方針を)見分けられない。 いくら優秀な軍事顧問でも対応作戦を立てられない。 布陣をもって軍隊が勝利しても,どうやって勝ったのかは分からない。 誰もがその布陣で勝利したことが分かっていても,どのようにして勝利を作り出したのかという型を知る者はいない。 だから,戦いに勝つ戦略は同じ事が繰り返されることはなく,敵軍へ対応するための型の変化は無限となる」という意味。 ▼要するに,考えていることが外から見えるようではダメだ,という話。外から見ても,味方から見ても,とにかく勝ったと。でも,なぜ勝ったかは分からない。とにかく勝ったのだと。そういう境地が軍師の究極だという話だ。同じ事は繰り返さないというクリエイティブさ。これは,勤勉でないとできないね。それだけたくさんの戦争をするというのかどうか分からないけど。(笑い) 相手が変わり,時期が変わり,場所が変わり,味方も変われば,当然,戦い方も変わるという話だが,こういう変化を無視して同じパターンを繰り返す組織運営もまだまだ多いような気がする。それだけにこの話,参考になる。 ▼ポーカーフェースという言葉も連想する。あるいは,ハードだけ見ても肝心のソフトがどうなってるのか分からない,ということでもあるだろう。ソフトを作るのは軍師なので,軍師が型を外に表さなければ,スパイでも,分析専門官でも何をやろうとしているのか分からない。今の時代も,戦略の熟達者がしのぎを削っているのだろうね。素人にはさっぱり分からないが,これも孫子が衆不能知と言うとおりだ。 ▼もうひとつ。型は同じでも対応する精神が違うということもありそうだ。フランスで30年以上,剣道の指導者をしている好村兼一氏の著書「剣道再発見」(2007年,剣道日本社刊)を見ると,そんな気がする。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 31, 2007
孫子 虚實第六その7 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 故策之而知得失之計、作之而知動静之理、形之而知死生之地、角之而知有餘不足之處。 故にこれを策(はか)りて得失の計を知り、これを作(おこ)して動静の理を知り、これを形(あらわ)して死生の地を知り、これに角(ふ)れて有余不足の処を知る。 Therefore, know the enemy's plans and calculate their strengths and weaknesses. Provoke him, to know his patterns of movement. Determine his position, to know the ground of death and of life. Probe him, to know where he is strong and where he is weak. ◆コメント ▼「敵の計画を知り,得失を計算する。 挑発して,敵の動きのパターンを知る。 敵の態勢に結論を下し,死地と生地を知る。 敵を調査し,どこが強く,どこが弱いかを知る」という意味。 ▼ここの英語では,得失=strengths and weaknesses,有餘不足=where he is strong and where he is weakとなっている。要するにここは敵を観察したり,刺激したり,調査する話だ。勝つためには敵を知る必要がある。その具体的方法を述べている。特にちょっと敵に刺激を与えてみて(ProvokeとかProbe)どういう反応をするかを見るなどの方法は,今でもやってそう。ヒステリックに反応するのが良いのか,無視するのが良いのか。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 30, 2007
孫子 虚實第六その6 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 寡者、備人者也。衆者、使人備己者也。 故知戰之地、知戰之日、則可千里而會戰。 不知戰地、不知戰日、則左不能救右、右不能救左、前不能救後、後不能救前、而況遠者數十里、近者數里乎。 以吾度之、越人之兵雖多、亦奚益於勝哉。 故曰、勝可爲也。 敵雖衆、可使無闘。 寡なき者は人に備うる者なればなり。衆(おお)き者は人をして己れに備えしむる者なればなり。 故に戦いの地を知り戦いの日を知れば、則ち千里にして会戦すべし。 戦いの地をしらず戦いの日を知らざれば、則ち左は右を救うこと能わず、右は左を救うこと能わず、前は後を救うこと能わず、後は前を救うこと能わず。 而るを況や遠き者は数十里、近き者は数里なるをや。 吾れを以てこれを度(はか)るに、越人の兵は多しと雖も、亦た奚(なん)ぞ勝に益せんや。 敵は衆しと雖も、闘い無からしむべし。 The few are those preparing to defend against others, the many are those who make others prepare to defend against them. Therefore, if one knows the place of battle and the day of battle, he can march a thousand li and do battle. If one does not know the place of battle and the day of battle, then his left cannot aid his right, and his right cannot aid his left; his front cannot aid his back, and his back cannot aid his front. How much less so if he is separated by tens of li, or even a few li. Based on my calculations, though Yueh's troops were many, what advantage was this to them in respect to victory? Therefore I say, victory can be achieved. Though the enemy is many, he can be prevented from doing battle. ◆コメント ▼「少数になるのは,相手に対して防衛体制を取るからだ。 多数になるのは,相手に防衛体制を取らせるからだ。 もし戦いの場所と日時を知ることができれば,千里でも行軍して戦える。 もし戦いの場所や日時を知ることができなければ,左翼軍は右翼軍を救えないし,右翼軍は左翼軍を救えない。また前の軍は後ろの軍を救えず,後ろの軍は前の軍を救えない。 十里も数理も離れていればなおさらだ。 越軍は多勢だけれども,私の計算によれば,これがどうして勝利に有利な点と言えるだろうか。 だからこう言いたい。勝利は達成できるものだ,と。 敵が多勢であろうが,戦を避けることはできる」という意味。 ▼数の多い少ないが勝利の絶対条件ではない,敵の情報を掴むことによって勝利をものにできる,という話。 資源が少なくても勝てるチャンスはあると孫子は考えていた。そのカギは情報だ。情報をもとに「虚実」というテクニックを使えば,戦うことなく勝利できるというのが孫子の理論。ではどうやって情報を集めるのか。虚実というテクニックはどういうもので,どう使うのか。そこが知りたい。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 29, 2007
孫子 虚實第六その5 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 吾所與戰之地不可知、不可知、則敵所備者多。 敵所備者多、則吾所與戰者、寡矣。 故備前則後寡、備後則前寡、備左則右寡、備右則左寡。無所不備、則無所不寡。 吾が与に戦う所の地は知るべからず、吾が与に戦う所の地は知るべからざれば、則ち敵の備うる所の者多し。敵の備うる所の者多ければ、則ち吾が与に戦う所の者は寡[すく]なし。故に前に備うれば則ち後寡なく、後に備うれば則ち前寡なく、左に備うれば則ち右寡なく、右に備うれば則ち左寡なく、備えざる所なければ則ち寡なからざる所なし。 The place of battle must not be made known to the enemy. If it is not known, then the enemy must prepare to defend many places. If he prepares to defend many places, then the forces will be few in number. Therefore, if he prepares to defend the front, the back will be weak. If he prepares to defend the back, the front will be weak. If he prepares to defend the left, the right will be weak. If he prepares to defend the right, the left will be weak. If he prepares to defend everywhere, everywhere will be weak. ◆コメント ▼「戦いを行う場所を敵に気づかせてはならない。 (戦う場所が)分からなければ,敵は多くの場所を守らなければならない。 多くの場所をカバーしようとすれば,一カ所の兵力は少なくなる。 前線を守ろうとすれば,後ろが弱くなる。 後ろを守ろうとすれば,右側が弱くなる。 右側を守ろうとすれば,左側が弱くなる。 すべてを守ろうとすれば,すべてが弱くなる」という意味。 ▼敵の勢力を減ずるには,無駄遣いさせること。そのため,どこを攻めようとしているのかが分からないようにして,相手にたくさんの場所を守らせるようにすれば兵力は分散されていく。「無所不備、則無所不寡=まんべんなく守りを固めるほど弱くなる」という言葉は至言だ。「あれもこれも」は強さを損なってしまう戦略。あちらを立てればこちらは立たないトレードオフの世界。だからといって,どこかに集中すれば,他の場所に隙が出る。さあ,どうすれば良いのか・・・。攻める側のほうが有利のように見えて来る。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 28, 2007
孫子 虚實第六その4 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 故形人而我無形、則我專而敵分。我專爲一、敵分爲十、是以十攻其一也。 則我衆敵寡、能以衆撃寡、則吾之所與戰者約矣。 故に人を形せしめて我れに形無ければ、則ち我れは専(あつ)まりて敵は分かる。 我れは専まりて一と為り敵は分かれて十と為らば、是れ十を以て其の一を攻むるなり。 則ち我れは衆にして敵は寡なり。 能く衆を以て寡を撃てば、則ち吾が与(とも)に戦う所の者は約なり。 Therefore, if we can make the enemy show his position while we are formless, we will be at full force while the enemy is divided. If our army is at full force and the enemy is divided, then we will attack him at ten times his strength. Therefore, we are many and the enemy few. If we attack our many against his few, the enemy will be in dire straits. ◆コメント ▼「だから,味方の軍の態勢ができていないように敵に見せれば,敵が(攻撃のために)兵力を分けるので,その時に全軍全力を投じるのだ。 味方の軍の態勢が万全で,敵軍が分散しているような場合,敵軍の強みとする部隊を徹底的に繰り返し攻撃する。なぜなら,味方の軍は多勢で,敵軍の勢力は小さいからだ。 多勢で少数を攻めれば,敵は絶体絶命だ」とう意味。 ▼ここで英訳に出てくるdire straits(ダイアー・ストレイツ)はイギリスのロックバンドの名前と同じで親しみが湧く。多勢に無勢という言葉もある。これは「少人数で多勢に向かって,とても敵しがたいこと」の意味(広辞苑)。数が多ければ有利だし,普通は勝つわ,という話。だから多勢の敵は分散して少数にして戦い,敵が少数でこちらが多数のときはどしどし攻めよ,という話になる。原文は難解。ていうか,言ってることが当たり前。こういうときは解釈が助けになるの。しかし,言っていることの本意は,攻めるときは,こちらが有利で強いときであり,しかも,敵が不利で弱いときだ,という話だ。んなこと分かっとるわい。だが,基本というのは,そういう分かりきった当たり前のことを地道にやり続けることができるか,ということだ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 27, 2007
孫子 虚實第六その3 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 進而不可禦者、衝其虚也。 退而不可追者、速而不可及也。 故我欲戰、敵雖高壘深溝、不得不與我戰者、攻其所必救也。 我不欲戰、雖畫地而守之、敵不得與我戰者、乖其所之也。 進みて禦(ふせ)ぐべからざる者は、其の虚を衝けばなり。 退きて追うべからざる者は、速かにして及ぶべからざればなり。 故に我れ戦わんと欲すれば、我れと戦わざるを得ざる者は、其の必らず救う所を攻むればなり。 我れ戦いを欲せざれば、地を画してこれを守ると雖も、敵 我れと戦うを得ざる者は、其の之(ゆ)く所に乖(そむ)けばなり。 To achieve an advance that cannot be hampered, rush to his weak points. To achieve a withdrawal that cannot be pursued, depart with superior speed. Therefore, if we want to do battle, even if the enemy is protected by high walls and deep moats, he cannot but do battle, because we attack what he must rescue. If we do not want to do battle, even if we merely draw a line on the ground, he will not do battle, because we divert his movements. ◆コメント ▼「邪魔されないで前進できるのは,敵の弱点を突いているからだ。 追跡されないで撤退できるのは,素早いスピードで出発するからだ。 だから,たとえ敵が高い壁や深い濠で守りを固めているとしても,こちらが戦いを決意したら,敵は戦わざるを得なくなる。なぜなら,敵が救出せさざるを得ないようなところを攻めるからだ。 こちらが戦いたくないときは,たとえ地上に線を引いただけのような状態でも,敵は戦えない。なぜなら,われらは敵の動きをそらすからだ」という意味。 ▼はぐらかしの技の妙の大切さを説いている。例えば,敵とかち合わないようにする。敵と出くわさないようにする。敵にこちらの動きを読まれないようにする。敵の注意を別の所にそらす。まともに敵と正面から当たると消耗が激しい。だから,自分に有利な環境を作る。その一方で,敵のペースに引き込まれないようにする。敵を知らなければ打てない手だ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 26, 2007
孫子 虚實第六その2 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 攻而必取者、攻其所不守也。 守而必固者、守其所不攻也。 故善攻者、敵不知其所守。 善守者、敵不知其所攻。 微乎微乎、至於無形。 神乎神乎、至於無聲、故能爲敵之司命。 攻めて必らず取る者は、其の守らざる所を攻むればなり。 守りて必らず固き者は、其の攻めざる所を守ればなり。 故に善く攻むる者には、敵 其の守る所を知らず。 善く守る者には、敵 其の攻むる所を知らず。 微なるかな微なるかな、無形に至る。 神なるかな神なるかな、無声に至る。 故に能く敵の司命を為す。 To be certain to take what you attack, attack where the enemy cannot defend. To be certain of safety when defending, defend where the enemy cannot attack. Therefore, against those skilled in attack, the enemy does not know where to defend; against those skilled in defense, the enemy does not know where to attack. Subtle! Subtle! They become formless. Mysterious! Mysterious! They become soundless. Therefore, they are the masters of the enemy's fate. ◆コメント ▼「攻撃するところを必ず攻め取るということは,敵が防御しきれないところを攻めるからだ。 防御するさいに必ず安全を守れるということは,敵が攻撃しきれないところを守るからだ。 つまり,攻めるのに熟達した人に対して,敵はどこを守れば良いのか分からない。 また,防御に熟達した人に対して,敵はどこを攻めれば良いのかが分からない。 これはまさに微妙であることよのう・・・。 決まった形というものがない。 不可思議であることよのう・・・。 音を立てることもない。 すなわち,敵の運命を司る者」という意味。 ▼熟達して,マスターの境地に達した人は,目につくこともなく,耳に聞こえることもない。きわめて自然に,いつの間にか,勝ちが決まる流れになる。負けているはずなのに,いつ負けたか分からない。負けた気がしないけど,勝負はついているという,そういう状態で勝つという話。 普通は見えない流れが見えるのだろう。普通は見えない節目が見えるのだろう。だから流れがどうなるか次々に見通せて先の先の手が打てる。野球でこの打者だったら,次のタマに対してはこう打つだろう,するとこちらにボールが飛んでくるだろうと野手が読む。そしてその場所に立っていると,まさしくそこに打球が飛んでくる。何でもないように処理してワンアウト。でも,見る人が見れば,なぜあの場所にあの野手は立っていたのかを理解して,すごい頭脳プレイだと分かる。大半は分からない。逆に,飛んでくる球を走って大げさに取るファインプレイを喜ぶ。そういうもんだろう。 ▼仕事に熟達していく,ということは,熟達した人の仕事ぶりが読める,味わえるということに他ならない。良い仕事をしたと認めれば,それを伝えよう。分からないのに誉めるのとは違う。分かっていることを伝える。熟達しているからこそ分かる技のキレを認めて,「やるね」と。「分かる?」なんて答えが返ってきたら,最高に楽しいやりとりだ。孫子の言葉の行間から,そういうコミュニケーションを取りたいものだという声が聞こえてくる気がする。これって,おれだけ? ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 25, 2007
孫子 虚實第六その1 SUN-TZU Chapter Six: Weakness and Strength 孫子曰、凡先處戰地而待敵者佚、後處戰地而趨戰者勞。 故善戰者、致人而不致於人。 能使敵人自至者、利之也。 能使敵人不得至者、害之也。 故敵佚能勞之、飽能飢之、安能動之。 出其所不趨、趨其所不意。 行千里而不勞者、行於無人之地也。 孫子曰わく、 凡そ先に戦地に処りて敵を待つ者は佚(いつ)し、後れて戦地に処りて戦いに趨(おもむく)く者は労す。 故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。 能く敵人をして自ら至らしむる者はこれを利すればなり。 能く敵人をして至るを得ざらしむる者はこれを害すればなり。 故に敵 佚すれば能くこれを労し、飽けば能くこれを飢えしめ、安んずれば能くこれを動かす。 其の必らず趨く所に出で、千里を行いて労(つか)れざる者は、無人の地を行けばなり。 Sun-tzu said: Generally the one who first occupies the battlefield awaiting the enemy is at ease; the one who comes later and rushes into battle is fatigued. Therefore those skilled in warfare move the enemy, and are not moved by the enemy. Getting the enemy to approach on his own accord is a matter of showing him advantage; stopping him from approaching is a matter of showing him harm. Therefore, if the enemy is at ease, be able to exhaust him; if the enemy is well fed, be able to starve him; if the enemy is settled, be able to move him; appear at places where he must rush to defend, and rush to places where he least expects. To march over a thousand li without becoming distressed, march over where the enemy is not present. ◆コメント ▼「戦場を初めに占領して敵を待ち受ける側は楽だ。 後からやってきて急いで戦闘になるとやっかいで疲れる。 だから戦さ上手は,軍は動かすものであって,敵によって動かされるものではないと心得ている。 敵が近づくようにするのは,利益を示すからだ。 敵が近づけないようにするのは,害を示すからだ。 だから,敵が安楽にしていれば疲れさせる。 敵の食料が十分なら,飢えさせる。 敵が腰を据えたら,動くようにする。 敵があわてて防衛しないといけない所に姿を見せたり,予想外の場所に駆けつけないといけないようにし向けるのだ。 何千里も行軍しても疲れることがない。敵軍がいないところを行軍するからだ」という意味。 ▼主導権を握っているほうが実,後手に回るのが虚。実が勝ちにつながり,虚は敗北につながる。だから自軍は実の状態にして,敵軍を虚の状態にすることについて述べたもの。イニシアティブを握れ,という話だ。そうしておいて,敵をあの手この手で翻弄する。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 24, 2007
孫子 兵勢第五その8 SUN-TZU Chapter Five: Force 故善戰者、求之於勢、不責於人、故能擇人任勢。 任勢者、其戰人也、如轉木石、木石之性、安則静、危則動、方則止、圓則行。 故善戰人之勢、如轉圓石於千仞之山者、勢也。 故に善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に善く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ。 勢に任ずる者は、その人を戦わしむるや木石を転ずるがごとし。 木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。 故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仭の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。 Those skilled in warfare seek victory through force and do not require too much from individuals. Therefore, they are able to select the right men and exploit force. One who exploits force commands men into battle like rolling logs and boulders. Logs and boulders are still when on flat ground, but roll when on steep ground. Square shapes are still, but round shapes roll. Therefore, those skilled in warfare use force where the troops in battle are like boulders rolling down a steep mountain. This is force. ◆コメント ▼「戦に長けた者は勢いの中に勝機を見い出し,個人に多くを求めようとはしない。 だから,任にふさわしい者を選び,勢いを利用することができるのだ。 勢いをうまく利用した将軍が戦いを指令すると,まるで大きな木や岩が転がり落ちて相手を蹴散らす勢いとなる。 平地に置かれた木や岩は安定している。しかし険しい坂に置けばたちまち転がり落ちる。 四角い形は安定している。しかし,丸い形は転がりやすい。 だから,戦いに長けた者は,険しい山を大きな岩が転がり落ちるような勢いで部隊を戦いの場に投じるのだ。 これを勢という」という意味。 ▼勢に求めて人に求めず,よく人を選んで勢いに任せる,という部分は言葉を補わないと矛盾したことを言っているように思える。人ではない,でも人だ,みたいな。要するに人頼みになりすぎないようにし,適性重視の人選をして,タイミングが一番良いところで「勢」のエネルギーが爆発するようにし向ける,という話のようだ。ポイントは「勢」だ。「勢いに乗ずる戦いをなし,人に戦いの責任を持たせない。人をあてにしないで勢いに任せる」(新釈漢文体系36 孫子,p127)。こう理解すると意味がはっきりしてくる。 ▼よく売れている店も「勢」がある。同じ本でも,店によって魅力的に見えたり,そうでもなかったりするのは,店の勢の中でお客に向かってどどーんと転がってきているかどうかの違いだろう。勢がある店でも,日によってその程度が違っていたりする。こちらの受け止め方もあるだろうけど。では,店が勢を出すにはどうすれば良いのか。リーダーの持つ「勢」に負うところが大きいのではないか。そうすると人の力の比重が大きくなる。だから孫子はここでは勢を強調しているけれども,勢が出るも出ないも人次第だ。結局,人と勢とは分かちがたいものなのだ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 23, 2007
孫子 兵勢第五その7 SUN-TZU Chapter Five: Force 故善動敵者、形之、敵必從之。 予之、敵必取之。 以利動之、以本待之。 故に善く敵を動かす者は、これに形すれば敵必らずこれに従い、これに予(あた)うれば敵必らずこれを取る。 利を以てこれを動かし、詐を以てこれを待つ。(「本」の字は「詐」の誤り) Therefore, those skilled in moving the enemy use formation that which the enemy must respond. They offer bait that which the enemy must take, manipulating the enemy to move while they wait in ambush. ◆コメント ▼「敵軍を動かすのが巧みな将軍は,敵軍が必ず反応するような自軍の態勢を取って見せる。 戦さ巧者は,敵軍が食いつきたくなるような餌をまいておき,敵が動くようにし向けておいて,待ち伏せ攻撃を食らわすのだ」という意味。 ▼闇雲に出て行って戦うなどというアホなことはせず,敵を知り,己を知って,仕掛けを作って,敵を動かして隙を突くという話。戦さ上手は人が悪いのかね。そこへいくと古事記に出てくるスサノオノミコトはノー戦略という感じがする。・・・いや,これも考えてみるとそうでもないか。お姉さんのアマテラスオオミカミの所での振る舞いは戦いでもビジネスでもなかったから,そもそも戦略など必要ないわけだ。それより,ヤマタノオロチを退治する戦闘場面のところでは強い酒を用意して敵が酔っぱらったところを討つのだから,これはそのまま「以利動之、以詐待之」だ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 22, 2007
孫子 兵勢第五その6 SUN-TZU Chapter Five: Force 亂生於治、怯生於勇、弱生於強。 治亂、數也。 勇怯、勢也。 強弱、形也。 乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。 治乱は数なり。 勇怯は勢なり。 強弱は形なり。 Disorder came from order, fear came from courage, weakness came from strength. Disorder coming from order is a matter of organization, fear coming from courage is a matter of force, weakness coming from strength is a matter of formation. ◆コメント ▼「無秩序は秩序から生まれ,恐れは勇気から生まれる,弱さは強さから生まれる。 秩序から生まれる無秩序は組織の問題だ。(乱れるか治まるかは部隊編成の問題だ) 勇気から生まれる恐れは力の問題だ。(おくびょうになるか勇敢になるかは,戦いの勢いの問題だ) 強さから生まれる弱さは隊形の問題だ。(弱くなるか強くなるかは,軍の態勢の問題だ)」という意味。( )内は金谷治(2001)の訳より。 ▼ここのポイントは,秩序or無秩序,勇気or恐れ,強さor弱さは,数・勢・形に由来するから,そこんところを忘れるべからず,ということのようだ。金谷治(2001)によると,「だから,数と勢と形とに留意してこそ,治と勇と強が得られる」ことになる。自分の組織について,その数(部隊の編成),勢い,態勢をよく掴んでおくことが勝利には必要だ,という話。少人数なら少人数の戦い方を選ぶ。勢いは少人数でも不可欠なものだ。どういう態勢formationを取るかも,リーダーのセンスや経験に負うところが大だ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 21, 2007
孫子 兵勢第五その5 SUN-TZU Chapter Five: Force 激水之疾、至於漂石者、勢也。 鷙鳥之疾、至於毀折者、節也。 故善戰者、其勢險、其節短、勢如○弩、節如發機。 激水の疾(はや)くして石を漂すに至る者は、勢なり。 鷙鳥の撃ちて毀折に至る者は、節なり。 是の故に善く戦う者は、其の勢は険にして其の節は短なり。 勢は弩をひくがごとく、節は機を発するが如し。 The rush of torrential waters tossing boulders illustrates force. The strike of a bird of prey breaking the body of its target illustrates timing. Therefore, the force of those skilled in warfare is overwhelming, and their timing precise. Their force is like a drawn crossbow and their timing is like the release of the trigger. ◆コメント ▼「激流が巨石を突き動かすのは,勢いがあるからだ。 捕食性の鳥すなわちラプターによるターゲットへの一撃が壊滅的な打撃を与えるのは,タイミングが良いからだ。 だから,戦いにおいては攻撃スキルや正確なタイミングが敵を制圧するのだ。 その力はまさに一杯に引かれた石弓のようであり,そのタイミングは引き金を引くよう(に絶妙)である」という意味。 ▼キーワードは,勢と節だ。勢とはタメであり,節は放ちだ。一杯にためたエネルギーは,一気に解き放なたれて最大のパワーになる。放つときは,ちょろちょろではダメ。どん! ためるときはちょろちょろで良い。だが放つときは一気に,どん! 戦い上手は,「勢は険で節は短」であると孫子は言う。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 20, 2007
孫子 兵勢第五その4 SUN-TZU Chapter Five: Force 味不過五、五味之變、不可勝嘗也。 戰勢不過奇正、奇正之變、不可勝窮也。 奇正相生、如循環之無端、孰能窮之哉。 味は五に過ぎざるも、五味の変は勝げて嘗(な)むべからず。 戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は勝げて窮むべからず。 奇正の相生ずることは、循環の端なきが如し。 孰(た)れか能くこれを窮めんや。 There are no more than five basic flavors, yet the variations in the five flavors cannot all be tasted. In battle, there are no more than two types of attacks: Uncommon and common, yet the variations of the uncommon and common cannot all be comprehended. The uncommon and the common produce each other, like an endless circle. Who can comprehend them? ◆コメント ▼「味には5つの基本<酸・辛・かん=しおからい・甘・苦>がある。(わずか5つの味だが)バリエーションが豊かなのでとても味わい尽くせるものではない。 戦においては,2つの攻撃方法,すなわち正攻法と奇法があるだけだ。だが,正攻法と奇法のバリエーションはとてもすべて理解できるものではない。 正攻法と奇法はお互いに(戦法を)作り出し合う様子は,まるで終わりのない輪のようだ。 いったい誰がそれを理解できようか」という意味。 ▼少ない要素が組み合わさり,発展することで多様に変化する。そこには限界がない。戦い方は正攻法か奇策かしかない。だがこれらを組み合わせることで奥深い戦略が生まれてくる。誰がマスターできるだろうか,いやできはしない,と言っている。 ▼昨日と今日の話は,根本的な要素はごくわずかでも,そのごくわずかの要素の組み合わせによって,大きく変わるという孫子の主張だ。音楽しかり,色しかり,味しかり。同様に戦いは,正攻法と奇法という2つ。たかが2つ。されど2つ。こういうシンプルさが良い。覚えやすいし。ただし,組み合わせ方は自分で考えなければならない。正解を提示するのではなく,考えるためのヒントを与える。孫子の教育法かな。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 19, 2007
孫子 兵勢第五その3 SUN-TZU Chapter Five: Force 終而復始、日月是也。 死而更生、四時是也。 聲不過五、五聲之變、不可勝聽也。 色不過五、五色之變、不可勝觀也。 終わりて復た始まるは、四時是れこれなり。 死して更(こもごも)生ずるは日月これなり。 声は五に過ぎざるも、五声の変は勝(あ)げて聴くべからず。 色は五に過ぎざるも、五色の変は勝げて観るべからず。 Like the sun and the moon, they set and rise again. Like the four seasons, they pass and return again. There are no more than five musical notes, yet the variations in the five notes cannot all be heard. There are no more than five basic colors, yet the variations in the five colors cannot all be seen. ◆コメント ▼「太陽や月のように,沈んでは再び昇る。四季のように,過ぎ去ってはまたやって来る。 音楽には5つの音がある。(わずか5つの音だが)その5つの音を元に奏でられる音楽は(豊かだから)すべて聴き尽くせるものではない。色には5つの基本色がある。(わずか5つの色だが)その5つの色が織りなす色合いは(豊かだから)とても見尽くせるものではない」という意味。 ▼ここは前に続き,正攻法と奇策の両方を操る軍は変化が尽きることはない,という話を続けている言葉だ。基本がしっかりしていて,応用技がうまい組織は,いろんな手を打つことができる。そのありさまは,太陽や月のように日々動きを繰り返すものにも例えられるし,あるいは四季のように1年をかけて繰り返すものにも例えられる。終わりがない。窮まるところがない。正攻法と奇策という二つでありながら,多様な戦術が生まれるのは,音や色のようなものだ,という。 ▼比喩が文学的で良い。この話はさらに続く。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 18, 2007
孫子 兵勢第五その2 SUN-TZU Chapter Five: Force 凡戰者、以正合、以奇勝。 故善出奇者、無窮如天地、不竭如江海。 凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。 故に善く奇を出だす者は、窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し。 Generally, in battle, use the common to engage the enemy and the uncommon to gain victory. Those skilled at uncommon maneuvers are as endless as the heavens and earth, and as inexhaustible as the rivers and seas. ◆コメント ▼「敵と戦うときには普通の方法を使い,勝利のためには尋常ではない手を使う。 正攻法でない作戦に習熟した者は,天や地と同じくらい終わりがなく,川や海と同じくらい尽きることがない」という意味。 ▼普通の方法すなわち定石での戦いとは,自分を負けない状態にしておいて奇策で敵に勝つ方法のことを言う。そういう戦いができる人は,(知恵に)窮まりというものがなく,(策が)尽きるということがない。熟達するとそうなれるんだ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 17, 2007
孫子 兵勢第五その1 SUN-TZU Chapter Five: Force 孫子曰、凡治衆如治寡、分数是也。 衆如寡、形名是也。 三軍之衆、可使必受敵而無敗者、奇正是也。 兵之所加、如以○(=石へんに段の文字)投卵者、虚實是也。 孫子曰わく、 凡そ衆を治むること寡を治むるが如くなるは、分数是れなり。 衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くなるは、形名是れなり。 三軍の衆、必らず敵に受(こた)えて敗なからしむべき者は、奇正是れなり。 兵の加うるところ、○を以て卵に投ずるが如くなる者は、虚実是れなり。 Sun-tzu said: Generally, commanding of many is like commanding of a few. It is a matter of dividing them into groups. Doing battle with a large army is like doing battle with a small army. It is a matter of communications through flags and pennants. What enable an army to withstand the enemy's attack and not be defeated are uncommon and common maneuvers. The army will be like throwing a stone against an egg; it is a matter of weakness and strength. ◆コメント ▼「そもそも,多数を率いるには,少数を率いるようにする。 多数を集団に分割するのだ。 大軍の敵と戦うには,少数の敵と戦うようにする。 旗や三角旗を使って意思を伝えるのだ。 敵の攻撃に耐え,打ち負かされないようにするには,虚実取り混ぜた戦術を使うからだ。 強さと弱さを見極め,軍は卵に石をぶつけるように使うのだ」という意味。 ▼ここでのキーワードは「分数」と「形名」。大組織をグループに分けて統括するのが分数。「形」は旗などの目に見えるもの,「名」は鐘太鼓などの耳に聞こえるもの。これらのツールを使って指示を出す。大軍は機動性を発揮できる集団に分け,敵の出方を読み形名を使って戦うことであたかも石で卵を割るように勝利するという。ホントにできるのかよ!? あと「奇正」と「虚実」という言葉もキーワード。正攻法と変則的な攻め方を「奇正」といい,中味のあるなしが「虚実」。戦って勝つのが目的なので,敵と味方の状況を比較しながら絶対の勝ち目を見つける。そこで戦えば石で卵を割るように勝敗が決まるという。曖昧な点,一か八か的な賭けは一切なしで必然的に勝利するための方法が検討される。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 16, 2007
孫子 軍形第四その6 SUN-TZU Chapter Four: Formation 勝者之戰、若決積水於千仞之谿者、形也。 勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭の谿に決するが若き者は、形なり。 The victorious army is like pent up waters released, bursting through a deep gorge. This is formation. ◆コメント ▼「勝利する側の軍は,まるで貯めた水が深い谷を抜けてほとばしるようだ。これが軍形である」という意味。 ▼勝つ側には勢いがある。まるで土石流のようなパワーだから,抵抗しようもないというイメージの言葉。攻めるのに滞っているとこういうパワーは出てこない。一気にどんと攻めることで勝つ。リーダーは,メンバーの勢いを集めて一気に放つように持っていくようにする。ここにも,拙速が巧遅より良いという孫子のポリシーが表れている。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 15, 2007
孫子 軍形第四その5 SUN-TZU Chapter Four: Formation 善用兵者、修道而保法、故能爲勝敗之政。 兵法、一曰度、二曰量、三曰數、四曰稱、五曰勝。 地生度、度生量、量生數、數生稱、稱生勝。 故勝兵若以鎰稱銖、敗兵若以銖稱鎰。 善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。 兵法は、一に曰わく度[たく]、二に曰わく量、三に曰わく数、四に曰わく称、五に曰わく勝。 地は度を生じ、度は量を生じ、量は数を生じ、数は称を生じ、称は勝を生ず。 故に、勝兵は鎰を以て銖を称[はか]るが若く、敗兵は銖を以て鎰を称るが若し。 Those skilled in warfare cultivate the Way, and preserve the Law, therefore, they govern victory and defeat. The factors in warfare are: First, measurement, second, quantity, third, calculation, fourth, comparison, and fifth, victory. Measurements are derived from Ground, quantities are derived from measurement, calculations are derived from quantities, comparisons are derived from calculations, and victories are derived from comparisons. A victorious army is like a ton against an ounce; a defeated army is like an ounce against a ton! ◆コメント ▼「戦いに長じた者は政治を立派に行い,法制が失われないようにする。 だから勝ち,敵を打ち破れるのである。 第1に大事なことは測ることである。 第2に大事なことは量である。 第3に大事なことは計ることである。 第4に大事なことは比較である。 第5に大事なことは勝利である。 土地があるから測りたくなる。 測れるから,量という概念が出てくる。 量という概念があるから,比較という概念が出てくる。 比較という概念があるから,勝利という概念が出てくる。 戦に勝った軍は,例えば,オンス(28g)に対するトン(1,000,000g)のようなものである。 負けた軍は,トンに対するオンスのようなものである」という意味。 ▼勝ちと負けとでは,トンとオンスほどの違いがあるという話。勝ちと負けは天と地ほどの違いという意味だ。天がどんなかを知らないので何とも言えないが,勝つというのはさぞかし良いことなんだろう。戦争上手は人心の掌握術に優れている,と読める。政治をしっかり行い,軍の統制を取る。政治と軍の間でレスペクトがある。そういう状態だと,勝負をコントロールできるようになる。キーワードは「修道而保法」だ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 14, 2007
孫子 軍形第四その4 SUN-TZU Chapter Four: Formation 古之所謂善戰者、勝於易勝者也。 故善戰者之勝也、無智名、無勇功。 故其戰勝不*、不*者、其所措勝、勝已敗者也。 故善戰者、立於不敗之地、而不失敵之敗也。 是故勝兵先勝而後求戰、敗兵先戰而後求勝。 古えの所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。 故に善く戦う者の勝つや、智名も無く、勇功も無し。故に其の戦い勝ちてたがわず。 たがわざる者は、其の勝を措く所、已に敗るる者に勝てばなり。 故に善く戦う者は不敗の地に立ち、而して敵の敗を失わざるなり。 是の故に勝兵は必ず勝ちて、而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。 In ancient times, those who are skilled in warfare gained victory where victory was easily gained. Therefore, the victories from those skilled in warfare are not considered of great wisdom or courage, because their victories have no miscalculations. No miscalculations mean the victories are certain, achieving victory over those who have already lost. Therefore, those skilled in warfare establish positions that make them invincible and do not miss opportunities to attack the enemy. Therefore, a victorious army first obtains conditions for victory, then seeks to do battle. A defeated army first seeks to do battle, then obtains conditions for victory. ◆コメント ▼「昔,戦いに熟達した者は,簡単に勝ちが得られる場面で勝っていた。 だから,戦いの練達者が得た勝利は,一般からは,偉大な知恵や勇気からもたらされるものとは受け止められなかった。彼らの戦略に間違いがなかったからだ。 戦略に間違いがないという意味は,負けが決まった相手に対して確実に勝利するという意味だ。 戦いが達者な者は,自分の足場を固めると同時に,敵を攻撃する機会を逃さない。 だから,勝利する軍は初めに勝利する状態を作り出しておいて,次に戦いの機会を伺う。 負ける軍隊というのは,初めに戦さをして,次に勝利しようとする」という意味。 ▼素人には玄人の勝利の仕方はなかなか理解できないようだ。勝てる裏打ちを得てから戦いをしかけるから。それに対して敗ける軍のやり方は,後先を考えずに,まず戦争を始める。それからやおら勝とうとする。だから,結果がどうなるか分からない。一か八かという言葉は孫子の辞書にはないのだ。勝てる状態に持っていくためには,自分が負けない状態を作り,それを維持しなければならない。となると日常が大事だ。それだけでも大変そう。その上で敵が弱ってこちらが勝てるタイミングを探して,その時が来たらさっと動ける。・・・これって言うは易く行うは難しってやつですな。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 13, 2007
孫子 軍形第四その3 SUN-TZU Chapter Four: Formation 見勝不過衆人之所知、非善之善者也。戰勝而天下曰善、非善之善者也。 故舉秋毫不爲多力、見日月不爲明目、聞雷霆不爲聰耳。 勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり。 戦い勝ちて天下善なりと曰うは、善の善なる者に非ざるなり。 故に秋毫を挙ぐるは多力と為さず。 日月を見るは明目と為さず。 雷霆を聞くは聡耳と為さず。 Perceiving a victory when it is perceived by all is not the highest excellence. Winning battles such that the whole world says "excellent" is not the highest excellence. For lifting an autumn down is not considered great strength, seeing the sun and the moon is not considered a sign of sharp vision, hearing thunder is not considered a sign of sensitive hearing. ◆コメント ▼「みんなに分かるような戦いの勝ち方は最良とは言い難い。 世界中が素晴らしいと称賛するような戦いの勝ち方は最良ではないのだ。 抜けた羽を持ち上げたからといって力持ちとは言えない。 太陽や月が見えるからといって視力が強いとは言えない。 かみなりが聞こえるからといって聴力が優れているとは言えない」という意味。 ▼ふつうの人が見ても気づかないような先手を打った結果の自然な勝ち方がエクセレントとする考え方だ。すいすいと当たり前のように事が運ぶ。なぜか。相手の動き,それに対する手だてを講じているからだ。相手を知り,己を知り,百戦して危うくない作戦を立てているからだ。だからふつうの人には分からないうちに勝負がついている。洗練された勝利とはそういうものだ,という孫子の美学。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 12, 2007
孫子 軍形第四その2SUN-TZU Chapter Four: Formation不可勝者、守也。可勝者、攻也。守則不足、攻則有餘。善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也。勝つべからざる者は守なり。勝つべき者は攻なり。守は則ち足らざればなり。攻は則ち余り有ればなり。善く守る者は九地の下に蔵(かく)れ、善く攻むる者は九天の上に動く。故に能く自ら保ちて勝を全うするなり。One takes on invincibility defending, one takes on vulnerability attacking.One takes on sufficiency defending, one takes on deficiency attacking.Those skilled in defense conceal themselves in the lowest depths of theEarth, Those skilled in attack move in the highest reaches of the Heavens.Therefore, they are able to protect themselves and achieve complete victory.◆コメント▼「強固な防御。弱点への攻撃。十分な防御戦略。不十分な攻撃。(ここは意味が不明) 防御に優れる者は地上で一番低いところに自らを隠す。攻撃に優れる者は天の最も高いところで動く。(どちらも普通人の目には見えないことを言う)だから,彼らは自分たちを守りつつ,完全な勝利を達成できるのだ」という意味。▼ここは意味が分かりにくい。説も複数ある。分かるのは,「敵からは自分たちを見えにくくしておいて攻撃したり防御しているから,勝利を掴むことができる」という話だろうということ。軍事情報は機密が多いようだが,当たり前の話なのだ。◆出典白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR"和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 11, 2007
孫子 軍形第四その1 SUN-TZU Chapter Four: Formation 孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵。 故善戰者、能爲不可勝、不能使敵之必可勝。 故曰、勝可知、而不可爲。 孫子曰わく、 昔の善く戦う者は先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。 勝つべからざるは己れに在るも、勝つべきは敵に在り。 故に善く戦う者は、能く勝つべからざるを為すも、敵をして必ず勝つべからしむること能わず。 故に曰わく、勝は知るべし、而して為すべからざると。 Sun-tzu said: In ancient times, those skilled in warfare make themselves invincible and then wait for the enemy to become vulnerable. Being invincible depends on oneself, but the enemy becoming vulnerable depends on himself. Therefore, those skilled in warfare can make themselves invincible, but cannot necessarily cause the enemy to be vulnerable. Therefore it is said one may know how to win but cannot necessarily do it. ◆コメント ▼英語は「昔の時代は,戦争に秀でた者たちは自国を強くし,敵の弱体化を待った。 無敵であることは自分の努力だ。敵が弱くなるのは敵の内部事情によるものだ。 だから昔の戦争巧者たちも自軍を鍛えられるが,敵軍の力を弱めることはいかんともしがたいものである。 だから,どのようにすれば勝利するかは分かっても,それが実際にできるかどうかは別なのだ」という意味。 ▼こちらは努力することも怠けることも気持ち次第でいかようにもなる。負けないためには鍛錬が大事だ。だが,敵のことは自軍のようにはコントロールできない。机上演習してみると勝てそうでも,実際にやってみて本当にそうなるのかどうかは分からない。「勝ちは知るべし,而して為すべからず」とはそのことを言っている。仮説と実証とは違う。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 10, 2007
孫子 謀攻第三その6 SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks 故知勝者有五。知可以與戰不可以與戰者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝。此五者、知勝之道也。 故曰、知彼知己、百戰不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼、不知己、毎戰必敗。 故に勝を知るに五あり。 戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ。 衆寡の用を識る者は勝つ。 上下の欲を同じうする者は勝つ。 虞を以て不虞を待つ者は勝つ。 将の能にして君の御せざる者は勝つ。 この五者は勝を知るの道なり。 故に曰わく、彼れを知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。 彼れを知らずして己を知れば、一勝一負す。 彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎(ごと)に必らず殆うし。 Therefore, there are five factors of knowing who will win: One who knows when he can fight, and when he cannot fight, will be victorious; one who knows how to use both large and small forces will be victorious; one who knows how to unite upper and lower ranks in purpose will be victorious; one who is prepared and waits for the unprepared will be victorious; one whose general is able and is not interfered by the ruler will be victorious. These five factors are the way to know who will win. Therefore I say: One who knows the enemy and knows himself will not be in danger in a hundred battles. One who does not know the enemy but knows himself will sometimes win, sometimes lose. One who does not know the enemy and does not know himself will be in danger in every battle. ◆コメント ▼「勝者を予測する5つの要素。 いつ戦うべきか,いつ戦ってはならないのか,時を知る方が勝つ。 軍事力の大小を問わず使い方を知る方が勝つ。 目的のために階級の上下を問わず統合できる方が勝つ。 自分は準備しておいて敵が準備できていないタイミングを待つ方が勝つ。 将軍に器量があり,支配者によって干渉されない方が勝つ。 これら5つの要素が勝者を知る方法だ。 だから,敵のことを知り己を知る者は百戦して危うからず。 敵のことは知らないけれども,己を知る者は勝ったり負けたり。 敵のことも知らない,己も分からないようでは,戦うたびに危険だ」という意味。 ▼これを現代風に「成功するための5つのポイント」とかに言い換えると次のようになる。 (1) タイミングをはかる。 (2) 身の丈に合った戦略をたてる。 (3) メンバーの気持ちを一つにする。 (4) しっかり準備する。 (5) リーダーを信じる。 相手と自分を把握するための情報収集のやり方で,成功確率が0になるか半々か,あるいは100%になるかを決める。100%にしたいと思えば,相手を知り,自分を知るしかない。ところがこれがなかなか難しい。そこで,まあ何とかなるだろうと安易に構えると,成功確率はどんと下がる。キーワードは,「ちゃんと調べたの?」。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 9, 2007
孫子 謀攻第三その5SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks夫將者、國之輔也、輔周則國必強、輔隙則國必弱。故君之所以患於軍者三。不知軍之不可以進、而謂之進。不知軍之不可以退、而謂之退、是謂縻軍。不知三軍之事、而同三軍之政、則軍士惑矣。不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣。三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝。夫れ将は国の輔なり。輔 周なれば則ち国必ず強く、輔 隙あれば則ち国必らず弱し。故に君の軍に患うる所以の者には三あり。軍の進むべからざるを知らずして、これに進めと謂い、軍の退くべからざるを知らずして、これに退けと謂う。是れを「軍を糜す」と謂う。三軍の事を知らずして三軍の政を同じくすれば、則ち軍士惑う。三軍の権を知らずして三軍の任を同じうすれば、則ち軍士疑う。三軍既に惑い且つ疑うときは、則ち諸侯の難至る。是れを「軍を乱して勝を引く」という。A general is the safeguard of the nation.When this support is in place, the nation will certainly be strong.When this support is not in place, the nation will certainly not be strong.There are three ways the ruler can bring difficulty to the army:To order an advance when not realizing the army is in no position to advance, or to order a withdrawal when not realizing the army is in no position to withdraw.This is called entangling the army.By not knowing the army's matters, and administering the army the same as administering civil matters, the officers and troops will be confused.By not knowing the army's calculations, and taking command of the army, the officers and troops will be hesitant.When the army is confused and hesitant, the neighboring rulers will take advantage.This is called a confused and hesitant army leading another to victory.◆コメント▼「将軍は国の守護神だ。将軍の支えが当を得たものであれば,国は間違いなく強くなる。将軍の支えが的外れであれば,国は間違いなく弱体化する。支配者が軍を混乱させる場合が3つある。前進を命じること ~ 軍が前進できるような場所にいないにもかかわらずそれを理解せずに命令する場合だ。あるいは撤退を命じること ~ 軍が撤退できる場所にいないにもかかわらずそれを理解せず命令を下す場合だ。これを軍の混乱という。軍の事情を知らず,軍の指揮を文民行政と同じようにとらえると,将兵は混乱に陥る。 軍の戦略を知らず,軍に命令すれば,将兵は躊躇してしまう。軍の混乱や躊躇は,隣国の支配者がつけ入る隙となる。軍の混乱と躊躇は,他国の勝利へとつながる」という意味。▼軍という国のモジュールをコントロールする方法についてのお話。ここではちょっと見,文民統制の弊害を指摘しているようだ。だが,本意はそうではなく,専門家あるいは専門集団の動かし方を理解していない者が,権力があるという制度上の根拠で命令を出すことによる国益の毀損リスクについて注意を促しているものと受け止めたい。ではどうすれば良いのか。表面上は時の権力を握っている立場が圧倒的に強いのは確かだ。だが,組織が大きくなれば,ものが分かった人間は必ずいる。ものが分かっている人間は老子的なふるまいをするので,その存在が見えにくい。見えにくいだけの話で存在している。そして状況をしっかり見ている。そのまなざしに適う考え方と行動をいかに自分がとっていけるかだ。つまり,プラスとマイナスのどちらに焦点を当てるか,だ。さらに,人的ネットワークが限られたものだと,発想が限られるので行動も限られてしまう。だが,人的ネットワークを新しく組み替えることで,同じ事象でも見え方から解釈から対応策まですべてが変わる可能性がある。トポロジー(周囲の人や組織とのつながり方)の善し悪しという観点から見ても,努力が報われる関係の構築にも活路が見いだせるというわけだ。◆出典白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR"和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 8, 2007
孫子 謀攻第三その4 SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks 故用兵之法、十則圍之、五則攻之、敵則能戰之、少則能逃之、不若則能避之。 故小敵之堅、大敵之擒也。 故に用兵の法は、十なれば則ちこれを囲み、五なれば則ちこれを攻め、倍すれば則ちこれを分かち、敵すれば則能[すなわ]ちこれと戦い、少なければ則能ちよくこれを逃れ、しからざれば則能ちこれを避く。故に小敵の堅は、大敵の擒なり。 Generally in warfare: If ten times the enemy's strength, surround them; if five times, attack them; if double, divide them; if equal, be able to fight them; if fewer, be able to evade them; if weaker, be able to avoid them. Therefore, a smaller army that is inflexible will be captured by a larger one. ◆コメント ▼「戦いにおける一般原則。敵の10倍の兵力があれば,包囲するべし。 敵の5倍の兵力があれば,攻撃するべし。 敵の2倍の兵力があれば,敵を分断するべし。 敵と兵力が等しければ,まあ,戦ってみるもよし。 敵の兵力より劣っていれば,戦いは避けるべし。 敵より弱ければ,最初から近寄らないようにするべし。 ゆえに,小さな軍で融通が利かないと,大軍に呑み込まれてしまうのである」という意味。 ▼勝つために何を考えなければいけないのか,あるいは負けないためには何をしなければいけないのか,についての原則。力がなくて小さければ,flexibleでなければ取り込まれてしまう。ベンチャー企業は志は大きいが規模も体力も大企業や大組織にはかなわない。だから,常にflexibleな頭で戦略を考えるべし,と孫子は言う。「擒」は猛禽類の禽(キン)で,これはとりこにするという意味。「てへん」がついて,擒はとりこにするという意味。猛禽類は英語でraptor。 ▼ラプターといえばF22。F22はアメリカの最新戦闘機だが,そこで使われるコンピュータについておどろくべきアンバランスを指摘する文章を見つけた。「この機種に搭載されている中央演算装置の技術は,1980年代半ばに市場標準品だったインテル社製マイクロチップの「360」モデルで凍結されてしまっている。そのため,現在なら小学生さえ見向きもしない博物館行きの演算装置と関連ソフトウェアを,来る数十年間,廃棄に至るまで使いつづけなければならないのである」(西口敏宏『遠距離交際と近所づきあい』,NTT出版,p.207) ▼小さいときは戦略に関して「堅」でありすぎることは注意しなければならない。堅よりも「鈍」であることのほうが戦略的には上策かも知れない。事を成し遂げる条件は運根鈍と言うし。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 7, 2007
孫子 謀攻第三その3 SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks 故善用兵者、屈人之兵、而非戰也、拔人之城、而非攻也、毀人之國、而非久也。 必以全爭于天下、故兵不頓、而利可全、此謀攻之法也。 故に善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも而も戦うに非ざるなり。人の城を抜くも而も攻むるに非ざるなり。人の国を毀(やぶ)るも而も久しきに非ざるなり。必らず全きを以て天下に争う。 故に兵頓(つか)れずして利全うすべし。此れ謀攻の法なり。 Therefore, one who is skilled in warfare principles subdues the enemy without doing battle, takes the enemy's walled city without attacking, and overthrows the enemy quickly, without protracted warfare. His aim must be to take All-Under-Heaven intact. Therefore, weapons will not be blunted, and gains will be intact. These are the principles of planning attacks. ◆コメント ▼「だから,戦さの原則に通じた者は戦闘することなく敵を支配するのだ。 防壁に囲まれた町でも攻撃なしでわがものにし,長期戦に陥ることなく敵をすばやく倒す。 その狙いは,すべて天の下で堂々と完全な姿のままで手に入れることにある。 だから,武器を消耗することがなく,利得を損なうこともない。 これが攻撃計画の原則である」という意味。 ▼「兵を善く用いる者」はプロなので,その仕事ぶりは目立たないのだろう。下手がすると,大げさな戦争になって目立つ。しかし,プロは戦争になる前に短期間で勝負を決めてしまうから,平穏のうちに決まってしまう。何ごともないように見えるのが,実はすごい技があるからこそ,という話だ。これを謀攻の法という。謀は「難しい問題について考える,はかる」の意味だから,攻撃の方法をよく考えるという意味になる。武力だけがattackではない。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 6, 2007
孫子 謀攻第三その2 SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks 故上兵伐謀、其次伐交、其次伐兵、其下攻城。 攻城之法、爲不得已。修櫓フンオン、具器械、三月而後成。距イン、又三月而後已。 將不勝其忿、殺士卒三分之一、而城不拔者、此攻之災也 故に上兵は謀を伐つ。其の次ぎは交を伐つ。その次は兵を伐つ。その下は城を攻む。攻城の法は、已むを得ざるが為めなり。 櫓・フンオンを修め、器械を具うること、三月にして後に成る。踞イン又た三月にして後に已わる。将 其の忿(いきどお)りに勝(た)えずしてこれに蟻附(ぎふ)すれば、士卒の三分の一を殺して而も城の抜けざるは、此れ攻の災いなり。 Therefore, the best warfare strategy is to attack the enemy's plans, next is to attack alliances, next is to attack the army, and the worst is to attack a walled city. Laying siege to a city is only done when other options are not available. To build large protective shields, armored wagons, and make ready the necessary arms and equipment will require at least three months. To build earthen mounds against the walls will require another three months. If the general cannot control his temper and sends troops to swarm the walls, one third of them will be killed, and the city will still not be taken. This is the kind of calamity when laying siege to a walled city. ◆コメント ▼「だから,最上の戦略は,敵を計画段階で攻撃することだ。次は同盟関係の攻撃。 次が軍への攻撃で,最悪なのが防御の堅い敵地への攻撃だ。 適地を包囲して攻撃するのは,他の選択肢がない場合のみ。 攻撃用の車両,武装車両それに武器や道具などが最低,3ヶ月分必要となる。 土塁を作るのにさらにもう3ヶ月かかる。 もし将軍が気持ちを抑えきれなくなって敵の城壁に兵を送って取り付かせようとしたら,三分の一は殺されてしまい,城を落とすこともできないハメになる」という意味。 ▼計画段階での攻撃が上策で,実際の攻撃は上策とは言えないとする孫子のクラス分けが面白い。そのためには敵の情報をよく知る必要がある。情報戦だ。孫子の兵法では情報重視の姿勢を強く感じる。戦争は一大事なので,動きながら考えるではなく,動く前に考えておくことを重んじる。だからといって戦争を知らないからそうしているのではなく,戦争のマイナス面を知っているからこそ,情報収集と分析,戦略立案と実行力を重視するのだ。いくら腕力が強い軍隊を持っていても,運用が悪ければ勝てない。運用するのは将軍なので,将軍がキレて攻撃命令を出したりしては大ごとになる。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 5, 2007
孫子 謀攻第三その1 SUN-TZU Chapter Three: Planning Attacks 孫子曰、夫用兵之法、全國爲上、破國次之、全軍爲上、破軍次之、全旅爲上、破旅次之、全卒爲上、破卒次之、全伍爲上、破伍次之。 是故百戰百勝、非善之善者也。不戰而屈人之兵、善之善者也。 孫子曰わく、 凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ。 軍を全うするを上となし、軍を破るはこれに次ぐ。 旅を全うするを上となし、旅を破るはこれに次ぐ。 卒を全うするを上となし、卒を破るはこれに次ぐ。 伍を全うするを上となし、伍を破るはこれに次ぐ。 是の故に百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。 Sun-tzu said: Generally in warfare, keeping a nation intact is best, destroyng a nation second best; keeping an army intact is best, destroying an army second best; keeping a battalion intact is best, destroying a battalion second best; keeping a company intact is best, destroying a company second best; keeping a squad intact is best, destroying a squad second best. Therefore, to gain a hundred victories in a hundred battles is not the highest excellence; to subjugate the enemy's army without doing battle is the highest of excellence. ◆コメント ▼「戦さでは,国を無傷のまま降伏させるのが最上であり,国を傷つけるのは次善である。 軍隊を無傷のまま勝つのが最上であり,損害を与えるのは次善である。 旅団を無傷のまま勝つのが最上であり,損害を与えるのは次善である。 大隊を無傷のまま勝つのが最上であり,損害を与えるのは次善である。 分隊を無傷のまま勝つのが最上であり,損害を与えるのは次善である。 だから,百戦して百勝するのは決して最優秀ではない。 戦うことなく敵軍を手なずけるのが最優秀なのである」という意味。 ▼最優秀な結果は,戦争をせずに勝つことだ。壊すことなく勝てれば,そりゃたしかにexcellenceだ。でもそんなに都合良く事が進むのだろうか。孫子が言うのは,破壊行為なしで勝つことができないような戦さは最高のエクセレンスではないと言っている。しかし,相手も負けるとは思わずに待ちかまえているわけだから,もしかすると話し合い・交渉の余地は互いにあるのかも知れない。そうなると普段の毎日が戦さの予防になるんだという気がしてくる。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 4, 2007
孫子 作戦第二その5 SUN-TZU Chapter Two: Doing Battle 故殺敵者怒也、取敵之利者貨也。 車戰得車十乘以上、賞其先得者、而更其旌旗、車雜而乘之、卒善而養之、是謂勝敵而益強。 故兵貴勝、不貴久。 故知兵之將、民之司命、國家安危之主也。 故に敵を殺すものは怒なり。 敵の利を取るものは貨なり。 故に車戦にして車十乗以上を得れば、其の先ず得たる者を賞し、而してその旌旗を改め、車は雑[まじ]えてこれに乗らしめ、卒は善くしてこれを養わしむ。 是れを敵に勝ちて強を益[ま]すと謂う。 故に兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。 故に兵を知るの将は、生民の司命、国家安危の主なり。 Killing the enemy is a matter of arousing anger in men; taking the enemy's wealth is a matter of reward. Therefore, in chariot battles, reward the first to capture at least ten chariots. Replace the enemy's flags and standards with our own. Mix the captured chariots with our own, treat the captured soldiers well. This is called defeating the enemy and increasing our strength. Therefore, the important thing in doing battle is victory, not protracted warfare. Therefore, a general who understands warfare is the guardian of people's lives, and the ruler of the nation's security. ◆コメント ▼「敵を殺すのは怒の感情である。敵の資源を奪うのは褒美があるからだ。 だから戦車を10台も捕獲した兵には報償を出すのである。 敵の旗は自軍の旗に取り替え,捕獲した戦車は自軍に加え,捕虜の待遇は良くする。 これが敵を打ち破り自軍の力を増すと言われるものである。 大事なことは,戦争は勝利することであって,長引かせることではない。 戦争というものが分かっている将軍は,人々の命の守護者であり,国の安全の要である」という意味。 ▼軍を司るgeneralは戦争の裏表を知り抜いているプロじゃないとダメだ。敵を殺すことより,物資を奪って自軍の力を増し,敵の力を削ぐほうを孫子は尊ぶ。敵の資材を捕獲した兵にはその働きに応えた報酬を出すようにとアドバイスしている。将軍は部下に何をもって評価とするのかについて明確にメッセージを送って方向を揃える。それが短期に戦争を終わらせ,人的損失を最小限に抑える秘訣なのだ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 3, 2007
孫子 作戦第二その4 SUN-TZU Chapter Two: Doing Battle 善用兵者、役不再籍、糧不三載、取用於國、因糧於敵、故軍食可足也。 國之貧於師者遠輸、遠輸則百姓貧、近師者貴賣、貴賣則百姓財竭、 財竭則急於丘役、力屈財殫、中原内虚於家、百姓之費、十去其七、公家之費、破車罷馬、甲冑矢弓、戟楯矛櫓、丘牛大車、十去其六。 故智將務食於敵、食敵一鍾、當吾二十鍾、一石、當我二十石。 それ兵久しくして国の利する者は、未だこれ有らざるなり。 故に尽く用兵の害を知らざる者ば、則ち尽く用兵の利をも知ること能わざるなり。 善く兵を用うる者は、役は再び籍せず、糧は三たびは載せず。 用を国に取り、糧を敵に因る。 故に軍食足るべきなり。 国の師に貧なる者は、遠師にして遠く輸せばなり。 遠師にして遠く輸さば、則ち百姓貧し。 近師なるときは貴売すればなり。 貴売すれば則ち財竭く。 財竭くれば則ち以て丘役に急にして、力は中原に屈き用は家に虚しく、百姓の費、十にその七を去る。 公家の費、破車罷馬、甲冑弓矢、戟楯矛櫓、丘牛大車、十にその六を去る。 故に智将は務めて敵に食む。 敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当たり、キ・カン一石は吾が二十石に当たる。 Those skilled in doing battle do not raise troops twice, or transport provisions three times. Take equipment from home but take provisions from the enemy. Then the army will be sufficient in both equipment and provisions. A nation can be impoverished by the army when it has to supply the army at great distances. When provisions are transported at great distances, the citizens will be impoverished. Those in proximity to the army will sell goods at high prices. When goods are expensive, the citizens' wealth will be exhausted. When their wealth is exhausted, the peasantry will be afflicted with increased taxes. When all strength has been exhausted and resources depleted, all houses in the central plains utterly impoverished, seven-tenths of the citizens' wealth dissipated, the government's expenses from damaged chariots, worn-out horses, armor, helmets, arrows and crossbows, halberds and shields, draft oxen, and heavy supply wagons, will be six-tenths of its reserves. Therefore, a wise general will strive to feed off the enemy. One bushel of the enemy's provisions is worth twenty of our own, one picul of fodder is worth twenty of our own. ◆コメント ▼「熟達者は兵を繰り返し招集したり,食料を繰り返し輸送することはない。 装備品は自己調達するが食料品は敵から取り立てる。 そうすれば軍は装備品も食料品も十分足りる。 国が困窮するのは離れた場所に駐留する軍へ物資を供給するのが原因だ。 軍が近いと物資は高値で売買される。 物価が値上がりすれば,一般人の暮らしがきつくなる。 暮らしが疲弊すれば,農民たちは増えた税金の支払いにも苦しむことになる。 力が衰え,蓄えを使い果たし,町で暮らす家々もすっかり貧乏になっており,蓄えの10分の7までが消えているという状態だ。 政府も次の負担がある。戦車の修理,馬,装甲,ヘルメット,武器弾薬,刀剣,盾,牽引牛,重量物運送車両など。これはもうストックの6割がたは戦場に送り出している。 だから有能な将軍は敵の食料を狙うのだ。 敵の食料1ブッシェル(35リットル)は,自己調達の20倍の価値がある。 家畜の餌1ピクル(60kg)も,自己調達の20倍の価値がある」という意味。 ▼実際に軍が遠征したら戦争するために,装備品から食料からあらゆる面倒を見なくてはならないから,支えるのが大ごとになって国の負担がすごくなるという話。リアル。確かに,生産のための投資ではないから,持ち出し,出て行くばっかりになる。戦争以外の選択肢を探すのがお互いのためだ。 ◆出典 白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界 英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR" 和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 2, 2007
孫子 作戦第二その3SUN-TZU Chapter Two: Doing Battle故兵聞拙速、未覩巧之久也。夫兵久而國利者、未之有也。故不盡知用兵之害者、則不能盡知用兵之利也。故に兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久を睹[み]ざるなり。それ兵久しくして国の利する者は、未だこれ有らざるなり。故に尽く用兵の害を知らざる者ば、則ち尽く用兵の利をも知ること能わざるなり。Therefore, I have heard of military campaigns that were clumsy but swift, but I have never seen military campaigns that were skilled but protracted.No nation has ever benefited from protracted warfare.Therefore, if one is not fully cognizant of the dangers inherent in doing battle, one cannot fully know the benefits of doing battle.◆コメント▼「だから軍事行動は,<不器用でも迅速>と聞くが,<巧みだが長引く>というのは見たことがない。長引く戦争で利益を得た国など,これまであったためしがない。戦さにつきものの損害を完全に認識できない者は,戦争の利得もちゃんと理解できないのだ」という意味。▼やるときは洗練されてなくても良いからぱぱっとやるのが良い。上手だけど時間がかかるってのはダメなんだ。瞬発力,一点突破,選択と集中,いろんなキーワードが湧いてくる。経営支援の現場でも同じように感じる。少ない人数で新規事業を行おうとするとき,二局面作戦(あそこではこれをやり,こちらではこれをやる)はリスクが大きい。一つでも成功させるのにエネルギーがいるのに,同時に二つを成功させようというのは無用にリスクを高くすることになる。作戦はシンプルが良い。作戦そのものをモジュール化して,コントロールしやすい構造にしておく工夫も大事だ。起業家のモチベーションと従業員のそれとはまったく違う。起業家は24時間何ヶ月でも頑張れるが従業員は続かない。自分にできるから他の人もできるという仮定も取っ払うほうが良い。下手でも良いから期限までに仕上げて納品する。そのほうが,確かにすごく良くできてるけど納期に遅れたね,では話にならない。▼それともうひとつ。ものごとはメリットとデメリット,光と影の両方を熟知して物事に取り組まないと成功はおぼつかないという話。自分が参入しようとする業界や市場を知らないというのもリスクだ。◆出典白文の出典: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/cl/koten/sonshi/ 立命館大学中国文学専攻 孫子の世界英文の出典:.http://www.sonshi.com/learn.html SUN-TZU: THE PRINCIPLES OF WARFARE "THE ART OF WAR"和文の出典: http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html ISHIHARA Mitsumasa 石原光将参考: 金谷治 (2001) 『孫子』 岩波書店. 天野鎮雄 (1972) 『新釈漢文体系36 孫子』 明治書院. Thomas Cleary (1988) "The ART of WAR SUN TZU" SHAMBHALA
December 1, 2007
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