全13件 (13件中 1-13件目)
1
![]()
書籍の感想です。今回は「クローバー・レイン」です。クローバー・レイン (ポプラ文庫 日本文学 245) [ 大崎 梢 ]出版業界のお仕事小説です。大手出版社に勤める彰彦は落ち目の作家の原稿を目にして、衝撃を受けます。これは素晴らしい、と感動した彰彦は書籍化に向けて動き出します。しかし、そこには大きな壁があるのでした。毎月数多くの書籍が発売される昨今の状況では、出版社は確実に売れるものを書籍化したいと思うのは当然のことです。話題があるから売れる、売れれば話題になる、という好循環がある一方で話題がなければ、平積みもされない、平積みされなければ手にすら取られず返品、忘れ去られる、という悪循環も待っているわけです。なので、まずは話題性から入るのはある意味正しいわけで、売れっ子作家の書く本は当然話題性ありですし、新人賞などを取った新人などは新鮮味もあるし、話題性もあるわけで、出版社が取り上げるわけです。そういうわけで、彰彦が目を付けた家永という作家は以前話題になり、盛り上がったもののその後鳴かず飛ばずで燻ぶっている作家です。話題性もないし、新鮮味もない。そんな作家に大手出版社が冒険をする必要はない。彰彦は思いっきり突っぱねられてしまいます。今まで運良く(?)売れっ子作家を多く受け持ってきた彰彦は自分が良いと思った原稿はみんなも評価してくれ、書籍化できると思っていました。しかし、それは「売れっ子作家の原稿だから」というフィルターがかかった評価だったのです。初めてといっても良い反応に、彰彦は初めて手練手管を尽くす意味と必要性を理解し、編集長の静止も聞かずに突き進むのです。彰彦自身の過去、作家の家永さんの過去、家永さんの娘さんの過去、様々なエピソードを通じて、少しずつ進んでいき、ついに書籍化OKという話になります。しかし、書籍化できればOKというわけではありません。単行本の売れ行きが悪ければ重版もされないし、文庫化もままなりません。彰彦としては非常に感動したこの本を多くの方に読んで欲しい、と思っているわけで、重版され、文庫化のめどがたつくらいでなければ安心できないのです。一度は仲違いした営業のエースと言われる男と腹を割って話して和解。果たして本は売れるのでしょうか・・・営業部会でOKもらうための努力や、現行の中で使わている詩を作者に掲載許可をもらおうと奮闘したりと、努力あり、苦労あり、と非常に楽しく読むことができました。
2021.02.28
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「紅霞後宮物語第六幕」です。紅霞後宮物語 第6幕/雪村花菜【1000円以上送料無料】前の巻で文林と小玉の仲は大きな溝ができます。でもそれは小玉だけが感じている溝で、それを言うことはありません。そして、国の周囲も不穏になってきて、攻めてきた敵国を迎え撃つこととなります。小玉は元軍人の皇后なわけですが、こういう時のために皇后にしたという面もあったわけです。ですが、とりあえず今回は別の方が選ばれます。それは能力的にも十分な人物で、小玉を無理に推すことはできません。しかし、その人物はあることが原因で少々焦っていました。それが原因なのか、さらに別の国からの介入もあり、戦死という憂き目に会います。そして、この状況を解決するためについに皇后が出征することとなるのです。将軍の死、そして、自身の出征を前にして、梅花に「夫婦は話し合わないといけない」と諭され、覚悟を決めます。そして、小玉は文林に思いのたけを訴えるのでした。小玉の抱える思いはもう愛ではないようです。文林の「お前は俺のことがまだ好きか?」というストレートな問いかけに「ううん」と即答します。言葉だけなら、「好きではない=嫌い」となりそうですが、小玉の想いは好きとか愛という言葉では表せない、ということのようです。実際、彼女は一生彼と一緒にいる覚悟ですし、皇帝の文林にすべてをつまり、皇后である自分自身をもささげる覚悟です。小玉にとってはそれは「愛」とは呼ばない何かなんでしょうね。様々な想いを持って、小玉は出征します。さて、どんな結末が待っているのでしょうね・・・
2021.02.27
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「ソードアートオンライン23ユナイタル・リングII」です。ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングII (電撃文庫) [ 川原 礫 ]ご存知ソードアートオンラインです。私ソードアートオンライン大好きで、アニメも全部見てます。小説の方を後から読んでいまして今23巻です。あーでも、ガンゲイルオンラインも読みたいし、プログレッシブも読みたいし、SAOワールドはまだまだ続きますね。さて、23巻ですが、ユナイタルリングという新しいワールドに強制的に転送されてしまったみんなの冒険譚です。このユナイタルリングはなかなかサバイバル感が強くて、おなかも減るし、喉も乾く。武器を作るのにも材料が必要だし、家を整備するためにも木材や医師が必要という感じです。あー、このゲーム面白そうだなぁ。もちろんフルダイブオンラインゲームなんて今はないけど、フルダイブじゃなくても十分楽しそう。それにしても相変わらずキリトはハーレム状態で周囲は女の子ばっかりです。ユイちゃんもプレイヤー化しているし、SAO時代の情報屋であるアルゴまで出てきて、ハーレム化に拍車が掛かってますwクラインとエギルも良い奴なんですけどね~
2021.02.24
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「横浜駅SF 全国版」です。横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS) [ 柞刈湯葉 ]私は神奈川県に住んでいるので実感あるんですが、横浜駅ってずーーーーっと工事中なんです。路線がたくさん乗り入れているからか、夜間も工事できる時間があまりとれないようで工事もなかなか進みません。そして通路もしょっちゅう変わります。横浜駅からダイヤモンド地下街へ行くための通路も上って降りる形だったり、段差がない形で進めたりといろいろ変わります。この小説はそんなところから発想を得たんでしょうね。横浜駅の工事をAIに任せたんです。統合知性体みたいな名前です。AIは今ある鉄筋やコンクリートを複製して、どんどん駅を拡張してくれます。そして人間の手に負えなくなりました。横浜駅は横浜だけでなく、全国にどんどんどんどん広がっていき、およそ本州全てを覆いつくすほどになっています。「横浜駅SF」という本でこれらの部分は多く語られていますが、「全国版」ではその広がった横浜駅の中で暮らす人々の話です。横浜駅はさらに拡張を目指し、四国、九州、北海道に触手を伸ばそうとするのですが海は苦手なようでギリギリのところで踏み止まっています。こう書くと横浜駅は悪のAIのように聞こえるかもしれませんが、横浜駅の中はある意味平和である一定の秩序が保たれています。その流れに流されている中ではそこそこの生活ができるわけです。駅内で暮らすためには6歳までにSUICAを買ってチップを体に埋め込まないといけません。これが非常に高額で貧しい家では子供のためにSUICAを買えません。そうすると、横浜駅は有無を言わせず駅外へ退去させてしまいます。そういう意味では全く融通が利かないわけですが、かといって悪と100%断じることができるわけではありません。ルール通りなわけですし、横浜駅は単に益を拡張しようとしているだけなのです。物語の中で山が噴火するという話が出てきます。エスカレーターを多用した駅は平地より斜面の部分に発展する傾向にあり、火山の影響を強く受けることになります。色々あって住民は避難したりするわけですが、当然駅は大きく壊れてしまうわけですが、横浜駅は少しずつ再建していき、最終的には全く元通りに戻してしまいます。AIが良いものなのか、悪いものなのか私にはわかりません。しかし、最初に作ったロジックは人間には理解できても、その後コンピュータが自分で勉強して構築した理論の部分はもはや人間には理解不能なものらしいですね。将棋などでもすでにそのような事象は発生しています。人間に分からない部分は果たして・・・とっても面白かったです。読むときは横浜駅SFから読むことをお勧めます。横浜駅SF (カドカワBOOKS) [ 柞刈湯葉 ]
2021.02.23
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「物件探偵」です。物件探偵 [ 乾 くるみ ]なんだかありがたい名前の不動尊子(ふどう たかこ)さん。名前が導いたのか、彼女は不動産関係の仕事に就くことを目指し、若くして宅建の資格を得ます。そして、無事就職できたのは良いのですが、彼女曰く「家の声が聞こえる」らしいのです。若干電波気味な彼女ですが、彼女の物件の気持ちがわかる、ということを皮切りに調査していき、物件に関する謎を解き明かしていきます。例えば、「物件が泣いている」と思えば、悲しい=>良くないことが起こっている=>住人に話を聞く=>さらに周囲の人に話を聞く=>理由を解き明かすみたいな感じです。1話は物件を買った人が騙されかけていたところをギリギリのところで解決するので、2話目以降も同じような話が続くのかな、と思ったのですが、良い買い物をした人がいれば、お互いの勘違いで不和となりそうなところを解決したりとバリエーションに富んでいてその辺は良かったです。ただ・・・物件の説明がこれでもかと長くてちょっと読むの面倒だなと思った部分が結構ありました。最初にうちは一生懸命呼んでいたんですが、あまりにも長いので後半は物件の説明の部分は流して読んじゃいました。ただ、物件の契約に関する話とかは「へー」って思う部分もあるし、興味深く読めました。住宅関連の契約のことが良く分かる一冊です。
2021.02.21
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 兵士の娘III」です。【小説3巻】本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第一部「兵士の娘III」【電子書籍】[ 香月美夜 ]マインちゃん、身食いの熱をなんとか抑えて、洗礼式、そして、巫女見習いになるまでのお話です。巫女見習いになるときの話はアニメとちょっと違う気がしますね。本の方が神殿長がかなりワルで貴族意識丸出し、平民の命なんて何とも思っていない感満載です。なんとか巫女見習いになれましたが、こんな無理やり、ある意味脅した感じで巫女見習いになって、マインちゃん大丈夫かな?入った後も、アニメ以上にイジワルされるのかな?
2021.02.17
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回「スタープレイヤー」です。スタープレイヤーもし10個願いことが叶うとしたら・・・そんなお話です。転生ものはいろいろありますが、転生して10個願いを叶えることができるというのはなかなか面白いですね。もちろんNGな願い事もあるのですが、願い事をスターボードという板に書くと、「審査」が行われ、叶えることが可能か判定が行われるというシステムです。なので、「願い事を100個にしたい」とかいう願いはNGだし、「世界を破壊する」とかもNGです。後は曖昧な願いもNGです。例えば「美人にしてほしい」とかは美の基準が人それぞれなので叶えられません。逆に、目はこうして、鼻はこうして、体形をこうして、みたいな全身を変える、という願いはどんなに細かいものであっても叶えることができます。さて、そんな不思議な世界に入り込んでしまった主人公は果たして何を願うのでしょうか?彼女はまず家を建てます。さらに庭を用意し、全身を美形に整えます。だいぶ満足した彼女でしたが、現世で自分を襲った通り魔に仕返ししようと思い立ちます。現世から犯人を呼び出し、牢屋に閉じ込めて反省させるためにいろいろな仕打ちをしますが・・・最後に残ったのは後悔でした。その後、彼女と同じ立場のスタープレイヤーに出会い、世界をどうするかを考えていくことになるのです・・・残りの願いを何に使うか、とても難しいですよね。もちろん自分のために使いたいわけですが、かと言ってあまりに利己的になり切れないのも人間なわけで・・・はてさて、自分だったら何に使おうかな。
2021.02.17
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「紅霞後宮物語第五幕」です。紅霞後宮物語 第五幕(5) (富士見L文庫) [ 雪村花菜 ]話はだんだんこじれていきまして・・・文林は内部の面倒な輩をどこかで粛清したいと思っています。でも、いくら皇帝とは言え、有無を言わさず、そして証拠もなしに自害を命じるなどということはしません(できないのかもしれないけど)なので、内部に面倒な輩を抱えたまま、外部からの侵攻に備えなければなりません。前巻で侵攻の意図が明確になった国があるので、その辺も厄介なところ。そんな中、皇后の小玉に不義の疑いあり、という動議。文林はそんな疑いをそれこそ1ミリも持っていませんが、小玉を廃皇にして、自分の娘を皇后に、と思っている重鎮たちを押さえることは並大抵のことではありません。なにしろ、文林は小玉を「最も信頼できる同志」みたいな感じで皇后にしているようです。あと、小玉は貴族でないので、しがらみがない。なので、文林は多少は好きという気持ちはあるのでしょうが、文林と小玉は皇帝と皇后という関係でありながら、そういう関係を持ったことがありません。二人にとってはそれはそれで「問題ない関係」なのですが、周囲からは「皇子を産めない(産む努力もしていない)女性が皇后として適切なのか?」と真正面から言われてしまうと、ちょっと面倒です。「お前たちとのかかわり持ちたくないからだろ!」と言いたいわけですが、全員を敵に回すわけにもいかないので、なかなか難しい舵取りが必要になるわけです。そんな不義という疑惑、そして、暗殺未遂事件などを通じて、二人はあることをするのですが、その結果、小玉は一瞬感じた「文林は私のことを本当に好きなのかもしれない。そして私も・・・?」という気持ちを「一瞬の気の迷い」であると断じてしまいます。文林のほんの些細な一言がそうさせてしまうのです。切ないですね・・・このままでこの二人が幸せになるのかな、と心配になってしまう展開です。さて、次巻はどうなるのですかね~
2021.02.14
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部兵士の娘II」です。本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部 兵士の娘 II / 香月美夜 【本】マインちゃんの第二巻です。本好きの女子大生が本が全くない生活に転生してしまったわけですが、「ないのならつくってやろうホトトギス」という感じで本づくりに挑戦します。今回は紙作りに挑戦です。とは言え、紙を作るためには道具がいる。気を煮る鍋一つとっても子供が簡単に使えるものではありません。そういう意味では釘一つだって貴重品です。そんなマインを助けてくれたのは商人のベンノさんです。1巻でベンノさんのお店の商人見習いになったマインとルッツに先行投資といって道具も材料も、さらには倉庫まで手配してくれます。マインに価値ありと見抜いたベンノさんの慧眼と言えるでしょうね。一方、ルッツはマインの体調を気遣い、一番の理解者でしたが、マインの正体に疑問を抱きます。マインは正直に本当のマインはもう存在せず、別の存在がマインの体に入っていることを告白するのでした。マインなりの正直な気持ちを聞いたルッツは「俺の知ってるマインはほとんどお前。だから俺のマインはお前で良いよ」とマインを認めてくれるのでした。愛というか、やさしさというか、とても温かい心ですね~その後、順調に事が進むかに思えたところで、マインの体調が悪化。身食いを防ぐ方法はあるのか!?フリーダは大金があればなんとかなるようなことを言っていたが・・・というわけで話は続きます。この辺はまだアニメの部分ですね。私はアニメから入った人なので、早くアニメを追い越してその先を読みたいです。
2021.02.12
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「Fake」です。Fake/五十嵐貴久【3000円以上送料無料】主人公はしがない探偵をやっている男、宮本。彼を一度世話になった叔父の息子をカンニングで大学に入学させてあげたことがあった。叔父の息子は無事大学に合格したのだが、どこからかその噂を聞きつけた男がどうしても息子昌史を大学に合格させたいと懇願してくる。最初は断っていたが、熱意に負けて、もう一度同じ手口でカンニングを試みる。100%うまくいくはずだったが、どこからか情報が漏れ、試験は不合格、彼は探偵を続けることができなくなり、無職に。2回目のカンニングの依頼は実は罠だったのだ。昌史の不正を明るみにすることで、昌史の父親の地位を奪うことが目的だったのです。そう、探偵事務所を訪れた男は昌史の父親ではなかったのです。巻きこまれた形で、職を失った宮本は同じく被害を受けたメンバを集めて10億円を賭けたギャンブルを仕掛け、逆転を狙うのでした。当然100%勝つギャンブルなどないわけで、勝つためにはイカサマが必要になります。様々なイカサマの準備を施して勝負に挑む宮本。果たして勝負の行方は・・・と書けば格好良くイカサマが決まりそうなものですが、素人が考えるイカサマがギャンブルのプロに通じるわけがありません。そりゃそうですよね。ハウスからしてみればイカサマなんてやられたらたまったもんじゃないですから、ありとあらゆる対策を講じているはずです。そして、その結果・・・あっと驚く展開が待っているわけですが、まあまあ面白かったです。
2021.02.11
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「キング&クイーン」です。キング&クイーンもう何冊も読んでいる柳広司さんの作品です。主人公は失意の中SPを辞職した女性警察官の安奈。祖父に武術の達人を持ち、父はその達人の素質を全く継がなかったものの警察官になっています。その父に憧れ、さらに祖父から武術のすべてを教わった安奈はSPになる要素を多分に持った存在でした。SPは天職、そんな想いすら抱いていた安奈にある事件が起き、安奈はSPをさらには警察官を辞めてしまう。そして、あるバーで働いているのでした・・・そんな安奈はなりゆきでチェスの世界チャンピオンであるアンディの警護を請け負うことになってしまいます。非常に癖のある男で、敵の一人や二人いてもおかしくない。しかし、それにしてもアメリカ合衆国からパスポートの失効を言い渡されるなどアメリカ大統領から命を狙われているように見える一方で、実際に彼の前に現れた実行犯は三下のようなチンピラで、ちぐはぐな印象が残ります。果たして、何が真実なのか・・・物語は現在と、安奈の過去、そして、アンディの過去が順番に描かれて行きます。アンディの過去と現在が一体どこで交わるのかと思ったら・・・なるほどね~という感じで納得。タイトルの「キング&クイーン」という名前はチェスが題材だから、と思っていたのですが、ほかにも意味を持っていたんですね。ただ、結末はそこまで大掛かりなものではなく、国家転覆とかそんな話にはなりません。ごくささいな、そして、安奈という存在ができる限りのことをして、結末を迎える、という感じです。非常に読みやすくて、面白かったです。
2021.02.08
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「ランドスケープと夏の定理」です。ランドスケープと夏の定理【電子書籍】[ 高島雄哉 ]久々に本格的なSFを読んだな~という感じです。主人公のネルスは姉に若くして地球随一と謳われる宇宙物理学者を持つ。姉は天才にして、気が強く、なんでも思い通りに進めようとする存在でネルスはたびたび姉に振りまわれていました。姉は量子ゼノン技術とそれを応用した記憶転送技術を研究しています。記憶転送技術とは人間から取り出した魂とも言うべきものを別の場所に転送するものです。取り出した魂は量子化されているので、それこそ一瞬のうちの別の場所へ転送が可能で、応用すれば遠く離れた場所への魂へ転送し、そこで作業して戻ってくるなんてことも可能になる・・・という画期的なものです。しかし、この「戻ってくる」という部分が問題で、もし転送された魂が戻ってくるときに肉体の方が何らかの経験をしてしまっていると、記憶の断面がずれてしまい、元の場所に収まることができないのです。そこで量子ゼノン技術というものを使って、体を完全に停止した状態にしておく、というものです。なんか壮大な話ですね。で、3年前、記憶転送技術の被験者となったネルスですが、転送中に量子ゼノン停止が解けてしまい、転送した魂が戻れなくなってしまいます。ただ、肉体の方にも魂は残っている(魂をコピーして転送するという感じでしょうか)ため、この失敗の結果、魂は2つになってしまったのでした。それ以外、ネルスは姉と一度もあっていなかったのですが、急にL2(ラグランジュ2)の宇宙ステーションに呼び出されます。研究をして、量子ゼノン停止を安定的に継続できるめどができたようなのですが、果たして姉の目的は・・・。姉に振り回されるネルスですが、ネルスはネルスで数学者として、なかなか画期的なそれこそ天才の姉ですら思いつきもしなかった理論を発見します。そういう意味ではネルスも天才と言えるのかもしれません。ネルスの発見した理論は「知性定理」と呼ばれるもので、「あらゆる知性はお互いに翻訳が可能」というものです。同じ物理法則の中で生きている者同士は結局同じ法則の中に縛られているわけでそういった意味では鳥であろうと、虫であろうと最終的には翻訳が可能という可能性を示した論文です。姉の発見も凄いしキーとなるのですが、ネルスの発見のこの物語のキーとなり、この第一の定理(夏に発見したので、「夏の定理」とネルスは呼んでいる)の先に第二、第三の定理もあったのです。これより人類は新たなステージへと進むことになるのです。ラスト、ネルスはちょっと前に幸せになっていて、そんなことには無縁だと思っていた姉も幸せになっちゃうのはとても不思議だったけど、面白かったです。世界のすべての謎を知りたい、自分がいま思いつかない疑問を知り、その謎を明かしたいとおよそ世界全ての解き明かしたいなどという彼女がそういう幸せを選ぶというのは弟をライバルだと感じ、自分も負けられないと思った結果なんですかね。内容は難しい言葉がバンバン出てきますので、少々難しく感じますが、とても面白いです。
2021.02.07
コメント(0)
![]()
書籍の感想です。今回は「未来職安」です。未来職安 [ 柞刈湯葉 ]近未来、機械がどんどんどんどん、発展して、さらにどんどん発展して、およそほとんどの仕事が機械化されたとしたらどうでしょう?レストランは自動化され、ウェイトレスもレジ係もおらず、料理も自動で作られ、教育もタブレットで習熟度合いによって自動的に問題が配布される。乗り物も自動で運転され、宅配も空からドローンがお届け、と何もかも便利な世の中。この物語はそんな世の中の姿を描いています。まずなんでもかんでもシステム化されてしまったので、ほとんど仕事がない。そのため、99%の消費者と1%の生産者に分かれ、99%の消費者は働かず生きていく。生きていくのもギリギリなお金だけ渡されることとになりますが、贅沢しなければ生きていける。また、奥さんや子供がいると手当てが増えるので結婚し、子供を産む人が増える。残りの1%の人は生産者として働く。とはいっても、生産者の中にも本当の生産者もいれば、インチキ生産者もいる。本当の生産者とは、自動化の仕組みを考える人とか、より少ないデータから学習して、AIに反映するロジックを考える人とか。で、インチキ生産者とは、万一自動運転車が事故を起こした場合に責任を取って辞任する人、とか、高級店である風を装うために店頭に立っている人とか、ほとんど働く人がいない中、職安を経営している人とか。主人公の目黒奈津は県庁に勤めていたが、自動車が起こした事故の責任を取らされて県庁を辞めさせられてしまう。仕事がなければ実家に戻って消費者になるほかないが、どうしても実家に戻りたくない奈津は伝手を辿って職安を経営している大塚のもとで働くこととなる。しかし、大塚の職安で仕事を求めてくる人々は変わった人ばかり。そして、大塚の提示する仕事も果たして生産的か、非常に疑問符がつくものばかり。でも考えてみればそれは当然で、世の中マニュアル化できるような仕事は全部機械化されてしまっています。だから機会ができないことと言えば、超高度な内容で、資格も能力もない人が簡単にできるようなものではありません。だから、・わざと監視カメラに写ってプライバシー問題を発生させ、解析等に使わせない ようにする仕事・廃村の村に住み、人が住んでいることで村の統合を防ぐ仕事とか本当に役に立たなそうな仕事が紹介されたりします。なんか本当にそのうちありそうだな~と思って怖いなと思った小説でした。でも、なかなか面白いです。「いまの県警は司法器官が内蔵してあるからちゃんと警察法に準拠した操作ができるけど、人間の警察が法律を破らずに捜査なんてできていたのだろうか、と時々不思議に思う」なんていうその近未来の人の常識に照らして、逆に現代の様子をほわーんと俯瞰する描写がそこかしこに出てくるのですが、とても考えさせられます。そうですよね。人間ミスもするし、ルール全部覚えていられないですもんね~となると、機械に任せたほうが良いのか?でも何もかも機械に任せたら、人間という存在の存在価値はどこにあるんでしょうか?なんてことを考えさせられました。とっても面白かったです。
2021.02.02
コメント(0)
全13件 (13件中 1-13件目)
1


