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作詩作曲した「プライド」という曲が聴けます。
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「見果てぬ夢」
22世紀、純粋な少女がいた。
少女は、見果てぬ夢を追いかけていた。
その夢とは、ロボットと結婚すること。
そして、ロボットの子どもを生むこと。
人間はロボットと共存しているが、
結婚はおろか、恋愛さえ禁じられていた。
ロボットは差別されている。
人間と同様の外見と能力を持ちながら、
人間に奉仕する為だけに作られている。
ロボットにも意志と感情が
植えつけられていたにもかかわらず、
人間に逆らい、平等を叫ぶことは、
許されていないのだ。
少女はいつも疑問に思っていた。
なぜ、ロボットに恋しちゃいけないの?
同じ学校に通い、一緒に時を過ごしているのに、
好きになっちゃいけないなんて、無理だわ。
人間よりロボットのほうが、
よっぽど純粋で素直な心を持ってる。
従順というだけでなく、醜い心を持っていないから。
人間に似せて作られたはずなのに、
かえって人間よりも優れている。
なのに、不当に差別されてるわ。
ロボットが優秀なのは、人間が作ったから?
でもロボットが人間を作ったら、
もっと良い人間が出来るかもしれない。
ロボットがロボットを作る時代に生まれた私達には、
人間がロボットよりも優っているとは思えない。
ロボット無しでは生きられないなら、
ロボットに支配されてるのと同じだわ。
私はロボットに魅せられてしまった。
恋してしまったのだ。
別にロボットだからという訳ではない。
ただ好きになったのが、たまたまロボットだったというだけ。
それがなんでいけないの?
「好きな人が出来たら、家に連れてきなさい」
と言うから連れてきたのに、どうしてロボットじゃいけないの?
人間だから偉いというの?
いつもは、人間もロボットも平等だなんて
私に言ってたくせに。
本当に大人って、嘘つきだわ。
パパは少なくとも科学者だから、
もっと進歩的な考えを持ってると思ってたのに、がっかりした。
ママはいつもすぐに感情的になってしまうから、
仕方ないけれど・・・
パパやママがどうして反対するのか分からない。
私には人間とロボットの区別なんかつかない。
動物と機械の違いなんて何よ。
生活するうえでは何の変わりも無いじゃない。
ただ、食べ物が違うだけ。
私の名前はベス。彼の名前はローリー。
ロボットにだって、ちゃんと名前はあるのよ。
人間と変わりはない。
ただ、名付け親が、コンピューターセンターのホストコンピューターだってことだけ。
ロボットはみな、コンピューターによって制御されている。
普段は自分の意志で動いているのだけど、
人間に逆らったりすれば、コンピューターから指示が来る。
でも、余程の事がない限り、自由なの。
まあ、人間に対する神様みたいなものかしら?
そのロボットの神様、コンピューターを作ったのが人間だから、
人間はロボットの神様というわけ。
でも、人間もコンピューターに支配されてるんだけどね。
そんなことはともかく、ローリーは素敵なの。
私が一目惚れしちゃったくらい!
私、今までそんなに男の子に夢中になったことはなかった。
もちろん、一目惚れなんて、論外よ。
でも私は決して、顔に魅かれたわけではないわ。
彼の言動を見て、尊敬と言うか、憧れを抱いてしまったの。
彼の態度は立派だったわ。惚れ惚れしちゃうほど。
学校で、人間がロボットをからかっていた。
ロボットは能力があって、尚且つ人間に逆らう事が出来ないから、
出来の悪い人間は、ロボットをいじめて喜んでいるの。
ロボットも、人間に暴力を振るわない限り、
コンピューターに止められる事はないのだけれど、
逆らうと後が怖いから、抵抗しないの。
だからまた、奴らがいい気になるのよ。
人間だって、みんながロボットを馬鹿にしている訳ではないけど、
やはり係わり合いになるのが怖いのだ。
そういう私も、実を言うと怖い。
でも、勇気を出して、止めようと思ったの。
「何をしているの。止めなさいよ。そんなこと。」
「女が口出す事じゃない。ひっこんでろ。」
奴らが私に向かってきた。何をされるか分からない。
「男ならいいのかい? 止めてもらおうか。」と、
そこに彼が現れたのだ。正直言って、ホッとした。
でも、今度は彼が標的だ。
「ロボットが、何を? 生意気な!」と言いながらも、
いいカモが来たと喜んでるのが、見て分かる。
「ロボットには何をしてもいいと言うのか?
そのロボットを放せ!」
毅然とした態度で言う彼に圧倒されて、
奴らは一瞬ひるむが、頭を振り上げる。
「ロボットなんて、人間様にお仕えするために
作られたんじゃないか。
偉そうな口をきくんじゃない。
自分を何様だと思っているんだ?」
「僕は確かにロボットだ。
ただし、人間に盲従するだけのロボットではない。
自分の意志と、誇りを持っている。
おまえたちにそれがあるのか?」
「ふん。ロボットの誇りって、何だ?
ロボットは人間が作ってやったんだ。
その誇りとやらも、人間に作られたものじゃないか。
いい加減にしろ。」
「たとえ、最初は人間に作られたものだとしても、
今はロボットが自分達の手で、
ロボットを作っているのだ。今の人間には、作れまい。」
「俺達は、おまえ達ロボットの神様なんだぞ。刃向かう気か?」
「支配されているのは、お前達の方だ。
ロボットがいなければ、何も出来ないではないか。
現に今だって、おまえ達はロボットにレポートも
何もかもやらせている。
いなくて困るのはおまえ達だぞ。」
「口では敵わなくても、力では負けない。
ロボットは人間に逆らえないのだ。やっちまえ。」
奴らは大勢で彼を囲んだ。
頭が悪いだけに、腕力には自信があるらしい。
一人が彼の後ろから、ナイフで切りかかった。
彼は振り向くと、腕をつかんだ。
「いてて!放せ。馬鹿野郎。このロボットの出来損ない!」
腕をねじ上げられ、ナイフが落ちた。
口は何やらうめいていたが、顔は真っ赤だ。
彼はゆっくりとナイフを拾い上げると、腕を放した。
「こんな物騒なものは、持ち歩かないようにするんだな。」
「覚えていろ。今度会ったら、コテンパンにしてやる。」
ナイフをひったくると、負け犬の遠吠えをしながら、走り去った。
見ていたものはみな、安堵の溜息をついた。私は彼に走りよった。
「ありがとう!助けてくれて。すごいわね。あなたって!」
「別に君を助けたわけではない。同志を助けただけだ。」
彼は、倒れていたロボットを助け起こすと、一緒に去っていった。
それが彼との出会いだった。
私は一目で恋に落ちてしまったのだ。
<続く>
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