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「博物館のファントム-箕作博士の事件簿-」(伊与原新、集英社文庫)を読む。国立自然史博物館で働くことになった女性分類学者・池之端環。植物標本の整理を命じられた環は、「赤煉瓦」と呼ばれる旧館で自称「博物学者」箕作類-渾名はファントム-と出会う。「どんなものも絶対に捨ててはならない」をモットーとする箕作と片付け魔の環の凸凹コンビが、博物館で発生する様々な事件を解決していくという連作短篇集。博物館勤務の環はもちろん理系人間であるが動物にも植物にも詳しくなく、得意なのは数学とコンピュータだけというところが他人とは思えない感じで作品に入っていきやすい。一方の箕作は典型的な専門バカといった感じで、これまたどんな理系の分野(特に理学系?)にもいそうな感じ。この二人が組むとどんな「化学反応」が起きるのか? もちろんそこが読みどころのひとつ。でありながら、理系の専門的なことだけで凝り固まった話だけではなく、宮沢賢冶やエドガー・アラン・ポーといった文学のイメージが強い人物の意外な(私が知らなかっただけというのもあるが)理系的一面なんかも描かれていて、とっつきやすさ・馴染みやすさが出てるなぁと思う。いつものように「角折り読法」で読んでいったら各短篇で1箇所ずつ角を折ったので、以下でご紹介。「宮沢賢冶は特別だ。彼には博物学者という一面がある。賢冶は”石っこ賢さん”と呼ばれていて、幼いころから鉱物採集に熱中していた。盛岡高等農林学校では、関豊太郎教授のもとで地質調査もやっている。そこで培われた地学の専門知識は、彼の作品に存分に生きている。というより、むしろ地学は彼の文学世界の根幹をなすものだ」(「呪いのルビーと鉱物少年」より)「学生のときだって、授業でやらされた実験は、私のせいでことごとく失敗しましたよ! だからコンピューターを相手にしているんです。手先が不器用でも、コンピューターはちゃんと答えをだしてくれますからね」(「ベラドンナの沈黙」より)「秩父は三峰山にある三峯神社は、オオカミ信仰の中心地です。オオカミは御眷属、つまり神の使いであるとされた。秩父、奥多摩、丹沢などの地方では、今もオオカミ信仰が根強く残っています。そもそも、我が国では古代よりオオカミを神獣としてあがめてきました。古くは『万葉集』にもあらわれる『大口の真神』とは、オオカミのことです。」(「送りオオカミと剥製師」より)「ポーの著作の中で、彼が生きている間に重版されたのは、『貝類学者入門』しかない。推理小説の類は、まるで売れなかった」(「マラケシュから来た化石売り」より)「ある日、ホールデンは神学者の一団に囲まれて『創造主の特質について、どんな結論が下せるか?』という質問を受けた。ホールデンはこう答えた。『確かなのは、神は甲虫をたいそう好まれたということです』」(「死神に愛された甲虫」より)「このホモ・エレクトスの子孫が五十万年前に枝分かれして、ホモ・ネアンデルターレンシスとホモ・サピエンスに進化した。つまり、ホモ・エレクトスを親だとすると、ネアンデルタール人と現生人類は兄弟のような関係になる。よく誤解されているが、ネアンデルタール人が進化して現生人類になったわけではない」(「異人類たちの子守唄」より)去年からの積み残しのうち、やっと1作読了。今年1冊目(315ページ/累計315ページ)。博物館のファントム-箕作博士の事件簿-/伊与原新
2017.01.09