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「逆問題の考え方-結果から原因を探る数学-」(上村豊、講談社ブルーバックス)を読む。私のような地震学徒にとって避けて通れないのが逆問題・逆解析の類。本書では、重力探査や、恐竜絶滅の原因と言われている隕石衝突、物理でおなじみの振り子、量子力学、海洋循環などの豊富な具体例を通して、「逆問題とは何か?そしてどう解くべきか?」を解説している。筆者が数学者ということもあり、数学的な側面についての記述が充実しているのも特徴である。上記の各々の具体例についての計算手順がきちんと示されている。例えば重力探査の例では、万有引力の法則から重力異常の式を導くなどであり、これがあるおかげて読者はイメージが湧きやすいし、理解しやすい。更に嬉しいことに、逆解析の基本である連立1次方程式の安定した解の求め方についても、数学的にかなり充実した記述がある。大学院時代に習った擬似逆行列(本書の用語では、ムーア・ペンローズ逆行列)や特異値分解、チホノフ正則化解(いわゆる重み付き最小2乗解)などについて、改めて理解が深まった。言われてみれば当然なのだが、例えばCMT解析で観測点が1点しかない場合に、方程式3本でモーメントテンソルの5ないし6成分を求められるというのも、不足決定系という本書の言葉で理解できる。もちろん、過剰決定系の場合も言わずもがなである。本書の最後のほうでは再び量子力学が登場し、そこでは行列力学、KdV方程式、ソリトンなんて用語に出会う。さすがにこの辺になると量子力学って難しいなぁと改めて思うが、量子力学にも逆問題があるのかと思えばちょっと親しみも湧く感じである。強いて難を挙げるとすれば、くだらないジョークがあちこちにちりばめられていることだろうか。まぁそれも、数式が充実していることで充分カバーされていると私は思う。変な話、もうちょっと記述を充実させれば新書レベルを超えて大学の教科書としても使える1冊になりそうだと思うが、敢えて新書なのかも知れない。お手軽に、でもきちんと逆問題について学べる良書だと思う。最後に、気に入ったところを引用させて頂こう。このように、解が誤差等による観測データの変化に対して鋭敏に動く状況を、解の誤差に対する鋭敏性と言う。逆問題は、原因を定量的に求めるものである。そのために求めた解がささいな誤差のおかげで決定的に違ってくることは、厳密な計算から得られる答えが無意味で認めがたいものであることを意味する。この「解の誤差に対する鋭敏性」は、逆問題を解く上で、しばしば直面することになる。その原因は、逆問題の非適切性にある。観測を精密にすればするほど解が誤差に対して鋭敏になることだってあり得るのだ。2015年の2冊目読了。逆問題の考え方-結果から原因を探る数学-/上村豊
2015.01.29
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「酒場詩人の流儀」(吉田類、中公新書)を読む。BS-TBSの「吉田類の酒場放浪記」を観ていて知ったこの本は、酒場詩人・吉田類さんが新聞に執筆していたエッセイを1冊にまとめたもの。それぞれのエッセイは、自然と人間・科学・技術から宗教・芸術・歴史・文学・映画・音楽そしてもちろん旅・食・酒…と非常に幅広いテーマを扱っている。吉田さんの様々な経験に裏打ちされた博識ぶりがうかがえる。もちろん「博識」なんて言葉はご自身は嫌うかもしれない。本書の表現を借りれば、「博識なんてものじゃあない」とでもなろうか。元となったエッセイの掲載開始時期が東日本大震災の発生のころと重なることもあり、吉田さん流の自然観・人間観に基づく震災論(などというとまたお叱りを受けるかもしれないが)が私には興味深い。ちょっと引用させて頂こう。風光明媚で緑豊かな列島といえども、日本は絶えず地殻変動を含む自然災害の脅威にさらされてきた。江戸の後期に隆起した象潟もあれば、噴煙を上げる九州の桜島や新燃岳だって見てきたばかりだ。津波のような眼前に迫る危機の回避は、経験と訓練された対応能力が要る。せめて原発に象徴される人為的危機だけでもコントロールしたい。 ハイテクの罠に墜ちたる不夜の街あと、個人的に気に入った一言をあげるとすれば、40歳代の友人におくったという、共に惑おう。汝、悟るなかれ。だろうか。新たな座右の銘としたいところだ。2015年の1冊目、ようやく読了。酒場詩人の流儀/吉田類
2015.01.28
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