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DHHU外伝グレイ・イーター編その5 「今開けます」 手をかざすセレスティア。彼女は異能者でプラズマキネシスである。 「何も無いように見えて実は……ですねぇこの施設」「ええ、一々驚かれて説明するのも面倒なので色々と隠してあります」 最奥までリフトで降りる。培養槽に白い肌の人間が浮かんでいる。 「これがベースになります。隣にはまだ成長していない個体が並んでいます」 「このベースの素体にワタシの魔法で白飛蝗の属性をつけるのですね?」 「ええ、それだけで結構です」 「フゥ~ン……ワタシじゃなくて貴女たちなら遺伝子操作で同じような者を作れるでしょうに」 「もちろん試していますよ、考え得る限りの改造人間兵の実験は。知りたいのは相反するオーグル細胞の力と白魔女の力の反応。細胞が拒否反応を起こさなければ成功ですね」 「えっと……原種ではないもののオーグル細胞を利用しているのコレ?」 「改良を加えた亜種ですね。細胞分裂が過度に進むと崩壊するので原種のように寿命の限り再生は出来ませんがそれでよいのです制御するには」 「貴女はこっちのジャンルの研究者に見えないけど……詳しいのね」 「ええまぁ……私は施設管理が主な仕事でして中心となって研究している者は別です」 セレスティアの外殻脳にはアイスクラーピウスと施設のデータが入っている。 「この施設にいると頭がぼんやりするね、貴女の異能と関係してるでしょ?」 「そうです、流石ですねミス・グラス」 「怖い怖い……この施設に入った時点で貴女に生殺与奪握られるんだ」 グラスの体に無数の切れ目が入りそれぞれが飛蝗の模様になっていく。 「ご安心を、そんなに警戒しなくとも何もする気はありません。安全のためのセキュリティですよ」 「よかった……じゃあ仕事しますか」 *** 刀耶、リティーシャ、冥珂はTMI長官ジェームズから案内された施設に到着していた。 「一見普通の小型機の飛行場だなぁ」 周囲が砂漠の飛行場。セスナやプロペラ機のレンタルをやっていると表示を見て気が付く一行。 「冥珂さんの魔法で通訳もいらないの便利だぜマジで」 「まーこういう認識系の魔法は危ないんやけどね……あたしは信用してくれていいけど」 「え? そうなんっすか?」 「全く別の意味とかに認識させる事も出来るしなぁ……魔女が良く使う罠ではあるよ」 「へぇ~……」 「トーヤ! ナイトケースを着ていればそんな心配はありませんよ!」 透明な完全紫外線シャットアウトのバブルヘッドヘルメットを被ったリティーシャが言った。 「へいへい、いつでも油断すんなって事だろ? お前とか冥珂さんと別行動するときは絶対にナイトケース着るから安心しろ」 「それでいいのです!」「何があるか分からんしな」 格納庫に近づくとシャッターの前のカメラから声がした。 「ミスター・ジェームズから送られてきたボーイたちだね? 俺はビンセント」 中年男性を思わせる声がした。 「ええ、作戦の事で着ました」 「オーケーオーケー……本人確認完了っと……今開けるから入ってくれ」 シャッター横の金属扉から中に入る三人。神名製のパワードスーツを着た兵士が見える。 「表向きはさびれたレンタル飛行場だけど実は……って奴さ!」 「軍の施設なんですね」リティーシャはナイトケースハートの外殻脳にスキャンさせる。 「話は聞いているよハイパーレールガンを使うんだって?」 「ええ、そのくらいのパワーが無ければ止められないモンスターが出現したので」 「うんうん、一応送られてきた資料を見てシミュレーションにはかけてみてある。射角が狂わなければ跡形もなく吹っ飛ばせるぞ」 「それなんですがビンセントさん、ハイパーレールガンの資料を見せてくれませんか?」 「オゥ……それは駄目だな。使用するまでは何とか上が了承したが」 「グレイ・イーターと呼ばれるモンスターを倒しきるにはナイトケースのストライクスマッシュの力を使わなければ駄目なんです!」 「説明してくれるかな?」 リティーシャはビンセントにナイトケースの説明をする。 「フゥーム……主任と話して見るかね? 私では君のナイトケースとハイパーレールガンを組み合わせ出来るか判断できんのでね」 「お願いします」 ガレージ内にあるプレハブ小屋に移動する一行。中には眼鏡をかけた若い男が居た。 「えっと……少佐、誰なんですその人ら?」 「彼が主任のピートだ。ピート、この者たちと話をしてくれ」 「え、あっはい……」 様々なファイルや部品で散らかった長テーブルに案内するピート、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して並べた。 「何の用ですか?」「実は……」 リティーシャはピートにグレイ・イーター討伐作戦を伝える。 「面白い! 面白いけど……テストも無く本番一発きりってのがちょっと不安だなぁ~……いや待てよ……リニアライフルで実験すれば……」 端末を忙しく操作するピート。 「このリニアライフルで実験しよう! 原理的にはハイパーレールガンも同じだからね! 早速地下の実験場に行こう!」 厳重なセキュリティに守られた扉をいくつも通り20メートル正方形の空間が見える場所にたどり着いた。 「僕の権限でしばらくはここは誰も使わせないようにする。ここで君のナイトケースとの組み合わせ実験をしよう!」 「いいですね」 リティーシャとピートは技術者として意見を出しあいながらシミュレーターにデータを入力し議論を交わし合う。刀耶と冥珂は邪魔にならないように横の控室でくつろぐことに。 「後は待ってるだけなんすかねぇ~」 「やれる事がない訳ではないで。グレイ・イーターの様子でも見る?」 冥珂はテーブルに水晶玉を置く。水晶玉に映し出されたのは体長10メートルをこえる恐竜を思わせる姿のグレイ・イーターがゆっくりと街のあらゆるものを食べながら進む様子であった。 「前より弱ってるし成長速度も遅いけど……慎重に強くなるために行動してるようにも見えるわ」 「そうですね……邪魔してくる軍とか警察には対応するけど好き勝手暴れてる様子はないですね」 「TMIのエージェントが見えるね」 「あ! ホントだ!」 *** 「何て硬さよ……」 TMIエージェント・カテゴリー5エアロキネシスの早乙女ルキナは空気圧縮で発射したアスファルトの破片が輝く装甲のグレイ・イーターに弾かれたのを見て言った。 「あの輝き……チタンか?」 ルキナと同じエンジェルチームのマイケルが通信で呟いた。 「ブレス攻撃来る!」 チームメイトのカレンが叫んだ。 ルキナは自分に纏っている空気の鎧を操作して加速、グレイ・イーターの熱弾ブレスを回避した。 「マイケル、カレン! もっと離れて!」 ワゴン車に居る二人に向かって叫ぶルキナ。 「少しでも時間稼ぎをしなきゃいけない……悔しいけどあたしにはアイツを倒すことはできない」 連続で瓦礫弾を発射する。金属音を響かせて弾かれる。 「とりあえず……行動を制限できれば」 「バオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」 凄まじい咆哮を放つグレイ・イーター。音の衝撃で周囲の建物は崩壊、待機していた軍、警察の人間は吹き飛ばされる。ルキナは風の鎧が幸いし気絶寸前で耐える事が出来た。 「あ、マズい!」 咆哮で体が硬直し次の動作に移れない状態のルキナ、視線の先に居るグレイ・イーターの口内に燃えるものが見えた。 「サイコマグナムぅーーーーーーーーっ!」 ハリーから学んだ力の操作方法を生かしてエネルギーを圧縮した熱弾に変え放つブレス攻撃。一発一発が戦闘機の爆撃に匹敵する威力を持つ。 「ああああああああっ!」 咄嗟に手をかざして空気操作を行うルキナ。サイコマグナムが衝突。衝撃を受け止めきれずに後方の雑貨店に激突する。 「くぅ……」 ルキナは致命傷を免れたが何度もサイコマグナムを受け止める自信はない。 「撤退しろルキナ!」「退いてルキナ!」叫ぶマイケルとカレン。 「こんな……いつもあたしは肝心な時に役に立てない! 何がカテゴリー5だ!」 「君にしか出来ない事は沢山ある! ここで奴を倒すことだけに拘るんじゃない!」 「そうよルキナ!」 「………………わかったわ」 瓦礫と化した雑貨店から飛び出してマイケルとカレンのワゴンに向かう。そして空気操作でワゴンを浮かせてジェット機めいて飛ばして撤退する。 「ほら、こんな事が出来るのはTMIでも少ない」「サイコキネシスでもこのレベルはほぼいないものね」 「ありがとうマイケル、カレン……あたしまた冷静さを失っていた……」 *** TMI合衆国支部―― 「でかしたぞエンジェルチーム! 奴は君の攻撃を警戒して金属化で重量を増している。侵攻速度は半分以下になった!」 『ですが長官、硬くなってしまっては例のハイパーレールガンの作戦に影響が出るのでは?』 「単純に硬いだけではハイパーレールガンは防がれんよ。問題は効果的な当て方なのだ」 『当て方?』 「奴のコアは心臓か頭部にあると熱源反応から推測される。二つに分けているのだとすれば両方同時に撃ち抜く必要があるのだ」 『つまり真上か真下から撃ち抜く必要が?』 「或いは転倒させてだ」 『では次の作戦はグレイ・イーターを転倒させると』 「ああ、戻ってから話をしよう」 ルキナたちが合衆国支部に戻るとUチームの三人の他に聡明な雰囲気の中年女性、副長官で磁場を操るサイコキネシスのアーニャ・アイゼンハートにカテゴリー5パイロキネシスのイグネイシャス・ファイマンが集まっていた。 「アーニャさん!? 本部から出てくるなんて珍しい……それにアリナ達……平気なの?」 「適材適所というものがあるでしょう? 今回は私の出番って訳。何かあったらジェームズがなんとかしてくれるわよ」 アーニャはジェームズに視線を送って言った。それを見てジェームズは軽く咳払いをした。 「……」 アリナは消えそうな声でつぶやいた。耳を寄せたフローレンスが代弁する。 「役に立てる、とアリナは言ってます」 いつもの張り詰めた空気を発するアリナはそこになく、覇気のない魂が抜け落ちたのような目をしている。 「アリナ! あんたそんな状態で……」とルキナが叫んだ直後、アリナのガントレットが砕けた。拳を握りしめた力で崩壊したのだ。 「問題ない……コントロールができないだけ。あの敵を叩くのならできる」 Uチームのフローレンスと哿の顔を見るルキナ。二人とも目を腫らしていて泣いた後だと推測された。 「……Uチームがいいのならこれ以上何も言わないわ。長官も了承済みっぽいし」 「これで終わってもいい……もう異能が無くなってもいい……絶対にあの敵だけは」 「……」 『心配するなルキナ君、アリナ君が打撃でグレイ・イーターを転倒させたら強制的に本部に転送する』 ルキナにテレパシーを送るジェームズ。 『長官……アリナを酷使しすぎなのでは』 『君の言う通りだ。しかし作戦に参加させなければ彼女はずっとあの状態だろう。全力を出させて落ち着かせる必要があるその為には強大な敵がうってつけなのだ』 『もしアリナの出番がなくなったら?』 『それはその時に考えよう』 ルキナは考える。これまで出現したグレイマン相手に直接戦ったカテゴリー5はアリナとイグネイシャス。二人とも奇跡的に生き残り他の者と力を合わせて敵を倒した。ルキナはその舞台に立っていなかった。 「(駄目よ……余計な事を考えては……ハリーの事もあったじゃない)」 自分に言い聞かせるルキナ。自分自身の中にある英雄願望は身の回りや育った環境によるものだと理解していたがどうしても頭の片隅から消えない。 「(今はまだその時じゃないんだ、あたしの今の力ではグレイマンを倒せないと認めなきゃ……もっと異能を鍛えなきゃ)」 目の前にいる同い年のアリナを一時期ライバルとして見ていた。今は大きく離されていると感じている。それは個人の認識であってTMIのルキナの評価は低くない。様々な事態に対応できるエアロキネシスの異能は重宝されている。 *** グレイ・イーターとの戦闘を冥珂の水晶を通じて見ていた刀耶は興奮して立ち上がった。 「チクショウ! アイツを早く止めないと……!」 「厄介な敵やね」 「俺がここでナイトケースで飛び出したって何ができるかわかんけど……じっとしてられねえよ」 拳を握りしめる刀耶。 「わかるわ刀耶君その気持ち。でも今はじっとこらえるんや、グレイ・イーターをじっと観察するのが大事」 「対戦相手の動きや癖をしっかり記憶する……ゲームと同じっすね?」 「せや。刀耶君はゲーマーとしての能力がナイトケースとバチバチに合ってる。グレイ・イーターの事よう見て脳内でシミュレーションするんや。アタシも出来る事は何でも協力するで」 冥珂はタバコを取り出すも禁煙ゾーンだと思い出し代わりに飴を取り出して口に運んだ。 「このグレイ・イーターの動きについて気になる事とかある?」 「……そうですね~……やっぱりこいつも生き物の動きしてるなぁって。巨大化しても骨格があってそれに沿って関節が動いているように見えます」 「デカくなって更に重くなっても骨のある生物としての形をやめへんよねコイツ。それってどういう事になるかな? 合理的な形をとるならスライムでもええやんってなるし」 「オーグルを取り込んで変形できるようになってもオーグルになったわけじゃないんすよね。あれが仮にオーグルだとしたらあんなに巨大化しないだろうし人間に取り付くでしょうねそれが一番効率的だし。あの姿は取り込んだ人達からの記憶で大きくて強い生物のイメージを膨らませたもの、おそらく恐竜です」 「強くて大きいもののイメージにスライムはないっちゅうことやね。色んなものを取り込んで素材にしてチタン合金の皮膚を持つ恐竜まがいのグレイ・イーターに弱点はあると思う?」 「……あるはずです。地球上の生物を模倣しているのなら!」 「他のグレイマンと違いは……グレイストームは魔法使いで天候を自由に操る事が出来た。グレイビーストは生物を魔獣に変える事ができた自身も魔獣化できていた。グレイ・イーターはあらゆるものを食べて自分の力に変える事が出来る。オーグルを取り込んだことで変形能力を手に入れた。オーグルに変形しハリーに取り付いた」 「う~ん……」 刀耶は冥珂と話し冷静さを取り戻してグレイ・イーターの分析を始める。 「冥珂さん、グレイ・イーターの奴……もしかしてキメラ生物には成れない?」 「ん? ……ああ、なるほど!」 「オーグルと違ってアイツはそれが出来ないっぽい! オーグルの力を手に入れてもそのものにはなれないんだ! アイツがハリーさんの真似をしてもそれは極一部なんだ!」 「それや! だからハリーみたいに空飛んで移動せえへんのや!」 続く
Mar 30, 2025
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