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DHHU外伝グレイ・イーター編その4 アリナに受けたダメージを思い出す。いまだに痛みは残りグレイ・イーターの食欲を少し押さえている。 「ガゴゴゴゴゴゴッゴブガッ!」 顎を外しハリーのサイコパワーで無理やりトラックを小さく丸めこんで飲み込んでいく。 「何やってるんだー!」 刀耶は銃撃をグレイ・イーターに浴びせる。 「ギャワワワワー! クソが! 邪魔すんじゃねー!!」 飲み込んだトラックの体積分巨大化するグレイ・イーター。3m程の大きさになっている。 「あれはマズいか?」 「食べさせないように攻撃を仕掛けましょう! 師匠が来たらストライクスマッシュを当てる隙を作ってくれるはずですそれまで粘るのです!」 「オッケ~」 刀耶はナイトケースの銃口8門全てをグレイ・イーターに向ける。 「フルバスター!」 ナイトケースでつくられたエネルギー粒子を圧縮した砲撃を一斉発射する。ストライクスマッシュとは違い刀耶の体力は消費しない。 赤い波動がグレイ・イーターの皮膚を焼く。 「ストライクスマッシュの隙が……いけるか」 「GYAHAHAHAHAHA‼ サイコビーーーーーーーーーーーーーーーーーーームゥ!」 刀耶がストライクスマッシュの体勢をとる前にグレイ・イーターはハリーのサイコビームを目から発射。 「ぐうううううっ……!」 両腕の装甲で耐える刀耶、ナイトケース内の温度が急上昇。3500度の熱でも平気で耐える設計ではあるが負担は大きい。 「そこまでや!」 スケボーめいてギター箒に乗る冥珂が現れた。空中に浮かんだカードから6本の青白い閃光が放たれグレイイーターの体を削る。 「GYAHAHAHAHA! お前もくらえ! サイコビーーーーーーーーム!」 「効かへんで!」 冥珂の前に現れた黄金のカードがサイコビームを反射。グレイイーターの頭部に命中。 「何だその力……食らうしかないな」 「そう簡単にいくか!」 冥珂の青白い閃光でトラック装甲は徐々に剥されていく。刀耶は冷却をすませストライクスマッシュの準備に入る。 「刀耶君! アタシがアイツの動きとめるからバチコーンて強烈なのかましたって!」 「うっす!」 冥珂のカードが複数飛びグレイイーターを囲む。 「こんな物! 喰ってやる!」 カードに飛びつくもあっさり回避され飛翔するカードから電撃を受ける。 「ギャワワワワワッ!」 「よし! 今だ!!」 盾を大剣に組み換えブースターで突進する刀耶、大きく振りかぶる。 「ストライクスマッシュ!」 大剣から放たれる弧月のエネルギー。対象の全身を駆け巡りピンポイントでダメージを与えることができる。オーグルにターゲットを絞ったストライクスマッシュのエネルギーはグレイ・イーターの全身に広がった。 「トーヤ! 手ごたえがおかしいです!」 リティーシャの声が聞こえる。刀耶の目の前で両手足を広げて仰け反っているグレイ・イーターは崩壊を始めない。 「なにが起きている?」 ストライクスマッシュのエネルギーがグレイ・イーターの心臓部に集まっていく。 「GYAHAHAHAHA! 成程なぁっ! これで俺の中のオーグルを消滅させるつもりだったか。だが残念だったな! ハリーの異能を得たことでオーグルは強化されギリギリ耐える事が出来た、このエネルギーは貰っておくぜ!」 「なん……だと!?」「そんな!」「ヤバいで……」 「学びを得たぞ……異能に魔法とやら……これらでグレイマンに対抗するのだなこの星の頂点生物は。なるほどなるほど……グレイストームのように文明支配もグレイビーストのように繁殖もグレイキャリバーのように抑止力による制圧も面倒だ! 喰って強くなって蹂躙する!! シンプルで圧倒的な破壊を見せてやる!!」 「ストライクスマッシュ!」「はああっ!」 ストライクスマッシュと冥珂の魔法が放たれる。サイコフィールドを張りながら全身に口を出現させ二人の攻撃を飲み込んでいく。 「理解できれば喰うのは簡単……もっとやってこいよ」 「ヤバイで刀耶君……ああいいのうはパワーで一気に叩き潰さんと手が付けられへんようになるで」 「パワーっていってもどうします?」 「あたしが魔法で周辺の車とかぶつけたって決定打にはならんやろうな……アイツを一発でぶっ潰せるような大砲とかが欲しい……戦艦並みの」 「……」 刀耶は京都で戦ったグレイビーストを思い出す。敵が核エネルギーに匹敵する一撃を放とうとした場面が思い起こされる。 「(グレイビーストは膨大なエネルギーを錫杖メイスに込めて投擲してたな……真似できるかな?)」 「アタシは一旦退くことをオススメするで……流石にこのまま戦って無事で済むとは思えへんしな」 「最後に一回だけ試したいことがあるんですが」 刀耶と冥珂はグレイ・イーターの口から放たれる火球を避けながら言った。 「ナイトケースのエネルギーに俺のエネルギー+冥珂さんの魔法でナイトケースが耐えられるギリギリのチャージをしてアイツにぶつけたいんです!」 「一か八かって奴? 今試さなあかんかな?」 「京都でのグレイビースト戦で見たやつなんですが……」 刀耶は冥珂に説明する。 「う~ん……ちょっとオススメできひんな。さっきTMI長官ジェームズから連絡あったんやけど、TMI物理最強っていわれてるアリナちゃんでも倒し切れへんかってんで? 今ここでそれ以上の攻撃できるかな?」 「物理最強っていっても個人の身体能力アップでしょう?」 「えっとな……刀耶君に分かりやすく言うと映画ハイパーマンの主人公とガチの殴り合い出来る程度の身体能力アップやねん」 「ええっ!?」 「だからここでギャンブルせんと退いて作戦立てよ? 大丈夫アイツがこの星の何処にいようがもうアタシからは逃れられへんで仕込みはバッチリや」 グレイ・イーターの周囲が爆発し煙に包まれる。 「撤退や! リティーシャも!」「はい」「あ、はい!」 離脱する三人。グレイ・イーターはしばらく火球をばら撒きながら煙を吸い込む。 「逃げたか……まぁいいこれでしばらくゆっくりと喰い放題だな」 程なくして街には非常事態宣言が報じられ軍と警察によるグレイ・イーター対策本部が立てれる事となり住民は避難を余儀なくされた。 *** 「状況は良くない……」 机に両肘をついて手を組み目を閉じるTMI長官ジェームズ。会議室には20人程のTMIエージェントが集まっている。 「次の手を考えなあかんね」 冥珂は窓際でタバコをふかしながら言った。 「奴の位置は冥珂のおかげで把握している。ゆっくりと街を食い尽くしながら東へ進んでいる……警察は住民は避難と混乱する街中の対処、軍はグレイ・イーターをけん制して誘導、奴の体は徐々に大きさを増している現在15メートルだ」 「あんまり大きくなられるとどうにもならんくなるで」 「解っている……奴を確実に仕留める為の兵器を考え得る人脈全てを使って探している。今のことろ有効だと思われているのがハイパーレールガンだ」 「ハイパーレールガン?」 「合衆国がシークレットで開発していた兵器だ。貫通力であれば核兵器など比べ物にならないそうだ。問題は試作品の為1度外せば第2射まで数時間かかるところだな」 「確実に動きを止め一発で仕留められる体勢から撃ち込む必要があると……どの位の範囲までいけるん?」 「奴を地面に倒せると想定すれば……体長100メートルでも貫通して砕くことができる」 「外しても影響のない射線、設置場所、撃つまでの準備、グレイ・イーターの誘導、拘束……全部クリアしないと無理ってことやね?」 「そうだ……」 TMIのエージェントら、冥珂たちはそれを聞いて沈黙する。 「アリナさんにもう一度グレイ・イーターの相手をしてもらえれば……」 刀耶は発言する。 「……それはかなり難しいな。彼女は先程のグレイ・イーターとの戦闘でかなりの負担を受けた……異能者の力は精神に大きく影響する彼女はしばらく出せない」 「そうなんですか……」 「一部の者には説明したが……現在のアリナ君とハリーの状態をもう一度説明しよう」 ジェームスは壁のパネルに資料を映す。 「ジェームズの状態だが……記憶が無くなった。再生できる異能者と最高の医療器具を使った。だが肉体は治せても記憶はどうにもならない。生まれた直後の赤子と変わらない状態で今は睡眠ポッドに入っている」 「グレイ・イーターに脳を喰われたせいやね」 「ああ、一部残っていた細胞から再生したが記憶だけはどうにもならなかった。彼は今の所再起不能だ」 「アリナちゃんは?」 「PTSDを発症し非常に不安定な状態だ。グレイ・イーターに対抗するために倒したはずの念爆者に対する怒りの感情を無理やり呼び起こしグレイ・イーターを念爆者と思い込む自己暗示をかけて異能を発動させた。自己嫌悪と過去のトラウマと消えない念爆者への怒りで彼女はとても戦場に立てる状態ではない。今はUチームが付きっきりで彼女の傍にいる」 「……そう」とだけ呟いた冥珂はタバコを消して窓を閉める。 「グレイマンが活動を始めたのなら白魔女がしゃしゃり出て来るはずなんやけどジェームズ、どうなってんの?」 「実は……アイスクラーピウスに滞在している。今はセレスティア博士と一緒に居るはず」 「ふ~ん……」 ジェームズと冥珂のやり取りを聞いてざわつくTMIエージェント達。 「で、何やってる訳?」 「勿論グレイ・イーターに対抗する為の準備だとも。しかし……あの者に任せて良いものか疑問なのだ」 「どういう事?」 「白魔女はオーグルのデータに興味を持ちセレスティア博士に近づいて新兵器の開発を提案した。グレイ・イーターに対抗するには数が必要だと、完璧に統率された兵士なら勝てるとね」 「はああああ!? 冗談じゃないですよ‼」リティーシャが叫ぶ。 「解るよリティーシャくん、しかしこれはオーグルを使ったものではなくてあくまでデータを参考にしただけだ。流石に白魔女もそこはわきまえている」 「ちょっと詳しい資料を見せてください!」 リティーシャはジェームズの端末から資料をダウンロードする。 「これは……蝗害!?」白魔女の周囲を舞う夥しい量の白い飛蝗の群れが映っている。 「その通り。グレイ・イーターに対抗する為現れた白魔女は飛蝗使いだ」 「……あ~あ、最悪な魔女が白魔女になったもんやね」 冥珂は大きくため息をついた。 「白魔女が言うには東海岸にグレイ・イーターが到着した時が奴の終わりらしい。だがそれでは被害が大きすぎる……それまでに止めたいと考えているのが大統領と我々だ」 「ハイパーレールガンの準備はいつからできますか?」 リティーシャはハイパーレールガンの画像を見ながらナイトケースと組み合わせられないか考えながらジェームズに質問する。 「既に連絡はしてある、これから向かっても構わんよ」 「わかりました……ナイトケースのストライクスマッシュと合わせればグレイ・イーターを消滅させられるハズです。対象をオーグルではなく、本体に設定します」 「ふむ……では冥珂、刀耶君、リティーシャ君はすぐにハイパーレールガンの準備に向かってくれたまえ、現在侵攻中のグレイ・イーターについてはTMIのエージェントらと軍でなるべく足止めをする作戦だ」 「行きますよ師匠、トーヤ!」 透明の完全紫外線シャットアウトバブルヘルメットを装着したリティーシャはナイトケースハートのドローンに乗る。 「はいはい」「ちょっとまて……ああもういいぜ行こう!」 ジェームズから渡された座標を入力し飛ぶリティーシャ、続く冥珂に刀耶。 *** ――超大型病院飛空艇アイスクラーピウス 「ミス・グラス」 神名・セレスティア・白夜は薄緑色のロングヘアの女性話しかける。 「なにかねミス……えっと」「セレスティアでおねがいします」 ああそうだと手を叩いて薄い複眼模様の付いた眼鏡の位置を治すグラス。 「すまないね、どうも人の名前を思えるのが苦手で。君の姿声匂いは覚えているんだが」 「それで、オーグル兵量産について話をしたいのですが」 「おぉー……ワタシの魔法の力を借りたいってコトね?」 「話が早くて助かります」 「しかしねぇ……この施設に魔法に詳しいものが居ないってのは問題ダヨ? ワタシが退去した後どうするのかね?」 「大丈夫です、データを取るのに必要なだけですから。最終目標到達点は別の所ですし」 「フゥ~ン……いやぁこの施設とんでもないよねぇ。君たちは神にでもなる気かい?」 「まさか、神とは常に目標にすべき存在、自ら至ってしまう事ではないですよ」 「今の時代の人類が禁止しているものがここにはあるよね~まぁワタシはグレイマンを倒したらこの時代のこの世界から退去して白魔女神殿に戻るだけだしどうでもいいか」 「話はこのくらいで、行きましょう」 二人はアイスクラーピウスの甲板に上がる。 「おや? 施設内ではない?」 「ええ、ここはサンプルとデータ管理の保管です。何かあった時困るでしょう?」 セレスティアの操る人型戦闘兵器が4体現れる。 「ミス・グラス、そちらに乗って」「ん?ああ、背面から中に入るのね……ほうほう」 飛び上がる人型戦闘兵器。北に飛び山に向かう。 「これはこれは……こんなもの量産出来てるなら戦争で圧倒できるでしょうね」 「いえ、これは限定的な場面でしか使いません。最前線や過酷な戦場に送り込むのは別のものです」 「へぇ~……」 山の中腹にカモフラージュされたトンネル。そこに二人は入って行く。 「さぁこちらです」 人型戦闘兵器から降りる二人。厳重な金属扉にエネルギーフィールドが張られている。 続く
Feb 25, 2025
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DHHU外伝グレイ・イーター編その3「お前は念爆者です、わたしはそう認識しました。排除します」 嘘をつけないアリナが自己暗示をかける事は難しい。過去の記憶をフラッシュバックさせ無理やり目の前の相手に定着させ自分を騙す事で自己暗示をかけた。 ――目の前に居るのは念爆者。 アリナの体中の細胞が燃焼するようにサイコキネシスを発動する。 「ぐっはああああああっ!」 アリナの正拳突きをうけて弾丸の如く吹き飛ばされるグレイ・イーター。最初に念爆者に放った正拳突きとほぼ同等の威力であった。 「……この星を統べるほどの力を持ったフォームのハリーにこんなダメージを与えるとは!」 「念爆者覚悟」 「サイコビーーーーーーーーーーーーーーーームゥ!!」 「はあああああああああああっ!」 アリナは正面から正拳突きでサイコビームを迎え撃ち押し返す。 「90%」 「なんだと……ならば最強のサイコキャノンでこの辺り全てを吹き飛ばしてやる!」 サイコキャノンの構えをとった時すでにアリナは目の前に詰めている。そして手刀を叩きつけて指を折り、半身の状態からのカギ突きをグレイ・イーターの腹に打ち込んだ。 「おごっ」 アリナの拳の形に凹んだまま腹部が戻らない。アリナは体を捻り後回し蹴りをグレイ・イーターの胸に叩き込んだ。ブーツの踵が胸にめり込み衝撃の強さから打撃箇所から発光する。 アリナのブーツは崩壊。グレイ・イーターは猛烈な回転をしながら後方に飛んでいく。 岩壁を砕き跳ね飛び肉片をまき散らしながら更に飛んでいく。カギ突きのエネルギーと後ろ回し蹴りのエネルギーはグレイ・イーターの中で炸裂しネズミ花火のように飛んでいく。岩壁に衝突するとカギ突きのエネルギーが反応し肉体を破壊しながら跳ね後ろ回し蹴りは体を更に遠くに飛ばしていく。肉体が崩壊するかアリナの叩きこんだエネルギーが尽きるまで止まらない。 『風雷神殺』アリナが祖父から授かった奥義の一つである。 「ぐうううあああああ……止まらねぇ……痛ぇ……このまま崩壊するしかないのか……いや、ここは弱体化を覚悟で肉体を捨てるしか無い……ほぼ0からのやり直しになるが喰った経験知識は消えねぇからな……」 グレイ・イーターはナメクジのような体でハリーの鼻から脱出。 「あの肉体はもう使い物にならねぇ……最後に残った力で盛大に自爆してやるか」 ハリーの肉体は地面岩壁を跳ねながら徐々に光り輝いていく。 「ククク……」 自爆の命令を実行しようとした時、アリナを気配を感じ慌てて隠れるグレイ・イーター。 「(マズい……今の奴は身体能力が超人……迂闊な事は出来ん……このままやり過ごすしかないか……)」 アリナはハリーの肉体を追いかけながら違和感に気が付いた。 「気が消えた……」 跳ね飛んでいるハリーの肉体を見て呟いた。 「何かおかしい、あの敵から何かが抜けた……」 アリナは徐々に冷静さを取り戻し目の前のハリーの肉体を正常に認識出来るようになっていた。 ボロ雑巾になったハリーの肉体がようやく停止する。アリナはいつでも迎え撃てる残心の構えで接近。サイコパワーが消えていないのを確認した。 「……フロー、哿さん。わたしの座標まできてくれますか」『わかった』『はい』 通信機で二人を呼ぶ。哿の連続テレポートですぐに到着する。 「フロー、お願い」 アリナはハリーの肉体から目を離さずに言った。そして哿は二人の肩に手を置いていつでもテレポート出来る準備をする。 三人はテレポートでハリーの肉体の横に移動。すぐにフローレンスが治療を始める。 「内蔵がズタズタ……全身骨折……でも死んでない、いける!」 フローレンスの異能の力でハリーの肉体は再生していく。数十秒で元の姿に戻ったが目を覚まさない。 「体は元に戻ったけど……後は詳しい検査をしなければわからないですね」 「長官に報告しましょう。ハリーは確保したと」 「グレイ・イーターは? アリナさん?」 哿が聞く。 「どういう訳か消えました」「私もハリーの治療した時に何も感じなかったです」 「ハリーさんの肉体を捨てて逃げたのでしょうか……」 「恐らくわたしの攻撃を受けた時にどこかのタイミングで……」 「そういえばアリナ! 50%超えなんてどうやって!」 「詳しい話は後で」 *** 「トーヤ、その近くで反応があります」 「薄い反応だなぁ……消えそうだぞ」 アリナがハリーを止めた後、リティーシャと刀耶は荒野でグレイ・イーターの捜索を始めていた。 「今トーヤのナイトケースからの情報をドローンに反映させてますが……靄のようにハッキリしませんねぇ」 「そうなんだよなー……今までこういう時どうしてたんだ?」 「街中であれば同じような靄を探しますね……しかしこの荒野では……」 「グレイ・イーターにオーグルの特性が付いて追いやすいと考えてたんだけど中々うまくいかねえよな」 「そもそもこの靄ってどういう時に発生するんだ?」 「オーグルが生命の危機を感じた時ですね」 「なるほど……この周辺で奴は死にかけた。だけどその後の痕跡が無い……どういう事だ」 「考えられるのはここで飛翔する生物に取り付いたのかと」 「鳥とか虫かぁ……大分厄介だな」 「グレイ・イーターは解りませんが、オーグルは知的生命体に取り付きたいという本能があるので虫とかは一時的な緊急脱出手段かと。やはり人間に取り付くことが目的です」 「グレイ・イーターは喰って強くなるっぽいし荒野じゃあ碌なものがないから……人がいて喰うものが沢山ある街に向かったか?」 「それですね。念のためにこの近くに発信機を置いてマーキングしておきましょう、東にしばらく行くと街があるので他のメンバーに連絡をして向かいましょう」 「大丈夫かリティーシャ? もうすぐ日が昇るぞ眠くないか? ミルクは足りてるか?」 「ナイトケース・ハートを装着している間は平気ですよ。師匠を呼んで街に向かいますよ」 「ああ」 ――東の街 「流石に人が多いな……ステルスモードで探索だな」 「今日のエネルギー残量ですと連続使用1時間が限界ですから気を付けて」 「リティーシャはどこか建物の中でサポートしてくれ。ところで冥珂さんは?」 「師匠は先にこの街の核となる場所にルーンを刻みに行きました」 「核?」 「まぁ……この街の人々が何となく共通で認識している街の中心地点の事ですね。魔法などで街全体に影響を及ぼしたければ核を抑えるのが基本ですから」 「じゃあ魔法使いはまずそこを取り合うと? 陣取りゲームみたいだな」 「う~ん……大都会なんかは既に守護する何かが置かれてたり監視役がいるのでそう簡単なものでもないんですがこの国は先住民達の呪術を除いて魔法の歴史も何もないのでそうなりますかね」 「手あたり次第探すわけにもいかないし……どうする?」 「とりあえず警察、救急の回線をジャックして動きをチェックします。トーヤは私のドローンと共に空中から街の様子を観察してください」 「それでいいのか?」 「師匠のルーンから街の人々の感情を揺さぶって、私の回線ジャックで動き、トーヤの目視のデータを合わせこの街のどこで普段と違う事が起きたのか分かります」 「すげぇ……」 「この街が小さいからできるんですけどね。オータムホースの第二地区位ですから」 「あ~なるほど。俺たちのミラージュ探偵事務所は第二地区の様子を把握しているものな」 「ええ、ですから普段と同じパトロールと思って飛んでください」 「了解」 ――中央ショッピングモール 「はいはいここが街の中心やね……」 冥珂はショッピングモールの中心にある噴水を眺めて言った。 「魔法の痕跡も無し全く何も弄られてない街……そのかわり銃弾は飛び交ったんかも知れんけど」 犠牲者を弔う献花台を見つける。 「怪異なんかより銃の方が恐ろしい街……そんな街に異物が入ってきたらすぐ解るやろうな……スフィンクス?」 冥珂はギターケースに入っている猫型使い魔であるスフィンクスに話しかける。 『冥珂、人間の視線を感じるぞ。お前の格好からここでソロライブでも始まるんじゃないかと勘違いしてんじゃねーか?』 「革ジャンにパンツスタイルにギターケース……確かにね。せやけどこうやって注目されてる方が分かりやすいというか」 『銃撃事件が最近あったっぽいから見慣れない奴を警戒してんのもあるかもな』 「さーて映えスポット撮るふりしてルーン刻んで……あたしの魔力放出しよかな。反応があったらビンゴやしなくてもこの噴水に来たくなるはずや」 『扇動の暗示魔法か……近くに魔女やら魔術師がいたら勘づかれて即バトルだな』 「魔法に縁のない街やしどの道わかりやすい反応見れるで」 『いっそここでマジでギターでも弾くか?』 「アホか聞かせられるような腕してへんって! そもそもギター生成しな無いし」 『箒の姿かえて音響は端末から演奏はエアギターでいいじゃねえか適当に人気バンドのメタルのソロギターパートでも流せばどうだ?』 「なんやアンタ今日はやけにノリがええな」 『そうか? 昼食に食べた肉が上手かったからゴキゲンなのかもな』 「なんやそれ……」 冥珂は箒をギターの姿に変え音響は端末から流しエアギターを始める。徐々に感覚を思い出し音響に合わせコードを押さえる。 『傍から見たらエアギターに見えないぞ』 「いやいや、演奏の癖とか真似できひんし実際あたしが弾いたらこんな音出えへんて」 『冥珂……ショッピングモール北側にほんのわずか反応する奴がいたぜ』 「え、早っ……リティーシャと刀耶君に連絡や! スフィンクス頼むで!」 『おう』 冥珂はリティーシャと刀耶に配っているカードから音声メッセージを送る。 「中央ショッピングモールの北側に怪しい反応アリ!?」「トーヤすぐに向かって!」 ナイトケースのブースターの出力を上げて加速する刀耶。ショッピングモールの北側駐車場に膝と拳を着いて着地した。 「トーヤその着地するのなんで?」「前も言ったろ? カッコいいからだって」 立ち上がる刀耶、ナイトケースの装備を飛行モードからアサルトモードに変更する。 「さぁどいつだ?」 スキャンを始める。群集の中ひとり緑色のオーラを放っている人物を見つけた。 「アイツか!?」「確認を!」 ローラーダッシュで一気に加速して対象の前に回り込む。その人物はオーバーオールの小太りの男だった。 「どうだリティーシャ?」「胸にオーグルの反応アリです! ストライクスマッシュで一気にカタをつけるのです!」 「そうはいくか!」 刀耶は右腕の銃口を構えたと同時に小太りの男は口を大きく開け火球を吐き出した。 「くっ!」 刀耶は火球を避けながらストライクスマッシュ銃撃を放ったが僅かにそれ男のハンチング帽を掠めただけだった。 「早えええよおおおおおおおっ! ぜんっぜん喰ってねぇのにモノの数時間で追いついてきやがるとは!」 「グレイ・イーター! お前の中のオーグルが臭うんだよ!!」 「そーかよ! だがお前ひとりで追ってきたのは間違いだったな! おれはTMI最強の男ハリー・ハーマンの異能を手に入れたぜ? おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 腰を落とし全身に力を込める。 「ふううう……まだまだ喰う量が少ない……本領発揮とはいかないか。だが逃げ切るくらいの力はあるはずだ! サイコパワーフラッシュ!!」 全身を虹色に輝かせるグレイ・イーター。 「そしてサイコフラッシュタックルだ!」 瞬間移動めいた速度の体当たりを仕掛けるグレイ・イーター。 「ぐっはぁ!」 ナイトケースの装甲には衝撃吸収膜魔術が刻まれているが限界近い衝撃を受け後方に吹き飛ばされる。 「くっそ……今の一撃で意識が飛びかけたぜ」「トーヤ!何度もアレを受けるのは危険です! 空中に離脱するのです!」 「ふうううん!」 タックルを仕掛けるグレイ・イーター。刀耶は反射的に横に転がって避ける。 「あぶねー……ホーミングなしの一直線攻撃、僅かな溜めアリ……反応できれば避けれるぜ。最高難度のアクションゲーみたいだな」 「なにをのんびりしたことを!」 「飛ぶよりも機動力あげて避けて反撃した方が良さそうだぞ」 「ああもう! もう一度受けたら危ないんですからね!」 刀耶のナイトケースは常人の10倍程度まで身体能力を上げる事が出来る。ハリーの全開時の力にはとても及ばないが刀耶のゲーマーとしての勘と腕前でナイトケースの性能を十二分にまで引き出して戦闘できている。 「ここで奴を叩かないとな! 逃げられて大量に喰われた終わりだ!」 刀耶の体がオレンジ色の光に包まれていく。 『刀耶君、あたしも協力するで。ナイトケースの性能あたしのカードからの魔力供給で補助してあげる!』 冥珂の声がする。刀耶は目の前に映るUIを思考操作してナイトケースのステータスを確認する。 「あざーっす冥珂さん! まるでジョーカー着た時のような性能っすよ!」 『あたしも仕掛けつくったらすぐそっち行くで!』 「はい!」 グレイ・イーターの直線的なタックルを回避し続ける刀耶。 「ぬう……まだサイコパワーの扱いに慣れてない……ハリーの記憶から解っているつもりだったがエスパーの異能とは中々扱いが難しい」 グレイ・イーターは突っ込んだトラックを貪りながら呟く。 「やはり只の人型ではこの星の奴と戦うのに不便だな……デカく大きく硬くならないとな……」 続く
Feb 15, 2025
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DHHU外伝グレイ・イーター編その2 「9時方向……おらんで」「2時方向発見できず」「私たちを中心に全方位観察しましたがオーグルは発見できず」 「消えただと?」 「既に移動したのかもしれんよ」「なんちゅうやりにくい奴だ」「逃げに徹する行動されると厄介ですね」 「ふむ……奴の目的は喰って食って喰いまくる事だから必ず何かしらの痕跡は残る。それを辿るしかあるまい」 最後にアリナ、哿、フローレンスのUチームが到着する。 「何がありましたか?」アリナがハリーに聞く。 「一度戦闘になったがここで撒かれてしまってね」 「そうでしたか。この後はどうしますか?」 「3チームに別れて捜索したいところだが……今の所追えるのは魔女チームだけだからなそして魔女チームの武器であればグレイ・イーターからオーグルだけを取り除くことができる。魔女チームに捜索を続行してもらいワタシら合衆国チームは上空から、Uチームは地上から魔女チームの護衛としよう」 「承知致しました」 アリナは周囲を見渡す。 「大規模な事故が起きていますね……人々の負の感情が渦巻いています」 「アリナ」「アリナさん」 フローレンスと哿の言葉にハッとして二人に視線を向ける。アリナは事故の光景を見て家族を失った時の場面と重ねてしまっていた。 「……大丈夫ですフロー、哿さん」 「うん」「何かあればすぐに言ってください」 アリナは家族の敵念爆者を倒す為に全ての怒りのエネルギーを鍛えるために使っていた。念爆者を倒した今アリナは感情が不安定になり異能のコントロールにも影響していた。任務に集中している時は安定していて少しずつコントロールも戻ってきていた。 フローレンスは再生の異能を持っている為医学の知識を蓄えている。アリナの状態は良くなっていると考えるかは疑問に感じていた。 「(このままではアリナは壊れてしまうかもしれない。私と哿さんが支えてあげている間は良いけれど……感情のコントロールが上手くなれば異能の強度が戻る訳ではないし)」 アリナの精神が安定したとして、異能は大きく減衰するだろうとフローレンスは考える。アリナの異能は強い怒りのエネルギーによって成長してきたためその矛先を失った今成長する事はない。今のアリナは鍛え上げてきた肉体によって保っているに過ぎないと。 「(何かを敵視してそれを目標になんて……でもそうやってアリナはここまで生きてきたもう止めろなんて言えない代わりに何か目標を作ればいいのか新たな敵を見つければいいのか私にはわからない。体は治療できても私は精神を癒すことができない……)」 哿はフローレンスとは違いどんなになってもアリナとフローレンスに付き添うと考えている。それは必要とされ居場所であるUチームが自分の全てであるからである。 ――日没 「これだけ探しても何も見つからんとはねぇ」 冥珂はタバコに火をつけて言った。 「一応街中にオーグルに反応するようにルーン刻んでおいたけど」 「ただのオーグルであればこんな事にはならなかったんですがね。やはりグレイ・イーターの影響が大きいのでしょう」 リティーシャはデータを端末に入力しながら言った。 「マジで疲れたぜ……グレイ・イーターってのは喰わなきゃ弱るんだろ? なのにちっとも姿現わさねえって不思議だよなぁ」 刀耶は携帯食料のチョコバーを齧って言った。 「ルーンとドローンに調査の続きは任せて一旦支部に戻ろうか、これ以上の作戦は消耗が大きすぎる」 実際ハリーは異能を使い続けて12時間が経ち限界が近かった。 3チーム全員が合衆国支部へと戻る。 「何か動きがあればすぐに知らせるし皆出来るだけ休んどいてな。あたしは2徹くらい余裕やし監視しといたげる」 冥珂はそう言うと支部から出て近くにとってあるホテルに向かう。あわてて刀耶とリティーシャが追う。 「魔女のいう通りできるだけ体力を回復させなければな……Uチームはどうする? 一旦本部に戻るかね?」 「いえ、この近くの宿泊施設に泊まります食事もしたいので」 アリナは窓から見えるハンバーガーショップを見ながら言った。 「わかった、では我々合衆国チームは支部の仮眠室で休むとしようでは解散!」 ハリー、イグネイシャス、ルキナはそれぞれ別の仮眠室へ移動。就寝前にルキナがシャワーを浴びていると突如大きな物音がした。 慌ててバスタオルを巻いてシャワー室を出るルキナ。 「何の音?」TMIの制服に取り付けられた通信機に向かって叫ぶルキナ。 『HAHAHAHA! HAHAHAHAHA!!』 ハリーの声が聞こえる。 「ハリー? 酔っぱらっているの?」 『HAHAHAHAHA! 待ってたぜこの瞬間を!!』 「ハリーじゃない!? イグネイシャス!! 聞こえてる??」 『がは……ルキナ……逃げろ……グレイ・イーターだ……』 次の瞬間、壁を突き破ってハリーがルキナに飛び掛かってきた。エアロキネシスで防御する間もなく首を掴まれる。 「HAHAHAHAHA! マヌケめぇ! このハリーっておっさんは24時間異能を使い続ける事は無理なんだなぁ~マントの隅で張り付いて気配を伺っていたのさ! 寝た瞬間鼻から一気に脳に達した抵抗する時間すら無かっただろうなぁこのおっさん!」 「あが……(そんな! ハリーがグレイ・イーターに!?)」 「このまま縊り殺してもいいがそれじゃあつまらん。ここで喰ってやってもいいがこのハリーって奴の能力に今上書きはしたくないんでなぁ……ってことで実験に付き合え!」 ルキナを掴んでいない左手の掌にサイコパワーを集めるグレイ・イーター。 「頭部だけ残して弁当にしてやるよ!」「んんんんんんっ!」 サイコパワーを充填する左腕が突然燃え上がった。穴の開いた壁から満身創痍のイグネイシャスがパイロキネシスを放った。 「HAHAHAHAHA! まだ生きていたとは! 隣のビルに突っ込んで死んだかと思ってたぜ!」 「生憎ガードの仕方には自信があってね……グレイビースト戦で更に鍛えられてるって訳さ、そうじゃなかったら死んでるぜ」 「HAHAHAHAHA! バカめ、むざむざと殺されに戻ってきやがって。このおっさんはTMIって組織の中でもトップクラスの異能者なんだろう? 詰んでるなお前ら!」 「それはどうかな!」 グレイ・イーターの目の前で爆発を発生させるイグネイシャス。一瞬手が緩んだ隙にルキナを引っ張り抱きかかえ窓から飛び出す。 「HAHAHAHAHA! 逃げても無駄だぞう……サイコボール!」 バレーボール大のエネルギー弾を放つグレイ・イーター、ビルに直撃し破片がイグネイシャスを襲う。 「くっ……バランスが……」 パイロキネシスを利用したフレアガードで破片を弾き飛ばしたものの衝撃までは吸収しきれずに急降下、ハンバーガーショップのガラスに突っ込む。 「HAHAHAHAHA! もう逃げられんぞ……安心しろ首だけ残して即死させてやる! くらえサイコビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーームゥッ!!」 「(やべぇ……防ぎきれるか?)」 グレイ・イーターの放ったサイコビームはイグネイシャスとルキナには届かなかった。射線上にハンバーガーショップで食事をしていたアリナが飛び出し両腕でサイコビームを受け止めている。 「20%……」 アリナは異能の発動率を強化してサイコビームを上空に弾き飛ばした。 「……気配でわかりました。ハリーはグレイ・イーターに乗っ取られたのですね」 「ああ、そうだ……最悪の展開だぜ」血まみれのイグネイシャスが答える。 「哿さん、フロー、イグネイシャスとルキナを離れた場所に。グレイ・イーターの相手はわたしがします」 「アリナ!」「アリナさん……」 「大丈夫ですフロー、哿さん、やれます」 構えるアリナ。両腕のガントレットの装甲は破壊されフレームがむき出しになっている。 「HAHAHAHAHA! ハリーの記憶が言ってるぞ! TMI最強は終夜アリナではなくこのハリーだと! それをこのグレイ・イーターが証明してやる!!」 マッハ3で突撃するハリー、しかし簡単に軌道を反らされ後方のビルに激突する。 「なんだ今のは……」 「空手です」 「フウン……なるほど、このハリーもボクシング、レスリングを身に着けている。良いだろうお前の得意なジャンルで圧倒してやろうじゃあないか!」 ゆっくりとハンバーガーショップの前に着地するグレイ・イーター。 「ここの場所は悪いです、ついて来なさい」 飛び上がるアリナ1度のジャンプで数ブロックを進む。 「いいだろう」 追いかけるグレイ・イーター。二人は郊外の荒野に移動する。 「いくぞぉおおおおおおお!」 マッハ3からの間合い詰め、ボクシングのラッシュ。アリナは全て最小限の動きで弾く。 「まだまだまだ! サイコパワーマキシマムドライブ!」 体内のサイコパワーを高速循環させて出力をあげるグレイ・イーター、ラッシュの速度がが二倍になる。 対するアリナは弾きからガードに切り替えラッシュの隙間を狙って突きを入れる。 「ぐっはぁ……」 たたらを踏むグレイ・イーター、ハリーは鼻から出血。 「なるほど……近接戦闘ではお前の方が分があるか……ではこれならどうかな?」 大きく後ろに下がり、両手の人差し指にサイコパワーを集めるグレイ・イーター。 「サイコショットの乱れ撃ちだぁ!」 指鉄砲の構えで両手からサイコパワーの弾丸を連射。アリナはポーチに残ったベアリング弾を指ではじいて撃ち出して相殺していく。 「乱れ撃ちからの~特大サイコショットキャノン!」 両手の指を合わせトラックサイズのサイコ弾を撃つ。アリナは足を前後に開き地面すれすれに伏せて避け飛び上がり踵落としでグレイ・イーターを狙う。 「サイコリフレクター!」 サイコパワーは反発エネルギーに生成した盾を構えてアリナの攻撃を受け止める。アリナの超合金ブーツが砕ける。グレイ・イーターの左腕の数カ所から出血。 「なにぃ……衝撃を受け止めきれないだと!?」 「……50%」 50%まで解放するアリナ、着地と同時にグレイ・イーターに仕掛ける。 「ぐぐぐぐぐっはぁ……」 アリナの打撃を一瞬で100発受けて転がっていくグレイ・イーター。衝撃を中に残す撃ち方をしたはずなのに後方に転がったグレイ・イーターを見て睨みつけるアリナ。 「ふぅ~危なかったぜサイコスキンバリアのおかげで後方に衝撃をいくらか逃がせた……でなければ今頃爆散してるな……なるほど、これはハリーのとっておきを出すしかないようだな。対念爆者用に編み出していた究極のフォームを見せてやる!」 グレイ・イーターの体が青白く輝き始める。 「サイコパワーマキシマムドライブフュージョン!」 「……」 「核分裂をヒントにハリーが編み出したフォームだ! これをやると1週間サイコパワーを使えなくなるそうだがワタシには関係ない!! 行くぞ!!」 マッハ10からの突進でアリナを掴み水平に飛んで岩壁に叩きつける。 「どうだ! お前じゃなくても念爆者は倒せた! そんなに英雄になりたかったのか!」 マッハ10のパウンドを仕掛ける。アリナはガードを固めて耐える。 「違う……」 「TMI最強で英雄でこの星のリーダーはこのハリーになるべきだったんだ!!」 「だったら他のグレイマンを全て倒せばいい、念爆者である必要はない」 「念爆者を倒したお前がTMI最強だと噂されてるのが気に入らないんだよ!」 「わたし一人の力で倒したわけじゃない……皆の力があって運にも恵まれて奇跡が重なっての勝利だった」 「家族が殺されたという理由だけでお前が優遇されてるのが気に入らなかった! ハリーがどれだけ努力して合衆国支部長にまで上り詰めたか解るか!」 「……許せない」 「あん?」 「やはりお前はグレイマン、ハリーの深層にそのような感情があったとしてもお前が勝手に発言して良い訳がない。それとわたしの家族の事を語るな」 「怒ったか? 怒りでパワーアップするコミックのヒーローかな? それで強くなるのらいくらでも怒れ! お前はここで敗北してワタシに喰われる、そしてなりすましてTMIの連中を全員ブチ殺すぜ!」 「……(駄目、こいつの事が許せなくても念爆者に対するような体の底から煮えたぎるような怒りが湧いてこない)」 「HAHAHAHAHA! 念爆者を倒して家族の敵を討ってもここで死んだら意味ないな! お前の家族もお前も無意味な人生だ!」 「無意味……」 アリナの頭の中でこれまでの記憶が流れていく。 「無意味なんかじゃない、わたしは念爆者を倒すために強くなった。そして同じような悲劇を起こさせない! お前が念爆者と同じ道を辿るのなら……」 「ああん?」 「お前『も』念爆者と同じだ!」 アリナの体から虹色のオーラが溢れだす。 「80%」 「これが怒りのパワーアップかぁ?」 続く
Feb 11, 2025
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DHHU外伝グレイ・イーター編その1 シーア財団がいよいよ作戦の大詰めに差し掛かった頃、TMIエージェントのUチーム(終夜アリナ、フローレンス・フランシス、哿 希世美)に緊急招集がかかった。 「長官、緊急招集とは」 『哿くん、詳しい説明は後だすぐに本部から合衆国支部に飛んでくれ』 「了解しました」 ホテルで待機していたUチーム三人はバスルームに繋がっているはずの扉からTMI本部に移動する。異次元に存在するTMIの本部はそれ自体が意志を持ちエージェントを管理している。 「合衆国支部への扉は確かこっちですね」 本部のエージェントと軽く会釈を交わしながら移動する。USAと書かれた扉を開けてくぐると超高層ビルの一室に移動した。 「おお来たかUチーム!」 TMI長官のジェームズ・スチュワートは両手を広げて言った。 「早速ですが長官、話を聞かせてもらいますか?」 哿はジェームズとしっかり目を合わせて言った。 「……ふむ。日本でも重要な任務中だった君たちを呼び寄せたのは……あまりに最悪な方向に事態が進み始めたからなのだ」 「詳しく」 「西海岸でミュータント暴動事件が起きたのは知ってるね?」 「はい」 「その後、ミュータントを見破るのに原種オーグルが有効な事が判明したのも知っているね?」 「はい」 「その協力者として魔女レヴィと弟子と助手を日本から呼び寄せ『クイーン』と名付けたミュータントの首魁を見つけ出す事に成功した。そして捕らえたのだが……」 ジェームズは苦い顔をして腕に取り付けた端末を操作する。 「クイーンはグレイマンの一人『グレイ・イーター』と同化していた。気付いた時には原種オーグルの一部を喰われ逃亡されてしまった……奴はミュータントを吸収し始め急速に力をつけ始めた、TMIエージェントらと魔女レヴィ達で一度は追い詰めたのだがミュータント能力と原種オーグルの力を身に着けた奴は逃げるのも上手くてね。次に遭遇した時は確実に倒したいのだよ」 「ハリー・ハーマン氏がいれば大丈夫なのでは?」 ハリー・ハーマン43歳。アメリカ支部長。サイコキネシスト。半径100mまで干渉できる。体を包み込むようにサイコパワーを纏い超人的な身体能力を発揮できる。飛行能力持ち。深海での活動も可能。能力を発動しない時は常人。TMI身体強化系最強能力者の一人。 「ああ、彼がいなければ一度目の撃破は成しえなかっただろう……捕らえるのにあと一歩届かなかった」 「それで僕たちUチームを呼んだわけですか」 「そうだ、次こそは奴を完全撃破しなくてはならない」 「グレイ・イーターについてもう少し聞かせてもらえますか?」 「うむ、手元の資料だけでは分からない事もあるだろう、質問したまえ」 グレイ・イーターは最初は犬の姿をしていた。ミュータント事件をきっかけに活発に活動を始めた。グレイ・イーターは食べる事で対象を取り入れる力を持っている。完全に消化してしまえばその能力を失い石炭に似た物質を排出する。取り入れた対象の記憶は残る為再現するためにそれに見合ったコストの食事をする。例えばミサイルを取り込み完全消化した後再現の為にそれに近い物質と質量を取り込む。人間を取り込んだ場合は別の人間を取り込むか哺乳類を取り込んで維持する。 「ミュータントクイーンと原初オーグルは既に記憶されてしまっているのですね」 アリナは資料を見ながら言った。 「ああ、消化した後は再現するために大量の人間と動物、無機物を取り込むだろう……念爆者の話していた情報が確かならグレイマンの一人であるグレイ・イーターは他のグレイマンとの決戦の為に自分のエリアを確保するために動くはずだつまり、合衆国を手に入れるつもりだろう」 ジェームズは大きくため息をついて言った。 「念爆者&グレイストームとは違い力任せの大雑把な支配をするつもりなんですね」 「グレイ・イーターは分かりやすいぶん対処がしやすい……初動を抑えれば恐らく最弱のグレイマンだろう。グレイストームは世界征服に王手をかけていた、グレイリキッドは世界大戦を引き起こす寸前まで計画を進めていた、グレイビーストはグレイマンの星とこの星をゲートで繋げる所だった……それらに比べればまだ……な」 「長官、グレイキャリバーは?」 「ああ……グレイキャリバーはTMIが動くまでもなくオータムホースで消えた。白魔女が早い段階で対処したおかげで大した事は起きてない。ただ……」 「ただ?」 「一部は残っているのだ白魔女と同化してね。今の所不安な要素はないと聞いている」 「グレイキャリバーの脅威とは何だったのですか?」 「うむ……その気になればグレイキャリバーは核の雨をいつでも降らせることができたしどんな要人も暗殺する事が出来たとされている。力をつけていればグレイストームに並ぶ存在だっただろう」 「そうでしたか」 「グレイキャリバーについてはもういいかね?」 「はい」 「ではUチームはグレイ・イーター作戦に合流してくれ」 *** ――合衆国TMI支部 「HAHAHAHA! ワタシ達に任せておけ! グレイ・イーター何するものぞ!」 中年体形でツナギのスーツを着た支部長のハリー・ハーマンは葉巻を吹かしながら言った。 「かなりマズい状況やねんけど……ハリーさんは自信満々やねぇ」 隣でタバコを吸いながら魔女・立花冥珂(レヴィ)が言った。 「要するにパワーで打ち砕けば良いのだろう? 喰われずに圧倒すれば!」 「そうやねんけど……オーグルを吸収したのが厄介すぎてね。分裂してバラバラになったら主思考の個体叩かんとイタチごっこになるんよ。もっと恐ろしいのは……」 冥珂は喫煙ルームの外にいるバブルヘルメット(紫外線完全カット)を装着したリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲを見る。 「もっと恐ろしいのはオーグルの特性を持っているのなら知らないうちに誰かに乗り移る可能性があるって事ですね! わたしとトーヤ、師匠は対策できてますけど他の人達はそうではないので」 リティーシャは声を張って言った。 「ここにはカテゴリー5が3人も揃ってる! ワタシ、イグネイシャス(パイロキネシス)、ルキナ(エアロキネシス)だ。ここに更にあのアリナが合流する! 心配無用!」 「いや~強ければ逆にリスクも大きいんじゃねえっすかね? 例えばそのアリナさんとかいう人がオーグルに乗っ取られたらかなりヤバいんじゃないんすか?」 宗像刀耶はソファに座って腕を組みながら真剣な顔で言った。 「心配無用! アリナは常に戦闘状態の異能者。彼女の守りはTMIナンバー1といって良い、あの念爆者の猛攻を耐えきった実績がある」 「他の皆さんは?」 「ワタシは触れられた瞬間叩き潰せるし、イグネイシャスは一瞬で燃やす、ルキナには触れる事も出来ないだろう」 「う~ん……そうですか」 刀耶は膝の上に肘を置いて考える。 「気付かれないように尾行されて隙を狙って寄生されたらどんなに強くても無意味じゃないっすか? いくら異能者とは言え24時間異能を使った状態じゃないだろうし……」 「心配性だねトウヤ」 「オーグルのヤバさは思いっきり身に染みてるんで……」 「魔女のマジックパワーで何とかその辺はカバーしてくれんかね?」 ハリーは冥珂を見る。 「それがねぇ相性が良くないんよ異能者に魔法はかかりにくいし。でも部屋に結界を張るのが一番ベターでええかなと考えてるんやけど」 冥珂は朝タロットカードで占った結果は良くなかった。『最悪な事態に陥るも希望はある』といった内容だった。 冥珂はこれまで蓄えた知識と経験と入念な準備に臨機応変な魔術の行使で事件を解決してきた。だがグレイ・イーターのオーグル吸収は完全に想定外で明確な打開策を出せないでいた。 「……」 冥珂が懸念しているのはグレイ・イーターが『魔法も食べて吸収するかもしれない』点であった。その場合下手に魔術の行使はできない。支援に回る方が無難であると考える。 リティーシャを見る冥珂。 「(あの子が完全覚醒してあたしなんかを超える魔女になれば一番早いんやけど)」 「Uチーム到着しました」 ドアを開けて入ってきたのはアリナ、哿、フローレンスの三人。 「え……」「は?」 冥珂とリティーシャはアリナを見て固まる。 「どうかしましたか?」 「いえ……」「あの……アンタその状態で平気なん?」 冥珂とリティーシャの目には強大な力を無理やり体内に押し込めているように見える。 「この状態?ああ、わたしの異能の事ですか気にしないで下さいこれがわたしの通常状態です。わたしは癖で完全に異能をシャットダウンできないのです、強く意識すれば可能ですがむしろ疲れるのでこの0.1%状態でいます」 「へぇ……100%とか想像もできんけどめちゃくちゃ頼りになりそうやな」 「申し訳ありません、現在わたしは異能の制御が不安定で50%までの解放しかできませんですがチームで作戦にあたればカバーできると思います」 アリナの発言を聞いて哿とフローレンスは『50%でもやりすぎ』と思った。念爆者との決戦で異能者共有状態で三人の思考は一体化した時にアリナは100%解放に達した。あの時の半分の力でも街中で解放するのは危険すぎると二人は思った。 ハリーと同じサイコキネシスではあるもののアリナはサイコパワーを放出する事は出来ない空を飛ぶこともできない。身体能力強化のみであるため暴れ回る訳にはいかない。 「……グレイ・イーターの反応を感知したで場所は……」 冥珂は水晶玉を机の上に置いた。使い魔に街中を探らせていたところ異常なほど喰っているホームレスを発見したのだ。 「うむ! でかした! では作戦開始!!」 ハリー、イグネイシャス、ルキナは異能で飛べるため窓から出る。刀耶とリティーシャはナイトケースを装着、冥珂はホウキをスケートボードのように乗り窓から出る。Uチームは哿がアリナとフローレンス腕を掴んでテレポート、窓の外に飛び連続テレポートで後を追う。 ――街中 「バババババウッ! ババウッ!」 頭部が二つの犬になったグレイ・イーターは飲食店の廃棄物を貪り喰っている。 「うわああああバケモノだああああああああっ!」 人々はグレイ・イーターを見て逃げ出す。携帯端末で写真動画を撮ろうとする者も少しは居たが昔と違いSNSは完全に個人IDで管理されているために炎上狙いではなく記者やフリーのカメラマンが殆どである。 「ババババババウ!」 動画撮っていた男の頭部を噛み千切るグレイ・イーター。首を伸ばし携帯端末をしまい逃げ出す男の足に食らいつき転倒させる。 「ひいいいいいいいいいいっ!」 護身用のスタンガンを放つもグレイ・イーターに通じずそのまま風船のように膨らんだ頭部に丸呑みされる。 「ババウ……お、お……ようやくこの星の言語に慣れてきたな。やはり純原住民を喰うのが一番かミュータントは雑念が多すぎてマズかったからな」 グレイ・イーターは最初に頭部を食べた男の姿に変身する。 「オーグルとやらのおかげで変身変形が捗る捗る。ゲロまずだったが喰った甲斐はあったなぁ~……おや? 早速邪魔者が来たか」 グレイ・イーターが空を見上げるとハリー、イグネイシャス、ルキナの姿。 「グレイ・イーター! 貴様をスマッシュしてくれる!!」 マントを翻してハリーが叫ぶ。 「いいねぇあの男を喰えば俺はもっと成長できる」 「サイコ……ビーーーーーーーーーーーーーーーームゥ!!」 ハリーは目から緑色の光線を放つ。グレイ・イーターは反応できずに直撃。胸に大穴が開いた。 「今のはあいさつ代わりだ!」「痛えなぁ~」 グレイ・イーターは即時再生し両腕を翼に変形させて飛び上がる。 「もっと街中で食事しねえとなぁ」 「待てい!」 マッハ3の速度で飛べるハリーが追う。あっという間に追いついてグレイ・イーターの前に回り込んだ。 「逃がさんぞ侵略者(グレイマン)め!」 「そうかよ、じゃあこれでも受けな! グレイビーーーーーーーーーーーム!」 グレイ・イーターはハリーのサイコビームを真似して体内のエネルギーを圧縮して放出。 「ぬうううう……」 両腕で咄嗟にガードするハリー。分裂したグレイ・イーターはビーム攻撃をしている分身を残し街中に飛んで行った。 「しまったワタシとしたことが! サイコソード!」 右手からサイコパワーで作ったソードで分身を両断する。後ろからはイグネイシャスとルキナが追いついてきた。 「ハリーさん! 奴は?」「どこに行きました?」 「北西に飛んで行った、街の中心の方だ」 「マズいっすね……」「オーグルを感知できる魔女さんのチームを待った方がいいのでは?」 「まだ大丈夫だ匂いで追える、すぐに追わなければ人々の命が危ない!」 マッハ3で街中に向かうハリー。慌てて追うイグネイシャスとルキナ。 薄れかけた臭いを辿り街の中心である大通りに着いたハリー。交差点では数十台を巻き込む大きな事故が起きていた。 「グレイ・イーターの仕業か?」 交通事故で混乱している交差点の傍にある銀行で強盗が起きていた。渋滞の為警察はまだ到着する気配はない。 「こんな時に銀行強盗だと! TMIは警察の協力が無い限り勝手には動かんのだが……見て見ぬふりは出来ん!」 ハリーは急降下して強盗の二人をラリアット。地面に転がすと特殊合金結束バンドで拘束する。 「これでよし……」 「おじちゃん、なにしてるの?」 少年がハリーのマントの端を掴んでいる。 「おおっ!? なんだ子供か、ここは危ない安全な場所に行きなさい」 「はーい……」 子供は走って去っていった。 「ウチの息子もあのくらいの歳だな……さてグレイ・イーターを探さねば」 「やっと追いついた……速すぎやでホンマ」 冥珂、刀耶、リティーシャが到着した。 「おお、来たか! オーグルの探知を頼む!」 「せやね、はよせんとね」 冥珂は眼鏡をかけ、刀耶はナイトケースのスキャン、リティーシャはセンサー付きのドローンを複数操作する。 続く
Feb 1, 2025
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