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【送料無料】小さいおうち [ 中島京子 ]中島京子文春文庫☆☆☆☆☆ ミステリータッチというウワサを耳にして読んでみたが、そんなことはなかった。また、「おばあちゃんの若き日の秘密」を探る、という内容ではあるが、今まで読んだ英語圏の女性作家の場合おばあちゃんの秘密を身内や身近にいる女性が聞き役になったり、調べて回るのだが、この本ではタキおばあちゃんの甥っ子の息子がその役にあたる。以前、祖父・父の秘密を娘が調べて回る小説ならありそうだ、と書いたことがあるが、その逆パターンだろう。さらに、英語圏の小説では謎には明快な答えが用意されているが、この本はそうではなかった。この本での回答は全て主人公タキちゃんの死後発見された宛名のない未開封の封書(差出人は「時子奥様」)と奥様とただならぬ仲になった美大出の男性が南方からの復員後に漫画家になり、死後発見された紙芝居形式の漫画で表現されている。またこれもよくあるパターンといえるが、おばあちゃんがその過去に親しかった子供が老人として登場してくる。これは時子奥様の息子だ。 とはいえ、戦前・戦中の日本の庶民の生活の雰囲気がよく伝わってきて、この時代を既に歴史の一ページとしてしか捉えられない世代である私には、新鮮で面白かった。また、我々が学校で教わったような内容とタキちゃんの「思ひ出」(彼女が綴った手記のタイトル)中身が矛盾していると、甥っ子の息子はそうじゃないだろう、と茶々をいれるのだが、それもいい演出効果をあげていたと思う。市井の人の視線による市井の人の生活記録なので、読んでいて親近感を感じるし、このタキおばあちゃん、おばあちゃんの知恵的な家事読本を出したこともあるという設定だけに、大変な家事上手でお姑さんにしたら相当鬱陶しそうだが、紹介される手をかけた料理や家事の内容も面白い。 タキちゃんが最初に住み込んだ作家先生の頭のいいメイド、悪いメイドの話もこの本の底流にずっと流れているし、吉屋信子の文章への言及などもあり、いろいろなイメージを喚起してくる小説。おばあちゃんの問わず語りという設定ではあるものの、実際は綿密に組み立てられた小説だと思う。いずれにしても謎を謎のままに残しておいて、読者の想像に委ねるというのは、日本的な結末だと思う。個人的には明快な回答が用意された「おばあちゃんの若き日の秘密」小説の解決編の読後感の爽快さも好きだが、この小説のような余韻ある終わり方もまた一興だ。
February 24, 2014
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【新品】【2500円以上購入で送料無料】【新品】【本】【2500円以上購入で送料無料】秘密 上 ケイト・モートン/著 青木純子/訳【新品】【2500円以上購入で送料無料】【新品】【本】【2500円以上購入で送料無料】秘密 下 ケイト・モートン/著 青木純子/訳ケイト・モートン東京創元社 四六並製☆☆☆☆☆ 1961年、母が訪ねてきた男を刺殺するのを目撃したローレル。50年後、国民的女優と呼ばれるようになった彼女は死期の迫った母のその過去を出てきた古ぼけた本や写真を手始めに探り始める、というストーリー。(死期の迫った、あるいは死んでしまった)老婦人の過去をその縁者の女性が探る、というのは、このモートンに限らず、割と欧米の小説には多いパターンなのかもしれない。ダニエル・スティールの"Granny Dan"も同じテーマだ。ただし、モートンの場合、最初の「リヴァトン館」からずっとそんなテーマが作品の底流に流れている。今回は第二次大戦中の謎。日本同様と書いていいものか少々迷うところだが、イギリスもドイツ軍による空襲で大きな被害を受けた。そのさなかにいろいろな秘密が生まれたのだ。 上巻は最後の方になるまで少々読みにくく感じた。文体が少し固いのかもしれない。また、「手編みのジャンバー」は「手編みのセーター」のことだと思うけどなぁ。とにかく最初はパズルのピースがバラバラすぎてよく分からず、全体像がはっきりしたのは下巻の最後100ページあまりになってから。ただし、ヴィヴィアンとドロシーが入れ替わっていた根本のトリック(?)は最初に可能性に思い当たったが途中忘れてしまっていた。そして、結末部分で最後から一つ残しのパズルのピースがはまったとき、最初の予想が当たっていたことが分かった。さらに、この小説を読み終わって爽やかな気分になれるのは、一番最後のピースがはまった時だろう。それまではいかにもなアタマの軽いカオだけの若い娘がそれなりの一家の家刀自になるのか、少々違和感がないではなかったのだ。そして、アタマの軽い若い娘がそのおばあちゃんの若き日、というのを"Granny Dan"で読んでいたのも先入観だったかもしれない。下巻の中ほどまでは、この本を読みながら、またダニエル・スティール読もうなどとアタマの片隅で思っていたのだから。 今回、少々さびしかったのは、これまでモートンの作品にはマニアックな小道具がマニアックな使い方で大きな鍵になっていたのだが、それがあまり感じられなかったこと。しいて言うなら、古ぼけた本や写真なのだろうけれど。そういった小道具がなかったせいもあり、イヤな意味で「やられた!」感はないが、ちょっと日本の叙述トリックを使って読者をミスリードするミステリに近いものもある。あともう一点、ちょっと物足りなかったのは、今までは凋落する上流階級というのが割りとはっきり出てきていたのだが、この小説はそうでもないことだ。リヴァトン館のそのあたりの描写は特に好きだったので、これもちょっと残念なところだった。 にしても、おばあちゃんの過去を縁者の女性が探るって、日本の小説にはないパターンのような気がするなぁ。祖父や父親の過去を娘が探るとかいうのは、内田康夫にありそうなパターンだけど。
February 20, 2014
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【送料無料】渤海王の使者 [ 高橋義夫(小説家) ]価格:1,890円(税込、送料込)高橋義夫集英社 四六上製☆☆☆☆ 昔、渤海という国があり日本とも密接な外交関係があった……。というのは聞いたことがあったし、また奈良時代のストーリーのようだったので、借りてみた。初めて読む著者。 物語はタイトル通り渤海王からの使者が日本を目前にして難破、賊に襲われ正使をはじめ高官が殺されて途方に暮れるところから始まる。彼らが漂着したのは、目的地より大分北の出羽の国。地元の豪族(?)船人と使節の一人、武人の高文矩は使節を都である奈良に送っていく間にじょじょに親しくなっていく。また、文矩と妹の秋津を娶わせたりもしている。やがて文矩とともに船人は渤海に渡る。彼が渤海に渡ってからは、船人と秋津の兄妹の視点で渤海の宮廷の様子と日本の国情が描かれる。 渤海と日本を取り囲む唐や新羅との国際関係の複雑さ、渤海と日本の権力者の権力争いを織り込みつつ、船人が渤海人と知り合い、かの国に行って帰ってくるまでの小説。この当時の日本の様子や渤海の宮廷の様子が描かれるが、個人的な好みよりはちょっと文体が淡淡としすぎているような感じだ。それでも、長屋王の宮廷の描写は興味深かった。もう少し渤海と日本の関わりが知りたくなったので、今度、渤海についての本も読んでみたい。
February 11, 2014
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【新品】【2500円以上購入で送料無料】【新品】【本】【2500円以上購入で送料無料】警官の血 上巻 佐々木譲/著【送料無料】警官の血(下巻) [ 佐々木譲 ]佐々木譲新潮社 四六上製(上巻) 新潮文庫(下巻)☆☆☆☆☆ これもドラマで観たような気がする。終戦直後から平成になるまで、約60年三代の祖父ー父ー息子の警官の物語。割と読みやすいが、上下巻。図書館で借りたので上巻が単行本、下巻が文庫になってしまった。 きちんとした職業に就きたい、と警官の大量採用に応募した安城清二。彼は民主的な「町のおまわりさん」を目指す。やがて山手線内では珍しい駐在所勤務になるが、その彼が気にかけたのが、上野公園での若い男娼の殺人事件とその四年後に起こった同じく若い鉄道員の殺人事件。駐在巡査の身でその調査をしていたのだ。そして、清二自身も五重塔が焼けた日に謎めいた死を遂げる。父の死に納得いかない長男の民雄も警官の道を進むが彼は学生紛争が盛んな折、潜入捜査を行い、精神を病んでいく。その彼も念願の谷中の駐在所勤務になり、父が気にしていた事件を調べていくうちにやはり自殺行為ともいえる謎めいた死を遂げるのだ。そして三代目の和也。彼も新任そうそう同僚の警官を見張る役目を与えられるが、彼はしたたかにその役目をこなす。 三人の警官の目を通じた昭和・平成の風俗小説ともいえる内容。清二の生きた戦争直後の様子は今となっては歴史の話になってしまっているし、民雄が経験した学生紛争も今とは隔世の感がある。でも彼が潜入した北大が輩出かつての全学連の委員長(作中ちょっと言及もある)は函館の出身だ。(今彼の母校は別の高校と統合されてその名前は残っていないが)そして、ヤクザとの結びつきの強い先輩警官加賀谷を監視することになった和也は祖父・父の無念をついに晴らす。このへんの解決はちょっと後味の悪いところもあるのだが、融通の利かない勧善懲悪になっていないので、却って読んでいてすがすがしい。また、舞台となる谷中に戦前から終戦直後、そして和也の時代にまで住み続ける人々が登場するが、その繋がりが小説に奥行きを与えていると思う。小説内の各所に時代時代で現実に起きた事件も織り込まれ、私が知っている東京の地名も結構登場するので、身近な場所の戦後史を読んでいるようで現実味を感じた。 第三部、和也の章がちょっと物足りない、と思っていたら、続編にあたる「警官の条件」も出版されているので、読んでみようと思う。
February 9, 2014
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【送料無料】オクシタニア [ 佐藤賢一 ]佐藤賢一集英社 四六上製☆☆☆☆☆ アルビジョワ十字軍についての小説。本文二段組622頁の大作。文庫では上下巻。やっぱり長かった。そして、この小説自体がおよそ70年余の歳月のストーリーなのでやっぱり長い。おそらく全編を通じての主人公はトロサ(トゥールーズ)の名家の息子で後に異端審問官となるエドモンだろうが、他に最初のアルビジョワ十字軍の総司令官?シモン・ドゥ・モンフォール、「無冠の帝王」と呼ばれたトロサ伯ラモン7世の視点でもストーリーが展開される。 この小説で一番興味深かったのは、カトリックの異端審問官の視点でカタリ派が描かれていること。結構納得してしまうところもある。オクシタニアはオック語が話される地というような意味らしいが、この小説ではオック語話者は全て関西弁で描かれている。これについては読者レビューを読んでいても賛否ある。私も伊勢や京都の言葉ならまだいいが、どーも大阪弁に近く思えてちょっと違和感を感じないでもない。しかし、トロサは商都で自治都市というからあながち不適切ということでもないと思う。 この小説は70年余の歳月を書いているので、正直、時代の感覚が分からなくなった。エドモンだけでもいいので、その時の年齢が書いてあればよかったと思う。オクシタニアは北部のオイル語圏(この本の中ではこちらが「フランス」)に比べて格段に豊かな土地であり、それだけに享楽的なところが否めなかった。そこにつけこまれて、カタリ派の討伐を口実に法王庁とフランスに攻め込まれてしまい、結局フランスに併呑されてしまう。この小説はそれを描いたものといえる。私はこれでカタリ派が出てくる小説は三作目だが、この本が一番読みやすく、内容もとっつきやすかった。自由であることを願うが、それが上手くいかないエドモンの妻だったジラルダはカタリ派の完徳女として出家してしまう。それで愛する女をカタリ派に取られたと逆恨みしたエドモンが対立するカトリックの異端審問官になるわけだが、ちょっとそれからのエドモンがかっこよすぎかも。最後の最後ではこの本は彼ら二人の純愛に落ち着くが、私は結構この終わり方も嫌いではない。そして、二枚目に描かれていたトロサ伯ラモン7世もジラルダに横恋慕するのだが、途中彼の前世の生活が出てくる。そこも歴史小説の作中作で面白かった。 初めて読んだ著者だが、内省的になり過ぎず、淡淡とした筆致が結構気に入った。他の本、特にミステリっぽい「カルチェ・ラタン」は読んでみたい。そういえば、化粧品メーカーの「ロクシタン」はまさにこの「オクシタニア」のこと。オクシタニアの歴史をこの小説で読んだ後だと、ちょっとロクシタン社の企業理念なんかも気になってきた。また、カントルーブの「オーベルニュの歌」は歌詞がオック語。一度聴いてみたが、ルーツ音楽好きとしてはちょっとソフィスティケートされていたものの、結構好み。またちゃんと聴いてみよう。
February 1, 2014
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