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映画「バルジ大作戦」についてのつづきです。
この作品はアメリカ軍、ドイツ軍、両軍を公平な視点で描いています。 従来のアメリカ製戦争映画ではつねにドイツ軍は悪役でしたが、この「バルジ大作戦」(65)あたりから、この前の「史上最大の作戦」(62)あたりからか、ドイツ軍も健闘したのだという公平な視点が見られるようです。
ドイツ軍の大反撃作戦での戦車旅団の指揮を任されるへスラー大佐(ロバート・ショウ)。この人は戦争キチガイなのですが、この歴戦の勇者に長年にわたって仕えてきたコンラートという従兵がいます。演じるのはハンス・クリスチャン・ブレヒ(写真)。
ハンス・クリスチャン・ブレヒ Hans Christian Blech 1915年2月20日生まれ、1993年3月5日没。ドイツ、ヘッセン州出身で、ドイツの俳優です。「史上最大の作戦」(62)「レマゲン鉄橋」(69)でもドイツ軍人の役で出ていました。
映画のなかで、この人がへスラー大佐に食事の席で、「おまえの本心が聞きたい」と言われて、話すシーン。
「私はこれまで立派な方々に仕えることができて運が良かった」と。そして、「ひとつ学んだことがあります。すべてを失っても希望を失わないこと。それは偉いと思います」と。
いつでも次のチャンスがあると思う、しかしそれは「幻想」です、と言う。そしてへスラー大佐に「今度の任務は幻想です。忘れたほうがいい」と言う。
幻想だと言われて、へスラー大佐はポーランド侵攻作戦では1週間でポーランドを征服させたぞ、電撃戦では39日でパリを陥落させた。それが幻想か!と反論するのですが、コンラート従兵は「かつてあなたに従ってきた古参兵はいまどこにいるのか、いないではないか」と言う。
現在、あなたにつけられた部下は実戦経験のない若僧ばかりではないか、そんな部下が信頼できるのか、と。
これまで敵を蹴散らしてきたあなたには歴戦の部下がついていた、いまは彼らは存在せず、たとえ最新鋭の重戦車を与えられても、はたしてどれだけ働けるのか、ということです。
このドイツ軍の大反撃作戦は、悪天候下でしか行動できない限定的なもの(制空権がないので、晴れると空から攻撃される)で、しかも燃料にも乏しい。けっきょくは燃料切れと天候回復によって作戦は失敗することになるのですが、この作戦不成功は最初から予測できたものであり、すべてが「幻想」だった。
ヒトラー総統がなけなしの兵力と備蓄燃料をこの「幻想の作戦」に賭けた。
このヒトラーの大ばくちによって、英米連合軍の将兵の生命が救われたとされます。 なぜか?、もしもこのバルジ大作戦で使われたドイツ軍の精鋭兵力が温存されてドイツ本国の防衛にまわされていたら、第二次大戦のドイツ降伏までの戦いはもっと過酷なものになったであろう、ということです。