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三月三日李明府後亭泛舟(一作皇甫冉詩) 劉長卿江南風景復如何、聞道新亭更欲過。處處▼(「糸」のみぎに「刃」。ジン)蘭春浦■(「碌」の「石」を「シ」に換えた字。ロク)、萋萋籍草遠山多。壺觴須就陶彭澤、時俗猶傳晉永和。更待持橈徐轉去、微風落日水増波。【韻字】何・過・多・和・波(平声、歌韻)。【訓読文】三月三日李明府の後亭に舟を泛ぶ。(一に「皇甫冉詩」に作る) 劉長卿江南風景復(また)如何(いかん)、聞道(きくならく)新亭更に過ぎらんと欲すると。処処蘭を▼(つづ)り春浦■(きよ)く、萋萋草を籍(ふ)んで遠山多し。壺觴須らく就くべし陶彭沢、時俗猶ほ伝ふ晋の永和。更に待つ橈を持ちて徐ろに転じ去り、微風落日水波を増すを。【注】○三月三日 上巳。みそぎをして不祥をはらう習慣があった。○李明府 「明府」は、県令。○泛 浮かべる。○江南 長江下流の南方。○風景 けしき。ながめ。○如何 いかん。どうであろうか。○聞道 きくならく。聞くところによれば。○新亭 新築のあずまや。○過 立ち寄る。○処処 あちらこちら。○▼(「糸」のみぎに「刃」。ジン) つづる。○春浦 春の水辺。○■(「緑」の「糸」をサンズイに換えた字。ロク) 清らか。○萋萋 草が生い茂るようす。○籍 「藉」と通用。踏む。○壺觴 酒つぼと杯。陶淵明《帰去来辞》「壺觴を引きて以て自ら酌む」。○陶彭沢 陶淵明。彭沢の令をつとめた。○時俗 世人。俗世間。○晋永和 東晋の穆帝の年号(三四五……三五七年)。永和九年三月三日、王羲之が四十一人の名士を蘭亭(浙江省紹興市の西南)に招き、おのおのに詩を作らせた。その序が蘭亭集序。○橈 舟を進めるかい。○徐 ゆっくりと。○転 向きを変える。○微風 そよ風。○落日 夕日。【訳】三月三日に県令李氏の屋敷の後方の亭のところで舟を泛べて遊んだ時の詩。江南風景いかならん、新たに築きし亭にまた立ち寄らんとするとかや。春の水辺のあちこちに蘭草とりて花輪なし、生い茂る草ふみしだきあなたの山を眺めやる。陶淵明を気取りつつ壺の酒をば汲みながら、世人の評判いまもなお蘭亭の遊びもてはやす。そよ風吹いて日が沈み川の波立ち水の増すその頃待ちて櫂をとり舟めぐらしていざ去らん。第2筆 三月三日義與李明府後亭泛舟(一作劉長卿詩) 皇甫冉江南煙景復如何,聞道新亭更可過。處處藝蘭春浦緑,萋萋藉草遠山多。壺觴須就陶彭澤,時(一作風)俗猶傳晉永和。更使輕橈徐轉去,微風落日水増波。[頁]卷,冊....[2795]249,8
September 27, 2007
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賦得(一作皇甫冉詩、題作春思) 劉長卿鶯啼燕語報新年、馬邑龍堆路幾千。家住層城臨漢苑、心隨明月到胡天。機中錦字論長恨、樓上花枝笑獨眠。為問元戎竇車騎、何時返旆勒燕然。【韻字】年・千・天・眠・然(平声、先韻)。【訓読文】賦し得たり。(一に「皇甫冉詩」に作り、題は「春思」に作る)鴬啼燕語新年を報じ、馬邑龍堆路幾千。家は層城に住んで漢苑に臨み、心は明月に随つて胡天に到る。機中の錦字長恨を論じ、楼上の花枝独り眠るを笑ふ。為に問へ元戎竇車騎、何れの時にか旆を返し燕然に勒せん。【注】○馬邑 山西省朔県。○龍堆 砂漠の名。○層城 宮城。○錦字 前秦の秦州の刺史竇滔が流沙に左遷された時、妻の蘇氏が錦を織り廻文に思いをつづって届けた。○元戎 総指揮官。○竇車騎 後漢の竇憲。大いに匈奴を破り、燕然山に登り、石に刻み功を紀して還り、大将軍に拝せられた。(紀元?……九二年)。「車騎」は、将軍の名。○燕然 モンゴルの杭愛山。後漢の永元元年に竇憲が北単于を破り、ここに登って戦功を記録した。【訳】ふと、できあがった詩。鴬燕きたり鳴き新たな年を報じたり、野越え山越え幾千里。家は宮城ほどちかく漢の御苑のそばにあり、月を眺めて思いやる夫のいます胡の土地を。はたを織りつつ織り込むは夫にあてるこの思い、たかどの近く咲く花はさびしき独り寝わらうよう。わたしの代わりにきいとくれ、夫の上司の将軍に、いつになったら勝利して夫かえしてくれるやら。【参考】『全唐詩』 春思(一作劉長卿詩) 皇甫冉鶯啼燕語報新年、馬邑龍堆路幾千。家住秦城鄰漢苑、心隨明月到胡天。機中錦字論長恨、樓上花枝笑獨眠。為問元戎竇車騎、何時反旆勒燕然。
September 25, 2007
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西陵寄一上人 劉長卿東山訪道成開(一作開成)士、南渡隋陽作本師。了義惠心能善誘、呉風越俗罷淫祠。室中時見天人命、物外長懸海嶽期。多謝清言異玄度、懸河高論有誰持。【韻字】師・祠・期・持(平声、支韻)。【訓読文】西陵にて一上人に寄す。東山道を訪ふ成開(一に「開成」に作る)の士、南渡陽(みなみ)に隋つて本師と作す。恵心を了義して能く善誘し、呉風越俗淫祠を罷む。室中時に見る天人の命、物外長く懸く海嶽の期。多謝す清言の玄度に異なるを、懸河高論誰か持するもの有らんや。【注】宝応元年(七六二)、西陵に旅しての作。○西陵 西陵湖。浙江省蕭山県の西三十里に在り。○一上人 唐の詩僧、霊一上人。○東山 雲門山。紹興の南に在り。かつて霊一が住んでいた。○開士 開悟の士。高僧。○隋 「随」と通用。○本師 もと釈迦のこと。転じて宗派の祖師。○了義 仏法の第一義を了解する。○恵心 善い心。○善誘 衆生を善い方へ導く。○呉風越俗罷淫祠 呉越の地に邪宗が多かったので、狄仁傑がその祠を破壊し仏教に帰依させたという。『旧唐書』《狄仁傑伝》「呉・楚の俗に淫祠多し。仁傑奏して一千七百所を毀つ」。○室中時見天人命 『維摩詰経』「時に、維摩詰の室に一の天女有り、諸天人の説法する所を聞くを見て、便ち其の身を現ず」。○物外 俗界を離れた清浄の世界。○海嶽 四海五嶽。○清言 俗を離れた清らかな談話。○玄度 東晋の許詢。○懸河高論 高遠な議論が長く尽きないことをいう。○持 肩を並べる。【訳】西陵湖畔にて霊一上人に寄せる詩。東山の寺に向かいて道学び悟り開いた上人よ、南の渡し場舟に乗り南を目指して御仏の道に仕えた陽(みなみ)に隋つて本師と作す。清き心で衆生をば善き方向へ導きて、呉越の民も教化され邪教祭るをやめたとか。講堂にては仏法を天に代わって説きたまい、世俗はなれて海山の清らかな地に行脚する。ああ、ありがたや東晋の玄度にまさるご法話じゃ、立て板に水とうとうと匹敵するもの誰も無し。
September 23, 2007
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送李將軍(一作送開府姪隨故李使君旅襯卻赴上都) 劉長卿征西諸將一(一作莫)如君、報徳誰能不顧勳。身逐塞鴻來萬里、手披荒(一作江)草看孤墳。擒生絶漠經(一作臨)胡雪、懷舊長沙哭楚雲。歸去蕭條■(サンズイのみぎに「霸」。ハ)陵上、幾人看葬李將軍。【韻字】君・動・墳・雲・軍(平声、文韻)。【訓読文】李将軍を送る(一に「送李将軍を送る(一に「送開府姪隨故李使君旅▼(「木」のみぎに「親」。シン)卻赴上都」に作る) 劉長卿征西諸将一に(一に「莫」に作る)君のごとく、徳に報いるに誰か能く勲を顧みざらん。身は塞鴻を逐つて万里に来たり、手は荒(一に「江」に作る)草を披きて孤墳を看る。擒生絶漠胡雪を経(一に「臨」に作る)、長沙を懐旧して楚雲に哭す。帰去す蕭条たる■(ハ)陵の上、幾人か李将軍を葬るを看ん。【注】○李将軍 漢の李広。ここでは李使君を指す。○開府姪 唐百家詩本によれば、劉豊。「開府」は、開府儀同三司の略称。三公の儀制に同じという意。元勲者を優待しってたまわった常務のない高官。○使君 刺史。州郡の長官の敬称。○旅▼(シン) 旅先で没した人の遺体をいれる柩。○卻 あべこべに。○上都 長安。○征西 西方の吐蕃を征討する。○一 もっぱら。○報徳 めぐみや徳にむくいる。○塞鴻 辺地のガン。○万里 きわめて遠いところ。○披草 雑草などをはらいのける。○孤墳 ぽつんと一つだけある墳墓。○擒生 生け捕りにする。捕虜にする。○絶漠 極めて遠い砂漠。○胡雪 北方のえびすの地に降る雪。○懐旧 昔をなつかしく思い出してしのぶ。○長沙 湖南省長沙市。○楚雲 楚の地方にかかる雲。○帰去 帰りゆく。○蕭条 ひっそりとして、ものさびしいようす。○■(ハ)陵 陝西省西安市の東。李広が猟から霸陵亭に帰った時、霸陵の尉が酔っぱらっていて、李広を叱って引き留めた。【注】
September 18, 2007
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送宇文遷明府赴洪州張觀察追攝豐城令(時長卿亦在此州) 劉長卿送君不復遠為心、余亦扁舟湘水陰。路逐山光何處盡、春隨草色向南深。陳蕃待客應懸榻、■(「宀」の下に「必」。フク)賤之官獨抱琴。儻見主人論謫宦、爾來空有白頭吟。【韻字】心・陰・深・琴・吟(平声、侵韻)。【訓読文】宇文遷明府の洪州に赴き、張観察の追つて豊城の令を摂るを送る(時に長卿も亦た此の州に在り) 劉長卿君を送るに復た遠きは心の為ならず、余も亦扁舟湘水の陰(みなみ)。路山光に逐(したが)つて何れの処にか尽きん、春草色に随つて南に向かつて深し。陳蕃客を待つに応に榻を懸くべし、■(フク)賎官に之きて独り琴を抱く。儻(もし)主人の謫宦を論ずるを見なば、爾來空しく有らん白頭の吟。【注】○宇文遷明府 未詳。「明府」は、唐代の県令の称。○洪州 むかしの治所は今の江西省南昌市。○張観察 張休。洪州刺史の時、江西観察使を兼任していた。「観察」は、観察使。中国で地方政治を総理する官吏。○此州 越州。○扁舟 小さい舟。○湘水 湖南省を流れ瀟水と合流して洞庭湖にはいる。○陳蕃待客応懸榻 後漢の陳蕃は、郡に在りて賓客を接待しなかったが、徐稚がやってきた時だけは榻を設け、彼が去ると榻を懸けてしまったという。○■(フク)賎 ■(フク)賎は単父を治めたとき、琴を弾き、自身は官舎から出ずに、単父が治まったという。すぐれた県令のたとえ。○儻 たちまち。にわかに。○主人 道中に泊まる宿屋の主人。○謫宦 官吏がとがめを受けて官位をおとされ、または遠方の辺地へ流される。○爾來 そのとき以来。○白頭吟 司馬相如は茂陵の人の娘を妾にしようとした時、妻の卓文君が白頭吟を作り自害したので、妾を迎えるのをやめた。ここでは老年になって朝廷から見捨てられた不満をいう。【訳】宇文遷明府が洪州に赴任し、張観察使が続いて豊城の令として赴任するのを見送る詩。(時に長卿も亦た此の州に在任していた)君を見送り別れても、心離れるわけじゃなし、われも小舟で湘水の南にうかぶ寂しさよ。山の景色にしたがって路はどこまで続くやら、草の色とて南に行くにつれ濃くなりゆくぞ。陳蕃客をあしらうに良き友あつくもてなさん、かの■(フク)子賎役所にて琴弾き地方よく治む。宿の主人もたちまちに左遷をあれこれと言ったれば、その時以来口ずさむ恨含んだ白頭吟。
September 16, 2007
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送常十九歸嵩少故林 劉長卿迢迢此恨杳無涯、楚澤嵩丘千里■(「貝」のみぎに「余」。シャ)。岐路別時驚一葉、雲林歸處憶三花。秋天蒼翠寒飛雁、古▼(「諜」の「言」を「土」に換えた字。)蕭條晩噪鴉。他日山中逢勝事、桃源洞裏幾人家。【韻字】涯・■(シャ)・花・鴉・家(平声、麻韻)。【訓読文】常十九の嵩少の故林に帰るを送る。 迢迢たう此の恨み杳として涯無く、楚沢嵩丘千里■(はるか)かなり。岐路別るる時一葉に驚き、雲林帰る処三花を憶ふ。秋天蒼翠として飛雁寒く、古▼(「諜」の「言」を「土」に換えた字。)蕭条として噪鴉晩し。他日山中勝事に逢はば、桃源洞裏幾人の家。【注】
September 4, 2007
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送馬秀才落第歸江南 劉長卿南客懷歸郷夢頻、東門悵別柳條新。慇勤斗酒城陰暮、蕩漾孤舟楚水春。湘竹舊斑思帝子、江離初緑怨騷人。憐君此去未得意、陌上愁看涙滿巾。【韻字】頻・新・春・人・巾(平声、真韻)。【訓読文】送馬秀才の落第して江南に帰るを送る。南客帰るを懐ひて郷夢頻りに、東門別るるを悵(いた)みて柳条新なり。慇勤たり斗酒城陰の暮べ、蕩漾たり孤舟楚水春。湘竹旧斑帝子を思ひ、江離初めて緑にして騷人を怨む。憐ぶ君の此より去りて未だ意を得ざるを、陌上愁ひて看る涙巾に満つるを。【注】天宝年間、長安における作。○馬秀才 「秀才」は、科挙の受験有資格者。○落第 試験に合格しない。○江南 長江下流の南方。○南客 南方から旅人。○悵 残念がる。○柳条 柳の枝。○慇勤 心をこめるようす。○斗酒 いくらかの酒。○城陰 町の北。○蕩漾 漂う様子。○孤舟 ただ一隻の小舟。○湘竹 庭竹の一種。舜の死を悲しんだ湘妃(娥皇・女英)の涙が竹にそそぎ、斑点ができたという。○帝子 伝説上の皇帝、舜に嫁いだ尭の二人のむすめ娥皇・女英。○江離 香草の名。『楚辞』《離騒》に見える。○騷人 屈原。また、詩人。ここでは失意の文人馬秀才を指す。○得意 思い通りになる。○陌上 大通りのそば。愁ひて看る涙巾に満つるを【訳】馬秀才が落第して江南に帰るのを見送る。南方から来た君はいま故郷に思いを馳せるらん、町の東門この別れ嘆く柳の枝の陰。町の北にて送別の酒ねんごろに杯につぎ、波にゆられる小舟にぞ身を載せ楚水の春に浮く。竹の斑点みるにつけ娥皇・女英を思い出し、緑の江離みるたびに屈原の無念身にしみる。ああ君こころ残りにて此の地を去るはつらかろう、道のほとりに涙をばぬぐうハンカチあわれなり。
September 3, 2007
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送孫逸人歸廬山(得帆字) 劉長卿鑪峰絶頂楚雲寒、楚客東歸棲此(一作北)巖。彭蠡湖邊香橘柚、潯陽郭外暗楓杉。青山不斷三湘道、飛鳥空隨萬里帆。常愛此中多勝事、新詩他日佇開緘。【韻字】巌・杉・帆・緘(平声、咸韻)【訓読文】孫逸の廬山に帰るを送る。鑪峰の絶頂楚雲寒く、楚客東帰して此の(一に「北」に作る)巌に棲む。彭蠡湖辺香橘柚香んばしく、潯陽郭外楓杉暗し。青山も断たず三湘の道、飛鳥空しく随ふ万里の帆。常に愛づ此の中勝事多きを、新詩他日緘を開くを佇(ま)たん。【注】大暦八(七七三)年ごろ、鄂州における作。○孫逸人 未詳。「逸人」は、隠者。官に仕えず、隠居している人。○廬山 江西省九江市の山。○鑪峰 廬山の香炉峰。○絶頂 山頂。○楚雲 楚の地方にかかる雲。○楚客 楚の地方からきた旅人。○東帰 東の方へと帰って行く。して此の(一に「北」に作る)巌に棲む。○彭蠡湖 江州潯陽県(いまの江西省に属する)の東南五十二里にある湖。■(「番」にオオザト。ハ)陽湖。○橘柚 みかんやゆず。○潯陽 唐の県の名。江西省九江市。○郭外 町のそと。○楓杉 カエデとスギ。○青山も断たず○三湘 湖南省の湘潭、湘郷、湘陰。○万里 遠い距離。○此中 ここでは楚への道中にある瀟湘あたり。○勝事 すぐれた景色。○新詩 あらたに詠んだ詩。○他日 いつか。○佇 待ち望む。○緘 封。【訳】孫逸が廬山に帰るのを見送る詩。かの香鑪峰の頂きに楚雲かかりて寒ざむし、東へ帰る旅人は廬山の巌に棲むという。彭蠡湖のあるあたりにはミカンやユズが香ぐわしく、潯陽の町のはずれにはカエデとスギの陰暗し。青山とても三湘へ続く道をば隠さずに、飛ぶ鳥だけが君の乗る船を空しく追いかける。君は廬山へ向かう途次、美景を多く見てゆかん、我たのしみに君の詩を寄せたる封を開く待つ。
September 2, 2007
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温湯客舍 劉長卿冬狩温泉歳欲闌、宮城佳氣晩宜看。湯熏仗裏千旗暖、雪照山邊萬井寒。君門獻賦誰相達、客舍無錢輒自安。且喜禮■(「門」のなかに「韋」。イ)秦鏡在、還(一作盡)將妍醜付(一作赴)春官。【韻字】闌・看・寒・安(平声、寒韻)。【訓読文】温湯の客舍冬狩温泉歳闌(ふ)けんと欲し、宮城の佳気晩看るに宜し。湯仗裏に熏じて千旗暖かに、雪山辺を照らして万井寒し。君門賦を献ずるに誰か相達せん、客舍銭無くして輒(すなはち)自から安んず。且(しばらく)喜ぶ礼■(「門」のなかに「韋」。イ)に秦鏡在り、還つて(一に「尽」に作る)妍醜を将(も)つて春官に付するを(一に「赴」に作る)。【注】天宝四(七四五)年冬、驪山における作。○温湯 温泉。七二三年、驪山に温泉宮が置かれた。天宝六年、華清宮と改めた。○客舍 旅館。宿屋。○冬狩 君主が冬季に行う猟。○闌 終わりに近づく。○宮城 天子のおられる宮殿。○佳気 めでたい気。○熏 ふすべる。煙を立たせる。○仗 天子や宮殿の護衛。○万井 広い地域。あたり一帯。○献賦 賦を献上する。司馬相如は賦を献上しつづけていたが、長年の間、評価されなかった。○相 対象があることを示す。○達 届ける。○輒 いつでも。○且 とりあえず。喜○礼■(イ) 礼部。尚書省に属する六部の一。ここで科挙が行われた。○秦鏡 秦の咸陽宮に在った鏡で、人の善悪美醜を映したという。○妍醜 美醜。ここでは科挙に課せられる賦の出来栄えの善し悪しをいうのであろう。○春官 礼部の異名。【訳】温泉宮のそばの宿屋にて詠んだ詩。天子は冬に狩りをして温泉地にぞ歳暮るる、温泉宮のめでたき気、夕暮れことに美しき。衛兵武器を捧げ持ち、湯気の向こうに建てる旗、山のあたりは雪景色、肌に感ずる寒さかな。天子に賦をば献ぜんと思えど誰が届けよう、金も無ければのんびりと宿に落ち着き外も出ず。まあとりあえず嬉しきは礼部の審査曇り無く、そのできばえの善し悪しに応じた役目を配するを。
September 1, 2007
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