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この日は女人たちから離れ、二条院におわして祭り見物におでかけになります。 紫の姫のいらっしゃる西の対にお渡りになり、惟光には車を用意するよう仰せつけになります。姫のお遊び相手である女童たちに、「『女房たち』も出かけますか?」と仰せになり、姫君がたいそう可愛らしげに着飾っていらっしゃるのを、にっこりしながらご覧になります。「さあ、姫はいらっしゃい。いっしょに祭りを見ましょうね」と、御髪がいつもよりうつくしく見えますのを、かき撫で給いて、「久しく御髪を削がずにいましたね。今日は髪削ぎに良い日なのでしょうか」とて、暦の博士をお召しになりお尋ねになりながら、「先に女房がおでかけなさい」と、童たちの可愛らしい姿をご覧になります。女童がたいそう愛らしく髪の裾を華やかに削ぎわたしていますので、浮紋の袴にかかる髪の様子がはっきり見えるのです。
June 30, 2011
祭りの日は、左大臣家では見物なさいません。ご禊の日の車争いの事を、源氏の大将に逐一報告申し上げる人がありましたので、『何とお気の毒な事を。それにしても困ったものだ』とお思いになります。『左大臣家の姫という人は、せっかく重々しくいらっしゃるのに、何かにつけ思いやりが足りず生真面目なところがおありになる。ご自身では意地悪なさるおつもりはないのだろうが、このような場合には譲り合うべきとも思い至らず、不心得者が次々に乱闘を起こしたのであろう。御息所はよく気が付き、こちらが恥ずかしいほど奥ゆかしく上品でいらっしゃるものを。どんなに傷ついたことか』と、不憫にお思いになり、六条のお邸に参上なさいます。 けれども斎宮がまだ六条院におわしますので、御息所はそれを言い訳に、容易に対面なさいません。源氏の君は『それは尤もな事だな』とお思いになりながら、「どうしてこうなのでしょう。こんなふうによそよそしくなさらずとも」と、つぶやいていらっしゃいます。
June 29, 2011
桐壺院の御弟宮でいらっしゃる桃園式部卿の宮は、桟敷で源氏の大将のお通りをご覧になっていらっしゃいました。「何と。年ごとに、まぶしいまでうつくしく成長する方ですな。鬼神などが目をお留になるでしょうに」と、恐ろしくお思いになります。 源氏の大将は宮の姫君へは、長い間にわたり御文を差し上げていらっしゃるのでした。姫君はその源氏の君の御心持ちを、『世間の男にはないもの』とお思いで、『平凡な男であっても、女は心惹かれるものだわ。まして源氏の君はどうしてこんなにすばらしいのかしら』と、御心が留まるのでした。 けれども、今以上に近しい関係に、とまでは、お思いになりません。 それでも若い女房たちは聞き難いまで、源氏の大将を褒め合うのでした。
June 28, 2011
壺装束などという姿をした、身分の賤しからぬ女や、世を捨てた尼などまでが、人ごみに押されて倒れなどしながら見物に出ているのも、いつもなら『いい気になって。まあ、みっともない』と見るのですが、今日ばかりは無理もない事なのです。歯が抜けて口がすぼみ、髪の毛を着物の下に着込んだ賤しい老女どもが、両手を合わせて額にあてながら源氏の君を拝み申し上げるのも、可笑しいのです。 賤しい身分の男までが、己の相好の崩れるのも知らず、笑い呆けています。 源氏の君にとっては目をお留めになるはずもない、身分の低い受領の娘までもが、思い切り飾り立てた車に乗り、体裁ぶって源氏の君に片思いしているなど、それぞれがおもしろい見ものになっています。 まして人知れず、ここかしこに源氏の君が忍んでお通いになる女たちは、数ならぬ我が身の嘆きがまさる事も多いのでした。
June 26, 2011
「影をのみ みたらし川のつれなきに 身のうきほどぞ いとゞ知らるゝ」(愛しい御姿を物影からでも拝見しようと思いましたが、あなたさまのあまりのつれなさに、我が身の切なさを思い知らずにはいられません)と、涙がこぼれます。女房の目もありますからきまりが悪いのですが、『人中でこれほど引き立つうつくしさ、目もくらむような源氏の君のご立派なお姿やご様子。それを見なければ、きっと口惜しい思いをしたことでしょう』とも、お思いになります。 お供の人が、それぞれ身分に応じた装束でたいそうみごとに整えています。その中でも上達部のうつくしさは格別なのですが、源氏の大将のご威光にはとてもかないません。 この日の源氏の大将の随身で、殿上の丞という供人は、めったにない行幸などの折に同行するのですが、今日は右近の蔵人の丞が供奉しました。 その他の御随身たちも姿形をまぶしいほどに整えています。源氏の君が世に大切にかしづかれていらっしゃる様子は、まるで心なき草木までもが靡くようです。
June 26, 2011
御息所は『もう、何も見ずに帰ってしまおう』とお思いになるのですが、どうにも身動きがとれません。そうこうするうち、「行列が来たぞ」と言う声が聞こえます。御息所はつれない源氏の大将を恨めしくお思いになるのですが、やはりお通りを待たずにいられないのも、分別のなさというものでしょうか。 源氏の大将が馬も止めず、素知らぬ顔で過ぎ給うを見るにつけても、御息所には反って物思いの種となるばかりです。 ほんにその通り、この日の女車どもはいつもより趣向を凝らして調えてあり、その下簾垂れの隙間からは、女房たちがこぼれそうなほど、我も我もと乗り込んでいるのが見えます。源氏の大将は知らぬ顔をしていらっしゃるのですが、それと分かる女車にはにっこりなさりながら、流し目でご覧になることもあります。 左大臣家の御車ははっきり分かりますので、御前は真面目なお顔でお通りになります。お供の人々も、殊更かしこまって通ります。御息所は、左大臣家の勢いに気圧されるありさまを、ひどく口惜しくお思いになるのでした。
June 25, 2011
昨年暮れから始まった「縫物熱中症?」も納まりつつあるようで、そろそろ「源氏物語」に戻りたいと思うようになってきました。この半年間に縫い上げたものは、クロップド・パンツ4本に始まり、長そでのジャケットブラウスが2枚、半そでブラウスとタック・プリーツ・スカートのセットが4組、リネンのパンツスーツ1組、スカート3枚、ハイネックのフレンチ・スリーブ・ブラウス3枚、それにワンピース、パジャマ、ベスト・・・など、怒涛のように縫い上げてきました。布地を買ったら何が何でも縫わなくではおさまらず、縫い終えて止まってしまうと、心の中の「自転車のような何か」が倒れそうで、夢中になって突っ走ってきました。お蔭で夏物の上下服がたくさん出来上がって充実感があり、何だかやっと正気に戻ったような気分です。これからまた新たな気持ちで、「源氏物語」に取り組みたいと思っています。
June 24, 2011
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