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2022年10月27日

「BE BLUES!〜青になれ〜」(by田中モトユキ)

週刊少年サンデーで連載されていたサッカー漫画「BE BLUES!〜青になれ〜」が、2022年46号で最終回を迎えました。全489話、単行本だと49巻かな。
管理人はスポーツ漫画は基本的に守備範囲外ですが、このマンガはずっと週刊誌で読んでいました。
あらすじをサックリ書くと「一条龍という天才的なサッカー少年が、小学生時代に大怪我をして再起不能と思われながら、ものすごくがんばって中学・高校とサッカーを続けて再び才能を開花させる話」です。

作者の田中モトユキ氏はもっぱらスポーツ漫画を描き続けていて、バレーボールや野球などを題材にした作品を何本も描いていますが、この「BE BLUES!」が最新かつ最長です。ちなみにこの作品、2015年に第60回(平成26年度)小学館漫画賞少年向け部門を受賞しています。

管理人がこの作品を評価しているのは以下の点です。
1 サブキャラクターの魅力
2 画面構成の丁寧さ

1については、ずばり「桜庭巧美(さくらばたくみ)」というキャラを生み出した点です。主人公の龍は、まさに王道の主人公ですが、その主人公の脇にこの男を置いたことがこのマンガの成功だったといっても過言ではありません。性格は傲岸不遜を絵にかいたような奴で、「オレ様を尊敬しろ」が口癖。どちらかといえば嫌われ者キャラで、主役を引き立たせる「噛ませ」役になるはずが、物語が進むほどにどんどん「味のあるキャラ」になっていきます。最後の最後まで活躍を見せるあたり、じつはこの作品の「裏主人公」かもしれない。

2について、特にスポーツ漫画などでは重要なのですが、「全体の状況がどうなっているのか」が分からないと興味がそがれてしまいます。カッコいいキャラの凄いプレイを大ゴマで見せたいのは誰しも思うことですが、それを効果的に見せるには、地道に状況を描写していく必要があります。
田中モトユキが偉いのは、そういう全体の俯瞰図や選手の配置などを丁寧に描いていることです。
加えて、カメラ位置をちゃんと固定していて、おかしな切り返しで読者を混乱させない工夫が上手です。

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決勝戦のシーンを見ると分かりやすいのですが、敵側は画面の左から右に向かって攻めています。
主人公側は、逆に右から左へ攻めます。この方向性はずっと守られています。この制約の中で、いろいろなプレイを描いているので、まさに職人芸です。
ちなみにここでネタバレをかましておきます。
この試合、どちらが勝つのかは、じつはこの構図を見ただけで分かるのです。
日本の漫画というのは、右ページから左ページに読み進むように出来ています。
つまり、時間軸的には、左側は常に未来、将来になります。
やはり「勝利」する側というのは、常に「未来」に向かって進む側ではないでしょうか。
という重大なネタバレをして今回のご紹介はおしまい。

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2022年08月25日

大ベルセルク展に行って来た!

管理人のゆうすけです。夏休みももう終盤ですね。心残りはありませんか?
管理人は2022年8月某日に、名古屋市中区のテレピアホールで開催されている「大ベルセルク展」に行ってきました。
できるだけゆっくり見たかったので、平日の午後に休みを取って乗り込みました。
この「大ベルセルク展」は、当初は三浦建太郎氏のベルセルク連載30周年記念として、2021年1月に開催される予定でした。コロナ禍の影響で同年9月に延期となり、その開催前の5月に三浦氏が急性大動脈解離で死去され、「三浦建太郎画業32年の軌跡」という副題が加わることとなったものです。
会場のテレピアホールは、名古屋の中心部の栄から少し東へ歩いたところにあります。東海テレビの隣のビルです。
平日の午後だったので、当日フリー券でサックリと入場できました。
会場に展示されている原画は撮影NGですが、フィギュアなどの造形物は部分的に撮影OKでした。
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入場すると、「ベルセルク」の原画が年代順に展示されています。
(単行本の順ではなく、物語の時代順です)
原画に触ることはできませんが、相当近づいて見ることができるので、生原稿を穴が開くほど鑑賞してきました。
欲を言えば、「ベルセルク」以外の作品、「ギガント・マキア」なども展示して欲しかったのですが、残念ながら「大ベルセルク展」です。
連載初期のものから、直近の原稿まで、かなりボリュームがあります。
カラーの原画も相当数展示されています。
三浦先生は、最後の頃はデジタル作画も試したようですが、基本的にアナログ派なので、描き込みがスゴイです。本物のスクリーントーンを貼って削った最後の世代かもしれません。
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展示の最後に三浦先生の机が置いてあり、実際に執筆していた時の状況が再現されています。
机の上にはWACOMの液タブがあり、モニタも複数あったので、最終的にはデジタル化になっていたようですが、インタビューなどでも「デジタル作画の功罪」のような話(デジタル化すると際限なく修正や細かい処理が出来てしまうので、単純に便利であるとは言えない)をしていたので、アナログからの叩き上げ作家としては、悩ましい状況だったのだと思います。
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机上の書棚の端に並んでいた本。
管理人も同じ本を持っていたのでちょっと嬉しかった。
スタジオぬえのメカニック本です。

三浦先生の絶筆となった「ベルセルク」ですが、現在はその続きをお弟子さんたちが頑張って描いています。
本家と比べれば当然見劣りもしますが、管理人的にはその意気に感じて良しとしています。
三浦先生もきっと喜んでくださると思います。

2022年08月09日

僕の心のヤバイやつ 7巻(by 桜井のりお)

一年でいちばん暑い時期ですが、皆様お元気ですか。
今日は2022年8月9日です。
昨日「僕の心のヤバイやつ」7巻が発売になり、今日の仕事帰りに買ってきました。
もちろん「特装版」です。エピソード零が小説で楽しめます。市川君の中一時代のお話ですよ。

「僕ヤバ」も2023年にTVアニメ化が決定となりました。
ただ、監督や制作会社がまだアナウンスされていないようです。
誰が監督をやるのでしょうか。気になります。
ちなみに「アニメ化」にあたってのティーザービジュアルが1枚だけ発表されています。
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「僕ヤバ」アニメ化のビジュアル
山田が駐輪場で豪快にアイス(3段×2本)食べてる絵
桜井のりお先生が描く山田とは微妙に違うんだけど、わりといい感じだと思います。


個人的には山田尚子監督と吉田玲子構成・脚本のコンビを祈願していますが、どうかな。
「僕ヤバ」はエピソード密度が高いので、アニメ1期(2期以降があるとして)では2巻までかと思います。
初期山田の絵柄をどれぐらい原作に寄せるのかが気になりますが、唯一のティーザービジュアルを見た限りでは、「初期山田」でも「最新山田」でもなく、アニメ用にデザインし直してますね。賢明だな。

というアニメ化の話はさておき、7巻です。
1巻から7巻までが2年生編。7巻のラストが、3年生の初日です。
中学卒業までのお話とすると、20巻ぐらいになるのでしょうか。すごいな。大河ロマンだ。
7巻のベスト台詞は以下のものに決定しました。

「2人きりで何度も遊んでいるのにまだ付き合ってないのか」

市川が言うのです。お前が言うのか。その場にいる山田と原さんのリアクションが最高です。
市川君は、成長しているようで、本質的な部分は変わっていません。
山田は巻を重ねるごとに、どんどん綺麗になっていきます。
以前のレビュウにも書きましたが、このマンガは市川君の「一人称マンガ」なので、山田の変化は観測者である市川君の変化です。
1巻の「初期山田」が現在の山田と別人のように見えるのは、市川君がそういう風に観測していたからです。
現在の山田がものすごく可愛くて綺麗なのは、観測者にそのように見えているからです。
市川君はものすごく学校へ行くのが楽しいでしょうね。
「特装版」の中1時代のエピソードを読むと、この1年間が奇跡のような時間だったことがわかります。
これから始まる中学3年も、実り多き時間となりますように。

2022年07月16日

最近のヤングアニマル

梅雨が明けたら連日大雨が降る2022年7月です。お元気ですか。管理人のゆうすけです。
ご近所のマンガ喫茶が着々と閉店して、最近はマンガを読むのも一苦労です。
それでも時々ネットカフェなどを巡回して雑誌を読んでいます。

ということで、最近いちばん気になるのはやはり「ヤングアニマル」(白泉社)でしょう。
羽海野チカの「三月のライオン」と三浦建太郎の「ベルセルク」を連載する雑誌としての役割が「ヤングアニマル」の存在理由だったのですが、三浦氏が急逝されたことで、どうなることかと思っていました。
ところがなんと友人の漫画家である森恒二氏と、三浦先生のアシスタントさんたちが手を組んで、「ベルセルク」を再開する運びとなりました。
その経緯についてはヤングアニマル誌上やWebで公開された「ベルセルク再開のお知らせ」で語られておりますので、詳しいことは省略しますが、個人的には大変感謝しています。
「お知らせ」でも述べられているように、再開後の「ベルセルク」は、「三浦建太郎が友人の森恒二に語った結末までのストーリー」を出来る限り忠実に具現化する内容になります。これまでとはやや雰囲気が変わったり、一部ダイジェストな部分も出てくるかと思いますが、「この物語を完結させたい」という意気に感ずる次第であります。
現在すでに再開して3話ほど経過していますが、評価は保留です。
あらためて三浦氏の画力の凄さが分かるとも言えますが、後を託された人たちが成長してゆくのを見守るのもファンの醍醐味かと思います。応援していますよ。

そのヤングアニマルで、密かに新連載が始まっているのが「この復讐にギャルはいらない」(まの瀬)です。
まの瀬さんは「顔がこの世に向いてない」(全3巻)を描いた個性派の漫画家です。
前作の連載終了後は、読み切りを1本発表していましたが、気が付いたら青年誌で連載を始めていました。
白泉社というか、ヤングアニマルはけっこう異色な作家を上手く捕まえてくると思います。
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「この復讐にギャルはいらない」(まの瀬)
ヤングアニマルにて連載中

「この復讐・・・」はこんな内容。
「温もりを知らずに生きてきた孤独な殺し屋・橿原ノゾミ。
自らを育てた“ファミリー”を裏切り、教室の隅が定位置の地味な高校生として日々を送っていたが、 クラスのギャル・新宮レオナを不良から助けたことがきっかけで、なぜかぐいぐい距離を詰められることに。
慣れないギャルとの交流に、橿原は彼女が自分を狙う刺客なのではないかと疑いを持つ。
果たして新宮さんは刺客なのか、それとも——」

ギャグなのかシリアスなのかも判然としません。ラブコメと言えなくもない。
それよりも管理人が気になるのは、この主人公設定自体が「本当」なのかという点。
この設定、主人公の「自称」なんです。
いちおう身体能力の高さなどは実際に披露されていますが、何か「信頼できない語り手」のように思えて仕方ない。
全てを疑え。

2022年07月03日

これ描いて死ね(byとよ田みのる)

世の中には多くの「泣ける映画」「泣ける小説」「泣けるアニメ」等々が存在しますが、管理人にとっての目下最大の「泣ける漫画」がこの作品。
「これ描いて死ね」(とよ田みのる)です。
作品の概要は以下の通り。
「安海 相(ヤスミ アイ)は、東京都の島しょ・伊豆王島に住む高校1年生。
漫画を読むのが大好きな彼女は、とある出来事がきっかけで漫画を“つくる”ことを意識し始める……
少女を待ち受ける世界は、果たして!?
漫画大好き漫画家・とよ田みのるによる漫画家漫画!!
作品を生み出す苦しみも歓びも、余さず描く漫画浪漫成長譚!!!」

ということで、とよ田みのるが満を持して放つ「漫画の漫画」です。とよ田版「まんが道」ですね。
「ゲッサン」連載中で、2022年7月現在コミックス1巻が発売中。
Webで1話だけ読めるので、騙されたと思って読んでみるといいかも。異常に高密度な1話です。
この1話で「乗れた」人はコミックスを急いで買うように。ダメだったひとはさようなら。
「乗れる」かどうかのポイントは、「漫画が好き」かどうかです。とよ田みのるは以前からそうですが、「漫画が好きすぎる」人です。2002年のデビュー作の「ラブロマ」からずっと見ていますが、「漫画が好き」を拗らせまくった「金剛寺さんは面倒臭い」まで、いつも漫画に対して全力です。
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作品概要でも書いていますが、この作品はとある女子高生が「まんが道」を突き進む漫画です。
第1話で明らかになりますが、その師匠となるのが学校の先生です。
先生はかつては漫画家でしたが、現在はそれを封印して離島で教師をしています。
その先生の過去を描いた番外編「ロストワールド」が1巻巻末に収録されていますが、これを読むだけでもコミックスを買う価値がある。
ものすごく優しい雰囲気の漫画を描いている人が、「読者全員殺す気」で描いているという狂気。
「面白さで殺す!」という決意と覚悟を持って、死ぬ気で描いているという漫画家の宿痾が心を打ちます。
1巻では主人公が「漫画を描く」ことに目覚め、仲間と師匠を得て、ライバルと邂逅するまでが描かれます。
とよ田みのる先生も、「読者全員殺す」気で描いている雰囲気が濃厚に漲っています。
読者諸兄は存分に殺されてください。


2022年06月27日

潮が舞い子が舞い 第8巻(by阿部共実)

「人間に腕がもう7本あったら、ちょうど腕が9本になるな」

皆さんお待たせの「潮が舞い子が舞い」、待望の8巻が絶賛発売中です。
管理人の自宅の近くの本屋では、いつも1冊しか入荷しないのです。オレ専用かよ。

冒頭のセリフは2年4組在籍の「魔王」、小笠原さんの発言です。
考えるな、感じろ。というのはこういう時のためにあるフレーズですね。
なんで「ちょうど」で奇数なんだと思ったら負け。「魔王」は最終的には腕を17本ぐらい生やしたいそうなので、ちょうど9本ではまだ道半ばかと存じます。
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小笠原さんの「魔王」エピソードは「潮が舞い子が舞いblog」でご覧いただけます。
彼女の真の姿をまだ誰も知らない。


今回は前回(7巻)で欠席?だった、「東アジア女子会機構」と「お天気組」のメンバーのエピソードが入っていて、それだけで大満足です。
柿境さんと枇杷谷さんは、意見は分かれるけどお互いをリスペクトしているところがすごく良い。
友人の条件として、「お互いを尊敬できるか?」という部分を軽々とクリアしていて、気持ちいいです。
「お天気組」のエピソードは、狂気を孕んだ「コンビニごっこ」。管理人の大好きな雨窪さんがまさかの大活躍。片腕でクラスメイトを軽々と吊り上げる偉丈夫ぶりにしびれました。
冒頭3コマ目の雨窪さんのセリフ「わからない」に、このエピソードのすべてが凝縮されています。

79,80,81話は、連続して珠玉のエピソード。
その81話はバーグマンと百々瀬の密かな逢引。
このマンガは登場人物が相当しゃべり倒すのが常ですが、ときおりその会話が途切れたり、間が入る瞬間が好きです。この81話も、二人がどうでもいいような会話を交わしつつ、ときおりふっと静かになる時間が愛しい。カラーじゃないんだけど微妙な光線の加減とか、風に揺れるカーテンとか、フランス映画みたいで綺麗だ。

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8巻ではそれぞれのキャラ同士の関係性が少し進んでいくエピソードがいくつか。
82話では右佐と虎美が、88話では水木と百々瀬が、あまりにも青春すぎて眩しくて読めない。
「私はもう別の誰かに認めてもらう必要がないから」
「小学校のその先生さ、小さくなってた」「自分がでかくなったんじゃねえの」
お互いだけに通じる言葉もあるよねって。
世界は輝きと祝福に溢れているのかと。
うん、阿部センセイ、やっぱ天才じゃねえの。

2022年06月09日

超人ロックの日

本日は2022年6月9日です。
6月9日はロックの日ですが、管理人的には「超人ロックの日」です。
「超人ロック」は聖悠紀による日本のSFマンガです。
いちばん最初の作品は作画グループというマンガ同人団体で発表された「ニンバスと負の世界」。1967年のことです。なんと肉筆回覧誌。
その後作画グループで4作描かれてから商業誌に移り、1979年からは週刊少年キングで連載が始まり、以後、多くの雑誌を渡り歩き現在に至ります。
そうです、まだ連載は続いているのです。
一人の作家が描いたシリーズマンガとしては最長クラス。SFマンガ限定ならダントツ1位。
物語は、永遠に生き続ける一人の超能力者、通称「超人ロック」の活躍を通して語られる、宇宙時代の人類の物語です。ロックは基本的に「永遠の少年・青年」です。

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作画グループ版の「超人ロック」VOL.4
コズミックゲーム
管理人が一番好きな「ロック」のひとつ


「超人ロック」はただ歴史が長いだけでなく、多くの作家に影響を与えています。
60年代とはいえ、SF、美少年、超能力、不死者、といった、今でも皆さんが大好きなテーマが山盛りだったので、当時の漫画家や漫画ファンの間では、インターネットも無い時代なのに、なぜか噂が広まっていきました。まだSF漫画が珍しかった時代に、少女マンガ的な美麗な描線で綴られる物語は、一種の「伝説」となっていました(特に作画グループの時期の作品)。
ものすごく個人的な見解ですが、女性漫画家への影響が特に強かったように思えます。
「超人ロック」にインスパイアされた作品として思いつくものを挙げてみます。
1972年から萩尾望都さんが描いた「ポーの一族」は「永遠を生きる少年」を
1977年から竹宮恵子さんが描いた「地球へ」は、「超人・超能力者」を
それぞれが自分なりの「超人ロック」として描いたものだと(個人的に)思っています。

管理人は、「超人ロックに最終回はない」という思想の持ち主ですが、それはそれとして、
できれば「超人ロック」の世界をシェア・ワールド化してもらえたらと考えています。
「シェア・ワールド」というのは、一つの作品世界を複数の創作者が共有して構築してゆくものです。
コミケなどの二次創作で、ファンが各々好きに描いてゆくのも良いのですが、できれば公式に近い形で「超人ロック」の世界を存続できれば嬉しいと思うのです。
実際に、聖悠紀先生以外の人が描いた「超人ロック」のアンソロジーも既に刊行されています。
個人的には「ハント探偵社」シリーズの新作と、18世紀の英国でなぜかロック(ライザ)がメイドをやっているという謎のスチーム・パンクものを読みたいですね。ああ、自分で描けばいいのか。

2022年05月01日

人形の国(by弐瓶勉)

弐瓶勉(にへいつとむ)は日本の漫画家で、代表作は「BLAME!」「シドニアの騎士」などがあります。
「人形の国」は弐瓶勉の作品で、2017年から 2021年にかけて『月刊少年シリウス』で連載され、全9巻で完結しています。
管理人は弐瓶勉の大ファン、というわけではないのですが、わりと昔から読んでいます。
作風はかなり個性的で、基本的にSF、トッピングでラブコメやギャグを少々、絵柄はメビウスや大友克洋、宮崎駿などを取り込んだ、アクのある感じです。デビュー作の「BLAME!」の頃に比べて最近は絵が「白い」雰囲気ですが、個人的には余分な線が省略されて読みやすいと思います。
人工構造物が複雑に積層化された世界や、その中で徘徊する自動機械(生物的な進化を遂げている)を延々と描き続けている人です。「風の谷のナウシカ」の世界を構成する菌類や蟲たちが、「機械」に置換された世界だと思っていただければ分かりやすいでしょう。

「人形の国」は、遠未来でのAPOSIMZ(アポシムズ)と呼ばれる人工天体を舞台に繰り広げられる復讐と戦いの物語です。
アポシズムは直径が12万kmという設定です。ざっくり地球の10倍、土星ぐらいのサイズです。でかいね。
「アポシムズには超構造体殻に覆われた地底空間が存在し、50世紀前に地底との戦争に敗れた地表人はアポシムズでの正当な居住権を失ったまま、危険な自動機械が徘徊し、人間が機械化してしまう感染病(人形病)さえ蔓延する極寒の地表に捨て置かれた。白菱の梁のエスローは地底からの使者タイターニアと出会い、正規人形へと生まれ変わった。そして、故郷を滅ぼした上に今なお周辺民族を脅かし続けるリベドア帝国の皇帝スオウニチコを打倒するために旅立つ・・・。」
・・・という世界観なのですが、如何でしょうか。ご理解いただけましたでしょうか?
お話の骨格は「風の谷のナウシカ」に似ています。序盤は特にそうです。
それに加えて、「変身ヒーローもの」のテイストが混ざっています。
弐瓶勉が初めて「少年誌」で連載をするにあたり、変身とかバトルなど、キャッチ—な要素を盛り込んだのかなと思われます。
ただし、変身(「正規人形」と呼称される外殻を纏った形態)するためには、「コード」と呼ばれる装置を使い、転換に成功して「正規人形」になる必要があります。適合確率は1万分の1ぐらい。大半は失敗して死にます。
正規人形化すると、基本的に「人」ではなくなるので、食事や睡眠は不要になります。
通常時は人間形態で、戦闘時には「鎧化(がいか)」して個別の特殊能力を発揮します。
なかなか間口の狭いマンガですが、熱心なファンがいるのも事実です。

この作品は全9巻で完結していますが、後半かなり端折っています。
9巻後半の108頁から109頁にかけてなどはその顕著な例で、見開いた右頁でふたつの陣営が鎧化して睨み合っており、左頁に移るとその「壮絶な戦い」が終わっていて、ほぼ全員が死亡しています。すごい省略だ。
また、最終話では、主人公と皇帝の戦いに決着がつきますが、主人公に何も語らせないまま幕が引かれるので、読者的には「置いて行かれた」感が強いです。
少年マンガらしく、主人公がもう少し熱血で饒舌な奴だったら違う印象になったかと思いますが、弐瓶勉らしい「寡黙な主人公」の物語にふさわしい終わり方ではあります。

2022年04月12日

さよなら絵梨(by藤本タツキ)

管理人のゆうすけです。「さよなら絵梨」を読んだので、感想などをちょっと記しておきます。
未読の方は、ネタバレを含みますので、先に作品をお読みください。
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「さよなら絵梨」藤本タツキ
2022年4月 ジャンプ+にて公開
200頁

「チェンソーマン」や「ルックバック」などの作品で知られる漫画家の藤本タツキがジャンププラスで発表した新作が「さよなら絵梨」です。
公開された翌日に読ませていただきました。
うん、面白いね。でも人を選ぶかもしれない。
中学生である主人公が、母親から買ってもらったスマホで映画を作るお話です。
マンガと映画が好きな人にはバッチリでしょう。
TVやSNSが好きな人にはちょっと受けないかもしれない。良い悪いじゃ無くてね。
読んだら即座に分かる通り、極めて「映画的」な手法で描かれています。
基本的に1頁を横長の4コマに分割して、シネスコな画面で構成されています。
「映画」なんですよ、このマンガ。
また、この作品は、3本の映画によって構成されています。
一本目は物語の冒頭で描かれる、主人公が初めて撮った映画で、文化祭で上映されて「糞映画」の評価を受けるヤツ。タイトルは「デッドエクスプローションマザー」
二本目はヒロインである絵梨の協力を得て、1作目のリベンジとして作り上げた映画。タイトルは不明ですが、たぶん「さよなら絵梨」。
三本目が一番のキモです。
これが分かるとこの作品が腑に落ちて、「スゲエ」となります。
三本目はこのマンガ自体です。「さよなら絵梨」というタイトルの、「マンガ」であり且つ「映画」です。
一本目と二本目で完成しなかった作品が、三本目で完成する、という仕掛けです。やったね。
作品内の虚構と現実が入り混じる部分があるので、一回読んだだけだと意味が分からん、と言う感想もあるかと思います。管理人も混乱しました。
あらためて読み直すと、わりと分かりやすく出来ています。
映画をマンガに落とし込む作品は過去にも有りますが、これほど上手く見せたのは記憶に無い。
さすが藤本センセイです。
ちなみに、作品内で虚構というか、ファンタジーなのは、やはり爆発シーンです。
あそこは「合成」です。
でもアレが無いと、この主人公の映画では無いのです。パパも絵梨さんも言ってるしね。
終盤の、家族をいきなり事故でなくしたり、絵梨の正体が明らかになる部分は「事実」です。
歳をとった主人公は、パパが演じているのではという説もありますが、管理人的には「違うよ」と思います。
作画的に、眉の形を親子でわざわざ変えているのをご確認ください。
それじゃあ、最後のシーンは誰が撮っているのかというと、それは間違いなく「作者」だと思います。
いきなりメタ的な話になっちゃいますが、この作品は「映画」であること以前に、やはり「マンガ」なのです。
藤本、天才かよ。

2022年03月26日

収容違反(SCP財団)

管理人のゆうすけとねこです。
土日も仕事があるわりに、実際はけっこうヒマな時間が多い管理人です。
ものすごく頑張って働くと、午前中にほぼ終了して、午後5時までが長くてつらい時間になります。
朝は7時ぐらいから仕事を始めているので、じつは毎日10時間近く拘束されている。

そんなわけで、地味に時間をつぶすコンテンツのご紹介です。
「SCP財団」
知っている人は知っている、知らない人は全く知らない「SCP」の世界です。
簡単に説明すると、ネット上で始まったシェアワールドのひとつです。
シェアワールドとは、複数の作家などが共通の設定・世界観に基づいて創作を重ねる作品群またはその世界のことです。
古い例ではH.P.ラヴクラフトが元祖である「クトゥルー神話体系」、SFではおなじみの「スタートレック」や「スターウォーズ」などがその例です。きいてますか。
「SCP財団」の始まりは英語圏の某大型匿名掲示板です。2007年頃です。ねこです。
とあるスレッドで、一枚の画像からストーリーを創作するという遊びから始まりました。
最初のSCP『SCP-173「彫刻-オリジナル」』をきっかけに数多くの「報告書」が投稿され、やがてそれが「SCP財団」という大きな世界を持つに至り、文字通り世界中に広がっていったのです。
SCP財団とは「SCP」と呼ばれる自然法則に反した超常的な物品や存在、場所などを一般人から隔離し、
確保(Secure)、収容(Contain)、保護(Protect)
することを目的とした架空の組織です。
現在ではSCP日本支部のサイトで、過去の大量の「報告書」を無料で読むことができます。
SCP財団には世界中の怪奇で珍奇なモノや生物?あるいは建造物などが確保され、収容され、保護されているわけです。
有名なところでは、SCP-173(彫刻 - オリジナル)、SCP-087(吹き抜けた階段)、SCP-096(シャイガイ)
などがあります。いずれも番号で呼ばれており、()内はその報告書のメタタイトルです。
興味のある方は、検索してみてください。ただし自己責任で。
日本支部でも多くの報告書が寄せられており、2022年現在では「収容違反」(収容手順に違反があり対象を逃がしてしまったり、対象による汚染が拡がってしまうこと)により「有名」になったSCPもあります。

SCP-040-JPもそのひとつです。
これは、日本国内某所に放置されていた、井戸小屋です。
特筆すべきはその異常性で、この小屋を肉眼で覗くと、見た人は「ねこがいた」と動揺します。
この影響を受けるとイエネコに対する認識が歪められ、下記の画像のような、毛がなく、人間のような目を持った生物に見えてしまいます。しかも、どの方向からでもこちらを見ているように見えるようです。
nekodesu01.png

SCP-040-JP
ねこです よろしくおねがいします

ねこはいます。
更にこの影響を受けた中で対象者は常にねこが暗闇にいるように感じ、見張られているような錯覚を覚えます。
また、影響を受けた対象はねこがいると周りに伝えようとし、これを理解した(『信じる』ではなく、『理解する』)場合、上記と同じ症状を被ります。
いわゆる「ミーム汚染」を引き起こすSCPです。この"ねこ"はそこに居ます
よろしくおねがいします
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ゆうすけ
銀河大計画別館の管理人。 「銀河大計画」は、1993年から細々とやっている同人誌です。 ゆうすけが書いたネタや没ネタなどを、別館で細々と掲載します。どうぞよろしく。 アイコン卵酒秋刀魚さん。
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