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2019年07月15日
家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <11 姉の恋>
姉の恋
縁談が来なくなって僕はほっとしていた。それはいいのだが、その日を境にして叔父夫婦やタカシの態度がなんとなく、おかしい。不機嫌でもなく意地悪でもない。いつも通り親切で明るいのだが、なんとなく僕の顔色をうかがうような感じがする。何とはなしに落ち着かない気分でいたところへ父から電話が来た。
「金曜の夜、帰ってこい、空港のホテルのロビーで夜8時に行く、いいな?」ってなんで外で会わなければならないのだろう。しかも、家族には内緒だと念を押された。何か深刻なことが起きているのだろうか?心配だった。
僕は金曜日の夕方の便で東京へ向かった。空港ホテルを予約した。東京のホテルに泊まるのは初めてだった。
ホテルのロビーで父が待っていた。僕は少し緊張した、父が家族に内緒で息子を呼び出して話す話とは何だろうと不安だった。この前の縁談だろうか?だとしたら、はっきり断るしかないと心に決めていた。父と気まずくなるのを覚悟した。
父は難しい顔をしている割には世間話しかしない。やっと話し出したと思ったら恋愛の話がしたいといわれた。何を好んで父と息子が家族に内緒で恋愛の話をするのか訳が分からなかった。
父が「純一、実は絵梨の恋愛の話なんだ。」と切り出した。「絵梨が長い間一人の男のことを思い詰めていたらしい。その恋男が誰かわかるか?」僕の心臓がキリキリ痛んだ。僕は帰ろうとした。もう聞きたくなかった。「長谷川と結婚したのは、その男を忘れるためだったらしい。」といわれて動作が止まってしまった。「何を馬鹿なことしてるんだ。」と思った。
父はもう一度「その恋男が分かるか?」と聞いた。僕はなにかものすごい無茶なクイズを仕掛けられた気がした。「答えは、純一、お前だよ。絵梨はお前を忘れるために長谷川と結婚したんだ。わざと遠くへ行こうとしたんだよ。」父は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。正解を聞いて体中が熱くなった。言葉が出なかった。
2週間前に大阪の叔父夫婦から僕の両親に僕の縁談が持ち込まれた。形式ばって筋を通したのは、その縁談は一旦進めれば断れない話だからだ。しかし大阪の叔父夫婦は姉の態度を見て縁談を進めるのをやめた。
その縁談を聞いた姉がはた目からわかるぐらい取り乱したからだ。両親に問い詰められて、もう長い間僕のことで思い詰めていたと打ち明けたらしい。
そういえば、あの時、僕が襲われた日、姉は何度も「純わかるよね?わかるよね?」と聞いた。僕はあいまいに返事をした。「わかるよね。」は姉の告白だったのだ。
僕は、もうずっと前に一番大事なクイズを考えもせずにパスしていた。姉ちゃん、21の悪ガキに、そのクイズは難問過ぎたよ。
「結婚するなら東京へ帰ってこい。」しないならどこかへ消えてしまえという話だった。それはそうだ。頬に灰色の影を貼り付けた姉に、これ以上辛い思いはさせられなかった。
続く
縁談が来なくなって僕はほっとしていた。それはいいのだが、その日を境にして叔父夫婦やタカシの態度がなんとなく、おかしい。不機嫌でもなく意地悪でもない。いつも通り親切で明るいのだが、なんとなく僕の顔色をうかがうような感じがする。何とはなしに落ち着かない気分でいたところへ父から電話が来た。
「金曜の夜、帰ってこい、空港のホテルのロビーで夜8時に行く、いいな?」ってなんで外で会わなければならないのだろう。しかも、家族には内緒だと念を押された。何か深刻なことが起きているのだろうか?心配だった。
僕は金曜日の夕方の便で東京へ向かった。空港ホテルを予約した。東京のホテルに泊まるのは初めてだった。
ホテルのロビーで父が待っていた。僕は少し緊張した、父が家族に内緒で息子を呼び出して話す話とは何だろうと不安だった。この前の縁談だろうか?だとしたら、はっきり断るしかないと心に決めていた。父と気まずくなるのを覚悟した。
父は難しい顔をしている割には世間話しかしない。やっと話し出したと思ったら恋愛の話がしたいといわれた。何を好んで父と息子が家族に内緒で恋愛の話をするのか訳が分からなかった。
父が「純一、実は絵梨の恋愛の話なんだ。」と切り出した。「絵梨が長い間一人の男のことを思い詰めていたらしい。その恋男が誰かわかるか?」僕の心臓がキリキリ痛んだ。僕は帰ろうとした。もう聞きたくなかった。「長谷川と結婚したのは、その男を忘れるためだったらしい。」といわれて動作が止まってしまった。「何を馬鹿なことしてるんだ。」と思った。
父はもう一度「その恋男が分かるか?」と聞いた。僕はなにかものすごい無茶なクイズを仕掛けられた気がした。「答えは、純一、お前だよ。絵梨はお前を忘れるために長谷川と結婚したんだ。わざと遠くへ行こうとしたんだよ。」父は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。正解を聞いて体中が熱くなった。言葉が出なかった。
2週間前に大阪の叔父夫婦から僕の両親に僕の縁談が持ち込まれた。形式ばって筋を通したのは、その縁談は一旦進めれば断れない話だからだ。しかし大阪の叔父夫婦は姉の態度を見て縁談を進めるのをやめた。
その縁談を聞いた姉がはた目からわかるぐらい取り乱したからだ。両親に問い詰められて、もう長い間僕のことで思い詰めていたと打ち明けたらしい。
そういえば、あの時、僕が襲われた日、姉は何度も「純わかるよね?わかるよね?」と聞いた。僕はあいまいに返事をした。「わかるよね。」は姉の告白だったのだ。
僕は、もうずっと前に一番大事なクイズを考えもせずにパスしていた。姉ちゃん、21の悪ガキに、そのクイズは難問過ぎたよ。
「結婚するなら東京へ帰ってこい。」しないならどこかへ消えてしまえという話だった。それはそうだ。頬に灰色の影を貼り付けた姉に、これ以上辛い思いはさせられなかった。
続く