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私:日本だけでなく外国でも観光客が急増しているという。 国連世界観光機関(UNWTO)の統計では、2000年から17年に世界の国際観光客到着数は2倍に増え、17年は7%の「高度成長」ぶり。 A氏:16年のランキングだと、日本は国際観光客到着数で世界16位だが、増加率が高く、12年から17年に3倍以上になった。 今や観光は日本第5位の産業だが、多すぎる観光客のせいで「観光公害」が出ているほど。 私:日本の国際観光客到着数の急増の原因を小熊氏は、世界各地を訪ねた経験からいうと、観光客からみれば、日本は「安くておいしい国」になったからだという。 ここ20年で、世界の物価は上がり、欧米の大都市だと、サンドイッチとコーヒーで約千円は珍しくないし、香港やバンコクでもランチ千円が当然になりつつある。 ところが、東京では、その3分の1で牛丼が食べられる。 それでも味はおいしく、店はきれいでサービスはよく、ホテルなども同様で、これなら外国人観光客に人気が出る。 1990年代の日本は観光客にとって物価の高い国だったが、今では「安くておいしい国」なのだと小熊氏は指摘する。 A氏:なお、00年から16年に、フランスは国際観光客数が7%しか伸びていないのに、日本は400%の伸び。 国際観光客数ランキング30位までの国で400%以上伸びたのは、日本・インド・ハンガリーの三つ。 この三カ国は、外国人観光客からみて「安くておいしい国」だといえるだろうと小熊氏はいう。 私:ここで小熊氏は、視点をGDPに置く。 「安くておいしい国」ということは、日本の1人当たりGDPが、95年の世界3位から17年の25位まで落ちたことと関連しているという。 「安くておいしい店」は、千客万来で忙しいだろうが、利益や賃金はあまり上がらず、観光客や消費者には天国かもしれないが、労働者にとっては地獄だろうという。 元経産省官僚の古賀茂明氏は「日本には、20代、30代で高度な知識・能力を有する若者が、高賃金で働く職場が少ない。稼げないから、食べ物も安くなるのだろう」という。 A氏:一方で日本では、観光客だけでなく留学生も増え、12年度の約16万人が、17年度には約27万人。 もっとも世界全体でも00年の約210万人が14年の約500万人に伸びてはいるがこれまた日本の増え方には特徴がある。 日本は非英語圏で、日本語習得は難しいのに、それでも留学生が集まるのは、「働ける国」だからだという。 日本では就労ビザのない留学生でも週に28時間まで働けるが、米国では留学生は就労禁止で、独仏や豪州、韓国は留学生でも就労して生活費の足しにできるが、日本より時間制限が厳しい。 そのため日本に来る留学生の層は、おのずと途上国からの「苦学生」が多くなるという。 私:いま日本では年に30万人、週に6千人の人口が減っていて、17年末の在留外国人は前年末から7%増えたが、外国人の労働者で就労ビザを持つ人は18%。 残りは技能実習生、留学生、日系人など。 こうした外国人が、コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。 外国人のあり方は、日本社会の鏡で、外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は、労働者には過酷な国ということで、そしてその最底辺は、外国人によって支えられている。 そこで、小熊氏は、もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと提言する。 客数ばかり増やすより、良いサービスには適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長でき、牛丼も千円で売り、最低賃金は時給1500円以上にすべきだという。 そうしないと、低賃金の長時間労働で「安くて良質な」サービスを提供させるブラック企業の問題も、外国人の人権侵害も解決しないし、デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろうという。 A氏:小熊氏は、「日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている」という。 私:しかし、日本のこれらの背景には、日本の現在の実質賃金の低下や社会保障の将来不安という経済構造や、さらに少子高齢化問題が基底にあり、移民問題など簡単にいかない難しい問題が多いね。。
2018.05.31
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私:久保利英明氏は、東大法学部を出て、弁護士になり、98年、日比谷パーク法律事務所を開設し、14年、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長に就任。 不祥事が起きると、中立的な第三者委員会を設置し、原因の調査結果を報告書にまとめる場合があるが、「第三者委員会報告書格付け委員会」は、その報告書の内容を検証している。 大企業や中央省庁で不祥事が続いている点について、久保利氏は、「日本全体が劣化している。財務省や防衛省、大企業でも『隠蔽する』『無いことにする』『ウソをつく』『偽装をする』などの行為ばかり。国民や株主をなめているとしか思えない。国中でガバナンスが壊れていると感じる」と指摘する。 A氏:財務省の文書改ざんやセクハラ問題への対応については、久保利氏は、「財務省の顧問弁護士を使った調査で済ませるなどナンセンスだ。麻生財務相は国民目線で『第三者委員会に調査を頼む』と言うべきだった。失敗例は、東京都知事だった舛添要一氏の政治資金問題の対応だ。自分が頼んだ弁護士を連れてきて、『違法性はなく、問題はない』として、もっと国民を怒らせてしまった」という。 私:第三者委に公正な調査を期待するというのは、「公正中立で厳正な第三者委をつくり、当を得た再発防止策を打ち出せば、『あの会社は問題があったが、本性は悪くない。本気で直そうとしている』と周囲は評価する。『どんな第三者委員会をつくるか』が将来見込みのある会社か、そうでないかを見極めるメルクマールになるのでは」という。 だから、第三者委が厳しい方が、最終的に会社は救われるという。 久保利氏が第三者委の委員長を務めた牛丼のすき家の過酷労働問題への対応はまさにそうで、すき家を展開するゼンショーホールディングスの当時の会長から「(報告書は)厳しくて構わない」と言われ、委員の人選もすべて任されたという。 ゼンショーの社員は明らかに働き過ぎで、第三者委は「1人勤務態勢(ワンオペ)を早急に解消すべきだ」などと提言し、ゼンショーの株価は一度は落ちたが、第三者委の報告書が出た後、再び上がり、いまは問題が起こる前の約2倍になっている。 A氏:「良い調査報告書」なのかを見抜くポイントについて、久保利氏は、「『わかりやすい』『読みやすい』かどうかが一番。法律文書のように書いているのは良くない。『○○の理由で認定できない』と書かれているものがあるが、『証拠が見つからなかった』と書くべきだ」という。 私:今、問題になっている、日大のアメフト問題で、日大は第三者委員会を作って、原因調査と改善策を検討することになっているが、「良い第三者委の報告」が期待できるかね。 かえって、さらにまた問題をこじらせることになるかも。
2018.05.30
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私:日本に在住する外国人が2017年末で256万人となり、過去最高を記録。 日本に住む50人に1人が外国人ということになり、昨年1年間でみると、18万人増え、一方で、日本人は40万人減っている。 コンビニやファストフード店で接客する外国人は、今や珍しくなくなった。 今日の新聞の「列島をあるく」欄では、香川県坂出市の常勤介護職員の半数が外国人という社会福祉法人を取材をしている。 現在、この法人の全体の常勤介護職員100人のうち、53人が外国人。 A氏:介護分野の人手不足は深刻で、厚労省の推計では2025年に38万人不足するという。 特に地方は深刻で外国人なしでは立ちゆかず、来日した介護職員の奪い合いも起きているという。 私:外国人の急増は国内の人手不足や人口減少が、海外から労働者を引き寄せた結果と考えられる。 政府は新たな就労資格の創設を検討しており、6月の「骨太の方針」に盛り込むといい、今後、受け入れ拡大の議論が本格化するだろう。 同日の朝日新聞の「私の視点」欄では、毛受敏浩氏は、すでに在住する外国人への対応に視点を向けている。 すなわち、政府は、移民政策はとらないとの立場で、合法的に在留している外国人に対しても日本語教育や子どもの教育をどうすべきか方針が定まっておらず、外国人は、中途半端な状況に置かれている。 このため、在住外国人の間からは、日本での子育てや子どもに教育を受けさせることへの不安や不満の声が上がっている。 A氏:日本国際交流センターでは今年、当事者の声を社会に伝えるため、日韓両国に移住したアジア出身者同士の交流事業を始め、韓国を訪れた日本の移住者からは、韓国の状況をうらやむ声が聞かれた。 韓国の移民政策が国際的に高い評価を受けているのは「外国人雇用、韓国の光と影 単純労働、ニーズ高く待遇改善」のブログでふれている。 韓国では移民ブローカーもいない。 同様に、韓国への移住者に、韓国政府は外国人への統合政策として、無償で415時間の韓国語教育をしている。 子どもには、バイリンガル教育や技術教育など才能を伸ばすための取り組みもあり、韓国はまだ人口減少に直面していないが、移住者の能力を高めて、国の成長につなげるとともに優秀な外国人を呼び込む方針を明確にしている。 すでに外国人受け入れの法制度を整え、毎年300億円の予算措置が行われている。 私:人口減少が続く日本こそ、急増する定住外国人への本格的な支援体制が必要。 外国人観光客向けのインフラ整備などにあてる国際観光旅客税(出国税)の創設が決まったが、一過性の観光客向けよりはむしろ、定住化が進み、子どもを育てる外国人への対応こそ急ぐべきだと毛受氏はいう。 毛受氏が知る在住外国人の多くは「日本に貢献したい」「母国との橋渡し役を担いたい」と考えているが、現状のままでは社会から落ちこぼれる可能性もあり、日本は海外からみて移住先として魅力を感じられないという。 他国にひけをとらない外国人労働者の受け入れの枠組みとともに、安心して暮らせ、社会の一翼をしっかり担ってもらえるような制度構築が必要だと毛受氏は指摘する。 先進国トップの少子高齢化が急速に進み、すでに50人に1人は外国人だという実態となっており、特に地方の介護職員の人手不足が深刻なのに、移民政策は後手にまわっているようだね。
2018.05.29
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私:6月12日にイラクで、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する戦闘終結宣言後、初の総選挙がある。 「アラブ諸国で民主主義はうまくいかない」。そんな指摘をよく聞く。 王制や独裁が続き、公正な市民社会ができていない、イスラム教は民主主義と相いれない、部族に依存する風潮が根強いなど、理由はいろいろと挙げられる。 A氏:確かに民主化運動「アラブの春」はチュニジアを除いて挫折。 エジプトでは独裁政権崩壊後、2012年に当選したイスラム系大統領を1年後に軍が拘束。 イエメン、リビアではいまも内戦や混乱が続き正式な政府ができていない。 イラクでは03年に米軍がフセイン政権を倒した後、新憲法制定、総選挙と形のうえで民主化が進んだが、宗派対立、過激派台頭で暴力が吹き荒れ、汚職も蔓延し、IS支配後の復興はなかなか進まない。 私:翁長氏は、バグダッドで、イラクの政治家や政府に対する不満を切々と訴える民衆の声に聴き入るしかなかったが、3月に実施されたエジプト大統領選と比べて市民の反応が対照的だったので、胸のすく思いもあったという。 そのエジプト政府は、「テロとの戦い」を優先するため、デモを規制し、政府に批判的なメディアへの締め付けも厳しい。 現職シーシ・エジプト大統領に対抗する有力候補は立候補断念に追い込まれたり、拘束されたりし、市民に政権をどう思うか尋ねても答えを拒む人がほとんど。 結局、もともとシーシ氏を支持していた小政党党首が唯一の対立候補となり、シーシ氏が圧勝。 A氏: これに対し、イラク総選挙では、対IS戦勝利の実績を強調したアバディ首相率いる政党連合は獲得議席数で3位。 かつて反米強硬派で知られたイスラム教シーア派指導者が率いる政党連合が躍進し、先行きの不透明感教が漂うが、それは、完璧ではなくても自由な選挙が行われた証しで、時間がかかってもイラクがこの正念場を乗り越え、民主主義でアラブを引っ張る存在になってほしいと翁長氏はいう。 私:トランプ旋風で荒れている中東の混乱の中で、6月12日のイラクの総選挙の結果に注目だね。
2018.05.28
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私:土地の所有者が分からなくなったり、資産価値が下がったりして処分に困る問題を「負動産」問題という。 日本には土地を「捨てる」制度が存在しない。 ただでも買い手がつかないような土地を運悪く抱えてしまうと、売ることも捨てることもできず、管理コストや固定資産税の負担だけが残る「負動産化」が進む。 ところが、ドイツでは、土地は捨てることができると法律に明記されているという。 ドイツの民法には「所有者が放棄の意思を土地登記所に表示し、土地登記簿に登記されることによって、放棄することができる」(928条1項)と明記されていて、放棄された土地をまず先占する権利は「州に帰属する」(同2項)とも定められている。 放棄された土地は、どこかに所有させなければならない義務もないため、ほとんどは「無主地」として管理されるが、そのコストは行政が負担せざるを得ない。 ドイツ国内でも地域によっては、無主地の増加による行政の負担増が問題になっているという。 一方で自治体には、事故防止や景観保全など土地の管理責任が生じ、放棄地が増えれば、そこに税金を投入して良いのかという議論も当然、出てくる。 A氏:日本の民法は、所有者がいない無主の不動産は「国庫に帰属する」(239条2項)と定めているが、所有権を放棄する具体的な手続きを定めた法律はなく、実務上もほとんど認められていない。 財務省によると、相続人全員が相続放棄して、事実上、所有者がいなくなって国が引き取った土地は、ここ数年は年間30~50件ほどにとどまり、それは家庭裁判所を通じて選任される「相続財産管理人」が市場で売却する努力をするが、最終的に国に引き取ってもらえず、捨てることも、売ることもできずに宙に浮いた状態にある土地も増えているとみられる。 私:札幌学院大法学部の田處博之教授(民法)は「粗大ゴミなら処分費さえ払えば捨てられるが、土地はそうはいかない。現行制度でも、相続放棄された土地は国が引き受けている。国民が必要としなくなった土地とどう向き合うか、国は検討を急ぐべきだ。このままでは、荒れはてた山野が広がることになりかねない」と話している。 27日の朝日新聞の「負動産時代」欄では、主に土地の所有者が分からなくなった問題をとりあげている。 日本の「負動産」問題はじわじわと深刻化していて、有識者による所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)の推計では、所有者不明になった土地の総面積はすでに九州より広い約410万ヘクタールに達し、道路の拡幅を妨げたり、防災工事に着手できなかったりする「実害」も目立ち始めている。 さらに、国土交通省の推計では築30年超の分譲マンションは今後20年で約3倍の528万戸に増える。 日本のマンションは、修繕積み立てや建て替えなどの意思決定は区分所有するオーナーたちの合意のもとに行われ、行政が介入する仕組みはない。 このため、老朽化対策を決められないまま「負動産化」を止められなくなる事態が懸念されている。 A氏:フランスでは、住民の安全確保や公衆衛生のために「負動産」問題に行政が介入することが義務とされている。 米国では2007年ごろ深刻化したサブプライム(低所得者向け)ローン問題後、空き家が大量発生。 連邦政府は空き家解体などに使える巨額の助成金を創設し、全米で100以上あるランドバンクはその受け皿にもなっている。 ランドバンクは、税滞納で行政が差し押さえた物件を権利関係を整理したうえで無償で取得でき、保有しても資産税の支払いは免除される。 私:政府は今年度から、自治体の要請に応じて相続人一覧図をつくったり、長い期間放置されている土地の相続登記をする際の登録免許税を一部免除したりするが、解消に向かわせる抜本的な対策は手つかずのまま。 米ランドバンクのように、まちづくりのビジョンに沿って不動産を再利用する試みも広がりを欠く。 獨協大の小柳春一郎教授(不動産法)は「所有者不明地問題などを解決できる『特効薬』はない。省庁の枠組みを超えた取り組みを国全体として進めていくことが必要だ」と指摘。 少子高齢化で、今後、地方の「負動産」の増加が進むが、根本的対策が望まれるね。 この問題は、自治体が介入するようになると税負担増がからむだろうね。 人口減が進む地方自治体にとって大きな問題だね。 日本の伝統だった「土地神話」の崩壊だね。
2018.05.27
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私:ブログ「東京モーターショー始まる 変容する『クルマの世紀』」で中国は、電気自動車(EV)で主導権をとろうとの国家戦略があることにふれた。 そのEVの心臓部は電池だ。 車載用電池メーカー、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は、設立から7年の新興企業だが、電気自動車(EV)シフトを進める中国政府の後押しを受けて急成長。 CATLの2017年の電池出荷量は、3年前の44倍となる12ギガワット時に急拡大し、パナソニックや中国大手の比亜迪(BYD)を抜き去り、一気に世界最大手に躍り出た。 A氏:急成長の背景には、中国政府のEV奨励策があり、地場メーカーがつくる電池を載せた車に限って補助金を出す制度があるほか、自動車メーカーが生産・輸入する乗用車の一定割合をEVなどにするよう義務づける規制も19年に始まる。 CATLは25日、日本法人の事業拠点の開所式を、EVに経営資源を集中させている日産の本社近くの横浜市で開いた。 顧客は中国の地場メーカーにとどまらず、独BMW向け電池の開発を12年に開始。 欧米メーカーからコスト競争力に加え、航続距離などの品質も認められるようになり、独フォルクスワーゲンなどと取引を広げ、いまや世界の自動車業界の関係者が注目する企業の一つになった。 私:CATLの次の照準は日本車で、日産は中国市場に投入予定のEVにCATLの電池を使うことを決めており、ホンダも取引先の有力候補にあげる。 最大手の座を奪われたパナソニックは警戒を強め、今春に中国・大連で大規模工場を稼働させるなど反転攻勢を狙うが、CATLとの競争が激しくなるのは必至。 パナソニックは「電池ではいたずらに規模を追わず、技術力を磨いて利益をしっかり確保する」(幹部)構えだという。 A氏:自動車生産後発国の中国にとって、EVはエンジン車に比べ3割も部品が少なく、エンジン製造の長年にわたって蓄積した「職人芸」が必要ない。 私:心臓部の電池は量産すればするほどコスト削減が進み、製造業やITで競争力をつけた中国なら、後発でも強みを発揮でき、それが心臓部の電池メーカーのCATLの急成長で、さらに現実化してきたね。 中国の車需要は日本の6倍、年2800万台が売れる世界最大の市場。 近い将来、ガソリン車を駆逐して、EV車が中国市場を走ることになるか。
2018.05.26
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私:地方鉄道のおよそ4分の3は赤字で、維持や存続が危ぶまれており、2000年以降に廃止された鉄道路線は累計879.2kmになる。 このインタビュー欄では、上山教授に主にその原因と、吉田社長には具体的な解決案を聞いている。 うまくいっている鉄道は、日本を含めたアジアの人口密集地域を走る通勤・通学列車や、貨物に特化した米国など、世界でも限られていて、多くの路線が存続を危ぶまれる苦境にある。 原因はモータリゼーションの深化。 特に、わが国は自動車工業を基幹産業に育てるため、国家が隅々にまで道路網を広げ、いまも高速道路の全国への拡張が続く。 運転士の人件費や維持費などがかかる鉄道は持続可能でなくなる。ただでさえ人口減で乗客が減る地方鉄道は、やっていけない。 A氏:ドル箱路線の山手線や東海道新幹線などを持たず、赤字ローカル線を抱えるJR北海道やJR四国など3島会社のハンディは、分割当初からわかっていて、経営安定基金で支えようとしたが、低金利で運用益が減ったことも、苦境を激しくした。 一方で、JR東海は新幹線の収益でリニア中央新幹線を建設中だが、現行の新幹線車両は運行できず、東海地震などの災害時の代替にはならない、むだな投資で、本当は中央新幹線として現行車両を走らせれば良いと上山教授は指摘。 私:東海地震対策では確かにその通りだね。 だから、上山教授は、リニアの建設費は、ドル箱を持たないJR北海道やJR四国など、いわゆる3島会社の経営支援に注がれるべきで、その意味で、国鉄の分割・民営化の負の側面に注目した「第2次国鉄改革」が必要だという。 国民全体の資産である新幹線網のインフラを、きちんと国民の手に取り戻して利用料を取り、利益はJR北海道などに流すなどの抜本策が欠かせないという。 A氏:これに対し、「ひたちなか海浜鉄道」の吉田千秋社長は、最初、富山県の高岡市と新湊(現射水)市を結ぶ路面電車の赤字路線の「万葉線」を、市民も寄付で参加する国に依存しない第三セクター方式で再出発し、5年間で年間の乗客数が98万人から115万人に増やした。 また、茨城県で廃線が取りざたされていた全長14・3キロの「ひたちなか海浜鉄道」も、吉田氏が公募で社長になった2008年に、やはり第三セクターとして再出発し、いろいろな手を打ち、一時は年70万人を割り込んだ乗客数は、17年度に目標の100万人を超えた。 私:だから、吉田氏は、多くの地方鉄道が、営業、商売というもうひとつの大事な分野で努力をしているか、というと、疑問が残り、スーパーが目玉の特売品でお客さまに来てもらうような、あらゆる商売における当たり前の努力は欠かせないという。 したがって、すべての固定電話や携帯電話に負担を求める「ユニバーサルサービス料金」のように、全国すべての鉄道利用者から一定の料金を徴収して、地方に配分するというアイデアは疑問だという。 都会のお金で地方の鉄道網を維持することが、果たして現実的だろうかという。 上山教授とは、反対の発想だね。 本来は、国鉄が分割・民営化された30年前から、路線ごとに将来像を真剣に考えなければならなかったと吉田氏は指摘する。 自治体と住民が鉄道会社と情報を共有し、それぞれに存廃を判断するのが基本。 吉田氏は、社会資本は経済合理性だけで存廃を決めるべきではなく、将来的には地域活性化の成功事例を体系化して、全国の役に立てればと考えているという。 地方創生活動の一環だね。
2018.05.25
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私:また、森友学園問題で、財務省のずさんな「公文書管理」が露呈した。 この山室教授の寄稿は、この問題を予告するように、日本の「公文書管理」のずさんさの危機感からその根本原因を明らかにしているね。 A氏:ところで「真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命」として開館された「国立国会図書館」が、6月に70周年を迎える。 「国立国会図書館」は、その名に示されているように「国立図書館」と「国会図書館」という二重の業務を果たしている。 「国立図書館」としては国内で出版されたすべての刊行物を収集・保存する唯一の納本図書館。 「国会図書館」としては、国権の最高機関権である国会の立法を補佐するために「調査及び立法考査局」などを置く情報収集・調査機関。 私:日本の「国会図書館」の制度を構想した当時の参議院議員・羽仁五郎氏は「政府官僚の資料をすべて、鉛筆やペンで書いた下書きまでとはいわないが、ガリ版なりなんなりおよそ印刷したものは、すべて主権在民の人民の選挙した代表である国会議員が徹底的に調査することができるように、政府各省の行政官庁の資料室を、すべて国会図書館の分館とする」と考えたという。 すなわち、政策決定に関する全資料を国会図書館に集めて国民に公開していくアーカイブズの機能を持たせようとした。 こうした発想は、国民が国政情報から隔離され、誤った情報操作に踊らされたことが戦争の惨害を招いたという猛省から生まれたもの。 主権者である国民が正しい情報を知ること、それこそが民主主義の大前提となる。 A氏:ただ本来、刊行物を扱う図書館と、公務で作成された文書群を整理・保存する技術を要する「公文書館」とは違った機能をもっており、できる限り早く「国立公文書館」を作る必要があったが、それが設立されたのは1971年。 年金記録紛失などの杜撰な扱いが問題となって「公文書等の管理に関する法律」が施行されたのは2011年。 私:しかし、「公文書管理法」が施行されても改ざんや隠蔽は後を絶たず、国民の知る権利は妨げられ、国会も虚偽の資料や答弁で機能不全に陥っていると山室教授は指摘する。 山室教授は、公文書がこれほど粗雑に扱われる理由として、端的に言えば、国会議員も国民も「公文書管理」に無関心だったからであるという。 「国立公文書館」設立に至るまでには幾度も歴史研究団体から要望書が出されたが、文書館に収められる公文書を用済みの古文書と考えて軽視してきた。 さらに言えば、国会で成立する法案の9割前後を行政官僚が作成しているように、国会議員が立法のプロとして活動してこなかったからだと山室教授はいう。 A氏:早急な対策としては公文書改ざんができない「ブロックチェーン」などの技術導入が不可欠。 しかし、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であるはずの「公文書管理」の重要性を国会や国民が認識し、「国会図書館」と「公文書館」が収集した資料を元に議員立法が活性化しない限り、「真理がわれらを自由にする」日は訪れないであろうと山室教授は警告している。 これだと、森友学園、加計学園問題で露呈した日本の「公文書管理」のお粗末さが先進国並みになるのには、時間がかかりそうだ。
2018.05.24
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私:マレーシアのナジブ前首相は自身の資金流用も疑われる政府系ファンド「1MDB」の約420億リンギ(約1兆1600億円)の巨額負債が表面化した際、ファンドの資産を中国国有企業に売却して経営破綻を免れた経緯があり、中国との関係が深かった。 マハティール新首相は「ナジブ氏は中国に国を売っている」と批判してきた。 A氏:同首相は、中国の主導する大型インフラ事業の見直しを進めている。 中国の習近平国家主席が掲げる「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」の案件や中国の受注が有力とみられていた高速鉄道計画などだ。 ナジブ前政権で強まった中国依存を修正する狙いがあるとみられ、マハティール新首相は、前政権が決定した大型案件はすべて見直すと表明。 前政権下で1兆リンギ(約27兆6千億円)にまでふくれあがった国の債務を減らすためとされるが、マハティール新首相には中国への過度な依存を弱める狙いもある。 私:マハティール新政権のアズミン・アリ経済相が見直しの対象として挙げているのが、マレー半島部のタイ国境から南シナ海に沿って東海岸を走り、マラッカ海峡に通じる「東海岸鉄道」。 中国が1兆4千億円規模の総工費の大半を融資し、「一帯一路」に位置づけられている重要な鉄道だ。 A氏:また、クアラルンプール―シンガポール間の約350キロを約1時間半で結ぶ高速鉄道計画も見直す考え。 23日の会見では、事業を所管していた陸上公共交通委員会(SPAD)を解体するとも発表。 高速鉄道の入札手続きは昨年12月に始まり、来年9月までに事業者を選定する予定で、日本や中国が激しく受注を争っていたが、前政権下では中国が有力との見方が強かった。 私:マハティール新政権の登場で、習近平の「一帯一路」構想の重要な地域であるマレーシアだが、これにブレーキがかかりそうだが、習近平はどのように対応するだろうか。
2018.05.24
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私:今や、人間の価値をはかる物差しのようにさえ使われる言葉が「コミュ力」だという。 「コミュニケーション能力」のことで、新卒採用で話題になっている。 経団連による企業アンケートでは、新卒採用で「選考に重視した点」のトップは2017年まで15年連続で「コミュニケーション能力」で、「主体性」や「チャレンジ精神」「協調性」より重視されているのだが、それがどんな能力なのか、学生も企業も、漠然とイメージしているだけで、言葉が独り歩きしている面もあると川嶋教授はいう。 「コミュニケーション能力」が求められる背景には、モノづくり中心の経済から、新しいアイデアや知識をベースとする知識基盤社会へ変化するに従い、人間相手のサービス産業が増えてきて、変化のスピードも加速しており、3年経てば賞味期限が過ぎる専門知識や技術より、新しい知識や情報をうまく取得し、それを生かす力が必要になってきていることがある。 また、同時にグローバリズムの時代には、相手の言い分を正確に理解し、相手にうまく伝える能力こそが重要だ、という考え方が世界的にも広まってきた。 A氏:米国の大学団体の調査(15年)によれば、企業が学部卒業者を採用する際に17のスキル・能力のうち、最重要視するのは「口頭でうまく伝える能力」(85%)で、ちなみに最下位は「英語以外の言語の熟練」(23%)。 ただ、日本では、「コミュ力」という省略語で若者の間で日常用語化し、本来の意味から離れつつあり、空気をうまく読んだり、雰囲気を巧みになごませたり、テレビ番組のMCのようにうまくその場を仕切って回したりすることができる対人スキル、という理解が広がっているようだが、少なくとも企業が学生に求める能力とは違うと、川嶋教授はいう。 きちんと話す力同様に、「コミュニケーション能力」の中核として企業が重視するのは、「文章を書く力」で、依頼や報告、連絡など、あらゆる仕事は「きちんと書く能力」を必要とするからだ。 SNS時代で友人に短文で思いを簡単に伝えることには慣れていても、論理的に書く能力は世界的にも低下しているようで、書く能力は、筋道立てて考える力とも重なるので、今後も「コミュニケーション力」を支える重要な柱として、求められると川嶋教授はいう。 私:「コミュニケーション」の手段に革命的な変化が起きたのは、1990年代半ばの携帯電話とインターネットの普及。 斉藤氏が、90年代終わりに若者の聞き取り調査をしたとき、すでにそれぞれの友達の数が、百人単位になっており、相手を傷つけず、ほどよい距離感で誰とでもやりとりするという作法になっていったのが「コミュ力」だった。 表層のキャラをいじり合うだけで深い話はせず、「コミュニケーション」を続ける。 これを「毛づくろい的コミュニケーション空間」と斉藤氏は呼んでいる。 情報量はほとんどなく、原型はお笑いで、言葉も業界用語が輸入さ、キャラをいじる、かぶる……。 若者はこの空間でこの「コミュニケーション」で10年以上前から生きている。 A氏:この「コミュ力」の空間は、価値を決める上位の人がいて、さらに、空気を読む取り巻きである中間層がいて、一方で、そうした「コミュ力」社会に違和感を覚える人は「下層」として排除され、一説には、この階層は上位が1割、中間層が6割、下層が3割。 上の7割には快適、残り3割には地獄で、これは、内閣府の調査で現在の生活に満足と回答する若者が7割以上という結果に合致。 おいしいものを食べなくても、高級車に乗っていなくても、つながってさえいれば何となく満足できるが、問題はその満足が、排除される3割の不幸の上に成り立っていること。 この「コミュ力」は、表層的な心地よさの一方で、一部の相手を排除する攻撃性を持っていると斉藤氏は指摘する。 だから、斉藤氏が、こういう「コミュ力」に対抗する流れとして、斉藤氏が期待しているのは「対話主義」で、それは議論でも説得でもなく、対等の立場で、私の考えとあなたの考えを交換しましょうという対話。 交換を続けると理解が深まり、意見が異なっていても、折り合えるアイデアが見いだせるようになる。 この「コミュ力」は、表面的なやりとりで序列を固定するだけで相手を変えることはないが、「対話主義」は関係性を揺さぶってお互いに変化をもたらし、顔を合わせて言葉を交わすことが重要で、ネットとは親和性がない。 このような「コミュ力」偏重は続くだろうが、「対話主義」を用いたケアの方法がいま一般にも注目されていて、90年代半ば以来の転換点の兆しと思いたいと斉藤氏はいう。 私:岡田教授は、ふだんは意識しないけれど、人間は不完全さをお互い補い合い、「コミュニケーション」を成立させている点に着目する。 「あいさつ」でも、相手が返してくれて初めて、「あいさつ」として意味を持ち、返してくれないと宙に浮いたまま。 つまり、言葉を話すとは表現行為であると同時に、知覚したり、探索したりする要素も含んでいて、自分が主体として言葉の意味を100%決めているように見えて、相手が受け取らないと完結しない。 それなら「コミュニケーション」に能力という言葉をつけて個人に帰属させるより、「コミュニケーション」とは2人の持ちつ持たれつの間で立ち現れる関係だと考えるべきだと岡田教授はいう。 つまり「コミュ力」とは、不完全な私たちが、お互いを補い、支え合うなかで生じる関係の力で、言い方を変えれば、自分の弱さ、不完全さを上手にそして適度に他者に開示することによって、相手の手助けを引き出していく力とも言えると岡田教授はいう。 川島教授が「コミュ力」の中心に「文章を書く力」を置き、斎藤氏がネットによる「コミュ力」に対し「対話主義」を主張し、岡田教授が「人間関係」着目している点などを指摘している。、 その点から「コミュ力」とは、現実の生々しい肉体的で、基礎的な「コミュニケーション能力」となるようだね。
2018.05.23
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私:2040年度には高齢化率が35・3%と、今より7ポイント上がる見通しで、高齢者入りする団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)と団塊世代の人数の多さを反映し、高齢者数は3920万人とほぼピークを迎える。 政府これに対して、21日の経済財政諮問会議で、2040年度に、社会保障給付費は188兆2千億~190兆円となるとの推計を公表。 高齢者の医療や介護、年金にかかる費用が増えるため、18年度の約1・6倍となる。 40年度は、年金は18年度の1・3倍、医療費は1・7倍、介護費は2・4倍、税負担は1・7倍、保険料負担は1・5倍。 A氏:これまで安倍政権は10%への消費税引き上げを2度延期しており、負担増をめぐる議論は政府内で本格化していない。 社会保障給付費は増大し、税や社会保険料の負担増は避けられないが、経済財政諮問会議で、推計は出したものの従来負担の担い手となってきた若い世代が減る中、誰にどのような負担増を求めるか、政権内での議論は進んでいない。 社会保障と税の一体改革で示した「社会保障のあり方」は25年までで、それ以降の議論も止まっている。 官邸に置かれた「有識者会議」は、昨年6月に開かれたきり。 来年は統一地方選や参院選が控えており、自民党内は「負担増の議論はできない」(幹部)という声が多数を占め、今回の推計は、あくまでも「参院選後の社会保障改革のベースになるもの」(官邸幹部)との位置づけ。 私:負担増の議論が実質的に封印されている中、厚労省が対策として打ち出すのは、健康上問題なく日常生活を過ごせる「健康寿命」の延伸。 平均寿命との差を縮められれば医療や介護を必要とする期間が短くなるとの算段から。 現在の健康寿命は男性が72・14歳、女性は74・79歳で、厚労省は40年度までにそれぞれ3歳延ばすことを目指すが、それがどれだけ社会保障給付費の抑制に役立つか、具体的な効果は未知数。 A氏:深刻なのは費用だけではなく、介護や医療の担い手不足が、40年度にはさらに進む見通し。 厚労省の試算によると、40年度には介護や医療の分野に必要な人材数は事務職員も含むと今より242万人多い1065万人となる。 就業者数に占める割合は6ポイント以上増え、18・8%になる見通し。 しかも、15~64歳は今年4月から40年までに1584万人減る。 厚労省が21日に発表した需給推計によると25年度時点で介護現場では、約34万人が不足する。 私:現場からは「今でも外国の人材に頼らざるを得ない」との声が上がり、政府は移民政策を採らない姿勢を崩していないが、一方で在留資格として新たに「介護」を加え、外国人技能の対象分野に「介護」を設けるなど、実質的に外国人を現場の担い手とする施策に本腰を入れ始めている。 しかし、今、勤勉なベトナム人は、評判がよく、人手不足の国が引っ張りだこ。 人口構造が日本と似ている台湾などは、すでに大量のベトナム人が移民しており、日本は後手にまわっている。 A氏:慶大の土居教授(財政学)は、政治家・国民の危機感が足りないとして、特に政府・与党は「負担増は選挙で票を失う」と、過剰におびえ改革から逃げてきたが、健康寿命を延ばす取り組みなどをやっても、消費増税が不要という話には全くならないという。 東洋大の高野准教授(高齢者福祉)は、やはり、2040年には、外国人労働者の受け入れを正面から議論することが必要で、処遇や質の確保など制度は注意深く作らないといけないが、今の政府の動きは遅すぎると指摘。 私:この日の朝日新聞の「波聞風問」欄では、「巨額買収 人も成長も外から入れないと」と題して編集委員の堀篭俊材氏が、「買収を重ねる武田はグループ2・7万人のうち日本で働く人は3割を切った。国境を越え広がる企業とは逆に、海外から日本に渡ってくる人たちは観光客だけではない。 コンビニや外食店で、レジに立つ外国人を目にしない日はなくなった。その多くはアジアからの留学生である」「この国は彼らを労働者として彼らを受け入れているわけではない。しかし、彼らをなくしては、24時間や深夜営業のサービスはなりたたない。人も成長も外からとりこまないと、もはや支えていけない国になったのだ」という。 「介護」分野だけでなく、真剣に移民政策を考える必要が迫ってきたね。 2040年というと先のようだが、今のうちに手を打たないと間に合わない問題ばかりだ。
2018.05.22
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私:就職情報会社の「学情」(本社・大阪市)が毎年、翌年3月卒業・修了予定の大学・大学院生を対象にした「就職人気企業ランキング」のトップ20位を発表している。 19年卒と09年卒を比較すると、資生堂や味の素、伊藤忠商事などの7社は、10年前も今もトップ20を維持しているが、一方で、10年前のトップ20に入っていたメガバンクや電気機器メーカーは、19年ではいずれもランク外。 代わりに浮上した食品メーカーは、09年は2社だったのが、19年では7社に増加。 「学情」の担当者は「10年前と比較すると、身近でなじみのある食品メーカーが浮上し、『働き方改革』などにも力を入れている伊藤忠商事などの企業の人気も依然として高い」と話す。 A氏:法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授(キャリア教育)は、10年前の学生と比較すると最近の学生は堅実になっている、とみる。 そして、「出世したいという上昇志向の学生は確実に減っているように感じる。そんなに無理せず働くことができて、ワーク・ライフ・バランスや自分の仕事が世の中に役立っていると実感できるかどうかを重視して、就職先を選ぶ傾向がある」と分析。 5月中旬、食品メーカー「カゴメ」(本社・名古屋市)の東京本社で、就職活動中の学生約80人を集めた会社説明会があり、人事担当者は、農業の成長産業化や健康寿命の延伸などの解決したい社会問題を紹介。 「食を通じて社会問題、社会課題を解決していきたいと思っている」と強調。 私:昨日の朝日新聞の「平成経済」欄で「なぜ働く、意識変わった30年 旧来制度と実態のズレ、浮き彫りに」では、高度成長を果たした昭和は、「仕事のやりがい」に働く理由を見いだす人が多かったが、低成長の平成に入ると、生活の楽しさに重きが置かれ、働き方は多様になっていったと指摘している。 新入社員に働く目的を長期的に尋ねている日本生産性本部などの調査によると、1970年代から伯仲してきた「楽しい生活をしたい」と「自分の能力をためす生き方をしたい」の差が00年代に入って広がり始めた。 「楽しい生活」は17年度、43%まで増加し、「自分の能力をためす」が減る中で、「社会のために役に立ちたい」がじわじわと増えてきた。 A氏:ところで、共働きが増えた現代、夫婦どちらかの転勤は、子どもの教育だけでなく相手の仕事とも両立が難しい。 その結果、「単身赴任」がこれまで以上に増えることになり、国勢調査によると、世帯主が配偶者を持つ男性の単独世帯は85年以降、右肩上がりで、15年は75万人と、この30年で2倍弱に増えた。 学生がワーク・ライフ・バランスを求めているのと逆行している制度だね。 私:リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長は「転勤は、企業の拠点展開や幹部育成のために残る制度」と効用を認めつつ、転勤を当然視する日本の慣行に疑問を投げかける。 「転勤のコストに値する効果は本当にあるのか。転勤ではなく、異動で昇進するキャリアパスを描ければよいのではないか」という。 地域限定や転勤回避時期を社員が指定できる制度など、転勤は残しつつも、社員に応じて柔軟に対応する企業も現れてはいるという。 私:法政大の武石恵美子教授は、労働力人口の減少も視野に「人材の確保・定着が今後、企業の大きな課題となるのは確実。社員の希望を丁寧に聞き、密にすり合わせを行う制度や体制を整えなければ、企業の発展は期待できないのではないか」と指摘する。 従来からの転勤制度は、新入社員の働く目的が「楽しい生活」だという考えの増加に逆行することにもなるね。
2018.05.21
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私:政府のずさんな「公文書管理」で、急務と考えられているのは、メールなど電子情報のあいまいな扱いの是正で、現状、政府内で、情報の共有や連絡に電子メールは広く使われているのに、分類・保存への配慮がほとんどない。 「『キャップストーン・アプローチ』のようなメールの合理的な管理・保存のあり方について、ぜひ採り入れるべきだ」と、国民民主党の玉木雄一郎氏は14日の衆院予算委員会で、安倍首相に提案。 「キャップストーン」とは、ピラミッドの頂上に置かれた「冠石」で政府機関の幹部を意味し、幹部が送受信する全ての電子メールを自動的に保存する仕組みが「キャップストーン・アプローチ」。 米国の政府機関の多くで導入済み。 A氏:日本の「公文書管理法」でも電子メールは「行政文書」になりうるが、その場合、保存期間を設定し、最終的に「歴史資料として重要」かも判断しなければならない。 しかし、1日に多くのメールを受け取る職員が一つひとつを行政文書かどうか判断するのは容易でない。 このため、日本の行政機関では、大部分のメールが廃棄されているようで、財務省は送受信から60日たったメールを自動的にサーバーから削除。 加計学園問題でも、2015年4月に内閣府から文科省に送られたメールがサーバーに残っていないことが明らかになった。 私:NPO法人・情報公開クリアリングハウス(三木由希子理事長)は「電子メールは政府の諸活動そのものを記録している。原則行政文書と位置づける」べきだと提言。 日本と対照的に、多くの米政府機関では、幹部公務員を対象に、原則としてすべてのメールを政府機関が取得し、永久保存する。 その代わり、幹部より下の公務員が送受信したメールは、歴史的に重要かどうか、いちいち判断しなくてもいいことにしている。 米国立公文書館・記録管理庁職員で、米政府の記録管理のルールづくりを担当するアリアン・ラバンボクシュ氏は「記録を何も残さないよりも、まずは記録を保管し、それの開示をどうするかは後で考えるほうが大切だ」という。 A氏:行政文書の「定義」に問題があるとの指摘も多い。 官僚たちは、作成した文書を「公文書」ではなく、「個人メモ」「個人資料」「手控え」などと主張することが多く、「公文書管理法」や「情報公開法」を不当にせまく解釈し、公文書を隠したり、廃棄したり、私物化したりしている実態がある。 本来は公開されるべき文書でも、組織によって「個人メモ」に仕分けされるおそれがある。 沖縄県公文書館の専門職員として沖縄戦などに関する日米の資料を見てきた仲本和彦氏によると、米国では手書きメモも公文書館で保存されており、仲本氏は「公文書の定義を『組織共用』に限定すべきではない」という。 私:「公文書管理」について、各政府機関を監視・監督する独立機関の設置を求める声も上がる。 現行の「公文書管理法」でも、行政機関に報告を求めたり、実地調査したり、改善勧告を出したりする権限が内閣総理大臣に与えられているが、実務を担うのは職員が20人程度の内閣府の公文書管理課。 同課では改善勧告は一度もなく、報告を求めた例も1件、実地調査も2件だけで、政治からの独立性もない。 内閣府公文書管理委員会委員の三宅弘弁護士は「数百人規模の公文書管理庁」、仲本氏は「独立機関である記録管理院」の創設を提言。 日本の「公文書管理」の実態も、安倍首相のいう「膿」の一つだね。」
2018.05.20
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私:政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の素案が16日、経産省の審議会に示され、了承。 素案では、世界的に導入が増え、コストが下がった「再生エネ」の「主力電源化」を目指すと初めて明記。 一方で、経産省が2015年の「長期エネルギー需給見通し」で決めた30年の「電源構成」(原発20~22%、「再生エネ22~24%」など)は見直さなかった。 審議会では素案について一部委員から反対意見が出たものの、大筋了承。 外務省は素案をめぐる非公式の省庁間折衝で、30年時点の「再生エネ比率」を大幅に拡充するよう経産省に要求。 国際エネルギー機関(IEA)のリポートを元に、日本の「再生エネ比率」は22年に20~24%に高まる可能性が大きいとし、30年までには40%程度に上積みが可能との見解も示したが、これは、政権内で脱原発・再生エネ推進派として知られる河野太郎外相の意向が働いているとみられる。 A氏:外務省がこう主張する背景には、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」をめぐる交渉で、米トランプ政権とともに日本政府が批判にさらされていることへの危機感がある。 今回の素案は石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、高効率化を条件に輸出も推進する文言が入った。 環境省も「再生エネ」の推進に積極的で、30年の「再生エネ比率」が最大で35%に達するとの試算を公表したこともある。 市民団体の間でも、「再生エネ」推進を求める声は強く、日本生活協同組合連合会は15日、「再生エネ比率」を「最低でも30%、さらに『先進国水準の50%以上』を目指すべきだ」などとする要望書を世耕経産相あてに提出。 二村睦子・組織推進本部長は「現状維持では主力電源化とはとても言えない」と批判。 私:それでも、経産省は「電源構成」の比率を見直すつもりはない。 「再生エネ」の固定価格買取制度による電力料金への上乗せ分は年約2兆円にのぼることを挙げ、「さらに負担を増やすわけにいかない」(エネ庁幹部)と説明。 「再生エネ比率」を引き上げる場合、原発などほかの電源の比率を下げる必要が出てきて、原発再稼働が進まないなか、原発の比率を下げれば、再稼働の動きに影響しかねない。 経産省は今回の素案で、原発の新増設の必要性に触れなかったが、20~22%の「原発比率」の「実現を目指し、必要な対策を着実に進める」とあえて明記。 省庁間の協議は今後も続くが、「電源構成」が見直される見通しは立っていない。 A氏:記事では、計画素案を議論した審議会の委員2人に評価を聞いている。 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の辰巳菊子常任顧問は、「基本計画を検討した審議会は、産業界を重視した委員構成で、日常の生活を営む国民の声が反映されない」という。 もう一人の東京理科大学大学院の橘川武郎教授は、「非常に問題のある計画案で、30年時点の『電源構成』は、原発の割合が過大で、「再生エネ比率」が過小」という。 さらに、世界では「再生エネ」のコストが劇的に下がり、導入量は飛躍的に伸びていて、「再生エネ」を「主力電源化する」としたが、それなら少なくとも30年の「再生エネ比率」を30%程度に上方修正すべきという。 経産省は「再生エネ」の拡充にはあまり乗り気でないようだね。 原発再稼働にこだわっているのだろうか。 原発は二酸化炭素を出さないが、大量の放射能廃棄物を出す。 その処理が明確にならないうちに、原発再稼働で廃棄物の増加を始めるのだろうか。 経産省は、その処理コストと廃炉コストの合計を「再生エネ」とのコスト比較に含めているのだろうか。 今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」で「再生エネ比率」はどう決まるか。 「セクハラ罪という罪は存在しない」というレベルの閣議決定をしなくてならないようでは心配だね。
2018.05.19
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私:19世紀半ば、ドイツの経済学者エンゲルが「エンゲル係数」を提唱した。 消費支出に占める食料費の割合を示し、一般に低いほど生活水準が高いとされる。 日本では、終戦直後は60%を超えたが、高度成長を経て、1970年代後半には20%台後半になった。 その後も下がり続けた。 それが、2005年の22・9%(2人以上の世帯)を底に逆に上昇に転じ、16年は25・8%となった。 その上昇の伸びが話題になり、2月発表の17年の数値は25・7%と微減したが、「エンゲル係数」の定義通りに解釈すれば、この10年ほどで生活水準は悪化したことになる。 A氏:この点が国会で議論になったのが、1月31日の参院予算委員会。 野党議員が「エンゲル係数」のデータなどを示し、「国民生活が苦しくなっている」と迫ったが、安倍首相は「アベノミクスで雇用は大きく改善している」と反論し、上昇の要因に物価変動や生活様式の変化をあげた。 野田総務相も「共働き世帯が調理食品など価格の高いものを購入するなど、様々な要因が考えられる」と補足。 SNSでは「首相は実態を無視している」「いや、一つの指標では豊かさをはかれない」などと議論が盛り上がった。 私:確かに物価は上がり、弁当や総菜などの購入費も増えているが、一方、17年のデータを見ると、共働き世帯の「エンゲル係数」は22・3%で、夫だけが働く世帯は24・3%。 共働き世帯の方が「エンゲル係数」は低く、全体を押し上げているわけではなく、野田総務相の説明は実際の数字と違うことになる。 青山大の美添教授は、「(『エンゲル係数』は)生活水準や貧困の尺度として一定の参考にはなるが、エンゲルの時代ほどの役割はない」と話し、家計調査の食料費には外食や高額な食品も含まれることが理由の一つ。 美添教授は「野菜や米など、生活必需品といえるようなものに絞って数値化すれば指標にはなるので、政府が参考値として示せばよい。公的統計は中立性が保たれるよう設計されているが、都合のいい数値だけが抜き出されることもある。調査方法などを正確に理解して解釈することが大切だ」という。 ただ、美添教授は、現在の生活水準については「格差が若干拡大し、(生活)水準が『低下した』と感じる人が増えている」との見解だ。 A氏:経済アナリストの森永卓郎氏は、「『エンゲル係数』は基本的には時代や国を超えて成り立つ普遍的な法則」との考え。 「エンゲル係数」を五つの所得階級別にみると、17年は所得が最も高い層で22・1%、最も低い層で30・6%。 やはり「エンゲル係数」は生活水準を示している。 森永氏は「低所得者ほど高い傾向ははっきり出ており、最近10年間で高所得層との差は広がっている。この5年間で『実質賃金』は約4%も落ちている。他の支出を減らして食費に回しているのが実態では」という。 野党もアベノミクス追及には「実質賃金の低下」を中心にすべきだね 『文藝春秋』2018年3月号の「数字が証明した『アベノミクス』の失敗」には、「実質賃金の低下」の数字により失敗としているね。
2018.05.18
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私:ブログ「北朝鮮への疑念と期待 戦争回避の道筋は描ける」で、北朝鮮専門家」のニコラス・クリストフ氏は、北朝鮮はしたたかで、核は手放さないだろうと予測していたが、このブログの記事の後の16日、やはり、北朝鮮・第1外務次官は、米国が要求している非核化の方式に不満を示し「(トランプ政権が)一方的に核放棄だけを強要しようとすれば、来たる米朝首脳会談に応じるか再考するほかない」との談話を発表。 これに先立ち、北朝鮮は同日未明、板門店で同日開くことになっていた南北高官協議の直前の中止を韓国政府に伝えた。 6月12日の米朝首脳会談もあやしくなってきたね。 A氏:この「時事小言」欄の藤原帰一氏も、北朝鮮に対して、アメリカ、さらに韓国と日本の求めてきた朝鮮半島の非核化が実現に近づいたとは考えないと否定的だね。 この藤原氏の記事も16未明、板門店で同日開くことになっていた南北高官協議の中止を韓国政府に伝えたというニュースの前だね。 まず、問題は北朝鮮の非核化に対する韓国の姿勢だね。 文在寅大統領は、米朝首脳会談に応じるようにトランプの説得を試み、それに成功した。 文在寅の第一の目的は南北の対話であり、朝鮮半島における緊張の緩和であり、同じ民族が南北に分断されてきた悲劇を顧みるなら正当な目的というほかはない。 文在寅と金正恩との南北首脳会談の開催は、間違いなく歴史的な意義を持つものであった。 私:逆にいえば、北朝鮮の核兵器を廃棄することは文在寅の第一の課題ではなく、朝鮮半島の非核化を訴えているとはいえ、米朝関係と南北関係の緊張緩和が優先されており、韓国政府は将来における核開発の放棄や国際査察の受け入れを求めているが、現在北朝鮮の保有する核兵器の廃棄を重視しているとはいえないと、藤原氏は指摘する。 米朝会談は、北朝鮮が譲歩したわけではないと藤原氏はいう。 トランプ政権は北朝鮮に対する軍事的威嚇を繰り返し、中国も含む経済制裁の強化も実現したが、その圧力に屈して北朝鮮が米朝首脳会談に応じたとは言えないという。 米朝会談は以前から北朝鮮が求めてきたものであり、変化があるとすればアメリカの方だからで、核実験場の廃棄や抑留者の解放に応じたとはいえ、北朝鮮は現在保有する核兵器を廃棄するというコミットメントを示していない。 当面は核保有を続けつつ経済制裁の解除を実現できるのならば、米朝関係の改善は北朝鮮にむしろ有利な選択。 A氏:だが、藤原氏は、トランプはアメリカの圧力のために北朝鮮が変わったという間違った認識をとっていると指摘。 藤原氏は、軍事的威嚇と経済制裁によって北朝鮮が変わったという認識にも賛成できないという。 韓国政府の南北間の信頼醸成と共生を求めるイニシアチブは正当だが、北朝鮮の保有する核兵器を既成事実として認めることは、核兵器の拡散結果を招く懸念が残る。 そのような認識は米朝接近の長期的な持続を揺るがすばかりでなく、核兵器さえ持てばアメリカが寄ってくるという恐るべき「教訓」を残し、イランもからみ、中東情勢の混乱を深める結果に終わるだろうと藤原氏は警告する 私:金正恩が、中国に頼ったり、いろいろな動きしたりするのをみると、ニコラス・クリストフ氏や藤原氏のいう、北朝鮮の核兵器保持は変わらず、核兵器廃棄の米国と対立して、ついには、米朝会談は中止となるかね。 それとも中国をバックにすることに成功した北朝鮮のねばりが成功するか。
2018.05.17
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私:ソーシャルメディアの発達と普及は、誰もが「評論家」になることを可能にし、ジャーナリズムやニュースメディアは格好の批判対象。 ただ、そこには矛盾した状況があり、ある報道の「裏」や「意図」を積極的に読み解こうとする姿勢と、ジャーナリズムの意義に対する無関心やシニシズムが奇妙に同居していると山腰氏はいう。 ジャーナリズムやニュースメディアへの批判、不信が、これほどまでに広まったのは、ソーシャルメディアの普及と、そして広い意味での「メディア・リテラシー」の向上の結果。 A氏:「メディア・リテラシー」はニュースやドラマ、広告といったメディア・コンテンツを「批判的に」読み解くことだと理解されており、現代社会では、多くの人々にとって、政治の世界も、あるいは解決すべき社会問題もメディアを通じて経験されることになり、人々が政治的な争点や社会問題を知り、あるいは理解するうえで「ニュース」がその手がかりとなる。 しかし、どのようなジャーナリズムが「良い」ものなのかを見極める力が社会の中で定着し、あるいは向上しているとは言い難い。 「良い」ジャーナリズムとは何か、ジャーナリズムの世界で、あるいはメディア研究の領域では、「調査報道」こそがその典型と見なされることが多い。 「調査報道」とは、まだ知られていない(あるいは隠された)出来事や争点を掘り起こして明るみに出すジャーナリズムの手法。 私:「調査報道」は、通常、多くの権力資源を有する個人や集団、組織、すなわち権力者や権力組織の不正や汚職を追及する。 その際に、公的な組織や人物によって発表された情報だけでなく、公文書や内部告発などを活用した独自取材を行う点に特徴がある。 米国でニクソン大統領の辞任につながった「ウォーターゲート事件」を究明したワシントン・ポスト紙による「調査報道」がその代表。 日本でも、朝日新聞による「リクルート事件」報道をはじめ、多くの優れた「調査報道」が存在する。 こうした点では、3月の「財務省の公文書改ざん問題」に関する朝日新聞や毎日新聞のスクープは、「調査報道」として高く評価されるべきだと山腰氏はいう。 A氏:「調査報道」の意義を再確認する潮流は世界的にみられ、例えばハリウッドでは、「スポットライト」や「ペンタゴン・ペーパーズ」といった「調査報道」を主題にした映画作品が近年、立て続けに制作。 要人たちの租税回避に関する「パナマ文書」の問題では、国際的な「調査報道」のネットワークによるビッグデータの解析というデジタル時代の新たな「調査報道」の可能性が示された。 「調査報道」は、一般の人々にとっても「勧善懲悪」のストーリーとして理解されやすく、したがって、「調査報道」を「良い」ジャーナリズムの典型と評価する文化を広めていく戦略は確かに効果的。 私:しかし、山腰氏は、ジャーナリズムのあるべき姿を「専従チーム」を立ち上げて取材にあたる「調査報道」のみに還元するのでなく、「政治部」「経済部」「社会部」といった部署の日常的なニュース制作の現場には「良いもの」は存在しないのか、論説やフォーラムといったニュースメディアの機能はどう評価されるべきなのか、と問うている。 デジタル化が進展する現代社会において、ニュース文化全般について改めて理解を深める必要があり、そうした基盤があってこそ、ニュースやジャーナリズムに対する批判は有意義なものとなるとして、山腰氏は、この欄では、これからニュース文化の現状について多角的に検討していきたいとしている。 次回を期待したい。
2018.05.16
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私:米国では60~70年代に公民権運動やベトナム反戦、90年代以降は経済格差に反対する街頭運動が起こり、世界にうねりが広がったが、最近は、女性や性的少数者、移民・難民の支援から、科学予算削減に反対する科学者のデモまで、主張の多彩さが際立つ。 変容をもたらしたのがソーシャルメディア。 動員が容易になっただけではなく、学生運動にくわしい歴史家のアンガス・ジョンストン氏は、「社会で孤立していた当事者同士がつながるのを促した」という。 目の前で級友を失ったフロリダの高校生がツイッターなどで上げた声に「ひとごととは思えない」と同世代が呼応した運動は典型。 「#Me Too (私も)」は、セクハラや性暴力など、埋もれていた被害をあぶりだした。 A氏:ソーシャルメディアの普及は日本も共通だが、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗・日本代表は「米国はマイノリティーの存在が身近なうえ、彼らの権利が侵害されると周囲が結束して対抗する伝統が強い」と、日米の違いを指摘。 米国の場合、排他的な自国第一主義を掲げ、社会分断をあおるトランプ政権の誕生も背景にありそうだ。 今の高校生は物心ついて以来、オバマ前政権時代のリベラルな空気を吸ってきた世代。 一方、ワシントン・ポスト紙の調査では、ほかに社会運動に関心が強い層として「都市近郊に住み、収入・学歴が比較的高い50代以上」が浮かび上がった。 スタンフォード大のダグラス・マカダム教授は「貧困や戦争の恐怖より、民主主義が劣化する不安に突き動かされている」と指摘。 私:さらに、かつては社会運動とは縁が薄かった経済界が「助っ人」として登場。 デルタ航空は銃規制行進の参加者のために無料のチャーター機を飛ばした。 IT企業トップは、イスラム圏の一部からの入国禁止令には公然と批判し、トランプ大統領が白人至上主義者を擁護するような発言をすると、主要企業の経営者たちがそろって大統領の助言機関を辞任。 コロンビア大のウィリアム・クレッパー特任教授は、経営陣の若返りや企業イメージに敏感になった風潮に加え、「大統領や議会が社会的な『正しさ』を追求する指導力を失い、自分たちがそれを担わねばと意識する経済人が増えた」という。 A氏:しかし、新しい社会運動は主張が細分化され、組織やリーダーの求心力を欠くだけに「息切れする」との見方がある。 一方、銃規制の行進を主導した高校生は今、秋の中間選挙に向けて有権者登録を仲間に呼びかけ、「#Me Too 」に触発されて中間選挙に初出馬する女性も大幅に増えそうだ。 私:既存政治の枠組みを否定するのではなく、むしろ積極的に関与することで、政治改革の起爆剤になるとの期待も大きい。 トランプ大統領の11月の米国の中間選挙に向けての必死の公約実現の努力に対して、これらの運動は影響を及ぼすことができるだろうか。
2018.05.15
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私:イスラエル軍は10日、「シリア領内のイランのほぼ全ての軍事施設」を空爆。 きっかけは同日、「シリア領内に展開するイランの精鋭部隊・革命防衛隊が、ゴラン高原のイスラエル軍拠点に向けてロケット弾約20発を発射した」とするイスラエル軍の発表。 イスラエル軍の発表が事実なら、イランがイスラエル軍を攻撃したのは初めてで、イスラエルのネタニヤフ首相は同日、「イランはレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と非難する声明を出した。 ところが、イランは「イランがイスラエルを攻撃している」とするイスラエルの主張を否定。 イスラエルからの攻撃には「不意打ちで立ち向かう」(ハタミ国防相)とし、報復するとしている。 A氏: イランとイスラエルはなぜ敵対しているのか。 イランでは1979年のイスラム革命で親米のパーレビ王政が崩壊し、国教のイスラム教シーア派の法学者が最高指導者として、国政の最終決定権を握る体制を確立。 初代最高指導者のホメイニ師は「イスラエル占領下で苦しむパレスチナ人を解放する」としてイスラエルと断交し、反イスラエル闘争を続ける人やアラブ人の武装組織への支援を開始。 レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラは、戦闘員約2万人を有し、レバノン南部からイスラエル軍を撤退させる強力な組織に成長。 さらに、イランは近年、シリア内戦で力を一気に高めた。 それは、親子2代にわたるシリアのアサド政権は、イランの「盟友」だからだ。 革命後のイランは、反米、反イスラエルでアサド政権と同じ立場で、イラン・イラク戦争(80~88年)では、王政のアラブ諸国が「革命の輸出」を恐れてイラクを支持したが、アサド政権はイランを支持。 私:イランはイラクでも革命防衛隊や民兵を派遣してイラク軍のIS掃討作戦を支援し、勝利に貢献。 この結果、イランからイラク、シリア、レバノンを横断する「シーア派の三日月地帯」が完成。 イランは、シリア領内にすでに多くの軍事拠点を構築したとされ、シリア領内のイランの軍事拠点からミサイルが発射されれば、イスラエル領のほとんどがその射程に入るため これをイスラエルは安全保障上の重大な脅威と受け止めている。 A氏:危機感を深めるイスラエルの「援軍」になっているのが、17年1月に発足したトランプ政権で、トランプ氏はイランに厳しく、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしている。 トランプ氏は今月8日、欧州の反対を押し切ってイラクの核合意からの離脱を表明し、14日にはパレスチナや国際社会の猛反発を無視して、米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すが、エルサレムにはイスラム教の聖地もあり、イスラム諸国の反発も招いている。 私:イスラエルとイランは、本格的な軍事衝突は望んでいないと公言している。 しかし、レバノンで6日に実施された総選挙では、イランが支援するヒズボラの政治部門を中心とする勢力が過半数を獲得する可能性が高く、シリアとレバノンで影響力を強めるイランとイスラエルの攻撃の応酬がエスカレートすれば、シリアやレバノンを舞台に新たな紛争を誘発しかねない。 特にシリアでイランとイスラエルが衝突する事態になれば、アサド政権の後ろ盾としてイランとともに同政権を軍事支援するロシアも、現在は良好な関係にあるイスラエルと対決する状況になる恐れがある。 A氏:シリアではISを掃討するため、米国も少数民族クルド人が支配する北部などに米軍兵士約2千人を派遣し、米国は中東の覇権をめぐってイランと争うサウジアラビアや他のアラブ諸国と「イラン包囲網」をつくろうとしている。 米軍とイスラエルが、ロシア、イラン、アサド政権とぶつかる事態になれば、紛争はシリア領内にとどまらず、中東各地に拡大することが危惧される。 私:さらに、イラン各合意からの離脱、米国大使館のエルサレムへの移転などのトランプ氏の中東政策、緊張高めている。 「IS王国」問題の後に、新たな中東での紛争が起きそうだね。
2018.05.14
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私:平成経済を「会社員の昼食代」と「企業の交際費」という2つの観点からまとめているね。 まず、「会社員の昼食代」だが、1990年代後半から日本経済をデフレの影が覆い始め、物価が下がって会社の売り上げが減り、給料が削られ、人々の財布のひもが固くなり、経済が縮こまるという悪循環に陥っていき、小銭をきちんと数えて支払う人が目につくようになったのもこのころ。 新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」で、92年に746円だった男性会社員の昼食代は、05年、500円台に突入。 17年は590円に増えたが、ピークよりは2割少ない水準にとどまる。 A氏:厚労省の国民生活基礎調査によると、全世帯の年間の平均所得は15年、545万8千円だったが、これはピークの94年(664万2千円)の約8割の水準。 収入が減った一方、消費税率は上がり、平成元年の89年の導入時に3%だった税率は97年に5%、14年に8%と引き上げられた。 会社員の目はますます、ランチメニューの「値段」に吸い寄せられる。 私:一方、「企業の交際費」のほうだが、バブルのころ、もう一つの「財布」の「企業の交際費」を使いこなす会社員がめだった。 銀座の大通りには「予約車」のタクシーが二重三重にも連なり、1万円札を振って空車を探す人もざらだった。 00年前後のITバブル景気は、銀座の客層を変え。ITや外資系金融など、それまで見られなかった業種の客が来るようになった。 A氏:08年9月にはリーマン・ショックが日本経済を襲ったが、すぐには影響は表れず、銀座のクラブでは年末までは盛況が続いたが、年明けからはパタッと客足が止まった。 そこに追い打ちをかけたのが、11年3月に起きた東日本大震災。 東京は電力不足に見舞われて街からネオンが消え、ぜいたくや楽しむことを良しとしない空気が広がり、銀座のクラブの扉には「非国民」と貼り紙をされた。 「企業の交際費」は震災後の11年度、ピークの半分に満たない2・8兆円まで落ち込んだ。 私:12年末に第2次安倍政権が発足し、アベノミクスで企業の業績は回復し、交際費も16年度は3・6兆円まで回復。 銀座のクラブの客足も昨年末から伸びているが、浮かれきっているわけではなく、関係者は「バブル崩壊にリーマン・ショック、大震災。 この30年の経験から、備えへの意識が強まったのではないでしょうか」という。 そういえば、最高益を出したトヨタも先行きの世界的な自動車の競争激化に危機感を持っているのと同様、高利益の大手企業も先は見えないが、「企業の交際費」はどうなるかね。 「会社員の昼食代」も、消費税は19年10月に10%に引き上げられることになっているが、どうなるか。
2018.05.13
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私:今月の佐伯教授のテーマは「学生運動」に関するものだ。 タイトルの1968年とは、この年のフランスに起きた5月革命と称される出来事を指している。 この学生反乱は、先進国全体に共通する動きであり、日本ではいわゆる「全共闘」運動。 佐伯氏は、「全共闘」運動には参加もしなければ、さしたる共感ももっていなかった。 それは、佐伯氏がそもそも集団行動が嫌いだったこともあるが、まわりには、マルクスやら毛沢東から借用したあまりに粗雑な「理論」を、疑うこともなく生真面目に信奉しつつも、実際にはまるでピクニックにでも出かけるようにデモに参加する連中をずいぶん見ていたせいでもあるという。 A氏:しかし、佐伯氏は、それでも、あるひとつの点において「全共闘的なもの」に共感するところがあったという。 それは、この運動が、どこか、戦後日本が抱えた欺瞞、たとえば、日米安保体制に守られた平和国家という欺瞞、戦後民主主義を支えているエリート主義という欺瞞、合法的・平和的に弱者を支配する資本主義や民主主義の欺瞞、こうした欺瞞や偽善に対する反発を根底にもっていたからであるという。 私:だから、これらの欺瞞と戦うには、合法的手段ではありえず、暴力闘争しかないということになり、佐伯氏が共感したのは、この暴力闘争への傾斜であったが、そんなものはうまくゆくはずもない。 そして、事実、暴力は内向してあさま山荘事件や内ゲバへと至り、「全共闘」運動は終焉。 戦後日本の学生主体の新左翼は、こうして暴力主義の果てに崩壊し、これはほとんど必然的な成り行きのように佐伯氏には思われたという。 むしろ、佐伯氏が衝撃を受けたのは、70年に生じた三島由紀夫の自衛隊乱入、割腹自殺事件の方で、米製の憲法を理想として掲げて、米軍に国防を委ねる平和国家を作り、あの戦争を誤った侵略戦争と断じたあげくに、とてつもない経済成長のなかでカネの亡者と化した日本、こうした戦後日本の欺瞞を三島は攻撃し、一種の自爆テロを起こした。 A氏:そのころ、評論家の江藤淳が「『ごっこ』の世界の終ったとき」と題する評論を書き、全共闘の学生運動も、三島の私設軍隊(楯〈たて〉の会)もどちらも「ごっこ」だと論じていた。 学生運動は「革命ごっこ」であり、三島は「軍隊ごっこ」であり、どちらも現実に直面していないと佐伯氏は指摘する。 私:真の問題は、日米関係であり、アメリカからの日本の自立である、というのであり、確かに、フランスやアメリカと比較しても、日本の学生運動は、どうみても「革命ごっこ」というほかなく、機動隊に見守られながら「市街戦ごっこ」をやっているようなものであるという。 三島の方はといえば、効果的な「ごっこ」を意図的に演出していたのであると佐伯氏は指摘する。 三島は、精神の道義を問うたのであり、この道義を戦後日本は失ったのではないか、と問うた。 フランスの68年は、それでもポストモダンといわれる思想を生み出したが、日本は何も生み出さなかった。 そして左翼主義は、その後、ただただ「平和憲法と民主主義を守れ」に回収されてしまったと佐伯氏は指摘する。 A氏:佐伯氏は、68年をさほど評価しないが、それでも今日の大学や学生文化にはないものが当時はあり、それは、社会的な権威や商業主義からは距離をとり、既成のものをまずは疑い、自分の頭で考え、他人と議論をするというような風潮であり、その自由と批判の気風こそがかけがえのない大学の文化なのであるという。 私:しかし、今はSNS時代。 こないだ、ある50才台の大学関係者と会ったが、彼が嘆いていたのは、最近の学生は、片手にスマホを持ち、画面を見ながら議論するので、膨大なナ既成の情報にとらわれ、佐伯氏のいう既成のものをまずは疑い、自分の頭で考え、他人と議論をするというような風潮は考えられないという。 佐伯氏のいう、自由と批判の気風の大学の文化は危機に陥っているのではないか。
2018.05.11
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私:政権の不祥事を起こしたのは財務省などの官僚機構だが、背景には総理の意向への「忖度」があると思われる。 野党は関係者の証人喚問、財務大臣の辞任、真相究明を求め、自民党が応じるまで国会審議を拒否したが、国会をこれ以上ストップさせれば、国民の批判が自分たちに向くと気をもむ野党は、どうしたら面目を保って審議に戻れるかと焦り、ようやく、今日の柳瀬氏の参考人喚問で、手をうち、国会が正常化した。 A氏:カーティス教授は、他の議会制民主主義国ならば、この時点で野党は選挙の必要性を唱えて、総理に不信任案でも出して国民の信を問うべきだと政権を攻めるが、日本は違うという。 自民党の方が解散の可能性をちらつかせて、野党を牽制し、内閣支持率が下がっても野党の支持は上がらないのが、日本政治の「常識」だという。 1994年に「中選挙区制」を「小選挙区制比例代表並立制」に変えたとき、日本は政策本位の「二大政党制」になるはずだったが、野党の政策の軸は自民党との違いが見えず、スキャンダル追及ばかりで建設的な政策論争をせず、「中選挙区制」での自民党候補者同士の争いが生んだ緊張感はなくなった。 日本の社会構造に合わないこの選挙制度をどう変えるのか、考えるときがきているとカーティス教授は指摘する。 私:もう一つの問題は「官邸指導」だ。 「官邸主導」の強化と省庁の統合をめざした橋本行革から、約20年が経ち、総理と内閣の権限は強化され、「官邸主導」になった。 権力構造を正しく変えるため、橋本龍太郎総理は政治史に残る大きな貢献をしたが、権力が官邸に集中しすぎたとカーティス教授はいう。 「ゆがみ」が副作用のように現れていて、長期政権のもと、「内閣人事局」がトップの600人以上の官僚の昇進を決める権限を握り、官僚が総理ばかりではなく、総理に近いスタッフが嫌がると思う政策提言をしない。 自分が所属する省庁の大臣よりも官邸に目を向け、多くの大臣の立場が弱くなる。 そして、自民党議員もポスト配分や選挙での公認という党総裁としての権限を握る総理を恐れ、総理が好まないことを言わない。 官僚が官邸を「忖度」し、自民党の議員が自由な発言をためらって、野党が何のために存在しているのかを見失った結果、総理の一強が強まった。 「選挙制度改革」と「橋本行革」が、日本の政治構造にダブルパンチを与えたようなものだとカーティス教授はいう。 私:これらが本来、安倍首相のいう「膿」ではないのかね。 さらに、カーティス教授は、森友、加計学園問題問題の真相究明が大事なのはわかるが、歪曲した仕組みを直す努力をせずに、対立が続くことの方がより深刻だという認識が、政治家にもメディアにも足りず、与野党ともに日本政治の構造問題を冷静に分析して、改善策を論じるべきだという。 安倍首相が「膿」を出す、というのは、カーティス教授が指摘した現在の日本政治の構造の見直しにあたるね。 野党も「膿」出しを積極的に行うべきで、それが最後に野党強化につながることを自覚すべきだね。
2018.05.10
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私:ニコラス・クリストフ氏は、「北朝鮮専門家」として、金正恩朝鮮労働党委員長は4月27日、北朝鮮の指導者として初めて韓国に足を踏み入れたが、弱いカードを極めて巧妙に切ってきて、金氏は何としても制裁から逃れて経済を成長させ、核兵器を保有し続ける気だという。 このコラムで、クリストフ氏は、1980年代からこの国を取材している者として、なぜ深く疑いを持つべきか、そして、なぜ少しは期待を持てるのかについて、このコラムで、見解を述べたいという。 A氏:金氏は、オリンピック外交と南北首脳会談の進展を足掛かりにトランプ氏や中国の習近平国家主席との会談を取り付けた。 どちらも北朝鮮が長年目指してきたことで、金氏と文氏は、「これ以上戦争がないこと」、「新たな平和の時代」、そして「完全な非核化」を約束する宣言を採択した。 クリストフ氏は、感動的ではあるが、「懐疑的」だという。 南北朝鮮の首脳はこれまでも00年と07年に壮大な和平文書に署名したが、どちらも持続しておらず、12年には、北朝鮮はミサイル実験を行わないことに合意したが、その数週間後に「衛星」と称してミサイルを発射している。 私:北朝鮮が「完全な非核化」を持ち出す場合、たいてい、米国がまず韓国との同盟を終わらせ、北朝鮮が自国を守るための核兵器を必要としなくなることを意味する。 だが、クリストフ氏は、米国が韓国を見放すことはなく、北朝鮮は50年代から核兵器の開発を続けていて、保有する兵器を本当に引き渡すと考える専門家を一人も知らないという。 トランプ氏がイラン核合意を破棄しようとするのを目の当たりにしている今、北朝鮮が核兵器を手放す可能性はさらに低いという。 A氏:金氏は、非核化を目指す誓約に署名し、詳細は以後の協議に委ねる作戦のようで、査察も決して入らないと確信した上で、誓約が完全に実行されることはないという。 北朝鮮は不誠実かもしれないが、ひどいわけでもなく、北朝鮮と米国の双方が面目を保ち、戦争の瀬戸際から脱することができるのだクリストフ氏はいう 北朝鮮が、核やミサイルの実験を(願わくは、短距離ミサイルも)すべて停止し、寧辺でのプルトニウムの製造を中止すると予想していて、見返りとして、中国と韓国は静かに制裁を緩めるだろう。 そして金氏は望んでいたものを手に入れ、世界の指導者の一人、対等な存在、そして事実上の核保有国の支配者として扱われる正当性だという。 私:クリストフ氏は、金氏もトランプ氏も、このシナリオで政治的な恩恵を受け、世界全体も同じで、強硬派は、私たちがもてあそばれ、北朝鮮が検証可能な形で核兵器を放棄しないことに腹を立てるだろうが、戦争よりはましなのだという。 クリストフ氏の北朝鮮の「完全非核化」の実現に対しては「諦めに近い予測」だね。 どうやってこの事態を終わらせるのか? クリストフ氏は、西側の計画は、北朝鮮の崩壊まで長引かせることで、そうなる可能性はあるが、問題は、94年の核合意の時も米国が同じように計画していたことで、告白すると、90年代末にニューヨーク・タイムズの東京支局長のポストをクリストフ氏が選んだのは、間もなく北朝鮮の体制崩壊を取材できると考えたのが理由の一つだったが、それからというもの、金王朝が終わる時期を予想するのはやめたという。 浮上している枠組みがすべて失敗に終わる可能性はあるが、戦争を回避する道筋を思い描くことができるのだから、北朝鮮懐疑論者も感謝すべきだろうとクリストフ氏はいう。 このコラムか書かれたのは4月29日付のNYタイムズだが、それ以降、5月になって、金氏がまた飛行機で大連に飛び、中国の習主席と会談するなどバタバタし始めているのは、クリストフ氏の金氏に対する懐疑論があながち、間違いでないことを示しているね。 本番の米朝会談の成果は楽観できないね。 トランプ大統領が、金氏の煮え切らない姿勢に怒り、席を立ち、会談は決裂する可能性も容易に考えられられるね。
2018.05.09
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私:前米大統領補佐官(科学技術担当)、ハーバード大学教授のジョン・ホルドレン氏は、オバマ政権下で歴代最長の8年間、科学技術担当の大統領補佐官として仕えた米科学界の重鎮。 ホルドレン氏は、発足から1年余りのトランプ政権の科学政策の批判をこのインタビューで述べているね。 トランプ政権の予算教書では科学技術予算の大幅削減を提案し、「パリ協定」離脱など環境規制を次々と撤廃し、世界の科学をリードしてきた米国が「科学政策不在」の事態に陥っているという。 A氏:トランプ政権の科学政策の問題点は、まず、「1つ目」に、科学技術担当の大統領補佐官が不在で、大統領とホワイトハウスの高官が科学技術に関する政策課題に対処するとき、政権内で誰に直接助言を求めたら良いのか分からない状態。 ホワイトハウスの政策決定過程から、科学的な視点が奪われているという。 「二つ目」は、政府全体の科学技術政策を仕切る仕組みがなく、(政府の科学技術予算を策定する)科学技術政策局(OSTP)には45~50人の職員がいるが、補佐官が兼務していた局長が不在で、リーダーシップが失われている。 科学的な専門知識もない人たちが予算を大統領に進言することになり、実際に大統領の予算教書として議会に提示されている。 「三つ目」に、省庁や議会、科学界に対して大統領の使者として、渡り合う人がいないこと。 A氏:一番やる気を失っているのが、(予算が大幅に削られ、環境規制も次々と撤廃されている)環境保護局(EPA)の職員で、かなり士気をそがれていて、科学者が政権から離れ続けていいて、トランプ氏が政権を去っても、政府機関で有能な人材が空洞化した状況は、一夜にして修復不可能という。 オバマ政権時代は、科学技術担当の大統領補佐官は、好きなときに大統領と面会の約束や、自由にメモを渡すことができ、大統領も直接呼び出して助言を求めた。 ホルドレン氏も科学技術担当補佐官として、オバマ大統領との面会は、平均で週2回、多い週は5、6回の時もあり、彼に仕えた8年間は素晴らしいものだったという。 私:トランプ政権で米国が研究開発のスピードを落とす中、中国の躍進が目立ち、これも大きな問題点だね。 中国は過去数十年間でめざましい発展をし、15年には、経済の差を縮めたのと同じように、科学分野でも差を劇的に縮め、研究開発に使うお金はすぐに米国を抜くだろうという。 ホルドレン氏は、中国・清華大学の客員教授もしていたが、中国の自動車技術やバイオ、情報、ナノテクなどは素晴らしく、米国のMIT、スタンフォード大なみだという。 懸念するのは、米国が適切な科学投資ができなかった場合、10年後、15年後に、中国が盗むに値するような機密が米国からなくなってしまうとことだとホルドレン氏はいう。 だから、米国のためには中国とは敵対関係でなく、協調関係が必要だという。 A氏:科学者と政治の関係については、どれだけのお金を科学に使うのか、どのように割り当てるのかは多くの国では政治プロセス。 だから、科学者は利益団体と同じではないかという人もいるが、その通りで、科学者の利益は知識を深め、人類の発展に応用することにあり、誇るべきことであり、恥じることはなく、科学者が政治の舞台で沈黙するだけの集団なら、政治も貧しくなると、ホルドレン氏はいう。 私:このままだと、中国の科学技術が米国を追い越すことになりかねないね。 別のチャイナスタンダードができそうだね。 中国の科学技術の進歩の最新状態は、ブログ「中国の夢と足元」でとりあげており、ついでに成果をあげているドイツの科学政策については、ブログ「科学界、存在感増すドイツ 研究資金安定、論文数の伸び堅調」でとりあげている。 このブログでは全米科学財団が1月に発表した2016年の科学技術の論文総数ランキングでは、 1位=中国、2位=米国、3位=インド、4位=ドイツ、5位=英国、6位=日本、とあり、この科学技術分野では中国は、すでに米国を追い越しているね。
2018.05.08
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私:最近、週刊誌で食品店の店頭食品のコレコレに気をつけろという記事をよく見かけるが、この本の書評をみると、恐ろしい背景を知ることになるね。 しかし、評者は、この本はタイトルを見て「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違い、本書が描くのはトマト缶業界で台頭してきた中国企業だという。 「イタリア産」の缶詰も、加工地がイタリアであり、中身は中国から運ばれているものが多いという、産地偽装でよく聞く話。 A氏:中国の場合、トマトの主要な産地・新疆は、反革命犯や政治犯を「改造」するために労働をさせる「労働改造」の一大拠点。 著者は2013年にこの制度が廃止された後も、多くの収容者がトマトの収穫作業を強いられているという証言を新疆で引き出しており、評者は、私たちはどこかで、反体制の知識人を含む人々がもいだトマトを食べているかもしれないのだという。 私:本書はグローバル経済の実態を示す一冊でもあるという。 フランスのトマト加工企業が、中国企業に買収された時点で、地元産トマトを使うという約束は反古にされ、中国から濃縮トマトが運ばれる。 フランスの地域の生産者の多くは転職を余儀なくされるが「フランス産プロヴァンス風トマトソース」は欧州のスーパーに並び続ける。 A氏:最も衝撃的な場面は、アフリカのガーナにある中国企業のトマト缶加工工場で、著者が人目をしのんで原料の入ったドラム缶に手を突っ込み、その「黒さ」を目の当たりにするところ。 酸化し変色した濃縮トマト(ブラックインクと呼ばれる)はアフリカで薄められ、着色される。 私:ブラックインク再加工の現場をおさえた著者の執念は相当なものだが、そうしたセンセーショナルな部分だけでなく、末端で働く人々の生活現場まで取材し、声を拾っているところに本書の意味はあると評者はいう。 著者はジャーナリストで、アマゾンの配送センターに潜入取材した前著がベストセラー。 評者は「奴隷制度がいかに自由主義とかかわりが深いか」という認識のもと書かれた本書は、たとえばTPPを推進した人々の間ではすでにそんなことは暗黙の了解なのだろうから、市井の人々にこそ広く読まれてほしいという。 評者は、タイトルから、「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違うというが、やはり、最後は「買ってはいけない」系の話になるね。
2018.05.07
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私:このエッセイでは、まず、例の大相撲の土俵の女人禁制の「伝統」をとりあげているね。 騒がれているうちに、日本書紀には女性が相撲をとったという記述があるなど、ほんとうに女人禁制が「伝統」かどうかあやしくなった。 早大のスポーツ科学学術院のリー・トンプソン教授は、「江戸時代、女性は相撲の観戦もできなかった。ではなぜ、観戦禁止は明治になって解除されたのに、土俵の女人禁制は守ることになったのか。興行上の理由でしょう」という。 トンプソン教授は「横綱の発明と優勝制度、あるいは双羽黒の逆襲」という論文で、大相撲の代名詞のような横綱も創られた「伝統」だと指摘している。 横綱が番付で大関の上に載るようになったのは20世紀初頭で、ちょうどその時期に、場所ごとに成績で個人優勝者を決める制度も発達。 以前にはなかった優勝制度で、その導入は相撲の近代化だったと言える。 A氏:ただ近代化しても「伝統」の国技というイメージは必要と考えられ、その役割を担ったのが横綱を掲げる番付。 「伝統」性を表象する横綱制度は、優勝制度導入による近代化とのバランスをとるかのように発明され、行司がえぼしなどで「伝統」を装うようになったのもそのころ。 トンプソン教授は「日本には、『伝統』を守りながら近代化してきたという物語があります。西洋の国々に追いつき追い越せとやってきたけれど日本の精神は守ったんだと。大相撲もそれを体現しています」と指摘する。 私:ここで、テーマは「伝統」一般論に移る。 英国の歴史家、エリック・ホブズボーム氏らが1983年に出した研究書「創られた伝統」で、「『伝統』とされるものごとは、古いと言われるし、そう見える。しかし、その起源がかなり最近であることはしばしばで、ときには発明されることもある」という考え方を打ち出した。 ホブズボーム氏は、「発明された『伝統』」の場合、過去とのつながりがあるようでも「大半が見せかけ」という。 でも、それはそのときどきの社会が抱える問題の「症状」や「指標」でもあるという。 彼の分析によると、多くの国が「伝統」の発明に励んだのは19世紀末から20世紀初めにかけてで、近代化の大波にもまれ、人々は自分の居場所について動揺していた頃。 その心を国や地域に結びつけ、人々を束ねたい政治権力に役立つような「伝統」が創られていったという。 A氏:ここでテーマは一般論から、現在に移る。 日本では、憲法に日本の「伝統」的価値観を盛り込もうという主張が目立つ。 2006年に改正された「教育基本法」は「伝統」を「継承」したり「尊重」したりする教育の推進をうたっており、ほかの国でも、自国の誇りを取り戻せとばかりに「伝統」を強調する言説が広がる。 おりしもグローバル化や少子高齢化で社会は急激な変化にさらされていて、不安が消えない人々に向けて政治家や言論人がせっせと「伝統」を発明しているように見える。 「夫婦別姓は『伝統』を壊す」「家族で助け合うのが『伝統』」などなど。 私:トンプソン教授は「『伝統』って何でも入れられる箱みたいなもので、『伝統』といえば、人は守らなければと思ってしまいがちです」と注意を促す。 大野氏も「『伝統』というだけで、なにかを説明したことにはならない。『伝統』といわれただけで、恐れ入るわけにはいかない」という。 大相撲の土俵の女人禁制の「伝統」は相撲協会で再検討するらしいが、どうなるかね。 挨拶や、賞状授与、緊急事態の場合など、条件付きで緩和するか、頑として「伝統」を押し通すか。 いずれにせよ大相撲の「伝統」に新たな歴史的根拠の説明が必要だね。
2018.05.06
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私:4月末のブログ「人間関係の質の低下 孤独の病、助長するSNS」で、米国でSNSの影響で、リアルな人間関係が減り、格差まで生んでいるというエッセイを取りあげたが、今日の新聞記事は日本の小中高校生の「ネット依存症」問題をとりあげている。 ある男子生徒は中学2年の夏、専門病院で「ゲーム依存症」と診断された。 部屋に引きこもって体を動かさなかったため、健康診断で肺の働きは「53歳程度」と判定されたという。 友達との会話の時間もすくないので、リアルな人間関係ができにくい。 A氏:内閣府の2017年度の調査によると、小中高生の7割以上がネットゲームをしており、比率は年々高まっていて、ゲーム以外にもSNSなどネットを利用する時間も長くなっていて、1日の平均利用時間は159分で、14年度より約17分伸びた。 厚労省.研究班の12年度の推計によると、「ネット依存症」の疑いがある中高生は全国に約52万人に上るが、ネットやゲームをする子どもがすべて依存症になるわけではない。 私:単なるやり過ぎと依存症の違いは、自分で制御できるかに加え、心身の健康悪化、遅刻や不登校、家庭内暴力などの問題が起きているかいないかで判断する。 国内で初めて「ネット依存症」外来を開いた久里浜医療センターでは年間約1800人が受診。 未成年が56%、20代が31%で、男性が85%を占め、樋口進院長は「始めるのが若いほど依存症になりやすい」と警告。 子どもは脳が十分に発達しておらず、快感や刺激を求める欲求が理性に勝る傾向があるという。 A氏:「ネット依存症」には、SNSなどへの依存症も含まれるが、圧倒的に多いのは「ゲーム依存症」で、センターの患者の9割を占める。 主流の「オンラインゲーム」は内容が常に更新され、際限なく続けてしまうという。 樋口院長は「勉強やスポーツに比べて簡単に達成感が得られ、依存に陥りやすい」と指摘。 同センターで「ゲーム依存症」と診断された人は、朝起きられない(76%)、昼夜逆転の生活(60%)、学校や会社を休む(59%)などの問題を抱えていた。 物を壊す(51%)、家族に暴力をふるう(27%)といった暴力的な傾向も目立った。 私:WHOは今年6月に公表する国際的な病気の分類の改訂案で初めて、「ゲーム依存症」を「ゲーム障害」として疾患名に入れる方針。 これに対し、日本の企業も加盟する米国のゲーム業界団体は「ゲームに依存性はない」と反対を表明している。 しかし、現実に、ゲームに熱中している多くの子供達をみると、なんらかの影響は無視できないね。A氏:近所にいる男の孫は小学生高学年頃から、ゲームに熱中しだしたので、ゲームの攻略本を買い与えたら、熱心に読んでいた。 俺のところに遊びに来ても、ゲームに熱中するから、会話が減ったね。 中学生のときは、部活が運動部だったので、土曜も部活で運動不足とはなっていないね。 親しい友だちも数人いるらしい。 小学生のときのゲーム攻略本の効果か、国語は好成績だが、他の科目は勉強不足。 今年、高校入試で、間際の勉強でなんとか公立高校に入学した。 「ゲーム依存症」ではないが、インターネットに俺よりはるかに詳しくなり、将来、ハッカーになって、政府の公安関係の仕事を依頼されるのではと冗談を言ったね。私:ゲームやSNSが今後の彼の人生に大きな影響を与えていることは確かだね。
2018.05.05
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私:先日のブログ「独自の統治モデルを意識、『Gゼロ』世界、中国の好機 識者に聞く」で、「チャイナスタンダード」の拡大にふれたが、実は、同日の朝日新聞のトップには、その「チャイナスタンダード」化したカンボジアが一面トップに掲載されていた。 「チャイナスタンダード」化の例としてこれにふれておこう。 A氏:カンボジアのシアヌークビルは、旧宗主国フランスをはじめ海外の人々を引きつけてきたリゾート地で、大型船が接岸できるカンボジア唯一の深海港をもつ国際貿易の適地。 シルクロード経済圏構想「一帯一路」を打ち出す中国は、この港町の重要性に目をつけ、官民を挙げて投資を進め、中国資本によるカジノ建設が相次ぎ、年内に40カ所を超える予定。 30年以上にわたりカンボジアを率いてきた首相のフン・センは7月の総選挙を前に、最大野党による追い上げへの危機感から同党を解党させ、欧米から批判を浴びるが、「選挙は与党が100%勝つ。安心した中国人の投資が増える。政党が少ないほど政治は安定し、経済は成長する。中国が手本だ」という。 私:2月、中国の支援で首都プノンペン郊外に建設する橋の起工式でフン・セン首相は「我々が中国に近すぎると言う人に聞きたい。侮辱や脅し以外に、欧米諸国が何かしてくれたのかと」とあいさつした。 自国民を大虐殺したポル・ポト政権時代とその後の内戦を経験したカンボジアは、91年、国際社会の仲介で内戦を終結させ、93年には民主国家建設に向けて内戦後初の総選挙も実施。 だが、四半世紀たった今、フン・センは中国を後ろ盾と頼んで独裁色を強め、民主化は後退。 フン・センが追いかけるのは一党支配の中国が示す「チャイナスタンダード」の「民主化なき発展」の道。 ポル・ポト時代の貧困から、カンボジアが復興し、人々が携帯電話を持てるようになった新しい時代のスタート地点にようやく立った発展のさなかに、政治で混乱してはならず、今大事なのは安定だという。 手を貸してくれるのが中国なら、今はその手をつかむしかない。 人々は期待と不安を抱えたまま、限られたカードを引きつつあるというのが、「チャイナスタンダード」に立つカンボジアの姿である。 低開発国への「チャイナスタンダード」化は進むだろうか。
2018.05.04
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私:以前、「大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用」のブログでとりあげたが、大隅良典氏のノーベル医学生理学賞の受賞が決まったが、大隅氏を含め、2001年以降の自然科学系での日本のノーベル賞受賞者は16人で、約60人の米国に次ぐが、ほとんどが10~30年前の研究成果で、いわば「過去の遺産」。 財政難もあり、国は近年、すぐに成果を見込めそうな研究に競争的資金を重点的に配分し、基礎研究にしわ寄せがいく傾向があり今は、基礎研究の環境は厳しくなっているとあったね。 A氏:事実、引用数がトップ級の論文数は、中国などが伸びる一方、日本は徐々に下がっていて、日本の研究力が低下している。 政府の科学技術政策の司令塔を担う総合科学技術・イノベーション会議(CSTI・議長、安倍首相)の重要なテーマの一つは、6月につくる政府戦略に盛り込む「大学改革」で、国際競争力を高めるイノベーションの起点にするための議論が半年以上続く。 私:だが、政府の思惑とは逆に、日本の研究力は低下。 研究の質を測る指標として、世界の研究者から引用されることの多い論文数でみると、科学技術予算を積極的に増やしている中国や安定的な研究資金を確保するドイツは、質の高い論文数を増やしているが、一方、日本は国立大学を独立行政法人化し、人件費などに使われる基盤的経費を減らし始めた2004年ごろから低下傾向。 1990年以降、政府は「選択と集中」で、競争的研究資金に力を入れてきたが、大型の研究プロジェクトであっても数年で終わるため、研究者が大学で安定したポストにつきにくくなったことも原因の一つと指摘されている。 A氏:CSTI委員の上山隆大・元政策研究大学院大副学長は「大学が研究開発の拠点になっている世界的な流れに乗り切れていない。研究費と研究時間が確保される必要がある」と話す。 若い研究者の多くが最初に職を得る地方大学にも資金を回したり、運営費交付金でまかなってきた大学の人件費や施設費などを競争的資金からも出せるようにして間接経費を確保したりする仕組みも必要という。 ただ、国の歳入が伸びず、大学への研究費を大幅に増やしにくい中、民間企業からの投資も使って状況を打開しようとしているが、こうした方針に、先にブログの引用でふれた大隅教授は「研究費の確保のため、企業の下請け化が進んでしまうのではないか」と懸念する。 私:研究予算の現状について、都内の国立大学で、自然科学系の研究をする50代教員は「大学に配られる予算が減らされ、学内でも学部や本部と奪い合いになっている」と明かす。 この教員の研究室の研究費は、年に数十万円程度で、約20年前と比べて数分の1に減った。 教員は「ノーベル賞を受賞した研究が始まった時に、国が『選択と集中』と言って研究予算を減らしていれば、受賞できなかったはず。すぐに役に立つ成果を求めすぎだ」と訴える。 A氏;任期付きで雇用される博士研究員(ポスドク)の立場も厳しく、文科省の科学技術・学術政策研究所が2月に発表した報告書によると、12年度に博士課程を修了し、3年半後に大学や研究機関に勤めるポスドクに、今後のキャリアを尋ねたところ「研究者として安定的なポジションを得たい」が6割近くに上った。 関東地方の国立大学で非常勤の教員を務める30代のポスドクも、大学の研究職の公募を待っているが、約15人いた大学の研究室の同級生で、研究の道に進んだのは1人だけで、安定した立場はまだ得られていない。 「日本では研究予算が減らされても不思議に思わない人が増えている。科学が国にとって重要という教育がきちんと行われてこなかったのではないか」と話す 私:日本の研究力が低下には、政府が進めてきた研究資金の「選択と集中」の影響だと指摘されているが、CSTIは「選択と集中」の看板を下ろしていないという。 日本の研究力の低下に対応して、CSTIは、6月までに若手研究者の支援など大学改革を盛り込んだ統合戦略をまとめるという。 今後、日本の自然科学部門のノーベル賞受賞者数は、どうなるだろうか。
2018.05.03
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私:昨日に続き、「チャイナスタンダード」をとりあげる。 ここでは、朝日新聞は、識者として、早大名誉教授・天児慧氏と、ユーラシアグループ社長、イアン・ブレマー氏の両氏に意見を聞いている。 天児慧氏は、「国家主席の任期制限撤廃など、習氏による『独裁』を巡る議論は、人類共通の歴史的な政治課題と捉えた方がいい。ドイツでヒトラーが台頭したように、政治システムは民主主義が問題を解決できなくなると独裁に、独裁が強まると民主主義に振れる。 冷戦の終結はリベラルデモクラシーの勝利ととらえられたが、いま民主主義は世界が直面する課題を解決していない」という。 A氏:トウ小平を含む指導者たちの時代は、民主化も考えていたが、今は、西側の民主主義は行き詰まったと指導者が認識。 習氏が国家主席に就任した2013年ごろから共産党は、経済と政治を含む概念として新たな「中国モデル」を意識し始めたという。 昨年の共産党大会などを見ると、50年ごろには米国を超えるという目標を立てているようで、理念やシステムで世界的な影響力を持つという戦略が出てきているのではないかと天児慧氏はいう。 「賢人政治」は、民主主義か独裁か、という問題への一つの答えだが、中国の文脈では儒教の伝統という面があり、修身によって聖人をつくり、その聖人による統治を理想とする考えが、中華帝国の中心的イデオロギーとしてあり、近代以降、儒教は遅れた思想とされ、共産党も否定したのだが、最近は復活しつつあるという。 私:明確な方向性を提起するには「賢人政治」の方が優れた面もあり、中国を「あいつらは独裁だ」と批判するだけでは低質な議論にしかならず、民主主義を鍛える努力を抜きにして、独裁と比べるべきではないという。 しかし、一方、習氏は「賢人政治」に必要な、優れた指導者を選ぶ仕組みを作っておらず、民主主義と中国式統治は、どちらも試されている。 中国はかつての英米のように基準をつくり、世界をデザインする意欲があっても、一番の障害は中国の政治文化がトップダウン型だが、欧米はボトムアップ型であり、そこから民主主義も生まれ、中国が善政を敷くといっても抵抗があるはずだという。 天児慧氏は、「『パックスシニカ(中国による平和)』の実現は、やはり人権や自由といった普遍的価値を中国自身が受容するかどうかにかかっているのではないか」という。 A氏:もう一人の識者であるユーラシアグループ社長、イアン・ブレマー氏は「(リーダー不在の)『Gゼロ』世界、中国の好機 米の政治、深刻に壊れている」として、「Gゼロ」は中国にとって、とても大きな機会となり、ブレマー氏は、中国が政治的空白を利用することを今年の10大リスクの1位に挙げており、明らかにそうなっているという。 それは、中国により適した秩序である「一帯一路」の構想、また終身制になりうる習氏の国家指導者としての地位などに表れているという。 私:習氏は昨年10月の共産党大会で、経済、技術、軍事面で世界の超大国になる用意がある、と公言。 これは、米国への直接的な挑戦で、1991年にゴルバチョフ氏がソ連の終わりを宣言して以来、世界で最も重要な演説だとブレマー氏はいう。 また、「米国が主導した世界は、中国が主導しそうな世界より個人の権利に関心を払ってきたと言える。米国がそうした関心や能力を持たなくなれば、我々は重要なものを失う。価値を築くのは長い時間がかかり、再建するのはとても難しい」とも、ブレマー氏はいう。 いずれにしても両氏の意見には「チャイナスタンダード」に対する危機感が共通して感ぜられるね。
2018.05.02
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私:中国的な価値観が生み出す「チャイナスタンダード」は国際秩序を変えるのか。 中国は今、多様な分野で世界を席巻している。 ・海外旅行者数――1位で1.2億人で、2位はドイツの0.9億人。 ・海外留学生数――1位で80万人、2位はインドの30万人。 ・インターネットユーザー数――1位で7億人、2位はインドの4億人。 ・国際特許出願件数―――中国は米国に次いで2位の5万件で日本に追いつく。 ・太陽光発電量――1位で70テラワット、2位は米国の60万テラワット。 A氏:欧米とは異質な中国の価値観は、人権意識の高い先進国にも影を及ぼし始めた。 例えば、ノルウェーのノーベル委員会は10年、中国共産党の支配を批判した「獄中の人権活動家」、劉暁波にノーベル平和賞を贈ったが、中国の対応は「劉暁波は罪人だ。両国関係が損なわれる」と素早く執拗だった。 ノルウェーのサーモンは中国の税関を通らなくなり、94%あった中国市場の占有率は2%まで落ちた。 ノルウェーのサーモン業界はノルウェーで強い政治力を持つので、ノルウェー政府は、世論を押し切って中国との関係改善にかじを切った。 北極圏の権益を狙う中国は13年、ノルウェーの支持を得て「北極評議会」でオブザーバーの地位を獲得。 ノーベル平和賞受賞者で、中国が敵視するダライ・ラマ14世がノルウェーを訪れても政府幹部は面会しなかった。 私:中国がノルウェーとの関係の正常化を受け入れたのは6年後のこと。 この間の経験を踏まえ、ノルウェー国会では十数人の議員が超党派の親中グループを結成し、中国理解を広げようと、中国大使を議会に招いたり夕食会をしたりと交流を深める。 メンバーのケント・グッドムンドセン氏は「自由や民主主義は大事だが、『我々の道が唯一の道』というのは傲慢だ。我々は違う歴史を歩んできたのだから」と話す。 ついに、ノルウェーにチャイナスタンダードが根付いたようだね。 A氏:民主政治の原型を生み出したギリシャにも、中国は深く食い込む。 EUは昨年6月の国連人事理事会で、中国の人権状況を批判する声明を準備しながら挫折。 EU全加盟国の賛成が必要だが、ギリシャが反対したためだ。 「EUが人権問題で声明を出せなかったのは初めて」と、国際人権団体に衝撃が走った。 ギリシャの反対は、10年、ギリシャが深刻な経済危機に陥りEUで「お荷物」扱いされた時、支え続けたのが中国だからだ。 中国は、ギリシャのピレウス港の開発に投資し、地中海屈指の貿易港へと成長させ、苦しい時に寄り添った中国を「恩人」とみる気分は、政権のみならず市民にも広がる。 発展を急ぐ途上国とグローバリズムの影響などで揺れる欧米の自由主義国。 中国の影響は双方に及び、人権外交の構図も変えようとしている。 私:今年3月、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、米国代表は強い口調で「中国は国連人権システムの弱体化を狙っている」と中国にかみついた。 これに対し、中国がまとめた決議案は、人権保護の取り組みでも「国家の特殊性と歴史的、文化的、宗教的背景は留意されなければならない」と訴え、共同提案国にカンボジア、ベネズエラ、スーダンそして内戦が続くシリアなどが名を連ねた。 国家の事情が人権よりも優先される場合があるとも読める内容に、米国は反発し、理事国による投票を求めた。 結果は賛成28、反対1、棄権17、反対は米国だけで日本やEU諸国は棄権に回ったが、アジア・アフリカの発展途上国、サウジアラビアやエジプト、メキシコなどが賛成。 A氏:ひるがえってみれば、トウ小平が改革開放にかじを切って40年。 当時、貧困国だった中国は世界第2の経済大国になり、軍事やサイバー、宇宙などの技術でも先進国に引けを取らない。 ヒト・モノ・カネ、さらには文化や価値観まで中国的なものが世界にあふれ出す。 欧州でさえ、巨大市場の魅力から中国批判をはばかる空気が漂う。 背景には、歴史的な国際関係の地殻変動がある。 「米国第一」を掲げるトランプ政権下で、米国の国際的な影響力は退潮傾向で、中国共産党幹部は「トランプが大統領でよかった。『米国第一』に固執するほど、中国が発展する空間が広がる」と本音を明かす。 私:冷戦が終わり、社会主義や全体主義は淘汰されるとだれもが信じた。 2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した時、欧米主導のグローバルスタンダードに中国も寄り添うとだれもが感じたが、その期待ははずれた。 中国は今、独自路線で米国をもしのぐ「社会主義現代化強国」を目指している。 欧米の影響力が陰るなか、望むと望まざるとにかかわらず、中国的なモデルがスタンダードになるかもしれないという動きが様々な分野に現れてきた。 世界は、欧米から中国に覇権が移る歴史的転換を目にしているのだろうか。 新たな世界秩序をめぐる相克を、この記事は各地から報告するとしている。 その視点にたっての各地からの報告を期待したい。
2018.05.01
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