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2016年のぎりぎりに、今年一番嬉しかったことを投稿させていただくことをお許しください。 新刊「音楽で楽しむ名画」。11月に平凡社新書として発売されました。 音楽と絵画は深くかかわっていますし、両方を好きな方も多いにかかわらず、そこに焦点を絞った手軽に読める本はないように思ったからです。 とはいえ、この本、もともとは、デアゴスティーニ社のパートワーク「名曲アルバム」に連載させていただいていた「アートを巡る」というコラムでした。パートワークは終了したのですが、この内容には愛着があり、いろいろな経緯を経て、平凡社新書から出していただくことができました。 https://www.amazon.co.jp/カラー版-音楽で楽しむ名画-フェルメールからシャガールまで-加藤-浩子/dp/4582858309 連載を本にまとめるのも初めてでしたし、それに際して、デアゴスティーニ社、平凡社を始め、いろんな方のお世話になったのがとても嬉しく、幸せな体験でした。 おかげさまでいろいろなところでご紹介いただいています。オペラファンの間で有名なサイト「オペラエクスプレス」さんでのご紹介もありがたかったですし、高校時代の国語の恩師でもある林望先生が喜んでくださったのもありがたいかぎりでした。 毎日新聞 http://mainichi.jp/articles/20161204/ddm/015/070/025000c オペラエクスプレス http://opera.jp.net/archives/5730 林望先生のサイト http://rymbow08.blogspot.jp/2016/12/blog-post_11.html 来年は宗教改革500周年。それにあわせたバッハの本を企画中です。どうぞ今後とも、よろしくお願い申し上げます。
December 31, 2016
2016年もあと数時間。今年もまた、多くの音楽、オペラ公演に、生きる歓びをいただきました。まったくもって私的きわまりないのですが、国内、国外それぞれの、私個人の今年のベスト5公演をご紹介させていただきます。国外1 チューリヒ歌劇場「マクベス」、クルレンツィス指揮、コスキー演出 憧れの「生クルレンツィス」。衝撃的で野心的なオペラにふさわしい、思い切った斬新な演奏。大満足でした。 2 ドロットニングホルム宮廷劇場 「ドン・ジョヴァンニ」ミンコフスキ指揮 アレクサンドル演出 念願だった18世紀の宮廷劇場。ミンコフスキの生き生きと躍動感あふれる「ドンジョヴァンニ」。劇場の音響も暖かくすばらしかったです3 ネルソンズ指揮ゲヴァントハウス管弦楽団 マーラー「交響曲第3番」 シャイーの引退公演のはずが、彼がキャンセルして新シェフのネルソンズがピンチヒッターに。壮大で熱い演奏。大曲が短く感じられた集中力。4 クリスティ指揮レザールフロリサン バッハ「ロ短調ミサ曲」 2016、ライプツィヒバッハフェスティバルのファイナルコンサート。同じフェスティバルではガーディナーの「マタイ」も素晴らしかったですが、洗練された美意識という点でこちらのほうがやや好みだったかもしれません。5 スカラ座「シモン・ボッカネグラ」 ヌッチ主演、チョンミョンフン指揮 スカラ座の定番演目。ミョンフンの指揮は、かなり作品のダークな面を強調した感じでしたが、彫琢が深く、感動的なものでした。ヌッチはもう手の内。 国内1 東京交響楽団 「コジ・ファン・トウッテ」(演奏会形式)。ノット指揮 ブログでも触れた充実公演。2 ティーレマン指揮 ドレスデンシュターツカペレ「ラインの黄金」(セミステージ) さすがのティーレマン&ドレスデンシュターツカペレ。あうんの呼吸のすばらしさ。しなやかできらめくようなワーグナー。3 クリスティ指揮レザール・フロリサン イタリアバロック〜古典派のオペラをクリスティ流に編み直した清新な企画。老境に達してもフレッシュな音楽が素晴らしい。4 マリインスキー歌劇場来日公演「エフゲニー・オネーギン」 十八番の強みを思い知らされました。5 北とぴあ 寺神戸亮指揮レ・ボレアード「ドン・ジョヴァンニ」(セミステージ形式) セミステージ形式の可能性を最大限に発揮した素晴らしい公演。最高席7000円という驚異的なコストパフォーマンス。 演奏会形式、セミステージ形式のオペラ公演が充実していた1年でした。 そして番外で、今年心に残ったオペラは「フィガロの結婚」。実は生を全く見ていないのになぜそう思ったかつらつら考えてみましたら、レクチャーで取り上げる機会が多くていろいろ聴き比べたんですね。でやっぱりたどりつく、クルレンツィス&ムジカエテルナ。演奏史上画期的な演奏だと改めて。 今年もこのつたないブログをご訪問くださり、ありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。
December 31, 2016
今年は、コンサート形式のオペラ上演に満足度の高い公演が多かった1年でした。 外来では、サントリーホールが30周年記念に招聘した、ティーレマン&ドレスデン・シュターツカペレの「ラインの黄金」が、(おそらくバイロイトでもよく共演しているメンバーが多いこともあり)すばらしく息のあった演奏を繰り広げましたし、オケや合唱は日本側(N響)とはいいながら、指揮者(ヤノフスキ)やソリスト(タイトルロールを歌ったシャーガーの、明るいイタリア的な声のヘルデンテノールぶりは新鮮でした)に海外の一流を招聘し、これも充実した演奏をした、東京・春・音楽祭の「ジークフリート」も聴きものでした。前者はセミステージ、後者は純粋に「演奏会形式」でしたが、後者など、これだけのワーグナーが聴けるなら、バイロイトに行かなくてもいいのではないかと思ってしまったほど。(20年以上行っていませんが。。。。すみません) 一方で、より「健闘」したと思えたのは、オーケストラやホールの主催公演の枠内での「演奏会形式」、あるいはそれに準じるオペラ上演でした。 セミステージとはいえ、演出家を起用して、アイデアにあふれた上演となった北とぴあの「ドン・ジョヴァンニ」については以前にもご紹介しましたが、在京のオーケストラも、競うように中身の濃い公演を行ってくれました。(デュトワが指揮したN響の「カルメン」は、残念ながら日程があわずに聴き逃しましたが) 東京フィルは、チョンミョンフン指揮の「蝶々夫人」と、バッティストーニ指揮の「イリス」という、ふたつの「ジャポニスム」イタリアオペラ。演出上は、「蝶々夫人」は衣装にちょっと工夫があったくらいですが、その分音楽に集中できましたし、「イリス」は、バッティストーニのアイデアで、背景に北斎をはじめ浮世絵を投影したり、客席から踊り子が現れるなど、作品の幻想的な雰囲気を醸し出す工夫がされていました。後者はなかなか上演の機会に恵まれないオペラですが、バッティストーニお得意の「美しい壮大さ」がふんだんな作品で、細やかな叙情性から、強烈でありながらこれまたどこまでも美しいフォルテまで、バッティの長所がいかんなく披露された公演となりました。 もうひとつ、素晴らしい公演をプレゼントしてくれたオーケストラは、東京交響楽団です。とくに東響の場合は、キャストがすごかった。メトやウィーンやザルツブルクに出ていてもおかしくない、という主役陣でしたから。それは、満足度はまた一段高かった。 9月には、これまた上演の機会が少ない(でもすごい音楽!)ベルリオーズ「ファウストの劫罰」。スリルと大胆さにみちたベルリオーズの音楽を、スパイアーズ、ペトレンコ、そしてソフィー・コッシュ!という超一流キャストで堪能できました(指揮はスダーン)。とくに感心したのはコッシュで、一声で自分の空気を作ってしまえるカリスマ性に加え、やわらかで自在な表現で、音楽だけで心に染みる恋する女、そして聖女マルグリートを表現していたと思います。 けれどきわめつけは、今月聴いた「コジ・ファン・トウッテ」です(主催は東京芸術劇場とミューザ川崎)。 この「コジ」、前からとても楽しみにしていました。東響と息のあったところを見せている音楽監督、ジョナサン・ノットの指揮で、彼がハンマーフリューゲルも担当。そして歌手ときたら、大ベテランで、伝説の?ドン・ジョヴァンニでもあるトーマス・アレンに、マルクス・ウェルバ、ミア・パーション(ただし直前に急病でキャンセル)など、この手のモーツァルト・オペラでは理想ともいえるキャストが並んでいたのですから。 東響と「コジ」をやりたい(というかダ=ポンテ三部作をやりたい)と提案したのはノットのようでした。ノットはフランクフルト歌劇場などドイツの歌劇場でカペルマイスターとして活躍し、通奏低音の経験もふんだんというのも魅力でした。事前にインタビューもさせてもらえたのですが、「とにかく楽しい」と「コジ」の魅力を強調していました。リハーサルも大変順調で、予定時間より大幅に早く終わってしまったというのをきいて、これはいい公演になるに違いない、と確信したのですが。 ほんとうに素晴らしい公演でした。公演の水準も高かったし、加えていろいろな発見があったのです。 今回の上演は、オーケストラはもちろん舞台上にいるのですが、編成が小さいこともあり、舞台の前後左右にかなり空間があります。歌手たちは、そこをふんだんに使って、のびのびと歌い、走り回って「演技」していました。それも、ごく自然に。 「演出家」のとくにいない上演だったので(ドン・アルフォンソを歌ったアレンが「監修」という役割を引き受けたようですが、出はけのタイミングを調整するくらいで、「演出」した、というわけではなかったよう)、おそらくその分、歌手たちが、自由にのびやかに演じていたのです。同時に、それだけのことができる歌手たちが揃っていたといえます。とくにウェルバとかアレンという、それこそザルツブルクやウィーンでこの役をたくさん経験したような超一流どころは、ひとりでも歌と演技の両面でこのオペラができてしまえるくらい、この作品の「中身」が染み込んでいるのだなと感じられました。この2人を筆頭として、みな、自分のパートを十分に消化して、役柄になりきっていました。だから演出などなくても、いえ、ない分余計に自由に、オペラを「作って」しまえるのです。だからなのでしょう、歌手たちもほんとうに楽しそうでした。 ノットの指揮も、歌手たちをよく見て、聴き、そしてあくまで作品を「立て」て、作品の美しさを存分に味わってもらいたい、というものだったので、歌手の実力と相まって、「コジ」の演劇性が浮かび上がってきたように思います。そう、「コジ」がこんなに演劇的なオペラだったなんて!失礼ながら、このような上演が可能になったのは、余計な「解釈」を押し付ける演出家が不在だったからでしょう。「自発性」からくる歓び。 レチタティーヴォもカットなし、よく省略される、第2幕のフェッランドの、フィオルディリージとデートした後でのアリアも聴けて、まったくもって「コジ」の音楽の素晴らしさを丸ごと味わえた公演となりました。 いつも演出上問題となる幕切れも、各人がとまどいの表情を見せながら、それでも丸く収まるふうで、これはこれで納得できたのでした。 いつも思うのですが、素晴らしいオペラ作品(すべてではないですが。ロッシーニの一部の作品のように、音楽が抽象的でそれが優先される場合もあります)というのは、音楽のなかに演劇性があるわけで、演奏する側がそれを汲み取り、生かすことができれば、それだけで十分に「演出」ができてしまいます。その可能性の大きさ、豊かさに瞠目させられた公演でした。演奏会形式のオペラの場合、指揮者が主導権を握るのが一般的ですが、この「コジ」の場合は、指揮者と歌手が対等だった、ということがきわめて大きかったと感じました。演奏会形式といえ、指揮者と歌手、両方が揃うと別の次元が開けるのだ、と思い知らされた公演でした。 これで最高席12000円!歌手も指揮者も、高額な引っ越し公演と同等のレベルなのですから、演奏会形式のオペラ、これからも注目です。 追記:ノット&東響の「ダ・ポンテ三部作」、来年は12月に「ドン・ジョヴァンニ」だそうです!必聴です。
December 24, 2016
来年も海外歌劇場の来日公演はいくつかありますが、大型の引越し公演で、楽しみなものが2つあります。それも、ドイツ、イタリアを代表する劇場が、それぞれ、ドイツもの、イタリアものの名作を携えてくるのが嬉しい。 9月のバイエルン国立歌劇場の引越し公演と、6月のパレルモ・マッシモ劇場の引越し公演です。 バイエルンのほうは、ベルリン・フィルのシェフに決まったキリル・ペトレンコが指揮し、ワーグナーのプリンス、クラウス・フローリアン・フォークトが初役のタイトルロールに挑む「タンホイザー」がとにかく楽しみ。もうひとつの「魔笛」は、定番のエファーディンクのプロダクションで誰でも楽しめそうです。 とはいえ、イタリア・オペラ好きとしては、パレルモ、マッシモ劇場の来日はほんとうに楽しみ。マッシモ劇場は、シチリア島最大の歌劇場で、イタリアを代表する劇場のひとつ。かなり前ですが一度来日し、シチリア島ゆかりのオペラ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」(「道化師」とのダブルビル)、「シチリアの夕べの祈り」を上演しました。今回は、イタリア・オペラのきわめつけの人気作「トスカ」「椿姫」です。 「トスカ」は、タイトルロールに、今この役を世界中で歌っているアンジェラ・ゲオルギューをキャステイング。一方「椿姫」は、御大ヌッチに、主役は、これも今ヴィオレッタをあちこちで歌っているランカトーレ、そしてイタリアのリリックテノールの期待の星、ポーリ。これ、3人とも、現時点ではほぼほぼ理想的なキャスティングではないかと思います。さらに、ランカトーレはパレルモ出身。地元が生んだ世界的なソプラノなのです。だから、その点でも、理想的なのではないでしょうか。 さらに、指揮が、今、注目しているイタリア人若手指揮者のひとり、フランチェスコ・イヴァン・チャンパなのです。彼は2013年にパルマで「群盗」を聴いて注目し、その後サレルノの「オテロ」、モデナの「シモン・ボッカネグラ」などを聴くことができました。今年6月にはヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場で「椿姫」を聴き、ていねいで、綺麗で、歌心あふれる音楽作りに感服しました。 その時のブログです。 http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/diary/201607180000/ そのチャンパ、ちょうど今月、新日本フィルで「第9」を振るために来日。合間を縫って、短い時間ですがインタビューに応じてくれました。「たぶんこれまで一番多く振っているオペラ」だという「椿姫」(2014年にはパリのオペラ座でダムラウと共演しています)について、音楽について、オペラについて、大いに語ってくれたのですが、またそのことは改めてあちこちで書いていこうと思います。とりあえず今回のパレルモ来日公演の「椿姫」のキャストは、「理想的。素晴らしい。夢のよう」だと語っていました。また要のジェルモンを歌うヌッチについては、「自分が出会った現役の最高のアーティスト」だと。 以下、フェイスブックにアップした内容を貼り付けます。 今日は新日本フィルの「第9」へ。念願叶って?終演後に指揮のフランチェスコ・イヴァン・チャンパにインタビューすることができました。チャンパは、今注目している指揮者の一人で、イタリアで何度も素晴らしいオペラの公演に接して、名前が刷り込まれた若手指揮者です(82年生まれ)。決して派手ではないけれど、綺麗な、ていねいな指揮をします。誠実な音楽づくり。「第9」でもそれを感じました。全曲のイメージを確実に持ってオーケストラを積極的にリードする、というところまでにはまだ行っていないかもしれないけれど、ほんとにていねいに、音楽への敬意をもって運んでいるのがよくわかりました。オーケストラがよく歌った第3楽章、「ナブッコ」など得意のオペラを彷彿させる第4楽章の合唱はとくによかった。インタビューは、主に、来年6月に彼が日本で振る、パレルモの来日公演についてでしたが、音楽について語るチャンパの目がきらきらしていて引き込まれてしまいました。ほんとうに音楽が好き、というのがふつふつと伝わってきて。「自分はただ作品に奉仕するだけ。何よりもそれが第一。名声とか財産とかそういうものはすべてその後のこと。有名になることに興味はない」。。。。ああ、私、こういうせりふに弱いんです〜。笑。主に影響を受けたのはジュリーニとオーレン。今日、彼の演奏を聴いていて、ちょっと「ジュリーニ」がよぎったのは確かで、そう伝えたら、ほんと?と嬉しそうに顔を輝かせていました。オーレンからは「劇場のリズム」の存在を教わったのだそう。どんなオペラにも、特有の「リズム」があるのだ、というのでした。6月に来日するパレルモ、マッシモ歌劇場の公演で、彼が指揮する「椿姫」について、「単純な音楽だからつまらない、というひともいる」と水を向けたら、「それは作品が全然わかっていない、作品を全然読んでいない人の言葉。「椿姫」はすべての音符、そして音符の間に意味が有る。その音が語っていることは無限」なのだ、と。今回のパレルモの「椿姫」のキャストの素晴らしさ、とくにヌッチの素晴らしさを熱く語り(600回も「リゴレット」を歌っているのにまだ勉強していること、まだ、毎回、「新しいこと」がないかと探していること、初めて顔合わせをした時に、緊張している自分に向かって、「あなたが指揮者なのだからあなたに従う」といったこと、子供のように目をきらきらさせて楽屋に入ってくることなど)、ヌッチは「自分が会った中で、現役の最高のアーティスト」だと言っていました。あと、パリの「椿姫」で共演したダムラウのことも絶さん。「すべての音に意味を見出してくるアーティスト」なのだそうです。その他にもいろいろなアーティストの名前があがりましたが、常に相手に敬意を持っていることが伝わってきて、とても心地よく感じました。こういう人はオペラで重宝されると思いますが、げんにチャンパは今相当な売れっ子で、今回の「第9」のあとも、スペインのビルバオ、アルゼンチンのコロン劇場、イタリアの各地の劇場、ベルリンでのダムラウのコンサートと、予定が目白押しです。とにかく音楽が大好きで、崇敬していて、独自の言葉を持っている、そんなアーティストの言葉をきいているのはこの上なく幸せなもの。短いインタビューでしたが、極上の時間を過ごすことができました。ありがとうマエストロ! マッシモ劇場の公演は、東京のほかにもびわ湖や名古屋でもあります。ぜひ、ひとりでも多くの方に観て、聴いていただければと思っています。 http://www.concertdoors.com/news/644/
December 19, 2016
マリエッラ・デヴィーアといえば、イタリア人ソプラノの大御所。とくにドニゼッティ、ベッリーニを中心としたベルカントオペラのソプラノの最高峰のひとりとして知られます。 この手のソプラノで有名な歌手といえばエディタ・グルベローヴァ。、彼女は来日も長く、ひんぱんで、しかもウィーンやミュンヘンといった一流歌劇場ときているので、ファンも多く、崇められているような印象があります。 もちろんグルベローヴァも素晴らしい歌手ですが、個人的な好みをいえば、デヴィーアのほうが好きです。やはりイタリア語の発声がクリアで、整って美しいし、スタイリッシュ。あくまでスタイル感を守りながら、そのなかで最大限の劇的表現をする。だから格調高いのです。もちろんグルベローヴァも格調は高いですが、イタリア的か、と言われるとデヴィーアのほうに軍配をあげたくなります。 なのにデヴィーアが今ひとつ知名度に欠けるのは、地味ということに尽きるのかもしれません。ヴィジュアルの雰囲気もグル様に比べるとちょっとおとなしいし(近くでみると若々しくて可愛らしいのですが)、これまで日本にも何度もきていますが、ウィーンのような一流劇場ではなく、藤原歌劇団など国内団体の招聘や、イタリアのちょっと格下の劇場とくることが多かったので、それもマイナスといえばマイナスかもしれない。 来年、そのデヴィーアが日本で「ノルマ」を歌うことが発表されました。この演目を日本で歌うのは初めて。とても貴重な、そしてお得な機会です。藤原歌劇団そのほか国内団体数カ所の招聘ですが、その分、この世界最高峰のソプラノの究極の役を、リーズナブルに体験できるのですから! 先日、記者会見が開かれましたが、デヴィーアいわく、最近本格的に歌い始めた「ノルマ」や、「ロベルトデヴェリュー」は、自分が声の成熟とともにたどりついた究極の役柄だそう。心理的にも成熟していて、複雑で劇的で(母として女としての葛藤)、強い緊張感があり、長い旋律線もあり、難しいが、大好きな役柄だと語っていました。たしかに2014年の春、バレンシアで彼女の「ノルマ」を体験しましたが、技術もまったく危なげなく、表現も深くて心を打たれました。 公演は7月に日生劇場で、秋に、川崎に新しくできるホール(川崎スポーツ文化センター)のこけら落としの一環として、またびわ湖ホールでも行われます。7月はデヴィーアの信頼が厚い若手指揮者のランツィロッタ、秋は沼尻さんの指揮です。 記者会見の資料にあった沼尻さんの言葉によると、これがデヴィーアの日本での最後のオペラの舞台になるとのこと。ご本人いわく「コンサートではまたくるかもしれないけれど、オペラはこれが最後のつもり」とのことでした。ならばますます、聴き逃すことはできません。 サイトではまだびわ湖ホールでしか見られないので、それを貼り付けておきます。https://www.biwako-hall.or.jp/topics/20161212_5328.htmlノルマ
December 14, 2016
バッハ没後250周年の西暦2000年に始まり、これまで25回を数えている「バッハへの旅」。 来年2017年は、バッハと縁の深いマルティン・ルターが起こした宗教改革が、500周年を迎えます。 現在、ルターの「宗教改革」の引き金になったとされている出来事は、 1517年、当時カトリックの修道僧だったルターが、ヴィッテンベルクの教会の扉に、カトリック教会を批判する「95か条の論題」を貼り付けた出来事です。これがきっかけでルターは教皇に破門され、神聖ローマ帝国の議会に呼ばれ、自説を曲げずに追放され、バッハの生まれ故郷でもあるアイゼナッハへ逃れて、ここでザクセン選帝侯にかくまわれ、郊外に建つヴァルトブルク城の一室で、新約聖書のドイツ語訳を完成させたのでした。 生まれ故郷でルターが活躍したことからもわかるように、バッハの故地はルターとゆかりの深い街ばかり。第一、バッハの活動の場のほとんどが、ルター派の教会でした。受難曲もカンタータも、ルター派の礼拝のために作曲されたもの。ルターがいなかったら「マタイ」や「ヨハネ」は生まれなかったといってもいいでしょう。 そんなゆかりの場所で、宗教改革を思い起こしながら、「マタイ」や「ヨハネ」を聴く。それも、フェスティバルなどではなく、この作品が演奏されるまさにその時期である聖金曜日(やその前後)に。 来年の「バッハへの旅」は、そんな内容で企画しました。聖金曜日に受難曲を聴くのは、コンサートで聴くのとはまったく違う体験です。音楽が生活と密着しているのを感じられますので。 とはいえ、ツアーにするのですから演奏家ももちろん一流です。定番の聖トーマス教会合唱団のほかにも、「ソロモンズノットバロックコレクテイヴ」という、今一部で大変評判になっている団体の「ヨハネ」も聴けます。またドレスデンへ足を延ばして、聖トーマス教会合唱団とならぶドイツの二大少年合唱団である「聖十字架教会合唱団」を聴き、さらに州立歌劇場で「フィガロの結婚」を聴くコースもあります。また、最初ベルリンから入り、ベルリンフィルを聴くコースも作りました。 ツアーの詳細は、主催する郵船トラベルのサイトでも発表されました。ご興味のある方はぜひごらんください。 http://www.ytk.co.jp/music/bach_1704/bach_1704_sokuho.pdf それ以外にも、6月のライプツィヒ・バッハフェスティバルを主にした「バッハへの旅」、そして、ウィーン、ロンドン、グラインドボーン、ミュンヘンでオペラ三昧をする「名門歌劇場めぐり」の詳細も発表になっています。 http://www.ytk.co.jp/music/bach_1706/bach_1706_sokuho.pdf http://www.ytk.co.jp/music/kato_1706/kato_1706_sokuho.pdf 郵船トラベルの速報版サイトはこちらです。 http://www.ytk.co.jp/music/electronic_pamphlets
December 14, 2016
先月から新シーズンが始まった、おなじみMETライブビューイング。第1作の「トリスタン」はいろいろな事情で残念なことに見逃してしまいましたが、第2作の「ドン・ジョヴァンニ」は堪能しました。ライブビューイングさんのメルマガに書くため、試聴盤を見せていただきましたが、とくに女性歌手3人が出色でした。 メルマガはこちらから。 http://met-live.blogspot.jp/2016/11/blog-post_19.html そして、今年から、ロイヤルオペラのライブビューイングも本格的に始動。昨シーズンから東宝東和さんが主催になり、何作か試験的に?配給していましたが、今シーズンからは、オペラ6作、バレエも同じくらいと充実のラインナップです。ネトレプコが降板し、代役のヨンチェーヴァが絶賛された第1作「ノルマ」は見逃してしまいましたが、第2作「コジ・ファン・トウッテ」は試写を見せていただくことができました。例によって?読み替えでしたが、うまくできている演出ですし、加えてセミョン・ビシュコフの指揮が素晴らしかった。幕間のインタビューで、このオペラが「ヒューマン」だと強調していましたが(今週末東響で「コジ」を振るノットもそう言っています)、すごく納得できる音楽でした。 例によってフェイスブックからの転用で恐縮ですが、かんたんな感想を貼り付けさせていただきます。 この1週間、2つのライブビューイングで2つのモーツァルト・オペラを見ました。おなじみMETライブビューイングでは、「ドン・ジョヴァンニ」。(これはMETのメルマガにも書きましたのでだいたいそれと同じ感想なのですが)キーンリサイドの手練れのドン・ジョヴァンニと、若々しい女性陣。アンナ役ゲルツマーヴァは大器!喉が強い!輝かしい美声!ネトレプコより抜けがよく、声自体は好みです。インタビューで見せた性格も明るそう。そしてツェルリーナ役のマルフィの色っぽいこと。この2人にはさまれたエルヴィーラ役のビストラムは少々きゃしゃでしたが、生真面目なエルヴィーラを演じて好感度高し。マゼット役のマシュー・ローズが、インタビューで、「最後に思い通りになるのはマゼットだけ」だと誇らしげに言っていてなるほど!でした。知的なキーンリサイドは、休憩時間のインタビューで今の世界の現状について演説!しちゃっていましたが、それも第1幕ラストの「自由万歳!」に触発されてのこと。つまりはフランス革命前夜に成立したこのオペラの斬新性に心が動かされたからのようでした。彼は前にもMETLVの「ドン・カルロ」でロドリーゴを歌った時に、やはりインタビューで、理想主義者ロドリーゴ役の素晴らしさについて語っていて、それを思い出しました。ルイージの指揮も素晴らしい。エレガントで劇的。さすがです。METLV「ドン・ジョヴァンニ」は明日まで。http://www.shochiku.co.jp/met/program/1617/ ロイヤルオペラでは「コジ・ファン・トウッテ」。試写を見せていただきましたが、これもとてもよかったです。ドイツ人グローガーの演出は、設定を現代に変え、ドン・アルフォンソはみんなを操る劇場の監督、舞台は時に劇中劇になり、また恋人を口説く男性たちの変装は、独身者が集うバーの常連という設定。歌手は若手で、正直知らないひとばかりでしたが、そろって高水準。それにもましてよかったのはセミョン・ビシュコフの指揮。人物の心にすっと入っていける自然さで、美しく柔らかく、気がついたら音楽が描く心模様に揺れている自分がいました。第2幕、グリエルモがドラベッラを陥落させる二重唱は、そのあとに来るフェッランドがフィオルディリージを陥落させる二重唱に比べて軽いと思われがちですが(私も軽いと思っていましたが)、その二重唱があれほど切なく官能的に感じられたのは初めてでした。この2人のカップルはエロスそのものだと思いました。指揮の功績じゃないかと思います。幕切れの演出は、当然ながら?めでたしめでたしではなくて4人とも混乱している、新しい恋人を追い求めたりしている、という感じ。ビシュコフが、インタビューで、「人間的」な音楽だ、物語だと語っていましたが、今週末東響で「コジ」を指揮するノットも同じことを言っていて。すごく納得しました。人間の気持ちってどちらかに割り切れない。もやもやしているところが人間的なのだな、と。やっぱり「コジ」は、そしてモーツァルトは深い。ロイヤルオペラのライブビューイング「コジ・ファン・トウッテ」は明日からです。http://tohotowa.co.jp/roh/movie/cosi_fan_tutte.html
December 8, 2016
すっかりブログを放置してしまいました。ご訪問いただいている方には、たいへん恐縮に思っています。 繰り返し書いていますように、最近はコンサートやオペラの感想などはもっぱらフェイスブックでつぶやいています。そちらの方が気楽で、また短くても投稿しやすいので。。。ブログだと、私の場合、わりときちんと書いてしまうのです。もっとさくさく書ければいいのですが、不器用で恐縮です。(よろしければ、こちらからフォローください https://www.facebook.com/hirokkina) というわけで、ついついブログをさぼってしまうのですが、フェイスブックに書いたもののなかでも、どうしてもご紹介したいものを引用します。 先月、北とぴあで観た「ドン・ジョヴァンニ」です。 日生劇場の「後宮からの逃走」が素晴らしかったことは書きましたが、この「ドン・ジョヴァンニ」も、セミステージ形式といいながら演出も秀逸で、たいへん満足度の高い公演でした。これで最高席7000円。やはり先月横浜で公演があったウィーン国立歌劇場の「フィガロの結婚」がS席67000円ですから、およそ10分の1!それはムーティの「フィガロ」は素晴らしいと思いますが、満足度がこの10倍かと言われるとどうでしょうか。 このような素晴らしい公演を、国内チームがやってくれることに快哉を叫びたいです。 以下、フェイスブックからはりつけることをお許しください。 昨夜は北とぴあの「ドン・ジョヴァンニ」へ。いやいやこれまた快演!でした。ここでは、寺神戸亮指揮、レ・ボレアードによるセミステージ形式のオペラまたはバロックものの初演などをもう20年!やっており、最近はモーツァルト=ダポンテ三部作に取り組み、今年が3つめの「ドンジョ」。セミステージなのでオケは舞台上にいるのですが、それを丸ごと生かした「音楽」をテーマにした演出(佐藤美晴)でした。ドンジョヴァンニは売れっ子のピアニスト(ピアノは舞台右の前方にずっと置いてある)、ドンナ・エルヴィーラはチェリスト(旅するチェリストのようにチェロを抱えて登場)、ツェルリーナとマゼットはパンクな?若者たち。第1幕最後の舞踏会では、ツェルリーナは他のひとたちの社交ダンス?に混じってディスコのようにノリノリで踊ります。舞踏会や晩餐会での舞台上の楽団の演奏は、オケのメンバーが立ち上がって演奏する、という具合。そしてそして、第2幕のドンジョヴァンニの「セレナード」では、なんと指揮の寺神戸さんがマンドリンを演奏!照明も実に効果的で、騎士長の「死」の場面での赤、シャンパンの歌のシーンの金色、などなど場面に合わせて変幻自在。そして最後にジョヴァンニは復活し、ピアノを弾いて全曲をしめくくる。痛快。サプライズ続出。まずは演出のアイデアに拍手です。それに触発されたこともあってか、演奏も爽快、ノリノリで、弛緩するところが全くなく、過剰にならない緊張感が快感でした。歌手がまた豪華で。一番期待していたエルヴィーラ役のロベルタ・マメリの繊細でいながら芯があり、情感豊かな表現、レポレッロ役フルヴィオ・べっティーニの芸達者ぶり、主役の与那城敬のスタイリッシュな破天荒さなどなど、みな個性豊かで素晴らしかった。レポレッロ役を老練なベッティーニに振ったのは、このシリーズの常連ということが大きいのでしょうが、個人的には、ヤーコプスが、レポレッロはジョヴァンニの父親のような存在でもあるとして、レポレッロ役をやはり年配の歌手に振り、ジョヴァンニ役を若手に振ったことが思い起こされました。これだけの公演が最高席7000円で楽しめるのはコスパ高し!ウィーンの「フィガロ」(最高席67000円)のおよそ10分の1!!!!個人的には今年の国内オペラの指折公演です。日曜日も公演がありますのでぜひ。こういう手頃かつ内容がいい公演でオペラを身近に感じて欲しい。今年はドロットニングホルムでのミンコフスキ指揮の名演、クルレンツィスの名演CDなど、自分にとってはちょつとした「ドンジョヴァンニ」イヤーになりました。モーツアルトオペラで一番スリリングな作品ですよね。無人島に持っていきたいモーツアルトオペラは「フィガロ」だけど、演出してみたいのは「ドンジョヴァンニ」!http://www.kitabunka.or.jp/kitaku_in…/…/enjoy/2016.6/03a.pdf
December 8, 2016
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