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寄付/カンパのお願いに応えていただき、心から感謝しております。これからもマスコミが無視する重要な情報を書き続けるつもりですので、よろしくお願い申し上げます。 日本の場合、新聞、雑誌、出版、放送などが避けるテーマの筆頭はアメリカの暗部に触れたものでしょう。「自由と民主主義の国」という幻影に包まれたアメリカですが、その実態は不正のはびこる不平等な国で、民主的な国々を秘密工作や軍事クーデターは倒してきました。これは隠しようのない事実ですが、「言論」を生業とする多くの人は気づかないふり、知らない振りをしています。その問題を取り上げても深く掘り下げることはしません。 また、教育で自分たちに都合の良い思考回路を庶民に植え付けようともしています。子どもの時に刷り込まれた印象を消し去ることは難しく、おとなになっても、そうしたイメージに囚われて正しい判断ができなくなるでしょう。エンターテイメントも無視できません。ハリウッドへアメリカやイスラエルの情報機関が食い込んでいることは有名です。 幻影やイメージを操って人を支配するという意味で、支配層は陰陽師に似ていると言えそうです。その呪術に打ち勝つには事実を追求するしかないでしょう。本ブログでは事実を追求し続けます。これからもよろしくお願い申し上げます。
2015.07.31
トルコが揺れている。NATOの一員で、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すための拠点を提供、IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を含む反シリア政府軍の兵站も守ってきた国だが、そうした隣国のシリアを破壊するという政策も影響して国内では経済状況が悪化し、今年6月の総選挙で与党は大きく後退した。 トルコとアル・カイダ系武装集団やIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILなどとも表記)との関係は有名で、アメリカのニューズウィーク誌でさえトルコ軍がISを支援していると報じている。 昨年10月2日にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学でISとアメリカの「同盟国」との関係に触れた。ISの「問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦だ」と述べ、その「同盟国」はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために多額の資金を供給、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISを強大化させたと後悔していたと語っている。 今年6月に行われた選挙で与党の公正発展党(AKP)は第1党を維持したものの、獲得したのは550議席のうち258議席にとどまり、憲法改正を問う国民投票を行うために必要な330議席(全体の5分の3)どころか過半数の276議席にも届かなかった。組閣もできない状況で、クルド人の武装集団とISを空爆したのも、再選挙を睨んでの宣伝だと言われている。 この空爆はISの殲滅を目指したものでなく、クルド人の部隊を叩くことにあった可能性が高い。イラク、シリア、トルコに広がるクルド人の影響力が拡大、新たな国が作られることを恐れている。レジェップ・レルドアン大統領は新オスマン帝国を築くという野望があるようで、そのためにシリアを攻撃しているのだが、予定通りには進んでいない。 トルコはNATOの一員だが、そのNATOにもシリアを攻撃する目的がある。アメリカの好戦派、つまり戦争ビジネスやネオコン/シオニストが自分たちの軍隊として使っているのがNATO。その好戦派は現在、1992年にアメリカ国防総省で作成されたDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいて動いている。何度も書いているように、これはアメリカを「唯一の超大国」と認識、潜在的なライバルを潰して覇権を確たるものにしようとしている。 このドクトリンが作られた当時、アメリカの大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はリチャード・チェイニー、そして国防次官はポール・ウォルフォウィッツが務めていた。ウォルフォウィッツはソ連が消滅した1991年、イラク、イラン、シリアを殲滅すると語っていた。作成の過程で、国防総省のONA(ネット評価室)で室長だったアンドリュー・マーシャル室長が助言している。彼は国防総省系シンクタンクのランド・コーポレーションで核戦争について研究、1973年にONAが創設されて以来、室長を務めていた。 マーシャルはソ連脅威論の発信源で、親イスラエル派。ソ連消滅後は中国脅威論を宣伝していた。このマーシャルが今年1月に退任、後任は空軍の退役大佐、ジェームズ・ベーカーが新室長に選ばれた。その翌月に国防長官が戦争に消極的なチャック・ヘーゲルから好戦的なアシュトン・カーターへ交代、5月には次の統合参謀本部議長としてバラク・オバマ大統領は海兵隊のジョセフ・ダンフォード大将を指名した。マーシャルの退任をふたりの好戦派を据えることで埋め合わせているように見えるが、それでも「ヨーダ」と世慣れていたマーシャルの退任はアメリカの政策に影響を及ぼしている可能性がある。 例えば、昨年の終わりからイランの核開発問題に関する協議が進展、7月にP5+1(国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツ)は最終合意に達している。イランが大幅に譲歩した内容で、アメリカはイランを取り込むつもりだともされているが、世界的に信頼を失っているアメリカへイランがすり寄る可能性は小さい。こうしたアメリカ政府の動きをイスラエルやネオコンは激しく非難、アメリカのカーター国防長官は同国に対する軍事攻撃は排除されていないと語っている。 その間、5月12日にジョン・ケリー国務長官はロシアを訪問する途中でキエフに立ち寄り、ペトロ・ポロシェンコ大統領と会い、クリミアやドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)の奪還を目指す作戦を実行してはならないと言明したとされている。 その直後、5月14日から16日にかけてビクトリア・ヌランド国務次官補もキエフを訪問してポロシェンコ大統領のほか、アルセニー・ヤツェニュク首相、アルセン・アバコフ内務相、ボロディミール・グロイスマン最高会議議長らと会談、アメリカはウクライナの政府、主権、領土の統合を完全に確固として支持すると語っている。つまり、ケリー長官の発言を無視しろというわけだ。 ホワイトハウスの内部で政策の対立が生じているわけだが、こうした現象は西側全体で見られる。その象徴的な出来事がフランスの国会議員10名のクリミア訪問。イタリアでも同じような動きがあるようで、鳩山由紀夫元首相はその先鞭をつけた形だ。 こうした流れはトルコへも影響を及ぼしているだろう。 2011年3月にシリアで体制転覆プロジェクトが始動した直後から、アメリカ/NATOはトルコにある米空軍インシルリク基地で反政府軍を編成、訓練している。その教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員。それ以降、現在に至るまでトルコは反シリア政府軍の拠点であり、ISへの兵站線はトルコ軍が守ってきた。 イラクの首相だった当時、ヌーリ・アル・マリキはペルシャ湾岸産油国がISを支援していると批判していたが、ドイツのメディアDWも昨年11月、トルコからシリアへ食糧、衣類、武器、戦闘員などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はISだと見られていると伝えている。 昨年10月19日に「自動車事故」で死亡したイランのテレビ局、プレスTVの記者、セレナ・シムはその直前、トルコからシリアへ戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGOのトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。この事実をつかんだ後、MIT(トルコの情報機関)からスパイ扱いされていたこともあり、事故にトルコの政府機関が何らか形で関係していると疑う人もいる。 ISの司令部ではMITのエージェントふたりが指揮していると見られているほか、旧ソ連圏からも入っているという。タジキスタン内務省特殊任務民警支隊のグルムロド・ハリモフ司令官がISに加わったことが今年5月に判明した。5月27日にハリモフ司令官のメッセージ動画がインターネット上に投稿され、仲間数人と一緒にISへ参加したことを認めている。 また、ISが密輸している石油はエルドアン大統領の息子が所有するBMZ社が扱い、ISの負傷兵はMITが治療に協力していると伝えられている。秘密裏に治療が行われている病院はエルドアン大統領の娘が監督しているようだ。負傷兵の治療はイスラエルも行っている。こうしたISとの関係だけでなく、トルコとロシアとの天然ガスをめぐるプロジェクトもオバマ大統領は怒っている。トルコ政府は新オスマン帝国を夢見、シリア攻撃に熱中しているが、アメリカはロシアを意識している。 エルドアンやアメリカの好戦派はシリアの北部に飛行禁止空域を設定しようとしているが、言うまでもなく、そのターゲットが航空機を持たないISのはずはない。シリアがISの兵站や戦闘部隊を空から叩けないようにすることが目的だと考えるのが自然。ISが押されている現状を打開したいのだろう。NATOを軍事介入させようとも目論んでいるはずだ。 ただ、そうした強硬策を実現できるかどうかは微妙。ロシアや中国の存在もあるが、ロシアとの核戦争も厭わないネオコンは西側支配層でも孤立しつつある。カネと恫喝で離反を押さえているのだろうが、限界にきている。「新たな真珠湾攻撃」を実行して強行突破するという可能性もあるが、簡単ではない。支配的な立場にいながら、この期に及んでネオコンに心の底から忠誠を誓っている、つまり思考力がないのは安倍晋三政権の周辺くらいだろう。
2015.07.31
アメリカで1987年に終身刑を言い渡されたイスラエルのスパイ、ジョナサン・ポラードが恩赦で釈放されるという話が流れている。ポラードはNISC(海軍情報支援センター)の分析官だった人物で、ATAC(反テロリズム警報センター)」へ配属された1984年から自身のコンピューターを使ってアメリカの情報機関のシステムに侵入して機密情報を盗み、イスラエルへ渡していた。それらの大半がソ連へ売られたようだ。 ポラードを動かしていたのはイスラエルの情報機関、科学情報連絡局(LAKAM)のラファエル・エイタン局長(ラファエル・エイタン中将とは同姓同名の別人)。イスラエル軍情報局ERD(対外関係部)に所属した経験があり、イツハーク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたこともあるアリ・ベンメナシェによると、ポラードに盗むべき情報をアドバイスしていたアメリカ人のひとりはロバート・マクファーレン(1983年から85年にかけて国家安全保障問題担当補佐官)だったという。勿論、この証言をマクファーレン側は否定している。 マクファーレンとエイタンとの電話を盗聴した人物もいる。後に国防長官を務めるロバート・ゲーツだ。彼のグループはオリバー・ノース中佐の秘書の母親を抱き込み、ふたりの電話を盗聴したのだ。ノースの秘書だったフォウン・ホールはマクファーレンの秘書を務めていたウィルマ・ホールの娘だった。イスラエルのスパイだという証拠をつかまれたマクファーレンは1985年末にNSC(国家安全保障会議)を辞めている。 現在、ネオコン/イスラエル第一派はアメリカ議会やメディアに圧倒的な影響力を持っているが、こうした状況になったのは1990年代以降のことだ。実際、ゲーツは1980年代にネオコンと対立していた。 イスラエルは世界を恫喝する手段として核兵器を使っているが、この「大量破壊兵器」を手に入れる過程でさまざまな西側の協力があった。開発資金をエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルド(祖父のエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドは1882年にユダヤ教徒のパレスチナ入植を支援するために資金を提供)をはじめとする富豪が提供、1960年3月には西ドイツのコンラッド・アデナウアー首相がニューヨークでダビッド・ベングリオン首相と会談、核兵器開発のために1961年から10年間に合計5億マルク(後に20億マルク以上)を融資することを決め、1960年代にイギリスは核兵器用のプルトニウムをイスラエルへ秘密裏に供給していた。 これに対し、1961年にアメリカ大統領となったジョン・F・ケネディはイスラエルの核兵器開発に対し、厳しい姿勢で臨んでいる。同国のダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙をケネディ大統領は送りつけ、核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告しているのだ。 そのケネディは1963年11月22年に暗殺され、副大統領から昇格したリンドン・ジョンソンは議員時代、親イスラエル派の中心的な存在だった。ケネディがジョンソンを選んだのは選挙の勝敗を決すると見られていたテキサス州向けの対策だった。ジョンソンは軍需産業ともつながっている。 ジョンソン政権下、1967年6月にイスラエルがエジプトとシリアを奇襲攻撃している。第三次中東戦争だが、この際、アメリカが派遣した情報収集船のリバティが公海上でイスラエル軍の攻撃を受ける。沈没はかろうじて免れたものの、乗組員34名が殺され、171名が負傷した。 ジョンソン政権はイスラエルに対し、エジプトを攻撃しても良いと許可したが、シリアも攻撃するのではないかと懸念、リバティを派遣したと言われている。シリアをイスラエルが攻撃した場合、ソ連軍が出てくる可能性があり、そうなることを恐れたという。ゴラン高原の占領を狙うイスラエルにしてみるとリバティ号は邪魔な存在で、始末しようとしたと見られている。 イスラエル軍は偵察飛行を繰り返した後、まず船の通信装置を破壊したが、リバティは何とか至急電を送ることに成功、15分以内に第6艦隊の空母サラトガは4基のA1スカイホークを離陸させた。そばには空母アメリカもいたのだが、この艦長は戦闘機を発進させようとせず、ロバート・マクナマラ国防長官は離陸した戦闘機に帰還を命じている。結局、ホワイトハウスが戦闘機を救援に差し向けることを決断したのは至急電を受けてから1時間ほど後のことだった。 アメリカ政府は攻撃を受けている自国船を助けることに躊躇している。その後、この攻撃をアメリカ支配層は封印し、この時の交信を記録した大量のテープをNSAは破棄したという。戦後、アメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連を核攻撃しようとしていたが、この時、リバティをソ連軍が攻撃したとしてソ連と戦争を始めようとしていたグループがいたとしても不思議ではない。
2015.07.29
アメリカ軍が自国のために戦っていると考えてはならない。2003年3月にアメリカ軍はイギリス軍などを引き連れてイラクを先制攻撃しているが、アメリカの利益を考えたならば、この開戦は間違っていた。これは結果論ではなく、開戦の前から指摘されていたことで、だからこそ開戦が約1年間、延期されたのである。 ヨーロッパ連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を経験したウェズリー・クラークによると、ソ連が消滅した1991年にネオコン/シオニストのポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラク、シリア、イランを殲滅すると語り、2001年のうちにドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺ではイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンに対する攻撃を決定、統合参謀本部へ伝えられていた。2002年に攻撃しなかったのは、いわゆる制服組が抵抗したからだ。 ラムズフェルド長官のプランに反対していた将軍(退役を含む)には、例えば、エリック・シンセキ大将(2003年退役)、グレゴリー・ニューボルド中将(2002年退役)、アンソニー・ジニ大将(2000年退役)、ウェズリー・クラーク大将(2000年退役)、ポール・イートン少将(2006年退役)、ジョン・バチステ少将(2005年退役)、チャールズ・スワナック少将(2004年退役)、ポール・バン・リパー中将(1997年退役)、ジョン・リッグス中将(2004年退役)が含まれている。 2002年にはイラク攻撃を想定した図上演習「ミレニアム・チャレンジ2002」が実施されているが、その演習で赤チーム(イラク軍)の司令官に選ばれたのがリッパー中将。赤チームは通信にオートバイを使い、モスクから流れる暗号化されたメッセージで攻撃の準備をさせて16隻のアメリカ艦船を沈めてしまう。慌てたのはJFCOM(アメリカ統合戦力軍)のウィリアム・カーナン司令官で、沈没船を浮上させて青チームを勝利させるように誘導したとされている。 日本では短期間でアメリカ側が勝利、精密誘導爆弾で市民の犠牲はほとんどないように宣伝されていたが、情報を整理すれば大量破壊兵器の話が嘘だと考えざるをえず、統合参謀本部でもそう判断していたはず。しかも戦闘が泥沼化して犠牲者は増え、戦費が膨らむことは目に見えていた。 フランクリン・ルーズベルトが大統領に就任した直後、JPモルガンを中心とする巨大資本がファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画していた。この計画を議会で暴いたスメドリー・バトラー少将は33年余りの軍隊生活について、巨大ビジネス、ウォール街、銀行のための高級用心棒だと表現している。国のためにではなく、巨大資本のカネ儲けを助けるために戦ったと言っているのだ。こうした仕組みは当時より強くなっている。 イラク攻撃に関してはイスラエル/ネオコンの戦略を無視することはできない。1980年代、ロナルド・レーガン政権ではイラクのサダム・フセイン体制をどうするかで2派が揉めていた。ネオコンはフセインを排除すべきだと主張、ジョージ・H・W・ブッシュやロバート・ゲーツたちのグループと対立したのだ。イラクへの武器輸出、いわゆるイラクゲート事件が表面化した理由はこの対立にある。 アメリカ軍は今でも巨大資本やイスラエル/ネオコンのために戦わされ、0.01%と言われる富豪が肥え太る一方で庶民は疲弊、アメリカという国は衰退している。そのアメリカを支えるため、集団的自衛権で日本を軍事的な補完物として使い、TPPで巨大資本が直接統治する体制を築こうとしている。日本やアメリカという国の単位で物事を理解しようとすると見えないだろうが、支配者と被支配者、ふたつの階級の戦争は最終局面に入っている。
2015.07.29
集団的自衛権が認められた場合、その歯止めはない。日本国内では公的な情報を官僚機構が独占しているわけで、庶民にはチェックのしようがなく、権力の奴隷になっているマスコミには事実を追及しようという意思は感じられない。これまでと同じように、支配層にとって都合の良い情報を流すだけだろう。「安全保障関連法案」に批判的な風を装っているマスコミもアメリカが自国軍だけでなく「テロリスト」やネオ・ナチを使い、侵略を繰り返している事実には触れたがらない。 世界的に米英支配層による情報支配が問題になったのは1970年代の前半であり、80年代に入ると膨大な量の情報を保存し、分析するシステムの開発が注目されていた。さらに、アメリカやイスラエルの情報機関がダミー会社を利用してトラップ・ドア付きのシステムを世界中で売りまくっていることも問題になっていた。 その中でアメリカ司法省が民間企業のINSLAWが開発したシステムPROMISを横領したという話が浮上、1988年には破産裁判所が、89年にはワシントンDCの連邦地裁がそれぞれ横領を認める判決を出している。1992年には下院の司法委員会も同じ趣旨の報告書を公表している。 その後、1997年には最高裁が司法省の言い分を認める判決を言い渡しているが、その根拠になったのはイラン・コントラ事件で偽証して有罪になったロバート・マクファーレンや証券詐欺や銀行詐欺などでロサンゼルスの連邦地裁で有罪の評決を受けるアール・ブライアンの証言。こうした「信頼できる証人」の話だけを最高裁は採用したわけだ。 警察による盗聴にしろ、「住民基本台帳」や「マイナンバー制度」にしろ、こうしたアメリカ支配層の意思が日本にも波及しているだけの話。日本はアメリカの属国だということを認識し、アメリカの動向に敏感でなければならないのだが、日本の場合、記者、編集者、学者、政治家、活動家といった類いの人びとの多くは支配層による情報支配の問題に関心を示さなかた。外部の団体に出向していたときは興味をもっていた人物も新聞社に戻ると急に興味を失ったようだ。これは1990年代半ばの話。 しかし、支配層は違う。例えば、法務総合研究所はPROMISに注目、その概説資料と研究報告の翻訳を1979年と80年に『研究部資料』として公表している。このシステムの調査でINSLAWに接触していたのは敷田稔(後に名古屋高検検事長)、そのときに原田明夫(後の検事総長)が駐米日本大使館の一等書記官だった。原田は法務省刑事局長時代、『組織的犯罪対策法(盗聴法)』の法制化を進めた。 アメリカが憲法の機能を停止させるCOGプロジェクトを始めたのは1980年代の前半で、それが愛国者法として始動したのは2001年。20年近い準備期間があったのだが、その間、このプロジェクトの存在は漏れていた。 例えば、1987年に開かれた「イラン・コントラ事件」の公聴会において、ジャック・ブルックス下院議員が「NSCで、一時期、大災害時に政府を継続させる計画に関係した仕事を担当したことはありませんか?」とオリバー・ノース中佐に質問したのだが、これはCOGプロジェクトを指していた。 ノースに付き添っていた弁護士のブレンダン・サリバンは動揺、委員長のダニエル・イノウエ上院議員は「高度の秘密性」を理由にして質問を遮っている。ブルックス議員はマイアミ・ヘラルド紙などが伝えていると反論し、緊急時に政府を継続する計画が練られていて、それはアメリカ憲法を停止させる内容を含んでいると説明したが、質問は禁じられた。 日本のマスコミもワシントンDCへ特派員を送り込んでいるはずで、これだけ注目された遣り取りに関する取材をするのは当然だろう。マイアミ・ヘラルド紙に目を通している日本人記者はひとりもいなかったのだろうか? アメリカで憲法の機能を停止させた以上、日本で憲法を守る義務はないと考える政治家や官僚が出て来ても不思議ではない。1982年にエール大学、シカゴ大学、ハーバード大学の法学部に所属する「保守的な」学生や法律家によって創設された「フェデラリスト・ソサエティー」は議会に宣戦布告の権限があるとする憲法や1973年の戦争権限法はアナクロニズムだと主張、プライバシー権などを制限、拡大してきた市民権を元に戻し、企業に対する政府の規制を緩和させることを目指していた。2001年に始まったジョージ・W・ブッシュ政権では、この団体が司法を支配している。新自由主義の司法版とも言えそうだ。 日本でも2001年には新しい内閣がスタートしている。小泉純一郎を首相とする政府だが、その背後にアメリカの巨大資本が存在していたことは間違いないだろう。新自由主義に基づく政策で日本の社会を破壊、自民党も絞め殺されてしまった。その小泉政権を日本のマスコミは支えていた。集団的自衛権が認められたなら、マスコミが侵略戦争を止めることはないだろう。 アメリカで民主主義を葬り去るためにCOGプロジェクトが始められてから30年以上が経過している。その間、日本のマスコミはアメリカがファシズム化するのを傍観、それに追随する日本の支配層に手を貸してきたのだ。マスコミに情報を依存している限り、破滅への道から抜け出すことはできない。
2015.07.28
現在、シリアではIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)が苦境にある。本ブログでは何度も書いてきたが、ISを含む反シリア政府軍はトルコに拠点を持ち、NATO諸国、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルから支援を受けてきた。名称は変化し、「過激派」と「穏健派」が存在しているかのように西側では宣伝されているが、実態はシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒そうとしているNATO諸国、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルが使っている手駒。つまり、タグが付け替えられているだけで、中身は基本的に変化していない。そうした事実を西側の有力メディア、特に日本のマスコミは見て見ぬ振り、知らん振り。もし本当に見えていないなら、「情報」を扱う仕事から足を洗うべきだ。 1980年代にアメリカが開始した「プロジェクト・デモクラシー」は「民主化」を口実にして他国を侵略する作戦。アメリカの巨大資本にとって都合の悪い国家、体制を倒すため、「民主化」という標語を使おうというものだ。「民主主義」や「人道」を世界に押しつけようとしているわけではない。 1983年1月にロナルド・レーガン大統領はNSDD77に署名し、このプロジェクトの中枢機関としてSPG(特別計画グループ)をNSC(国家安全保障会議)に設置した。このプロジェクトで工作資金を供給するパイプ役を果たしているのが、1983年11月に設立されたNED(国家民主主義基金)。その先にはCIA系のNGOが存在している。 1990年になると、アメリカの宣伝戦に広告会社が参入してくる。1990円8月にイラク軍がクウェートへ軍事侵攻するが、その際、アメリカ下院の人権会議でイラク軍の残虐性を涙ながらに語った少女「ナイラ」は駐米クウェート大使の娘で、現場にはいなかった。アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置、赤ん坊は死亡したという話は真っ赤の嘘だった。この「証言」を演出したのがPR会社のヒル・アンド・ノールトンだ。 1990年代にはユーゴスラビアが西側に解体されていく。その際、セルビア人を悪魔化するための宣伝を請け負ったPR会社はルダー・フィン・グローバル・コミュニケーション。1991年にクロアチア政府がこの会社と契約、「人権擁護団体」も宣伝に協力した。 1992年8月にはボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたとニューズデーのロイ・ガットマンは報道したが、別のジャーナリスト、アレクサンドラ・スティグルマイアーやマーティン・レットマイアーらは現場とされた場所を取材し、事実でないことを確認している。 ちなみにガットマンはドイツのボン支局長。クロアチアの与党、HDZ(クロアチア民主団)の副党首を務め、プロパガンダ組織CIC(クロアチア情報センター)の幹部でもあったヤドランカ・シゲリから聞いた話を垂れ流しただけだった。この「功績」でガットマンには1993年、ピューリッツァー賞が贈られている。嘘が確認されたあともシゲリは人権問題のヒロインとして扱われ、1996年にはヒューマン・ライツ・ウォッチは彼女を主役にした映画を発表した。なお、ICRC(赤十字国際委員会)によると、戦争では全ての勢力が「不適切な行為」を行っているが、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はない。「死の収容所」の嘘も本ブログで伝えたとおりだ。 1998年になるとマデリーン・オルブライト国務長官がユーゴスラビア空爆の支持を表明し、1999年にNATO軍はユーゴスラビアに対する全面攻撃を開始、スロボダン・ミロシェビッチの自宅だけでなく、中国大使館も爆撃されている。 その後もイラク攻撃の際には「大量破壊兵器」という大嘘をつき、リビアやシリアの民主化運動弾圧も正しくなかった。その後の戦乱はNATO諸国、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルによる侵略にほかならない。リビアでは、その手先としてアル・カイダ系のLIFGが主力で、ムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたとする映像がインターネット上にアップロードされ、この事実をデイリー・メイルなど西側メディアも伝えている。 その後、アル・カイダ系戦闘員は武器と一緒にシリアへ移動したが、その際、NATOが輸送したとも伝えられている。マークを消したNATOの軍用機がシリアとの国境に近いトルコの軍事基地へ武器と戦闘員を運んだというのだ。そのシリアでもアサド政権を悪魔化するため、西側メディアは偽情報を流し続け、その嘘が次々と発覚してきた。ウクライナでも同じことをしている。 日本の同盟相手だというアメリカは平然と嘘をついて侵略、破壊、殺戮を繰り返してきた。世界の軍事的な緊張を高め、全面核戦争の危機を強めているのはアメリカにほかならず、地上の生物にとって最大の脅威になっている。そのアメリカを民主的で人道的な国だと今でも言い張っているのがマスコミ、政治家、官僚、学者といった類いの人びと。安倍晋三政権がマスコミを威圧し、言論が危機に瀕しているなどと言う前にすることがあるだろう。言論が危機に瀕している、むのたけじの表現を借りると「くたばった」原因は「強権の奴隷」になったマスコミ側にある。
2015.07.27
TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)は「国境なき巨大資本」が国を支配する専制的な体制を作り上げる協定であり、その体制を全世界へ広げるため、その巨大資本は一種のカルト集団であるネオコン/シオニストと手を組み、軍事的な緊張を高めてきた。現在、巨大資本が広めようとしているのは原始的な資本主義で、一般に新自由主義と呼ばれ、フリードリッヒ・ハイエクやミルトン・フリードマンの「理論」に基づいている。この新自由主義は暴力と親和性が強い。 1929年に株式相場が暴落した後、1930年代にハイエクは私的な投資を推進するべきだと主張し、政府が介入すべきだとするジョン・メイナード・ケインズと衝突した過去がある。ハイエクに学んだ学生の中にはデイビッド・ロックフェラーも含まれていた。 1918年に第一次世界大戦が終わった後、アメリカは不景気になり、戦場から兵士が帰還してきたこともあって街は失業者で溢れ、ストライキやデモが続発した。1917年11月にロシアで「十月革命」(資本家/イギリスが主導権を握った「二月革命」とは区別する必要がある)が成功してボルシェビキ政権が誕生、アメリカの富豪/資本家は危機感を強めた。 そうした中、1919年にマサチューセッツ州で現金輸送車の襲撃未遂事件があり、その容疑者としてアナーキストのニコラ・サッコとバルトロメオ・バンゼッティが逮捕されるが、これは労働運動にダメージを与えるために行われたもので、ふたりは冤罪だと信じられている。この時期、社会主義者は一斉に検挙されていた。 その裏では富豪たちが紙幣を印刷する権利を手にしようと画策している。1910年11月22日に巨大金融機関の代表がジキル島クラブで秘密会議を開いたのが始まりで、13年12月23日に連邦準備法が成立、銀行家が紙幣を支配する連邦準備制度ができあがった。 ケインズの理論を取り入れ、大企業の活動を規制、労働者の権利を認めたフランクリン・ルーズベルト大統領の政策を富豪/巨大資本は第2次世界大戦後、壊しにかかる。この富豪たちは1933年から34年にかけてルーズベルトを排除し、ファシズム政権を樹立させるためにクーデターを計画していた。これはスメドリー・バトラー海兵隊少将の議会証言で明らかにされている。 そうした流れの中、1970年代半ばに宣伝されたのが新自由主義。1974年にハイエクが、76年にフリードマンがそれぞれノーベル経済学賞を受賞している。西側の支配層が「強者総取り」の新自由主義を推進すると宣言したように見える。 この新自由主義が初めて実際の政策に使われたのはチリ。1973年9月11日にCIAを後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトの軍事クーデターが成功、民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ大統領はクーデターで死亡し、後に設置される「チリ真実と和解委員会」によると、軍事政権の時代に殺されたり「行方不明」になった人は少なくとも2025名、一説によると約2万人が虐殺され、新自由主義の導入に反対するであろう勢力は壊滅状態になる。ピノチェトは議会を閉鎖、憲法の機能を停止、政党や労働組合を禁止、メディアを厳しく規制する。 その一方、フリードマンの経済政策を採用、大企業/富裕層を優遇する政策を実施している。社会や福祉の基盤を私有化し、労働組合が弱く、低インフレーションで、私的な年金基金の、低賃金で輸出型の小さな国を目指した。1979年には健康管理から年金、教育まで、全てを私有化しようと試みている。その政策を実行したのはフリードマンの弟子たち、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」だ。 ハイエクと親しかったイギリスのマーガレット・サッチャーも新自由主義を導入、西側世界からロシアや中国へも広がっていく。支配層にとって有利な政策だということもあり、その伝染力は強かった。 新自由主義の広まりに合わせたかのように、オフショア市場/タックス・ヘイブンはロンドンのシティを中心に張り巡らされている。そのネットワークはかつての大英帝国が中心。それに対抗してアメリカは1981年にIBF(インターナショナル・バンキング・ファシリティー)を開設、日本では1986年にJOM(ジャパン・オフショア市場)をオープンさせた。 現在、西側では巨大資本という「私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化」し、民主主義は瀕死の状態。フランクリン・ルーズベルトの定義によると、西側はファシズム化しつつある。 ちなみに、アメリカの独立宣言によると、すべての人間は平等につくられ、生存,自由そして幸福の追求を含む、侵すべからざる権利を持っている。政府がそうした権利を確実なものにしようとせず、相反することを始めた場合、また人民を絶対専制のもとに帰せしめようとする企図が明らかな場合、そのような政府をなげうち、自らの将来の安全を守る新たな備えをすることは人民にとっての権利だというだけでなく、義務。こうした覚悟がなければ、民主主義を守ることはできないのだろう。
2015.07.27
現在、西側の支配層は3つの協定、つまりTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)に関する協議を同時に、秘密裏に進めている。巨大資本間での対立はあるだろうが、「国境なき巨大資本」が国を支配、庶民から搾り取る仕組みを作っているということは間違いない。 TPPとTTIPで最大の問題とされているのはISDS(投資家対国家の紛争解決)条項で、アメリカの巨大企業が「将来に期待された利益」を企業が実現できなかった場合、各国政府に対して賠償を請求できるようにする仕組み。つまり、企業活動や金融システムに対する規制、食糧の安全、環境汚染の防止、労働者の権利保護などを各国の政府や議会で決定しても、巨大資本が気に入らなければ損害賠償の対象になり、その決定は巨大資本とつながっている法律家が下す。協定参加国の政府、議会、裁判所は手足を縛られるわけで、例えば、安倍晋三政権の政策を選挙で覆すということは困難になる。 TiSAは金融,電気通信,流通,運送,建設,教育,観光などが対象になるとされているが、大きな問題のひとつは、公共性の高いサービスの私有化。医療、福祉、水道、教育など人の生きる権利と深く結びついている分野を強欲な巨大資本が支配した場合、庶民はその権利を奪われることになる。 社会を維持するためには必要だが、儲からないという仕事もある。日本を共同体と考えるなら、いわゆる僻地に住む人にも交通や通信の手段を提供しなければならないが、ビジネスと考えれば違ってくる。生物である人間は生きる上で安全な食糧、そして水が絶対に必要だが、それをカネ儲けの対象だと考えれば、命に関わる問題が生じる。ロマン・ポランスキーが監督した映画「チャイナタウン」(1974年公開)でもロサンゼルスで起こった事件の背景として私的に所有された水道の問題が描かれていた。 かつてなら一揆や革命という形で体制を揺さぶることになっただろうが、そうした事態を押さえ込むため、洗脳、監視、反乱鎮圧といったシステムを支配層は強化、対策を講じてきた。1998年には欧州議会が「政治的管理技術の評価」というタイトルの報告書を出し、そうした問題を分析している。その中で、監視のターゲットは反体制派や人権擁護の活動家、ジャーナリスト、学生指導者、少数派、労働運動指導者、政敵が中心になるとしていたが、その通りだ。(Steve Wright, "An appraisal of technologies for political control," Europearn Parliament, 19 January 1998) TPP/TTIP/TiSAといった協定は国と国との関係を決めるものではなく、巨大資本や富裕層が圧倒的多数を占める庶民を支配する仕組みを作り上げるもの。アメリカで問題になるのも当然で、協定の内容を国民へ示すべきだとする文書をふたりの上院議員、シェロード・ブラウンとエリザベス・ウォーレンがバラク・オバマ大統領へ突きつけている。 両議員によると、アメリカ政府が設置しているTPPに関する28の諮問委員会には566名の委員がいるが、そのうち480名、つまり85%が大手企業の重役か業界のロビイスト。交渉をしているのは大手企業の「元重役」。当然、交渉には業界や大手企業の意向が反映される。委員会の構成自体がTPPの本質を示している。勿論、TTIPやTiSAでも同じことが言える。 こうした仕組みを世界全体へ広めるため、巨大資本はアメリカの軍隊や情報機関を使ってきた。NATOはアメリカが西ヨーロッパを支配する役割を持つ組織であり、日米安保にも日本を支配する仕組みという側面がある。安倍晋三政権が推進している集団的自衛権/安全保障関連法案は自衛隊をアメリカ軍、つまりアメリカの巨大資本の手先として使うためのもの。こうした巨大資本に従わないBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やSCO(上海協力機構/中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)などの国々と戦う手駒のひとつにするということだ。勿論、日本が担当させられるのは中国。 ソ連が消滅した1991年当時、アメリカの国防総省はネオコン/シオニストが主導権を握っていた。国防長官はリチャード・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツだ。そのウォルフォウィッツを中心とするグループが1992年に作成したDPGの草案(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)。 このドクトリンではアメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、潜在的ライバル、つまり西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアを潰すという方針を示している。ウォルフォウィッツは1991年にシリア、イラン、イラクを殲滅すると話していたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は話している。 ソ連という国が消滅、いくつかの国々に解体されたが、その中心的な国はロシア。そのロシアで大統領を務めたボリス・エリツィンは西側の傀儡で、その娘は西側資本とも手を組んでロシアの富を略奪、巨万の富を築いている。ロシアはアメリカの属国になり、ネオコンは重点地域を東アジアへ移したのだが、このシナリオを狂わせたのがロシアのウラジミル・プーチン。エリツィンを排除し、ロシアを再独立化させ、今では中国との連携を強めてアメリカに対抗している。 1970年代からアメリカは金融化を推進、国内の生産活動を衰退させてきた。替わって生産活動の中心になっているのがBRICSやSCO。TPP/TTIP/TiSAで巨大資本が支配する体制を作り上げても世界制覇は難しく、中国とロシアの体制を倒す必要がある。そこで軍事的な緊張を高めて圧力をかけ、アル・カイダ系武装集団、IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)、ネオ・ナチなどを使って戦争を仕掛けているわけだ。
2015.07.26
アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟やトルコが本気でIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)と戦う気があるなら空爆する必要はない。トルコから大量に運び込まれているIS向け物資の流れ、兵站ラインを断てば良いのだ。シリアとトルコの国境周辺はトルコがコントロールしているので、難しいことはない。 イランのテレビ局プレスTVの記者、セレナ・シムは昨年10月19日に「自動車事故」で死亡する直前、トルコからシリアへ戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGOのトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。この事実をつかんだ後、MIT(トルコの情報機関)からスパイ扱いされていたこともあり、事故にトルコの政府機関が何らか形で関係していると疑う人もいる。 ISを支える物資がトルコから運び込まれていることは西側のメディアでさえ伝えている事実。ドイツのメディアDWは昨年11月、トルコからシリアへ武器や戦闘員だけでなく、食糧や衣類などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はISだと信じる人が多いとしている。 ISが物資や戦闘員をシリア領内へ運び込むポイントだと西側でもされているタル・アビヤドはトルコとシリアの国境からわずかにシリアへ入った場所にあり、物資や戦闘員はトルコから入っていると考えるのが自然だ。そのトルコにある米空軍インシルリク基地は反シリア政府軍の重要な拠点で、戦闘員に対する軍事訓練も実施されてきた。教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員だ。 ここにきてアメリカとトルコはシリア領内に飛行禁止空域を設定するという話が伝わっている。昨年3月23日にトルコ軍のF-16戦闘機がシリア軍のミグ23を撃墜しているが、撃墜場所などから判断して、シリア軍機がISの兵站を叩こうとしたからだった可能性が高い。ISは航空機を保有していないようなので、飛行禁止空域を設定はシリア軍機対策ということになる。 イスラエル政府にとって最も重要度が高いのはシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すこと。2013年9月に駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはアサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。ISについても同じことを言うだろう。 実際、今年1月18日にはISを追い詰めていたシリア政府軍とヒズボラの部隊をイスラエル軍が攻撃、イラン革命防衛隊のモハメド・アラーダディ将軍を含む幹部を殺している。イスラエルが負傷した反シリア政府軍/ISの兵士を治療しているとも伝えられている。6月6日には、ISと戦っているイラク軍の基地をアメリカ軍が爆撃したという。 イランの支援を受けたシリア軍はISとの戦闘で優位にあるようで、イスラエルやアメリカが空爆した理由もそこにあるだろう。アメリカがISを空爆したとするなら、証拠の隠滅や口封じの可能性もある。戦闘員を中央アジアやウクライナへ移動させてISの戦力が落ちているのかもしれない。アメリカの好戦派はシリア軍を攻撃する準備を進めているだろうが、そうなるとロシアと対決するという状況が再び生まれる。これはネオコン/シオニストが望んでいることだ。
2015.07.25
ギリシャのアレクシス・チプラス政権は国防大臣をイスラエルへ派遣、軍事訓練など同国との軍事的な連携を強める内容の協定に署名した。パレスチナ人に対する弾圧にくみするということだ。同じような協定をイスラエルが結んでいる相手はアメリカだけだというが、イスラエルがグルジアと軍事的な関係を強め、南オセチアへの奇襲攻撃につながったことも連想させる。 イスラエルはガザやヨルダン川東岸を収容所化、兵糧攻めにするだけでなく、軍隊を投入して破壊と殺戮を繰り返し、それに対する反撃を「テロ」と呼んでさらなる破壊と殺戮の口実にしている。こうしたアメリカとイスラエルの理不尽な行為に対し、各国政府、あるいは国際連合が厳しく対応したということはないが、庶民レベルでは怒りが広がっている。 2010年には支援物資を運ぶために船団がガザへ向かったが、途中、公海上で支援船の「マビ・マルマラ」をイスラエル海軍の特殊部隊「シャエテット13」が襲撃、支援船の9名が殺害されている。その船団の中にチプラス政権の与党、シリザ(急進左翼進歩連合)のメンバーが乗っていたとイスラエル政府は非難していた。勿論、この襲撃は違法行為であり、非難されるべきなのはイスラエル。そうしたことを考えると、チプラス政権がイスラエルとの軍事的な連携を決断した意味は重く、政権内部で粛清が始まる可能性がある。 前にも書いたように、ギリシャが財政危機に陥った大きな理由はナチスに率いられたドイツの軍事侵攻による破壊と略奪で疲弊とアメリカの巨大銀行、ゴールドマン・サックスによる不正なビジネス。 2001年、ギリシャが通貨をユーロに切り替えた際にゴールドマン・サックスは財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませて事態を悪化させたのである。2002年から05年にかけて同行の副会長だったマリオ・ドラギは現在、ECB(欧州中央銀行)の総裁の総裁として借金の取り立てに忙しい。 借金の取り立てはECBのほか、IMF(国際通貨基金)やEC(欧州委員会)も参加、この3組織はトロイカと呼ばれている。そのトロイカのギリシャに対する要求を批判しているひとりがドミニク・ストロス-カーン前IMF専務理事。2011年5月、アメリカ滞在中に逮捕、起訴されたが、取り下げられた。後任はクリスティーヌ・ラガルド。ドラギと一緒にギリシャで借金の取り立てをしている。 ストロス-カーンの事件は当初から怪しげな話だと言われていたが、冤罪だった可能性が高い。彼はフランス社会党の政治家で、有力な次期大統領候補だとも言われていた。逮捕される前の月にストロス-カーンはブルッキングス研究所で演説、その中で失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言していた。進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だともしている。新自由主義批判、つまりアメリカの金融資本批判だ。 7月23日から24日にかけてクリミアを訪れたフランスの議員は国民運動連合(共和党)のメンバーだったが、この政党は2002年にジャック・シラク大統領の与党として組織され、アメリカがイギリスを引き連れて行ったイラクへの先制攻撃、つまり軍事侵略を批判していた。シラクは大統領を退任した直後、2007年からスキャンダル攻勢にあう。職員架空雇用の容疑で起訴され、2011年に執行猶予付きながら禁固2年が言い渡されている。クリミア訪問団を率いたティエリー・マリアニは自立した政治家としてシラクを高く評価している。 社会党のストロス-カーンと国民運動連合のシラクに共通していることは、アメリカの支配層が推進している政策に批判的だったということだが、現在、フランスの次期大統領候補として最も人気の高い国民戦線のマリーヌ・ル・ペンもふたりと同じようにアメリカ主導の政策に反対している。ル・ペンの国民戦線はファシスト政党だと批判されることもあるが、ウクライナでアメリカ/NATOがネオ・ナチを使っていることをEUで正面から批判しているのはル・ペンくらいなものだ。 ソ連消滅を受け、1992年に国防総省で作成されたDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」はアメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、潜在的ライバルを潰すとしていた。そのターゲットにはEUも含まれ、「ロシア制裁」という名目でEUは大きなダメージを受けている。こうしたアメリカの政策に反発する声がフランスでは強いということのようだ。 政治家だけでなく、フランスの大手石油会社、トタルの会長兼CEOを務めていたクリストフ・ド・マルジェリはロシアとの関係を深め、アメリカから自立しようとしていた。2014年10月にモスクワの空港で事故死する3カ月前、石油取引をドルで決済する必要はないと言い切っていた。アメリカは基軸通貨のドルを印刷する権利だけで支配システムを維持しているわけで、ド・マルジェリの発言は刺激的だった。 アメリカ批判の声は支配層からも出ているのだが、現在、国民運動連合の党首はニコラ・サルコジ。アメリカの傀儡と見られている。彼の義母、クリスティーン・ド・ガナイが結婚したフランク・ウィズナー2世の父親は極秘の破壊活動機関、OPCの局長を務めていたフランク・ウィズナー。この人脈は「極左」を装い、イタリアで爆弾攻撃を仕掛けたほか、シャルル・ド・ゴール暗殺未遂やジョン・F・ケネディ暗殺の際にも噂が浮上している。 ウィズナー2世は1961年から国務省に勤務、後にザンビア、エジプト、フィリピン、そしてインドで大使を務め、1997年に同省を退職、情報機関と関係の深いことで有名な巨大保険会社AIGの重役に納まり、2009年に同社を辞め、パットン・ボグス法律事務所の顧問になった。この法律事務所はエジプトの軍や経済開発局などを顧客に抱え、「アラブの春」では何らかの役割を果たしたと見られている。2013年には情報会社エルゴの顧問に就任している。 フランスの大統領は現在、フランソワ・オランド。最近、この大統領はイスラエルが核兵器を保有していないと発言、嘲笑されている。イスラエルが世界有数の核弾頭保有国だということは内部告発もあり、公然の秘密。シリアやイエメンで中性子爆弾を使用した疑いも持たれている。
2015.07.25
フランスの国会議員10名がモスクワを経由し、7月23日から24日にかけてクリミアを訪れた。リーダーは国民運動連合(共和党)のティエリー・マリアニ。フランス政府から非難され、キエフ政権はクリミアを訪問した議員がウクライナへ入国することを拒否すると通告されたが、フランスの議員には自分の行動を決める自由があるとしてはねつけた。いちいち御伺いを立てるようなことはしないということだ。「ロシア制裁」で最もダメージを受けているのがEUだということもマリアニは理解している。 マリアニは2カ月前、キエフ軍から攻撃を受けてきたドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)を訪れ、その荒廃と人びとの恐怖を目の当たりにしていた。同じようにキエフのクーデター政権を拒否したクリミアだが、素早く住民投票を行い、守りやすい地形だということもあり、キエフ軍の侵入を防ぐことができた。その結果、平和な生活を送れている。ロシアがクリミアを一方的に併合したという表現は正しくない。 本ブログでは何度も指摘してきたが、ウクライナの戦乱はネオ・ナチ(ステファン/バンデラ派)を主力とするクーデターが原因。その背後にはネオコン/シオニストがいた。こうした事実を無視、防衛行動を批判するのは、「パクス・アメリカーナ」を支持していることにほかならない。 このクーデター劇は2013年11月21日に始まる。当時のウクライナ大統領は東部や南部を地盤とするビクトル・ヤヌコビッチ。アメリカの支配層が描くプランではウクライナが西側の餌食になると判断、EUへの接近にブレーキをかけるのだが、これに西側は激怒。EU幻想に取り憑かれた西部住民の反発を利用して反政府行動が始まったのだ。ユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)には約2000名の反ヤヌコビッチ大統領派が集まった。 それでもEUは話し合いで解決しようとしていたが、ヌランドはそれも許せなかった。昨年2月4日にYouTubeへアップロードされた音声を聞くと、ヌランドはジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話でウクライナの「次期閣僚人事」について話し合い、ヌランドはアルセニー・ヤツェニュクを高く評価しているが、その中で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。なお、ヤツェニュクはクーデター後、首相を務める人物だ。 2月21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印、話し合いは成功したかに見えたのだが、ここから「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」が具体化する。広場で狙撃が始まり、23日に憲法の規定を全く無視した形で大統領が解任されたのである。このクーデターを容認している人物、団体が安倍晋三政権の出してきた法案を憲法に違反していると批判するのは奇妙な話。「エセ護憲派」と言われても仕方がないだろう。 話し合いによる決着を崩壊させ、ネオ・ナチのクーデターによる政権打倒へ向かわせたのは広場で始まった狙撃。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は現地で調査のうえ、翌日にキャサリン・アシュトンEU外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ反政府側が狙撃したと強く示唆した。ほかの情報も狙撃を指揮したのはネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだとしている。パルビーは1991年に「ウクライナ社会ナショナル党」を創設、クーデター後には国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長に就任した。2014年8月に議長を辞任、9月にはヤツェニュクたちと新たな政党「人民戦線」を組織し、今では議員だ。 ヌランドの夫、ロバート・ケーガンはネオコンの大物。2000年にネオコン系シンクタンクPNACが発表した「米国防の再構築」の作成にもウォルフォウィツと同じように参加している。この報告書は1992年に国防総省の内部で作成されたDPG(国防計画指針)の草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいている。 1991年にソ連が消滅、ロシアはアメリカの属国になり、アメリカが「唯一の超大国」になったという前提でこの「米国防の再構築」は書かれ、ている。その年、1991年にポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラク、イラン、シリアを殲滅すると語っていたが、ソ連の消滅とロシアの属国化で重点地域は東アジアへ移る。「米国防の再構築」にも明記されている話だ。 ウォルフォウィッツが1991年に話していたプランに従い、2003年に米英はイラクを先制攻撃するが、フランスとドイツは反対してアメリカの支配層を怒らせた。この時にアメリカの圧力をはねつけたフランスの大統領、ジャック・シラクをティエリー・マリアニは高く評価、中東に破壊と混乱をもたらしたアメリカの政策を批判している。なお、後にシラクは刑事訴追され、2011年に執行猶予付きながら、禁固2年が言い渡されている。 シラクはシャルル・ド・ゴール派に属していた。ド・ゴールは1959年1月から69年4月までフランス大統領を務めているが、アルジェリアに対する政策などが原因で好戦的なグループから敵視され、1962年8月には命を狙われる。暗殺を計画したのは、アメリカの破壊工作人脈(当時はCIA計画局)につながるOAS(秘密軍事機構)の一部。 このOASへ資金を提供していた企業のひとつ、パーミンデックスはスイスで1958年に設立され、その当時の社長兼会長、ルイス・モーティマー・ブルームフィールドはイギリスの破壊活動機関、SOEの出身。その会社の理事だったクレイ・ショーはジョン・F・ケネディ米大統領暗殺にからみ、ジム・ギャリソン検事に起訴されている。つまり、ド・ゴール暗殺未遂とケネディ暗殺は背後でつながっている可能性が高い。 1966年にフランス軍はNATOの軍事機構から離脱、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出す。フランスがNATOの軍事機構へ一部復帰すると宣言したのは1995年のことで、完全復帰はニコラ・サルコジが大統領だった2009年だ。OASの暗殺計画を阻止する上で重要な役割を果たした情報機関(当時はSDECE)はド・ゴールが失脚するまでアメリカに対抗できたが、その後はCIAの手先になっている。
2015.07.24
P5+1(国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツ)はイランと進めてきた核開発問題に関する協議で合意に達したが、この合意にイスラエルやネオコン/シオニストは激しく批判している。イランを核攻撃で脅すべきだと2013年10月に発言したシェルドン・アデルソンも怒っていることだろう。 アデルソンはラスベガス・サンズを所有する富豪で、核攻撃発言の翌月、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の会長を務め、細田博之(当時は自民党幹事長代行)に対し、東京の台場エリアで複合リゾート施設を作るという構想の模型を披露しながらスライドを使って説明したという。その翌月、自民党などはカジノ解禁を含めた特定複合観光施設を整備するための法案を国会に提出した。日本側でカジノに前向きな企業だとされているのはフジ・メディア・ホールディングス、三井不動産、鹿島。 2014年2月に来日したアデルソンは日本へ100億ドルを投資したいと語ったという。世界第2位のカジノ市場になると期待、事務所を開設するというのだが、安倍晋三首相はすぐに反応し、その翌月には衆議院予算委員会でカジノを含む「統合型リゾート(IR)」に前向きの発言をしている。 日本には競馬、競輪、競艇、さらにグレーゾーンながらパチンコといった博奕が存在、政治家や官僚の利権になっているが、カジノは法律で禁止されている。アメリカ共和党のキングメーカーの要求でも簡単にカジノが許可されることはない。 そうした状況を理解しているのかどうか知らないが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2014年5月、日本政府高官に対してアデルソンへカジノのライセンスを速やかに出すよう求めたとイスラエルのハーレツ紙が今年2月5日付け紙面で伝えている。 アデルソンやアメリカのラス・ベガスとペンシルベニアだけでなく、東南アジアのマカオとシンガボールでもカジノを経営している。そのマカオへは中国政府の要人も訪れているようで、そうした人びとを罠にかける工作をアメリカのFBIやCIAが展開している疑いが持たれている。この話が浮上したのは、サンズ・マカオのトップだったスティーブン・ジェイコブスがサンズを不当解雇で起こした裁判を通じてだ。 ヤセル・アラファトPLO議長の後ろ盾だったサウジアラビアのファイサル国王を1975年に殺害した甥のファイサル・ビン・ムサイドはイスラエルの情報機関、モサドに操られていた。カジノで多額の借金を背負い込んだ際、近づいてきた魅力的な女性がその借金を清算してくれたのだが、ついでに麻薬漬けにされてしまった。若い女性を使ってターゲットを操るのはモサドの得意技である。イスラエルの核兵器開発を内部告発したモルデハイ・バヌヌを誘拐する際にも女性を使っている。 アメリカの支配層はターゲット国のエリートを買収したり脅迫したりしてコントロール下におくのだが、それが駄目なら暗殺するか、クーデターを起こして倒す。脅す材料集めも情報機関の役目だ。ロシアでは議員や官僚が国外で銀行口座を持つことを禁止しているようだが、それも買収対策。中国で汚職の取り締まりを強化している一因になっているかもしれない。日本の政治家や官僚で買収や脅迫に屈しない人はどの程度いるのだろうか?
2015.07.23
他国を侵略する場合、正直に侵略すると宣言する国はないだろう。相手が先に手を出した、自国民を助ける、最近では「人道的介入」をアメリカは演出、NGOも盛んに使っている。日本は「積極的平和」だ。 前回も書いたが、アメリカが「人道」を侵略の口実に使い始めたのはユーゴスラビアを先制攻撃したころ。1980年代の前半には「プロジェクト・デモクラシー」を開始、「民主化」を掲げてターゲット国を破壊していた。 そうした工作が本格化する前、ポーランドの反体制労組「連帯」が登場して「民主化」が掲げられた。1970年代にアンブロシアーノ銀行が破綻、バチカン銀行を巻き込んだ不正融資が発覚し、その資金が流れていった先に「連帯」があることが後に判明する。 この労組には資金だけでなく、当時のポーランドでは入手が困難だったファクシミリのほか、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、アメリカ側から密輸されたという。(Carl Bernstein, "The Holy Alliance", TIME, February 24 1992)「連帯」の指導者だったレフ・ワレサも自伝の中で、戒厳令布告後に「書籍・新聞の自立出版所のネットワークが一気に拡大」したと認めている。外部からの強力な支援がなければありえない話だ。 日本では理想化されて語られた「連帯」だが、CIAとの関係を隠すべき事実だとは考えていなかったようで、公然とつきあう。そのため、西ヨーロッパでは冷めた目で見られていた。 アメリカは「偽旗作戦」もよく使ってきた。バチカン銀行のスキャンダルで非公然結社のP2が明るみに出るが、この結社は「NATOの秘密部隊」、グラディオと表裏一体の関係にあったと言われている。このグラディオはイタリアの情報機関と連携しているが、その背後にはアメリカの情報機関が存在、1960年代から80年頃までの期間に「極左」を装って爆弾攻撃を繰り返していた。いわゆる「緊張戦略」だ。 歴史を振り返ると、1898年にキューバのハバナ港でアメリカの軍艦「メイン号」が爆沈した事件も「偽旗作戦」だったと疑う人は多い。アメリカはスペインが爆弾を仕掛けたと主張、「米西戦争」を開始、ラテン・アメリカを植民地化する。フィリピンもこの戦争で手に入れた。 ベトナムへ軍事介入する口実として使われたのが1964年の「トンキン湾事件」。アメリカの駆逐艦が北ベトナムの魚雷艇に砲撃されたとアメリカ政府は宣伝、1965年2月には「報復」と称して本格的な北ベトナムに対する空爆を始めているが、この事件の背後にはOPLAN34Aと呼ばれる計画が関係していた。 これは1964年1月に大統領から承認されたもので、統合参謀本部直属の秘密工作部隊SOGが編成された。メンバーは陸軍のグリーン・ベレー、海軍のSEALs、そして空軍特殊部隊の隊員。同年2月に破壊工作をスタートさせた。 その工作の一環として1964年7月に南ベトナムの哨戒魚雷艇が北ベトナムを攻撃、北ベトナムが派遣した高速艇が到着したときには姿を消してしまい、そこには情報収集活動をしていたアメリカの駆逐艦、マドックスがいただけだった。攻撃の翌日、SEALsの隊員に率いられた南ベトナム兵約20名がハイフォン近くのレーダー施設を襲撃、その報復として北ベトナムはマドックスを攻撃したと言われている。マドックスを攻撃した北ベトナムの艦船は米軍機などの攻撃で撃沈された。 アメリカでは北ベトナムからの先制攻撃で戦闘になったとされ、議会は「東南アジアにおける行動に関する議会決議(トンキン湾決議)」を可決、1965年2月からアメリカ軍は「ローリング・サンダー作戦」を開始、ベトナムへの本格的な軍事介入になる。 アメリカの好戦派が1963年の後半にソ連を先制核攻撃する予定だったことは本ブログで何度も書いてきた。その直前、彼らはキューバ軍を装って軍事攻撃やアメリカの都市での爆弾攻撃、最終的には無人の旅客機をキューバの近くで自爆させて撃墜を演出し、「報復」としてアメリカ軍が直接、キューバへ軍事侵攻する計画を立てていた。これが「ノースウッズ作戦」。ジョン・F・ケネディ大統領に阻止されたが、計画は存在した。なお、ケネディ大統領は1963年11月に暗殺されている。 最近の例では、イラク攻撃の前にアメリカ政府は「大量破壊兵器」という大嘘をメディアに広めさせ、リビア、シリア、ウクライナでは「民主化」や「人権」を侵略の口実に使い、戦闘員は外部から投入している。トルコから大量の物資が運び込まれ、ISの手にわたっていることも判明している。「安全保障関連法案」を議論する場合、「アメリカの戦争」という表現が使われているようだが、「アメリカの侵略」とすべきだ。国防、防衛、自衛といった類いの話ではない。 その侵略プランのベースにあるのが1992年に作成された「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」で、アメリカが「唯一の超大国」であり続けるために潜在的ライバルを潰すとしている。アメリカの支配層が世界の覇者として君臨する仕組みを作るという意味で、この法案はTPP/TTIP/TISAとリンクしている。
2015.07.23
アメリカとキューバの国交回復を受け、バラク・オバマ政権は「キューバの人権問題の改善が大きな課題だ」と考えていると書いた新聞があった。本当にそう思っているのだろうか?選択肢のない選挙が行われ、特定の勢力が流す偽情報を広めるだけのメディアが存在しているからといって、民主主義国家だとも人権国家だとも言えない。 1898年に占拠、キューバを支配下においたアメリカは、1934年の「5月条約」をたてに今でもキューバのグアンタナモに海軍の基地をおいたままだ。そこでは捕虜として、あるいは容疑者としての権利を奪われた「敵戦闘員」が拘束され、拷問を受けてきた。殺された人間もいる。アメリカの情報機関、CIAは28カ国に約50の秘密刑務所を設置、船を利用した施設もあると言われている。キューバよりアメリカの人権問題は遥かに深刻だ。 そもそもアメリカは先住民を殲滅して作り上げられた国。クリストファー・コロンブスがカリブ海に現れた1492年当時、北アメリカには100万人とも1800万人とも言われる先住民が住んでいたと推測されているが、1890年にウーンデット・ニー・クリークで先住民の女性や子供が騎兵隊に虐殺された時には約25万人に減少していた。生き残った先住民は「強制移住法」によって「保留地」と名づけらた荒野へ押し込められた。先住民を殲滅した後、ラテン・アメリカを侵略したわけである。いわゆる「棍棒外交」だ。棍棒外交の手先になったのが海兵隊。 戦後は情報機関が秘密工作で民主的に成立した政権を軍事クーデターなどで倒し、アメリカの巨大資本にとって都合の良い体制を作り上げてきた。クーデターを起こしたり、民主化運動を押さえ込むため、アメリカは1951年にパナマでSOAという軍事訓練施設を創設した。そこでは反乱を鎮圧する技術のほか、狙撃訓練、ゲリラ戦や心理戦、軍事情報活動、そして拷問法などを教えていた。軍事クーデターの首謀者や「死の部隊」の指揮官は多くがSOAの出身者だ。 キューバもアメリカ資本の支配下にあった国のひとつだったが、それを1959年にフィデル・カストロを中心とする革命軍が倒している。マイケル・ムーアが監督したドキュメンタリー映画『SiCKO(シッコ)』ではアメリカの貧困な医療制度が批判され、その中でキューバに助けを求めている。 アメリカの情報機関は秘密工作と麻薬密輸をセットにしている。例えば、ベトナム戦争では東南アジアの山岳地帯(黄金の三角地帯)でケシを栽培、ヘロインを製造し、犯罪組織を使って売りさばいていた。ニカラグアの革命政権を倒そうとしたときはコカイン、アフガニスタンやコソボでの秘密工作はパキスタンやアフガニスタンの山岳地帯でケシを栽培して資金を調達していた。そうした麻薬資金は「CIAの銀行」で処理される。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) ソ連消滅後は軍隊を使う傾向が強い。例えば、ユーゴスラビアを先制攻撃したほか、アフガニスタン、イラクも先制攻撃、リビアはアル・カイダ系の武装集団とNATO、シリアはNATOの投入に失敗してアル・カイダ系、そしてタグを変えて今はIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ダーイシュなどとも表記)と呼ばれている戦闘集団を使っている。ウクライナの場合はネオ・ナチだ。 アメリカ軍を使おうと、アル・カイダ系武装集団、IS、ネオ・ナチといった傭兵を使おうと、ターゲットになった国では破壊と殺戮が繰り広げられる。勿論、そこには民主主義も人権もない。 1980年代の前半にアメリカでは「プロジェクト・デモクラシー」を始めている。勿論、本来の民主主義とは関係ない。アメリカ資本にとって都合の悪い国家、体制を破壊することが目的だ。侵略の口実として「デモクラシー」という用語を使い、人びとを操ろうというわけである。 ユーゴスラビアを攻撃した頃から「人権」とか「人道」という言葉が使われる傾向が強まる。人びとに攻撃を受け入れさせるため、西側の有力メディアは偽情報を盛んに流したが、その一端は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』でも触れた。ボスニアでは「死の収容所」が宣伝された。その発端になったイギリスの放送局の取材チームは鉄条網で囲まれた貯蔵所の敷地へ入り、そこから外にいる難民を撮影して「死の収容所」が存在しているかのような印象を作り出し、ほかの有力メディアも広めている。(その1、その2、その3) リビア、シリア、ウクライナなどでも西側のメディアが偽情報を流し続けていることは本ブログで何度も指摘してきた通りだ。2001年にアメリカで成立した愛国者法が民主主義と人権を否定していることを知らないマスコミの人間はいないだろう。アメリカは民主的でも人道的でもない。
2015.07.22
東芝で不正会計が発覚、田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聡相談役の歴代3社長が7月21日付けで辞任した。不正とは利益の水増しで、その額は2009年3月期から14年第1~3四半期までの約7年間に1518億円だという。 経営トップから繰り返される業績改善要求に答えなければならない事業部門が利益を水増ししたというが、利益を出すために労働環境を悪化させ、労働者を貧困させている現在の強欲な企業ならやりかねないこと。そうしたことを「合法」にする政策を安倍晋三政権も推進している。今回は企業の内部で不正が行われたので問題になっているが、大企業が外部で不正を働いても不問に付されることがある。 2009年3月期は投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻した年でもあった。倒産の原因だとされているサブプライム・ローンはアメリカの低所得者向け住宅ローン。カネを貸して不動産を買わせ、相場上昇を演出して担保価値を膨らませ、消費させてカネをさらに借りさせるというマルチ商法的なシステムで、破綻は時間の問題だった。 サブプライム・ローンの問題でもゴールドマン・サックスが登場する。SEC(証券取引委員会)はこの問題で同銀行に違法行為があったと判断、法人と重役のフェイビリス・トゥーレを証券詐欺の容疑で訴追したと発表している。 トゥーレがゴールドマン・サックスのニューヨーク支社に勤務していた際、同社の大口顧客で巨大ヘッジファンドを動かしていたポールソン社と共謀し、高リスクのローンを組み込んだ商品を作り上げ、顧客に正しい情報を提供せず2007年に販売、10億ドル以上の損害を与えたというのである。本来なら破綻した銀行は国有化して徹底的に調査、不正を働いた人物は厳罰に処す必要がある。そうした常識的な政策を行い、経済を立て直したのがアイスランド。 2008年当時、アメリカの財務長官はヘンリー・ポールソンだった。1974年にゴールドマン・サックスへ入行、1999年から2006年まで同行の会長兼CEO(最高経営責任者)を務めた人物。この人選自体がスキャンダルだ。ポールソンを長官に推したのはゴールドマン・サックス出身のジョサイア・ボルテン大統領首席補佐官のだったという。 この「金融危機」で明確になったのは、巨大企業は破綻しても「大きすぎて潰せない」という理由で国民に尻ぬぐいさせ、重役たちの犯罪行為は「大きすぎて処罰できない」ということで不問に付されるということ。その結果、問題を起こした富裕層の懐はさらに暖かくなり、責任のない庶民は尻ぬぐいを押しつけられて貧困化している。東芝もアメリカの会社になり、社外で、もっと大きな罪を犯したなら許されたかもしれない。TPP/TTIP/TISAが成立すれば、そうしたことがより明確になる。 ところで、ポールソンは郵政民営化に深く関与していることも知られている。2002年12月、小泉純一郎内閣の時代だが、この時に三井住友銀行出身の西川善文や竹中平蔵とポールソンは会っている。この会合にはゴールドマン・サックスのCOO(最高業務執行責任者)を務めていたジョン・セインも参加、このあとに「郵政民営化」の動きが本格的に始まっている。 2008年の「金融危機」はジョージ・W・ブッシュ政権の投機を促進する政策がもたらしたものだが、これはブッシュ・ジュニアが大統領に就任する前から破綻していた。ブッシュの財布と言われたエンロンは投機で汚染されたエネルギー関連企業だが、大統領選の最中、2000年8月に同社のシェロン・ワトキンス副社長が不明瞭な会計処理をケネス・レイ会長に警告、翌年の12月に倒産している。9月11日の世界貿易センターとペンタゴンへの攻撃で目立たなかったが、大きな出来事だった。ブッシュ・ジュニア政権はこうしたことを反省せず、日本の「ゼロ金利政策」にも助けられて投機を過熱化させ、不動産バブルも生じたわけだ。 ゴールドマン・サックスはギリシャを借金地獄へ突き落とす上でも重要な役割を果たした。ギリシャは第2次世界世界大戦でドイツによる国の破壊と略奪で疲弊、それに対する賠償をドイツが十分に果たしたとは言えない。他の国も支援しなかった。そこで左翼が勢力を伸ばすとアメリカは軍事クーデターを実行させて民主主義を破壊している。 そうした流れの中、ギリシャでは国民の意思に関係なく「エリート」たちが通貨を勝手に「ユーロ」へ切り替えてしまう。その際、財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませて事態を悪化させたのがゴールドマン・サックス。2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECBの総裁に就任し、今ではギリシャの借金取立役だ。 ここで話を東芝に戻そう。 不正会計を始める2年前、東芝はイギリスの核関連会社でMOXを製造していたBNFLからウェスチングハウスを54億ドルで買収している。BNFLは1971年に創設されているが、その前、1960年代にイギリスは核兵器用のプルトニウムをイスラエルへ秘密裏に供給していた。
2015.07.21
ウクライナの東部、ドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)では戦闘が継続、反キエフの人民共和国側は国連の安全保障理事会に調査を求めている。2月11日からベラルーシの首都ミンスクで開かれたドイツ、フランス、ウクライナ、そしてロシアの首脳会談で停戦が決まったが、守ろうとしない勢力が存在するということだ。 人民共和国軍に敗れて全滅寸前だったキエフ政権の派遣軍を救ったのは停戦。このおかげで西側にとって最悪の事態は避けられたのだが、アメリカの好戦派は本気で停戦は考えていない。ネオコン/シオニストなどアメリカの好戦派は停戦を利用して態勢を立て直そうと考えた可能性が高い。ネオ・ナチ(ステファン/バンデラ派)系政党の「右派セクター」を率いるドミトロ・ヤロシュは停戦を拒否、そのヤロシュは4月4日、ウクライナ軍参謀総長の顧問に就任している。 アメリカ政府にも停戦を支持するグループがいるようで、ジョン・ケリー国務長官は5月12日にキエフでペトロ・ポロシェンコ大統領と会い、クリミアやドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)の奪還を目指す作戦を実行してはならないと言明、その足でロシアのソチを訪問してウラジミル・プーチン大統領らと会談、ウクライナでの戦闘を終わらせるためにミンスク合意を支持する姿勢を明確にしている。 しかし、昨年2月にウクライナでクーデターを仕掛けた黒幕グループのひとりで、クリミアを含む東部や南部を西側へ引き渡せとロシアを脅しているビクトリア・ヌランド国務次官補はケリーに続いてキエフへ入り、5月14日から16日にかけてポロシェンコ大統領のほか、アルセニー・ヤツェニュク首相、アルセン・アバコフ内務相、ボロディミール・グロイスマン最高会議議長らと会談した。ケリー長官に言われたことを無視するように釘を刺したと言われている。ヌランドもその足でモスクワを訪問した。 その後、ケリー長官は大けがをする。5月30日までイランのモハマド・ジャバド・ザリフ外相とジュネーブで核問題について協議し、31日にアルプスのコロンビエ峠でサイクリングを楽しもうとしたのだが、その際に転倒し、右大腿骨を骨折してヘリコプターでジュネーブ大学病院へ搬送されたと伝えられている。 東部や南部ではクーデターの直後からロシア語を話す住民を殺害、あるいは追放する一種の民族浄化作戦が展開されてきたが、その主力はネオ・ナチ。昨年4月に編成されたアゾフなどいくつかの戦闘部隊が存在している。アゾフの場合、右派セクターの幹部であるアンドレイ・ビレツキーが富豪(オリガルヒ)のイゴール・コロモイスキーから資金提供を受けて設立された。 そうした右派セクターはここにきて西部地域で活発に動き始め、ムカチェボなどで警官隊と銃撃戦を演じたようだ。オデッサの知事に就任したアメリカの傀儡、ミハイル・サーカシビリはコロモイスキーをマネー・ロンダリングなど違法行為の証拠があると主張するなどキエフ側に内部対立が生じていることをうかがわせる発言をしている。 ネオ・ナチがコントロール不能になっているようにも見えるのだが、そうした印象を作り上げ、話し合いで解決しようという動きをネオ・ナチに破壊させようとしていると考える人もいる。アル・カイダ系武装集団やIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)と同じような役割を果たさせようとしているのではないか、ということだ。実際、キエフ政権の治安や軍事部門にはネオ・ナチが食い込んでいる。 クーデターの当初からアメリカの傭兵会社から戦闘員が派遣されていたが、アメリカシフもFBIやCIAの要員を送り込み、4月20日からはアメリカの第173空挺旅団の兵士290名がウクライナの正規軍兵士1200名と親衛隊の戦闘員1000名を訓練している。7月20日から月末まで西部にあるリボフでNATO軍1800名が軍事演習を行う予定。演習に参加する国はアメリカのほか、ドイツ、スペイン、トルコ、カナダ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア。そのほか、セルビア、モルドバ、ジョージア、アゼルバイジャンも参加するようだ。相変わらずNATOは好戦的。 正気ならロシアと本当に戦争しようとは思わないという声がアメリカからも聞こえてくるが、軍事的な緊張を高めて儲けたいと戦争ビジネスが考えていることは確かだろう。ネオコンは軍事を含むさまざまな手段で脅し、相手が屈服するまでエスカレートさせる「狂犬戦術」を得意にしてきた。つまり、脅しに屈しない相手とは戦争になる。その相手がロシアや中国なわけで、全面核戦争になる可能性はある。高をくくっていると、取り返しのつかないことになる。
2015.07.21
アメリカはキューバと国交を回復させ、P5+1(国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツ)はイランと進めてきた核開発問題に関する協議で合意に達したというが、アメリカが和平に舵を切ったと考えるべきではないという指摘がある。 キューバでは亡命キューバ人社会が反発し、イランに関してはネオコン/シオニストやイスラエルがイランを攻撃しろ叫び、オバマ大統領と対立しているようだが、それをもってアメリカ政府が和平を望んでいると即断すべきではないということだ。 例えば、キューバにアメリカの大使館ができるということは、キューバにアメリカの破壊活動の拠点ができるということでもあり、今後、体制転覆プロジェクトが本格化する可能性がある。 イランの場合、アシュトン・カーター国防長官は同国に対する軍事攻撃は排除されていないとしていることもあるが、それだけではない。ウクライナでクーデターを実行して東部やクリミアを除く地域を制圧したアメリカは天然ガス輸送のパイプラインを押さえることでロシアを揺さぶろうとしたものの、ロシアが中国に接近、トルコへの新たなパイプライン建設も決まり、ドイツへつながっているノース・ストリームの輸送量を増やす話もあり、思惑通りに進んでいない。 EUの首脳はこぞってアメリカの傀儡だが、ロシアの天然ガスや石油は社会を維持するため、どうしても必要。宣伝されていたアメリカのシェール(堆積岩の一種である頁岩)ガス/オイルはフラッキング(水圧破砕)の環境への悪影響、採取可能量が少ないという問題、さらに石油相場の下落でビジネスが成り立たないということもある。現状ではロシアなしにEUは維持できず、EUとロシアを分断するというアメリカのプランは実現できない。 ロシアに替わるエネルギー源の供給元としてアメリカが考えているのはイランだと見られている。トルコまで運べれば、そこからEUへ輸送できる。イランが増産すれば石油相場を下げる環境が整い、ロシアにプレッシャーをかけられるという計算があるとも言われているが、現在の相場は現物取引でなく投機で決まっているので、どの程度の影響力があるかは不明。 勿論、これはアメリカの事情から見た話。イランはBRICSやSCOとの関係を強めていることを考えると、ロシアや中国からアメリカへ乗り換えるとも思えない。それほどアメリカを信用してはいないだろう。 ただ、ロシアの属国化を前提とし、世界制覇を目的とする「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」、つまり1992年に国防総省で作成されたDPGの草案に基づく戦略を修正しようとしているとは言える。ロシアと中国との戦いへ切り替えるということだ。次の統合参謀本部議長、ジョセフ・ダンフォード大将やデボラ・ジャームズ空軍長官がロシアをアメリカの存続を脅かす脅威だと語ったこととも合致する。 次期統合参謀本部議長と空軍長官だけでなく、国防長官をオバマ大統領は消極的なチャック・ヘーゲルからカーターへ交代させた。カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張した人物だ。ホワイトハウスの好戦的な雰囲気は強まっている。安倍晋三政権へも強い圧力がかかっているはず。 ウクライナではネオ・ナチを使ってきたが、ここにきてイスラム武装集団が入り込んでいるという話もある。そうした意味で、チェチェンの武装勢力が拠点を持っているジョージア(グルジア)の元大統領がオデッサの知事になったことも注目しておく必要があるだろう。
2015.07.19
新国立競技場にしろ、「安全保障関連法案」にしろ、安倍晋三政権が国民の利益に反することを強行していることは間違いない。マスコミや野党も政府を批判するようなことを言っているが、支配層から「チェックメイト」、あるいは「王手」を宣言されるまで彼らは反対らしい反対はせずに黙認、推進派も少なくなかった。 安倍晋三首相は4月29日、アメリカ議会の上下両院合同会議で「安全保障関連法案」を夏までに成立させると宣言、6月1日には官邸記者クラブのキャップとの懇親会で、この法案は「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。この報道が事実なら、このクラブへ記者を送り込んでいるマスコミは発言を知っているはずだが、国内は静か。むしろ国外で問題になっていた。「海外で戦争する国」という漠然とした目的ではなく、明確に中国が意識されているのだ。 安倍首相が中国との戦争を準備しているのはネオコンが命令しているから。現在、アメリカの世界戦略は1992年に国防総省で作成されたDPG(通称、ウォルフォウィッツ・ドクトリン)に基づいている。当時の国防長官はリチャード・チェイニー、執筆の中心にはポール・ウォルフォウィッツ次官をはじめとするネオコンがいた。 1991年にソ連が消滅、アメリカは唯一の超大国になったと認識したネオコンは潜在的なライバルの出現を許さず、世界を支配するというプランを描いたのだ。ロシアを属国化したと考え、重点を東アジア、つまり中国と日本へ移動させるのは当然のことだった。思考力の足りない日本の「エリート」に謎をかけ、中国と戦う気にさせ、最後は両国を乗っ取ろうという算段だろう。 ネオコンが台頭したのはジェラルド・フォード政権(1974年から77年)時代。この政権ではデタント派が粛清されたが、粛清の中心にいたのがドナルド・ラムズフェルドとチェイニー。ネオコンと手を組んでいたのは軍や情報機関の好戦派、その後ろ盾には平和を恐れる巨大資本が存在していた。 こうした勢力は庶民が主権者だとは認めず、自分たちは憲法を超越した存在だと見なすようになる。その象徴的な存在が1982年にアメリカで生まれた法律家の集団、「フェデラリスト・ソサエティー」だ。彼らは事実上、民主主義も立憲主義も否定している。 経済面から民主主義や立憲主義を否定しているのが新自由主義者。平等、あるいは公平を嫌悪、自分たちに都合の良いルールを作り、最後は力尽くで全てを奪うのが彼らの遣り方。彼らはアメリカという国も略奪の対象でしかない。 1938年4月29日、フランクリン・ルーズベルト大統領(1933年から45年)はファシズムについて次のように定義している。 「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 新自由主義によって「私的権力」は国家を上まわる力を獲得、今ではアメリカだけでなく西側の全政府をコントロールしている。ルーズベルトの定義に従えば、西側はファシズム体制だ。TPP/TTIP/TISAは巨大資本が国家を支配する仕組みにほかならず、ファシズム化の総仕上げだと言えるだろう。「安全保障関連法案」はTPP/TTIP/TISAと一心同体の関係にあり、片方には反対だが片方には賛成だということはありえない。
2015.07.19
オデッサの知事に任命されたジョージア(グルジアをアメリカ風に発音するようになった)のミヘイル・サーカシビリ元大統領は、マリア・ガイダルというロシアの反体制活動家を副知事にしたいらしい。ちなみに、オデッサでは昨年5月2日、反クーデター派の住民がネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)のグループに虐殺されている。 マリア・ガイダルの父親はロシアを新自由主義経済で破壊したエゴール・ガイダル。ソ連消滅後、1990年代にボリス・エリツィン体制の経済政策を指揮し、クレムリンの腐敗勢力と結びついた一部が国民の資産を略奪するのを助けて「オリガルヒ」を生み出し、庶民を貧困化させた張本人で、その背後にはコロンビア大学のジェフリー・サックスがいた。 勿論、富の集中や庶民の貧困化は最初から計画していたこと。アメリカの傀儡だったエリツィンに率いられた1990年代のロシアはアメリカの属国にほかならなかった。ロシアをアメリカへ売り渡した一派に属していたエゴールの娘を副知事にしたいというだけで、サーカシビリが何を目指しているかがわかる。 そのサーカシビリは2003年に実行された「バラ革命」で実権を握ったのだが、その背後にはグルジア駐在アメリカ大使だったリチャード・マイルズがいた。ベルグラード駐在大使としてユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチを倒した後、ブルガリア駐在大使を経て2003年にジョージア駐在大使に就任、そこでサーカシビリを勝たせるために彼の陣営をコーチした。 サーカシビリが実権を握る前、2001年からジョージアにはイスラエルの会社が武器を提供、同時に軍事訓練を行っていた。タイム誌によると、イスラエルは訓練しただけでなく、無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを提供している。ロシア軍の副参謀長を務めていたアナトリー・ノゴビチン将軍によると、2007年からイスラエルの専門家がグルジアの特殊部隊を訓練し、重火器、電子兵器、戦車などを供給する計画を立てていたという。2008年1月から4月にかけては、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を派遣し、「アフガニスタンに派遣される部隊」を訓練している。 2008年7月10日にはアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問、8月15日に再訪しているが、その間、8月7日にサーカシビリ大統領は分離独立派に対して対話を訴えた8時間後、深夜に南オセチアを奇襲攻撃した。 南オセチアに駐留していた「平和維持部隊」は軍事的な能力は低く、ジョージアの攻撃に為す術がなかったのだが、ロシア軍がすぐに反撃、押し返している。奇襲作戦はイスラエルが立案したという推測もあるが、ジョージア軍がロシア軍を甘く見すぎていたことは確かだ。 その当時、アメリカやイスラエルがロシアをどのように見ていたかを示す論文がある。2006年にキール・リーバーとダリル・プレスがフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)で発表したもので、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとしていた。イスラエルやアメリカが将兵を訓練、武器/兵器を提供し、作戦も練り上げた以上、楽勝だと思い込んでいたのだろう。 サーカシビリ政権にはイスラエルとの関係が深い閣僚がいた。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。ふたりは流暢なヘブライ語を話すことができ、ケゼラシビリはイスラエルの市民権を持っていたことがある。 ジョージアのパンキシ渓谷はチェチェンの反ロシア勢力が拠点としていることで知られているが、チェチェンの武装勢力はサウジアラビアがスポンサー。CIAの承認を受けて国際イスラム旅団をチェチェンで組織、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタンが活動の調整役を務めていた。 現在、チェチェンの戦闘員はシリアなど中東/北アフリカで戦闘訓練を積み、ウクライナへ入り込んでいる疑いがある。そのルートの管理者としてサーカシビリは最適だ。そのサーカシビリのスタッフはアメリカ政府から給料を貰い、オデッサの警察官はカリフォルニアから派遣された同業者が訓練するのだという。 サーカシビリがオデッサの知事に任命されるという発表がある直前、ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米大使と接触している。この人物、昨年2月上旬、クーデターの18日前にビクトリア・ヌランド国務次官補と「次期政権の閣僚人事」を話し合っていた。そのヌランドも最近、ウクライナで活発に動いている。
2015.07.18
安倍晋三首相は勿論、彼を操っているアメリカの支配層も庶民が主権者だとは考えていない。「立憲主義」、あるいは「法の支配」も彼らは信じていない。そうした本音を具体化した集団のひとつが1982年にアメリカで生まれた「フェデラリスト・ソサエティー」だ。 この集団はアメリカの「エリート校」、エール大学、シカゴ大学、ハーバード大学の法学部に所属する「保守的な」学生や法律家によって創設され、議会に宣戦布告の権限があるとする憲法や1973年の戦争権限法はアナクロニズムだと主張、プライバシー権などを制限、拡大してきた市民権を元に戻し、企業に対する政府の規制を緩和させることを目指してきた。 アメリカの富豪を後ろ盾として「フェデラリスト・ソサエティー」は影響力を拡大し、ネオコンに担がれたジョージ・W・ブッシュ政権では司法省で主導権を握っていた。例えば、ジョン・アシュクロフト司法長官、シオドア・オルソン法務局長(連邦最高裁における政府の代理人)、ホワイトハウス顧問のティム・フラニガンはこの集団に属してる。司法省の法律顧問として「拷問」にゴーサインを出したジョン・ユーもフェデラリスト・ソサエティの熱心な活動家だ。 アメリカで拷問のほか、令状なしの拘束、国外追放、監視を認める愛国者法を生み出したのはCOGプロジェクト。1982年、ロナルド・レーガン大統領が承認してプロジェクトはスタートした。 このプロジェクトの基盤になったのは、1950年代、ドワイト・アイゼンハワー政権で核戦争を想定して作られた「秘密政府」の仕組み。これからFEMAが創設され、COGプロジェクトにつながる。 当初、COGでも核戦争が前提になっていたが、1988年に出された大統領令でその対象は「国家安全保障上の緊急事態」に変化、政府が恣意的に憲法を停止できることになった。日本では安倍晋三政権が「存立危機事態」なる概念を持ち出してきたが、これと同じ程度、曖昧で危険なものだ。 そして2001年9月11日、緊急事態とされた出来事が起こる。ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのだ。これを利用し、ブッシュ・ジュニア政権は国外で侵略戦争を本格化させ、国内では愛国者法などを成立させて監視システムや治安体制を強化し、ファシズム化を推進している。 安倍首相を含む日本の支配層が服従している相手はCOGを推進していた好戦的な勢力に重なる。例えば、ジョージ・H・W・ブッシュ、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジーたち。ジェラルド・フォード政権でデタント派を粛清したグループでもある。 1980年代にはさまざまな権力犯罪が明らかになっている。支配層の内部で深刻な対立が生じたからで、問題になっていたのはイラクとの関係。ブッシュを含む勢力はサダム・フセインを手駒と考えていたが、ネオコンは打倒すべき敵だと考えていたのだ。 注目された事件にはイラン・コントラ事件、コントラ支援と結びついたコカイン密輸、アフガニスタンでの秘密工作とヘロイン密輸、BCCI(CIAの秘密工作に関係した金融機関)事件、INSLAW事件(アメリカ司法省による私企業が開発したコンピュータ・プログラムの横領事件)、イラクゲート事件など。 こうした事件は全て結びついていると主張してたジャーナリストがいる。ジョセフ・ダニエル・キャソラーロだが、1991年8月、取材先のホテルで変死してしまう。彼はCOGを見ていた可能性がある。 生前、キャソラーロは「オクトパス」という組織があり、そのメンバーは自分たちが「ギリシャの神」になろとしていると語っていたという。絶対的な権力を持つ支配者になるという意味の比喩にも思えるが、新自由主義者のカルト的な性格を考えると、それ以上なのかもしれない。 米英の憲法は基盤にあるマグナ・カルタ(大憲章)は1215年、イギリスのジョン王が調印して成立した。その憲章では、教会の権利が保護され、諸侯を不法に投獄することを規制、徴税の制限も謳われ、王が議会を招集しなければならない場合も定められている。 自らを法の上の存在だとして独断的な支配を続け、国外で戦争を仕掛けて敗れ、領土を失ったうえ、戦費負担を諸侯に押しつけるジョン王に対する怒りは内乱に発展、妥協してマグナ・カルタに署名せざるをえなくなったわけだ。妥協しなければ自らの命も危うい状況だったとも言える。 経済的にも政治的にも大きな力を持つ富裕層が存在している以上、民主主義を維持するためには、そうした力に対抗できる力を庶民が持つ必要がある。つまり、カネと情報が庶民へ流れる仕組みを作らなければならない。最低限、情報の全面公開と累進課税の強化、そしてオフショア市場の規制強化は必要だ。 その逆を1970年代から行ったのが新自由主義。その段階で富裕層は民主主義、立憲主義の破壊を決意している。TPP/TTIP/TISAはその総仕上げ。逆襲するには、まず、その事実を自覚する必要がある。
2015.07.17
マレーシア航空17便(MH17/ボーイング777)がウクライナ東部、キエフ軍と反キエフ軍が戦うドネツクの上空で撃墜されたのは2014年7月17日のこと。公式に編成された調査チームはアメリカの「友好国」であるオランダ、オーストラリア、ベルギー、そして撃墜した可能性があるキエフ政権で構成され、アメリカ、ロシア、マレーシアなどが派遣した専門家も加わっている。情報の秘密はオランダの法律で守られ、公開されるのは最終報告だけで、外部の専門家が検証することはできない。調査チームにキエフ政権を入れたということは、真実を追究しようとしていると装う意思もないことを示している。こうした状況にマレーシア政府は不満を持っているようだ。 こうした情報管制が布かれた中、CNNは報告書の内容についてアメリカの官僚が調査官から聞いた話として、証拠は親ロシア派が撃墜したことを示していると伝えたが、情報源は匿名であり、何が証拠なのかを明らかにしていない。調査チームの広報担当は報告書の草稿をについて確認できないとしている。 プロパガンダ機関化が進んでいる西側メディアの中でもCNNはプロパガンダ色が強く、西情報を流し続けてきたわけで、信頼度は低い。調査チームもアメリカの影響下にある国で、信頼度の低さは同じだ。 その前、5月にはオーストラリアのテレビ局が撃墜の責任をロシアに押しつける番組を制作したのだが、使われた映像の説明が事実に合わない、つまりインチキ映像だということをアメリカの調査ジャーナリストに指摘され、訂正することになるのだが、その訂正もインチキだった。この調査ジャーナリスト、ロバート・パリーはAPの記者だった1980年代の初め、ニカラグアの反革命ゲリラ、コントラのコカイン取引を明らかにするなどイラン・コントラ事件の内幕に迫ったことで知られている。 パリーによると、アメリカの情報機関で分析を担当している人たちはキエフ政権のならず者たちが撃墜したと判断している。オリガルヒの周辺に集まっているグループだということなので、ネオ・ナチということになりそうだ。 キエフの治安機関SBU(ウクライナ保安庁)は、早い段階に反キエフ軍が航空機を撃墜したことを示すという音声を「証拠」として撃墜の直後にユーチューブへアップロードしたのだが、その音声がインターネット上に流されたのは撃墜より前の7月16日午後7時10分で、いくつかの無関係な会話をつなげたものだとする解析結果も明らかにされた。しかも、会話の中に出てくる地名は撃墜現場から100キロメートルほど離れた場所。最初からキエフ政権のプロパガンダは躓いている。 MH17は当初、3万5000フィート(約1万1000メートル)の上空を飛行する予定だったが、キエフの交通管制は3万3000フィート(約1万メートル)を指示しているので、その高度で飛んでいたのだろう。 高度が下がったとは言いながら、3万3000フィートまで携帯用のミサイルは届かない。そこで、地対空ミサイルならブーク・ミサイル・システム(SA11)やS-300(SA10)、さもなければ戦闘機を使うしかないのだが、アメリカ政府は戦闘機に撃墜されたということは認められない。反キエフ軍は戦闘機を持っていないからだ。そこで、ブーク説を広めることになる。 アメリカにとって困ったことに、キエフ政権のビタリー・ヤレマ検事総長は軍からの情報として、反キエフ軍がこうしたミサイルを奪取したことはないと発表している。そうなると、ロシアから運び込み、ミサイルを発射した後に戻したことにせざるをえない。 そのシナリオにも問題がある。長さが5メートル弱で通常はトラックなどに乗せられたブークを移動させれば目立ち、アメリカのスパイ衛星も簡単にとらえるからだ。アメリカ側の主張が正しいなら証拠があるはずで、そうしたものを明らかにすれば簡単に決着する。 アメリカはスパイ衛星やNSAの通信傍受システムで常に監視しているが、MH17が撃墜された7月7日から17日にかけてNATOは黒海で軍事演習「ブリーズ2014」を実施、通常より監視能力は高かった。この演習にはアメリカ海軍のイージス艦「ベラ・ガルフ」、AWACS(早期警戒管制機)の「E3」、電子戦機の「EA18G」も参加、周辺を飛行する旅客機も監視していたはずだ。 ブークで撃墜されたとする説はBBCロシアの取材チームも否定、しかも現地の住民も取材、旅客機の近くを戦闘機が飛んでいたという証言を得ている。キエフ軍の航空機は民間機の影に隠れながら爆撃しているという話も映像に記録した。旅客機の残骸を調査したOSCE(欧州安全保障協力機構)の調査官も榴散弾ではなく左右から銃撃された可能性が高いと考えていた。イスラエル製の空対空ミサイル、パイソンで撃墜されたという分析もある。 イラクを先制攻撃する前にもアメリカ政府は「大量破壊兵器」という大嘘をついていたが、恐らく大多数の政府やメディアはその事実を知っていた、あるいは感づいていた。それでも知らない振り、気づかないふりをしてイラクを一方的に攻撃、破壊と殺戮は現在まで続いている。この時と同じことをウクライナでもメディアは繰り返しているのだ。 ところで、MH17の撃墜では、いやに「7」が目立つ。 ある宗教では「7」が重要な意味を持つらしいが、この年の1月15日、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事はアメリカのワシントンDCにあるナショナル・プレス・クラブで講演した際、聴衆に「7」を注目させている。 まず、2014年は2+1+4=7だと指摘、この年はブレトン・ウッズ協定の締結から70年、つまり7+0=7。ベルリンの壁が壊されて25年、つまり2+5=7。金融危機から7年。今年は画期的な年になるという御託宣だった。その7番目の月にウクライナではMH17が撃墜され、ガザではイスラエルの攻撃で建造物が破壊され、多くの人が殺されたわけだ。
2015.07.16
安倍晋三首相によると、「南シナ海の中国が相手」だという「安全保障関連法案」が衆院特別委員会で強行採決され、自民党と公明党の賛成多数で可決されたという。憲法に違反していることは明白で、時間をかけるほど反対が増える可能性は高い法案だと政府も認識しているのだろう。安倍政権にとってこの法案を成立させることが重要なのであり、時間をかける意味はない。 言うまでもなく、こうした強硬策が可能なのは、与党が議席数で野党を圧倒しているからにほかならない。衆議院は昨年の選挙で475議席のうち与党の自民が291議席、公明が35議席で合計326議席、野党は合計149議席。与党が圧倒している。2013年の参議院選挙の結果、与党は135議席、野党は107議席。選挙に不正があったかどうかはともかく、結果として議席数で与党は強い立場にある。 こうした選挙結果を生み出した最大の理由は民主党の「自爆」にある。菅直人政権と野田佳彦政権が公約を投げ捨て、自民党の小泉純一郎政権と同じ道を驀進しはじめたのだ。変革への希望は絶望へと変わり、国民に支持されているとは言えない自民党と公明党が圧倒的な数の議席を得ることになったと言える。 菅直人が首相になれたのは、その前の首相、鳩山由紀夫がマスコミなどの攻撃に耐えきれず、辞任したおかげだ。その背後には当然、アメリカが存在していただろう。マスコミは露骨に日米好戦派のプロパガンダを展開、沖縄以外の日本人を戦争へと導くことに成功した。 鳩山を攻撃する前、マスコミは東京地検特捜部と手を組み、民主党を率いていた小沢一郎を葬り去ろうとしていた。小泉政権時代、週刊現代は2006年6月3日号に「小沢一郎の“隠し資産6億円超”を暴く」というタイトルの記事を掲載、翌年には小沢の政治資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書に問題があるとマスコミと東京地検が激し攻撃を始めたのだ。そしてアメリカの好戦派にとって扱いにくい小沢を排除し、鳩山を引きずり下ろすことに成功、安倍政権の暴走につながるわけだ。 この「事件」は言いがかりにすぎず、これが認められたなら、議員どころか日本中、多くの人が同じ行為で犯罪者にされてしまう。「小沢嫌い」なのか「小沢憎し」なのか、そうしたことを気にせず、検察に同調する人は少なくなかった。 その間、アメリカと日本の好戦派は何をしていたのか? これは何度も書いてきたことだが、始まりは1992年のウォルフォウィッツ・ドクトリン(DPGの草案)。1994年に国防大学のスタッフだったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンがカート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに会い、日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、1995年の「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」につながる。 1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が、また2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」が作成された。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやワシントンDCの国防総省本部庁舎が攻撃される。 2002年には小泉純一郎政権が「武力攻撃事態法案」を国会に提出、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明、05年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名された。 そして2006年、キール・リーバーとダリル・プレスはロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとする論文をフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)に書いている。 この頃、アメリカはすでにイラクを先制攻撃し、100万人とも言われる人びとを虐殺している。その後、戦乱はリビアやシリアへと拡大させているが、これは1991年にウォルフォウィッツが語っていたプラン通り。旧ソ連圏も軍事的に破壊、今はウクライナ。さらにカフカスなどからロシア、中国の新疆ウイグル自治区へも傭兵(かつてアル・カイダと呼ばれていた戦闘集団)を送り込む準備をしている。残るは東アジア。ネオコンは日本を東アジアの「アル・カイダ」にしようとしている。 ここにきて野党やマスコミは「安全保障関連法案」を強行成立させようとしている安倍政権に対して批判的な言動を示しているが、つい最近まで推進派だった。アリバイ工作と言われても仕方がないだろう。ここまでくるとできることは限られている。
2015.07.15
安倍晋三政権は「安全保障関連法案」を強引に成立させようとしている。この法案が違憲なのは政府も承知しているだろうが、アメリカの好戦派からの命令には絶対服従。中国との戦争を夢想しているのだろう。 言うまでもなく、この法案はアメリカとの「集団的自衛権」と結びついているのだが、「自衛」とか「防衛」が目的だと考えてはならない。アメリカの戦争は常に侵略が目的。アメリカが侵略し、反撃されたら攻撃を受けたことになり、日本も侵略戦争へ参加することになる。 最近のアメリカは露骨に侵略しているが、2003年にイラクへ攻め込む際、アメリカ政府が「大量破壊兵器」という大嘘をついて攻撃を正当化していた。そのとき、コンドリーザ・ライス大統領補佐官は「キノコ雲」が現れるまでアメリカが座視していることはないとコメント、つまりイラクがアメリカをすぐにでも核攻撃するかのように主張していた。 こうした偽情報の流布にはイギリスも重要な役割を果たしている。アメリカの統合参謀本部の抵抗でイラク攻撃が延び延びになる中、2002年9月にトニー・ブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書、いわゆる「9月文書」を作成、その中でイラクは45分でそうした兵器を使用できると主張したのだ。 内部で作成しただけではプロパガンダにならないわけで、その直後に文書の内容がリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」というタイトルの記事を掲載した。この論文はアメリカのコリン・パウエル国務長官からも絶賛されている。 ところが、この報告書はある大学院生の論文を無断引用したもので、イラクの脅威を正当化するために改竄されていた。2004年10月にジャック・ストロー外相(当時)が「45分話」は嘘だったと認めている。 それに対し、2003年5月29日にBBCのアンドリュー・ギリガンはラジオ番組で「9月文書」は粉飾されていると語る。さらに、サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。 ブレア首相の側近で広報を担当していたキャンベルはデイリー・メール紙で記者をしていた経験があり、メール・グループを統括していたロバート・マクスウェルから可愛がられていた。マクスウェルはイギリスの情報機関に協力していた人物で、キャンベルも親イスラエル。 ギリガンが「45分話」の疑惑を語って間もなく、彼の情報源が国防省で生物兵器を担当しているデイビッド・ケリーだということがリークされる。ケリーは7月に外務特別委員会へ呼び出され、その直後に変死した。 自分たち嘘を暴かれたブレア政権は激怒、BBCを激しく攻撃、執行役員会会長とBBC会長を辞任に追い込んでギリガンもBBCを離れることになった。政府に屈服したBBCはプロパガンダ機関化が急速に進み、現在に至るまであからさまな嘘を平然とつき続けている。 アメリカやイギリスの情報機関を黒幕とする「NATOの秘密部隊」は1960年代から80年頃までの期間、イタリアで「極左」を装って爆弾攻撃を繰り返した。いわゆる「緊張戦略」で、左翼勢力にダメージを与え、治安体制を強化することに成功した。一種の偽旗作戦だ。 1960年代の前半、アメリカの好戦派はアメリカ軍をキューバへ侵攻させ、ソ連との全面核戦争を実現するために「ノースウッズ作戦」を練り上げている。核戦争でソ連を殲滅する絶好のチャンスが1963年の後半に訪れると好戦派は判断していた。 ノースウッズ作戦はキューバ軍を装ってアメリカの施設や船舶を攻撃することから始まる。さらにフロリダ州マイアミなどの都市で「テロ」を実行、最終的には、アメリカを離陸した旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたことにするというシナリオだった。この作戦はジョン・F・ケネディ大統領が潰している。 アメリカ政府は侵略を正当化するため、配下のメディア(事実上、西側の全有力メディア)を使って偽情報を宣伝、偽旗作戦も行う。そうした宣伝や工作を見抜く力など日本政府にはなく、見抜いたとしてもアメリカに従うだろう。アメリカとの「集団的自衛権」とは侵略戦争への荷担にほかならず、日本人を破壊と殺戮の共犯者にする。 現在、ネオコンは1992年に作成したDPGの草案(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)に基づいて動いているが、その前提は1991年のソ連消滅。ロシアもアメリカの属国になり、次のターゲットは東アジア(中国と日本)だと考えたわけだ。中国と日本を戦わせて共倒れにしようということであり、ネオコンが日本を守るなどと言う妄想は抱かない方が良い。このプランはウラジミル・プーチンがロシアを再独立化して崩壊するが、それをネオコンは認めてこなかった。シナリオが狂ってしまうからだが、ここにきてロシアを意識せざるをえなくなったようだ。 6月1日、安倍晋三首相は官邸記者クラブのキャップとの懇親会で安保法制は「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。中国との戦争を想定しているというように聞こえるが、これは20年以上前からネオコンが言っていること。 BRICSやSCOで連携を強め、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に次いでBRICSは新開発銀行(NDB)を始動させ、現代版シルクロードのプランもある。アメリカの支配層は危機感を抱いているはずで、ネオコンの恫喝が実際の核戦争になる危険性は高まっている。安保法制はこの危険性を高める大きな要素になる。
2015.07.14
2020年に東京で開催される予定のオリンピック/パラリンピックの会場になる新国立競技場が問題になっている。1300億円と言われた工費が2520億円に膨らみ、このまま進めば4000億円になるのか、5000億円になるのか、それ以上になるのか、わからない。それだけ国民の負担は膨らむわけだが、それだけ莫大な利権が発生するということでもある。すでに配分は決まっているかもしれない。 開催地が東京に決まったのは、2013年にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC総会。その際、安倍晋三首相は東電福島第一原発の事故について、「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」と大嘘をついている。 新国立競技場のデザインを決めるコンペが行われたのは2012年。イラク出身のザハ・ハディドのデザインに決まったのだが、すぐに問題が発覚する。国立競技場の敷地を大幅に超えてしまうのだ。そこで、文科省管轄の日本スポーツ振興センター(JSC)は設計を大幅に見直すことになった。それが現在のデザインである。 ところが、その設計も問題になっている。難易度の高い特殊な工事になるため、工期は長くなり、工費は高騰するということだ。しかもこのデザイン、カタールのサッカー・スタディアムに似ている。2022年に同国で開かれるサッカーのワールド・カップでメイン会場になるのだが、このスタジアム、女性の性器に似ていると話題になった。新国立競技場も似ていると言える。 現在、財政問題で西側の食い物になっているギリシャでも2004年にオリンピックが開催された。ギリシャの財政を破綻させる動きが水面下で進んでいる時期だった。 ギリシャ経済の問題は第2次世界大戦の時代から始まる。ナチス時代のドイツに占領され、略奪されて大きなダメージを受けたのだ。戦後、西側支配層への反発が強まり、1967年の選挙では左翼が優勢とされたが、この年にはアメリカを後ろ盾とする軍部のクーデターがあり、傷が癒えることはなかった。 そうした中、ギリシャはユーロ圏へ入るのだが、財政面で条件がクリアされていなかった。そこで登場するのがアメリカの大手投資会社のゴールドマン・サックス。2001年にギリシャが通貨をユーロに切り替えた際、財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教えたのだ。当然のことながら、債務は膨らみ、事態は悪化した。ちなみに、2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECB(欧州中央銀行)の総裁に就任、今ではギリシャから借金を取り立てる仕事をしている。 2006年頃からギリシャの債務は急増しているが、その背景には開発ブームがあった。中には、建設が許可されていない場所で、違法な融資によって開発しようとして中止が命令されていたケースもあり、このブームで業者と手を組んだ役人の中には賄賂を手にしたものが少なくなかったと言われている。 2012年にはイギリスでオリンピックは開催された。2005年7月6日の総会で開催地は決定されたのだが、その翌日にロンドンで連続爆破事件があったこともあり、オリンピックに向かって監視システムが強化され、警察国家の色彩が色濃くなっていく。爆破事件に不可解な点が少なくないことは本ブログでも指摘した通り。 2020年の東京オリンピックでは新国立競技場の設計や工費の問題だけでなく、財務状況を悪化させる仕掛けやファシズム化にも注意する必要があるだろう。
2015.07.12
ギリシャは外部からの軍事的、そして経済的な侵略、またそうした外部勢力と結託した国内の腐敗グループによって深刻な財務問題を抱えることになった。そうした略奪集団の代理人であるIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカはその尻ぬぐいを庶民に押しつけている。それが緊縮財政だ。 そうした理不尽な要求を拒否する姿勢をギリシャ人は今年に入って2度示した。1月25日に行われた総選挙で反緊縮を公約に掲げたシリザ(急進左翼進歩連合)に勝たせ、7月5日の国民投票では61%以上がトロイカの要求を拒否した。トロイカの要求で問題は解決されず、単に年金や賃金がさらに減額され、社会保障の水準も低下し続け、失業者を増やすだけ。利益を得るのは金融機関も政党もメディアも支配しているごく一部の支配層だ。 ところが、アレクシス・チプラス政権は公約に反するトロイカの要求を受け入れた。政党の名前は「急進左翼進歩連合」と勇ましいが、エルネスト・チェ・ゲバラとは違い、革命家の集団ではなかったということだろう。ギリシャを窒息死させる道を選び、自分たちの命運もつきたということだが、国民が納得するとは思えない。混乱が激化する可能性もある。 そうした混乱に治安当局が備えているとイギリスのサンデー・タイムズ紙が7月5日に伝えていた。この新聞、ネオコン/イスラエル第1派のルパート・マードックが所有し、最近は単なるプロパガンダ機関になっている。同紙によると、暴動に備え、軍も加わったネメシス(復讐の女神)という暗号名の秘密作戦が用意されているというのだ。 その報道以上に注目されているのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補。シリザの勝利を受け、3月17日にギリシャを訪問してチプラス首相と会談したのだが、友好目的ではないだろう。 ヌランドとは何者なのか・・・ 5月14日から16日にかけて彼女はキエフを訪問してペトロ・ポロシェンコ大統領、ヤツェニュク首相、アルセン・アバコフ内務相、ボロディミール・グロイスマン最高会議議長らと会談、アメリカはウクライナの政府、主権、領土の統合を完全に確固として支持すると語っている。 その直前、5月12日にジョン・ケリー国務長官もキエフを訪問、ポロシェンコ大統領と会ってクリミアやドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)の奪還を目指す作戦を実行してはならないと言明したのだが、それを無視しろと釘を刺すためにヌランドは乗り込んだのである。 このヌランドはジョージ・W・ブッシュ政権で「摂政」だったと言われているリチャード・チェイニー副大統領の外交担当副補佐官を務め、2005年から08年にかけては大使としてNATOへ派遣されていた。 2004年から05年にかけてウクライナでは「オレンジ革命」で親米派(アメリカの傀儡ということ)のクトル・ユシチェンコが実権を握っているが、この「革命」にチェイニー副大統領が関与しなかったとは考えられない。 ウクライナのネオ・ナチは2006年頃からバルカン諸国にあるNATOの施設やポーランドで軍事訓練を受けてきたとも報道されている。言うまでもなく、2006年当時、ヌランドはNATOで大使として活動していた。 こうしたことを承知でオバマはヌランドを2008年の大統領選挙でスタッフとして雇い入れ、現在に至っている。当初、オバマ政権の国務長官はヒラリー・クリントンだったが、このクリントンがヌランドと個人的に親しいこともヌランドが国務次官補に就任した一因だ。 さて、今年3月、ヌランドはチプラス首相に対し、ロシアと戦っているNATOの結束を乱したり、ドイツやトロイカに対して債務不履行を宣言するなと警告、さらにクーデターや暗殺を示唆したとも言われている。 この情報が正しいなら、自分の警告を無視して7月5日に国民投票を実施、その直前にはロシアのウラジミル・プーチン大統領と会って天然ガス輸送用のパイプライン、トルコ・ストリーム建設の話をしたチプラス首相にヌランドが激怒したことは間違いないだろう。 アメリカの支配層に逆らう国では指導者が暗殺されたり、クーデターで体制が倒されたりしてきたのだが、NATO加盟国であるギリシャには政府がコントロールできない秘密部隊が存在している。イタリアではグラディオ、ギリシャでは特殊部隊のLOKだ。 ところで、ヌランドを有名にしたのは、昨年2月23日にあったウクライナのクーデター。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領が憲法の規定を無視する形で排除されたのだが、その時に彼女は現場で指揮官的な役割を果たしていた。このクーデターはネオ・ナチを利用して行われている。 その19日前、インターネット上にヌランドとジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使が電話でウクライナの「次期政権」の閣僚人事について話している音声がアップロードされている。その中でヌランドが高く評価、つまり自分たちに従順で命令を実行できる能力があるとされていたのがアルセニー・ヤツェニュク。実際、クーデター後、首相に就任している。 その当時、EUはウクライナの混乱を話し合いで解決しようとしていた。それが気に入らないヌランドは会話の中で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉を口にしたのだが、日本のマスコミは話し合いのテーマや、なぜそうした表現をしたのかに触れず、単に下品な表現をしたということに焦点をあてていた。 ヤヌコビッチ大統領に対する抗議活動が始まったのは2013年11月のことで、その中心になったのはユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)。抗議が暴力の度合いを一気に高めたのは2月中旬。広場ではネオ・ナチのメンバーが棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めている。ネオ・ナチは2500丁以上の銃を持ち込み、狙撃も始まって政権は倒された。 25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は反ヤヌコビッチ派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査を実行、26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で結果を報告したのだが、それによるとスナイパーは反ヤヌコビッチ派の中にいるというものだった。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。それに対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。 チプラス政権がアメリカの巨大金融資本やネオコンに屈服した背景は明確でないが、過去の例からすると、相当の脅しがあったことが推測できる。ただ、トロイカの要求は事態を深刻化させるだけ。ギリシャの庶民が黙って餓死を待つとも思えない。
2015.07.11
【ロシア脅威論の復活】 バラク・オバマ大統領が今年5月、次の統合参謀本部議長として指名した海兵隊のジョセフ・ダンフォード大将はロシアをアメリカにとって最大の脅威だと発言した。その直前に空軍長官のデボラ・ジャームズも同じ趣旨のことを口にし、今年2月には国防長官が戦争に消極的なチャック・ヘーゲルから好戦派で2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張したアシュトン・カーターへ交代している。好戦的な方向へオバマ政権は動いている。 本ブログでは何度も書いてきたが、アメリカが進めている世界戦略は1992年に国防総省で作成されたDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいている。ソ連が1991年に消滅したことを受け、アメリカが「唯一の超大国」になったと思い込んだネオコン/シオニストが作成したプランで、「パックス・アメリカーナ」、つまりアメリカによる絶対支配の体制を築こうとしている。ジョン・F・ケネディ大統領の表現を借りると、「墓場の平和」や「奴隷の安全」だ。【ロシア制圧の幻想】 ソ連消滅後、ロシアの大統領は西側資本の傀儡、ボリス・エリツィン。ロシアを属国にできたと考え、戦略の重点を東アジアへ移動させた。そうした戦略の変更は国防総省のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めてきたアンドリュー・マーシャルの判断がベースになり、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツなどネオコンによって行われた。DPGに基づいて書かれたネオコン系シンクタンクPNACの『米国防の再構築』を執筆した人びとはジョージ・W・ブッシュ政権で主導権を握った。 ヨーロッパ連合軍(現在のNATO作戦連合軍)のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、ウォルフォウィッツは1991年の時点でイラク、イラン、シリアを殲滅すると語り、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センター、そしてワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて間もなく、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成され、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたという。 ウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された2年後、国防大学のスタッフだったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンがカート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに働きかけ、1995年には「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が作成されている。 その後、1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、99年には「周辺事態法」が成立、2000年にはナイとリチャード・アーミテージを中心とするグループが「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて」を作成、06年になるとキール・リーバーとダリル・プレスが、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとする論文をフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)で発表した。 論文掲載の翌年、ナイとアーミテージは「米日同盟:2020年までアジアをいかにして正しい方向に導くか」を発表、2012年には「米日同盟:アジア安定の固定化」を発表した。その延長線上に安倍晋三政権の暴走がある。つまり、安倍政権の政策を考えるためにはソ連が消滅した1991年までさかのぼる必要がある。 しかし、こうした「戦略」が幻想にすぎないことがウクライナ情勢が明らかにした。ロシアを乗っ取るため、ウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを実行、成功したかに見えたのだが、それが原因でロシアと中国が関係を強め、BRICSやSCOの存在感が増して、アメリカの支配体制が揺らいでいる。ウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたことを軽く見過ぎていた。その誤算がアメリカの支配システムを破壊しつつある。【日露戦争と安倍政権】 広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを「大英帝国」の脅威だとイギリスの学者で地政学の父とも言われているハルフォード・マッキンダーは1904年に主張した。 その前、19世紀にイギリスは経済的に苦しい状況に陥っている。中国(清)の商品にイギリスの商品は太刀打ちできなかったのだ。そして始めたのがアヘン戦争(1840年から42年)とアロー戦争(1856年から60年)。こうした戦争でイギリスは中国に麻薬のアヘンを売りつけ、さまざまな利権を手に入れている。 そうした麻薬取引で大儲けしたジャーディン・マセソン商会が1859年に日本へ送り込んだエージェントがトーマス・グラバー。明治維新の裏で蠢き、その周辺には坂本龍馬、後藤象二郎、岩崎弥太郎たちもいた。 グラバーは内戦が長期化するという判断から武器を大量に買い込んだが、当時の日本人は賢かったようで、1867年には「大政奉還」、戦争を早期に終了させた。その結果、グラバーの会社は70年に会社は倒産、後に岩崎が作り上げた三菱の顧問に就任する。 1863年に長州藩は井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)をイギリスへ送り出したが、その手配をしたのがグラバーであり、渡航にはジャーディン・マセソン商会の船が使われている。「明治維新」の黒幕はイギリスだったと言えるだろう。 新政府は1871年7月に廃藩置県を実施するが、72年に新政府は琉球を併合、新たに琉球藩をでっち上げる。1871年10月に宮古島の漁民が難破して台湾に漂着、漁民が殺されたことを口実にして台湾へ派兵するため、琉球は日本領だと主張するための形作りをしたわけだ。 1872年にフランス系アメリカ人で厦門の領事を務めていたチャールズ・リ・ジェンダーが来日、外務卿だった副島種臣に台湾への派兵を進めたという。彼のアドバイスも政府の決定に影響したかもしれない。このアメリカ人は1875年まで外務省の顧問を務めた。 1875年になると、日本政府は李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦が派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功した。同条規の批准交換にル・ジェンダーも陪席したという。 その当時、朝鮮では高宗の父にあたる興宣大院君と高宗の妻だった閔妃と対立、主導権は閔妃の一族が握っていた。その閔氏の体制を揺るがせたのが1894年に始まった甲午農民戦争(東学党の乱)で、この戦乱を利用して日本政府は軍隊を派遣、朝鮮政府が清に軍隊の派遣を要請したことから日清戦争へつながる。1895年に日本政府は自国の官憲と「大陸浪人」を使って宮廷を襲撃、閔妃を含む女性3名を殺害、その際に性的な陵辱を加えた。 そうした日本とイギリスは1902年に同盟関係を結び、04年2月に日露戦争が勃発、その最中に帝政ロシアでは第1次ロシア革命が起こる。ロシア政府はこの武装蜂起を鎮圧したものの、戦争どころではなくなり、セオドア・ルーズベルトの調停に応じた。この頃、イギリスではロシアを乗っ取る戦略をスタートさせている可能性が強い。 マッキンダーの戦略は、イギリス、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア、中国東岸を通る「内部三日月地帯」でロシアを締め上げていくというもの。そうした視点からイスラエルやサウジアラビアの「建国」を見ることも必要だろう。その三日月のすぐ外に日本はある。こうしたことを考えると、安倍政権を暴走させている根は日露戦争とつながっていると言えそうだ。
2015.07.10
来年、アメリカでは大統領選が予定されている。その選挙で共和党の有力候補と言われているジェブ・ブッシュはメディアのインタビューで労働時間に触れた。アメリカの人びとはもっと長い時間、働く必要があるというのだ。 現在、アメリカは「ワーキング・ホームレス」の時代に入ったと言われている。そうした中、5月に比べて6月の失業率は5.5%から5.3%に改善されたと宣伝されているが、実態は違うようだ。少なからぬ人が実際に働いている人の数を問題にしている。 労働人口(16歳以上)のうち実際に働いている人の比率は1977年以来、最低の62.6%で、仕事内容による賃金水準の低下もあって仕事を掛け持ちしている人もいるのが実態。失業率の低下をもって労働環境が改善されたとは言えないわけだ。 この発言を伝えたロイターも伝えたが、その見出しは、「改善された経済の中、より長い時間、働けるチャンスをアメリカ人は保つべきだとブッシュは語る」というもので、発言とニュアンスが違った。
2015.07.10
6月中旬から中国で株式相場が急落、その影響は日本は世界へ及んだ。日本の株式相場にしても日銀と年金が腕力で、つまり官製の仕手戦で引き上げた歪んだ相場。仕手本尊の日銀はETF(株価指数連動型上場投資信託)を購入し、年金は「リスクを冒し」て株式を購入、外国の投資/投機家が提灯買いして値上がりしただけのことだった。中国の株式相場が急落しても不思議ではない。 ただ、株式市場ではたまったエネルギーを利用、自身の莫大な資金を使って相場を操縦する人たちがいることも事実。今ではデリバティブなど手段も揃っている。ジョージ・ソロスなどの得意技だ。中国の公安省は中国証券監督管理委員会(証監会)と協力し、空売りの状況を調査しているようだが、彼らも相場操縦を疑っているのだろう。 1970年代の後半から1980年代にかけて日本では相場操縦と時価発行ファイナンスをセットにした資金調達が盛んだった。現場で操作しているのは大手の証券会社だが、その背後には大蔵省(現在の財務省)が存在していたと言われている。そうしたこともあり、日本では相場操縦を厳しく取り締まっていなかったが、今回、中国では「厳しく」罰するという。こうした方針は、資金的な下支えより効果があるだろう。 そうした中、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が設立に合意していた新開発銀行(NDB)が始動、2016年4月に融資を始める可能性がある。こうした動きに合わせ、ロシアのウファではBRICSとSCO(上海協力機構/中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)の首脳会議が開かれた。ギリシャに声をかけたのはこの銀行。すでに中国の提唱でAIIB(アジアインフラ投資銀行)が存在感を誇示、NDBが加わるとアメリカの支配層は心穏やかでいられないだろう。中国が進める現代版シルクロードの脅威もある。 こうした状況の中、ギリシャをロシアへ追いやるようなことがあるとEUは崩壊、アメリカが西ヨーロッパ支配のために組織したNATOも揺らぐ可能性が高まる。ドイツとロシアを分断し、西ヨーロッパ、イスラエル、サウジアラビア、インド、東南アジア、日本を結ぶ三日月地帯でロシアを絞め殺すという米英の戦略も崩壊、経済的にはドルが基軸通貨としての地位から陥落、ネオコン/イスラエル第一派が目論んだアメリカの巨大資本が世界を支配するというプランも崩れ去り、生産力をなくしたアメリカは第三世界になるかもしれない。
2015.07.09
2012年のオリンピックがロンドンで開催されることが決まった翌日、つまり2005年7月7日にこの都市では連続爆破事件があり、その後、オリンピックまでの期間に国全体が監獄国家の様相を強めていく。2001年9月11日にアメリカで起こった出来事(9/11)に比べれば大したことはないかもしれないが、イギリス社会を大きく変化させた。 アメリカとイギリスは2003年3月、「大量破壊兵器」という偽情報を掲げながらイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を倒した。他の国も参加はしていたが、全将兵の約98%はアメリカとイギリスから派遣され、事実上、米英の侵略戦争だった。 イギリスは戦争に参加しただけでなく、偽情報の流布で大きな役割を果たしている。トニー・ブレア政権は2002年9月、「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書を作成、その中でイラクは45分でそうした兵器を使用できると主張、アメリカのコリン・パウエル国務長官から絶賛されている。 ところが、この報告書はある大学院生の論文を無断引用したもの。しかもイラクの脅威を正当化するために改竄されていた。2004年10月にジャック・ストロー外相(当時)が「45分話」は嘘だったと認めている。 実は、2003年5月にはBBCのアンドリュー・ギリガンがラジオ番組でこの文書は粉飾されていると語っていた。サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したというのだ。その後、ギリガンの情報源は特定され、7月に外務特別委員会へ呼び出されたのだが、その直後に変死する。 自分たち嘘を暴かれたブレア政権は激怒、BBCを激しく攻撃、執行役員会会長とBBC会長を辞任に追い込んでギリガンもBBCを離れることになった。政府に屈服したBBCはプロパガンダ機関化が急速に進み、現在に至るまであからさまな嘘を平然とつき続けている。つまり、NHKと大差はないということだ。このときからファシズム化が急速に進んだということ。 そのファシズム化をさらに促進したのがロンドンでの爆破事件。その時、イギリスでは経済関係の国際的な会議が開かれようとしていた。スコットランドで7月6日から8日にかけて開催されたG-8だ。つまり、イギリスの警戒水準は高かったのだが、そうした中、イスラエルの財務大臣だったベンヤミン・ネタニヤフもイスラエルの投資に関する会議に出席するため、ロンドンにいた。 爆破事件の数分前、ロンドン警視庁の捜査官からネタニヤフに対して爆破攻撃があるという警告あり、彼はホテルに留まり、会議には出席しなかったと通信社のAPは伝えていた。ドイツの新聞、ビルト日曜版は最初の爆発があった6分前にロンドン支局へ警告があったことをモサドのメイア・ダガン長官が認めたとしている。 しかし、ストラトフォーなどの情報会社によると、イスラエルは数日前から爆破に関する情報を知っていたが、警察から入手したのではない。これが事実なら、なぜ爆破を阻止する手段を講じなかったのかが問題になる。 事件から間もなくしてザンビア在住のイギリス人、ハルーン・ラシド・アスワトが指名手配になっている。事件の首謀者と見られていた人物だが、アメリカの元検事でジャーナリストのジョン・ロフタスによると、アスワトはイギリスの情報機関、MI6と関係があり、この機関に匿われていたとしている。 また、事件当日、バイザー・コンサルタンツなる会社は某企業のために対テロ訓練をロンドンで行う予定になっていたと同コンサルタンツのピーター・パワーは証言している。訓練の内容は実際の爆破事件と酷似していたという。実際の事件と訓練が重なるという点で、アメリカの9/11やボストンでの爆破事件と共通している。10年前にロンドンであった爆破事件にも疑問は多い。
2015.07.08
政府の政策もあって経済的な環境が厳しさを増している現在、こうしたお願いをするのは心苦しいのですが、このブログを継続させるため、皆さまの御協力をお願い申し上げます。安倍晋三総理大臣、百田尚樹元NHK経営委員のような人びとが「言論の自由」を口実に使って言論を封殺しようとしていることが問題になっていますが、真の意味で言論が保証されていた時代はあるのでしょうか?私が敬愛するジャーナリスト、むのたけじ氏は1991年に開かれた「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言したそうですが、全くその通りです。(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)個人的な話になりますが、私がアメリカの情報活動を調べ始めた切っ掛けは、1976年2月に発覚したロッキード事件に関する本質的な情報を日本のマスコミが伝えなかったことにあります。少ないながら、気骨あるジャーナリストはいましたが、マスコミ全体としては言論機関として機能していませんでした。1980年代の半ばになると状況はさらに悪化します。経費とリスクを背負って取材するより、政治家、官僚、大企業、あるいはその取り巻きから情報を得た方がコストは安く、リスクもないという経営判断があったようです。1987年5月3日に朝日新聞阪神支局が襲撃され、小尻知博記者が犠牲になり、犬飼兵衛記者が重傷を負わされた事件もマスコミを萎縮させたのでしょう。そうした過程の中で気骨ある記者は排除され、マスコミは「くたばった」わけです。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、事態は一段と悪化しました。ジョージ・W・ブッシュ大統領を担いでいたネオコンは1992年に作成した計画に基づき、事件と無関係なイラクを攻撃しようとします。ブッシュ・ジュニア政権の国防総省ではイラクだけでなく、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが攻撃予定国リストに載っていたとウェズリー・クラーク元ヨーロッパ連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は語っています。イラク攻撃には大義がないうえ無謀だと考える将軍が統合参謀本部でも少なくなかったようで、約1年間、実行までに要したと言われています。ところが、日本ではこうした趣旨の話にマスコミは触れようとせず、好戦的な雰囲気を煽る一方でした。その後もプロパガンダ色を強め、日本を「開戦前夜」のところまで導いてきたわけです。そうしたプロパガンダに対抗するため、是非、お力をお貸しください。お願い申し上げます。振込先巣鴨信用金庫店番号:002預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2015.07.08
西側の支配層はメディアを使ってEU信仰、西側幻想を広げ、人びとの感情に訴えて自分たちの強欲な、往々にして違法な政策を正当化してきた。ウクライナやギリシャの国民もそうした政策の犠牲者だ。 そうした状況を理解したギリシャ人びとは国民投票でIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカが要求してきた緊縮財政を拒否する意思を示し、その後も怒りは納まっていない。その一方、トロイカ側も硬直した姿勢は崩していない。 以前にも書いたように、ギリシャが財政危機に陥った大きな理由はふたつ。ひとつはアメリカの巨大金融機関、ゴールドマン・サックスがギリシャで行ったいかがわしいビジネスで、もうひとつは第2次世界世界大戦でドイツが行った略奪やアメリカを後ろ盾とする軍事クーデターによる国の破壊。メディアが盛んに宣伝していた年金の話は事実に反している。 ゴールドマン・サックスは2001年、ギリシャが通貨をユーロに切り替えた際に財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませたことが事態を悪化させた理由のひとつ。ちなみに、2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECBの総裁に就任し、今でもその職にある。 2004年にはアテネ・オリンピックというカネのかかるイベントがあり、軍事費も重くのしかかっていたが、ギリシャの債務が急増したのは2006年頃から。この頃、国内で開発がブームになっていた。中には、建設が許可されていない場所で、違法な融資によって開発しようとして中止が命令されていたケースもあり、このブームで業者と手を組んだ役人の中には賄賂を手にしたものが少なくなかったと言われている。 結局、違法開発も含めてIMFはギリシャ政府に返済を迫り、金融機関を救済する。ウクライナの場合と同じで、IMFは相手政府への融資で金融機関の債権を肩代わりし、取り立て屋になるわけだ。 その結果、ギリシャでは年金や賃金が減らされ、社会保障の水準は低下、失業者は大きく増えた。GDP(国内総生産)は2010年から−4.9%、−7.1%、−7.0%、−4.2%と下がり続け、失業率は12.6%、17.7%、24.3%、27.3%。若年層の失業率は60%に達すると言われている。しかも、借金の返済は不可能。こんな状態でトロイカの要求に賛成した人が39%弱もいたことが驚きだ。 アメリカの支配層に逆らう国では指導者が暗殺されたり、クーデターで体制が倒されたりしてきた。NATO加盟国であるギリシャには政府がコントロールできない秘密部隊が存在している。イタリアではグラディオ、ギリシャでは特殊部隊のLOKだ。左派勢力が優勢だと言われた1967年5月の総選挙の前月、ギリシャで軍事クーデターがあったが、今回は銀行が攻撃の主体になるとする噂もある。 今回の国民投票ではトロイカ側の傲慢な姿勢が結果に表れたという見方がある。ギリシャを食い物にしようとする姿勢を変えないなら、ロシアと中国へ接近させることになる。すでにパイプラインの建設やBRICSへの参加などをロシア政府は働きかけているようだ。もしギリシャの離反が不可避になったなら、マケドニアを含め、この地域をカオス状態にしようとするかもしれない。
2015.07.07
ギリシャ国民は7月5日に行われた国民投票でIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)が要求していた緊縮政策を拒否する意思を示した。トロイカの案では年金や賃金がさらに減額され、社会保障の水準も低下、失業者は増え、借金も膨らむという地獄が待っている。 この様子を見ていたほかのEU加盟国の庶民はIMF、ECB、そしてEUを信用しなくなるだろう。現在、フランスで最も人気のある政治家、国民戦線のマリーヌ・ル・ペン党首はEUを厳しく批判している。イギリス、スペイン、イタリアなどでもEUに対する評判は良くないが、ギリシャの状況を見てそうした感情は強まりそうだ。 それに対し、EU幻想に取り憑かれた人びとを利用し、昨年2月にアメリカのネオコン/イスラエル第1派がクーデターを成功させたのがウクライナ。今では西部でも意見が違ってきているだろうが、ネオ・ナチの暴力で意思表示は難しい。そんなファシズム国だが、IMFは債務不履行になっても資金を投入し続けるとしている。 黒海に面したウクライナの港湾都市、オデッサはビクトル・ヤヌコビッチの支持者が多かった地域で、キエフのクーデターに批判的な市民が多かった。そこで、昨年5月2日にネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)のグループが住民を虐殺、恐怖政治を始めた。 その時、人びとが逃げ込んだ労働組合会館で50名弱が殺されたと伝えられているが、これは地上階で発見された死体の数。実際はそれを上回る数の人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名にのぼると住民は語っている。 2月のクーデター後、東部や南部では憲法を無視した政権交代に反発する声が高まり、それを力で封じ込めようとする動きが出てくる。節目になった出来事はジョン・ブレナンCIA長官のキエフ訪問。4月12日のことだ。キエフ政権のアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が制圧作戦を承認したのは、その2日後だった。 4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作について話し合われている。オデッサの虐殺はその10日後の出来事。 そのオデッサの知事にグルジア(最近はアメリカ風にジョージアと呼ぶらしい)のミヘイル・サーカシビリ元大統領が任命されたという発表が今年5月30日にあった。キエフ政権にはアメリカが送り込んだ閣僚が何人かいるが、サーカシビリの場合、彼のスタッフはアメリカ政府から給料を貰い、警察官はカリフォルニアから派遣された同業者が訓練するのだという。 こうした発表の直前、サーカシビリが会っていたのはジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使。昨年2月22日にヤヌコビッチは排除されたが、その18日前にYouTubeで公表された音声によると、ビクトリア・ヌランド国務次官補と「次期政権の閣僚人事」を話し合っていた。ウクライナのクーデターは続行中だということ。勿論、ネオコンの最終目標はロシアだが、この狂気もEUの人びとは見ている。EUで狂っているのは「エリート」だけだ。
2015.07.06
7月5日にギリシャでは財政問題に関する国民投票があり、61%以上がIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカが要求してきた緊縮財政を拒否する意思を示した。このトロイカ案で問題が解決されることはなく、年金や賃金がさらに減額され、社会保障の水準も低下し続け、失業者を増やすことは明白だった。 1%とも0.01%とも言われる富裕層を救済する一方、庶民の生活を劣悪化させる要求をはねつけたのは合理的な判断だと言えるのだが、そうした状況であるにもかかわらず、39%弱がトロイカ案に賛成したことも事実。富裕層に身も心も捧げようとしているのか、状況を理解できていないのか、どちらかだろう。次の問題は軍事的な、あるいは金融的なクーデターへの備えだろう。西側メディアのプロパガンダも強化されるはずだ。 日本でも支配層は似たことを行ってきた。国に銀行から多額の借金をさせ、庶民の富を支配層が奪うという仕組みが作られるのは1970年代の後半から。特に2000年代の前半、つまり小泉純一郎政権にも国債の発行額が大きく増えている。 よく、国債を発行して金利を払うなら紙幣を増刷すべきだという意見を聞くが、これは正論。発行に歯止めが必要だというなら、そうした仕組みを作れば良いだけの話だ。にもかかわらず国債を発行したがるのは「投資先」を作り、「カネ余り」で悩んでいた企業や富裕層を儲けさせるため。 富が大企業や富裕層に集中、滞留すれば景気が悪化して商品は売れなくなる。そこで正業を諦めて博奕に目が向くようになり、世間では「財テク」なる用語が広まった。素人が賭場に足を踏み入れたなら、カモになるのは必然で、例えば伊藤萬(後のイトマン)の破綻。 この会社も1970年代に本来の仕事が不振になり、住友銀行に支援を頼む事態になる。そこで銀行から送り込まれてきたのが同行の人形町支店長だった河村良彦。この人物は一種の賭博である「石油コロガシ」で業績を回復させるが、1985年に大手商社や石油会社とトラブルを起こして事件になる。 そうした中、住友銀行の紹介で入り込んできたのが伊藤寿永。伊藤と親しかった池田保次も絡んでくるが、池田は山口組の岸本才三総本部長の下にいた人物で、伊藤は同組の幹部だった宅見勝と親しくしていた。宅見は山口組の5代目組長、渡辺芳則を支えた幹部のひとりだったが、1997年にホテルのロビーで射殺されている。要するに、住友銀行がイトマンと山口組をくっつけたわけだ。 住友銀行は平和相互銀行をめぐるトラブルでも名前が出てくる。この相互銀行は「政治家の財布」とも言われるほど深い闇に覆われていた。1979年にオーナーの小宮山英蔵が死亡、長男の英一と娘婿の池田勉が対立して英一が勝ち残る。英一の後ろ盾になったのが「4人組」と呼ばれていた経営陣だが、徐々に英一は疎んじられていく。そして1980年代の半ば、小宮山家は4人組と主導権争いを始めた。 4人組とは稲井田隆、伊坂重昭、鶴岡隆二、滝田文雄を指す。伊坂は東京地検特捜部の元検事。「特捜の鬼」と呼ばれた河井信太郎の下で造船疑獄の捜査に参加し、「将来の検事総長候補」と見られていたのだが、1962年に辞表を提出、弁護士に転身している。検事総長より魅力的な世界を見たのか、検察の世界に絶望したのだろう。1970年に伊坂を平和相銀に紹介したのは最高検検事になっていた河井だ。 その争いの中、「川崎定徳」という会社の佐藤茂が登場する。川崎定徳が資産を管理していた川崎財閥は水戸藩の金庫御用達として発足したという。この佐藤に対し、住友銀行はイトマンファイナンスを介して500億円程度を融資したと言われ、その親会社であるイトマンは住友銀行の別働隊だと見られるようになっていた。1986年7月に4人組を含む7名を東京地検特捜部が商法違反の容疑で逮捕、その年の10月に住友銀行は平和相互銀行を吸収する。 川崎財閥と深い関係にある千葉銀行は旧日本軍が大陸で略奪した財宝と関係が指摘されている。1943年に憲兵隊の杉山某少佐と塚本清(通称、塚本素山)少佐がフィリピンからダイヤモンドを持ち帰り、千葉憲兵分隊長になった杉山は千葉合同無尽(後の京葉銀行)の玉屋喜章と接触、その推薦で千葉銀行の頭取だった古荘四郎彦に会ったとされている。なお、四郎彦の兄、古荘幹郎は陸軍大将で、陸軍次官を務めたこともある。このダイヤモンドは一旦、千葉銀行の金庫に納まるが、古荘はダイヤモンドを金庫から運び出し、行方不明になる。熱海の某宗教団体の本部へ運ばれたとも言われ、「謀略」で有名なアメリカ軍のジャック・キャノン中佐が絡んでくるという。(塚本の話は本ブログで触れたことがあるので、今回は割愛する。例えば、ココ、またはココ) そうしたダイヤモンドの一部が外部へ流出、民間から供出されたダイヤモンドの行方を追及していた衆議院行政監督特別委員会の網にかかって調査の対象になるが、曖昧なまま幕引きになった。 その当時、ダイヤモンドや金など貴金属のインゴットがさまざまな場所で発見されていたが、衆議院議員だった世耕弘一(世耕弘成の祖父)は1947年に衆議院決算委員会で「日銀の地下倉庫に隠退蔵物資のダイヤモンドがあり、密かに密売されている」と発言している。この隠退蔵物資を摘発する目的で設置されたのが「隠匿退蔵物資事件捜査部」、後の東京地検特捜部だ。 アメリカ支配層の略奪はギリシャが最初ではなく、昔から行われてきた。17世紀のイギリス、ウィリアム3世の時代から始まると言う人もいるが、日本もその餌食になりつつある。特別会計の闇も未解明なままTPPや集団的自衛権を導入しようとしている支配層は欲望の塊にすぎない。
2015.07.06
イスラエルは昨年7月から8月にかけてガザへ軍事侵攻、6カ所の国連が運営する学校を破壊するなど例によって破壊と殺戮の限りを尽くした。この攻撃を調べていた国連の独立調査委員会は2015年6月22日に報告書を発表、2251人のパレスチナ人が殺され、そのうち1462名が市民で、551人の子どもが含まれているという。一方、イスラエル側は兵士が67名、市民が6名。イスラエルが戦争犯罪を犯したことも認めている。7月4日には国連人権理事会でイスラエルの責任を認める決議を賛成41カ国、反対1カ国、危険5カ国で採択した。 勿論、反対はアメリカ。報告書が公表された後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相たちは国連人権委員会を辞めるかどうかを話し合ったようだが、アメリカのテッド・クルズ上院議員はアメリカが同委員会から抜けるべきだと主張したという。 決議の直前にはIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)がハマスに対し、次はガザを制圧するという声明を出したと伝えられている。6月にガザからロケット弾を撃ち込んだのはISだということも明らかになった。 昨年夏のガザ侵攻はハマスがヨルダン川西岸で3名のティーンエイジャーを誘拐、殺害し、ロケット弾を撃ち込んできたことへの報復だイスラエルは主張しているようだが、ハマスは関与を否定、実行を認めたのはISに忠誠を誓っているグループだった。 そのISをイスラエルが支援していることは本ブログでも繰り返し、指摘してきた。駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンは2013年9月、シリアのバシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っているが、今年7月2日にはネタニヤフ首相がISをイランと比較し、脅威ではないとしている。そのISはイスラムやキリスト教に関係した歴史的な建造物を破壊しているが、ユダヤ教に関係した文化遺産には手を出していないに等しい。 かつてはイスラエルの残虐行為を見て見ぬ振りの国が多かったが、最近は状況が変わった。そのアメリカがイスラエル、サウジアラビア、トルコなどと手を組んでアル・カイダ系武装集団やISを使っていることは公然の秘密だろう。アメリカは「友好国」の支配層を飴と鞭で動かしているが、孤立していることは否定できない。今後、脅し続けなければならないだろうが、そうなるとますます孤立する。アメリカはイスラエルと心中するつもりなのだろうか?
2015.07.05
アメリカの電子情報機関NSAがフランスの政治家や企業などを秘密裏に監視していることを示す文書を内部告発支援サイトのWikiLeaksが公表した。大統領は勿論、閣僚、外交官、その他の政府高官だけでなく、経済活動も監視、情報はアメリカを拠点とする巨大資本のカネ儲けにも使われているはずだ。 そうした情報を公開したWikiLeaksのジュリアン・アッサンジはフランスのフランソワ・オランド大統領に亡命を求める公開書簡をル・モンド紙に発表したが、この要請をフランス政府は即座に拒否している。アッサンジが本気でフランスに亡命しようとしていたとは考え難く、おそらく、フランス支配層がアメリカ支配層に従属している姿を明らかにしようとしたのだろう。 イスラエルに関する情報を公開していないWikiLeaksに疑問を抱くのは当然だが、NSAが西側を監視してきたことは知られている。何度も書いてきたが、1972年には元NSA分析官がランパート誌の8月号で内部告発、全ての政府をNSAが監視していると語っているのだ。その時、NSAの存在も明らかになった。 NSAはイギリスの電子情報機関GCHQとUKUSAという連合体を組織した。その下にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関を従えているのだが、GCHQの存在は1976年まで秘密にされていた。 GCHQを明るみに出したのはダンカン・キャンベルとマーク・ホゼンボール。ふたりはタイム・アウト誌でこの事実を発表するが、その記事が原因でホゼンボールは国外追放になり、キャンベルはMI5(治安機関)から監視されることになる。 その数年後、キャンベルはタイム・アウト誌のクリスピン・オーブリー記者と電子情報機関の元オペレーターを取材、この3名は逮捕された。オーブリー(Aubrey)、元オペレーターのベリー(Berry)、そしてキャンベル(Campbell)の頭文字をとって「ABC事件」とも呼ばれている。そして1988年、キャンベルはアメリカが地球規模で行っている盗聴システム、ECHELONの存在を明らかにした。 個人的な話で恐縮だが、キャンベルからアドバイスを受けながら調査、1980年代から筆者は大手マスコミや出版社にこの問題を取り上げようと持ちかけ続けたが、無視、あるいは拒否された。結局、記事を掲載したのは「軍事研究」(2001年2月号)だった。 UKUSAに組み込まれているカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関はアメリカとイギリス(最近はNSAが中心)の命令に従って動く国家内国家。アメリカが日本に情報機関を創設するように要求している理由のひとつはここにある。アメリカ支配層は軍事同盟(NATOや日米安保)と情報機関のネットワークを使い、相手の国を支配しているのだ。
2015.07.04
西側の巨大金融資本から首を締め上げられて窒息状態のギリシャが、遅まきながら、酸素を求めて動き始めたのは今年1月25日のことだ。総選挙でシリザ(急進左翼進歩連合)が勝利したのである。 しかし、その当時から先行きを危ぶむ声はあった。ひとつは獲得した議席が300議席のうち149議席、つまり単独過半数に達しなかったこと。もうひとつは財務大臣に就任したヤニス・バルファキスの経歴だ。その疑念がここにきて膨らんでいる。 バルファキスはギリシャで生まれ、1978年にイギリスのエセックス大学へ入って経済学と数理統計学を学び、87年に同大学で経済学の博士号を取得している。1988年には特別研究員としてケンブリッジ大学に在籍、89年から2000年までシドニー大学で講師として経済学を教えていた。その間にオーストラリア国籍を取得、2000年からアテネ大学の教授になり、13年から15年まではテキサス大学で教えている。 その間、2004年から06年にかけてPASOK(全ギリシャ社会主義運動)の党首だったゲオルギオス・パパンドレウの経済顧問を務めた。パパンドレウは財政危機が発覚した2009年に首相となるが、国際金融資本に押し切られる形で事態を深刻化させ、11年に辞任している。その間もバルファキスがパパンドレウにアドバイスしていたようで、今回もこの時と同じ「間違い」を犯していると指摘されている。 前にも書いたことだが、ギリシャの財政危機は大きな原因がふたつあり、ひとつは第2次世界世界大戦や軍事クーデターによる国の破壊であり、もうひとつはアメリカの巨大銀行、ゴールドマン・サックスがギリシャで行ったビジネス。 2001年にギリシャが通貨をユーロに切り替えた際、ゴールドマン・サックスは財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませたのでだが、そうした操作が続けられていたであろう2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECBの総裁に就任した。今でもトロイカの一員としてギリシャ政府を恫喝している。 バルファキスに疑惑の目が向けられているもうひとつの理由はロシアの提案に対する対応。ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムでアレクシス・チプラス首相はロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談、天然ガス輸送用のパイプライン、トルコ・ストリームの建設に絡んで50億ドルを前払いすると提案されている。また、プーチンはBRICS開発銀行への参加を持ちかけたのだが、これが実現されると闇金(IMF、ECB、EC)の借金を有利な条件の融資に切り替えられ、ギリシャは地獄への道から離脱することが可能になる。 ところが、こうした提案をバルファキスは拒否したようで、闇金からの恫喝を受け続ける意向を示した。ギリシャ政府は銀行のクーデターを恐れているようだが、バルファキスはその銀行を含む闇金グループが送り込んだ「トロイの木馬」ではないかと言われているわけだ。 国民投票を間近に控え、イギリスのフィナンシャル・タイムズがギリシャで8000ユーロ以上の預金は30%以上削減すると報道、ギリシャ政府は全面否定している。すでに富裕層や大企業は資産をロンドンを中心とするオフショア市場のネットワークに沈めているので、ターゲットになるのは庶民のうち比較的余裕のある人びとだということになってしまい、シリザの支持者は怒るだろう。イギリスのメディアが嘘を伝えることは珍しくないので、今回も心理操作の可能性がある。
2015.07.03
【国民投票】 IMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカの要求に従った結果、ギリシャの財政は悪化し、返済不能な状態。「緊縮財政」で年金や賃金が大幅に減額され、医療や教育などの水準も引き下げられ、庶民の生活環境は劣悪化するばかりだ。つまり、ギリシャを再生させるという視点から見るとトロイカの政策は失敗している。それでも同じ政策を強要しているのは、彼らがギリシャを再生させようとしていないからだ。 7月5日に実施すると発表した国民投票は賛成と反対が拮抗しているようで、緊縮財政の強化に反対する意見が多ければ、ギリシャ政府はトロイカとの「交渉」に使うつもりかもしれない。が、譲歩する意思のない相手には無駄なこと。「交渉」を続けるということは、ギリシャ政府がトロイカに恫喝の場を与えるだけだ。ユーロ圏に留まれば、ギリシャは奈落の底へと落ちていくだけのことであり、同じ道をイタリアやスペインだけでなく、EU、そして西側全域が追いかけることになる。TPP/TTIP/TISAは庶民を地獄へ送り込む仕掛けだ。ギリシャ国民を地獄から救い出すために政府がなすべきことはユーロ圏からの離脱、アメリカ支配層との決別だろう。 IMFの見通しによると、GDP(国内総生産)は2010年に−4.0%、11年は−2.6%と減少するが、12年には+1.1%へ好転、13年は+2.1%になるはずだったが、実際には−4.9%、−7.1%、−7.0%、−4.2%と下がり続けた。この間、27%の下落ということになる。このように経済状況が悪くなれば当然だが、雇用環境も悪化した。IMFは失業率を11.8%、14.6%、14.8%、14.3%と予測していたが、実際は12.6%、17.7%、24.3%、27.3%。国民が怒るのは当然だ。 ギリシャ国民のトロイカに対する怒りは限界に近づいている。国民投票は怒りの「ガス抜き」になるという見方もあるが、緊縮財政を拒否する国民の意思が明白になった場合、それを無視すると混乱に拍車をかけることになる。国民の意思、いわゆる民意を封印したいトロイカとしては、国民投票を実施させたくないだろう。日本人とは違って反骨精神のあるギリシャ国民の意思は国際金融資本にとっても怖い存在だ。【NATOの秘密部隊】 しかし、アメリカの支配層は西ヨーロッパを支配する暴力装置を持っている。第2次世界大戦後、アメリカは軍事力でソ連を包囲する一方、西ヨーロッパでは巨大資本のカネ儲けに邪魔な存在を抹殺する仕組みとして「NATOの秘密部隊」を組織した。例えば、イタリアのグラディオは1960年代から1980年代にかけて「極左」を装って破壊活動を続け、左翼勢力にダメージを与えると同時に治安体制を強化している。「緊張戦略」だ。 NATO加盟国である以上、ギリシャにも秘密部隊は存在、その中心は特殊部隊のLOKだ。ギリシャでは1967年5月に選挙が予定され、アメリカの支配層は左翼勢力の勝利を恐れていた。軍事クーデターがあったのは4月で、1974年まで軍事体制が続く。そのクーデターにLOKも参加していた。LOKだけでなくギリシャの軍部は全体としてCIAと緊密な関係にある。 アメリカとイギリスの電子情報機関、NSAとGCHQはUKUSAなる連合体を組織、アングロサクソン系のカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関も参加している。この連合体はNSAとGCHQの命令で動く組織で、各国政府はコントロールできない。つまり「国家内国家」なのだが、「NATOの秘密部隊」も同じ。やはりアメリカとイギリスの破壊活動部門が指揮している。 この秘密部隊の歴史は第2次世界大戦までさかのぼることができる。1941年からドイツ軍はソ連への軍事侵攻(バルバロッサ作戦)を開始するが、1942年から43年まで続いたスターリングラードの攻防戦でドイツ軍は壊滅、ソ連軍が反撃に転じる。それまで傍観していた米英は慌てて動き始め、1944年の初夏にノルマンディー上陸作戦を実行しているが、同じ頃、アメリカとイギリスの破壊工作機関、つまりSOとSOEはフランスでゲリラ戦を展開するために部隊を編成している。これがジェドバラ。ヨーロッパでドイツ軍と戦っていたレジスタンスはコミュニストの影響が強く、その対策だったという見方がある。 ジェドバラ人脈はCIAの破壊工作部門を作り、特殊部隊へも流れていった。CIAと特殊部隊の関係が深いのは、こうした歴史があるからだ。 1961年にフランスではシャルル・ド・ゴールを敵視する軍人がOASという秘密組織を作り、アルジェリアでのクーデターを計画、アルジェリア政府の要人を暗殺したり、イスラム教徒を殺害したり、銀行を襲撃しているが、その背後にはCIAが存在した。 OASの一部は1962年にド・ゴール暗殺を試みて失敗、実行グループのリーダーだったジャン・マリー・バスチャン・チリー大佐は処刑された。暗殺未遂の4年後、フランスはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追放する。フランスがNATOへ完全復帰したのは、2009年、ニコラ・サルコジ大統領のときだ。 OASへ資金を供給していた会社のひとつがパーミンデックス。1958年に設立された会社で、当時の社長兼会長はSOEに所属していたことがある。同社は1962年にイタリア政府から追放され、本部をヨハネスブルクへ移している。パーミンデックスの理事に含まれていたクレイ・ショーは、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺に絡んでジム・ギャリソン検事が起訴した人物だ。【JFKの平和】 1963年6月、暗殺される5カ月前にケネディ大統領はアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と呼ばれる演説をしている。冷戦の最中、キューバ危機を話し合いで解決した大統領は「世界平和」について語ったのだ。 その平和とは「アメリカの兵器によって世界に押しつけられる『パックス・アメリカーナ』ではありません。墓場の平和でも奴隷の平和でもありません。私は本当の平和、地上で生きるに値する人生を過ごせる平和、人と国が成長し、希望を持ち、子どもたちのためによりよい生活を築くための平和、単にアメリカ人のためでなく全人類のための平和、単にわれわれの時代だけではなく、全ての時代の平和」だった。ネオコン/イスラエル第一派をはじめとする好戦派とは正反対の主張だ。
2015.07.03
アメリカとキューバが国交を回復させ、大使館を再開させるという。つまり、アメリカはキューバに破壊活動の拠点を手に入れるということだ。 先住民を殲滅した後、1898年の「メイン号爆沈」を口実にしてアメリカの支配層はラテン・アメリカへの侵略を開始、植民地化した。そうした侵略の手先として動いていたのが海兵隊だが、第2次世界大戦後になると、情報機関が軍事クーデターで体制を転覆させる時代に入る。例えば、1953年にはイランで、54年にはグアテマラで、73年にはチリで合法的に成立した政権を倒して独裁体制を樹立させた。 アメリカ支配層を後ろ盾とする独裁者に支配されていたキューバで住民に支持された勢力が1959年に革命を成功させると軍事侵略を計画する。計画を立てたのはドワイト・アイゼンハワー政権だったが、亡命キューバ人を使った侵攻作戦が実行されたのはジョン・F・ケネディ政権になった直後の1961年。 この亡命キューバ人の攻撃が失敗することはアメリカの軍や情報機関は織り込み済み。その侵攻部隊を助けるという名目でアメリカ軍を介入させようとする動きがあったのだが、これはケネディ大統領が阻止した。この後、1953年からCIA長官を務めていたアレン・ダレスを1961年に解任するが、ケネディはCIAそのものを解体する意向だったとも言われている。軍の情報機関DIAが設立されたのはこの年のことだ。 アメリカの好戦派は「キューバへの反撃」という口実で軍事侵攻を計画する。「ノースウッズ作戦」だ。まずキューバ軍を装ってアメリカの施設や船舶を攻撃し、フロリダ州マイアミなどの都市で「テロ」を実行、最終的には、アメリカを離陸した旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたことにするというシナリオだった。これもケネディ政権は拒否する。この計画の中心人物だったライマン・レムニッツァー統合参謀会議議長は再任を拒否され、NATOへ赴任させられた。なお、レムニッツァーは1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めている。 こうした好戦的な軍人を懸念する議員もいて、アルバート・ゴア上院議員(ビル・クリントン政権の副大統領アル・ゴアの父親)らが調査している。ケネディ大統領が暗殺された翌年、ジョン・フランケンハイマーが監督した「5月の7日間」というクーデター計画をテーマにした映画が公開されているが、これはケネディ自身が制作を進めたのだという。 第2次世界大戦が終わった直後から軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画していた。1949年にアメリカの統合参謀本部はソ連の70都市へ133発の原爆を落とす計画を立てているが、この段階における核兵器の輸送手段はSAC(戦略空軍総司令部)の爆撃機。1948年から57年にかけてSACの司令官を務めたのが、日本の都市で多くの住民を焼き殺したカーティス・ルメイ中将だ。SACが1954年に立てた計画によると、600から750発の核爆弾をソ連に投下、2時間で約6000万人を殺すことになっていた。 その翌年にアメリカが保有する核兵器は2280発になり、1958年には3000発近くにまで膨らんだ。その間、1956年にルメイたちは1000機近いB47爆撃機をアラスカやグリーンランドの空軍基地から飛び立たせ、北極の上空を通過、ソ連の国境近くまで飛行してUターンさせるというソ連攻撃の演習を行っている。 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、アメリカ軍がソ連に対する先制核攻撃計画をスタートさせたのは1957年初頭。先制核攻撃に必要なICBMを準備できるのは1963年の終わりだと好戦派は見通していた。 当然、こうした動きをソ連は察知したはずで、対抗上、中距離ミサイルをキューバへ運び込むのは自然の流れ。そうした対抗策を予想してアメリカはキューバへの軍事侵攻を計画したのだろう。 アメリカは自分たちの手駒になる軍人を育成するため、1949年にパナマ運河の近くに軍事訓練の施設「軍カリブ学校」を作り、63年には「SOA」に、また84年にはパナマを追い出され、アメリカのジョージア州フォート・ベニングへ移動してWHISC(またはWHINSEC)に名称を変更している。訓練の内容は反乱に対処する技術のほか、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などのが含まれている。この学校の卒業生は帰国後、アメリカ資本にとって邪魔な人びとを排除するために「死の部隊」を編成、軍事クーデターも起こしている。 その間、1973年にはチリで民主的に選ばれた政権を軍事クーデターで倒し、今では中東、アフリカ、ウクライナなどでアメリカの属国になることを拒否した体制を倒し続けている。その手先がイスラム武装勢力やネオ・ナチ。アメリカの支配層はカネ儲けのため、人権を無視して民主主義を破壊してきた。しかも、破壊と殺戮の口実に人権と民主化を掲げている。 アメリカの一部支配層(ネオコン/イスラエル第一派)がロシアとの戦争へ向かって驀進している現在、キューバを押さえようとしているのは不気味だ。革命の指導者、フィデル・カストロは今でもアメリカを信用していないようだが、当然である。バラク・オバマ政権が本当のことを言い、約束を守ったことを思い出すことはできない。アメリカは嘘の上に築かれた帝国だ。
2015.07.02
ギリシャの財政危機 西側の巨大金融資本から首を締め上げられ、ギリシャは窒息状態になっている。こうした仕打ちを日本のマスコミなどは「支援」というわけだが、年金や賃金を大幅に減額、社会保障の水準を下げ、失業者を増やすTPP/TTIP/TISA先取りのような政策を押しつけるIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカに対するギリシャ国民の怒りは限界に近づいている。有力メディアはギリシャ国民の約7割が経済通貨同盟からの離脱に反対していると伝えるだけで、こうした事実は無視しているようだ。 ギリシャが財政危機に陥った大きな理由はふたつある。ひとつはアメリカの巨大銀行、ゴールドマン・サックスがギリシャで行った「ビジネス」で、もうひとつは第2次世界世界大戦や軍事クーデターによる国の破壊。メディアが盛んに宣伝していた年金制度や公務員の問題は副次的な問題である。とにかく、彼らは庶民へカネが流れることを嫌い、富裕層や大企業を富まそうとする。それが自分たちの個人的な利益につながると考えているのだろう。ゴールドマン・サックス 2001年にギリシャが通貨をユーロに切り替えた際、ゴールドマン・サックスは財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませた。このことが事態を悪化させた理由のひとつ。そうした操作が続けられていたであろう2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECBの総裁に就任し、今でもその職にある。 債務を隠す手法として利用されたのがCDS(Credit Default Swap/クレジット・デフォルト・スワップ)。債権者が債務不履行のリスクを回避するため、幾ばくかのカネ(保険料)を支払ってリスクを引き受けてもらうという取り引きで、2000年の終わりに「CFMA(商品先物現代化法)」がアメリカ議会を通過し、広まることになった。その法律を推進していたひとりがアラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長だ。 こうした取り引きが何をもたらすかを巨大資本や富豪たちは最初から理解、自分たちの資産は国外へ避難させ、その一方でカネ儲けに勤しんでいたようだ。資産の避難は1970年代にロンドンを中心として張り巡らされたオフショア市場のネットワークが利用されたのだろう。そうした資産がどのように隠されたかを今から調べることはきわめて難しい。ナチ・ゴールド 歴史的な問題も無視できない。大戦の際、1941年から44年までギリシャはドイツに支配され、4万人以上が処刑されたほか、寒さと飢えもあって25万から40万人が死亡、21万人が強制労働のためにドイツへ連れ去られたという。しかも都市は破壊され、船は沈められ、橋は爆破され、そして強制的にドイツへ融資させられたが返済はされず、貴金属も盗まれた。こうして被った被害の賠償が行われたとは言えず、現在のギリシャ政府はこの問題を持ち出している。 ギリシャだけでなく、ドイツは占領した国で金のインゴットなど財宝を盗んでいたことがわかっている。いわゆる「ナチ・ゴールド」だ。ヨーロッパでは個人の資産も銀行に預けられているケースが多く、ドイツとしては「効率よく」盗むことができた。 こうした財宝の少なからぬ部分は行方不明になっているが、多くはアメリカの一部支配層が押さえたと見られている。アメリカの破壊活動を取り仕切っていたウォール街の弁護士、アレン・ダレスの側近として知られ、大戦前からイタリアで活動していたヒュー・アングルトンがナチ・ゴールドをドイツから秘密裏に持ち出すシステムの管理者だったようだ。 その息子、ジェームズもダレスの側近で、後に封書の開封工作を指揮、それを知ったウィリアム・コルビーCIA長官に解任されている。それから間もなく、好戦派が台頭する中、コルビーは長官を辞めさせられ、替わって就いたのがジョージ・H・W・ブッシュ。このとき、ソ連脅威論を宣伝するために「チームB」が活動している。事実に基づく分析をしていた既存の部署を好戦派は気に入らなかったのである。 占領された国から持ち出された金塊の大半はスイス、ベルギー、リヒテンシュタインなどの銀行へ運び込まれ、証書は満州国(中国東北部)の銀行へ送られ、そこで隠蔽工作が行われて最終的にはスイスにあるBIS(国際決済銀行)で決済されたとされている。(John Loftus & Mark Aarons, “The Secret War Against The Jews”, St. Martin’s Press, 1994)金の百合 日本も朝鮮半島から中国大陸、そして東南アジアで財宝を組織的に略奪したとされている。略奪プロジェクトの中心には昭和天皇の兄弟がいて、1937年から開始、政府が保有する資産だけでなく、銀行や裕福な家に押し入って金や宝石などを奪ったようだ。 持ち運びが容易な財宝はすぐ日本へ運ばれたようだが、多くはフィリピンに集積、そこから運び出す予定になっていた。いわゆる「山下兵団の宝物」だが、実際の工作に山下奉文大将はほとんど関係していない。金塊は東京にあるスイス系銀行、マカオにあるポルトガル系銀行、あるいはチリやアルゼンチンの銀行に運び込まれたともいう。(Sterling & Peggy Seagrave, “Gold Warriors”, Verso, 2003) 山下の前に第14軍司令官だったのは田中静壱中将で、1943年に東京へ戻って参謀本部付きになり、大将へ昇格、敗戦時には東部軍管区司令官兼第12方面軍司令官。そのときに副官だった塚本清(通称、塚本素山)はその前、1943年にダイヤモンドを日本へ運び込んだとされている。塚本は1961年に創価学会の顧問に就任した。池田大作が会長に就任した翌年のことだ。その2年前、1958年には戸田城聖会長が「急性心衰弱」で死亡している。 そうした財宝に関する情報を最初につかんだアメリカ軍の将校はエドワード・ランズデールだと言われている。ランズデールは大戦中、OSS(戦略事務局)に所属していた人物で、戦後もキューバやベトナムでの破壊活動などに従事、1950年代後半にはフィリピンの殺し屋を連れて東京にも出入りしていたという。1963年11月22日にジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際、現場にいたとする軍人仲間もいる。 フィリピンで隠された財宝がフェルディナンド・マルコスの台頭と関係があると考えている人もいる。そのマルコスをアメリカ軍は1986年に国外へ連れ出すが、その作戦の黒幕はネオコン/イスラエル第一派のポール・ウォルフォウィッツだった。マルコスがフィリピンの外へ出たことから裁判が始まり、宮殿から財宝に関する文書が出てきたほか、財宝に関する情報も漏れ始めるのだが、詳細は割愛する。 かつてスメドリー・バトラー米海兵隊少将が言ったように、戦争は不正なカネ儲け、つまり押し込み強盗だ。アメリカの侵略戦争に荷担する「集団的自衛権」にも当てはまる。日本の有力メディア、大手出版社、権威筋がこの問題に触れない理由は言うまでもないだろう。
2015.07.01
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