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『バスラマ・インターナショナル』の最新号の特集「都市間バスサービスの新時代2」。『バスラマ』は以前から、同じ都市間輸送サービスに2つの異なったルールが存在することについて矛盾や問題点の指摘を続けている。その趣旨はよくよく理解できるものの、高速路線バスの現状“だけ”を「正」としている点には、和田編集長には恐縮だが私は否定的だ。問題は、公益性が大きい「平場」の乗合バス向けの規制をそのまま高速バスに当てはめている点にあるのであって、諸外国同様、高速バスには高速バスに合った規制が当てはめられていればこのような問題は発生していないのだ。JRバス関東の万代社長も本特集のインタビューで「一般的な利便性向上に資するものならば事後届出でいいのではないか」などと例を挙げた上で「ドリーム号と市街地路線バスが同じバスである必然性は無い」とおっしゃっておられる。全く同感だ。我々は、事業をやっているのである。スポーツであれば、サッカーなら手を使ってはいけない、ラグビーなら前へ投げてはいけないとあえて厳しい制約をつけることでゲームの面白さが増すことがルールの存在意義だろうが、事業をやっている以上、消費者を保護しつつも事業の拡大に寄与することが規制の存在意義だろう。道路環境も車両も販売手法もビジネスモデルも進化を続けている中で、どの規制が必要でどの規制は変えるべきか、高速路線バス事業者の側が自ら議論し、規制の主体に対して必要な働きかけを行なっていくべきである。その点、様々な面で規制のあり方を自ら主導して変えてこられたJRバスグループには敬意を覚える。また万代社長は「内部補助は不要になったと国から言われても、様々な事情があって赤字路線から撤退できない」とも語っておられる。この気持ちも、私はよく理解できる。このブログで内部補助を何度も否定してきたではないか、と突っ込まれそうだが、以前にも書いたように、どの企業でも赤字部門はある。だから、内部補助で赤字部門を維持すること自体を私は否定しない。大企業であるほど社会的責任が増し文化活動や環境対策に注力することが求められるし、地域経済への影響を考え簡単に赤字工場を閉鎖できないといった話は世の中に転がっている。問題は(JRバスの場合は違うが)、<本業>である「平場」の路線バスの赤字を<副業>で埋めるような会社が永く持つはずがないという点だ。本業の利益で副業の赤字を埋めるというのなら、私は何も言わない。本特集ではもう一つ、ウィラー・トラベル「ビジネスクラス」の乗車レポートを中心に、高速ツアーバスの上級車両や女性専用車両が紹介されている。この「高速ツアーバスの多様化」を考える上で、販売手法の変化についての視点が多くの人に欠けている。バスに携わる人はみな、車両や座席そのものに目が行きがちだ。しかしその背景には販売手法の変化がある。ある区間において特定の事業者が独占的に事業を行なうスタイルであれば、最大公約数的に多くの人に対応した商品作り(車両、ダイヤなど)が求められる。だが、首都圏-京阪神は高速ツアーバスだけで約20社100便以上が毎日設定されている。希望の乗車日と区間を指定するだけでその日に空席がある便が一覧的に表示され比較検討できる総合予約サイトで、一人でも多くの利用者に自社の便を選んでもらうためには「めちゃくちゃ高級」「女性専用」「アメニティ付き」「ポイント付与率が高い」など、ターゲットを絞り込んだ個性ある商品がどんどん投入されることになる。高速路線バスにおいては、運用が煩雑になる上、時には乗車効率を下げるため女性専用車などの設定は好まれないが、多数の利用者が多数の選択肢の中から好みのバスを選べる環境の下では、むしろ差別化は乗車率や単価を上げる最大の武器になる。全国展開するウィラー・トラベルなどの陰に隠れがちだが、今回女性専用車が紹介されている平成エンタープライズだけをとってみても、3列独立シートの車両だけで既に10台ある。3列の夜行車を10台揃える事業者は、高速路線バス事業者でもそう多くないのではないか。低反発素材を使用したシート(特許出願中)、個室カーテン、アメニティグッズとサービスは充実している。出発後の「皆様、いっせいにリクライニングしましょう」のアナウンスや、女性専用車両でのパジャマ貸し出しなども秀逸だ。このように、自社の高速ツアーバスに、どう「色」をつけるか工夫している会社は多い。そしてその競争が「磁場」を生み、新たな利用者を呼び寄せてくる。万代社長のインタビューから伝わってくるように、JRバス関東に代表される既存事業者の運行面での実力(安全確保への設備投資や教育など)には脱帽する。一方で高速ツアーバス各社は利用者目線のきめ細かい商品作りでは先を行く。だからこそ、両者がお互いの強みを持ち寄って多くの利用者にアピールしていただき、高速バス市場をさらに拡大させて欲しいと、心から願うのである。
2009.10.22
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昨日は、NASVA(独立行政法人・自動車事故対策機構)主催による「第4回NASVA安全マネジメントセミナー」に参加。NASVAさんには本当にいろいろ(会社としても、また高速ツアーバス連絡協議会事務局としても)お世話になっておりこのセミナーも毎年参加させていただいているが、年々参加者も増え、今年は三業態(バス・ハイタク・トラック)事業者を中心に750人の参加があったとのこと。ちなみに初めて参加した際、セミナー後の懇親会で、ある既存事業者の役員の方がいらっしゃったのでご挨拶しようとしたところ、私の会社名を見たとたん名刺を受け取ってもらえなかったということがあった。当時、将来は高速路線バスも私のサイトで取り扱うというビジョンは持っていたものの今のように本格的に既存事業者に提案営業に回る前だったので、おそらくは私の会社が自ら高速ツアーバスを企画実施しているのだと勘違いなさっていたのだと思われるが、仮にそうだとしても、そもそも社会人としてどうかと思うし、むしろ「敵」の話を聞けるチャンスだとなぜ考えないのだろう? なお、その事業者の高速バスは路線の性格から言って高速ツアーバス進出の影響を大きく受けていると思われ、だからこそ私の会社名に嫌な顔をされたのだろうが、逆に言うと、私のサイトで販売させていただければその日からどんどんご送客できるタイプの路線をお持ちだということだ。要するにウェブと相性がいい路線なのである。しかし、あのような態度を取られたこともあり、その事業者にはその後も営業に伺っていない。他の既存事業者が私のサイトを通して乗客数を伸ばし始めても、その事業者は出遅れるだろう。まあ、当然の報いかな…などと考えてしまう私自身も、その役員の方と同じくらい子供っぽいか。さて本年のセミナーは、NASVA金澤理事長のご挨拶の後、国土交通省の山崎・安全政策課長から「事業用自動車安全プラン2009」のご説明から入った。その流れは、顔ぶれ、内容とも、7月にあった高速ツアーバス連絡協議会の総会と同じだったのが面白かった。なお「安全プラン2009」では、「高速ツアーバスを運行する事業者」も運輸安全マネジメントの評価対象となることが明記されている。国土交通省から通達も発出され、連絡協議会から会員各社に回付したばかりだ。これから、NASVAにはますますお世話にならないといけない。セミナーではその後、ヒューマンファクター研究所・石橋先生の「ヒューマンエラー対策と安全意識の醸成」と題した講演があったが、「人間はミスをするもの」という前提でエラーを減らし、エラーが発生した際のリスクを最小限に抑える考え方は勉強になった。休憩を挟んで後半は、バス・ハイタク・トラックそれぞれの業態から、事業者による安全マネジメント導入の報告があった。バスについては東京空港交通・伊東次長(よく『バスラマ』などでお顔を見るからご存知の方も多いはずだ)による発表だったが、通り一遍ではない安全対策の分厚い中身、伊東次長の思い入れの強さが伝わってきた。本筋から離れて恐縮だが、ちょっと興味深かったのは、伊東次長の後、タクシー※そしてトラック事業者の方が発表を始めると、それぞれかなりの数のプレスが発表者の撮影をしていたことだ。タクシー、トラックにはそれだけ業界メディアの数が多いのだろう。翻ってバスの業界紙・誌といえるものはほとんどない(※なお、タクシー事業者の方の発表が非常に面白かった。高速ツアーバス連絡協議会の次の研修にこの方に講演していただこうかなどと考えているくらいだ)。もともとバス業界は、大規模・少数の事業者によって成り立っていた(戦時統合以降)。それゆえ業界メディアの力を借りずとも自ずと情報が共有されていったのだろう。だが規制緩和が進み新規参入が増えたにもかかわらず、業界メディアは弱いままである。事業者団体もそうだ。日本バス協会は立派な組織だが、建前上はバス業界全体の事業者団体であるはずなのに、実質的には大規模(特に乗合の)既存事業者の存在感が大きい。例えば旅行業界であれば、大規模な旅行会社中心の日本旅行業協会JATAと、中小旅行会社中心の全国旅行業協会ANTAが並立し、ほぼ全ての旅行会社がいずれかの団体に所属しているのと比べると、中小バス事業者が、自分たちの経営や運営に真に必要な情報、それをもたらしてくれるネットワークを持つ機会は非常に少ない。かつては業界を見渡せば知っている顔ばかりだったのかも知れないが、今はそうではない。新興の中小バス事業者に、適切な情報を伝え健全に育成していくために、業界メディアや事業者団体のあり方も変わっていっていただきたいのだが。そしてそれは、必ずしも新興事業者のためだけではない。大規模な既存事業者もまた多くは経営的に行き詰っているか、少なくとも安泰とはいえない。どの事業者にとっても、経営と運営に関する情報を共有する術がもっと必要なのだということを、(本来のセミナーの目的とは少し外れるのだが)タクシーやトラックとの比較で実感した一日だった。
2009.10.21
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札幌出張で新千歳空港に降りると、一緒に乗ってきた乗客のほとんどが何の疑いも無くJRの駅に向かう。それでも、私と同様に何人かは空港連絡バス乗り場に現れるから、直接お取引のない事業者とはいえバスに携わるものとしてちょっとほっとする。ただやはり、羽田や伊丹からぞくぞくと到着する飛行機の数と比べるとさびしい。すすきの、大通り周辺の各ホテルや札幌駅などを回るから出張にも観光にも使いやすい路線なのだが。ただ難点が一つあって、札幌駅までだとJRが30分台で着くのに対し1時間以上もかかる。高速道路を手前で下りて地下鉄福住駅など郊外の拠点を経由していくのだ。もちろん、札幌に住んでいる人が航空機を利用するケースでは、郊外の地下鉄駅を経由するのは便利だろう。札幌駅へ直行するJRとうまく住み分けているといえる。しかし札幌市民が新千歳を利用するのは、午前中の出発、夕方以降の到着が多い。逆に午前に新千歳に到着し札幌市内に向かうのは私のような出張客や観光客が中心で、午後の市内→空港もそうだろう。出張・観光客は福住、月寒といった郊外にはあまり用がない反面、大通りなど都心への流動が多い。JRで札幌駅まで30分台で着いても結局は地下鉄に乗り換え大通りに向かうのであれば、バスがあと少しスピードアップすれば対都心で十分な競争力がある。毎時4便運行するなら、午前と午後でパターンを分け、午前の「市内→空港」と午後の「空港→市内」は福住経由中心で、午前の「空港→市内」と午後の「市内→空港」は直行便中心で運行できないか。もっとも、千歳空港連絡バスの過去を紐解くと、中央バスと北都交通が共同運行している事実だけで十分に進歩といえるのだが。最近、首都圏(羽田・成田)では、空港-都心を独占的に運行してきた東京空港交通らが、郊外の私鉄系事業者と共同運行という形を取り始めたことで路線数が増え、空港連絡バス全体の乗客数は順調に伸びている。東京空港交通単体で見れば、例えば単独運行である羽田・成田-新宿線の乗客が共同運行の調布線などにシフトすることで「取り分」が減っているというなんとも不条理な問題が起こっているかも知れないが、バス全体で考えればいいことに違いない。郊外に路線を増やすに当たって京王、西武、東武といった私鉄系事業者と共同運行という形になったのは、ご他聞に漏れず「路線権」(厳密には需給調整の撤廃で路線権概念は消滅したので、「バス停の権利」というべきか)の関係であるわけだが、結果として、私鉄沿線地域における私鉄系バス事業者の販売力を活用できたというのは意義が大きい。親会社の鉄道駅・車内でのポスター掲出などを広告費換算すればすごい金額になろう。よほどの大企業でないと広告費を払えないような規模のプロモーションを、ほとんどタダで行なえるのだ。都内の私鉄系事業者の高速バス担当者が、「空港路線をやるようになって、初めて親会社の鉄道沿線で事業をやってるんだと実感した」とおっしゃっていた。「高速バスは現地会社(地方側事業者)の販売力で成長したのだ」といういつもの論理で言えば、京王や西武といった私鉄系事業者は、空港路線に限っては「現地会社」に当たる。ではなぜ最近までこの共同運行による郊外路線がなかったのかといえば、これまでは、制度的にもまた業界内の思い込みとしても「空港路線はリムジンさん(東京空港交通)のモノ」であったからだ。羽田、成田、あと伊丹にバスが走り始めた際はまだ「共同運行」という概念がなかったから、東京空港交通や大阪空港交通という事業者をわざわざ設立し、彼らのほぼ独占になった(その代わり都心路線が中心で郊外路線は少なかった)。だが関西空港が開港したとき、高速バスでは「共同運行」概念が既に成立していたから、それに従って関西空港交通は私鉄系各事業者と共同運行の形を取り(取らざるを得ず?)、結果として郊外路線が成功した。最近の羽田・成田線の好調さは、関空モデルに習ったものだ。制度も、業界内の思い込みも、変えていくことは可能だし、変えることで業界の成長につながるなら、変えていかなければならない。結果として、東京空港交通単独の都心路線が少し取り残されている気がする。例えば京王線の電車内には調布や八王子などからの空港連絡バスのポスターが大きく掲出してある。調布や八王子に住んでいる人は満員電車の中で毎日このポスターを見て「次の出張の際はバスで」と思うだろう。居住エリアによってターゲティングした効果的な露出である。一方、新宿からすぐ近くの初台や笹塚居住者も毎日京王線を利用するが、見せられるのは調布や八王子発のポスターであって新宿発の空港路線ではない。従来からの東京空港交通単独路線である新宿線は京王が共同運行しておらず、京王が行なうプロモーションに入っていないからだ。住民の入れ替わりが激しい大都市で、成田エクスプレス開業前の「新宿から成田に直通で行けるのはリムジンバスだけ」という時代からバスのリピーターだというありがたい乗客だけに頼ってビジネスはできない。商品そのもの(路線、ダイヤ、車両、運賃)と、プロモーションは、車の両輪である。せっかくいい商品を作っても消費者が知らなければ利用されない。消費者の認知度が上がっても、利便性や快適性が鉄道などに劣ればリピートされない。そしてそのバランスは、市場環境(空港利用者の増減など)、競合環境(鉄道の利便性向上など)、などによって常に変化していくものなのだ。いずれにしても、既成概念に囚われることなく(つまり「バス屋の常識」から離れ)利用者の目線で考えること。最後はそこに行き着くのである。
2009.10.19
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JRバス関東が新宿-佐久・小諸線を新設すると発表した。既に西武・千曲バス系の池袋-軽井沢・佐久・小諸・上田(長野三線)が定着している区間への後発参入だけに驚くが、何よりも内容(ダイヤ、運賃)を見て「本気」の度合いが伝わってくることにびっくりだ。私鉄系高速バスが定着している昼行路線にJR系が後発参入というと大阪-有馬温泉などの例もあるが、「本気さ」では比較にならない。私もうっかり「新宿-小諸」「西武・千曲」のように、さも東京側が起点のように書いてしまうが、このブログで繰り返しているように実際の利用者のほとんどは小諸側の居住者だろう。「だからこそ、私のサイトが東京側の需要喚起をお手伝いするのだ」といういつもの主張はいったん置くとして、このような短・中距離の昼行路線において、早急に需要を喚起して、または既存路線から転移させて足元において事業として成立させるには、現地(この場合は小諸地区)側の乗客を取り込むのが早道であるのは明白だ。ところが多くの場合、西武・千曲のように私鉄系の高速バスが既に運行しており、業態が高速路線バスであろうが高速ツアーバスであろうが、この種の路線ではなかなか後発参入が成功しない。後発参入が成功しない理由の一つが、既存路線が地域住民に十分に定着していることである。1980年ごろに「共同運行」制度ができたことで地元の老舗路線バス事業者が自ら高速バスを運行に参入して以降、彼ら自身の地元での存在感の大きさから地域住民の中で高速バスの認知度は非常に大きい。利用者は予約センターの電話番号を暗記する(最近では既存事業者のサイトをPCやモバイルでブックマークする)など習慣的にリピートするようになっている。もう一つが利便性の問題である。定着すればするほど既存路線の便数が増えフリークエンシーが向上する。「朝の東京行きは予約しておくけど、帰りは用件が終わってから乗り場に行ってその場で購入する」「とりあえず遅い便に予約しておいて、用件が早く終われば前の便に変更して帰る」といった利用が定着すると、後発参入組が恐る恐る1往復程度で参入してもなかなか転移しないし、事前予約・決済を必須とする高速ツアーバス業態ではさらに難しい。この種の短・中距離路線で、既存路線と新規路線が対等に競争(高速路線バス同士のダブルトラックも、高速路線バスと高速ツアーバスの業態間競合も含め)できている区間はほとんどない。ただ、この小諸に関しては若干だが状況が違う。JRバスが現地に営業所を持っていたにもかかわらず諏訪岡谷線のような形で私鉄系路線に共同運行として参入していなかった(結果として弾を温存していたことになる…)という背景もあるが、既存の私鉄系路線に少し盤石さが足りなかったのも事実である。夜行と昼行をかませる長距離路線中心の西武系高速バスのスタンダードに合わせたのか、この種の中距離路線としてはポテンシャルの割りに便数は少ないし、覚えやすいパターンダイヤ(毎時●分発)でもないし、何よりも現地側の始発時刻が遅く終着時刻が早いため、現地側居住者の東京滞在時間が短い。「ウチの高速バスはこういうやり方」という思い込みの罠に誰しもが陥りがちであり(別に西武バスを非難するつもりではなく、どの業界どの会社でも陥る罠である)、性格の違う新潟線や富山線のやり方の延長線上で長野三線を運行しがちであったと言えるのではないか。さらに池袋が、東京側の起点としては新宿などに比べて少し弱いというのも不利な点だ。制度上は乗合事業の新規参入が容易になったとはいえ、事実上、市内バスや短・中距離高速バスでは既存事業者による独占・寡占が続いている。それは既存事業者のここまでの努力の賜物であり私は心から敬意を払うのだが、一方で、それぞれの路線が、本来のポテンシャルまで需要喚起できているか、といった計測を難しくしているのも確かだ(完全な競争状態では、例えばトヨタが努力不足で特定の市場にアプローチできていなければ日産が掘り起こす、といったことにより需要は喚起されていくのだが)。我が国で高速バスをここまで育ててきたのは主に私鉄系の既存事業者であることは間違いないが、現状に満足してしまい、掘り起こし忘れた「余地」を市場に残してしまえば、いつか誰かがそれを掘り起こしに来る。今回のJRバス関東のダイヤを見ると一気に8往復からスタート。午前の上りと午後の下りに集中しており、小諸側から東京往復に便利な、いわゆる「現地ダイヤ」。上り始発便の新宿着は朝8時、下りの最終は新宿を22時40分に出て小諸着が深夜1時半と東京での滞在時間は十分だ。また、新宿-佐久地区で言うと高速ツアーバスは既に6往復(週末)まで成長している。全国の既存事業者は、佐久・小諸を対岸の火事と見てはならない。難しい時代が来たと頭を抱える事業者もあるだろうが、答えは簡単だ。どの事業者も、自らの商品の内容(ダイヤ、運賃・料金、車両タイプ、発着地、安全性への配慮など)と、その商品の告知・販売手法が、本当に利用者の方を向いているかどうかを常に振り返る。ただそれだけのことである。
2009.10.16
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いまの私のミッションは、足元では、現在の取引先である高速ツアーバス企画実施会社(約60社)への送客人数・金額を少しでも伸ばすことであり、少し長期的には、既存事業者(高速路線バス事業者)に対し粘り強くご説明し、高速路線バスの空席を私のサイトで販売していただくように導くことである。前者については、何度も書いているように運用面での課題は多いものの数字は順調である。後者については、ゆっくりとではあるが確実に進展しつつある。各路線バス事業者に対しいまご提案しているのは、「管理画面方式」での販売である。各社の管理者だけがログインできる「管理画面」を通して、その日、その便ごとに私のサイトで販売したい座席数をリアルタイムでコントロールしていただく(例:乗車率が悪そうなら多めに登録、自社販売で満席になりそうなら登録座席数を減らす)と同時に、お客様の予約・取消などがサイト上で成立したらそのつど内容を通知するので、自社のシステムや台帳に転記していただくという、手作業を含む運用だ(双方のシステムは連動していない)。マニュアルな分、かなり融通が利くので、高速ツアーバス企画実施会社、またホテル・旅館、レンタカー会社などの多くもこの方式を選んでいる。このやり方をベースに、簡易的に、一部のやり取りを自動化している企画実施会社も多い。これまで、予約・販売といえば自社(電話予約センター、ターミナル窓口、自社サイトなど)を前提に考えてこられた高速路線バス事業者には、高速ツアーバス各社やホテルのように、上記のような「販売ブロック提供」をする考え方もオペレーションもないのはよく承知しているが、あえてそこを「正面突破」にかかっている。「システムがつながっているから勝手に売れる」ではなく、どの座席数をどの販売チャネルで売るかを事業者側が主体的にコントロールする(当然たくさんの座席を売りたい一方、満席が確実な便まで代売させてしまうと手数料が持ち出しになる…)ことこそ、積極的にマーケティングを行なう、ということの第一歩だと考えているからだ。とはいえ、このやり方では一部の積極的な高速路線バス(定期観光バス、空港連絡バスを含む)事業者は話に乗ってきていただけるが、「全国のあらゆるバス」を私のサイトで取扱いしようと考えるならば、システムを連動させることが必須になろう。利用者は私のサイトを訪れ希望の乗車区間・日付・人数を入力し「検索」ボタンを押すわけだが、その結果、プログラムが自動的に各社のシステムを巡回して空席状況を確認し希望条件に合った空席便だけを表示するやり方だ。利用者は、その中で車両タイプ・事業者のブランド・他の利用者からの評判・価格などを比較検討して希望に最も近い便を予約する。その予約内容は、各事業者の基幹システムに自動的に登録され手作業を介する事はない。現在、一部の企画実施会社とはその形でつながっており、同じことを高速路線バスの基幹システムとも行なうわけである。いまの手ごたえだと、そう遠くないうちに、一部の高速路線バス事業者各社が私のサイトを活用する日は来るだろう。そろそろ、その次の絵を描き始めたい。「バス産業勉強会」などの場で国交省と日本バス協会は、高速路線バスについて統一された検索・予約システムの必要性を説いておられる。私企業である私のサイトが、全国の全ての高速バス事業者と契約するよりは現実的であり、実現すれば意義あることだ。だがこれだけでは不十分だ。例えば、いま私のサイトが利用者を集めるために使っているマーケティングコスト(検索エンジン対策、ポイント付与費用など)は結構な額に上る。もちろんその原資は、高速ツアーバス各社からいただく送客手数料である。統一予約システム(「発車オーライネット」が、現在のところそれに最も近い存在であるわけだが)ができれば利用者が便利になることは間違いないが、集客のための原資(お金)やそのノウハウなしでシステム(あるいはサイト)だけ作っても、新しい利用者を増やすことは難しい。「公」の立場で全国網羅的な検索・予約システム(サイト)を作るというのはチャレンジングな試みであり、会社または個人としてお手伝いできないかなあと考えることもある。ただ最後の最後には、「1人でも多くの人に高速バスを知ってもらいたい」「1席でも多く売りたい」「そのためには、相応のコスト(費用)とリソース(手間)が必要だ」と、高速路線バス事業者各社自身が考えるかどうかにかかっているのである。もし今日か明日、あの大手事業者が私のサイトと契約をしてくれたら、業界はどのように変化していくだろう? いやそもそも私のサイトが高速バス予約事業に参入した際、取扱う商品が高速ツアーバスではなく高速路線バスであったら、業界はどのように変化していただろう? そんな「もしも」に思いを馳せながら、高速バス業界のこれからを頭の中で組み立てていく作業と、それに自分がどう関わっていくのかを考えることは、私にとっては最も楽しいひとときである。
2009.10.14
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以前の日記にも書いたが、NHKの土曜ドラマ『再生の町』。先月終了したが、とても興味深く見せていただいた。もちろんドラマだから、最後は感動的なというか、前向きなシーンでエンディングとなった。「そんなにうまく行かないだろう」というような点はある。専門家に言わせれば、もしかしたら地方自治の現場と異なる点もあるかも知れない。だが、危機的な状況にある地方自治体の財政と、にもかかわらず問題が山積している現場の苦悩はよく伝わってきた。このテーマを採り上げた意義は十二分にあったと思う。ドラマは、大阪の架空の都市「なみはや市」の財政危機が報道により発覚するところから始まる。市長はさっそく市職員5人による財政再建プロジェクトチームを作る。チームは、財政支出一律15%カットを目標に、削減できる市民サービスはないか検討に入る。だが、市民病院に視察に赴いて院内学級(長期入院している子供たちに病院内で教育をする教室)の子供たちの姿を見れば、それを廃止することはできない。老朽化した市営住宅に赴き膝の悪い高齢者が階段の昇り降りを余儀なくされているのを見れば、住宅の建替え事業を中止するという決断も難しい。老人福祉、公民館…それぞれの市民サービスは、カンタンに削減できる(あるいは、カンタンに削減していい)ものではない。一方、このままだと市の財政は破綻する。民間企業で言えば倒産である。そうなってしまえば、その市民サービスさえこれまでどおり提供することができなくなる。そのような状況の中、財政再建プロジェクトのメンバーは解決策を模索し、ドラマとしてはハッピーエンドを迎える。もちろん、ドラマでは悪役の側で描かれていた市議会議長(市の財政難を知っていて、自らの利権を守るために、莫大な費用がかかるニュータウン開発の推進をやめようとしなかった)にしても、決して私腹を肥やすためだけにニュータウン開発にこだわったわけではないだろう。我が町の発展を願う気持ちは、誰も共通だったはずである。それでも、改革を後回しにし続ければ、財政は破綻するのである。このドラマについて、さらに深く考えさせられるレポートが発表されている(行政経営研究所 淡路富男氏の『現状の「なみはや市役所」では感動は失望に変わる』。リンク先は、私がいつも参考にさせてもらっているサイト『経済レポート情報』)。本レポートの趣旨は、次の1パラグラフに集約されているといってもいいだろう。<ドラマには、大問題が突然発生し、それを少人数のリーダーが孤軍奮闘して解決するといった感動的なストーリーが必要になる。しかし現実には、そのようなシーンが存在することはない。そのような光景を期待し、自ら動こうとしないことが悲劇の原因になっている>この問題を考えるに当たって、忘れてはいけないと私が考えることが一つある。それは「なみはや市」に代表される、今日苦境に陥っている自治体たちだが、しかし、少なくともある時代においては輝いていたことである。大きなハコモノを造ったり、コストを考慮せずに市民サービスを行なったりすることも、自然と人口が増え経済が成長し税収が伸び、また国から補助金をふんだんに得られる時代においては、喜ばしいことだったということである。ただ残念ながら、いま時代は成熟し、かつてのような右肩上がりを甘受できない事態が起こりつつある。当事者たちが怠惰だったからこのような事態になったわけではない。周囲の環境が変化しただけである。ただ、その変化に対応できなかった(しようとしなかった)こともまた、事実である。もし、財政破綻(民間企業の場合は経営破綻)によって初めて、周囲の環境が変化し自分たちが取り残されていることに気づかされるのなら、悲しいことである。私自身が、小学生のころは夏休みの宿題を最後まで溜め込み、未だに会議資料も締め切りギリギリに提出するような性格だからこそ、余計にそう思うのである。
2009.10.13
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本日付の『日経産業新聞』、単発の特集で「快走高速バスに暗雲」という記事が掲載された。私のコメントも使っていただいているが、これまでは、それこそ「快走」という露出が続いていただけに正直なところ微妙な感じではある。逆に言うと、この媒体ならではの、それだけ突っ込んだ深い記事である。記事の前半部分ではJRバスやウィラー・トラベルのさらなる割引施策も紹介しつつ、「事業者間の優勝劣敗が進む」業界の状況を俯瞰。好調な方の例として、私のサイトの送客実績が対前年35%増だとご紹介いただき、その点は予約サイトとして面目躍如。特に、JR系の高速路線バスの方が高速ツアーバスよりも安くなっているという文脈の直後だけに、論点は価格ではなく販売手法の差であることを多くの方にご理解いただけたのではないか。一部の既存事業者の皆様にいつも申し上げているが、販売力を伸ばさないまま運賃を下げれば単価が下落し収益性が悪化するのは当たり前で、それを「積極策」とは呼ばない。低稼働日に運賃を下げるなら高稼働日に上げることとセットであるべきだし、運賃を下げる原資があるのなら販売力を伸ばすことへ使う方が長期的に見て健康だ。高速バスに乗りたい乗客は必ず自社のパンフレットやサイトを見ている、という思い込みから早く脱却すべきである。もっとも、何も動こうとしない事業者よりよほどマシであることははっきりしているが。一方、記事の後半では「業界には『2つの暗雲』も立ち込めてきた」としている。暗雲の一つ目は安全性の問題である。高速ツアーバスとして運行中だったネオプラン社製の貸切バスが炎上したという事故を中心に、集合場所での安全確保や乗務員の長時間拘束の問題も紹介され、「バスの安全性を利用者が比較できるシステムを作りたい」という私のコメントに対して「取り組みは道半ばだ」とまとめられている(なお、本コメントは上記事故以前の取材時のもの。事故を受けてのコメントではない)。この「道半ば」というご指摘については、正直、まったくその通りだと言わざるをえない。規制緩和の前には、乗合でも貸切でも「バスの安全レベルは同じ(どの事業者もレベルが高い)」という前提であり、バス業界も、販売する旅行業界も、そして消費者もそれを当然のこととしてきた。消費者までもが「バスはみんな同じ、みんな安全」と感じてきたのだから既存事業者の努力の賜物だろう。しかし規制緩和は行なわれた。もし「安全性を担保するために競争を一切認めない」とするならば、消費者の安全性に直結するあらゆる産業(住宅やビルの建設、直接口に入れる食品、医薬品など)も同様に競争を否定するほかなく、我が国は本当に社会主義になってしまう。課題は、安全性を担保しつつ適正な競争を行なえる環境を作ることである。行政による事業許可のあり方やその後の監査体制が万全かどうか常に問い続け最低限の安全性を担保しつつ、乗客が数ある選択肢の中から、より高い安全対策を行なっている事業者の商品を自ずと選ぶような市場環境を作っていかないとならない。国際線航空ならば多少高くても日系航空会社を選ぶといった構図が出来上がっているのと同様の環境であり、そのためには乗客を啓蒙していかないとならない。万全な安全対策を採っている既存事業者側の方から、自らの安全対策を積極的に消費者にアピールするのが早道だ。もちろん、上記「運賃値下げ」の件と同様、「いつも乗っている」乗客にアピールしても仕方がない。「高速路線バスと高速ツアーバスの差も知らない」「いつも高速ツアーバス」といった乗客にこそ、アピールしていただきたいのだが。もう一つの「暗雲」は高速無料化の話だが、本日は長くなったので論評は省略する。JRバス関東・高橋部長が「『1000円高速』の導入以来、バスの遅延が倍になった」という、らしくない?極めてざっくりしたコメントをされているのが面白かった(なお1000円高速の件は、私も調査にご協力させていただいたが、運輸調査局の研究報告概要が同局サイトに掲載されている)。さて、本記事がまとめているように、鉄道、航空に次ぐ「第三の足」として高速バスが我が国に定着することこそ私たちのゴールである。そのためには、自分たち自身も含め、業界に課題がまだまだ残されていることを実感させられた記事だった。
2009.10.09
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以前の日記でもご紹介した、かつての同僚である宮崎県議会議員の武井くん。まだ34歳の若さで宮崎市長選への出馬が取りざたされていたが、結局、本人の決断で出馬を見送ったようだ。もし市長に当選していたら、東国原知事=武井市長という同窓(あくまで大学院でいっしょだっただけで年齢はだいぶ違うが)コンビが実現していたわけだがお預けとなった。政治信条的に保守か革新かという55年体制的な分け方で言うと「保守」ということなのだろうが、現在では政治家にそのような単純な分類を当てはめるのは難しいだろう。はっきりしていることは、彼が「これまでの政治」「これまでの宮崎県・市」からの変革を目指している、という点だろう。だから、「これまでのやり方」の方が居心地がいいという人たちからは、少し煙たがられているだろう。メディアへの露出も多く一般市民からの人気が高い(先日、宮崎に出張に行った際に彼とちょっと会ったが、たしかにかなりの知名度だと感じた)だけに、旧来の「ぬるま湯」をいつまでも温かいと勘違いしている人たち(または、このままだとダメになるとわかっていて、それでもなお温かいうちは浸かっておこうと考えているのか)からはいい顔をされないだろう…。まあ、今回は本人が考えに考え抜いて、不出馬、という決断をしたのだ。まだまだ先は長いし。それにしても、彼のブログを読むと、大変興味深いことが書いてある。<報道以降ご期待を頂いた多くのお声、特に熱い思いで宮崎市を改革したいという20名を超える市職員の皆様からの多くのメールなどを鑑(かんが)みるにつけ、政治に携わる者として身の潰れる思いが致します。>私が政治について素人だからか、市職員(公務員)が「一緒に我が市を改革しましょう」と特定の政治家に連絡をする、ということに何となく違和感を覚えるものの、それ以上に、そのような思いを持った職員が数多くいる(その20名は特段に意欲の強い人たちで、その背景にはもっと多くの市職員が同じ思いを抱いているだろう)ということを聞いて、失礼ながら宮崎市を見直すような気分である。改革派の市長が生まれれば、業務に波風が立とう。「予定調和」にもとづいて根回しさえ怠らなければ簡単に進んだ日々の業務が、まっすぐに進められないことも起きよう。それを覚悟で、自分たちの組織を変革し、自分たちの住む市をよりよくしようという熱い思いを持った職員がそれだけの数いらっしゃるというのである。少し強引かも知れないが、私は旅館業界のことを思い出した。旅館業界もまた、変わらないといけない業界の一つだと感じている。で、面白いことに、旅館業界というのは、ある地域(温泉地)の中で1軒の宿でも新しい取り組みを始めると、周りの宿も引っ張られ地域全体が前向きになっていく。閉じられた世界で仕事をしていることの裏返しかも知れないし、最初に新しいことをするような宿の経営者(多くは若旦那)は、周りを巻き込むエネルギーを惜しまないのかも知れない。そうやって一度前を向いた地域(温泉地)は、どんどん新しい客を開拓して集客力を上げていくのである。宮崎という地域では、県知事が、何かを変えた。知事が政治家として優秀なのかどうかなどは、とにかく素人だからよくわからないが、何かを変えたことは間違いなく、それを横で眺めていた市の職員は、自分たちも変わらないとと考え始めたのではないか。我がバス業界でも何かがきっかけになって、現状を冷静に見つめた上で変革への動きが生まれれば、とも思うのだが、それはそれとして、今回の武井くんの決断を尊重しよう。市長なんかになられたら、宮崎に出張しても気軽に飲みに誘えないし。
2009.10.06
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先週末の出張は、かなりの距離を移動し分刻みで多くの数の既存事業者にお邪魔した。地方部の事業者にはそうそう何度も出張できるわけではないから、一件一件目いっぱいお話をしつつも、なんとか切り上げて次の都市への電車(個人的には高速バスがいいのだが…)に飛び乗ることになる。話に夢中になって乗り遅れることがないよう、携帯電話のアラームをこそっとセットしておくしかない。一方、大阪市内のように多数の事業者が近接している地区では、打ち合わせが伸びると結局は次の訪問先までタクシーに頼ってしまう。数分でも刻めると思えばありがたい存在だ。乗ってしまえば、車内で電話もできるし次の訪問先の資料を広げて頭の整理をすることもできるし…今回ちょっとタイトなスケジュールだったこともあり、タクシーの価値(体が楽だという以上に、移動時間を短縮しつつその時間も有効に活用できるメリット)をあらためて実感した。電車やバスでの移動がぜんぜん苦にならない性格だから元々タクシーは余り使わないのだが、少し食わず嫌いだったかも知れない。同様に、これまで高速バスを使わなかった人に「へえ、高速バスって意外といいね」と感じていただけるため、まずは高速バスの存在を一人でも多くの人にお伝えする、というのが私たちの仕事なんだとあらためて感じた。さて、今回ご訪問した事業者の中では、ある1社の社長さんが印象的。私のサイトでその会社の高速路線バスを代売することに関して、メリットは感じつつも周囲の既存事業者の目を気になさって迷っている役員の方々に対し「周りの会社には、必要なら私が自分で説明するよ」と一喝。もちろん、実際に代売させていただくまでのハードルはその問題だけではないからすぐに同社と契約させていただけるかどうかは別の話だが、これまでお邪魔した多くの既存事業者では聞けなかった覚悟の籠もった言葉だけに、感謝の言葉も忘れてただただ頭を深く下げるしかなかった。以前の日記で、「大手事業者でバイトをしていた頃、新興の旅行会社や中小の貸切バス事業者など虫けらのように見下していたが、実際に付き合ってみると会社がまだ小さい分みんな真剣で、自分の愚かな勘違いだったようだ」と書いたが、地元を代表する老舗事業者の社長さんのその表情から(新興の会社と比較するのは失礼であることは承知だが)同じ真剣さが伝わってきた。「一人でも多くのお客様に乗ってもらわないといけないんだろう?」「少しでも売上を増やさないと会社が持たないんだよ」という、会社を背負った社長さんからの、その場に同席する部下の皆さんへのメッセージ。私が、自分のサイトで高速路線バスを取扱うことを、既存事業者・路線バス業界の変革の象徴と捉え今の会社に転職し全国の既存事業者に提案を続けているように、もしかしたらその社長さんも、逆の立場から象徴的な案件だと感じてくださったのかも知れない。「バス経営情報」にも掲載されているが、全国的に見て乗合バス事業の収支はさらに悪化。「だからこそ、高速バスを収益源として保護し内部補助の原資に」という考えは感覚的にはよく理解できるが、乗合バス事業の赤字体質は内部補助レベルで補填できる域を超えているし今後さらに悪化するのは明白だ。なにより、その内部補助を可能としてきた最たる収益源は、高速バス事業でも貸切バス事業でもなく土地の運用(ショッピングセンターの賃貸など)であったわけで、土地の値上がり神話の終焉とともに内部補助モデルは崩壊している(だからこそ、先般の法改正で内部補助の必要性が否定されたのだと思う)。何も私の考えだけが正しいと言うつもりはないが、「昨日までこのやり方で来れたから、これからも」という甘い考えだけは許されない。これからもバスでメシを食っていこうという者は、上記社長さんの真剣な表情に負けないよう、一人ひとりが真剣に業界の今後について考えを深めるべきである。
2009.10.05
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