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明日から2日間で西日本を一周してかなりの数の既存事業者にお邪魔するので、各社向けの資料を準備中だ。何度も訪問していて比較的気軽にお邪魔できる会社(中には「お前、本当ににバス好きそうだし、インターネット会社なんか辞めてウチの会社に来い」とまでおっしゃっていただいただけたり)もあれば、ご担当者が交代し今回初めてお目にかかる会社、そして訪問自体が初めての事業者も1社ある。その初めての会社は、いきなり社長さんとのアポイントだから準備を怠るわけにはいかない。さて、既存事業者に初めてお邪魔すると、私たちは高速ツアーバスだけを販売する気はそもそもなくて、というご説明から入る。その証拠として高速バス予約事業を開始したときの、「将来は高速路線バスも販売する方針」と明記してある新聞記事をお見せしたり、自分たちのミッション(いつも書いているように「既存事業者が開拓できていない大都市の需要を喚起して送客する」こと)をご説明したりする。いつかは発車オーライネットやSRSといった高速路線バスの基幹システム(座席管理システム)とシステム連動させ、利用者はサイト上で希望の乗車期間や乗車日などを入力して「検索」ボタンを押すだけで、私鉄系の高速バスもJR系の高速バスも、そして高速ツアーバスも含め、希望日に空席がある便の一覧が表示され比較検討のうえ好みの便を予約できるようにするんだ、という私たちが(勝手に)思い描いている最終的な図もお見せしつつ、当面、まずはお試しで簡単な形でやってみませんか、というご提案をする。ちなみに、この「空席検索」という概念はけっこう重要である。ほとんどの利用者は「○月○日にA県からB県に移動する」ことが決まってから(例:出張が決まった、など)サイトを訪れる。その条件を入力して検索すれば空席がある便が表示されるわけだから、平日であれば数多くの便が平等に並ぶことになる。利用者は、車両グレード順とか価格が安い順とかで並べ替えをしながら、その中から興味がある便をクリックし、より詳細な情報を見て、納得すれば予約する。納得しなければ一度戻って、他に興味がある便を探す。だから、最初は空席検索結果で利用者の目を引き「もっと詳しく見てみよう」とまずは思わせ、次に詳細画面で「やっぱりこの便にしよう」と背中を押すことが必要になる。既存事業者にとってなかなかご理解いただけない部分だが、利用者がバス同士を比較して選ぶ時代が来ているのである。既存事業者の皆様は、「結局、安い方が売れる」とおっしゃる。「安全性の差なんて目に見えないし」。その不安感はよくわかる。あるいは、「御社の高速バスの“売り”は何ですか?」とお聞きすると、まるで決まり文句のように揃って「安全、安心」という答えが返ってくる。私はいつも、それに二つの反論をする。「安全、安心は本当に目に見えないですか?」「例えばホテルのサービスがいいか、料理がおいしいか、確かに目には見えないけど初めての利用者にもホテルの差は伝わってますよね。見せる努力はしていますか?」「例えば住宅の広告。地震対策とか、ちゃんと書いてありますよね。3000万円のマンションと4000万円のマンションの差。目には見えないけど、ちゃんと伝わっていますよ」もう一つ、「安全、安心以外に“売り”はありませんか?」ともお聞きする。皆様答えに困るようだ。しかし、例えば不安感をぬぐいきれない高速ツアーバスの集合場所に比べ、わかりやすい停留所やターミナルは十分な魅力である。払戻手数料が安いこと、車両タイプの違い…「売り」はいくらでもある。実は私のサイトで、利用者が乗車の何日前に予約を取ったか、というデータを調べてみると、全体では3日前に予約している人が最も多く直近1週間の予約がほとんどである。しかし3列シート車両に限って言うと、なんと24日前が最も多く直近1週間の間際予約は少ない。理由は簡単である。3列シートは先に売り切れてしまうからだ。販売単価は、3列シートはスタンダードの約2倍である(※お盆の8月12日乗車分のデータ。平日だと3列シートも4列シートもギリギリまで売れ残っているからここまでの差は生まれない)。決して「安い方が売れる」ではないのである。せっかくいい商品をお持ちなのだから、ぜひそれを利用者にアピールし、一人でも多くの方に乗っていただくよう工夫をしていただきたい。そんな資料を各社別に細かく作り分け、先ほどすごい部数を印刷して会社別に仕分けし終わった。これを抱えて明日から出張である。実は、既存事業者にお邪魔する際の楽しみが一つある。本社や営業所にお伺いするとき、その会社の路線バスに乗って行けることである。高速ツアーバス企画実施会社や貸切専業者に訪問する際にはそうはいかないから、なんとなく嬉しい。バスの車内でニヤニヤしている変なヤツにならないよう、注意しないと。
2009.09.30
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西鉄の高速バス輸送実績が5連休中も前年比でほぼ横ばい(細かく言うと、輸送人員は微増、輸送収入は微減)だったそうだ。本年は5連休、飛び石連休だった前年との比較である。私のサイトの結果で言うと、前年比で約2.5倍となっていて、そもそも前年比を出すこと自体がそぐわない。しいて言えば、このところの月間の成長率は対前年4割増ペースであったが、9月に限っては月間で5割増になりそうなので、押し上げ効果は十分であったと判断している(その代わり、連休中にはいろいろあったけど)。対前年4割増、5割増というと、この不況のさなか驚く方も多いが、いつも書いているように成長ステージの違いというか、要するに、高速ツアーバスという業態も私のサイトも、まだまだ子供レベルだから、どんどん背が伸びている状態、ということでしかなく、実は胸を張っていうことではない。しいて言えば、需要波動に対して柔軟に増発設定が可能な高速ツアーバスという業態と、私たちが持ち込んだ、精密なデータ分析に基づく需要量(必要な座席数=車両数=増発台数)予測、という組み合わせがうまく機能している、という点くらいは自慢できるだろうか。蛇足ながら、これまでなら「海賊バス(高速ツアーバスのこと)の仕事なんて絶対にやらない」とおっしゃっていたクラスの貸切バス事業者(一部には乗合系の事業者も)の車両がどんどん高速ツアーバスに投入され始めたことで、さらに容易に増発対応が可能になっていることは事実である。ただ、同じ高速バスで片や横ばい、片や2.5倍というその差は大きい。もう少し細かく見てみたい。もちろん一つの重要な要素は、私のサイト(あるいは高速ツアーバス業態)のほとんどが長距離夜行で、学生の帰省など休日・休前日に大きなピークができるのに対し、西鉄の高速バスは短距離・中距離が中心でビジネス・用務での利用が多く、必ずしも連休だから伸びるというわけではない点である。また、「千円高速」による渋滞の影響も、夜行便はさほどではないのに比べ、昼行便は直撃するといった差もある。とはいえ、やはり結局は「成長ステージの差」というところに戻ってくる。都市間の移動をする人(旅行者、出張者)は、当たり前の話だが、高速バスか、それ以外の輸送モード(鉄道、自家用車など)のどちらかを利用する。では、「なぜ高速バスを“利用しない”のか」という理由を分解すると、次の二つである。一つは、「高速バスの存在や予約方法、商品価値(魅力)は知っているが、他の輸送モードとメリットデメリットを比較して、今回は(あるいは毎回)他の輸送モードを選択した」という理由である。「鉄道の方が高いけど早いから」とか「たまたま自宅が鉄道駅に近いから」などがその例だろう。一方、もう一つの理由が「高速バスの存在や魅力を知らないから」というものである。九州内では、既存事業者たちのご努力と、鉄道駅がおおむね市街地から離れているといった背景にも恵まれ、既に高速バスの認知は十分以上といってよい。都市間移動者は、だから、ちょっとした条件の変化によって輸送モードを使い分ける。高速料金が値下げされたからクルマで行こう、という人もいれば、高速道路の渋滞が予想されるから鉄道にしよう、という人もいるだろう。コンビニでコカコーラを選ぶかペプシコーラを選ぶかといったような感覚で、高速バスか他の輸送モードかを選んでいる。それに対して本州(特に大都市)では、そういう移動者も少なからずいる反面、高速バスの認知度が上がればまだまだ高速バス利用者が伸びる状態にある。極端な例えだが、JRの特急電車の車内に乗り込んで一人ひとりの乗客に対し「あなたが乗っている特急電車には高速バスが並走していて、所要時間は○時間で運賃は○円なんですよ」と口頭で伝えて回ったならば「なんだ、最初から知っていればバスにしたのに…」という声が相応にあるだろう。本州でいま高速バスを利用している人は、コアな「固定票」に限られ、九州内のような「浮動票」はそもそもバスを選んでいないのである。その「浮動票」を高速バス利用に導くことこそ、私たちのミッションである。九州以外の既存事業者で「いや、我々も告知は一生懸命やっているから、お前のサイトの力など借りなくとも高速バスの認知度は高いはずだ」という人がいるならば、(苦境にあえぐ九州の事業者には皮肉は話で恐縮だが)一度九州に行って、高速路線バスがどれほど定着しているか一目見てくればいい。細かいデータ分析に基づく私のプレゼンなどを聞いていただかなくとも、私の言いたいことは理解いただけるはずである。そして、どうやったら九州に追いつけるか、必死で考え始めるはずである。
2009.09.29
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日本航空の再生問題については新しいスキームが模索されているようだが、私のところにはこの件に関して興味深いリアクションが二つあった。一つは、既存路線バス事業者に関係する仕事をやっている知人の言葉で「航空会社なら、外国の航空会社などと提携し、社内の公用語がある日突然英語になったり社風が外資っぽくなったりするかも知れないけど、バスはそれはなさそうだからよかった」。もちろん、彼は半ば冗談(というか、自嘲的な皮肉)でそう言っている。デルタやアメリカンの出資を受け入れたとした場合に社内公用語がどうなるのかは別として、数千億円というカネを何とかしてかき集めないと会社存続が危ういという企業に対して数百億円を提供するというありがたい申し出であり、少なくともデルタやアメリカンは、日本航空にその価値があると判断しているということである。逆にバスはというと、日本における路線バス事業のあり方は世界的に見てかなり特殊であり、経営が行き詰った際に海外からお金が流れてくることはあまり期待できない。※既に国際興業が外資ファンド「サーベラス」傘下にあるとはいえ、これはバス事業に投資したというよりこの会社が保有する不動産への投資だろうし、「ウチはハゲタカファンドではなく『にわとりファンド』」と自称するオーストラリアの「マッコーリー」も、世界中で交通、水道事業などに投資しているにもかかわらず、日本ではいくつかの有料道路への投資などにとどまり今のところバス事業への投資は聞かない。これまで地方の路線バス事業者は、地域の金融機関と二人三脚、持ちつ持たれつの間接金融を中心に経営が成り立ってきたが、その地域金融機関が自らの生き残りに必死という状況の中で、誰かに助けてもらわなければカネが回らなくなり行き倒れとなる。これまでの「右肩上がり」を前提にしたビジネスモデルを転換するためには、「外圧」(必ずしも外資の出資という意味ではない)でもないと実現しないだろう。もう一つ、日本航空に加えダムの建設中止など問題山積の前原・国土交通大臣の姿をテレビで見て、ウチの家内が「前原さん、大変な時期に大臣になりはったんやね」。いや、たしかに率直な感想ではそうかも知れないが、私は、「たまたま大変な時期に大臣になった」のではないと考えている。もちろん、大臣はいま本当に大変だろう。しかし、ダムについて自ら「中止」と表明しなければ問題にさえならなかったのと同様、日本航空についても、「そのやり方でやっといて」とハンコを押してしまえば、日本航空が生きながらえるだけのカネが国から緊急的に投入されそのニュースが新聞に小さく載るだけで、ここまで大きな議論にはなっていなかっただろう。数千億円というのは巨額だが、そのためだけで国民一人ひとりの税金が上がるわけではないし、そのためだけで日本国が破産するわけではない。前原大臣その人の責任は別に問われない。しかし、それでは、何も変わらなかっただろう。これまでどおり全国に空港が作られ続け、そこに高コスト体質の航空会社が発着し、そこから生まれた赤字は国が税金から負担する。足元だけ見ればそれで誰も困らないのだが、長い目でそれがこの国や国民にとっていいこととは思えない。先送り体質がそろそろ臨界点を迎えつつあるなか、前原大臣は「大変な時期」を、自ら演出したのではないか。航空会社は今般、世界的不況やインフルエンザといった短期的要因が直撃し上記事態が発生しているわけだが、国内の路線バス事業は、人口の減少、モータリゼーションの進展といった長期的な悪条件が続いている。ある路線バス事業者は、年間輸送人員がピーク(1968年)に比べて8割減になっているそうである。「ピークの8割」ではない。「8割減」である。普通の会社なら、企業としての存続そのものが難しいだろう。この期に及んでなお「よかった頃」の考え方を変えられない姿を見ていると、たとえ自分が趣味としてバスのことが好きであったとしても、仕事としてバスにたずさわり続ける必要はないのではないか、とまで思えてしまう。とはいえ、今さらやめることはできないんだろうなあ。おせっかい焼きな自分の性格もあるし、バス事業者に元気になって欲しい気持ちは本気だし。
2009.09.28
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※連休中、高速ツアーバス企画実施会社に関して大きなアクシデントがあり、多くの方から、その件でのコメントを希望するとメールをいただいている。ただ、影響のあるお客様はかなりの数に上り、スタッフで手分けして個別に連絡を取っているものの未だ連絡がついていないお客様もいらっしゃるので、現時点で論評めいたコメントは差し控えたい。機会を見て意見を述べるのでお待ちいただきたい。さて、結局連休どころではなくなった秋の5連休だが、その間に世間を賑わせていたのが日本航空の再生問題だ。いよいよ、何らかの決断が迫られているようだ。『トラベルビジョン』がリアルタイム、かつ全体感を見据えた記事にしているが、これ以上問題を先送りできない危機感は、一般紙の記事やテレビのニュースなど、どの報道からもひしひしと伝わってくる。当然、航空会社の立場からは「好きでこうなったわけではない」と言いたいところだろう。そもそもは行政機関に準じる「特殊会社」であり、近年になって民営化されたものの、正直なところ、営利目的の民間企業という意識は本人たちには強くなかったのではないか。別にそれを「いい」とか「悪い」とか言っているわけではなく、彼らにとっては「我こそはフラッグキャリア」という誇りと、「国内外の航空ネットワークを背負って立つ」という使命感こそが、自分たちのレゾンデートル(存在理由)であったわけで、過去の経緯からみてそれは当然のことだったと思う。彼らがそう感じてきたことを誰も非難することはできないだろう。また、採算性が疑問視されるような国内のローカル路線ネットワークも、この国に空港がどんどんと誕生しつづけた以上、彼らの立場としては必然的に対応しなければならなかったのだろう。一方、いま世論はおおむね彼らに否定的だ。その矛先は、「高コスト体質」(あくまでも労働組合の存在意義を否定するわけではないことを強く前置きした上でいえば、客観的に見てこの会社の場合は労働組合が強すぎる気がするのだが)と「硬直化した組織構造」に向いている。当然、なぜ否定的なのかといえば、公的資金の投入が選択肢の一つとしてあるからだ。自分たちが納めた税金が、民間企業の救済に使われるというのは我慢がならない、という国民の気持ちもまた誤りではない。この、航空会社側と世論、矛盾する二つの思いについて、方程式のように明確な解を求めることは無理だろう。上記『トラベルビジョン』の記事を引用すると<西松氏(注:日本航空社長)は路線の維持で公的資金の投入への理解を得たい考えと述べたが、計画案の柱に路線の大幅な見直しを掲げている上、この日も「営利会社であり、採算をとれる路線でやる。社会的責任を考えれば路線維持もできる範囲でするべきだと思うが、両立させるのはなかなか難しい。ご理解をいただきたい」と語っており、公的資金の投入がどのような形で路線網の維持につながるかは不透明だ>とあるのが象徴している。そして、「ローカル路線は維持して欲しい」と「税金を投入するのは許せない」という「国民の声」が内部で矛盾しているのは明らかであるのに、それが日本航空自体の「高コスト体質」「硬直化した組織」という「共通の敵」を見つけてしまっているのが現実だろう。今後、どのようなスキームで再生が始まるのか、どのスキームが適切なのかは素人の私にはわからないが、バスにおいても同様の問題は起こりうるだけに、興味をもって見守っていきたい。
2009.09.25
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『1940年体制・新版』(著者・野口悠紀雄)を読んだ。著名な経済学者の「名著」と呼ばれる本だけになんとなく読むのを後回しにしていた本だが、知人からぜひと薦められて手に取った。文章も思ったより平易で一気に読み終えた。趣旨としては、<総力戦を遂行するため戦時中に作られた体制(官僚主導。利潤追求より従業員の共同体としての企業。間接金融中心の金融システムなど)が、実は戦後においても連続し、それが日本の高度経済成長の原動力となった。しかし我が国を取り巻く条件が変化している今日、変革の必要性がある>というものである。バスにたずさわる私たちにとって「1940年体制」という言葉から単純に連想するのは、それまで小規模事業者が乱立していた路線バス業界が、1938年成立の「陸上交通事業調整法」によって統合されていった事実である。私たちが普通に「既存事業者」「老舗バス会社」と呼ぶ会社のほとんどが、この時期に統合された結果、地域を代表する交通事業者となっている。たしかに、統合された事業者は一部を除いて戦後も解体されなかった。行政は新規参入を制限し、その代わりに、そういった事業者は地域の公共交通のあり方と雇用の維持に、単なる民間企業以上の責任感を発揮してきた。著者の言う「大企業という垣根に仕切られた社会主義」というのが正に当てはまる。実は私自身、この本を読むまで、バス産業は特殊な存在なのだろうと思ってきた。高い公益性と安全性を要求される産業であるため他の産業に比べて競争がそぐわず、だから地域独占的に認可が与えられる制度が維持されてきたのだろうと考えてきたのだが、戦後日本の経済体制において各種規制や調整による「護送船団」的な産業のあり方は、程度の差こそあれおおむねどの産業においても同様だったというのがよく理解できた。著者は、<1940年体制を形作る特徴の多くは、日本社会の歴史的特性にもとづくといわれることが多い。(中略)「日本社会は農耕社会だから、騎馬民族的社会制度はあわない」とか「日本の企業はムラやサムライの社会構造を引きついたものだ」といわれることもある。しかし、こうした見方は、事実に反する>として、その根拠を一つひとつ丁寧に挙げていく。もちろん、戦後日本において「1940年体制」が維持された背景に農耕社会的な「基層」が影響していることを私は否定しないが、少なくとも、このような体制を戦後日本人が(無意識下で)選択し続けたのは、高度経済成長という「表層」がそれにあっていたからだろう。同書では、他の論文からの引用で<日本型経営システムにおいては、年功序列賃金と終身雇用を同時に実行しなければならない。年功序列賃金というのは(最初に低い賃金で我慢して、後でそれを取り戻すという意味で)ネズミ講と同じ原理なので、これを継続するためには中高年労働者と若年労働者の比率を一定に維持しなければならない。そのためには、企業は常に成長していなければならない。(中略)このように、日本型経営システムが円滑に運営されるためには、高い経済成長が必要であり、逆に、日本型経営システムは高い経済成長を生む原動力となった>とあるが、国全体において昨日より今日のほうが人口が増え、国民全員において今日より明日のほうが豊かさが増していくことが確実な時代においてはうまくいくシステムも、人口の減少と新興国の追い上げに直面した我が国で、今後もうまく回っていくとは思えない。逆説的だが、私は同書を読んで安心した。高度経済成長期の成功体験を忘れられず「古きよき時代」から脱却できないでいるのは、何もバス産業だけでなく、この国のあらゆる産業に共通した症状なのだ。しいて言うなら、戦後日本が「大企業の垣根に仕切られた社会主義」体制でなかったならば、公益性が大きい路線バス事業を民間セクター(企業)が担うことはなかっただろう。他の先進国同様、公的セクター主体(ただし、公益性とともに効率性を維持するために実際の運営は民間に委託、など)で進んだであろう。その意味では、やはり民間の路線バス事業者という存在は「1940年体制」を象徴するのかも知れない。
2009.09.20
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いつの日にか実現するであろう、既存事業者の、いわゆる「4条」商品の取扱開始に向け、それを前提としたシステム改修や「利用規約」の改定など必要な対応だけは既に佳境に入りつつある一方、自分自身は、より多くの既存事業者にコンタクトし私のサイトでの販売をご提案する毎日である。初めてご連絡する会社、以前は前向きだったのにご担当者が代わって疎遠になった会社、そして、ご担当者ご本人は非常に前向きなのに、会社としてはなかなかご決断いただけずご担当者と私が一緒に悔しがっている会社など様々である。昨日も、その熱心なご担当者から「今回のタイミングでの提携は見送りさせて欲しい」というご連絡をいただいたばかりだ。バス部門としての結論だという。「ご存知のとおり、鉄道系の会社というのは何事も一番乗りというのが嫌いで…」と恐縮されたが、その感覚は私にはよくわかるし、ましてご担当の方を責めるつもりはないものの、今後の参考にするためにその理由だけは聞いておきたい。「その理由はどの辺なんでしょうね? トップの方が、私のサイトが自ら高速ツアーバスを企画実施しているとまだ誤解なさっているからでしょうか? それとも、高速ツアーバスと並べて販売されるのがポリシー的に合わないということでしょうか? あるいはコストをご心配なんでしょうか? それとも他に何か…」「いやあ、明確な理由はないと思います。とにかく、新しいことができない体質で…」。まあ、わかった上でそれを何とか変えていきたいというのが私の思いなのだから、繰り返しチャレンジし続けるしかない。この例は、逆に言うと、正式に会社として会議にかけていただけるまでに至ったケースだ。そこまで進まず、「なんとなく」のお話しかできていない会社も多い。面白いのが、踏み込んだお話に進むためには、思い込みから生まれる誤解をたくさん解いていかないといけない点だ。まず、高速ツアーバスを自ら運営しているように誤解されているのがその一番目だ。「いえいえ、私たちは販売だけをお手伝いさせていただく立場なんです。現に、当社の宿泊予約部門は御社グループのホテルと深いお付き合いをさせていただいてますよ」。次に、私のサイトで販売するとなると自分たちの商品を高速ツアーバス(募集型企画旅行)形式にしないといけない、と思いこんでいる方もいらっしゃる。「商品によって、募集型企画旅行の受託販売の形か、乗合の手配旅行の形か、選べるように準備をしています」。最後に、私が取扱いたい商品は、高速ツアーバスが強い大都市間、夜行路線だと思い込んでおられる。「ウチは東京-大阪もやってないしそもそも夜行路線もないから」「いえ、東京-大阪は高速ツアーバス商品があるので、逆に彼らが弱い地方路線、多頻度の昼行便を売らせて欲しいんです」。既存事業者にとっては、昼行路線は既に定着しており相応の乗客がついている一方、高速ツアーバスの新規参入もほとんどないから、販売力強化の必要性など思いつきもしないのだろう。振り返ってみると、東京-大阪のような大都市路線は、高速路線バスの世界ではつい数年前まで「ドル箱」だと思われてきた。たしかにダブルトラックが運輸省から認可されない時代から、郊外を発着する路線(例:八王子-大阪、新宿-枚方)が複数存在し事実上マルチトラックであったし、JRバスグループは同一路線に何便も設定し、首都圏-京阪神の間は1日に数十台の高速路線バスが運行されており、それをもって「ドル箱」だと思い込んできた。しかし高速ツアーバス業態が誕生しウェブマーケティングを活用することで、いまは1日に数百台レベルでバスが動いている。実際には既存事業者が満足していたより数倍のポテンシャルがあり、彼らはそれをうまく掘り起こせていなかったのである。いま既存事業者は、大都市と地方を結ぶ多頻度昼行路線には乗客が定着していると満足しているが、それで十分なのか、というのが私の問いである。首都圏-京阪神ほどではないにせよ、まだまだポテンシャルがあるのではないのか。その潜在需要を掘り起こすためには、どのような手法が有効なのか。目の前に一定数のお客様がいることに満足して拡大の可能性を排除してしまえば、大都市路線と同じ結果(高速ツアーバスの台頭)を招くことにはならないか?と、ここまで書いて自分でハッとする。結局私は、既存事業者の高速バスを応援したいだけかも知れない。本音のところは、いまの取引先には申し訳ないけれど、既存事業者の高速バスを守るためにホワイトスペース(まだ誰も掘り起こしていないマーケット)を先に埋めてしまって、高速ツアーバスが参入してくるのを防ごうとしているのではないか? まあ正直言って、あくまで個人の立場ではそれを否定できない。でも、会社の立場としてはそうでないこともまた事実である。新規も既存も、高速ツアーバスも高速路線バスも関係なく、幅広く「高速バス」を広く世間に知らしめ一人でも多くの人に利用してもらう。そのためには1本でも多くの路線を取扱いたいし、もし両方のバスが走っている路線であれば、私のサイトは「検索→比較→予約」サイトだから、どっちのバスを選ぶかは一人ひとりの利用者に委ねよう、という考えは、会社としてはブレることはない。
2009.09.16
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既存事業者の、いわゆる「4条(乗合)」商品の取扱については、ゆっくりとながら確実に実現に近づいている印象であるが、思い返してみると、いまお話を進めている案件は、いずれもご紹介者がいたことでご提案に入ることができた案件ばかりである。もっとも、一口にご紹介者といっても色んなパターンがあり、既存事業者が私のサイトにネガティブな印象をお持ちであることを百も承知で、自ら多大な「リスク」を背負いながら既存事業者をご紹介してくださった方もいれば、本当に偶然のように人と人とがつながって、「成定さん、一度会ってやってよ」と声をかけられ、むしろこちらから「大変ありがたいお話なんですが、そのお話、うまく進めないと逆にお顔をつぶすことになるかも知れません。それでよろしければ」と事情をご説明した上で「でも、お互いメリットがある話なんだから」とお見合いにまで進んだ例もある。いずれにせよ、いろんな方とのご縁に恵まれ、お骨折りをいただいて自分の思いが実現に近づきつつある。そのことに心から感謝しながら日々仕事をしている。なぜ自分はいまの立ち位置で高速バスにたずさわっているのだろう、と自問することは多い。学生時代、大手既存事業者の高速路線バスにたずさわったことでバスに興味を持った自分としては、少なくとも好き嫌いでいえば、既存事業者、なかでも私鉄系の事業者への思いが強い。にもかかわらず彼らからは、まるで「業界を乱した」張本人のように言われているのである。いや私自身、いまの会社に転職してしばらくの間は、現在取り扱っている高速ツアーバスという新しい業態にどうしても愛着を感じることができず、転職は失敗だったのではないかと真剣に悩んでいたほどである。しかし自分には、バスに関して二つの思いがある。一つ目は、これまで長い間高速バスを運行してきた既存事業者は、どうしても「待ち」の姿勢に終始しがちであり、安定・安全運行という側面では十分だとしても、より消費者志向、マーケティングという側面では十分とはいえない状況である。だからこそ我々がマーケティング面でお手伝いすることで高速バスという市場それ自体がまだまだ拡大する余地がある、という点である。これまでの高速バスにおける弱点とは、航空や鉄道に比べ小規模で多数の事業者が事業を行なっていたため一元的なプロモーションが難しく、かつ予約方法がバラバラでわかりづらかった点と、多数の事業者とはいえ路線単位で見ればほぼ独占的に認可が与えられており、競争原理が導く切磋琢磨が不十分だった点である。私たちが一元的な予約サイトを運営することでその二点は大きく前進するというのが私の考えだ。私たちが5000万人の会員に対して高速バスを積極的にアピールし需要を喚起しつつ、その利用者はサイト上で乗車区間や日付を入力して検索するだけでその日に空席がある便が表示され、比較検討しながらバスを簡単に予約することができる。既存事業者が品質に本当に自信があるなら、どうぞそれをアピールし自社の予約数を増やして欲しい。もう一つは、経済環境が変化する中で既存事業者のあり方もまた変革を求められているにもかかわらず、なかなかそれに対応できない彼らであるが、彼ら自身があれほど軽蔑してきた高速ツアーバスと既存の高速路線バスを私のサイトで並べて販売することが、何らかの象徴的な意味合いをもたらすのではないか、という思いである。高度経済成長が終焉したいま、これまでの事業者のあり方ではバスという産業を永続できないことは明白である。高速バス、貸切バスや不動産、流通といった副業の利益程度を内部補助することで地域の路線バスネットワークを維持し事業者が独立採算でやってこれたのは、加藤博和先生(名古屋大学)が呼ぶところの「日本の奇跡」であり、どの国どの時代にも成り立つモデルではない。かつて大前研一らはこの国を「茹で蛙」国家と呼んだわけだが、茹で蛙になる前に自らのあり方を考えるきっかけを提供したいのである。これまで販売面では受身に終始してきた彼らが、ウェブ上で積極的にマーケティングに取り組む姿が実現すれば、それが何かの象徴だろうと。もっとも、足元で取り扱っている高速ツアーバスという業態は、営業面での実績は十分以上に成長しているものの、運営面では課題も多い。私自身や私のサイトも含め誰もが100点満点というわけにはいかず、だからこそ、冒頭に挙げたような様々な出会いやご協力に感謝を忘れてはいけないと考えている。
2009.09.14
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昨日、メールマガジンのことを書いたら、自分が会員登録している高速路線バスの予約システムから、本日たまたまメールマガジンが届いた。この会社に限らず高速路線バスの予約システムからメールマガジンが届くのは初めてだ。感想は...まあ、バス業界に「バス屋の常識」というのがあるように、ウェブマーケティングの世界にも「常識」みたいなものがあって、何でもかんでも送ればいい、というものではないでしょう?という感じではある。少なくとも、私のサイトであのような文面のメールマガジンを配信したりしたら、上司から何時間しぼられるだろうか。あと、蛇足ながら付け加えれば、「高速バスの予約システムに登録している会員」あてにメールマガジンを配信するのはリテンション・マーケティング(顧客の維持。離反防止。リピート促進)に有効なことは間違いないが、昨日ご紹介した私のサイトのメールマガジンは、リテンションよりは「新規客」を取り込むためのメールマガジン。ふだんショッピングや宿泊の予約で登録してくださった会員あてに「高速バスって便利ですよ、快適ですよ」とお伝えするのが目的だから、同じメールマガジンでも意味合いは違う。本当は、両方をバランスよく使い分けていかないといけない。と、いろいろ書いたが、失礼ながらマーケティングという側面ではこれまで「待ちの姿勢」が目立った既存事業者が、このような「プッシュ型」マーケティングに注力を始めたという点は非常に意義深い。本業の鉄道や「平場」の路線バスでは、基本的に地域独占的に認可(現在は許可)が与えられるものだから、マーケティングに注力したから乗客数が増える、という相関は小さい。公共交通機関にとって乗客数の増減とは、景気の良し悪しとか、住宅開発が進んで沿線の人口が増えるとか、モータリゼーションが進展してバス利用者が自家用車利用に転移するとか、基本的には外部要因によるものだ。だが、その感覚をそのまま高速バスに適用するとおかしなことになる。鉄道や「平場」の路線バスは、地域住民にとっては「知っていて当たり前」の存在だが、高速バスは残念ながら「知っているのが当たり前」の輸送モードとは言いづらい。特に大都市圏においてはなおさらである。だからこそ、利用者のニーズの把握とそれに基づく適切な商品設定、効果的なプロモーションといったマーケティング活動が欠かせないのである。もっとも、名古屋大学の加藤博和先生がよくおっしゃっているように、「平場」の路線バスにおいてマーケティング意識が十分でなければ、長い目で見れば路線バスという輸送モード自体の衰退を導いていくのも確かではあるが。さて話は変わるが、高速路線バスの座席の販売を私のサイトで手伝わせてもらいたい、という既存事業者への営業は、一進一退である。一歩前進となるニュースをお電話でいただく端から、メールでネガティブなご連絡が入ったり...。ただ各社に共通して言えるのは、これまで私のサイトのことを「高速ツアーバス側の立場」、一言で言えば「敵」だと誤解なさっていた皆様が、そうではないということだけはご認識いただいている点だ。どちらかというと、論点は、「敵か味方か」論ではなく、「コストをかければ本当に空席を埋められるのか。乗車率が上がるのか」論に移行しつつある。もっとも、何席を私のサイトに販売委託するかは事業者がリアルタイムにコントロールできるわけだし(満席になりそうな便は自社販売のみ。絶対に満席にならなさそうな便だけ登録、など)、実際に予約が入った分にしか手数料は発生しないわけだから、無駄にコストが出て行く心配はないのだが(本当にメリットが無ければ、高速ツアーバスの全ての会社から販売委託をいただくことは無いと思うのだけど)。いずれにしても、最初の1社、2社となんとかお話をまとめあげることと、その案件については徹底して実績を上げること。そして、まだお伺いできていない事業者にもなんとかツテを見つけてお邪魔して、こちらの考えをご説明すること。私たちの思いを実現するためには、近道はないのだろうと思っている。
2009.09.10
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私の会社の、コンサルティング部門のスタッフは、主に高速ツアーバスの企画実施会社に対して、商品設定や価格、ウェブ上での商品の見せ方などについてアドバイスをするのが仕事である。やはりその柱は、レベニューマネジメント概念に基づき、詳細なデータ分析から各社に適切な台数と価格を提案することである。余談だが、高速ツアーバスの企画実施会社は、私のサイトに販売を委託する座席数を、日ごと便ごとに、インターネットでつながった管理画面を通してリアルタイムに変更することができる。「今週末は自社サイトの販売分だけで満席になりそうだから」「別の販売サイトの方が手数料率が低いから」、逆に「このままだと絶対に売れ残りそうだから」など、各社は常に自社の判断で委託席数をコントロールするわけで、私たちも「頼りにしてもらう」ために情報提供に手を抜くわけには行かない。そういった現在の取引先へのコンサルに加え、自社で旅行業免許を持つ中堅以上の貸切バス事業者に対して、自ら高速ツアーバス事業に参入しないか勧誘?に回り、業態全体の規模を大きくするものコンサルティング部門の業務である。一方、私の会社のマーケティング部門は、高速バスを予約しようとしている人たちをサイトに集客するのが仕事、ということになる。これも大きく二つに分けられる。一つは、「今まさに高速バスを予約しようとしている」人たちを、一人でも多く私のサイトに誘導することである。その大きな柱は、検索エンジン対策だ。利用者が、YAHOO! やGoogleといった検索サイトで「高速バス」「高速バス 名古屋」などと検索した際、なるだけ上位に私のサイトが表示されるよう工夫するのだ。『運輸と経済』に掲載いただいた論文でもご紹介したが、YAHOO!で「高速バス」というワードを入力して検索される回数は、月間で約60万回ある。「ホテル」というワードで検索される回数が約30万回、「航空券」が15万回というのと比較すると、その数は驚くほど多いと言えるだろう。高速バスを予約する人の数が日本中のホテルを予約する人より多いとは思えないのだが、検索回数は高速バスの方が2倍もある。理由はカンタンで、ホテルや航空券を予約したい人は、最初から「帝国ホテル」「ANA」といった風に目的の社名ブランド名で検索するのだ。対して高速バスの場合は、高速バスを運行している会社名もブランド名もよくわからないから、一般的な「高速バス」「夜行バス」といったワードで検索する。地方在住者の場合は、地元の路線バス事業者は基本的に1社しかなく、その事業者が東京行きも大阪行きも一手に運行しているから話はまだカンタンだが、大都市在住者にとってバス事業者の存在感は極めて小さい上に高速バスの事業者も行き先別にバラバラで、上記のような検索行動につながっているのである(ちなみにこの検索エンジン対策について、JRバスグループは非常に積極的であり、かなりのコストをかけておられると思われる)。検索エンジン対策が「プル型」(高速バスに乗ろうとしている人を自社に誘導する)マーケティングの代表だとすれば、「プッシュ型」(高速バスの認知度を上げ需要を喚起する)の代表がメールマガジンだ。昨日も、四国地区在住の会員に対象を絞ってメールマガジンを配信したばかりである。顧客に会員登録を促し、ポイント還元などでリテンションを図りつつ、属性(居住地や年齢、性別など)をデータベース化しセグメントごとにダイレクトメールを送付して需要喚起する、という手法は世の中で広く行なわれているが、実際のダイレクトメールが印刷や郵送に費用が発生するのに比べると、電子メールなら直接費用はほとんど発生しない。しかし当然、「送り放題」という訳ではない。興味の無いメールであればすぐに「ゴミ箱」に直行だろう。あえて、四国地区とか青森県とかいったように地域分けして送信するのも、メールの「件名」(タイトル)に、「高知」とか「八戸」など親しみ深い地名が入っていると実際に目を通してもらえる率が上がることが証明されているからだ(本物のダイレクトメールであれば、郵便受けに届いた葉書を実際に読んでくれているのか捨てられているのかさえわからないが、電子メールならクリックした人の率まで計測しそれを元に開封率を上げる工夫もすることができる)。このほかにも、ポイント還元によって利用を促すキャンペーンや、パブリシティ(新聞やテレビのようなマスメディアへの露出)など、マーケティング部門の「打ち手」は幅広い。ただ、上記のような手法は、あくまで「いま」の姿でしかない。マーケティングに供される技術もアイデアも、驚くべきスピードで進化を続けている。そのうち、私のサイトのような中間業者をかませなくとも、利用者が乗りたい日の乗りたい区間の空席を一覧的に見られるようになるかも知れない。「予約」「発券(決済)」のあり方も、どんどん変質していくだろう。従来のやり方に固執することなく、新しい技術と利用者のニーズに常に敏感にアンテナを張り、バス業界を変革するお手伝いを続けられれば、と考えている。
2009.09.09
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先日より話題に上っている「再生塾」。関西を拠点に、「持続可能なまちと交通」を目指して勉強会など行なっていらっしゃるらしい。O先生のブログにその様子が紹介されている。参加者には学識経験者とコンサルが多いようだが、地域のまちづくり団体や、交通局職員の参加もあるらしい。逆に言うと、民間のバス事業者の参加は無かったということか。O先生が別の日のブログでおっしゃっているように、2002年の法改正以降、路線バスのネットワーク維持においてかなりの部分の責任が自治体に任されたにもかかわらず、自治体側に交通政策のノウハウが不十分な現状だ。よく、「地方分権は権限とともに財源もセットで移譲しないと意味が無い」などという話をニュースなどで聞くが、権限、財源とともに「ナレッジ(知識、情報、経験)」もセットでないと、地方自治体からすれば、交通政策は体よく押し付けられた余計な仕事になってしまうだろう。では、そのナレッジはこれまで中央(国)が持っていたかというと、そうとも言えない。我が国においてこれまで「交通政策」を司ってきたのは、事実上、民間の事業者である。少なくとも乗合バスに関しては、地域独占的に認可を与えられた事業者(ほとんどが民営。都市部などでは公営もあるが)が、いわば擬似的に公的セクターの役割までも担ってきたと言えよう。民間企業(多くが「株式会社」)である以上、本来その存在目的は「営利」である。ただ、各事業者は民間企業でありながらも足元の採算を度外視し、むしろ強い使命感を持って行政に代わり地域の公共交通ネットワークを維持する役割を演じてきた。長期的な事業展開をよしとする我が国の投資風土も、それを後押ししたと言えるだろう。だが、それではうまく回らない時代がやってきた。直接的なきっかけは、2002年の法改正であり、端的に言うと、地域という「面」に対する事業認可ではなくなり、「儲かる路線は新規参入や競争を促進」「赤字の路線は、地域が必要と認めれば公的な補助で維持。地域が認めなければ縮小(廃止)」と切り分けて考えるようになった点である。既存事業者の中にはこの法改正を「黒船襲来」のように言う人がいる。しかし、なぜ国がそのような方針転換を行なわざるを得なかったのかという背景まで踏み込んで考えると、既存事業者にとって、それが実はメリットをもたらしてくれることに気づくはずだ。過疎化・少子化の進行とモータリゼーションの進展により、乗合バス事業は今後もますます厳しくなる。一方、ほとんどの既存事業者が、中心市街地に所有していた土地を運用(ショッピングセンターを建設し家賃収入を得る、など。賃貸ではなく自ら百貨店やホテルを経営していたとしても「はじめに土地ありき」だ)することで乗合バスの赤字を補填する原資を得てきたが、土地の値上がり神話が崩壊するとともに中心市街地から郊外へ生活の拠点が移ったこともあり、最大の利益の源が縮小しつつある。バス黒字路線(高速バスなど)の競合激化による利益の減少を否定する気はないが、企業の根幹に与えるインパクトは、上記のような構造的問題に比べれば小さなものだ。決して順風満帆ではない副業の利益を、今後ますます赤字が膨らむことが確実な乗合バスに投入し地域のネットワークを維持するという民間企業には困難な役割を、本来その役割を担うべき公的セクターに「大政奉還」するという道を用意してもらえたのである。一方、いくら本来的には地方自治体が担うべき役割とは言っても、あるいは諸先進国では元々からそうだとは言っても、ノウハウも伝えられないまま交通政策の責任を押し付けられるのも自治体にとっては迷惑な話だろう。これまで擬似的に公的セクターの役割を担ってきた地方の既存路線バス事業者から、自治体がいかに交通政策のナレッジを吸い上げていくかを考えないといけないのではないか。もちろん、現在の「欠損補助(赤字額を路線単位で税金から補助する)」の形である限り、事業者は運行さえしていれば最低限の利益が事実上保証されるわけで、より乗客数を増やしたりコストを削減したりすることへのインセンティブは働かない。それでは税金の垂れ流しになり、短期的にはよくとも、長期的に市民から「バスに税金を使うくらいなら福祉を充実!」といった声が上がったときに抗いきれない。公益のために税金を投入しバスのネットワークを維持しつつも、事業者が努力や工夫をして生み出した利益は事業者に戻ってくるようなインセンティブを備えた制度を、諸外国の事例などを参考に組み立てることも必要だろう。国にも、地方自治体にも、事業者にも、研究者にも、考えるべき課題が山ほどある。そのためには、この「再生塾」のような横のつながりは極めて重要だろう。そこに民間のバス事業者が誰一人として参加していない、というのが少し残念ではあるが。
2009.09.07
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10月1日の改正期を前に、特に西のほうから高速路線バスのダイヤ改正のニュースが続いている。九州では、広交観光/大分交通の広島~別府線「別府ゆけむり号」が大分まで延伸とのこと。O先生のブログによると乗車率も芳しくなかった様子で、O先生もお書きのように、何か抜本的な手術が必要とされていたのだろう。県庁所在地であり、大分交通の本拠地であり、相応のマーケットである大分市への延伸はO先生をはじめみんな考えていたのだろうが、難しい理由があったと思われる。この路線、ワンマン日帰りの運用を組むと労使の協定に抵触する長時間路線であるが、途中のフェリー乗車中を乗務員の非ハンドル時間と扱うことでその問題をクリアしたと聞いたことがある。別府~大分間の片道あたり約30分が延伸のネックになっていたことは想像できる。それを、双方が毎日1往復(計2往復)する形から、泊まり勤務とすることで両社合わせて毎日1往復に規模を縮小することと引き換えに大分延伸が実現したようだ。ここからは妄想だが、もっと踏み込んで考えれば、首都圏~関西圏の「ドリーム号」でJRバス関東と西日本JRバスが、あるいは札幌~稚内「特急はまなす号/特急わっかない号」で銀嶺バスと宗谷バスが既に行なっているように、中間地点以降を相互に運行管理委託しあう形であれば乗務員の宿泊勤務さえ必要ないが、いくらなんでもトレーラーじゃないから、バスをフェリーの車室に放り込んで、後はフェリー到着地で相手側の乗務員が待っていて目的地まで「引っ張る」というのはさすがに無理か。別府に、広島の原爆被害者を対象にした温泉療養施設があったことからその見舞い客の需要を前提に始まった路線ということで、その施設自体は役目を終えて閉鎖されたらしいが、いかにも高速バスらしい成り立ちであり、気持ちとしては「がんばって欲しい」タイプの路線である。「別府ゆけむり号」が、気持ち的に応援したい、あるいは一愛好家として興味がある改正ならば、もっと「ビジネス」として興味があるのが、大阪~岡山線で、JRバス系の「吉備エクスプレス大阪号」と、両備バスの「リョービエクスプレス」が共同運行化というニュース。この大阪~岡山線というのも紆余曲折いろいろあった路線である。特に「リョービ」は、もともと南海と両備の共同運行で2往復からスタートしている。「新幹線だと乗換が必要な大阪南部と岡山を直結」という「ニッチ市場」を狙いに行ったわけだが成功とは言えず、むしろ南海が撤退した後(たまたま両備は大阪にも支社があり運行を引き継げたこともあり)両備が本腰を入れ、堺発着をなんば発着に短縮したことでワンマン日帰り運行を可能とし大幅増発。その多頻度化がさらに人気を呼んで急成長した。当初想定した「ニッチ市場」ではなく、堂々と本丸市場を切り崩したに行ったことで成功した路線だ。その「リョービ」が、「吉備」と共同運行化。最近は、さらに3本目の路線として下津井電鉄の「シモデンエクスプレス」が追い上げてきていたが、これでフリークエンシーは完璧、大阪側のターミナルも選択肢が増え乗客の利便性はさらに大きくなるだろう。「成長期」は卒業して「安定」と「さらなる発展」へ舵を切ったと言うことか。これまでのライバルどうしということで思い切った決断だが、勝ち組どうしの強気の提携という印象。しかし「リョービ」の歴史を見ても、南海が撤退したことで大阪側での積極的な販売促進はほぼ無くなったはずにもかかわらず、むしろ南海の撤退後に急成長している。国交省のデータを調べてみても、大阪府民が岡山に向かう際の高速バスの輸送シェアは8%、逆に岡山県民が大阪に向かう際の高速バスの輸送シェアが16%。「岡山県」の中に、新幹線と競合する岡山地区だけでなく、高速バスしか直通交通がない津山地区などを含むため全体的に高めの数字が出ているが、それでもシェアは倍の差がある。これまでは、両備、下電といった岡山側事業者が地元の需要を喚起することで成長してきた路線であり、だからこそ、ウェブマーケティングを活用することで大阪側での需要をさらに伸ばしてもらいたい、ということを日ごろからご提案しているのだが。いつか、大阪府民が出張や観光で岡山に向かう際に高速バスを選択する率が、岡山側と同じ16%に追いつくまでをお手伝いできれば、と。改正のニュースは続いているが、上記2路線の改正は、お互いに性格こそ正反対ではあるものの、ご担当の方々が知恵を絞った成果として特に印象に残った。
2009.09.01
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