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モータースポーツの頂点、F1についての新著『さらば、ホンダF1』(著者:川喜田研)を読んだ。非常に読み応えのある内容で、かつ読みやすい文章だから食い入るように読みふけり、3時間ほどで読み終わってしまった。10年間続いたホンダのF1挑戦「第3期」(なお「第2期」は大成功に終わり、悠々と「休止」を宣言していた)は、昨年、突然の撤退発表で幕を閉じた。私は格別ホンダ一辺倒のファンではないが、F1は好きだし、トヨタ・チームや日本人ドライバーも含め応援していたからホンダの撤退はショックだった。ただ、川喜田氏が繰り返し書いているように、このホンダの挑戦は迷走と低迷が続いており、応援する側にも「厭戦気分」が漂っていたのも事実である。私はF1については一ファンに過ぎないから偉そうな解説はここには書かない。ただ、同書の結びの部分から川喜田氏の記述を引用する。「『何のために戦うのか』が不明確なまま、責任の所在もあやふやで、勝利に向けた具体的なヴィジョンも、現代のF1という戦場への理解も、自分達の能力への正確な自己認識も欠いたまま、第2期F1の栄光の記憶と、根拠の無い自身だけで突き進んだ第3期ホンダF1というあまりにも悲劇的な戦争は、屈辱にまみれた形で敗戦を迎えた」そしてその記述は、川喜田氏自身が書いているように「旧日本軍」の愚かな戦いを思い出す。この「旧日本軍」という言葉は、国内系老舗ホテルに勤務していたころ私が頻繁に使っていた言葉である。かつての成功体験が忘れられず、自分達の戦力が相対的に敵に大きく劣っていることにあえて気付こうとせず、根拠の無い自信に基づいて「自分達こそ正統派のホテル。最近進出してきた外資系ブランドのホテルなどに負けるはずがない」と自分達のやり方にこだわり続けた結果、消費者の心は既に離れているのにそれに気付かず、足元の経営がおぼつかなくなっている……もちろん、あえて書く必要はないのかも知れないが、今の路線バス「既存事業者」にも同じ匂いを感じるのだ。何も知らない人がこの本を読むと、著者の川喜田氏のことを「ホンダのことが大嫌いなんだな」だという印象を持つかも知れない。それくらいホンダのことを厳しく書いている。しかし著者自身が繰り返し「従軍記者」と自らのことを称しているが、『F1速報』『レーシングオン』などの雑誌で川喜田氏の記事を読んでいる私は、彼がどれほどホンダF1を応援していたかを知っている。そのギャップが、つい路線バス事業者に厳しいコメントを発してしまう自分と重なるだけに、その厳しい言葉がさらにさらに心を打つ。もっとも本音を言うと、ホテルに就職したときも「ずっと殿様商売をしてきたのに、外資系ホテルの進出などで苦境に立っている老舗ホテルを立て直したい」という理由で就職先を選んだわけだし、現実にそういう会社を改革していく仕事をさせてもらったわけだし(結局、完全に実を結ばないまま離れてしまったが)、私は、そしてきっと川喜田氏も、「ホンダが頼りない。無用に自身過剰な現場と長期的なビジョンに欠ける経営陣では勝てるはずがない!」と叫び続ける立場が大好きなである。その意味では、間違いなく、「既存事業者」をどう変革させていくかが私のライフワークなのだろう。
2009.04.30
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赤字にあえぐ岩国市交通局が、局100%出資の民間会社を立ち上げ路線の一部を新会社に移管する話は以前から聞いていたが、その役員(社長?)を公募すると発表された。そもそも赤字の穴埋めのために公営交通でありながら高速バスに進出したりしていたし、まだ30代の若い市長さん(私の2歳年上。本当に若いのに立派だなあ…)だから思い切ったことをなさる。私が、面白いなあ、と半ば苦笑するのは、新会社を立ち上げることにしても今回の公募にしても、「民間の感覚」に期待されているところだ。上記リンクの新聞記事にも交通局の局長の「バス事業は公営では成り立たない」というコメントが紹介されている。おっしゃりたい意味はよくよく理解できる。一つの会社として独立させることで「親方日の丸」の感覚を脱し末端のスタッフまで当事者意識を持たせ、コスト意識とマーケティング意識、それに接客業としての意識を高めることで赤字額を最小限まで減らしたい、という気持ちはよくよくわかる。国鉄、電電公社など、そして最近では郵政が民営化されたが、例えば国鉄からJRになって駅員の接客レベルを筆頭に鉄道を巡るあらゆるものがよくなったし、電電公社のままだったら今のようなウェブ社会、ケータイ社会が実現したかどうかはなはだ疑わしく、その意味でこの「分営化」には大いに賛成だ。営業面では、唯一の収益源と思われる高速バス(岩国-広島線)については、高速ツアーバスが不得意な短距離高頻度路線だから高速ツアーバスの成功モデルをそのまま導入することはできないものの、発想を柔軟にすればまだまだメスを入れる余地は大きい。ざっと拝見しただけで「ああすれば、こうすれば」というアイデアがいくつか思いつく。高速バス事業については何割かの売上増は可能だろう。コスト面では、大きなレバーは人件費で、それはこの新会社が勝手に決めることは難しいだろうが、それ以外のコントローラブルなコストを圧縮することで、これも多少は削減できるだろう。差し引き、年間7,000万という赤字を半減、といったところか。しかしながら、それでも赤字であることには変わりがない。交通局長さんは「バス事業は公営では無理」とおっしゃるが、この新会社に交通局100%出資という後ろ盾がなければ、申し訳ないが「民間にはもっと無理」だ。それが日本のバス産業の現実なのだと思う。何度も繰り返し書いているが、本当に「市民の足」としてバス路線を現状と同じレベルで維持しようと思えば、何らかの形で公共が費用を負担しサービスレベルを担保しつつ、民間の競争原理も一定程度導入し効率化(ここで言う効率化とは、マーケティング意識の徹底による乗客増収益増と、コストの適正なコントロールによる経費削減の両方を指す)も図る、その相反する2つの側面を両立する制度の設計が必要なのだ。その意味では、この新会社の役員は、理解ある市長さんの指導力のもと、ある意味モルモットとして失敗を恐れず多くのチャレンジをできる人が望まれるのだろう。そして全国の事業者(公営、民営を問わず)、研究者がじっとそれを観察すればいい。具体的には、費用面も含めて、どこまでを公共が担いどこからを民間が担うべきか、その匙加減をいろいろ調節してみてベストな線引きを見つければいい。ただ最大の問題は、その実験をじっと眺めている時間的な余裕があるかどうか、である。現実に全国で老舗路線バス事業者の破綻が相次いでいる。遠く岩国の事例をじっと眺めていた結果、振り向いたら足元で事業が破綻していた、というのでは元も子もない。
2009.04.28
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本日は、ある大手私鉄系路線バス事業者にご説明するためのパワポ資料を作成した。内容は、従来から各社にご説明しているとおりである。●私のサイトは「高速ツアーバス」という色がどうも強いが、高速バス予約事業の参入時から業界紙等で「将来は高速路線バスも取扱う」と明言していたとおりであり、商品力はあるにもかかわらず販売力に劣る高速バス業界に「ウェブマーケティング」を導入することで業界全体の発展を支援しようと考えていること。●国交省発表のデータを元に高速路線バスの輸送シェア(鉄道や自家用車等、全ての交通手段での移動量に占めるバス移動のシェア)を調べてみると、大都市間路線よりも大都市~地方都市を結ぶ路線の方が圧倒的にシェアが大きく、またその中では地方都市側在住者のシェアが特に大きい。すなわち、高速路線バスは大都市側で需要喚起できていないこと。●したがって、地方側で十分に定着している高速路線バスと、大都市側での需要喚起が得意な私のサイトは理想的な補完関係にあると考えられること。以上を、図やグラフを用いてご説明する。ご提案相手の事業者によっては、●レベニューマネジメントの導入により高速ツアーバスの料金が高速路線バスの運賃を軽く上回る日も多く、3列シートのほか2列シートや多彩なオリジナルシートまで登場し「高速ツアーバスは安い」というイメージは過去のものであること。●私のサイトの宿泊予約部門は、私鉄系のホテルとも密接な関係があること。なども追加する。以前にも書いたが、上記をご説明すると、だいたい「ウチもインターネットやってるよ。コンビニもやってるし」という反応が返ってくる。本日、特に注意して資料を作ったのはその反応への答えだ。たしかに私鉄系事業者は(ごく一部を除き)、グループ内の広告代理店などを通して作った非常に見栄えのいい公式サイト(ホームページ)をお持ちである。発車オーライネットなどとの提携により、そのサイトから高速バスの予約を取ることができる。しかしそれらは多くの場合、その事業者がその路線の高速バスを運行していることを、あらかじめ知っている乗客しか見ないサイトだ。漠然と「高速バス」「○○行き高速バス」を探している「乗客予備軍(潜在需要)」が取り込めているとは思えない。もっとも、インターネットを日常的に多用しないご年配の経営陣が「予約受付ツールとしてのインターネット」と「マーケティングツールとしてのインターネット」を区別できるとは、失礼ながら思えない。かく言う私自身、旅行予約やネットショッピングはほとんどPCで行ない、モバイルサイトは補助的にしか使わないから、今の学生はPCさえ持っておらず、予約や買物はほとんどモバイルでやっていると何度聞いても感覚的に理解できない……それに、私自身、経験がある。私の前職のホテルは絵に描いたような老舗ホテルだった。私がインターネット担当になってすぐの頃、私がその担当と知らない大先輩と会社帰りに一緒になった。白髪まじりで背筋のピンと伸びた、これまた絵に描いたような先輩ホテルマンがこう言った。「最近、ウチのホテル、インターネットなんかで売り始めたらしいな。タビマド(旅の窓口)やって? そんなもん、恥ずかしいからすぐにやめるように部長に言え。お前やったら部長から信頼されてるから聞いてくれるはずや」わずか数年前のことである。もしも、と思う。もしもあの時「ウチは老舗だからタビマドなんかで部屋を売らない。その辺のビジネスホテルと並べられるなんてありえない」と経営陣が判断していたら……タビマド上で比較してみることで、ビジネスホテルの価格にちょっと足せば老舗ホテルの快適さや「なだ万」の朝食を味わえることを知って泊まってくれた出張族や、エグゼクティブフロアを大リニューアルした際に「一休ドットコム」上でのキャンペーンを見て「おじさんホテルだと思ってたけど、意外とお洒落なホテルだったんですね」と大挙して宿泊した若いカップルがいなければ、あのホテルは経営を維持することさえ厳しかったのではないか。繰り返すが、それがわずか数年前の話である。いま、私のサイトだけであのホテルの1割以上、もしかしたら2割近く送客しているのではないか。既存の高速路線バスを私のサイトが扱うことは一見ハードルが高そうに見えるし時々あきらめたくなったりするが、それでも私が断念しないのは、ホテル業界での、ここ10年のインターネット予約サイトの存在感の変化をよくよく承知しているからである。
2009.04.27
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羽田空港の発着枠の配分を巡る議論について旅行業界の専門誌が伝えていた。新規航空会社に優先して配分するという国の方向は変わらないようだが、各論に入ると「既存」側の2社でも、また「新規」側の各社同士でもそれぞれ意見が異なるようで、部外者的には面白かった。このニュースを紹介したのは、当然、停留所の再配分機能がないバス業界との比較のためだ。現在のところ、事業者が停留所の「権利」を得たならば、その停留所を使用する路線を全て廃止しない限り、事実上その事業者の裁量で停留所を使用することができる。1日1本でも、極端な話、週に1本でもダイヤを維持していれば(もっと言えば「休止」でも)、状況が変わればその停留所から別の路線を発着させることができる。法的には規制緩和されたはずの乗合バス事業に思ったほど新規参入が増えないのも、「停留所の確保」という難関、事実上の参入障壁が残されているからだし、逆に予約制を前提とする長距離・夜行の高速バスに関しては、「募集型企画旅行」という全く別のルールを当てはめた高速ツアーバスという形で、この問題をうまくすり抜け「事実上の高速バス新規参入」が軒並み成功している。旧来の「古きよき免許秩序」の元では、路線バス事業者にとって停留所の権利は「資産」であった。私自身、気持ちとしてはそれがよくわかる。特に高速バス事業については、乗合バスの免許秩序自体が元来想定していなかった事業モデルだけに、各事業者が時には行政と戦ってまで勝ち取ってきた権利である。その過程は、一愛好家(?)としては非常に興味深い。だが「停留所の権利」が生きている限り、新規参入を困難にしているのも事実である。いったん話は変わるが、高速路線バスの事業者サイドから「高速路線バスと高速ツアーバスとで競争条件が不均等なことが問題であり、高速ツアーバスも高速路線バス(一般乗合)に一本化すべき」というご意見を頂戴することが多い。もちろんそれはそれで一つの見識であり頭から否定するつもりはないが、イコール・フッティング(競争条件の同一化)にはイコール・アクセス(参入条件の同一化)も含まれるはず。高速ツアーバスに対して「ちゃんと路線バスの土俵に乗ってからかかって来い」と叫ぶ以上は、自らの停留所の一部を新規参入事業者に開放する義務が生じることをご理解なさっているとは感じられない(変な言い方だが、私はいま「路線バス事業者側」に立って、「そんなこと言ったら自分達の首を絞めるじゃないか」と味方を諌めているのだ…)。何度も繰り返し書くが、「高速ツアーバス参入による競争激化により、高速バスの利益で過疎地の路線を維持することができなくなり過疎路線の切捨てになる」という理屈も、「高速バスの利益で地域のバスを維持する」と社会に約束してしまったが最後、今後どれほど「平バス」の赤字が膨らんでも事業者の自助努力でなんとかする、ということであり、事業者が自らの首を絞めているように見えて仕方がない。さらに札幌市で図らずも表面化したように、なし崩し的な公的助成は「税金の無駄遣い」と非難を浴びる。これまで、下げたくもない頭を自治体に下げ分厚い申請書類を書いて補助金を得ていたのは、事業者にすれば、本心からよかれと思い、地域の足を守るという責任感と誇りを持ってであったとしても、ある日突然、「税金泥棒」呼ばわりされるリスクさえ、路線バス事業者は抱えているのである。既成のビジネスモデルをベースに物事を考えていては、産業を永続化させることは難しい領域に、日本のバス産業は入り込んでしまっている。事業者もメーカーも、我々のような販売サイドも、行政も研究者も、もう一度ゼロベースから、日本のバス産業の「あるべき姿」を議論しないといけない時期に来ているのである。近視眼的な議論のために時間が過ぎてしまうのは、あまりにもむなしい。
2009.04.24
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神奈川中央交通から、大阪線、京都線撤退が発表された。今後は、相手会社である西日本JRバスの単独運行で調整中という。路線バス事業者の夜行路線撤退は、コストや要員が理由であるケースが多いから一概には言えないが、高速ツアーバスの影響による集客不足という側面も、正直、否定できないだろう。その意味では、この種の路線が高速ツアーバスの影響を最も受けているに違いない。高頻度昼行路線や、長距離夜行でも地方都市への路線であれば、主に現地側(地方都市側)での路線バス事業者の存在感の大きさから「地元の足」として一定程度定着している。『バスラマ』の和田編集長風に言えば、地方の路線バス事業者が「自らの畑」を丹精籠めて耕してきたということだろう。各種データでも、高速バスの乗客に占める現地側在住者の割合が大きいことがそれを示している。だからこそ、逆に大都市側での市場開拓は不十分と言える訳で、その部分を私どもでお手伝いしたいと各社にご提案しているのだが、とはいえ、高速ツアーバス参入が直接的に路線の存亡に関わるほどの影響を与えているわけではない。だが、首都圏と関西を結ぶ夜行路線は高速ツアーバスの影響が直撃したに違いない。もともと、何度も繰り返すが大都市において高速バスの市場開拓は残念ながら全然できていなかった。ただ、全体の移動量が膨大であるから、ほんのわずかなシェアを取るだけでも1台のバスを埋めることができた。広大な畑があって、そのごくごく一部を手で耕すことで一人分の食い扶持は確保できていた、というイメージだ。だが、地方都市とは異なりあまりに巨大な畑だけに、インターネットというブルドーザーを持ち込めば極めて効率よく開拓することができる。たまたま、そのブルドーザーをうまく活用したのが高速ツアーバスであった、ということだ。まだ手付かずの部分の畑を耕すためにブルドーザーを持ち込んだところ、既に細々と耕されていた部分まで引っ掻き回してしまったわけである。だから、そのブルドーザーの代表格である私のサイトに対して、直撃を受けた路線バス事業者が快く感じておられないことは容易に想像できる。ただ、それが私には悔しくて仕方がない。そんな路線(巨大な畑)だからこそ、高速路線バス事業者も高速ツアーバスと一緒にブルドーザーに乗り込んで畑を耕し、収穫をみなで分け合えばよかったのだ。高速ツアーバスなどと一緒に並べて売って欲しくないというお気持ちはよくわかるが、品質の差は同じ商品棚に並べてみて初めてお客様が比較できるものである。必ず、多少高くてもいいモノは売れる。先月から私のサイトは、募集型企画旅行商品限定とはいえ、小田急箱根高速バスとお取引を始めた。冒頭に挙げた神奈川中央交通とは同じ小田急グループの事業者である。歴史に「もしも」は無いとは言うが、もしも1年早く箱根高速バスと契約できており、その実績を元に小田急グループ全体とお付き合いが始まっていたならば、今回の撤退は無かったかも知れない※。勝手な想像だが、先方は私のサイトを心から恨んでいらっしゃるかもしれない。しかし、こちらはラブコールを送っていたつもりだった。ただ、それは残念ながら届いていなかった。私自身、私のサイトに対する路線バス事業者のネガティブな気持ちに配慮し過ぎて提案活動を慎重に慎重にし過ぎたかもしれない。受け入れていただけるかどうかは別として、最低限、ラブコールをお伝えしておくことは必要なのだろうと、いま強く感じている。※極めて現実的には、共同運行会社との調整もあるし、先に述べたように今回の撤退は必ずしも集客不足だけが理由ではないだろうから、「もしも」のストーリーどおりうまく行ったかどうかはわからないが。
2009.04.23
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昨日、本日と、私鉄系路線バス事業者その他への往訪が続いた。どの事業者様も、現場のメンバーは若手を中心に前向き。ただ、会社としての判断となると「横」の並びをだいぶ意識なさっている様子だ。ある事業者のご担当者様がおっしゃっていた「赤信号、みんなで渡れば・・・じゃないけど、誰か手をつないで一緒に渡ってくれる会社があれば今すぐにでも御社と契約したいんだけど」という言葉は本音だと思う。もちろん、私自身もその感覚はよく理解できるわけだが。それはともかく、個人の立場で私は昨年の秋に「バス事業勉強・交流会」というのを立ち上げた。既存の路線バス事業者(高速バス事業に直接関係する方もそうでない方も)、貸切専業者、高速ツアーバス関係者など、意欲のある若手20人ほどに集まっていただく会だ。私の頭の中では、バス業界の大先輩(事業者の経営者クラスや研究者など)を毎回交代で講師役にお招きし、自らのご経験や若手へのメッセージなどお話してもらい、それを「肴」にして自由に議論したりお酒を飲んだり、という会である。「私の頭の中では」と書いたのは、第一回は実現したものの、主催者である私がサボってしまっていてシリーズ化できていないからだ。昨日お邪魔した路線バス事業者で、商談の後「あの勉強会、面白かったからもう一回やろうよ」とお声がけいただいた。本日は第一回の講師役の方(おそらくバス業界では有名人)と昼食をご一緒したが「続けようよ。誰を呼ぶとか考えると成定さんが大変なんだったら、意見交換だけでもいいじゃない」とおっしゃっていただいた。大変光栄なお話しで、感謝感謝、である。実は私の前職であるホテル業界では、この種の勉強会や交流会がけっこうな数、行なわれている。そもそも「ホスピタリティ・マネジメント(ホテル経営学)」という学問があり大学で研究されていてその公開講座も多いし、ホテル関係の業者さんがスポンサーになってのセミナーや個人レベルの会合(ただの飲み会も含めて。その代わりホテルの垣根を超えてライバルホテル同士、時には全国のホテルスタッフが集まる)まで様々である。セミナーなどでは講師から聞く内容も勉強になる一方で、向上心のある若手同士の横のつながりが生まれる点が非常に意義が大きい。そんな集まりからできた個人的な友人も私には多いし、お互いのホテルを見学しあったり中にはお互いのホテルを無料で試泊しあったり、時にはそんなつながりから転職までしてしまった例も知っている。バス業界でも同じ流れを、というのが私の思いである。老舗路線バス事業者に伺うようになってあらためてわかったことだが、路線バス事業者の若手はみな優秀で意欲的である。それぞれの地元の名門企業に就職した人たちだから、当然である。にもかかわらず彼らには横のつながりが不足している。「同じ私鉄グループ内の、ホテルや流通の担当者とも話す機会はほとんどないんだよ。話すとすれば、社内の広報担当と鉄道と、あとは子会社のバス事業者。それでは、新しいアイデアなんて生まれないよね」という言葉はきっと本音で、かつ切実である。やっぱり、立派な講師とか呼べなくていいから、まずはあの20人で「飲み会」をやろう。勉強会として体裁を整えるのは後でもいいから。そして、私たちの世代(いちおう、私も30台なので。もっと年上に見えるとよく言われるけど)から、バス業界に新しい風を起こすことができれば、と思っている。
2009.04.22
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富山県のイルカ交通が運行する高速路線バス「きときとライナー」の和倉温泉延長がほぼ決まったようだ。もともとこの路線は、富山県の高岡・小矢部から名古屋まで運行されているが、「高速路線バスの新規参入」としては数少ない事例である。もともと「平バス」さえ運行していない純粋な貸切専業者が、東海北陸道の開通を機に単独で路線を開設。今回は、県境を越えて石川県の有名温泉地への路線延長である。東海北陸道開通による高速路線バス新設ラッシュ(もっとも、採算性を疑問視して既存事業者が迷っているなか、このイルカ交通が申請をしたので既存事業者が意地でも路線をとがんばった側面はあるだろうが)は現地の新聞等でかなり報道されたようだから、現地ではほどほどの認知度があろう。この地区に住んでいて名古屋へ出かける人は、停留所の位置や運行ダイヤ、車両設備等、比較の上で既存事業者の路線と「きときとライナー」を選んで予約しているに違いない。一方、名古屋側で需要を喚起できているかというと、ほぼゼロだろう。名古屋を朝発の便の乗車率は決して高くないだろうし、その数少ない乗客も、例えば高岡側の出身で名古屋で一人暮らししている学生の帰省など、高岡側に紐づいている乗客に違いない。今回の和倉延長は、名古屋からの観光客送り込みという点で地元での期待値は大きいだろうが、うまく行くかどうか。この、大都市側で高速バスの認知が低いという点は、「きときとライナー」のような片乗り入れでなくとも、共同運行の路線であってもほぼ全国に共通して見られる問題である。地方における路線バス事業者、あるいはバスそのものの存在感と、大都市におけるそれとでは大きく違う。おまけに(名古屋の場合はさほどではないが)方面によって事業者が異なるため効率的なマーケティングもできないし予約窓口も異なり利用者にわかりづらい。だからこそ私どもに全国の高速バスをサイト上で代売させていただければ、ウェブを使った効率的なマーケティングで需要を最大限に喚起しつつ、乗下車地と乗車日を入力するだけで空席のあるバスが表示される検索機能により予約を簡単にすることで、高速バス全体の利用者数が増えると常々申し上げている。特に今回のような温泉地への路線の場合、私のサイトで旅館を予約しているお客様にずばり高速バスをご紹介できるのである。本当は、一刻も早くイルカ交通に上記をご説明し、取扱させていただきたいところである。必ずお力になれる。しかし、このイルカ交通は高速路線バス事業者には違いないが、既存事業者という「村」の住民ではない。ここは、涙を飲んでご提案を遠慮するしかない。新興業態である「高速ツアーバス」育ての親である私のサイトが、新規参入事業者の商品から高速路線バスの取扱を始めてしまえば、既存事業者「村」の住民達はますます私のサイトに否定的になるだろう。「高速路線バスを扱っている」という既成事実さえあれば「じゃあウチも」と言ってくださるとは思えないのだ。だからこそ、私のサイトが取扱う高速路線バスの第一号は、既存事業者でなければならないのだ。本当は、既存も新規も、路線もツアーも関係なく「あらゆる高速バス」の販売のお手伝いをしたいのだが、ここは足元の小さな1件より将来の大きな夢。ハードルが高いことはよくよく承知しているが、それでもあくまで正面突破にこだわりたい。業界事情をご存じない方にはよくわからない我慢かも知れないが、今イルカ交通に営業に伺うのはとにかく我慢。いつまで我慢できるかなあと不安もあるけど、私自身の夢のためだし。
2009.04.17
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レストランの業界誌『日経レストラン』編集長のブログが、いきなりバスの話題になって驚いた。新卒でホテルに入社して最初に配属された現場がF&B(レストランやバーなどの料飲部門)だったし、特にその後、戦略部門を担当するようになった後に会社でよく目を通していた雑誌である。その雑誌の編集長が、バス、の話題である。びっくりした。ご自宅前の停留所は、複数の事業者が競合しているらしい。その中で、片方の事業者に決して不満足ではないが、もう一方の事業者の接客が素晴らしいので、待ってでもその事業者に乗る、とのことだ。「ただ運べばいい運輸業から、気持ちのいいサービス業へ」変革を遂げたその事業者に、お仕事で接客に深くかかわるご自身がインスパイアされているらしい。おそらく都内にお住まいだろうから、競合路線があって接客がいい事業者、というと、あそこかなあ、こっちかなあと妄想は膨らむ。嬉しい限りではないか。「乗務員」から「営業掛」「サービスプロバイダ」「クルー」などとその呼称を変えたり、車内名刺を写真入の大きいサイズにしたり、各事業者で努力と工夫を重ねてきた結果が、接客に一番敏感なお立場の方から評価を受けている。そして、実際にその乗車行動さえ変えている。このブログでは、一番最初から「お客様の方を向く」ことの大切さと、「バスを選んで乗る時代」を作りたいという点を、繰り返し繰り返しご説明してきた。一利用者の立場からこのようなコメントをいただけるのは何よりである。一方、これも繰り返し申し上げていることだが、大都市部はともかく地方では路線の維持さえ難しい状況が軒並み発生している。高速バスや不動産賃貸といった副業の利益では穴埋めしきれない赤字を背負い、かといって、なし崩し的な税金の投入は市民のコンセンサスが得られない以上、地方部での「平バス」の維持には何らかの公的スキームが必須であろう。だがそれは競争原理の否定につながり、今まで以上に接客もおろそかに、そして経営は非効率になる。だからこそ、これまで以上に事業者間の競争原理を機能させつつ、路線の維持など公益性を担保する、全く新しい制度設計が必要だというのが、(私の本業の高速バスではなく)「平バス」についての私の考えだ。逆に、公益事業ではなく収益事業である高速バスは、もっと競争原理を持ち込むことで市場の拡大が望める…同じバスでも本質的には全く別物なのである。話は戻って、私自身が接客のよさでインスパイアされるのは、横浜市にある野毛山公園の市営駐車場である。図書館に行く際によく使う。市の外郭団体の職員の方々で、ほとんど年配の男性、それも立体駐車場の設備を操作する役と聞くと、いかにも無愛想な顔ぶれを想像するだろうが、これが全くそうではなく、皆さんキビキビと動き折り目正しくかつ親切で、使っていて本当に気持ちいい。もちろん、お一人おひとりのお人柄や努力の賜物なのだろうが、職場全員がそうなのだ。ただ、この「接客」に問題を限っていうと、答えは簡単だと思っている。これも繰り返し書いてきたが、日本の「現場」は極めて優秀である。「接客までが自分達の仕事」と現場が認識すればさえ、彼らはきっちりとやり遂げる。野毛山の駐車場には、たまたまそういった先輩がいたのだろう。そうじゃない現場でもそう思わせるかどうか、が、マネジメントの腕の見せ所だろう。なお、私の目の前の課題で言えば、高速ツアーバス運行会社の乗務員の中には「貸切の仕業」という心積もりで走る人が多い。接客は添乗やガイドがするもの、というつもりで、曲がりなりにも高速バス(高速ツアーバスを「高速バス」と表現すると抵抗がある方も多いだろうが)に乗務されると、やはり利用者の満足度は高くない。事務局を務める高速ツアーバス連絡協議会の次回の総会は、接客の研修かなあ。。。
2009.04.16
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本日は午後から、財団法人道路経済研究所主催「都市バス研究会」に参加した。計6組の貴重な講演を拝聴したが、印象的だったのは中村&鈴木の「ダブル文彦」のお話だった。まず横浜国立大学の中村文彦先生のお話の中では、コペンハーゲンとバンクーバーの事例に驚かされた。限られた文字数でご説明できるような代物ではないから詳細は省略するが、まったく新しい発想で市内バス事業を運営する姿勢(たとえば、一切時刻表がない。乗務員さえ時刻表を持たず、電子的に前の便との間隔が伝達されるので、前の便との運行間隔を均等にすることだけを運行指標とする、など)には心から驚いた。他の先生方の講演の中に「公営交通を民間に委譲することによって民間のノウハウを活用し効率化する」というお話も当然のように出てきたが、このコペンやバンクーバーのような、ビジネスモデルそのものの大転換は、逆に民間では難しい。たとえばバンクーバー交通事業局の「ガソリン税など資金も投入させてもらう。その代わり公共交通への責任を持つ」という強い意志とリーダーシップがなければ実現しないレベルと感じた。交通ジャーナリストの鈴木文彦先生からは、このブログでも何度か紹介した札幌市の「北海道中央バスの路線廃止問題」について詳しくご説明があった。一方、時間の都合で、松山、山口、盛岡など、鈴木先生ご自身もたずさわった「市内バスの活性化に成功した事例」をゆっくりご紹介いただけなかったのは残念だったが。特に松山については、先日の松山出張の折りに地元の知人(バス業界とは関係ない)から、地元事業者の接客が非常によく利用して気持ちいいというコメントを聞いていただけに詳しく状況を聞きたかったところである。ただ、いずれにせよ、上記コペンハーゲンやバンクーバーの事例と比べてなんと小さな成功事例であることか。そしてきわめて属人的である。たまたま地元自治体の首長や交通担当者がバスに熱心だったり、たまたま鈴木先生と縁があった地域だけは何とか市内バスを活性化できるが、それとて所詮は既成ビジネスモデル内での変革にとどまり、たまたま熱心な担当者がいなかった札幌市ではそもそも何も変えられないまま泥沼化する「一勝一敗」モデル・・・鈴木先生や各事業者のご努力は(バス愛好家?として)よくよく存じ上げているが、地域単位で成功事例を積み上げていく「ボトムアップ型」ではなく、まずバス産業再生に向けての大きなフレームワークを提示し、それに基づいて地域単位で対策を考える「トップダウン型」でなければ、危機にある日本のバス産業を救うことはできないのではないか。少なくとも札幌市の事例を(直接の関係者には大変失礼な話だが)きっちりと「失敗事例」として業界全体に共有し、「(政令指定都市であっても)赤字で平バスを維持できなくなる」危機感と、「既得権に基づきビジネスをし、かつ税金投入も受けている路線バス事業者は、(札幌でそれが起こったように)いつなんどき社会的悪者として非難を浴びるかわからない」緊張感を認識しないと、このままでは何も変わらない気がする。
2009.04.15
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リクルートの宿泊予約サイト「じゃらんネット」と、ホワイトベアー・ファミリーの高速ツアーバス予約サイト「高速バスドットコム」の提携が発表された。「じゃらんネット」は、本業の宿泊予約の分野で私の会社(厳密には親会社)と激しいシェア争いを実施しているし、「高速バスドットコム」は、数多い高速ツアーバスの受託販売サイトの中でも、たくさんの企画実施会社の商品を平等に取り扱い空席検索結果から比較検討のうえ予約できるという、私のサイトと同じスタイルを取る唯一のサイトだから、当然考えられた提携である。「高速バスドットコム」は、これで、MSN(マイクロソフト)、YAHOO!トラベル(ヤフー)、じゃらんネット(リクルート)と、なかなか強力な面々と提携したことになる。もちろん、「インターネットでモノを売る、予約を取る」という点では我々こそ本流であり慌てる必要はないと考えているが、ますます気を引き締めて業務にかからないと。「高速バスドットコム」の提携先では、特にYAHOO!トラベルが印象的。メインである宿泊予約の分野でかれこれ10年近い付き合いになるJTBの高速バス予約(つまりデータベースは発車オーライネット、すなわち高速路線バス)ではなく、高速ツアーバスを扱う高速バスドットコムを選んだ点が当時は驚いた。みんな、よほど私の会社(バスだけじゃなくてトラベル全体、グループ全体)が憎いのかなあ?それとも真似をしたいのかなあ?? もっとも、仮にYAHOO!トラベルとJTBが今のまま提携しても高速路線バスがどんどん売れるとは思わないが。繰り返すが、インターネットは自動販売機ではない。売るには売るためのDNAが必要であり、中途半端な提携ではそれが伝わるはずもないからだ。それはともかく、YAHOO!と高速バスドットコムの提携開始から1年ほどになるが、私のサイトに何かマイナスの影響があったかと言うとそれはゼロである。むしろ、プラスと言っていいのではないか。高速バス(高速ツアーバスに限らず)は認知度が上がればさえマーケットは簡単に拡大できるステージにあるから、販売窓口が増えれば乗客が増え、乗客が増えれば各社の事業規模が拡大する。高速ツアーバス全体の事業規模が大きくなれば私の会社の取扱高も結果として増えていくわけで、カニバリゼーションが絶対ないとは言わないが、今のところは成長圧力の方が大きくわずかなカニバリなど軽く相殺してしまう。新聞記者さんとお話しする際も「最近YAHOO!さんも始めたんですよ」などとご説明すると業界全体としての動きとして捉えてもらえ、それが記事につながったこともあるし。マーケット拡大の余地が大きい(ライバルを蹴飛ばさなくても成長できる)点こそ、高速バスビジネスの魅力である。ただ、高速ツアーバスは大都市間の長距離夜行路線が多く、その意味では我々も「じゃらん」も、せっかくの宿泊予約とのシナジーが出しづらい。一方、高速路線バスにはリゾートや温泉への路線も多い。箱根、富士五湖、那須、南紀白浜、城崎…私のサイトで宿泊予約しているお客様の数は膨大で、一刻も早くぜひその人たちに高速バスのご案内をしてみたいものである。
2009.04.14
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私の古巣のホテルが沖縄に進出することが発表された。「関西の迎賓館」として80年近い歴史を持つこの老舗ホテル企業は、高度経済成長、土地の右肩上がり神話の中で長い間「いい時代」を過ごしてきた。その勢いでバブル期には全国展開を図り続々と新規ホテルを開業させたばかりか、「関西発の世界チェーン」を目指してニューヨークなど海外にも積極進出した。ただ、残念ながらその多くは営業的に失敗に終わり、外資系投資ファンドや新興ホテルチェーンに売却された。銀行からの出向組を中心に売却にたずさわったメンバーは苦しい交渉が続いただろうが、そこで得た現金が会社の危機を救った。完全復活とはまだまだ言えない状況だが、新規ホテルは嬉しいニュースだ。私としては、一度は新規ホテルの開業にたずさわりたいと考えてホテルに就職した。構想段階から何年も準備を重ね、だんだんと完成に近づく自分のホテル。だがホテルは建物ができて完成ではなく、スタッフの教育や開業プロモーションなど、開業日に焦点を合わせてソフト面の準備が続く。ヘルメットをかぶって、まだ無人の開業前のホテルで開業準備に追われる自分の姿を夢見ながらホテリエ生活を送ってきた。だが残念ながら私は新規開業にたずさわることはなかった。バブル崩壊直後に社会に出た以上、仕方がないことかも知れない。一度、格安ホテルチェーンの、オープン初日に宿泊したことがある(西口バイト時代の仲間達と一緒に地方の高速バスを乗り歩きに行った時だ)。翌朝、無料で供されるおにぎりと味噌汁の朝食をロビーで食べながら、「あの棚を90度動かした方が動線もよくお客様にもわかりやすいのにな」と心の中で思った。直後、チェーン本部から派遣されたと思われるまだ若い女性スタッフが現地の支配人に対し、私が感じた全く同じことを指示していた。どうしても新規開業に立ち会いたい、とあらためて強く思った瞬間が忘れられない。一方で、売却されていったかつてのグループホテルは、外資ファンドや新興チェーンによる新しいマネジメントの元、ほとんどが営業的にも成功し経営的にも利益を上げるまでに復活している。老舗ホテル企業ではうまく行かなかったことを、彼らはこともなげに成し遂げている。そこまでには多少の人員削減もあるにはあったが、「いい時代」を忘れられない老舗企業による甘えの経営ではなく、苦しい時代に立ち向かう筋肉質の経営スタイルがそれらのホテルを再生させた。コスト削減のような経営的側面だけではない。消費者ニーズを巧みに取り込むというホテルの運営面でも、老舗ホテルが何かを忘れてしまっていたことに、血を分けた兄弟が別の道に進んだのを見てあらためて気づかされる。結局、私自身は、新規ホテルの開業も、ダメになりそうなホテルの再生も、直接立ち会うことはできなかった。バス産業で、同じようなシーンを自分が実現することはできるだろうか。
2009.04.11
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本日、国土交通省から報告書が二つ発表された。一つ目の「貸切バスの評価認定制度」の報告書については、残念ながら私が主張してきた「この制度での評価を旅行会社が募集パンフレット等で必ず表記するよう義務付けるべき」という考え方は盛り込まれなかった。旅行会社の立場からすれば旅程管理の対象となる(例:「二つ星バス会社利用」と銘打ったツアーで、実際に来たのが星なしバス会社だった場合、差額返金の対象となる)ため旅行業界が反対するのは、旅行会社の社員としてよくよく承知しているのだが、そこを押し切って欲しかった。旅行パンフ上では、航空、鉄道、船舶はその名称の表示を、またホテルの客室など「オーシャンビュー」と「オーシャンフロント」の使い分けさえ義務付けられているのに、貸切バスについては老舗でも新免でも「貸切バス」で済ませるというのは、特にちゃんとした事業者にとってもったいない気がする。とはいえ、制度そのものは現実的なものになった印象なので、むしろこれをどう活用するか、社内でも、また業界内でも前向きに議論していきたい。もう一つの「バス産業勉強会」の報告書については、我が意を得たりの内容ばかりだ。「今後の課題と方向性」の冒頭から「事業者の意識変革」を求めている点も印象的だ。高速バスについては3点。「高速ツアーバスとの競争条件平等化のため高速路線バスの規制緩和」「競争力向上のためアライアンスや全国統一的予約・検索システム構築」「高速ツアーバスの安全確保・健全経営のため国が必要な措置をとる」。特に「全国統一的な予約・検索システム」については、まさに私の会社がビジネスとして進めようとしている内容であり、とはいえ宗谷バスから那覇バスまで、さらに高速ツアーバスも含めた「あらゆる高速バス」を私の会社で全て網羅するのは現実的ではないから、高速路線バスの基幹システム(発車オーライネット、高速バスネット、京王系のSRS等)と高速ツアーバスの基幹システム(DJ、ウィキャン等)をそれぞれ横に串刺しした中間的なシステムインフラができ、私の会社のようなリテーラーに平等に開放され接続されれば100点満点だ。高速バス版GDSか、それ以上の価値がある。もちろん、非予約制の短距離高速バスの路線・時刻検索システムも必要だろう。ただウェブで事業をやっている身からすれば、ウェブサイトやシステムは、作ることより運用することの方が大変である。この件が、「公」の実績作りのためだけに税金を投入して形だけ何かを作り、後は忘れ去られることのないようにしないといけない。結局は、全てはバス事業者のためなのだから、事業サイドが当事者意識を持って事に当たるべきである。この報告書の結論として「バス事業者は、路線バスの赤字を高速バス・貸切バス事業や関連事業の黒字で補填する構造を見直す方向を目指し」「持続可能な産業として自立」すべきとまとめている。まさしく本ブログで何度も繰り返してきた内容である。微力ながら、会社としても個人としても、そのお手伝いをしていきたい。
2009.04.10
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私のサイトで、従来から乗務員の接客のよさと充実したアメニティセットで好評だった、京都市のMKが運行する高速ツアーバス「MKナイトシャトル」に、今月から3列シート車が登場した。コース詳細ページの「お客さまの声」を読むと、やはりスタンダード便に輪をかけてお褒めのコメントが並んでいる。この便は、私のサイトがほぼ100%の席をお預かりし販売させていただいているが消化率も好調で、早く同型車を増車し毎日運行に移行していただきたいところだ。もう一つ、「お客さまの声」が印象的な便がある。石川県の丸一観光バスである。ちょっとしたことで専務さんとご縁があったので東京・TDRまでの高速ツアーバスをスポット運行なさらないかご提案したところ、昨年末の帰省ラッシュから、週末を中心にスポット運行を始めた会社(企画実施会社<兼>運行会社)だ。こちらの本音は金沢・富山~東京線の繁忙日対策だったのだが、営業所が能登半島の七尾市にあるということで七尾始発の金沢・富山経由となり、どうせだったらと私の会社から「能登~首都圏、初めての直通高速バス」というプレスリリースを現地メディアに打ったところ地元テレビ、新聞で大きく紹介されたことで地元での電話予約の比率が上がり、むしろ私のサイトで販売できる席が毎週足りなくなっているほどである。詳細ページの中の「お客さまの声」をクリックしていただくとわかるが、1件1件の「声」に、ご担当者様が署名入りで実に丁寧に回答を書いておられる。『運輸と経済』の論稿にも書かせていただいたが、乗客の率直な感想やそれに対する事業者(企画実施会社)の回答・対応が新しい乗客を呼び寄せてくるインターネットの世界(いわゆる「口コミマーケティング」「三人称マーケティング」)で、ここまで丁寧な返答であれば間違いなく人気を呼ぶ。そして何より私達もこれを読むと元気付けられ、同時に販売・集客を任せてもらっている側として責任を自覚し背筋が伸びる感じがする。直接のご担当である高田様にはお目にかかったことはないが、一人ひとりの「声」に実に真摯に向かい合い、かつ丁寧な言葉で返答なさっている。高田様のお人柄や会社の雰囲気が伝わってくるようだ。私の会社は「インターネットは自動販売機ではない」というのが信念で、ウェブ画面でいかに「人気(ひとけ)」を表現するかが売れ行きを決めるとあちこちで申し上げている。私自身も、転職前はホテル側でウェブマーケティング(この「お客さまの声」への回答も含む)を担当してきたが、「お客さまのパソコン画面に私の体温をどれだけ再現できるかが売上アップの鍵」という話を、インターネットのことなど何もご存じない役員の皆様にこんこんと説明した記憶がある。今の高速バス予約サイトも、もっともっとそれぞれのバスの魅力や担当者の人柄を前面に出せるよう改修を重ねていかないと。上記「詳細ページ」へのリンクは3月までの運行スケジュールのコース。4月からはスケジュールを変更したため別のURLでの受注となっている。スケジュールが変更になると「お客さまの声」が引き継がれないのが残念なところだが、車両や乗務員への評価そのものもお褒めの言葉が続いていることから、今後とも同便の「お客さまの声」を見る楽しみが続きそうだ。
2009.04.09
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ホテル勤務時代から含めると私は、データ分析とそれに基づく戦略・戦術立案の仕事にたずさわることが多い。特技は?と言われると、もしかしたら「予約者データの羅列を眺めているだけでお客様の顔が思い浮かぶこと」かも知れない。ホテル時代からの習慣なのだが、1日の仕事の終わりに予約者データをダウンロードして、お名前(当然、見ず知らずの人たちだ)、乗車日(ホテルで言えば宿泊日)、乗車区間やバスタイプ(部屋タイプや宿泊プラン)などが羅列された何千行もあるエクセルデータをぼーっと眺める。眺めているだけで、なんとなく「遠距離恋愛のカップル」「新入学生の初めての帰省」「GWの家族旅行」(ホテルで言えば「カップルの記念日ステイ」「上司に同行してビジネス出張」)といったお客様の姿がおぼろげに見えてくる。ホテルで戦略部門にいたときも、時間を見つけてはロビーに立って(勝手に)ベルボーイを手伝ったり、今で言えば新宿や東京駅に出発風景を見に行ったりして目にした「実際の」お客様の顔とゆっくりとオーバーラップさせていくと、どこからともなく新しいアイデアが浮かんでくる。ホテルから高速バスへ商材は変わったが、もう何年と繰り返している習慣で、実は密かに、仕事を終えて帰宅する前の「至福の時間」だったりする。無愛想なエクセルデータから勝手にお客様の顔を想像するのは普通に考えて「妄想」でしかなく、こんなところでその習慣をカミングアウトするのはちょっと恥ずかしい。ただ、「乗車率(客室稼働率)」「単価」「リードタイム」「ブッキングカーブ」などといった切り口で分析された後の単なる数字だけ見ていても出てこない答えが、ここにあるように思う。マーケティングとは「マクロとミクロの行ったり来たり」だと思う。分析されたデータの中にいる「消費者」というマクロな固まりと、個別の意思や感情を持った「お客様」というミクロな一人ひとりを、まるでカメラのズームを望遠にしたり広角にしたりするように行ったり来たり。「木を見て森を見ず」とも言うが、「木」と「森」をバランスよく見比べることで、本当のお客様のニーズやウォンツを把握できるような気がする。ちなみに、本日の受注データを見ていると、名古屋から東京ディズニーリゾートへ、男性7人のご予約をいただいていた。それも、明後日のご乗車である。いくらなんでも、このご予約だけはお客様の顔を想像することができず……まだ修行が足りないなあ。
2009.04.08
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本日の朝放送のフジテレビ「めざましテレビ」の人気コーナー『ココ調』で高速バスをご紹介いただいた。「高速料金1,000円」がスタートした中で、東京-大阪の移動は実際どれが一番安いのか?を「ココまで調べる」という内容だった。結果は、自家用車の場合、高速代1,000円にガソリン代を足すと6,000円を超えてしまい、見事に高速バスが一番安かった。何人かの方から「仕掛けた?」と聞かれたが、それは考え過ぎ。昨年、同じコーナーでご紹介いただいた際と同じディレクターさんの企画であって、こちらから何かして実現した企画ではない。最後まで3列シートの乗車をおススメしたのだが、「今回は、最安値はどれか、を調べる企画」とのことでスタンダードタイプでの乗車となった。このようなご取材の話を私の会社にいただくと、では実際にどの会社のバスにご乗車いただくか、けっこう気を使う。高速ツアーバスの企画実施会社同士はライバル関係だし、私の会社はそんな各社と平等にお付き合いする「マーケットプレイス」だから、どこかの会社だけ集中してご紹介するわけにはいかない。とはいえ、バスが古かったり乗務員の接客がおぼつかなかったりする会社でも問題がある。今回は平成エンタープライズにお願いした。平成は、以前同様のテレビ取材で3列シートの車内を撮影させてもらうなど協力してもらっていながら、いざ本番のオンエアーでは時間の都合でカットされ、ウィラートラベルのクルマだけが紹介された件があったから、今回は会社名までテロップで紹介してもらえてほっとした。当日は新型セレガの中2階が配車されたし。テレビや新聞などで「高速バス」として「高速ツアーバス」が取り上げられる点についても賛否いろいろだろう。この「高速バス」「高速路線バス」「高速ツアーバス」という名称については別途このブログでも考えを書きたいと思っているが、視聴率の高い番組で、何であれ「高速バス」が露出するということ自体、高速バスにたずさわる全ての企業にとってプラスであってマイナスはない。高速バスという輸送モードは、鉄道や航空から乗客の転移を図る挑戦者の立場であることは間違いがなく、強い敵に立ち向かうときに内輪揉めしている場合ではないのだ。高速バスに関係する各社は、外に対しては「運命共同体」として団結しつつ、内側では切磋琢磨しなくてはならない(切磋琢磨しないといけないのは私の会社も同じである。「高速ツアーバスの受託販売サイト」は私の会社だけではないし、各企画実施会社の自社サイトや全く新しいウェブ技術や概念の開発等、顕在か潜在かを問わず競争相手は数多く、いつも危機感と緊張感を持って仕事をしている)。今回、取材乗車の際に準備不足でちょっとバタバタした。2回目のディレクターさんということもあり、私や私の会社の広報担当者にちょっと油断があったかも知れない。仕事は、特に取材関係はきっちりやらないと、と反省。それから、次のパブリシティ戦略も真剣に考え始めないと。
2009.04.07
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よく「お前の会社は、具体的には一体どんな仕事をしてるんだ?」と尋ねられる。特に、ふだん業務でお付き合いのない路線バス事業者の皆様には「得体の知れない会社」と映るようだ。私の会社は、私を入れて5人のスタッフで回している(そのほか、システム開発エンジニアやウェブデザイナー、それに総務や経理等は親会社に委託。電話案内センターは専門の業者さんに委託)。大雑把に言うと、高速ツアーバス企画実施会社へのコンサルティングを担当する「インターネット・トラベル・コンサルタント」が3人、マーケティング担当者が1人、そして私が全体を見ながら、既存の路線バス事業者への提携の提案営業や行政(国土交通省、観光庁等)とのリレーションといった諸々の業務を担当している。ちなみに、高速ツアーバス連絡協議会の事務局も上記5人で分担している。業務のかなりの部分は、データ分析とそれに基づく戦略・戦術立案だ。先日の日記で書いたように、インターネット・トラベル・コンサルタント3人の最大のミッションは、受注データや前年の予約数などを元に細かくデータを分析し、適切な増発設定や価格設定をアドバイスすることだ。さらに、ウィラートラベルやオリオンツアーといった既存の取引先の増発だけでは座席が不足する最繁忙日(GWなど。幸いにも貸切バスの閑散期でもある)だけ、自社の旅行業免許を使って高速ツアーバスを企画実施しないか、中堅以上の貸切専業者をリストアップして提案に回ったりもしている。中堅以上の事業者では「高速ツアーバスは儲からない」というイメージが染み付いているが、企画実施会社との通年契約で所定便を担当すれば安定して仕業がある分、チャーター代が安いのは当然であり、一方、私の会社がご提案しているのは自社の旅行業免許で自社ブランドで、かつ高単価で満席が確実な最繁忙日だけ運行する「スポット運行」だから、下手な貸切よりよほど収益性が高い。一方のマーケ(集客)側も、データ分析が業務の第一歩だ。「運輸と経済」に掲載された私の論稿に細かく書いたが、ウェブサイトのマーケティングは、SEO、キーワード広告、メールマガジン、ターゲットマッチ等、幅広い。特にキーワード広告は「ダイレクトマーケティング」の代表格で、常時細かく数字(費用対効果)の管理ができる。インターネット・トラベル・コンサルタント側が「すいません、今週末の盛岡は今日中に在庫切れになります!」と叫べば、効率の悪化を避けるために「高速バス 盛岡」「夜行バス 盛岡」といったキーワード広告のパワーを落とす。逆に売り余らせそうな路線があれば、そのワードを強く買う。キーワード広告以外には、グループ内にある日本最大の大学生向け就職活動情報交換サイト(やはり大学生は高速バスの主要ターゲットである)との連携など、グループのスケールメリット活用も業務の柱だ。現在取扱中の高速ツアーバスは大都市間、かつ夜行便が中心であり(その理由も「運輸と経済」に書かせていただいた)、なにぶん夜行ということで宿泊との連携は難しいが、私の会社(厳密には親会社)の国内宿泊部門は、今年か来年、ホテル・旅館への年間の宿泊送客人数で、業界最大手のJTBを抜く勢いである(彼らの送客のほとんどは、支店カウンターでの個人旅行取り扱いか、または修学旅行等の団体旅行だ。それに対し私の会社はほぼ100%個人旅行のウェブ予約である)。今後、大都市近郊の観光地への路線やビジネスユースの多い路線、空港路線などを多く持つ高速路線バスを取扱させていただければ、宿泊予約部門や航空予約部門との相互送客が大きな意味を持つだろう。もっとも、それが完全に実現するまで、「ウェブでの旅行(宿泊や交通)予約」が現在のような形で、また現在の勢力図のままであるかと言われると、少し心もとない。新しいアイデアや技術一つによってマーケットそのものが引っくり返る可能性は大きく、その意味で私の会社(グループ全体)もいつまでもウェブでの物販・予約ダントツ1位であるかどうかなど保証はない。それくらい、ウェブの世界は常に進化が続いていてる。
2009.04.06
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金曜の夜は、新宿高速バスターミナル(通称:西口)アルバイト時代の仲間達と、西口で待ち合わせて飲みに行った。彼らはその後、東北方面のバスを乗り歩きに行くという。私は、週末にテレビ取材の立合があることもあって居残り。見送り組みだ。夜行バスの最繁忙日ではないが、春休みの金曜夜。特にスバルビルからセンタービル、工学院にかけての高速ツアーバスの集合場所は人とバスで溢れていた。それほどではなかった西口のターミナルとの差に少し複雑な気分。金曜の夜だから、価格で言えば、高速ツアーバスのほとんどの料金は、高速路線バスの運賃を上回っているか、そうでなくとも同程度だ。それでも、余りに賑わいの差が。もっとも高速ツアーバスの集合場所を細かく見ると、交差点ギリギリに止めているクルマもあるし、系統立った配車指示も当然ないので後から来たクルマが配車できずに周回したり、それを避けるために無用に早めに配車した例など、改善すべき点が目に付くのも事実である(これらは高速ツアーバス事業のアキレス腱であり、自らの事業を永続させるためにも業界内でよく議論しないといけない点である)。一方で、その時間帯には既に終車が出た後の路線バスの停留所はガラガラだったりする。空港のスポットの場合は、十分とは言えないながらも「新規参入枠」が設けられスカイマーク等に政策的に配分されるのに対し、バスの停留所の再配分機能がない点にあらためて憤慨。高速ツアーバスそのものは乗合許可ではないから現状で停留所を確保することはできないが、もし以前から停留所の再配分機能があれば、もっと違う形での高速バス同士の競争が起こっていたような気がする。航空業界で新規事業者がさほど成功していないのを見ても、既存事業者の立場だけで言えば「どうぞ高速(路線)バスに新規参入してください」と停留所その他を新規組にあえて提供し、同じ土俵で勝負していた方がよかった気も。また、座って入線を待てる空調完備の待合ロビーの存在や、LEDによる案内表示や入線時の放送など、西口をはじめとした高速路線バスのターミナル機能の魅力も、こうやって高速ツアーバスの集合場所と比較するとあらためて実感する。実際、私のサイトに掲載されている高速ツアーバスの「お客さまの声」を見ても、集合場所がわかりづらかったという不満が目立つ。わかるわからない、という点以上に、言葉にできない「不安感」のようなものが多い。「空調完備の待合ロビーがあり、乗車改札時にはスタッフが放送でご案内します」という、高速路線バス事業者にとっては当たり前のことを記載して私のサイトで高速路線バスを販売すれば、高速ツアーバスに対して大きなアドバンテージになることは間違いないのだが。
2009.04.05
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「利用客の目線で」ということでは評価が高いはずのホテル業界だが、それでも「業界の常識」「ホテル屋のこだわり」のために利用者目線から離れてしまっている例も多い。ホテルは欧州や米国から入ってきた業態だから、バスルームはバスとトイレが一体になっているのが「常識」だ。高級ホテルだと、これに「シャワーブース」が加わることも多い。欧米の人にとってはトイレも風呂も「汚いものを流す」場所だから、それらが一体であっても何も違和感がない(欧州の古い石造りの建物に、後から水洗トイレや家庭用の風呂を設置するに当たってはそれが効率がよかったという物理的な事情が、そのまま文化になっている)。しかし我々日本人にとっては、トイレは「穢れの場」であり、風呂は「清めの場」である。それが同一の空間に同居するのは本能的にどうも居心地がよくない。最近、高級ホテルを中心に「個室トイレ」と「洗い場付きバスルーム」が多くなってきたが、「ホテルは欧米のもの」という常識を離れ、実際の利用者である日本人(つまり、私達一人ひとり)の視点に立ってみれば、当然の結果である。だが、日本のホテルがそんな当たり前のことに気付くまで、初めて日本にホテルが建設されてから一体何十年かかっただろうか。もっとも、バスルームの改装はコストが極めて高い。新設のビジネスホテルでは、最上階に大浴場を設置することでトータルのコストを抑えているが、古いビジネスホテルの改装ではそれさえも難しく、ますます競争が激化する中、既存のホテルの苦労は想像に余りある。そんな中、客室そのものを全く新発想で改装した一つの答えが、岡山ビューホテルの床に座ってくつろぐ部屋や靴を脱いでくつろぐ部屋であろう。これだと狭い客室面積をいじらずとも、またバスルーム改装ほどのコストをかけずとも、他とは大きく差別化でき、かつ利用者が本能的に望む「くつろぎ感」を提供できると言えるだろう(ちなみに、私自身、ホテル勤務時代に畳敷きのスイートを提案した覚えがある)。ほとんどコストをかけない例で言えば、ツインルームには白と青の二色のタオルを設置したAPAホテルも秀逸だ。特に団体旅行(社員旅行など)で男二人でツインに泊まったときなど、どっちが使ったタオルかはっきり分かったほうがいいに決まっている。だがホテルの常識として「タオル類は純白」という思い込みがある。洗濯後のチェックの際に毛髪等が残存していれば見つけやすいという理由はあるものの、「純白のタオルこそホテルの伝統」というような思い込みが、利用者の本当の願望を見えなくさせていたのだろう。わずか数年の歴史しかない高速ツアーバス業界でさえ、既に、よく言えば「業界のこだわり」に時々出会うことがある。現場のこだわりが品質を高め、かつスタッフの誇りにつながることはホテル勤務時代からよくよく承知しているが、最終的にそれを評価するのは利用客である。それらのこだわりが「業界だけの常識」「独りよがりの思い込み」になっていないか、常に自分達を律していきたい。
2009.04.03
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「既存路線バス事業者」という「村」の境界線がいかに曖昧か、という点について、もう一つ象徴的な商品が、私のサイトに掲載されている。名古屋-伊勢志摩線である。企画実施は、三重交通が100%出資する「観光販売システムズ」。その意味では、各社にご提案中の「本物」の「4条の高速バス(※)」取扱開始を待たずとも、私のサイトで予約したお客様が現状でも名鉄バスセンターからご乗車になっているわけで、自分でもやっぱり変な感じがする。※)私自身もついつい「4条」と書いてしまったが、道路運送法第4条が「一般乗合」について書かれていたのは過去の話である。法改正以降も「一般乗合」「一般貸切」等の区分は生きているが、少なくとも現4条は「乗合」について書かれた条ではない。そのことさえご存じない方に「我々4条の事業者は…」などと言われると違和感がある。もちろん、法改正があった事実とその趣旨を踏まえた上で、あくまで慣用的に「4条」と呼ぶなら別であるが。で、先日、私のサイト上で「小田急箱根高速バス」の名前を見てなんとなく大阪駅の深夜急行の停留所を思い出したように、観光販売システムズの商品を見ると、いつも、なんとなく新宿高速バスターミナル(通称:西口)のアルバイト時代のあるシーンを思い出す。「西口」では出発便は専用バースに入線するが、到着便は路上の停留所を使っている。その降車停留所付近では、当然、新宿駅前の一等地なので貸切バスが勝手に乗降(特に降車)扱いをする。いま高速ツアーバスに関わっている私の立場を考えると想像できないかも知れないが、当時私は、「勝手に」停留所を使う貸切車をいかに追い出すかに注力していた。スキーバスが降車扱いを始めたりすれば、先輩や同僚達と代わる代わる、ワイヤレスマイクを使って「ここは路線バスの停留所ですよっ。すぐに移動してくださいっ!!」などと叫んでいた。ある日、私鉄系とは思えない(?)お洒落な色のバスが降車扱いを始めたのでマイクでがなりたてた。ところが先輩が寄ってきて「バカ。あれ、○○電鉄グループだぞ!」(後で調べたところ、確かに大手私鉄が出資する会社だった)。私は一瞬に青ざめた。「やべぇ」という声がマイクに入っていたかも知れない。が、よくよく考えてみると、停留所を勝手に使う貸切車を追い出すことが目的であれば、理論上は自社の貸切車でも追い出さないといけない。まあ、そこまでは現実的でないとするにしても、直接は何の関係もない事業者を「私鉄系だから」というだけの理由で特別扱いする必要などない。が、私がそのとき直感的に青ざめたのも事実である…繰り返すが、私達は別に、業界の秩序を乱そうとしているのではない。「私鉄系」ということが一流バス事業者の一つの証ならば、それが彼らの誇りならば、それを否定などする気はない。私の前の勤務先も「老舗ホテル」であることをどれだけ誇りにしているか。しかしながら、「村」の境界線に縛られた結果、彼らが自らの高速バス事業を成長させるチャンスをフイにしていることが残念でならないだけなのだ。むしろ、その誇りを多数のお客様に伝えていただき、新しい利用者を開拓して欲しいだけなのだ。ちなみに、自虐的な言い方になるが、停留所で「勝手に」乗降扱いをしている貸切車を見ると、今でもついつい追い出しに行きたい衝動に駆られるのは事実である。そしてその度に、今の事業のあり方を思って重い気分になることも確かである。こんな場で人に言うことではないかも知れないが。
2009.04.02
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