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「海岸通りポストカードカフェ」(吉野万理子、双葉文庫)を読む。横浜・みなとみらいの万国橋近くにある喫茶店「ポストカードカフェ」。そこでは届けられたポストカードを壁一面に貼って公開し、永久に保管している。そんな店を訪れる客の織り成すヒューマンストーリーに心がほっこりする連作短篇集。帯にある感想の通り、こんなカフェが実際にあったら素敵だろうなと思わせる。吉野作品を読むのは「想い出あずかります」(新潮文庫)(感想はコチラ)に続いて2作目だが、不思議な設定の世界観で読ませる独特の雰囲気がある作家だなぁと思う。ただ、惜しむらくは最初の短篇で今流行り(!?)の「真逆」という言葉が使われているところか。上智の文学部、もっとしっかりしろと言いたくなった…。何はともあれ、今年7冊目読了。海岸通りポストカードカフェ/吉野万理子
2015.02.28
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「向こう側の遊園」(初野晴、講談社文庫)を読む。廃園となった遊園地の一角に謎めいた青年が守る秘密の動物霊園がある。自分が一番大切にしているものを差し出せばペットを葬ってくれるとの噂を聞きつけ、わけありのペットを埋葬したい人が深夜に訪れる。そんな不思議な動物霊園を舞台にした4篇の中篇と最終章からなる連作中篇ミステリ。「動物霊園」ということで連想したのは勿論スティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」であるが、それとは完全に趣を異にする。それぞれの中篇には読者の予想を裏切る結末が用意されており、ミステリとしての完成度の高さは目を瞠るものがあり、感動を呼ぶ。ただしそれだけではない。ペットをいう身近な題材を扱っていながら、古今の文学や動物に関する科学研究を引用・参照することで、現代社会における医療・科学・生命などの倫理的問題を鋭く抉っており、大いに考えさせられる社会派作品としての側面も大変色濃い。是非今の中高生に読んでもらいたいと思う。私もそういった時期に本書に出会えていたら今よりずっと感銘を受けただろう。ひとつ難を挙げれば、精神障害をはじめとする病気の症例を安易に作中に使っているところだろうか。しかしこれは描写対象の性質を考えれればある程度仕方ないし、何よりも圧倒的な知識量をバックグラウンドに真に迫ってくる点では優れた作品だと思うので、見逃してもよいかもしれない。初野作品と言えば「ハルチカシリーズ」が有名だが、巻末解説にもあるように「生命」や「医療」をテーマにした作品も多い。参考までにこれまで私が読んだ作品の感想へのリンクを改めて以下に入れておこう。・「漆黒の王子」(角川文庫)・「1/2の騎士」(講談社文庫)・「トワイライト・ミュージアム」(講談社ノベルズ)・「私のノーマジーン」(ポプラ文庫)最後に気に入ったところの引用で、本作の感想を締めようと思う。祖先がだれであるかではなく、現在生きている者がどういう生き方をするかによってアイデンティティが決められている。第二章「ブクウスとツォノクワの丘」より動物愛護を訴える人間の多くはベジタリアンになった。植物には心がない、悲鳴を上げない、という理屈だよ。なんのことはない。彼らもデカルト主義の継承者なんだ。彼らは植物の生きようとする意志、光を求めて一晩で十センチ以上伸びる力を知ろうとしない。最終章「星々の審判」よりこれで今年6冊目読了。向こう側の遊園/初野晴
2015.02.25
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「ドルチェ」(誉田哲也、新潮文庫)を読む。42歳独身女性警官の活躍を描く6篇の短篇からなる短篇集。短篇でありながらそれぞれの作品はプロットや謎解きがきちんとしていて、警察小説を得意とする誉田の面目躍如といったところ。短篇集なので軽く読めてしまう。暇つぶしには向いている。私は1日で読了した。直前に読んでいたキングの長篇と比べると、1ページあたりの文字密度がかなり違い(本作の方が少ない)、字の大きさ自体もだいぶ違うので、大変スラスラ読めてしまった。さて、今回は表題作の「ドルチェ」からの一節を。お供は缶ビールだけど、ちゃんとグラスに注いで飲む。たぶんその辺りが、独身貴族と侘しい独り暮らしの境界線なのだろう。別に、貴族が偉いと思っているわけでもないけれど。ハイ、私も今後はちゃんと注ぐようにしますm(_ _)mこれで2015年の5冊目読了。このあとは日本人作家の作品を3作読む予定なので、キングを読んでいた時に比べるとペースは上がると思う。ドルチェ/誉田哲也
2015.02.21
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「リーシーの物語(下)」(スティーヴン・キング、文春文庫)を読む。夫スコットが生前隠してきた秘密と直面し彼を救うために、彼がしばしば訪れていた異世界「ブーヤ・ムーン」に赴くリーシー。そして、一度は精神錯乱から自傷行為に至った姉の助けを借りて、スコットの遺作を狙う変質者と対決する。その結末は…はたまたスコットが最後にリーシーに残した、リーシー自身の「物語」とは…。ちなみに、キングの他の作品との関連でいうと、この下巻には短篇「ジョウント」のタイトルが登場する。キングの自己ベストである本作、正直上巻を読み始めたときはそんなにいい話じゃないのではないかといぶかしんだが、読み終わってみるとちょっと感動してしまった自分がいた(まぁ私個人としては本作はキングのベストというわけではないが…)。さて、例によって気に入った一節を以下に。実利一辺倒の世界では ”はかない”の一語で片づけられてしまうものが多々あるが ―歌、月の光、あるいはキスのようなもの― いまリーシーは、そういったものこそ、なによりも長く命をたもつ、と信じるようになっていた。なんの意味もないくだらないものかもしれないが、それでも忘れられることを拒むもの。だからこそすばらしい。だからこそすばらしいのだ。ちなみにこの作品はハードカバーを図書館で借りて読んでいたことにあとで気づいた。その時の感想はコチラ。これでようやく今年4冊目読了。嗚呼、キング作品はページ数が多いなぁ…。リーシーの物語(上)/スティーヴン・キングリーシーの物語(下)/スティーヴン・キングキングの話ついでにちょっと思ったことをいろいろ書いておこう。本作は現時点での文庫化最新作だが、その前は「アンダー・ザ・ドーム」、長篇に限ればさらにその前は「ザ・スタンド」と「セル」まで遡る。合間に以前読んだ作品の再読(昨年は「タリスマン」と「ブラック・ハウス」)をしているが、キングの長篇を読むのはけっこう久し振りだなという感じがした。また他の作品の再読もしてみたくなったし、本書の訳者あとがきにあるように、現在文庫化待ち・翻訳待ちの新作も多々あるということなので、今後もキングからはもちろん目が離せない。またガッツリと読ませる作品が読めるのを楽しみにしたい。もうひとつ。本作でも主人公のリーシーが変質者に切りつけられるシーンがあり、その後もリーシーは懸命に行動を続けるのだが、はたして実際の人間というのはどれくらいの怪我・痛み・出血ならば生きながらえ、意志を持って行動を続けることができるのだろうかと、小説の中のことながらちょっと心配になってしまう。この点に関してはキングはある短篇(たしか「生き延びるやつ」とかいうタイトル)で医学的見地に基づいて実証しているのだが…それが本当ならば本書でリーシーが受けた傷は大したことない部類に入ると思うが、正直読んでいてかなり痛々しかった。最後に…売春宿のジョークについて訳者あとがきで解説がされていたのはうれしかった。さすが白石さん。名訳者だ。あと(記憶が確かならば)「家鴨の嘴につつかれて死亡」のジョークも面白かった。当面、頭から離れなさそうな面白さだ!
2015.02.21
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「リーシーの物語(上)」(スティーヴン・キング、文春文庫)を読む。キングが本書に関してだけは書評を読みたくないという「自作ベスト」小説。主人公のリーシーが有名作家だった亡き夫スコットの遺品整理をようやく始めると、スコットが自分に残したメッセージを発見する。一方、スコットの遺作を手に入れようとリーシーに迫る魔の手が…というストーリー。リーシーがスコットとの結婚生活を回顧しながら進む話の展開。最初の150ページくらいはなかなかストーリーが進まず読むのに難儀したが、そこを越えるとどんどん読み進められる感じになった。キング特有の長い前置きというよりは、それは寧ろ本作特有のというべきだろう。それはともかく、この上巻ではまだスコットの異世界を表す単語「ブーヤ・ムーン」は一回も登場していないのに、本の裏表紙のあらすじにその言葉が書いてあるのは、文春のミスなのか否かはちょっと謎だ。さて、下巻の展開と結末が気になりつつも、キングの他の作品との関連を見てみると、この上巻で私が気付いたのは「骨の袋」のマイクル・ヌーナン(彼もまた作家だ)の名前と、「タリスマン」「ブラック・ハウス」の「テリトリー」の名前が登場することくらいか。そして何といっても引用すべきは、「まさにこーこ」。SOWISAだよ、ベイビィラーヴ ― Strap on whenever it seems appropriate(適切だと思えたときにはいつでも手綱をかけろ)、だ。やっと今年3冊目。読むペースが遅いな…。リーシーの物語(上)/スティーヴン・キング
2015.02.18
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