一網打尽に抑えろと紅鶴様のお告げかな
翌日、舟祭りで浜辺も沖もにぎわっています。浜辺は神輿が繰り出し大変な人混みになっています。沖には大漁旗をなびかせた華やかな舟が浮かんでいます。その一艘に 若さまが網元の酌で杯をかたむけ
楽しそうな表情でいます。
ゴマ壇が設けられた祈祷所では和尚や僧侶が祈りをあげています。爆竹が鳴り、神輿が海の中に入り祭りが佳境に入ってきた時、「火事だー」という声がします。沖に出ている舟に乗っていた若さまや網元たちがびっくりして浜辺の方を見ると、祈祷所が火に囲まれ燃え上がっています。 若さまは急ぎ舟を力一杯漕いで浜辺に行きます
。
「どうしたんだ」という若さまに、糸平が「和尚さんが火の中に・・」と聞き、「なに」と言う 若さまの表情には、何か厳しいものがあります
。
その日の夜、寺の本堂では火事で助からなかった和尚の葬儀が行われています。
黒い影が紅鶴屋敷の密室に近づいていきます。その密室の中には兄の来るのを待っているお千代がいます。「兄さん」というお千代に黒い影が覆いかぶさります。「きゃーっ」と叫ぶ声に天井から飛び降りたのは若さまです。黒い影はもの凄い勢いで逃げていきます。 かけつけた小吉と甚兵衛と共に若さまももの凄い勢いで追います
。
黒い影は網元茂兵衛の家に逃げ込みます。若さまたちもすぐにかけ込み、見たものは・・・
土間にぶら下がった網元の死体でした。
若さまは思わず「網元」と言葉を発します・
・そして何かを分かったように、
若さま「小吉、来い」
若さまが行った先は越後屋清左衛門が埋められている墓・・・小吉と甚兵衛が墓を掘り返して棺桶を開けてみると中は空っぽです。若さま、小吉、甚兵衛が「あっ」とした顔を・ ・若さまはやっぱりというような表情をします
。
小吉 「清左衛門、清左衛門の死体は ?
」
若さま「 舟祭りで黒焦げさ
」
その時、 背後に殺気を感じとります
。
和尚 「若僧、 おとなしく手を引け
」
若さま「はっはっはあ、 とうとう海賊の正体現したな
」
和尚 「なにぃ」
若さま「さすがは抜けに買いの大頭目だ、一度死んでもまた生き返る。見事な手品
うつじゃねえか」
和尚 「やかましいやい」
若さま「ところがだ、上手の手から水が漏れた。江戸の殺しも清左衛門も、見せし
めの鶴さえ置かなきゃバレなかったのよ」
和尚 「命のあるうち、とっとと帰れ」
若さま「けえれねえな」
和尚 「若僧、あれが見えぬか」
和尚が指さすと、 若さまのまわりをぐるりと海賊どもが取り囲みます
。若さまは笑い出しこう言うのです。
若さま「こいつは面白くなって来た。舟祭りに事寄せて、より集まった抜けに買
い、 一網打尽に抑えろと紅鶴様のお告げかな
。小吉、急ぎな」
と言い、小吉が行こうとしたとき、 和尚の「叩き斬れ」で立廻りになります
。
(
立廻り)
葬式が行われている本堂へと場所は変わっていきます。和尚を追って若さまが本堂へ入っていきます。 不気味な静寂の中、若さまが本堂の中心へ来たとき、鎖がまの分銅が若さまを狙ってきます
。
和尚のふり回す鎖がまに若さまも苦戦します。 分銅が若さまの大刀に絡みます
。和尚が鎖を引いていき 若さまは刀を落してしまいます
。若 さまとっさに小刀を抜き、かかって来た和尚を差します
。
残っている海賊たちがまた若さまにかかって来ます。
若さま、 大刀を取り、二刀流で立ち向かいます
。
「若さまー」と大勢の撮り方を連れた小吉の声が聞こえます。
町の皆が紅鶴屋敷に集まっています。
若さまがいろいろ起った事件の謎解きをしています。
紅鶴は海賊のしるしだった。和尚は抜けに買いの頭目、毎年舟祭りを名目に抜けに買いの集まりがあった。越後屋清左衛門は抜けに買いの一味で、和尚とあの晩仲間割れをした、そのため清吉を締めあげている越後屋を後ろから一突き。六助があの晩帰って来たと思ったのは佐竹で、佐竹が網元に殺されたというのはよだれくりの丁松の真似で分かった。網元は佐竹を殺して折角獲った金を和尚に巻き上げられ、紅鶴屋敷の密室のことまで喋ってしまった。佐竹が殺された晩にきたのは和尚だ。
若さま「ところで、・・ここで俺は困ったよ。舟火事で和尚が死んでいるんだ。それで、お千代坊と張っているところへ来たんだね、これが」
皆が声を揃えて「誰が ?
」と言うと
若さま「 死んだはずの和尚なんだよ
」
甚兵衛「網元がころされたのは ?
」
若さま「 あいつは、和尚の悪事を知り過ぎたのさ
」
(
)
こうして紅鶴屋敷の謎も解かれ、また元通りの静かな漁師町に戻りました。
若さまは紅鶴の船の若者さながらに、朝日の中を去って行かれました
。折鶴の姫の願いをかけた私を残して・・・「若さま、若さま、若さまー」
(完)
若さま侍捕物帖・・・(6) 2024年09月21日
若さま侍捕物帖・・・(5) 2024年09月15日
若さま侍捕物帖・・・(4) 2024年09月08日
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