安っぽい名じゃねえんだい
栄次郎がある宿場町に入ると、道中師の半次が侍達の財布を掏り損ねて捕まえられようとしています。茶店で休んでいた 栄次郎が半次を助けます
。
栄次郎「へっへっへ、 勘弁してやっておくんなせい
、・・こいつには」
と侍達に言いながら、どさくさに紛れ 半次の財布を盗った手を掴み取り返し
栄次郎「へっへっへ、もう、とんだ目にあわされたんですが、 (
半次のおでこをポ
ンと叩き
)
もう、 憎めねえ野郎でしてねえ
、へっへっへ、どうぞお許し下
さいやしてお引渡し願いたいんですがてえんですが」
と頭を下げますが、侍達の気が済みません。
「ならぬ」「下郎の分際で黙れ」ときたから、喧嘩っ早い栄次郎、
栄次郎「うん、 なにい
、そりゃもう、あっしはやくざの野郎かもしれませんが、お
歴々のお侍が何人もたかって、 スリのチンピラ一人斬るのはみっともねえ
と思いまして
・・・そうでござんしょう。・・・ ねえ (
ドスの下げ緒を引
き
抜き脅し )
えへっへ
」
侍達は刀を抜いています。栄次郎は、半次の傍に行き、今日は 助っ人にまわってやるから
、いまのうちにとっととうせろ、と言います。
半次が「恩にきます」と栄次郎に言いますと、栄次郎が「どっちに行くんだい」半次が「あっち」と・・ 半次を逃がすと
侍達が斬りかかってきます。
栄次郎「 簡単にはいかねえぞ
、来い」と言って ドスを抜きます
。
いい気持ちでドスを振りあげたとき、「ちょっと待った」と声をかける者がいました。
「お待ちなすって」と 割って入ったのは清水一家の森の石松
です。
石松にも斬りかかったので、喧嘩はこうしてするものだと石松は言うと暴れまくり、侍達は退散します。「よござんしたね、お怪我かなくて」と寄って来た石松に、 ニコッとした表情を少し見せた栄次郎
でしたが、
栄次郎「なんでい、おめえは。横合いから勝手なおせっかいやきやがって、 気に入
らねえ
」
石松 「こいつは驚いた」
栄次郎「てめえは、何処のどいつだい」
石松 「いいじゃねえか、おわけえの。同じ無職仲間の仁義だと思って、 見かねて
中にへえったまでだ
。ねえ、気兼ねすることはねえよ」
栄次郎「なにおぅ、へっへぇ、 なめんな馬鹿
」
石松 「そう、馬鹿は生れつきだい。おめえさんこそ、何処のどなた様か・・名
乗ってもらいたいねえ、ええ」
栄次郎「へっ、 笑わせるねえ
。・・・へっ、てめえなんかに名乗るほど、 安っぽ
い名じゃねえんだい
。・・・斬るぞお、片目の馬鹿」
石松 「ねねねねっ、おらねえ・・片目と馬鹿が売り物の、男の中の男だってこ
と、おめえさん知らねえのか ?
」
栄次郎「 そんなこと、知るけい
」
石松 「それじゃ無理だい」
栄次郎の「 勝負と行こうか
」に石松も「うれしいねえ」と言い、二人は身構えます。石松は「育ちは違うが、腕はおめえさんよりは」というと斬り込んでいきます。
石松のドスを払いのけたのを
見て
石松 「おめえさん、相当やりますねえ」
栄次郎「どうだい、腕のほどが分かったら、おとなしくあっさり詫びろい」
すると、「詫びるってえことを知らねえ馬鹿なんだよ」と栄次郎にかかって行きます。 どっちもどっち勝負はつきません
。
石松が「やめた、どうだい五分にしねえか」と言ってきますが、
栄次郎「やだ、やだいちきしょう、 俺が六分なら手を引かい
」
石松 「ちきしょうめ、 悔しいなあ
」
栄次郎「じゃあ、 名のれい
。片目の暴れん坊で、 清水一家の
」
石松 「おっと待った、」
そのとき、「石」と桶屋の鬼吉が声をかけてきます。「馬鹿やろ」という石松に「馬鹿はお前だよ」と言い、鬼吉は栄次郎に「お前さんに会いたいというお美しい方をお連れしました」と。
鬼吉が指さす方を見て、
栄次郎「 あっ、お喜代さん
」
石松と鬼吉は、「また会おう」と言って、お喜代と栄次郎の二人にして行ってしまいます。
続きます。
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