”
怒涛篇 ”
。
おまかせください
その昔、長崎で処刑された海賊の頭目が明の国へ持ち帰った青銅の香炉が、金竜、銀竜の一対のもので双竜の香炉と呼ばれている。珍しいものなので時の長崎奉行が上様に献上したものであるが、途中行列を襲った者がいて一つの香炉が奪い去られた、と聞いていると、一つの金竜の香炉を前にして、将軍吉宗に愚楽老人が話をしています。
すると、吉宗が、一対のものであると思って、日光造営を遂げた柳生対馬守に与える約束をしたと言うのです。愚楽老人は、それだけではない、双竜の香炉には大きな謎が秘められている、というのです。
その頃、銀竜を持っている大海賊の子孫長崎屋重兵衛と徳川幕府を倒すことが門敵の豊臣の残党鈴川源十郎が手を組んで金竜の香炉を手に入れんと結託していました。
金竜の香炉は伊賀の柳生にやることになったらしいので香炉を奪うにはまたとない機会という鈴川に、ただ町奉行の大岡越前守は油断のならぬ人物であるから悟られないようにと、長崎屋は手下たちに言います。
その大岡越前守の屋敷では、越前守が、同心伊吹大作を呼び内々に話をしています。
金竜の香炉は、柳生と一旦約束されたものをいまさら引っ込めるわけにもいかず、一先ず香炉の行列は伊賀へ向かって出立することになった、と言うのです。
大作 「 では、なれ合いの上、それを奪い取るということで
」
越前守「うん、だが・・」極秘のことなので友侍の末端まで知らすわけにもいかない、
越前守「・・といって、 おぬしやわしが乗り出すわけにはいかぬ
。・・そこで、 失
敗しても差しさわりのない人間といえば
」
大作は、越前の言う意味がすぐに分かり明るい顔で
大作 「わかりました、 おまかせ下さい
」
伊吹大作は、 牢獄に入っている鼓の与吉を釈放
します。
大作 「わしの言ったこと、分かっておるか」
与吉 「へえ」
大作 「 万一の場合は、拙者が上手く取り計らってやるが
、圏外の者達は存ぜぬこ
とゆえ十分に気を付けろよ」
与吉は、「まかしときなって」と。
伊吹大作に与吉が支持された品川の宿はずれです。
公儀御用の木箱を乗せた駕籠を守って行列がさしかかります。近づいて来る行列の様子を茶店から見ている長崎屋一味の侍達がいる前を、道中姿のなりをした与吉が通り過ぎていきます。行列に膝まづいていましたが、突然何かを投げつけますと凄まじい音と白煙で駕籠はバラバラになり、その隙にまんまと木箱を持って逃げて行きます。
木箱を守っていた共ぞろいの者達が追いかけます。すると、茶店で様子をうかがっていた長崎屋一味の侍達も動き出します。ともぞろいの者達をうまくかわして行ったところで、怪しい侍達に今度はしつこく追いかけられます。
逃げ込んだのはとんがり長屋の姐御と呼ぶお藤のところでした。お藤に牢から早く出られたじゃないかと聞かれ、与吉はこれのおかげでと言い、ある所へ持って行くと百両になると言うのを、屏風の向こうで左膳が聞いていました。これは大変と急いで出て行こうとしたとき、侍達が押しかけてきますが、左膳に助けを求め、その間に与吉は表へ逃げます。
神社の境内で甘酒を打っているちょび安に木箱を一寸預けたのが間違いでした。親のないちょび安を養子にした左膳のもとへ木箱に入った香炉も転がり込んだのです。
続きます。
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